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瘋癲狼藉帖
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November *
2002
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Nov-30-2002
CDP-557ESD vs VRDS-25xs
最近、HPを立ち上げられた モーフィアス さんから、
 
「CDP-557ESD と VRDS-25xs では、どれほどのクオリティーに差がありますでしょうか? 例えばボーカルのリアリティー、低音の押し出し感などで、かなりの差があるでしょうか?」
 
との質問を戴きました。
 
557ESDは、1987年にソニーから18万円で発売され、その重量は18.5Kgあります。
前年、D大賞を受けた555ESDより5Kgも重くなったのに、何故か、優秀推薦機に留まりました。
評価が高かった555に飛びついた方が多かったのでしょうか、557は素通りされて、実際に使用されている方をほとんど見かけないようです。
珍しく、557と25xsを所有する瘋癲老人がモーフィアスさんのお目に止まったのでしょう。
 
正直に申し上げて、5年前にVRDS-25を導入して以来、557の出番はめっきり減りました。特に、この1年はスイッチを押した記憶がありません。
質問を受けてからまだ一週間で、ケミコンが充分賦活されてはいないかも知れませんが、一通り聴き比べた結果を報告しましょう。
 
使用システムは、10月20日の狼藉帖を参照して下さい。
ここで、25xsの電源ケーブルは、557の直付けに対応させて付属品とし、インターコネクト・ケーブルは、バランスケーブルでなく、Reference 6NX を用い、この差し替えで、二つのCDPを切り替えました。
ボーカルのクオラティーについては、10月25日の狼藉帖で、「耳慣らし」に使用した5枚で、低音の押し出しについては、10月23日の狼藉帖の「Take Five]で、評価しました。
 
さて、その結論を、
ボーカル:
 両者の差は、優劣ではなく、「聴く人の好みの範囲にある」と感じました。
 CDPより、むしろ、SPユニットのFE208ESの特性が支配している印象です。
低音:
 押し出しだけでなく、ゴリゴリとした力強さ、瞬発力でも557の方が上です。
 これには、瘋癲老人も驚きましたが、ジャズではハッキリ 557が Win です。
 
ということで締め括っては、片手落ちですね。瘋癲老人が、何故、専ら25xsを使用しているのかの説明も必要でしょう。
 
VRDS-25を購入したのは、谷崎さんの薦めで(6月11日の狼藉帖)、25xsは、たまたま通りがかりの衝動買いです(8月20日の狼藉帖)が、次の三点を気に入っています。
 
A.高域を繊細に表現する
B.空間情報、特に、奥行きを再現する(ソフトにその情報が入っていれば)
C.XLR端子がある
 
AとCは、907 i MOS Limitedからの要請です。
また、Bは、バッフル面積が小さいスピーカーを活かすのに必要なことです。
 
さて、Aについては、このCDの冒頭にあるソロ・ヴァイオリンを聴いてみましょう。
Bについては、インバルのマーラー第五番、冒頭のトランペットです。
この二つで、557と25xsとの差を認識されるでしょう。
だからといって、
 
「リジッドな床とラックが用意できるならウルトラハイCPだ」
との、長岡先生の言葉をそのまま受け売りした上で、
「新品で10万円」
と、唆す
 
ような、短絡をしないのが、この狼藉帖のスタイルです。
557の方が、音を気持ち良く聴かせてくれたソフトをいくつか紹介しましょう。
 
その一
11月9日、AE86さん宅を訪問したとき、持参した一枚です。
 
「いろいろやったけど、よく鳴りません。トラック1の新日本紀行をお願いします」
どれどれ、と廻して下さいましたが、やはり変。
AE86さんの言葉は、
「この録音は変わっています。フォステックスのFEシリーズと合いません」
瘋癲老人は
「ユニットとの相性ですか。ハコが原因ではないのですね」
と、一安心。
 
ところが、今回、557で聴くと、一転して、かなりの美音です。
 
その二
25xsでは、音が苛立っていて、聴き疲れがします。
ところが、557の音は当時(60年代)をそのままに思い起こさせ、目頭が熱い。
今も聴きながらキーボードを打っていますが、指が滞りがちです。
 
その三
最近、親しくして戴いているジャズ派のShuksさんに誘発されて購入した5,60年代の名演のコンピレーションです。
 
10月に発売された20bitK2ですが、25xsで聴くと、全然、気持ち良くない。
557で一変、Shuksに弟子入りをお願いしようかな、という気になっています。
 
その四
      
2002年度後期の最優秀録音盤ともステレオ誌で評されている、ゲルギエフ指揮、キーロフ歌劇場管弦楽団のシェエラザードです。
 
25xsでは、そうかなー、との印象ですが、557では、なるほど、結構いけてます。
 
ところで、余談ですが、
このプログラムで、幸い、前側・左寄りのS席をゲットできました。
あのソロ・ヴァイオリンを生で堪能しようという狙いです。
 
さて、いよいよ、瘋癲老人が結論を出すときです。
 
「25xsは、90点を取るときもあるが、50点もある。
一方、557は、90点には届かないが、60点までは落ちない。
557に良い値がついても、手放してはなりませぬ。」
 
