オックスフォードをみまった災厄


5

 給仕たちが大皿いっぱいのおいしい料理を運んでくる。ステージ・エリアに近いテーブルの端に座っているのは、金色の仮面をつけた男だ。長い金髪を背中に流している。服装はきちんとしているが、威厳があるわけでもなく、特にスタイリッシュでもない。反対側のテーブルには女性グループがいる。冒険者たちは給仕の1人に、金色の仮面の男が座っている長いテーブルのもう一方の端に座るように案内される。


GM:招待客たちは食事をして歓談しています。金色の仮面の男の隣にはラドクリフ校長が座って、相手をしているようです。
エドガー:何かがあった場合、俺たちが守らなければならないのは、金色の仮面の男と、あとは校長だよね。狙われるとしたら、2人のいる一角ってことか。
ウィリアム・ダヴェナント卿

 食事が一段落すると、皿は片づけられる。給仕たちはホールの中に小さなスペースを設け、そこにワインの入ったフラスコを数本置き、そのワインで全員を満腹にさせる。そして、もう少し食べたいという人のために、数皿の軽食が用意される。こうして飲食物が確保されると、扉が閉じられ、小さな舞台を照らすランタンを除いてはランタンの灯が消され、ウィリアム・ダヴェナント卿が大股で歩み出てきて、その朗々とした、それでいて蜂蜜のようなトーンの声で、観客の注目を要求する。


エドガー:正面入口は外からグリップス軍曹たちが固めているはずなので、もし敵が来るとしたらステージの方向からだよね。金色の仮面のお方の護衛の人たちに、それとなく注意を促しておきます。
GM:(護衛)「なるほど、警戒しておきましょう。万が一、何かがありましたら、連携して事に当たりましょう」護衛たちは最初こそ気を張りつめていたようですが、金色の仮面の男に「ノリが悪いな~。もっとリラックスしなよ!」と言われてワインを勧められ、少し飲んで陽気になっているようです(笑)
エドガー:ダメでしょ!(笑)
GM:(ラドクリフ校長)「それでは、本日の目玉である朗読会のナレーターをしていただくウィリアム・ダヴェナント卿をご紹介しましょう!」ウィリアム卿はステージ上で軽くお辞儀をして「ただいまご紹介にあずかりました、ウィリアム・ダヴェナントであります」と挨拶します。
エドガー:良い声ですか?
GM:“朗々とした、それでいて蜂蜜のようなトーンの声”です。(ダヴェナント)「では、始めさせていただきます」彼は本を取り出すと、それを読み上げ始めます。テーマは悲喜劇です。

 脚本は現在の深い政治問題を避け、愛や不倫を考察するものだ。ナレーターは魅力的で叙情的に語り、その声は心地よく催眠術のようだ。彼がシーンを紹介するたび、役者たちは小さな舞台で踊り、ギリシャ神話やバッカス祭を再現する。淫らな欲望が悲劇を生む教訓は変わらない。役者たちが跳ね回り、ワインが手渡される中、皆がパフォーマンスを楽しんでいる。

金色の仮面の男
GM:金色の仮面のお方は「いいぞ!」と合の手を入れたり、大声で笑ったりしています。ただし、その合の手は「そこじゃないでしょ?」というタイミングで入ります。かなり、きこしめしてしまっているようです。観劇のマナーとしてはちょっと――
エドガー:ですよね。
GM:しかし主賓ですので、誰も口を挟めません。ダヴェナントも声がかかるたびに控えめに会釈を返します。金色の仮面のお方が「今のどうだよ!?」と護衛の1人に話しかけると、護衛は「ハハ……先が気になりますな(汗)」といたたまれない様子です。

 ナレーターは風変わりな小話を語っている。ヤブ医者とその奇妙な治療法を嘲笑するコミック作品だ。彼は、“愛を強制するための偽りの本質”と、債権者から逃れたいときに口にする奇妙な戯言詩を含む訓令を読む。その詩は長くて解読不能で、「テケリ=リ、テケリ=リ」という奇妙なフレーズが1行おきに繰り返される。


