業田良家師匠の 百年川柳ベスト 1995-1998

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 ここでは、業田良家師匠がマン ガと共に発表した膨大な川柳の中から、既刊の単行本「百年川柳」に収録 以降のもので、業田師匠自薦のものを掲載しています。単行本は1995年第21号掲載分までの収録ですので、95年22号以降の句が活字化されているのは、実はここだけ。単行本第2巻が出るまでの貴重な資料だと言えましょう。

 純粋に句を楽しむも良し、「虎の皮」投句用に傾向と対策を練るのも良し(?)。マンガだけでなく川柳も天才であり奇才であることを再確認していただけた ら幸いです。

※1 GOOD HOUSE SHOWスペシャル版「百年川柳」より。(当時の連載名は「GOOD HOUSESHOW」)。
※2 オリジナル増刊号「露天抄」より。
※3 「川柳虎の皮スペシャル」より。師匠としての見本として。自己採点付きでした。
※4 GOOD HOUSE SHOWスペシャル版「古川柳vs業田良家」より。下記の古川柳に挑む!という企画。
※5 「百年川柳」特別篇「表裏川柳勝負」。※4と同様の企画。(のちほど、「新・川柳虎の皮」に収録。)
※6 真夏の納涼スペシャル「ゴーダ川柳 百物語」。(のちほど、「新・川柳虎の皮」に収録。)

 

1995 (「GOOD HOUSE SHOW」)

事故渋滞現場が唯一楽しみに

おみやげを配って終える旅行かな

公園で入れる芝生見当たらず

手に雑誌キオスクの前少し避け


1996

親戚の皮を算(かぞ)えるお年玉

年賀状今年も3円寄附をする ※1

不似合いな場所で買い物クリスマス ※2

初詣その年最後の宮参り ※2

クリスマスケーキろうそくの数ちと迷い ※2

帰り方反省をする帰省かな ※2

お年玉互いにやればわが子行き ※2

一年で一番まずいおせちかな ※2

カレンダー壁の数よりもらいがち

倦怠期暑さ寒さも気が合わず

掃除機と言うが掃除はしちゃくれぬ

静電気役に立ったら死んでいる

おいしいと思うバターがパン破る ※1

スリッパを履くが廊下はすぐ終わる ※1

歯ブラシをくちからくつへ払い下げ ※1

日本地図首を切られた北海道

靴のまま玄関上がる忘れ物

掃除機のコードリールのちから不足

お中元振れば中身がわかるママ

言うことと本棚の中違う人

タクシーに先に乗せられ邪推する

「とりあえず」飲まれたビールがドーム分

のたれ死にできないビデオ買ったオレ

マンションで物置きになるメーターボックス

ポジティブに馬鹿なポジティブ・シンキング


1997

初めましてと言わぬホステス

当社比で劣った方がうちにある

寿司桶を隣にずらし証拠消す

半分は胃に届かない粉薬

大吉も印刷されるくらいある ※3

パドックで一周したい万馬券 ※3

教会の式でも選ぶ大安日 ※3

洗う必要感じぬヤカン

行ったことないがと前置きして話し

ドアチェーンそっと切りたい朝帰り

集金にパパの財布を狙わせる

呼び込みを避けてもヤバイ店に着き

古い掃除機床に押し付け

不摂生不安で医者にウソをつき

長電話止めるは唯一キャッチホン

階段だミニスカートだ転びたい

番台に座れるほどの修行をし

自転車置き場の一部は墓場

銭湯でよく会う人が服着てた

たたいたら近所迷惑するフトン


1998 ※98年より「百年川柳」に改題。

当たったら一割は寄付決心し ※4
vs 冨の札会日(かいじつ)までは生きて見え(1762,「川柳評万句合」)

ブラジャーをしたことないがはずせます ※4
vs 寝て解けば帯ほど長いものはない(1768年「誹風柳多留三篇」)

こぼすから座らせられる恐妻家 ※4
vs 野雪隠身をのがれんと前へ出る(1801年「誹風柳多留拾遣」)


パンティを脱がせるための足の指

奴が飲みワインブームも終わりかけ

捨てる前割れ目合わせてみる茶碗

古墳より一面飾ることが謎

わたぼこりテーブルパワーが引き寄せる

爪切りや切り取り選のありがたさ

首の根が涙のかわりにギュンと泣く

神様が指紋を作った防犯に

ゲロの近くに犯人は居ず

バランスの良いカップル見て嫉妬 ※5
vs 後ろから惚れて前から止めになり(1733年「雨の落葉」)

仲人も知りすぎてるとほめにくい ※5
vs 仲人は雨までほけて帰るなり(1796年「誹風柳多留拾遺 初篇」)

片付いて来客を知るわが家かな ※5
vs 針箱の内は一生かたづかず(1796年「誹風柳多留拾遺 三篇」)

写真見て下手な反省休むに似たり ※5
vs 自惚れをやめれば外に惚れ手なし(1791年「誹風柳多留 二十四篇」)

女房の料理を褒めて負けておく ※5
vs 逃げしなに覚えていろは負けたやつ(1768年「誹風柳多留 三篇)

回る寿司 うにキュウのこと うにと呼び

美人だになかなかが付く怪しさよ

おいしいになかなかが付く怪しさよ

人妻の写真も撮った運動会

マイブーム終わったことはまだ秘密

女房が食べたお皿を俺に寄せ

ホラー見てついつい出るはひとりごと ※6

フランケンシュタインも恋人欲しがった ※6

芳一は耳だけ浮かぶおばけだね ※6

昔からUVカットのドラキュラさ ※6

皿を割り化けなくてすむ豊かさよ ※6
 
まめにせよ狼女のムダ毛剃り ※6

一番の納涼 サイフを落とすこと  ※6

洗いものショウジョウバエに促され

故郷(ふるさと)やガイドブックの美辞麗句

スケベだと証拠が残る袋とじ

生乾き着て乾かせと母は言い

だれも足りない駅売りのお茶

将棋のかたきを山くずしでとる

隣人がいたので今夜いいおかず