GM:どうにか無事にバーミンガムを出発することができました。
エドワード:「次の目的地はどこになりますか?」
GM:(スパランツァーニ)「我々はこれから、“アーサー・ゴブレット氏の驚異のクロックワーク劇場”を探す」
“驚異のクロックワーク劇場”とは、アーサー・ゴブレット氏という人物に率いられた、クロックワーク・サーカスのようなものです。アーサー・ゴブレット氏は自動人形技術を専門とする元ティンカー(※派閥:ティンカーは“技術者たる神”を崇拝する教会)の重鎮で、とある理由からオリヴァー・クロムウェルによって議会派の支配地域を追われた後、クロックワーク・サーカスを生業として生計を立てています。その性質上、クロックワークを憎悪する王党派の領域に行くこともできず、やむなく係争地域を巡業しています。
※“アーサー・ゴブレット氏の驚異のクロックワーク劇場”は『クロックワーク&シヴァルリ』世界における公式設定です。
エドガー:ケンブリッジでコッポラが「アーサーによろしく」って言っていたのはこのことか。そうなると、情報を集めながら、係争地域内でそのサーカスを追っていかなくちゃならないってことだよね。
エドワード:町々を訪ねながら「サーカス団を見なかったか?」とたずねて歩くわけですな。
係争地域の奥深くへ進み続けると、いよいよ宿屋などはなくなり、空き家の軒先を借りたり、野宿をしたりする覚悟が必要となります。
途中(ランダム遭遇表にて)、空腹の野犬の群れや、中立のクラブマン(※クラブマン=両軍(国王軍と議会軍)による略奪から自分たちの町や村を守るために庶民が組織した自警団のようなもの)の集団に遭遇するものの、冒険者たちは無益な戦闘を回避することに成功します。クラブマンたちに賄賂を贈って情報を入手し、最近“クロックワーク劇場”が目撃されたという場所を教えてもらいます。
GM:バーミンガムを離れてから3日目。ついにそれらしき興行一座を遠くに捉えます。
エドガー:「あれじゃないか!?」
GM:スパランツァーニは馬車の窓から身を乗り出すと、「うむ、間違いない! あれだ! 急げ!!」と御者を急かします。
エドガー:一応警戒しながら近づいていきましょう。彼らが敵対的じゃないという保証はないので。
GM:一座は1人の成人男性と、7~8人の孤児、あとは荷物を満載した荷車を牽くラバ等の輓獣で構成されています。皆さんが近づいていくと、それに気づいた孤児の1人が眼鏡をかけた中年の男を連れてきます。おそらく、その眼鏡男がアーサー・ゴブレット氏でしょう。皆さんが追いつくと、アーサー・ゴブレット氏は孤児たちに命じて一座の移動を停止させます。(スパランツァーニ)「アーサー・ゴブレット殿、お探ししておりました。貴殿をイングランド最高の自動人形の専門家と見込んで、やってほしいことがあるのです」すると、例によって歌を歌いながら、オリンピアがジェーン婦人に付き添われて馬車から降りてきます。ゴブレット氏はオリンピアを見ると何かピンときたようで、スパランツァーニに、もの問いた気な顔を向けます。(ゴブレット氏)「コレは、私の未完成の……?」
エドガー:お?
エドワード:ん?
GM:スパランツァーニは喜色満面で「そうですとも!」と言って、途中で入手した2つの小箱を取り出します。そして「ぜひとも、この3つの部品で貴殿のマスターピースを作り上げていただきたく参上したのです!」と続け、2つの小箱をゴブレット氏に差し出し、オリンピアの方へ顎をしゃくります。
アーサー・ゴブレット氏とスパランツァーニの間の会話の要約は、おおよそ以下の通り。
- ゴブレット氏はイングランド最高の自動人形技師で、追放以前はニューモデル軍に編成されるはずのクロックワーク兵士の連隊の開発に携わっていた。ニューモデル軍/議会派から追われる際、ゴブレット氏は未完成の自動人形9体(現在はクロックワーク劇場でダンスや模擬戦を披露する演者となっている)を持ち去った。ゴブレット氏に対してはクロムウェルからの追手が放たれているという噂がある。
- オリンピアはゴブレット氏が逃走の際に残していった未完成の自動人形のうちの1体で、ロンドンの骨董品店に飾られていたのをスパランツァーニが見つけた。中途半端に歌を歌うだけしかできないオリンピアに最新式の部品を補って、スパランツァーニは唯一無二の自動人形を完成させようと考えている。
- 派閥が“私利私欲(高慢)”のスパランツァーニは、完成したオリンピアを娘と称し、歌姫として社交界にデビューさせようとしている。もしオリンピアが自動人形であることが世間に露見してしまっても、この世界に1体しかない特別な自動人形を所有しているという優越感が、スパランツァーニの虚栄心を満足させてくれるだろう。
エドガー:根本的なことを聞きたいんだけど、この世界の自動人形って完全に機械なの? それとも有機物と組み合わせて作られるの?
