オックスフォードをみまった災厄


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 冒険者たちは、状況を整理しつつダニエル・ラドクリフ校長に報告します。校長はビングリー・ウィルソン参事会員と面識はないものの、その名は知っています。ウィルソンはオックスフォード屈指の裕福な商人で、若い頃の海外旅行で築いた人脈をもとに財を成しました。ただ、学問と商売の違いから、校長も詳しい素性は知りません。
 ジェラルド・ヒューズ邸で襲撃してきた刺客が外国人だったことから、海外とのつながりを持つウィルソンが疑わしくなります。生前のランジワース大尉のアパートを襲った強盗も外国人であり、同一勢力の可能性が高いです。さらに、ヒューズへの翻訳依頼がウィルソン経由だったことを考えると、奪われた『秘儀書』はウィルソンの手にあるかもしれません。


エドガー:ウィルソン参事会員のところへ行ってみますか。場所は分かりますか?
GM:グリップス軍曹にでも聞けば分かりますし、そもそもエドワードも知っています。ウィルソンは町中に立派なタウンハウスを構えています。
エドワード:行くだけは行ってみましょう。謎の外国人の一団でも見つかるかもしれませんから。
GM:ファンタジー世界の王城ではないので、門の前に衛兵が立っているような物々しい様子はありません。部下の商人らしき風体の人たちの出入りは、それなりにあります。-40%の〈知覚〉ロールをしてください。
エドガー:-40%だと、さすがに……(コロコロ)……失敗です。
エドワード:う~ん、失敗ですな。
GM:ではヴァレリィが頑張ってみますか……(コロコロ)……06!
一同:スゲェ!
GM:ヴァレリィが2人の袖を引いて指でさし示した先に、フードを目深にかぶって腰に剣を差した異国風の男が、柱の陰に目立たないように立っているのが見えます。あらためて見てみると、同じような風体の外国人がタウンハウスのあちこちにいて、外をうかがっているのに気づきます。
エドワード:ウィルソン参事会員の方が、外を見張っているのか。
エドガー:「やはり、俺たちを襲ったのはウィルソンの手の者の可能性が高いな」

 冒険者たちはビングリー・ウィルソン参事会員と会見をするか否かを迷います。ウィルソンが会見に同意する材料と、会見で何を聞き出すか(あるいは伝えるか)が問題です。
 冒険者たちはラドクリフ校長の言っていた“重要な日”と悪魔崇拝(あるいは何かの召喚儀式、もしくは『儀式書』そのもの)に間に何か関連があると睨んでいますが、結局どちらも具体的な内容が判明していないため、決め手に欠けます。
 大勝負に出る交渉の手札なしに敵地に乗り込むのは無謀で危険だと考え――


エドガー:「ご決断を」
エドワード:「とりあえず様子を見るしかないかな。こちらの手札が少なすぎる」

 ウィルソン参事会員がどのような人物か知っておきたい気持ちもありましたが、冒険者たちは会談を断念します。それから数日は特に事件もなく過ぎていきます。ウィルソンの屋敷や身辺を嗅ぎまわっても、オックスフォード一の商人に成り上がった人物としての一般的な風評が清濁ともにあるにせよ、特に不自然な評判は聞きません。


ライン

レジナルド・パーキンソン卿GM:ちょっと手詰まり感が漂い始めたある日の午後、レジナルド卿から呼び出しがあります。「急な話なのだが、ブレイズン・ノーズ・カレッジで朗読会が開催される。有名な王党派詩人、ウィリアム・ダヴェナント卿の演出で寸劇のようなものが行なわれるのだ」ウィリアム・ダヴェナント卿を知っているかどうか、〈知識(地域)〉か演劇にまつわる〈芸術〉でロールをしてください。地元のエドワードは+40%をあげましょう(2人とも成功)。ウィリアム・ダヴェナント卿というのは、実在の人物なんですけど、当代の桂冠詩人(※イングランド王家の慶弔時に詩を作る役職)です。しかも国王軍の騎兵としても非常に有名で、3年前のグロスター包囲でナイトの称号を得ている、文武両道の当代きってのスターです。美男子として宮廷でも人気でしたが、梅毒に罹って、現在は鼻がほとんどありません。
一同:ほほ~。
GM:(レジナルド卿)「そのウィリアム卿が朗読と演出をする公演が行なわれるので、君たちにはそれに出席して、進行を見張ってもらいたい」なお、レジナルド卿は公演には出席しませんが、サミュエル・ラドクリフ校長は参加するそうです。
エドガー:これが“重要な日”ってこと? これを内緒にしていたのにはどんな意味が?
GM:(レジナルド卿)「実は、凄いVIPが観劇する。実際には、そのゲストのための公演だ」
エドガー:何となく見えてきた。なるほどね~。
GM:(レジナルド卿)「そのゲストは金色の仮面を着けている。正体を秘密にしておかなければならないので、君たちはそのゲストにはなるべく近づかないように」なお、会場にはサーベルやレイピアといった儀礼的な武器以外は持ち込めないので注意が必要です。
エドガー:え!? グレート・ソードは?
GM:儀礼ではないですね。
エドガー:「なんとか特別な許可は出ませんか?」
GM:レジナルド卿主催じゃないので難しいです。グレート・ソードは明らかに戦争用の武器ですので。小型の武器、銃器ならば〈隠密〉技能で隠して持ち込めます。
エドガー:う~ん、諦めるしかないか。惡一文字(※前回追い剥ぎから奪ったレイピア)を持っていきます。
エドワード:私はデュエリング・ピストルを〈隠密〉で隠す……(コロコロ)……のに失敗しました(泣)
GM:(コロコロ……)なお、ヴァレリィは3本のダガーを隠して持ち込みます。
エドワード:「我々は招待客に扮して警備に当たれば良いのですな」
エドガー:「いやな想像だが……悪魔の召喚をこれにぶつけるつもりなのだろうか? そのやんごとなきゲストを暗殺するために」
エドワード:「そこは定かではないが、どうなんだろう」
エドガー:「そう考えれば、何となく辻褄が合ってくる」あと、《ショゴスを退去させるために》の呪文が書かれたメモですが、エドワードが持っておく? 読むのにロールが必要なんだっけ?
GM:書かれているとおりに読み上げれば良いだけなので、〈言語(アラビア語)〉技能を持っていれば声に出して読むことはできます。呪文として発動するには〈忍耐力〉ロールが必要です。
エドワード〈忍耐力〉は……61%!
エドガー:59%!
GM:ヒーロー・ポイントの残量なども加味してどちらが持つか決めた方が良いですよ。
エドワード:戦闘技能はエドガーの方が高いんだから、私が持っていましょう。こちらからはエドガーに等級2の《刃を鋭くするために》のポーションを渡しておきます。効能としてはダメージ+2、命中+20%です。
エドガー:デカイ!

