GM:ブレイズン・ノーズ礼拝堂へは、例によってグリップス軍曹が案内してくれます。すでに扉は修理されていて、当然血痕は拭き取られています。ラドクリフ校長はまだゴードン・ブリトン司祭の後任を見つけられていないので、礼拝はカレッジ教員のうちの司祭に任命されたメンバーによって執り行われています。
エドガー:もう使われているんだ!
GM:殺人事件があったことはカレッジ中に知られていますが、気味が悪いことを除けば、礼拝をするのに支障はないですから。
エドガー:もう大勢の人が出入りしているようなら新たな発見はなさそうだけど、とりあえず痕跡のようなものが見つかるかどうかやってみましょう。
GM:〈知覚〉ロールをどうぞ(エドガーがクリティカル成功)。エドガーは祭壇の周辺で拭き残しの血痕を発見しました。ここで殺人事件があったことは間違いないようですね。
エドワード:礼拝堂はごく普通のものなんだよね?
GM:典型的なカトリック様式のカレッジ・チャペルです。
エドガー:悪魔崇拝がされていた痕跡とかはない?
GM:グリーンウッドがそんな感じのことを言っていましたが、とりあえず見当たりません。歴史あるカレッジですから、礼拝堂で悪魔崇拝が行なわれていれば今まで露見しないはずがありません。
エドガー:そりゃそうか。司祭はどこに住んでいたんだっけ?
GM:この礼拝堂の隣にある宿舎で司祭は寝起きしていました。
エドガー:司祭は未婚だったということでしたよね。「司祭の部屋は調べたのですか?」
GM:(グリップス軍曹)「もちろん調べました。何なら、見てみますか?」軍曹に伴われて入った司祭の私室は非常に簡素なものです。実は王党派の廷臣たちがカレッジに引っ越してきたときに、彼は以前のもっと大きな宿舎から強制的にここへ引っ越しさせられたのです。そのため、ほとんど私物もなく、まさに寝起きするためだけに使っていた感じです。後任が来たらすぐに入居できるように、片づけられてしまっています。現在、この部屋は“元司祭の部屋”というよりは、“新司祭のための空き部屋”です。特に収穫もなく外に出てくると、掃除係がグリップス軍曹に近寄ってきます。彼によると、司祭が亡くなって以来、誰かがこの部屋の中に入り込んでいた形跡があるそうです。
エドワード:「え?」
GM:部屋の中が荒らされているわけではないのですが、物が移動させられていることがありました。それも一度ではなく、複数回そのような侵入があったそうです。何か金目のものがないかを探っているイタズラ者の学生か、コソ泥がいるのではないかと掃除係は疑っています。
エドガー:侵入があったのって、いつのこと?
GM:司祭が死んですぐ(5週間前)のことです。ここ2、3週間はありません。
エドガー:大尉が亡くなったのはいつでしたっけ?
GM:15日前です。
エドガー:一度校長の所へ戻って、話を聞いてみよう。単刀直入に言っちゃいますけど、「司祭が亡くなった後、彼の部屋を調べに来た者がいたのですが、何か心当たりはございますか?」
GM:(ラドクリフ校長)「いや、ない。彼は非常に質素な暮らしをしていたので、金目のものを狙うなら、彼をその対象とするのは見当違いなのではないかな」
エドガー:「この後、ランジワース大尉のお宅へ行ってみようと思うのですが、校長から見て大尉はどのような人物でしたか?」
GM:(ラドクリフ校長)「まじめな男だった。前にも言ったが、医者を志望していたが戦争でそれは叶わず、借金して軍職を買ったのだ」ランジワース大尉の自宅はオックスフォードの中心部にあるのでグリップス軍曹は同行できませんが、住所は教えてもらえます。
GM:教えられたアパートに着くと、未亡人であるヘレン・ランジワースが応対します。夫を失った悲しみに打ちひしがれ、そのショックからまったく立ち直っていない様子です。
エドガー:まずはお悔やみを言います。
GM:ヘレン未亡人はもごもごと返答をしますが、めそめそと泣いていて何を言っているのか分かりません。未亡人の様子から、生活も困窮していることがうかがえます。
エドガー:まあ、そうでしょうね。「ご主人はご病気だったと伺いましたが、医者の見立てはどのようなものだったのですか?」
GM:(ヘレン未亡人)「夫は良い人でした。ああ、彼がいなくなってとても寂しい。とても残念です。最後は、あんなに大切にしていた彼のことを、私はほとんど知りませんでした……彼はひどい病気にかかっていたのです」
エドワード:「いつ頃から調子を崩していたのですか?」
