……23日間に渡って旅をしてきたが、天候がこのまま良好であれば、月の終わりまでにはジャドマーに着くだろう。一頭の馬が足を悪くして、今夜は早めのキャンプとなったが、良い休息となるはずだ。我々は破滅の岬の崖近くにキャンプを張った。どのようにしてこの場所にその名がついたのかは、私は知らない。 夕食後、散歩をしていた私はピンク色の大理石の露頭を見つけて驚いた。近寄って調べると、それが天然の物ではなく、実際は古代の建築物の基礎である事が分かった。もっと大きい石のブロックが地中に埋まっていた。輝きが目に入り、私は打ち伸ばされた黄金の欠片から汚れをこすり落とした。それはゴブレットの基部で、竜の尾のような形をしていた。それ以上の物を見つけることはできなかった。 太陽が沈んでいき、私は崖の上へ歩いて行って海を見渡した。沈み行く太陽の残光が弱まっていく中、私は足元の崖の岩壁に赤い光が未だ点っている事に気付いた。見下ろすと洞窟がある事に気付き、光はそこから漏れていた。崖の上に小道は見つからず、下でキャンプを張っている旅人がいるとは思えない。恐らくデーモンだろうが、もしそうであれば、異常に穏やかなデーモンだ。むしろ、私はそれが忘れられた魔法の宝物ではないかと想像した。言いようのない方法で私を引きつけた光の中に、何かがあったのだ。それは望みを叶えるもの、夢を満たすもの、力だ。それが魔術なら、私はまさに魔術にかかっていただろう。それが呪いなら、甘んじて呪いを受けただろう。しかし登るには暗すぎ、そこへは行けなかった。 もし忌々しいエドロがこの荷物を季節の頭までに納入しなければならないと強く要求しさえしなければ、私はここに留まって崖を登った事だろう。ジャドマーへ行って仕事を終わらせたら、ここへ戻ってくるつもりだ。 |