GM:本当はクロックワーク技師がいなければ詳しくはわかりませんが、今回は病欠なので特別にお教えしましょう。自動人形は完全に機械です。
エドガー:なるほど。オリンピアは人間と遜色ないレベルの機械だってこと?
エドワード:それとも見る人が見ればわかるもの?
GM:少なくとも、皆さんは人間であると信じ込んでいました。
エドガー:確かに、少し普通じゃないところもあったけど……。このレベルのものが作れるのか。
GM:ぶっちゃけた話をすると、このレベルで構築できるのは公式ネームド・キャラクターのアーサー・ゴブレット氏だけです。つまり、ゴブレット・モデルだから、このクオリティです。おそらく、ケンブリッジでは今もクロックワーク兵士の研究開発がされているでしょうが、これほどのレベルのものは作成できていないでしょう
ゴブレット氏は申し出を断りますが、スパランツァーニは法外な報酬を申し出て彼を説得しにかかります。最終的に、孤児たちを養い、クロックワーク劇場を維持しなければならないゴブレット氏が折れ、過去に類を見ない自動人形の構築作業が開始されることとなります。
GM:アーサー・ゴブレット氏は孤児たちにテントを立てて野営の準備をするように指示します。孤児たちによっててきぱきといくつかのテントが立てられ、一番大きなテントの中にゴブレット氏、スパランツァーニ、オリンピアが入っていきます。テントに入る前に、スパランツァーニは「絶対に邪魔が入らないように、警備を厳にしたまえ!」と皆さんに命じます。
ここで〈知覚〉ロールをしてください(全員成功)。そういえば、ジェーン婦人の姿が見当たらないことに気づきます。
エドガー:マジですか!?
エドワード:さっきまでいたのに?
GM:オリンピアが馬車から降りる時に付き添っていたところまでは、間違いなくいましたね。
エドワード:テントの間を探してみますけど、いませんか?
GM:見当たりません。孤児たちに聞いてみても「ああ、そういえば、そんな人いたね」という返答です。
エドガー:何かが起きているっぽいよね。これから我々が考えなければいけないのは――スパランツァーニは誰かに追われている感じでしたよね?
エドワード:うん。
エドガー:スパランツァーニ自身が追われているのか、それとも彼を経由してアーサーを追っている者がいるのか。どうなんだろう?
GM:(う~ん、ここへきてクロックワーク技師経由で得られるはずの情報がまったく得られていないのが響いてきたな(笑)。ヒントを出そう)1つ引っかかるのが、ビル・コックスの死に様ですね。
エドガー:あれはどう考えてもクロックワーク技術によって殺されているわけですから、少なくともビルを殺したのはクロックワークに関連する何らかの勢力ですよね。
エドワード:うん。
エドガー:でもそれが何なのか……。
GM:夕刻が近づいてきます。アーサー・ゴブレット氏たちが入っていったテントからは、何やらガチャガチャと機械をいじる音がずっと聞こえています。
エドワード:「そろそろ夕餉の時間になるのだが……」
GM:その通りで、孤児たちが食事の準備を始めています。ジェーン婦人は依然として行方不明のまま。皆さんは命じられたとおりに警戒を厳にしています。すると、野営地に近づいてくる一団がいます。それは、数日前に皆さんを追い抜いていったキャンベル隊です。
エドワード:マジかよ……。
GM:今回、ストライディング・スーツは幌を外され、起動して荷車の上に立っており、コクピットからオスカー大尉が半身をのぞかせています。ストライディング・スーツの頭部は赤く塗られていて、その様子はまるで伝説の巨人ベナンドナーの赤毛のようです。
エドガー:カッコイイじゃねーか! 大きさってどれくらい?
