AMANO'S
超・究極のBH
瘋癲狼藉帖
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July   * *
2002
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  狼 藉 帖  I n d e x
Jul-30-2002
ユニットから遠い180度折り返しでは?
薄いコルクシートの効用として、極めて簡便に曲面を形成できること、に加えて、ホーンの振動を制動できることがあります。後者は、従来、実用用途のホーンに適用されております。
隔壁の振動を抑えるという効用からも、SPユニットから遠い中段の180度折り返し部分にコルクシートを適用してみたくなります。
というのは、中段と接して180度折り返し部分を構成する下段の天板は、現状では、34cm*19cmという広い面が補強されずにいて、振動の虞が十分あるからです。
ちなみに、二代目では、下段の内側から、15mm厚と12mm厚のベニヤ板を釘とボンドで階段状に固定し、補強を図ってあります。
前回の反省(2)から、コルクシートを小さめ(15cm*15cm)に切り、さらに、ブチルテープを介して裏打ち(10cm*14cm)をしました。
さて、音の変化です。
 
低域に関して、一聴したところでは、量感と厚みが増し、まずまずです。
中高域に関して、楽器の分離も良く、トゥィターも綺麗に聞こえます。
しかし、
 
「超低音のテストにはこのCD1枚あればOKだ」
音元出版 ”不思議の国の長岡鉄男(2)” 160ページ(2002年) 「超低音研究(1)」
とされるトリニティ・セッション/カウボーイ・ジャンキーズの床の共振があまり聞こえず、また、愛用するテストCDでも、30Hz以下の再生が判然としません。
 
興味深いことに、ヴォリュームを絞っていっても、低音がなかなか痩せてきません。30Hz以下のエネルギーが、その上の帯域にシフトしたのでしょうか。
今回の処理は、30Hz以下を含むソフトでない限り、十分満足して聴ける結果です。
 
この180度折り返しを曲面とした影響を考察するのは、後回しにするとして、少なくとも、コルクシートが下段の天板の振動を制動する効果はあったのだろうと推定し、コルクシートを平らにし、裏打ち側を上にして貼り付けました。
結果は、トリニティ・セッションの床鳴りは、聞こえてきません。
 
上から降りる 音道の高さは12cm、これに対しコルクシートの長さは15cmあって、180度折り返し部分の音道の高さがコルクシート2枚とブチルテープの厚みの分(約6mm)だけ狭められています。
そこで、コルクシートを10cmに切りました。
これを、中段の前側にピッタリ沿わせて、下段の天板上に貼ると、ようやく、トリニティ・セッションの床鳴りが戻ってきました。
 
もう一つの、5cmの片割れを、ブチルテープを介して重ねると、こんな姿になります。横から見た断面は、高さが約2〜14mmの階段状です。
これを最終形としましたが、一枚のコルクシートを貼るのと聴感上の違いを識別するのは困難でしょう。これまでの労力をゼロにしたくないという意地がバレバレですか。
 
個人的には「ユニットから遠い180度折り返し部分を曲面にして得られる好ましい効果は、直近の場合と比較して、ずっと少ない」という印象を受けました。
また、振動抑制材としてのコルクシートは、評価されてよいでしょう。
 
今回の場合、すでに、音道の断面積などが最適化されているところに、曲面を適用したため、かえってバランスが崩れてしまったのではないでしょうか。
曲面にする効果を厳密に検証するためには、先に曲面を構成し、後から、様々のファクターを最適化する必要があると思われます。
 
なお、前々回、スロートの出口を、次の音道が短いことから、180度折り返しと見なしましたが、90度折り曲げ、またはそれぞれの中間と捉えることもできます。
スロート出口が明らかに90度折り曲げのBHでも、そこに曲面を適用すると効果が認められるかも知れません。
 
            
Jul-23-2002
90度折り曲げも曲面ですか
スロートの突き当たりを、薄いコルクシートで曲面にしたところ、低域と高域の何れにも、ハッキリと聴き分けられる改善を得ました。
あらためて、ハコの上段を眺めると、美味しそうな箇所が、もう一つ、目に止まりました。空気室の裏側の90度折り曲げ部分です。
ここも、細工は至って簡単でした。       
さて、音の変化です。
 
