GM:3日目、6月19日(火曜日)の朝となります。皆さんは雷と雨の音で目を覚まします。外は嵐です。空は暗く、バケツの底が抜けたような土砂降りです。雨くらいで休みになるわけもなく、ジョシュアたち村住みの使用人たちは既にそろって朝食の準備を終えています。ウィリアムの体調は当てにならないので、ブリンドル夫人やレベッカたちが朝食の給仕を開始します。
エドワード:館の中で調べていないのは、鍵のかかった2階の書斎だけなので、どうしようかねぇ。
エドガー:まずはウィリアムと話がしたいので、彼が起きてくるのを待ちましょう。
GM:ウィリアムは10時頃に食堂に現れます。服の着こなしがだらしなく、眠いのか何なのか、ぼーっとしています。
エドガー:ウィリアムに確実に伝えなくてはならないことは、ロジャー・アイルランドを殺害したのは密猟者とは思えないこと、2階の書斎の扉の鍵は見つからなかったこと、でも使われた形跡はあるので誰かが持っている可能性があること。扉については、可能性は低いけど鍵を探し続けるのか、あるいは扉を壊してでも開けて良いのかどうか。
GM:そのように話しかけても、ウィリアムは気もなくうなずいたり、「ああ」と生返事をしたりするだけで上の空です。
一同:「……?」
エドガー:……様子はどうですか? 睡眠不足とか、朝は弱いとかのレベルじゃない?
エドワード:友人のロジャーが亡くなってショックを引きずっているとか?
GM:少なくとも、一昨日、皆さんを出迎えた時の彼とは明らかに違います。病弱ではありますが、意識自体ははっきりとしていたはずです。ブリンドル夫人は「旦那様、大丈夫ですか?」と心配そうに寄り添い、水の入ったコップを差し出しますが、ウィリアムはそれを受け取らないどころか、目を向けることさえありません。
エドガー:ブリンドル夫妻はウィリアムから信頼されているって話だったよね?
エドワード:うん。
GM:その様子にブリンドル夫妻は顔を見合わせて困惑の表情を浮かべています。その間にも、リゼットやレベッカが入れ代わり立ち代わり食堂に入ってきて、皿を下げたり飲みものを交換したりしています。ここで〈知覚〉ロールをしてください。
エドガー&ジョン:成功!
エドワード:……失敗。
GM:エドワード以外の2人は、リゼットがウィリアムの身の回りの片づけをしているときに、彼の耳元で小声で何かを言っていることに気づきました。
エドガー:その時のウィリアムの反応は?
GM:特に反応なしです。ぼーっとしたままです。二言三言何かを言った後、リゼットは仕事を続けます。
エドガー:リゼットに話しかけますけど、「ウィリアムはどうしてしまったのだろう?」
GM:(リゼット)「どうしてしまったのでしょうか、ねぇ?」私には分からないというように、首を振りながら仕事を続けます。ブリンドル夫妻は「飲みものがダメなら乾燥果物やスープでどうだ」と色々なものを持ってくるのですが、ウィリアムはまったく興味を示しません。すこし手を上げて拒絶の意思を見せるくらいです。
エドガー:こういう症状に関する知識って何かない?
GM:精神医学的なものが発達していない時代なので……“体液のバランスが崩れている”みたいな診断になるのでしょう。
エドガー:それって食べ物が原因だったりするの?
GM:いいえ、惑星の位置とかですね、四体液のバランスの崩れを生じさせるのは。何かすごく複雑な形で影響を与えるらしいので、ガレノス医師とかの専門家の見立てが必要になってきます。ヴァレリィ(※パラセルス医師)は専門外なので肩をすくめます。とりあえず、このトリガーを引いたのは間違いなくロジャーの死なので――
エドガー:ショックを受けている状態と考えるのが自然ってことか。ヴァレリィに何かできることはないの?
GM:(ヴァレリィ)「原因は明らか(=ロジャーの死)なので、Time is medicine(時間が薬)かなぁ」
エドガー:「命に別状はないということだよな?」
GM:(ヴァレリィ)「もともと病弱でもあったので、ショックを受けて一時的に元気をなくしているのかにゃ~」
エドガー:「そういうことなら、ベッドで休んでいてもらうしかない」
ジョン:「でも、食わなくては回復しないと思うのだがな~」
GM:その通りなので、ブリンドル夫妻が色々と手を尽くしているのですが、すべて拒絶されてしまっている状況です。
エドワード:「困ったねぇ」
GM:甲斐甲斐しく世話を焼こうとしていたブリンドル夫人の横をリゼットがすり抜けようとしたときに少し体が触れてしまって、ブリンドル夫人は手に持っていたスープ用の銀製のお玉を床に落としてしまいます。
エドワード:ありゃ。
GM:リゼットは「あっ、と。ごめんなさい」と夫人に謝るのですが、突然、ウィリアムが両手で食卓を「バーン!」と叩いて、勢い良く立ち上がります。
一同:「は? え?」
GM:ウィリアムは床に落ちた銀のお玉を指さして、「お前、それを盗もうとしたのだろう!?」とブリンドル夫人を非難し始めます。
エドガー:ブリンドル夫人を?