GM:ロボットじゃなくて、パワードスーツなので2.5mくらいです。搭乗するというより着込む感じですかね。(オスカー大尉)「ここにアーサー・ゴブレット氏がいることはわかっている。身柄の引き渡しを求める! 大人しく従えば、我々はこれ以上何かをするつもりはない」
エドワード:ここで氏族同士の“討論”はやめてくださいよ(笑)
エドガー:確かにね(笑)。やりたい気持ちは満々ですけれども。
GM:キャンベル隊の登場に驚いて、ゴブレット氏とスパランツァーニはテントから飛び出してきます。ゴブレット氏はスパランツァーニの襟元をつかんで「お前、だましたのか!?」と詰め寄りますが、スパランツァーニは「違う! 儂らは完全に無関係だ!!」と弁明します。
一同:……。
GM:すると、キャンベル隊の一行の中からジェーン婦人が出てきて、明智小五郎ばりにバサッと変装を解くと、ニューモデル軍の軍服を着た若い女性が現れます。(ジェーン婦人→キャンベル隊のスパイ、スカサハ)「実は、私が行く先々であなたたちの足取り情報を伝えていたの。悪く思わないで」と言って彼女はウインクをします。ジェーン婦人に注意を払っていれば、怪しげな行動に気づくことができたのかもしれません。
エドガー:まったく警戒していなかった……。
GM:孤児たちを含め、皆さんはこの突然降ってわいた状況に理解が追いつきません。おそらく、この場の状況を分かっているのは、キャンベル隊の面々を除けば、アーサー・ゴブレット氏だけです。スパランツァーニも「ジェーン婦人じゃないのか!? どうなっている!? おい、君たち――」と何を命じて良いか分からない様子です。
エドガー:キャンベル隊の目的は何? ゴブレット氏の殺害? それとも捕獲?
GM:身柄の引き渡しを求めていますから、とりあえずは捕獲でしょう。
エドワード:う~ん。
エドガー:難しい局面だよね。エドガー個人としても。
冒険者たちはキャンベル隊と敵対するかどうかで悩みます。彼らの雇い主であるスパランツァーニはアーサー・ゴブレット氏とニューモデル軍の間のトラブルに巻き込まれた第三者であり、本件に関するイニシアチブを持っていないため、最善の決断ができません。
エドガーはオスカー大尉と派閥(氏族)間の因縁があり、アーサー・ゴブレット氏が孤児たちを養っているということに心象を良くしているため、戦いで決着をつけたいという希望があります。しかし、相手はストライディング・スーツ“ベナンドナー”と、護衛のニューモデル軍兵士2人。しかも護衛兵士たちは最新鋭のローテーティング・ハルバード(※ハルバードの斧頭がクロックワークの仕組みで回転する)で武装しています。
エドワードは戦闘ではキャンベル隊に絶対に勝てず、すべてを放り出して逃げてもニューモデル軍から逃げ切れるものではないと踏んでいます。アーサー・ゴブレット氏を引き渡すのが最も被害の少ない解決法だと考えていますが、雇い主のスパランツァーニはそれを絶対に許さないでしょう。
冒険者たちが解決方法を決断できないようなので、ここは――
GM:エドガーは正義の意志判定をしてください。
エドガー:(コロコロ……)失敗。
GM:では、マクドナルド氏族として、キャンベル氏族相手に尻尾を巻くような真似はできませんよ。
エドガー:そうだよね。やるしかない! 我々が勝てば良いだけのことです! 相手は3人、こちらも3人!(※ただしヴァレリィ含む)
エドワード:(笑)
GM:(オスカー大尉)「マクドナルドの山犬が、ひき潰されたくなければ脇に避けていろ!」
エドガー:「このエドガー・マクドナルド、キャンベルにだけは膝を屈することはできない!」
GM:(オスカー大尉)「ならば膝を屈することなく死んでいけ。エドガー・マクドナルド、その名前だけは覚えておく」緊張が高まります。
エドガー:そうだよね。よし!!
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