オリンピア


3

GM:夜が明けてケンブリッジを出発します。次の目的地バーミンガムは約140㎞先で、8日の旅程です。幹線道路ではなく、係争地域へ向かう道となるので、若干ペースが遅くなるのは避けられません。

 例によって道々宿に寄りながら、一行はバーミンガムを目指します。5日目の宿は“ぶらぶら揺れる兜亭”、6日目の宿は“踊る牛乳亭”でした。


GM:7日目の宿は……(コロコロ)……“酢漬けの間男亭”です。
エドワード:(笑)
エドガー:シュールだな~(笑)
GM:たぶん、照明がピンク色になっているんですよ(笑)

 8日目の宿は“鼓動するカラシ入れ亭”、9日目の宿は“空腹のズボン亭”でした。


ライン

GM:10日目、“空腹のズボン亭”を出発してバーミンガムを目指して道を進んでいると、背後から荷車隊が迫ってくることに気づきます。進行速度が皆さんの馬車よりも速いので、じきに追いつかれるでしょう。先行して、護衛と思われる馬に乗った兵士が皆さんに近づいてきます。赤い軍服を着ているので、ニューモデル軍の軍人のようです。追いついてきた兵士は御者(カペラ)に話しかけます。(兵士)「我々は軍務で先を急いでいる。すまないが道を開けてほしい」
エドワード:ニューモデル軍の規模はどれくらい?
ニューモデル軍兵士GM:10名の兵士と8頭の馬から成る一隊です。馬のうちの4頭は幌の掛けられた何か大きなものを積んだ荷車を牽いていて、その荷車に何名かの軍服姿の男たちが同乗しています。この荷車に乗っている男たちは、身なりからしてどうやらクロックワーク技師のようです。つまり彼らは“ニューモデル軍クロックワーク連隊”という、世界を変えつつある最新鋭装備を持つ精鋭部隊ということになります。
エドガー:係争地域へ向かう議会軍の援軍かな? エドワードとしては敵対しなくて良いの?(※ニューモデル軍は王党派の敵対派閥)
エドワード:私はそれほど熱意が高いわけではないので(笑)
GM:相手は曲がりなりにも10名の軍人ですからね。王党派だからと言って、必ずしも見敵必殺のテロリストである必要はないですよ。そういう人もいるでしょうが(笑)
エドガー:一応、スパランツァーニにお伺いを立ててみましょう。「このように申しておりますが?」
GM:(スパランツァーニ)「脇に避けて、通してやろう」
エドガー:では脇に避けて見送りましょう。荷車に積まれているのはクロックワークの機械なのでしょうか?
GM:馬車を道から外れた場所に寄せると、その横を馬に牽かれた荷車が通っていきます。エドガーの推測通り、恐らく何らかのクロックワーク機械を積んでいるのでしょう。荷車に積まれた差し渡し2~3mくらいのこんもりとした物体に幌が掛けられています。馬車を追い抜く際、その幌のてっぺんに座っている軍人、おそらくこの一隊の隊長が皆さんに向かって手を振りながら陽気に声をかけてきます。(隊長)「ご協力、感謝しますぞ! 吾輩の“ベナンドナー”の到着が早ければ早いほど、議会軍の勝利が確実になりますれば!」
エドガー:“ベナンドナー”っていうのは?
GM〈知識(地域)〉ロールをしてください。ただし、エドワードは-40%でお願いします。
エドワード:(コロコロ……)失敗。
エドガー:(コロコロ……)成功。
GM:エドガー(※スコットランド出身)は知っていますが、“ベナンドナー”というのは伝説に登場するスコットランドの巨人の名前です。
エドガー:! ということは、積んでいるのは“ベナンドナー”という名前の兵器ってことか!!
エドワード:なんでスコットランドの巨人の名前がついているんだ?
エドガー:あ! その隊長の言葉にスコットランド訛りみたいなものってありますか?
GM:スコットランド人のエドガーにならわかりますが、隊長はおそらくスコットランド人でしょう。彼の見事な赤毛はスコットランド人に良く見られる特徴の一つです。ベナンドナーの名に反応したエドガーを見て、隊長が声をかけてきます。(隊長)「ベナンドナーの名を御存じか?」
エドガー:「伝説の巨人の名前ですな」
GM:(隊長)「そう! 吾輩のストライディング・スーツにつけたニックネームだ」ストライディング・スーツっていうのは、要するにクロックワーク・パワードスーツです。エドワードはネイズビーの戦いに参加していたので、実際に見た、あるいはその話を聞いたことがあるかもしれません。
エドガー:そんなものが実戦投入されているの!? ムチャクチャカッコイイじゃん! ということは、その最新兵器を運用する部隊ってことか。「このような場所で同郷の方とお会いできるとは、幸運なことです」
GM:(隊長)「ほう、そうすると貴殿はスコットランドの?」
エドガー:「はい」……まさか敵対氏族の出身じゃないだろうな。氏族の名前を言い合うと血で血を洗う戦いになる可能性が(笑)。隊長の出身は議会派に与している氏族ってことになるよね?
GM:(隊長)「名前を聞かせてもらえるか?」
エドガー:……言いたくない、言いたくない。
エドワード:(笑)
