名もなき峡谷にて
キーパー:ATVの軌道痕をたどっていけば、容易に追跡することは可能です。一時間ほど砂地を行った後、轍は前方の岩でできた峡谷へと入って行っているようです。
マーク:来たことのない峡谷ですね?
キーパー:石板発見現場とは全く方向が違いますからね。ただし、なぜか既視感にとらわれます。
ジョン:……夢だ。
アンドリュー:夢で見た碑のある岩山か?
キーパー:峡谷の両側の岩壁は10メートルくらいの高さがあります。前方は行き止まりとなっていて、そこはほぼ円形の広場になっているようです。広場の入り口付近にATVが二台停められています。
ジョン:周囲は完全に崖?
キーパー:10メートルくらいの高さなので、上ったり下りたりができないほどではありません。挑戦するのは現実的ではない、と言うほどの高さではありません。
アンドリュー:時間をかければ登れるわけか。
キーパー:峡谷の突き当たり辺りに、八角形の黒の碑が立っています。夢で見たのとそっくりのものです。峡谷の広場内はATVのヘッドライトで煌々と照らされていて、碑の前にR-38Y研究所の研究員たちがいます。碑の傍には一本の杭が打込まれていて、誰かが縛り付けられているような感じです。広場への入り口は研究員たちが乗って来たATVで塞がれていますので、碑前までATVを乗りつけるには強行突破が必要です。
ジョン:そういうことなら、ATVから降りて近づいて、研究所のATVの影から状況を伺います。
アンドリュー:何やっているんだ?
キーパー:人影を数えてみると、どうやら研究所で死んでいた人間以外はこの場に揃っているようです(※8人)。彼らは、どうも詩の朗読をしているみたいです。
マーク:んん?
キーパー:碑の前に立つポルンガ所長が詩の一節を朗読し、残りの職員たちが声を合わせてそれを復唱しています。
人は云う、超古代(ふるきよ)の悍ましきものども未だ
世界の忘れられし隈々に秘むと、
そして<門>は未だ闢き、運められし夜に
地獄に禁らわれのものどもを解き放つと。
ジョン:その詩は我々の知っているものですか?
キーパー:聞いたことはありませんなぁ。しかし何を言っているかは分かります。英語の詩です。しかも、ポルンガ所長は本を持っています。紙の冊子です。ポルンガはその冊子を片手に持って読み上げているようです。
アンドリュー:ほうほうほう。それは珍しい。
キーパー:「一家に8台kindle」と言われるこの時代に、紙の冊子は珍重です。ちなみに半裸のニコルが、夢の中に登場した女のように、トランス状態で身をくねらせながら、ポルンガの振るう鞭を受けています。皆さんの見た夢とは細部が若干違いますが――
アンドリュー:――ほぼ同じ状況が再現されているわけね。
ジョン:私は武装している人間をチェックします。
キーパー:武装しているのはボニータと、もう一人の保安要員(※マクダニエル)です。二人とも肩にライフルを担いでいます。杭に縛り付けられているのは、下着姿に白衣というマニアックな格好のレイチェルです。
マーク:マニアックだ。
アンドリュー:マニアックだ。
マーク:今のところ、彼らはこちらには気づいていないんだよね?
キーパー:気づいた様子はありません。
アンドリュー:崖を登って、杭の近くまで近づいて、そこから飛び降りるというというのは考えられんな。第一、無事には飛び降りられそうにない。
ジョン:でも、レイチェルの確保はその方がし易いですよ。
アンドリュー:ん〜、そうか。別に儀式を阻止するのが任務ではなくて、レイチェルを生きたまま連れ帰るのが任務だからな。
ジョン:ただ、レイチェルを確保して、退路を確保するのは厳しいですけどね。
マーク:格好良く登場しても、退路なし(笑)
アンドリュー:レイチェルの近くの崖っていうのは、降りられそうなの?
キーパー:断崖と言うよりも急な斜面になっていますので、降りることは可能でしょう。ゲーム的に言うと、無事に登り降りするには<登攀>ロールが必要です。
マーク:離れた場所から銃を撃って、それに気を取られている間に背後から崖をバッと飛び下りて、レイチェルを確保!