GM:(ヘレン未亡人)「1か月以上前からでしょうか。最初は引きこもりがちになって、仕事以外では書斎に閉じこもるようになりました。その後、まったく仕事に行けなくなって、眠ることも食べることもしなくなりました」
エドガー:「えっ!?」
GM:(ヘレン未亡人)「最後の2、3週間は1度しか外出しませんでした。どこに行くのかたずねたら、小声で“ジェラルド”とつぶやきました」
エドワード:「――ジェラルド?」
エドガー:人名かな?「ジェラルドという名に心当たりは?」
GM:(ヘレン未亡人)「えーと、えーと……」ヘレンに考えを促すには〈影響力〉ロールとか、あるいはお金を上げるとか。
エドガー:なるほど。困窮しているって言っていたもんね。どれくらいが相場なんだろう……とりあえず5シリングで(※5シリング=安アパートの1か月の賃料)。「ご主人が亡くなられて、大変なことと思います」と言って、スッと。
GM:その5シリングでヘレンは思い出したようです(笑)。「翻訳家仲間で、ブレイズン・ノーズ・カレッジの学者だったジェラルド・ヒューズかもしれません」
エドガー:「翻訳?」
エドワード:「そういえば、大尉は元学生だと言っていたな」
GM:ヘレンによると、ランジワース大尉は医学の勉強の他に、外国語の翻訳をして収入を得ていたのだそうです。
エドガー:「ジェラルドさんがどこにお住まいかご存じですか?」
GM:ヘレンは知らないそうです。彼女はジェラルドに会ったこともありません。
エドガー:「出かけたとき、何か持っていった、あるいは持って帰って来たものはありませんでしたか?」
GM:(ヘレン未亡人)「書類か大判の本のようなものを布に包んで持っていって、それを持って帰ってきました」
エドガー:「書斎の中を見せていただくことはできますか?」と5シリングを渡しながら。私もそれほどお金に余裕のある市民ではないのですが(笑)
エドワード:まあ、事件を解決すれば300シリングをもらえますから。
エドガー:必要経費、必要経費。血の涙を流しながら(笑)
GM:ありがたく5シリングをエプロンのポケットに入れてから(笑)、「こちらです」と言ってヘレンは書斎へと案内してくれます。書斎の扉を開ける前に、「実は、夫の生前、3人の強盗が来ました」と彼女は明かします。
一同:「ええっ!?」
GM:(ヘレン未亡人)「夫は弱って抵抗できなかったため、強盗たちは難なく書類や本を持ち去りました。私は寝室で震えていました。彼らは金品には手を付けませんでした。ただ、彼らの1人が夫の書類の一部と、一冊の本を握りしめていました。異様な雰囲気の男たちで、顔を隠し、黒い目をしており、外国人のように見えました」
エドワード:そうなると、何かがあったとしても、持ち去られてしまった可能性が高いですな。
GM:書斎の中は荒らされたままになっています。大尉が書いたであろうメモ書きなどが、部屋中に散らばっています。言語はラテン語、アラビア語、ヘブライ語、ギリシャ語などです。ヘレンによると、もっと書物や原稿があったのですが、そのほとんどを強盗が持ち去ってしまったそうです。
エドガー:落ちている書類や、荒らされた本棚を見ていきますよ。
GM:何枚か書類を拾い上げて見たヴァレリィが(※〈治癒〉技能ロールをして)「これは医学書の翻訳の断片だね」と言います。
エドガー:大尉は医学生だったもんね。まあ、不思議はないか。奥さんに聞いてみますけど「強盗が来たのはジェラルドに会いに行った前? それとも後?」
GM:(ヘレン未亡人)「後です」ヘレンは何か言い出そうかどうか迷って、お金の入ったエプロンのポケットをしきりに叩いています。チャリチャリチャリン☆
エドガー: ……5シリングを渡します(笑)。「何か思い出したことでも?」
GM:ヘレンはハッと何かを思いついたように寝室に走っていって、日記帳を持ってきます。幸運なことに、この日記帳だけは寝室にあったので持ち去られなかったのです。
エドガー:「これは?」
GM:(ヘレン未亡人)「夫の日誌です」
エドワード:「見せてもらっても構わないですか?」
GM:(ヘレン未亡人)「皆さんのお知りになりたいことが書いてあれば良いのですが……」
ジョン・ランジワース大尉の日記の本件に関すると思われる記述は以下の通りです(※日記は一人称で記されていますが、分かりやすく要約します)。
司祭殺害の翌日の夜
ランジワース大尉は自分の行ないが不名誉であることを認めつつ、それを知るのは自分しかいないと記している。自身に取り憑いた何かが原因だと考え、悪魔のシンボルが祭壇にあったことを証拠とし、司祭が悪魔と結託していたと疑っている。大尉は自らを裏切るべきか、それとも妻や名誉を守るために全力を尽くすべきか、葛藤している。