低域に関して、最低域では25Hzがそこそこ出ています。しかし、低域全般で芯がなくなり、スワンa のようなボケボケの感じです。
中高域に関して、解像度が落ちたようで、楽器の種類が少なくなってしまいました。
前回の耳を疑うような好成績に対し、残念ながら、今回の結果は明らかな失敗です。
 
その原因として、次の3点を考えています。
 
(1) 開口部から、200〜500Hzの音の漏れが増加した。
(2) コルクシートが空気の振動圧力に負けていた。
(3) 処置した折り曲げ点の前後の音道が、すでに、最適化されていた。
 
(1)は、音像が下に広がったことからも窺えます。例えば、Hellen Merrillの口が大きくなり、かつ、下に移動しました。音道全体を滑らかな曲面にすると、この現象が生じそうなことは、直感的に想像されます。
(2)は、コルクシートをより小さく切って用い、また、裏打ちすることで解決できるかも知れません。
(3)は、これまでも、90度折り曲げ点に関しては、音道の不連続性を、あまり指摘されて来なかったようです。その点の前後の音道が、十分調節されていれば、曲面を採用する必要はないのでしょう。
 
Jul-16-2002
「折り返し点は曲面で(シトさんの示唆)」の実験結果
「直管繋ぎ型BHは簡略化の傑作で、ホーンが曲面で構成されている必要は必ずしも必要でないことを証明しています。 が!
この方式が本来の能力を発揮するために、一点、押さえなくてはならないポイントがあります。
それは折り返し点は、曲面で繋がなくてはならないと言うものです。
ホーン動作に問題になるのは不連続面の存在です。
直管の中は一定ですから不連続はありません。
折り返しポイントが全くの不連続になっているわけです。
そこで、折り返し部分をなめらかに繋ぐために、隅の処を埋める必要があります。
けれども、隅を埋めるものは必ずしも剛体である必要はありません。
コルクの薄い板を押し込んで外周を繋ぐ程度で一向に構わないのです。
合板を重ねて雛壇状にしてしまうのでは不連続の救済効果がかなり薄れます。
直管一つが、一個の空気バネなわけですが、
これが全体でひとつながりにならなかった分、
負荷としても、開口部からの音波にしても時間的な節目が出来てしまうのです。」 
 
これは、シトさんが、くずてつ船長さんの掲示板 ”箱船の客室” に、投稿された記事の抜粋です。
なんと、その10日後、6月23日に、AE86さんの「ネッシーの棲む家」で、シトさんと直接お会いするという僥倖に恵まれたのです。
そのとき、上の記事について分かりやすく説明して頂きました。
 
「スロートに続く180度折り返しが最大の問題です。
そこで空気の波が追い返され、SPコーンが入力信号通りには動きにくいのです。
アンプに十分な力があると押し切れるのですが。
スルリと通り抜けるように、滑らかな曲面で繋ぐのです。
コルクの裏の隙間には、なにも詰めなくてもかまいません。」
 
なるほど、大した手間でもなさそうだ、と、こんな実験をしてみました。
スロート出口の突き当たりに、2mm厚のコルクシートを長方形に切って、布テープで固定しました。
 
さて、音の変化です。
 
低域に関して、押し出しと力強さは松居さんのオルガンで、グォーンという衝撃的な立ち上がりの速さは内田さんのピアノで、期待通りの改善が確認できました。
高域に関して、意外だったのは、トゥィターが綺麗に鳴り出した、そのように聞こえたことです。
フォスのCSコンで、0.68μF で聴いていたソフトが、0.47μF で十分になりました。
 
それにしても、シトさんが示唆された「コルクの薄い板を押し込んで外周を繋ぐ」
というワザの着想は、いかなる経緯で生まれたのでしょうか。
      
Jul-09-2002
SPターミナルの位置(ここを推薦)
「ところで、オマエの場合はどうなんだ」 という声が聞こえてきそうです。
そこで、s-ultra のBHにおける、SPターミナルの位置について説明しましょう。
 
初代目(1989年)では、当初、ターミナルを裏面上端に設けました。
丁度、D−58SAと同様の位置ですが、ハコの内部を弄くろうと、バッフル面を上にして立てると、T−100の頭が床を傷つけます。その都度、下駄でも裏返しにして履かせれば良いのですが、これが頻繁になると面倒でした。
と、いうことで、天板の前方(ユニット側)、スロート入り口ギリギリにターミナルの足が出る位置に移しました。
 