ジョン:実際、私がここにいて銃を撃つというアイデアは悪くないですよ。
アンドリュー:まぁねぇ。
マーク:銃で気を引きつつ、その隙に我らが<登攀>でスタッと崖を飛び下りる、と。
アンドリュー:そんな華麗な身のこなしが我々にできるかと言われると、そんなことはないので(笑)
マーク:(笑)。しかし<登攀>は40%あるので、<地上車輛>05%の強行突破に賭けるよりも確率は高いですよ。
ジョン:ゲームなので、面白い作戦で行くのもアリだと思いますよ(笑)
アンドリュー:ではジョンには銃で牽制してもらって、我々がモソモソと崖から降りてレイチェルを確保するしかないか。
マーク:その線しかないか。しまったなぁ、あまりにも科学者然とした技能に振りすぎてしまったわ(笑)
アンドリュー:俺もサラリーマンだと思って作ったから(笑)
キーパー:ゲーム的に言っておきますと、崖の上から斜面を滑り降りるには2回の<登攀>ロールが必要です。1回目で失敗すると1D8ダメージ、2回目で失敗すると1D4ダメージです。いずれにせよ、失敗すると転倒した状態で峡谷の床に転げ落ちます。成功すれば立ったまま降り立って、すぐに行動に移れます。降り立った時の決めポーズは自由に決めてくださって構いません。
マーク:(笑)
キーパー:なお、登る時の<登攀>ロールに失敗すると、1D3ポイントの軽傷を負います。ただし、ATVの屋根伝いに登れば良いので、<登攀>の2倍ロールで構いません。
アンドリュー:「では先生、行きますか」
マーク:「耐久力は無駄に12もあるから、少しくらいの転倒なら大丈夫だよ」
作戦はアンドリューとマーク博士が崖の上から峡谷内の広場の突き当り、黒の碑の背後まで進み、配置に着いたらATVの陰からジョンが磁気ライフルで狙撃。混乱の中、レイチェルを救出して、崖の上へ逃げ去るというもの。
キーパー:ではまず崖の上に昇ってください。<登攀>×2ロール(二人とも成功率は80%)。
アンドリュー:(コロコロ)OK!
マーク:(コロコロ)……これは90という奴かな? 1ポイント、かすり傷ですな。
キーパー:無傷というわけにはいきませんでしたが、崖の上には到達しました。崖の上を走って行くのは問題ありません。
アンドリュー:走りながらできるだけ様子をうかがうけど、レイチェルの意識はありそうなの?
キーパー:意識はなさそうです。
アンドリュー:意識ないのか。でもその方が上手くいきそうか。
マーク:準備ができたらジョンに「こっちの配置、完了!」と合図します。
ジョン:連絡が来たら狙いをつけていた副長(※ボニータ)を撃ちます。ダメージは腹部に10点。
キーパー:腹部に部位耐久力の二倍以上のダメージだから……ボニータ、意識を失いました。
ジョン:よし!
マーク:副長が倒れたのを見て、他の研究員たちの様子はどうですか?
キーパー:ぴたりと動きを止めて、「何が起こった!?」的な反応です。
マーク:このラウンドで行く? もう一人保安要員は残っているけど。
アンドリュー:それはジョンを信じていくしかないでしょう。この1ラウンドがレイチェルの生死を分けるような気がする。
マーク:分かりました。
キーパー:では崖を滑り降りる判定です。<登攀>ロールをどうぞ。
アンドリュー&マーク:成功!
キーパー:ザザザザザッと砂煙をあげながら、二人は崖を滑り降り始めます。さて、次のラウンドかな。ボニータが派手に腹から血をまき散らしながら倒れたので、他の研究員たちは何か異変が起きていることに気づきました。銃が一番早いので、撃つならどうぞ。
ジョン:もう一人の保安要員を撃ちます。命中して、左脚に6ポイント。
キーパー:マクダニエルはバランスを失って倒れますが、意識はあるようです。ちなみにルール的には倒れたまま戦えますので、悪しからず。
マーク:2ラウンド目の<登攀>行きます! (コロコロ)……ズザザーーーッ(※失敗)。
アンドリュー:(コロコロ)……(※失敗)。
一同:Oh! (※二人とも3ポイントずつ耐久力を喪失)
マーク:決めポーズをあれこれと考えるあまり、足元がおろそかになってしまいました(笑)
キーパー:背後で崖から降りてきた二人に気づいて、ポルンガ所長は「我らシュトレゴイカバールの宴の邪魔をするのは、何者だ!?」
ジョン:しゅとれ? 何ですか?
キーパー:はて、何でしょうなぁ。彼らのグループの呼称か何かでしょう。ハンガリー語を取っていれば意味まで分かりました。マークとアンドリューの二人は、現在転倒した状態です。これでPC側の不意打ちラウンドは終了かな。次からは敵もDEXで組織的に動いて来ますよ。
ジョン:さっき足を止めた奴をもう一度撃ちます。(コロコロ)……命中。ダメージは右脚に6ポイント。
キーパー:それでマクダニエルは死ぬ。血だまりの中に力なく突っ伏した。
アンドリュー:俺は立ち上がるだけか。
キーパー:ポルンガ所長は……特に強力な戦闘手段があるわけでもないので、詩の朗読をします。
ジョン:儀式を続けるのか!
キーパー:(ポルンガ博士)「――地獄に禁らわれのものどもを解き放つと!」
マーク:私も立ち上がるところまでですな。
ジョン:他のメンバーは?
キーパー:右往左往していましたが、アンドリューとマークが現れたことに気づいて、そちらに殺到してくるような気配です。
ジョン:釈明のために所長を生かしておくという作戦はなしですよね?
アンドリュー:ミッションは所長の拘束じゃないからね。
ジョン:保安要員は二人排除したので、もう武装している人はいないですよね? じゃ、所長を撃ちます。
キーパー:了解。でもその前に――
|