ライン

GM:皆さんは衣装や仮面を借りて、朗読会の会場となるブレイズン・ノーズの食堂に行きます。会場の外はグリップス軍曹たちが警備を担当するようです。
エドガー:我々は会場の中に入れるんだよね?
ダニエル・グリーンウッドGM:もちろんです。会場にはサミュエル・ラドクリフ校長がいます。彼が主宰という立場になります。まあ、あまり気乗りがしていないような雰囲気でしたよね。あと、ダニエル・グリーンウッドも既に会場にいます。彼もカレッジの重鎮ですから、この場にいて不思議はありません。
エドガー:会場はどんな感じ?
GM:会場となるのは長方形の食堂で、長辺に沿って向かい合うように長テーブルが設えられています。食堂の奥は小さなステージになっていて、その両側にはカーテンが吊るしてあります。おそらく、そこから役者たちが出てくるのでしょう。
エドガー:参加者は何人くらいになりそうですか?
GM:席は30くらいあります。
エドガー:え? そんな小規模?
GM:ウィリアム・ダヴェナント卿の朗読会ともなれば、本来は大きな劇場でやるべきですが――
エドガー:なるほど、スペシャル・ゲストのためだけに開催するのか。参加者の名簿みたいなのは誰が持っているの?
GM:参加者についてはラドクリフ校長が知っています。スペシャル・ゲスト以外は、王党派の廷臣たちです。エドワードなら顔を見たことのある人がいるかもしれません。
エドガー:あの豪商は?
GM:ビングリー・ウィルソンですか? 彼はいません。彼は招待される筋合いがないですから。
エドワード:なるほど。
エドガー:つまり、この場にはやんごとなきお方と王党派のお歴々が一堂に会するというというわけですよね。何か、スゲェ見えてきたな。
モーリス・デ・ヴァーン卿GM:そうこうしていると、「モーリス・デ・ヴァーン卿、ご到着!」という案内係の声がして、会場に軍服を着た、背が高くて恰幅の良い男性が入ってきます。〈知識(地域)〉ロールをしてください。エドワードは+20%を差し上げましょう(コロコロ……2人とも成功)。2人とも知っていますが、モーリス・デ・ヴァーン卿は王党派の廷臣で、軍服を着ていますが軍人ではありません。
エドガー:え? ファッションとか?
GM:正式な軍人ではないのに軍服を着ているという、ちょっとイタイ人として知られています。真偽は分かりませんが、高貴な血を引いているということを鼻にかけている、宮廷の嫌われ者です。プリンス・ルパートから「臆病者!」と面罵されたこともあります。
一同:(笑)
GM:そのモーリス卿が、なぜ、今日ここにいるのかというのは疑問ではありますね。今ここにいる人たちはチケットを購入してきたのではなく、やんごとなき人と同席するに相応しい人として招待されているはずですので。
エドガー:校長に聞いてみます。「モーリス卿は、どのような理由で招待されたのですか?」
GM:(ラドクリフ校長)「招待客は私が決めたわけではないから、分かりかねるな。大部分の招待客と同じく、おそらくウィリアム・ダヴェナント卿の筋で招待されたと思うのだが……」
エドガー:王党派が大部分だということは、グリーンウッド(※長老派)は少数派だよね? 彼は居心地悪そうにしているの?
GM:グリーンウッドは大学の重鎮ですし、宗教の話を持ち出さなければ、特に問題は起こりません。なんなら、彼はモーリス卿と談笑しています。やがて、「本日の主賓がご到着されました!」の声とともに、黄金の仮面を着け、4人の護衛を引きつれた“やんごとなきお方”が入場します。その人物は背格好等から、かなり若く見えます。20歳そこそこでしょう。
エドガー:エドワードは会ったことないの?
GM:仮面を着けていますので、何とも言えません。金色の仮面の男は、当然部屋の奥の上座に着席します。