黒い石板と悪夢(その一)
キーパー:石板のある第一研究室には数名の研究員がいますが、別に石板にかかりっきりになっているということはありません。むしろ、正体不明の異星文明の遺物に関して、彼らは門外漢ですので。
ジョン:<言語学>なんか、専門中の専門だからねぇ。「知らん」となれば、まったく分からんでしょう。正直、石板を見に来ても、「私に何をしろというのだ」って感じですが(笑)
キーパー:石板は50cm四方くらいの大きさの、黒い石の板です。
アンドリュー:石板は自然石という感じなの? それとも、もっと削り出してあるような感じ?
キーパー:自然石ではないでしょう。文字を刻み込むために、加工されたと思しきものです。黒い石で、半透明といいますか、少し透き通っているようです。
アンドリュー:黒水晶的な感じか?
マーク:ほほ〜ん。
キーパー:石板の表面には、見たこともない文字が彫り込んであります。楔形文字に似ているような感じですが、より混沌として複雑です。砂地に埋もれていたのを発見されたため、比較的保存状態は良好です。
アンドリュー:石板の形はかっちりと保存されているの? どこかが欠けていたり、丸まってしまっていたりはしている?
キーパー:いいえ、多少の擦過痕はありますが、完全な保存状態です。
アンドリュー:材質とかは分からないかな?
キーパー:<地質学>技能とかで調べられますよ。
マーク:お? 出番ですな。……と思ったら、<地質学>なんか取っていませんでした。
キーパー:(全員初期値で振ってみるが、成功者は無し)まぁ、石だな、と。
ジョン:彫り込みの角度とかを観察してみますけど、まったく磨滅はない? 風化の後は見られない?
キーパー:そうだね。
アンドリュー:ふ〜ん。
キーパー:石板は砂地にほぼ完全に埋まっていたそうです。たまたま何かの拍子に、石板の一角が地表の上に顔をのぞかせたタイミングで発見されたようですな。前日までは何もなかった場所に、風か何かの作用で砂地の地形が変わって、ぽつんと顔をのぞかせたところを巡回中の研究員たちが見つけたのです。発見に立ち会ったポルンガ所長は「想定外デス」と言ったとか。
アンドリュー:「発見された場所では、他に何か見つからなかったのですか?」
キーパー:(ポルンガ博士)「そうなのです。不思議なことに、この石板だけがぽつんと見つかったのです。しかし、他にも石板が見つかれば文字解読の助けとなるかもしれないので、サマセット博士たちは発見現場へと行ったのかもしれません」
アンドリュー:「石板発見場所の映像とか、地図データは見せていただくことは可能ですか?」
キーパー:(ポルンガ博士)「もちろんです」 ということで見せてもらえます。研究所の周辺はいくつかの峡谷がありますが、地面は砂地で、かなり不毛な場所です。企業にとって価値がないのも頷けます。言うまでもなく、この石板の由来となるような遺跡は発見されていません。
アンドリュー:「サマセット博士が残していった記録データ的なものはありますか?」
キーパー:(ポルンガ博士)「サマセット博士一行は石板をざっと調べると、早々に現場に向かってしまったので、記録データなどはほとんどないのです」
マーク:「彼女たちは石板をほとんど調べなかったのですか?」
キーパー:(ポルンガ博士)「石板の材質などについてはまったく調べようとはしませんでした。刻まれた文字が読めるか否かを一目で判断して、読めないと分かるとサンプル採取の可能性を求めて、発見現場へ急いだのではないでしょうか」
アンドリュー:「文字について、彼女が何かコメントをしているのを聞いた人はいますか?」
キーパー:(ポルンガ博士)「とりあえず、未知の言語であるとは言っていました」
ジョン:「サマセット博士たちはこちらのATVを借りて現場へ向かったのですか?」
キーパー:(ポルンガ博士)「いえ、自前のATVで向かいましたよ。そのATVも見つかっていませんが、轍が現場へ向かっていたのは確認できています」
アンドリュー:「その後、忽然と消えてしまった……。捜索に参加したのは誰ですか?」
キーパー:ほとんどすべての研究員、保安隊員が、交代で参加しました。参加していないのは、カウンセラーのニコルくらいですな。
マーク:手がかりらしいものは何もないのか。
アンドリュー:うん。聞く限りではね。「とりあえず現場百遍と言うし、現地に行ってみるか」
ジョン:「分かりました、ボス」
キーパー:しかし時間はそろそろ夜なのです。(ポルンガ博士)「現場調査は明日にしてはいかがでしょう? もし良ければ、研究員のトリンを同行させますが」 トリンは石板の発見者の一人です。
アンドリュー:「そうですね。発見者に来ていただけると助かります。では、現場には明日向かいます」 使用されていないプライベート・ルームに電源を供給してもらって、そこで各自休むことにしましょう。
アンドリュー:インフルエンザが流行っているということなので、手洗い、うがいをしっかりとして寝ます。
ジョン:トレーニングジムでひと汗流してから寝ます。
キーパー:皆さん思い思いに就寝するわけですが、夢を見ます。夢に見る風景は、どうやらアルファ・ケンタウリのような気がします。
それは岩場にぽつんと建つ石碑だった。八角形をしていて、天頂部は鈍く尖っている。黒く半透明な材質は、石なのか金属なのか判然としない。基部から頂部に向けて、螺旋を描くように文字らしきものが刻まれている。
気が付くと、無数の影が集まって、石碑を囲んで伏し拝んでいる。おそらく影たちは声高に祈りを捧げているのだろうが、その声はあなたの耳には届かない。
キーパー:夢から言い知れぬ恐怖を感じますので、正気度ロールをしてください。(ジョンのみ成功)成功した人は1ポイント喪失、失敗したら1D3ポイント、正気度喪失です(アンドリューが1ポイント、マークは3ポイント減りました)。全員、冷や汗をかいて、はっと目を覚ましました。
ジョン:石碑に彫られていた文字は、石板の文字と同じものですか?
キーパー:夢なのではっきりとは見えませんでしたが、直感で同じ文字だったと確信できます。しかも、なんだか材質も似ていたようです。
アンドリュー:というところで朝になりますか。
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