エドガー:なんか、オカシイでしょ! お~い!
GM:しかし、ここで何かオカシイことに気づくためには〈知識(クトゥルー神話)〉ロールが必要になるのです。〈知識(クトゥルー神話)〉技能は上級技能なので、持っていなければロールをすることはできません。
一同:(苦笑)
GM:そんなわけで、シナリオで指示される「失敗すると」の展開に入っていきます(笑)
エドガー:くぅ~、仕方ない(笑)

 ナレーターの声はますます大きくなり、部屋全体が振動しているかのようだ。ワインのフラスコがテーブルから転げ落ち、耳鳴りがし始め、不自然な光が辺り一面で点滅する。役者たちは舞台を去り、東洋風の衣装を着た半ダースの男たちに入れ替わる。奇妙な風が部屋中を吹き荒れているようだ。


エドガー:ヤバイ。何かが始まっている。ヴァレリィに言って、会場の出入り口の扉を開いてもらうことはできない? そうすれば外のグリップス軍曹たちに応援を頼める。
GM:なるほど。戦闘ラウンドが始まれば、指示は出せます。

 閃光とともに空気が弾け、部屋の中央であり得ない現象が起こる。巨大な無定形の塊が明滅し、合体し、形成されていく。テーブルの間の空間は、熱いタールのようににじみ出る巨大な獣に占拠され、その無数の口の一つが客をのんびりと飲み込み、奇妙な蔓が別の犠牲者に絡みつく。不運な客の何人かは獣の下敷きになり消えたようだ。皆が唖然とする中、詩人が詠唱を再開すると、脇を固める男たち以外の全員が悲鳴を上げた。


GM:まずは、恐怖判定です。-40%で〈忍耐力〉ロールをお願いします。
エドガー:よっしゃ、成功!!
エドワード:(コロコロ……)かぁぁ~、失敗。
ショゴスGM:ヴァレリィは失敗。失敗した人は2D6の正気度ポイントを失います。『ネクロノミコン』の著者であるアブドゥル・アルハザードですら実在を認めなかった、文字通り悪夢の存在ですからね。張り切っていきましょう。ヴァレリィは……(コロコロ)……10! なんと、正気度に初ダメージですよ! 精神的防御を引いて、2ポイント減りました。(ヴァレリィ)「あわわわわ」
エドガー:「大丈夫! まだ大丈夫だから!」(笑)
GM:(ヴァレリィ)「……神はいない!」彼女の残り正気度ポイントは15になってしまいました……。
エドガー:充分だろ(笑)
エドワード:(コロコロ……)ピンゾロ!
一同:ヒュ~……。
エドワード:危うく戦闘から除外されるところでした。
エドガー:戦闘というか、シナリオから(笑)
GM:阿鼻叫喚の会場の中、モーリス・デ・ヴァーン卿が詩人の脇を固める6人に「詠唱の邪魔をさせるな!」と指示を出します。
エドガー:グリーンウッドは? ヤバイんじゃないの?
GM:グリーンウッドは1歩退いて「やれ! やってしまえ、ショゴス!!」と指示を出します(笑)
エドガー:……コイツら(笑)

第1戦闘ラウンド
 朗読会の会場に出現した巨獣ショゴスから、冒険者たちは金色の仮面の男(とラドクリフ校長)を守らなければなりません。ただし、冒険者たちには切り札の《ショゴスを退去させるために》の呪文があります。


エドワード:とりあえず、まずはショゴスをどうにかしないといけないよね。
エドガー:ショゴスは戦闘で倒すものじゃないと思うんだよね。
エドワード:退去のメモを読みます。これは呪文扱い?
GM:そうです。呪文扱いなので、最初に行動するのはエドワードです(※武器や銃器を使った戦闘はDEXをもとに行動順が決定され、魔法を使う場合はINTをもとに行動順が決定されます)。メモを読むことで発動されるのは《ショゴスを退去させるために》という等級1の呪文なので、1ラウンドの詠唱が必要になります。つまり、次のラウンドのエドワードの行動時に呪文発動判定です。
エドワード:では呪文を唱え始めますよ。
エドガー:ショゴスや連中が何をするのか分からないので、このラウンドは行動を遅らせます。
ヴァレリィ・カプランGM:ヴァレリィは出入口の扉を開けに行きますが……ガチャガチャッ!(ヴァレリィ)「開かない! 開かないよ~!」
エドガー:え!? 外から物理的に開けられないようにしているっていうこと!?
GM:(ヴァレリィ)「グリップス軍曹! おい、グリップス!!」とヴァレリィは扉をドンドンと叩きますが、開かないようです。何やら、外から戦闘の音が聞こえます。
エドワード:そういうことか!
エドガー:なるほどね……。外からの援軍は期待できない、と。