二代目(1997年)も天板前方(バッフル面から約14cm)です。
ただ、ここですと、FE208 ESでは、マグネットとスレスレです。そこで、
 
三代目(2000年)では、バッフル面から約15cmとし、さらに、後々、スロート断面積を調節することを考慮して、スロートを二分する垂直の板の前面を、その入口の面から2cm、後退させました。
その外観は、超・究極のBH製作(製作・特徴)のページに、
また、ハコの内側に出た足は、同(組立・上段)のページに示されています。
 
次に、この天板前方位の長所と短所について考察しましょう。
 
長所:
(1)内部配線が短い
(2)SPケーブルの着脱が容易
(3)トゥィターとターミナルをコンデンサーで直結できる
(4)スロートとこれに続く音道に突起物がない
短所:
ターミナルとSPケーブルが美観を損ねる
 
(1)、(2)は基本的に重要なことです。
(3)は、手軽にコンデンサーを交換できるという点で、トゥィターを最適化(銘柄・容量・接続方向など)するとき、また、ソフトに応じて、随時、コンデンサーを(カートリッジのように)換装するときに、その便利さを実感します。
好評のJansenの銅コン(注1)やフォスのCSコンのように、リード線にコダワリのある製品は、素のまま、そのコダワリを生かしてあげたらいかがでしょうか。
(4)は、(ヒヤリングの結果として、その位置にその突起物が据えられた場合を除いて)、やはり、音道はスッキリしていた方が、精神衛生的に安穏でしょう。
また、「シトさんが示唆された(折り返し点は曲面で)」の実験も、そのスペースに余裕があれば、容易に可能です(注2)。
短所として挙げられる美観についてですが、リスニングポジションから見ると、ターミナルはトゥィターの陰に入っています。また、SPケーブルは、天板の上に、縦に2本並べた、例えば、鉛インゴットの間に這わせると、視界から外れます。
もっとも、ネッシーではこの位置が常態ですから、この美観については、問題とされる方は多くないのかも知れません。
注1:
Burn−in が進むと、接続方向による聴感の差がより顕著になります。
注2:
”船長の戯言” の ”箱船の客室” での、シトさんの投稿(記事番号 No 3253)
を参照。
ダラダラと、続けた「SPターミナルの位置」をテーマとした狼藉帖も、そろそろ、閉じるときがきました。
最後に、一言、
音道の途中に突起物(障害物)を設けると、多少、音は変わります。
良く言えば、静かな音・大人しい音、悪く言えば、詰まった音・鮮度の落ちた音、と表現できるでしょうか。
音の好みは、料理の味と同様で、人により様々です。その前に何を聴いたか(食べたか)、また、体調によっても変化します。臨機応変に、随時、意図的に、好みの音を創り出したいものです。
そして、もう一言、
トゥィターを天板に乗せることを前提とするBHに限れば、天板前方・トゥィター直近を、ターミナルの位置として推薦します。
D−55タイプにこれを適用するときには、スロートを二分する垂直の板の前面を、その入口の面から2〜3cm、後退させましょう。
 
Jul-02-2002
SPターミナルの位置(音への影響)
SPターミナルの位置が音に影響するか、ということは、内部配線の長さやターミナルでの接触など、電気的要因との関連で言及されることはありました。
しかし、その位置により、ハコの中での空気の動きが異なって、音に影響することは、あまり重視されていなかったようです。
 
D−55では、スロートの出口から、約2cm外れたところにターミナル(T−100)の足が出ています。
D−57、D−58では、その位置が指定されていませんが、D−58の製作記事中の写真では、スロートの出口の内側に足が見えます。
D−58ESでは、スロートの出口の内側ほぼギリギリに、その位置が指定されています。
 
ところで、T−100を21mm厚の板のハコに取り付けたとき、内側に出る部分(ナットを含む)の断面積(投影面積)は、2本分を合わせると約6平方cmあります。さらに、内部配線がここから垂れ下がって−−−。
 
本来、スロートの出口の断面積は、入口のそれより大きくアラマホシキところです。
 
D−58SAの設計者は、このことに気づかれたのでしょうか。
ターミナルの位置を、使い勝手の良い天板から、裏面上端ギリギリに退避させました。
 
 
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