GM:もちろん夫人は「え!? いえ、そんなことはいたしません!」と弁解をするのですが、ウィリアムは目の前にあった皿をブリンドル夫人に投げつけ、「お前が盗人だな!?」と言ってテーブルナイフを夫人に向けます。
ジョン:! 後ろから羽交い絞めにします。
GM:〈格闘〉の対抗ロールになって……(〈格闘〉にジョンは成功、ウィリアムは失敗)……“抑え込み”に成功した。
ジョン:「落ち着いてください!」ウィリアムの友人であるエドワードに何とかしてくれるように合図を送ります。
エドワード:「ウィリアム、落ち着け!」と駆け寄ります。
エドガー:場を収めるために、ブリンドル夫人には「とりあえず、下がって!」と部屋から出ていくように指示します。
GM:食堂からブリンドル夫人が姿を消すと、ウィリアムは肩で息をしながらも平静を取り戻します。ドサリと椅子に座り込むと、「盗人を館からすぐに追い出せ」とジョシュアに命じます。「もし盗人夫婦が再び僕の土地に足を踏み入れるようなことがあれば、保安官を呼んで、すぐにでも逮捕させる。そのように伝えろ」ジョシュアは「……そのように」と返事をすると、リゼットたちを連れて食堂から出ていきます。〈知覚〉ロールをしてください。
エドガー&ジョン:成功!
エドワード:……失敗。
GM:成功した人は、食堂を出ていくリゼットが薄く笑みを浮かべて、ちらりとウィリアムを盗み見ることに気づきます。しばらくするとウィリアムは「……疲れた」と言って、レベッカに支えられながら自室へ引き上げます。
エドワード:〈知覚〉ロールに失敗ばかりしているのでアレなんだけど、2人はリゼットがウィリアムに囁いたり、去り際に盗み見たりしているのを見て、「怪しいなぁ」と思っているわけ?
エドガー:怪しいとは思っているので、その意見については共有しておきます。
エドワード:食堂から出ていくウィリアムに「一体どうしたというんだ?」と声をかけます。
GM:(ウィリアム)「あのような盗人夫妻を雇っていたとは思いもしなかった。ロジャーの紹介だから安心できる者たちだと思っていたのに……」
エドガー:ぼーっとしていた時とは違う感じ? 正気を失っている感じ?
GM:この一連のイベントを見て、感じた通りです。別に技能ロールをするまでもなく、見た通りのことが起きました。さっきまでのウィリアムは、少なくとも皆さんの知る彼とは違って見えます。正気を失っていると感じたのなら、感じた通りです。
エドワード:常軌を逸しているのは間違いないでしょう。
エドガー:ロジャーが死んだからって、ここまでになる?
エドワード:……いや、ならんでしょうなぁ。
エドガー:戦争に行っていた騎兵だったのですから、人の生き死にくらいでここまでなるのはおかしいよね。……リゼット、魔女なんじゃない?

GM:土砂降りの中、ブリンドル夫妻は館から追い出されます。
エドガー:「せめて雨が止むまでは、待ってあげられないのか?」
GM:(ジョシュア)「旦那様の指示です……雨ごときで人は死にませんよ」
ジョン:ブリンドル夫妻の行き先としては紹介者のロジャーのところくらいしかないと思うので、雨の中ですが、私が夫妻を慰めながら同行します。
エドガー:殺人事件が起きているんだから、それはダメじゃない?
ジョン:いえ、それならなおさらブリンドル夫妻だけで行かせるわけにはいかないですよ。私は農民出身なので、貴族に虐げられる弱者を放っておくことはできません。
GM:雨が降って視界が悪いので、移動はかなり制限されます。リディエートまで行って帰ってくると、夜の10時くらいになるけど良い?
ジョン:わかりました。今日1日をかけるつもりで往復します。
GM:OKです。粗末な雨具くらいは貸してくれます。領主から退去を命じられたので、ブリンドル夫妻は館を出ていきます。
エドガー:出ていくのなら夫妻に聞いちゃいますけど、「この村に何かおかしいところはなかったか?」
GM:(ブリンドル夫人)「私たちは来てから間もないですが、特に他の場所と変わった様子はありませんでした」
偏執狂(笑)の冒険者たちはどうしても館内に敵を見つけたいため、館を出ていこうとするブリンドル夫妻に微に入り細を穿って異変を聞き出そうとします。しかし、昨日、ロジャー・アイルランドが死ぬまでは、ジョシュアをはじめとした旧来の使用人たちともそれなりに上手くやって来たというのが夫妻の回答です。「旦那様のことをお願いします」と頭を下げて、ブリンドル夫妻はジョンに伴われて、雨の中へと去って行きました。
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