 少々ワインを飲んでしまっていた護衛たちですが、金色の仮面の男を守るように前に出ます。
 ウィリアム・ダヴェナント卿は朗読を続け、外国人の傭兵たちは舞台上で彼を守るように取り巻きます。
 そしてショゴスは――


GM:ショゴスは金色の仮面の男とその護衛の集団に向かって体当たりをかまします。(コロコロ……)護衛が2人ほど11D6くらいのダメージを食らって壁まで吹っ飛んで行きました。行動順を遅らせていたエドガーの番です。
エドガー:これって、戦って良いのかな? 戦うものなの?
エドワード:他に何かできるのなら良いですが、今できるのは攻撃、移動、リアクションくらいでしょ。
GM:今やらずにいつやるかってことです。ラドクリフ校長も「ちゃんと仕事ぶりをレジナルド卿に報告するからな!!」と叫んでいます(笑)
エドガー:やりましょう(笑)。やるしかない!“全力攻撃”(※リアクションを失うが、命中に-20%を受けて2回攻撃できる)で行きます。(コロコロ……)2回とも命中です。
GM:ショゴスは受け流しも回避もしませんので、2回ヒットです。ダメージはいくつですか?
エドガー:1D8+1D6+2です。
GM:では4ダメージを2回食らいました。
エドガー:ああ! 前にもそんな奴いたね(※#1の美しき民)
GM:なお、ぶよぶよとした体についた傷口がふさがって、ラウンドの最後に……(コロコロ)……3ポイントほど耐久力が回復しています。
一同:(爆笑)
エドガー:「コイツ、治ってやがる!」絶望的な表情を浮かべます(笑)
GM:ショゴスは今までの比じゃないヤバさですよ。希望の光が見えませんからね(笑)

第2戦闘ラウンド


GM:エドワードは呪文を使いますよね? 呪文を読み上げながら〈忍耐力〉ロールに成功すれば発動できます。
エドガー:頼むーーーーー!
エドワード:61%か……(コロコロ)……53! OK、OK、OK!
GM:では1D3をロールしてください。
エドワード:(コロコロ)……1!! さっきから1ばかり(笑)
エドガー:いや、ここで1ばかりは最高ですよ(笑)
GM:次のラウンド(1ラウンド後)にショゴスは退散するはずです。
エドガー:このラウンドは“全力防御”します。ここを生き延びれば、何とかなる! 移動して、金色の仮面のお方と校長を守ろうとします。
GM:ヴァレリィは……ガチャガチャと回していたドアノブを放して、鬼気迫る顔で振り向いてナイフを抜きます。(ヴァレリィ)「ヤルしかねェ。ヤッてやるぁぁぁ!」
外国人傭兵エドガー:「ショゴスは放っておけ!」と一応言っておきます(笑)

 4人から2人に減っても、護衛たちは金色の仮面の男を守るために立ちはだかります。金色の仮面の男は情けない悲鳴を上げて、頭を抱えてうずくまるだけです。ショゴスは再び体当たりをしますが、護衛たちはかろうじて回避し、食堂の床に大きな穴が開いただけでした。

第3戦闘ラウンド


GM:ショゴスの姿がゆらゆらと揺れて、パッとその姿が消えました。それを見て、ウィリアム・ダヴェナント卿、モーリス卿、グリーンウッドが「ああ! ショゴスが!」と絶望の声を上げ、その後皆さんを睨むと、「やれーーーーーっ!」と外人傭兵たちに向かって叫びます。

 その後、第6戦闘ラウンドまで戦闘は続きますが、計画の失敗を悟ったウィリアム・ダヴェナント卿、モーリス・デ・ヴァーン卿、ダニエル・グリーンウッド、生き残った2人の外国人の傭兵たちは、追撃を振り切って逃げて行きました。