GM:じゃあ、正義の意志判定をしましょう。正義ポイントでロールをしてください。通常の技能ロールと違って、正義ポイント以下が出たら失敗です。
エドガー:正義、高いんだよねぇ。何かあったらゴメン。(コロコロ……)68!(※正義の意志判定に失敗)我慢できませんでした(笑)。「エドガー・マクドナルドといいます」
GM:すると、ベナンドナーの上に座っていた隊長はすっくと立ちあがって、エドガーを見下ろします。(隊長)「なるほど、マクドナルドの山犬か」
エドガー:目をそらさずに見つめ返します!
オスカー・キャンベル大尉GM:(隊長)「吾輩は、オスカー“ザ・レッド・マン”キャンベル大尉だ」
エドガー:完全に敵じゃねぇかよ(笑)
エドワード:(爆笑)
GM:“ザ・レッド・マン”というのは、赤い髪の毛をしていたとされる巨人ベナンドナーの二つ名です。オスカー大尉は自らをベナンドナーになぞらえているのでしょう。
エドガー:なるほど。なんか、いちいち中二病っぽくてカッコイイな(笑)
GM:なお、キャンベル隊の他の面々はスコットランド人じゃないので、突然始まった2人の視殺戦に「ヤレヤレ、何か始まっちまったぜ」と肩をすくめています。エドガーの背後からはヴァレリィが「おい、土下座しちゃえよ! 土下座しろ!」と小声で言ってきます(笑)
エドガー:いや、土下座したいのはやまやまなんだけど、正義の意志判定に失敗してしまっているので(笑)
GM:(オスカー大尉)「マクドナルドの山犬ごときが、このような場所で何をしている?」
エドガー:「今は護衛任務の途上です」
GM:(オスカー大尉)「フン。マクドナルドであればその程度が関の山か」オスカーは自分がストライディング・スーツのパイロットで、「この技術を学んで故郷に持ち帰り、キャンベル氏族の発展に役立てたい」と思っていることを長々と演説してくれます。
エドガー:「おそれながら、私はそれがスコットランドの永遠の独立につながるとは思っていません」
エドワード:お、“討論”開始ですか?
GM:せっかくルールがあるので“討論”やりましょう。互いの正義ポイントを使った対抗判定です。ただし対抗技能ロールとは違って、独自の解決表を使います。エドワードには、エドガーとオスカー大尉の視線が空中で火花を散らしているのが見えます(笑)
エドワード「正義対抗表」上でバチバチと!
GM:では行きましょう。派閥の正義ポイントでロールです。せーの……!(コロコロ)
エドガー:失敗(泣)! ヒーロー・ポイントは使えないんでしたっけ?
GM:ヒーロー・ポイントは技能ロールを振り直しできますが、正義判定は技能ロールではないのでダメです。ちなみにオスカー大尉は――失敗です(笑)
エドワード:(爆笑)
エドガー:格好悪いな!!(笑)
GM:両者失敗だと「外部からの妨害により、討論は継続できない」なので、オスカー大尉は護衛の兵士に「大尉! そのようなことをやっている場合ではないですよ!」と諫められます。馬車からスパランツァーニの「待て待て、やめんか! このような場所でトラブルを起こしてもらっては、儂の護衛に支障が出るではないか!」の声が飛んできて、エドガーもハッと我に返ります。
エドガー:……これは一番良い結果になったのでは?(笑)
エドワード:確かに(笑)
エドガー・マクドナルドエドガー:我に返って「この場はここまでで。いずれどこかでお会いしましたら、その時に、また」
GM:(オスカー大尉)「お前のために、その“いずれ”とやらが来ないことを祈るがな」
エドガー:ムカつく(笑)
GM:部下たちが「もう良いから! 荷車隊前進!」みたいに言って、キャンベル隊は道を進んでいきます。ここで〈文化(自分)〉ロールをしてください(エドガーが成功)。エドガーは刃傷沙汰に発展しなくてホッとします。街道で武器を抜くことは、昔は国王への反逆罪と見なされていましたので。
エドガー:なるほど。今後のためにも良い勉強になりました。
GM:すれ違う時に、兵士や技師たちは、同じく部外者だったエドワードやヴァレリィに向かって苦笑いを浮かべて見せ、肩をすくめます。荷車の後ろに座っていた技師たちが皆さんに向かって手を振りながら、キャンベル隊は去って行きました。
エドガー:ちなみに、キャンベル隊との遭遇の間、スパランツァーニの様子はどうでしたか?
GM:馬車の窓から身を乗り出して様子をうかがいながら「何やっとるんだ?」という困惑の表情を浮かべていました。ニューモデル軍に追われていて焦っている様子は見受けられません。彼は完全に第三者、傍観者でした。
エドガー:特別な反応ではなかったということか。彼を狙っているのはニューモデル軍ではなさそうですね。
エドワード:そうだね。

 冒険者たちも旅を続け、10日目の宿は“編まれた尻軽女亭”と決まりました。


エドガー:7日目に泊まった“酢漬けの間男亭”の系列店じゃないの?(笑)
エドワード:(笑)
GM:“間男亭”でもらった割引券が使えます(笑)。(店主)「今後もご贔屓に」

 なお、11日目の宿も系列店の“泡立つ淑女亭”でした(笑)