上記の1週間後
大尉は健康を害しながらも、『秘儀書』として知られている恐ろしい魔道書から離れられないでいる。その書物には邪悪な呪文が記されており、司祭がそれを発動したと確信している大尉は、自身の阻止行動を正当化しつつも、書物を破壊しなかったことを後悔している。魔道書を知る人物に会うため、大尉は無理を押して動く決意を固めている。
上記の次の書き込み
ジェラルド・ヒューズの自宅を訪れると、彼は最初混乱し不愉快そうな態度を見せるが、大尉が恐ろしい本について話すと態度を一変させ、興味を示す。ヒューズは情熱的に反応する一方で、その態度が大尉に恐怖を与え、ヒューズは本の所持について大尉を脅そうとする。結果として、大尉はヒューズから助けを得られず、むしろ状況が悪化したため、その場を去った。
大尉が亡くなる2日前の最後の書き込み
時間が経つにつれ、夢がますます恐ろしくなり、夜中の恐怖に怯えながらも、それを引き起こしたであろう魔道書を読むことを、大尉はやめられなかった。悪夢の中で身体的苦痛を感じることもあり、目覚めると汗まみれで高熱と動悸に苦しむこともあった。
夢の中で、大尉は粘着質の虚空に漂いながら、巨大で恐ろしい存在に遭遇する。最初は小さな動きや影を見ていたものの、それらが巨大なクリーチャーの一部であると気づく。その存在は腐敗した肉塊のような姿をしており、無数の目と、舌のような蔓で大尉を包み込み、観察しているように見える。甘ったるい悪臭と嫌悪感に包まれながらも、その視線が自分に向けられていることに気付き、大尉は圧倒的な恐怖に襲われる。
大尉は悪夢に悩まされ、夢の中だけではなく日常生活でも異様な存在を感じ、恐怖と絶望を覚える。“忌まわしい獣”の気配に怯え、その原因が“邪悪の書”を読んでいることにあると大尉は考えている。夢と現実が曖昧になり、極度の疲労と恐怖に苛まれながらも、大尉は魔道書を破棄する決断ができない。最後に、他者への警告としてこの記録を残し、誘惑に抗い、邪悪から自らを守るよう祈っている。
エドワード:司祭が何か儀式をやろうとしたところに大尉が駆けつけて、剣で一突きにして、本を奪って逃走したっていうのが真相か?
エドガー:強盗が来たのはいつ?
GM:ランジワース大尉が死ぬ2日前ですね。日記に最後の書き込みをした後です。
エドガー:だったら、日記に記されている本は奪われてしまっていますね。こうなるとヒューズの居場所か……奥さんは知らないって言っていたよね?
エドワード:ヒューズはカレッジの学者だってことですから、また大学に戻って、知っていそうな人を探してみますか。
エドガー:……この日記に書かれていることが本当なら、事件の真相は分かったよね。“司祭が悪魔崇拝者で、それに気がついた大尉が殺しました”。そういう意味では、もう学園の中に殺人犯はいないってことになります。でもこのまま報告して良いものやら(笑)
エドワード:そこら辺の真実を話すかどうかは別として、やはり全容を解明してから最終報告とした方が良いんじゃない? それとも、中途の状態で報告して、何か情報を聞き出すのが良いのか?
エドガー:司祭が悪魔崇拝のようなことをしていたということに関して、おそらく校長はもう知っているよね。礼拝堂で印を見てしまっているわけだし。でも校長としては、そんなスキャンダルは絶対表に出したくないと思っている。……さすがに、この日記帳って持って帰るわけにはいかないですよね?
GM:チャリチャリチャリ……(※エプロンのポケットを叩く仕草)。
エドガー:ええっ!? 良いの? マジで!? 確かに奥さんとしては背に腹は代えられないか(笑)
GM:故人の日記帳は食べられませんので。田舎と違って都市は自給自足が利きませんからね(笑)
エドガー:「この日記帳はお借りしていってもよろしいでしょうか?」(※5シリングを渡しながら)
GM:(ヘレン未亡人)「もし何かの役に立つのならば、主人も喜ぶでしょう」日記帳を借りて、ブレイズン・ノーズ・カレッジへ戻るということで。……シナリオをよく読んでみたら“ヘレンは自分を助けたいと思ってくれる人などいるとは信じていないため、実際にパーティに直接何かを要求することはない”と書いてありました。ここはGMのアドリブで物語を面白い方向に変更したということで(笑)
一同:(爆笑)
エドガー:20シリングも払っちゃいましたよ! まあ、結果的に彼女が少しでも救われるなら(笑)
エドガー:紹介状を見せながらカレッジに入ります。きっと校長なら、ジェラルド・ヒューズのことを知っていますよね?
