黒の碑の神
キーパー:アンドリューとマークが立ち上がって教団員たちと対峙した時、ふと気が付くと、黒の碑のてっぺんに何か黒い影が存在することに気づきます。
アンドリュー:ああ、夢に見たあれね……。
マーク:来た……。
キーパー:それは一見蟇蛙のような輪郭をしていますが、前脚の生えているべき場所から何本もの触手が垂れ下がっていて、それを碑に絡めています。後ろ脚は蛙のような大きなものではなくて、小さく貧弱なものなのですが、その足先には蹄がついています。峡谷中に酷い悪臭が漂います。イラストで言うと……こんな感じのヤツです。

一同:おおう……。
キーパー:皆さん正気度ロールを振ってください。(コロコロ……アンドリューが成功、ジョンとマークが失敗)成功した人は1D4ポイント喪失で済みます。
アンドリュー:3ポイント喪失。残り34。
キーパー:失敗した人は2D8で。
マーク:(コロコロ)……2点!
一同:おおおーーーーーっ!(※今回最高の盛り上がり)
ジョン:5点! <アイデア>ロールか……(コロコロ)……失敗!
一同:セーーーーーフ。
キーパー:遠目に何か出現したことは分かりましたが、細部までは霞んで見えなかったので、夢とは直結しなかったのでしょう。
ジョン:みんな紙一重で生き延びている感がありますね(笑)
キーパー:現れた黒の碑の神は触手をニコルに伸ばすと、彼女を巻き取って持ち上げ、口の中に放り込んでぺろりと食べてしまいました。
一同:……。
マーク:ニコルの方を喰っちゃった?
ジョン:まだ儀式が完成していなかったのか? レイチェルを確保しに行ったのは正解でしたね。
アンドリュー:まだ確保はできていないけどね。
キーパー:(ポルンガ博士)「か、神よ! 生贄は違います!」
ジョン:ポルンガ的にも予想外の事態なのか。「想定外デス」
キーパー:教団員はニコルが喰われてしまったのを見ると「あれ? なんかおかしくね?」という雰囲気になって浮き足立ちます。
ジョン:とりあえず予定通り所長を撃ちます。腹部に8ポイント。
キーパー:ポルンガ所長はそれでも死にはしませんが、神の乱心と腹部への激しい痛みで混乱してしまい、手に持っていた鞭と詩集を取り落して膝をつきます。
アンドリュー:レイチェルに駆け寄って縄を外します。
キーパー:了解です。縄を外すには……まぁ、いいでしょう、レイチェルの手首を縛っていた縄は外れました。がくりとアンドリューの腕に中に倒れこみます。
アンドリュー:では彼女を受け止めて、「帰ろう、地球へ……!」
キーパー:レイチェルは火星出身ですけど。
一同:(笑)
アンドリュー:レイチェルを確保できたら「先生!」とマークに声をかけて峡谷の入口へと走り出します。
マーク:走ります。
ジョン:教団員が逃走の邪魔をしないようなら、ATVのエンジンをかけて、すぐにでも脱出できるように準備します。
キーパー:数ラウンドはかかりますが、二人はATVの所まで戻って来られますよ。
ジョン:できるだけ急いで峡谷から走り去ります。
マーク:背後の状況はどうですか? 峡谷の様子を伺いますよ。
キーパー:阿鼻叫喚の状態です。碑の上から触手を振り回して教団員を打ち据えたり、巻き取って呑み込んだりして、碑の神は峡谷に大破壊をもたらしています。既にポルンガの姿は見当たりません。
ジョン:「あれが異星の知的生物? まったく知的には見えないんだが……」
マーク:「う〜ん」
アンドリュー:「俺は何も見ていない」
研究所まで戻った一行はサマセット博士と、絶賛気絶中のバッソ隊長をシャトルに乗せて、ケンタウリ・プライムにあるケナルゴ支社まで戻ります。すべての後始末は専門部署に任せようという合意の下、あえて黒の石板は持ち出しませんでした。
マーク:あの蟇蛙の怪物に研究員たちが食べられちゃったという話は信じてもらえるのかねぇ?
ジョン:でも、そういう事件が多いので一般市民には異星文明の存在は公表されてないんでしょ?
キーパー:いや、そうとばかりは言えないね。果たしてケナルゴ内でこういう事案がどれくらい扱われているのかは分からないわけだし。
アンドリュー:それでも一応「こういうものを見ました」という報告は上げておきます。
マーク:信じてもらえますかね?
キーパー:特に報告の内容に関する沙汰はありません。強硬に「俺たちは怪物を見たんだ!」と主張すればバッソ隊長と一緒に四人部屋に入れられてしまうでしょうが。しかも幸いにもサマセット博士は意識を失っていたために碑の神を見ていないので、真実を知るのはあなたたちだけということですね。
アンドリュー:サマセット博士の道中の経緯なんかを聞きたいんだけど?
キーパー:実際のところ、研究所に到着したらすぐに薬品か何かを嗅がされて意識を失って拘束されたようです。
一同:あー、そうなんだ。
アンドリュー:彼女はほぼ何も知らないんだ。
キーパー:もちろん、彼女は石板発見現場へは行っていません。サマセット博士一行の行動に関しては、何から何まで全部作り話だったようです。
ジョン:中盤からはどうも狂言っぽいよねという印象はあったんですけど。
アンドリュー:なるほどね。
キーパー:後日談。ケナルゴの調査隊が調べに行ったところ、研究所から石板は消えていたそうです。あなたたちが行った峡谷はありました。峡谷内で血痕などは見つかり、引きちぎられた人間の体の一部なども見つかりました。しかし――
マーク:八角柱は見つからなかった、と。
キーパー:そのとおりです。「“碑”なるものは見つからなかったが――?」ということです。しかもレイチェル・サマセット博士は石板すら見ていないので、本当にそれがあったのかも証明できません。
アンドリュー:ポルンガ所長の経歴を改めて調べてみますけど。「結局彼は何者だったんだ?」
キーパー:彼は二年前、とある惑星での開発事業に関連した調査の中で、異星文明の存在を捏造した疑いがあり、辺境のR-38Y研究所へと左遷されたという経歴の持ち主だったそうです。最初の学術的ロール(※マークが<物理学>で失敗しました)で成功していれば、この情報は事前に明かされるはずでした。
ジョン:そういう人物であれば、この事件そのものが捏造と処理される可能性もありますね。
キーパー:皆さんはヤヤ博士に呼び出されて今回のミッションの達成を労われます。(ヤヤ博士)「ご苦労様でした。よくやってくれましたね。報告書は読ませていただきましたが、このミッションそのものも含めて他言無用ということでお願いしますよ」
アンドリュー:「分かっています」
キーパー:通常の金銭的なボーナスの他に、一か月間の特別休暇が与えられます。
マーク:でも、その一か月は療養所で精神治療に当てないと(笑)
アンドリュー:正気度34しかないので、日常生活も厳しくなってきたんですけど。
キーパー:そんな話をしているとヤヤ博士のデスクの上の内線がビーッと鳴ります。ヤヤ博士はしばらく受話器を耳に当てて報告を聞くと、「……またそんな話なの?」と眉間にしわを寄せて言います。
一同:ん〜?
キーパー:(ヤヤ博士)「ご苦労様。持ち場に戻ってちょうだい」 ということでヤヤ博士との面談は終わりました。数日後、こんな噂話を耳にします。「またサマセット博士が行方不明なんだってよ」 お姫様体質のサマセット博士ですが、今回彼女に何が起きたかは、また別の話です。
一同:(笑)
(了)
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