GM:知っているでしょう。何なら、ダニエル・グリーンウッドも知っている可能性があります。
エドワード:校長の方が良いんじゃない? 基本的には校長の依頼で我々は動いているわけですから。
GM:了解です。では校長に会いに行くということで。例によってグリップス軍曹が先導して校長室に案内してくれます。(ラドクリフ校長)「どうかね、進捗は?」
エドガー:「ジェラルド・ヒューズという学者がカレッジにいるという話を聞いたのですが……」
エドワード:「ランジワース大尉が亡くなる前に会っていたということでしたので、話を聞きたいと考えているのですが」
GM:(ラドクリフ校長)「ああ、ヒューズね。うむ、変わり者だよ。彼が本件に関わっているということかね?」
エドガー:「大尉の死因と、この事件に、ヒューズが何か関係しているのではないかと考えています」
GM:(ラドクリフ校長)「それだけ言うからには……何か物証でもつかんだのか?」
エドガー:……(笑)
エドワード:校長になら見せてしまっても良いんじゃない? グリーンウッドに見せるのはマズイ気がするけど。
GM:(ラドクリフ校長)「本件についてはなるべく少人数が知るだけに留めておきたいのだ」サミュエル・ラドクリフからすると、ジェラルド・ヒューズが関わっていることは今まで知らなかったし、彼としては不承不承ながらも、何か“重要な日”が控えているので、これ以上不確定要素を増やしたくないのでしょう。
エドガー:じゃあ、日記帳を渡して、詳しいことを話します。
GM:ラドクリフは日記の最後の記述を読んで「なるほど。どうやら何か危険な魔道書が関わっているらしいことは分かった」
エドガー:「ランジワース大尉が司祭を殺したとも読める内容になっています。その理由は、司祭が何か非常におぞましいことに関わっていたためのようです」
GM:(ラドクリフ校長)「なんだか道筋は見えてきた気もする。知っての通り、ブレイズン・ノーズは歴史のある学校で大量の蔵書があるが、分類整理がまったくできていなかった。そこで、その整理を司祭に任せていたのだ」
エドガー:「なるほど! その作業中に――」
GM:(ラドクリフ校長)「――何かを見つけてしまったのかもしれない。大尉の言う『秘儀書』とやらを」ここでラドクリフ校長は言葉を切って、思い切ったように話し始めます。「実はあの日、現場には不穏なものがあった。それはチョークで描かれたシンボルで、私には見覚えはなかったが、サタンへの生け贄のパンフレットに載っていた薄気味悪い話を思いださせるものだった。このことは誰にも知られてはならない。しかし、君たちが捜査するのであれば、真実を知る必要があると思う」校長が最初のときに言い淀んでいたことはこのことだったのでしょう。
エドワード:「それでジェラルド・ヒューズの所へ行きたいのです」
GM:校長はヒューズの家の住所を教えてくれます。ブレイズン・ノーズ・カレッジの近くの立派なタウンハウスが今のヒューズの住所です。
エドガー:もしかして貴族?
GM:いいえ、そんなことはありません。校長によると、ヒューズはどちらかというと貧乏な学者だったとのことです。そう考えると、確かにタウンハウスに住んでいるというのは不自然ですね。
エドガー:「ヒューズさんは変わり者だということですが……?」
GM:(ラドクリフ校長)「うむ。ここしばらくはカレッジでその姿を見かけていないな。能力は折り紙付きなのだが」ヒューズは上級研究員でINTが19あるそうです。
エドガー:それはスゲーな(笑)
ジョン・ランジワース大尉の残した日記の記述と、これまでの調査で判明したことを総合して、冒険者たち(とラドクリフ校長)は以下の推測を立てます。
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ゴードン・ブリトン司祭は蔵書の整理の過程で『秘儀書』を発見し、それに書いてあった儀式を礼拝堂で執行した。
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上記の現場に遭遇したランジワース大尉は、力ずく(剣)で司祭を止め、現場から魔道書を持ち去った。
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大尉の持ち去った魔道書は寝食を忘れて読むことを強制する性質を持つらしい。
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大尉は魔道書についてジェラルド・ヒューズに何かを相談したらしい。その直後、魔道書は強盗によって奪い去られている。
ジェラルド・ヒューズが何かを知っている(魔導書を持っている?)可能性があり、冒険者たちはヒューズの住むタウンハウスへと向かいます。
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