最後に、557を見直す機会を与えて下さいました、メーフィアスさんに、感謝を申し上げます。
なお、瘋癲老人の25xsに異常があって、その評価が偏ったものであったとしても、購入後まだ3ヶ月、中を覗いたこともありませんので、その責は、こちらにありませんね。
 
Nov-21-2002
ヒート・ガン
「ケーブルにFLチューブを被せ、その末端がバラけないように、熱収縮チューブで固定する」
というのが電源ケーブルを自作するときの常法になっています。
熱収縮チューブを収縮させる熱源としては、熱湯、ガスコンロ、ヒート・ガンなどが挙げられていますが、何故か、(ヘア)ドライヤーは、
「温度が上がらずうまく縮まない」
とされているようです。
家内のドライヤーを借りて電源ケーブルを仕上げている瘋癲老人には、些か、複雑な気持ちではあります。
 
家内のドライヤーの消費電力は1200W(600Wと切り替え)、おそらく、お宅のも同様でしょう。
一方、ヒート・ガンでも、高々、1200Wでしょう。
それぞれの消費電力が同じなのに、ドライヤーで温度が上がらない理由は、次の3点です。
 
1.ドライヤーの方が、風量が大きい
2.ヒート・ガンの方が、熱風の径が小さい
3.ドライヤーの方が、バイメタルなどによる上限温度が低い
 
家内のドライヤーは、吸入口を部分的に掌で覆えば、髪にウェーヴをかけられる程度まで、噴出する空気の温度を上げられるようになっております。
インターコネクト・ケーブルのように、径が細く、熱容量が小さい場合は、ガスライターで熱収縮チューブを収縮できますが、ドライヤーでも、噴出口に近づければ、風量の調節だけで十分です。
もし、そのドライヤーで、リミッターが、熱収縮チューブが反応する温度より低く、設定されていると、うまく縮まないので、諦めましょう。
 
さて、問題は、3.5スケや5.5スケのケーブルのように太いときです。
 
このケースでは、吸入量を制限するだけでなく、噴出した熱風を熱収縮チューブに収束させる工夫が必要です。
例えば、このように衝立を立て、その角にケーブルを這わせ、熱風を少し斜めから当てると、無駄な拡散を減らすことができます。
さらに、衝立とケーブルの間に新聞紙などを挟んで、ケーブルを包むようにトンネルをつくり、その中に熱風を通せば、1200Wの熱量が、ヒート・ガンと同様に、有効に集中できます。
 
ところで、
「身近にドライヤーが無いときは、どっちを買うのか」
と、質問されれば、躊躇なく、
「ヒート・ガン」
と答えます。
確かに、ドライヤーは、ヒート・ガンの半額で買えます。
でも、この頭からして、ドライヤーは似合わないもの。
 
Nov-13-2002
スターカッド用プラグ
ホスピタルグレードのプラグ(HPプラグと略記)にスターカッドケーブルを装着するとき、こんな風にできたら、と思ったことはありませんか。
HOT側、COLD側に、2個ずつ穴が開いていれば、 これができます。
そして、その効果は、次の3点です。
 
 * 太い線も使える
 * 装着作業が楽だ
 * 線とピンとの接触面積が大きい
 
ということで、今回の狼藉帖は、もう一つの穴の開け方、です。
 
1.HPプラグは、JIS規格品(松下:WF5018;明工社:ME2591)を選ぶ
2.外蓋を外す
3.中蓋の穴を開けたい位置に、ドリルの歯が滑らないように、キリで印を付ける
4.中蓋を外し、線を締め付けるネジと板を取り出す
5.中蓋を閉める
6.プラグをコンセントボックスに差し、固定する
7.ドリルで穴を開ける(径は最初2mm、次いで3.5mm)
8.プラグをボックスから抜き、中蓋を外す
9.線を締め付けるネジと板を戻し、中蓋を閉める
 
UL規格のHPプラグでは、締め付けネジと板が外せないので、これらをドリルで傷つけないように、開ける穴の位置を注意深く確認します。ドリルする径は、既存の穴(3.5mm)より小さい、3mmまでとしましょう。
HUBBELLのHBL8215CTなどは締め付けネジの位置が動きませんが、明工社のME2573は、グラグラです。既存の穴に適切な絶縁チューブなどを挿入すると、ネジと板を固定できます。
コンセントとプラグの接触は、面と面だから、面。
コンセントやプラグと「線」の接触は、面と円柱だから、線。
どちらが隘路になっているかは、明白です。
 
穴が二つあれば、両方に入れる。
穴が一つしかなければ、もう一つ開けましょう。
 
Nov-06-2002
電源ケーブル ( 2CT )
ここまで、VCTとかVVFとか、何の説明もなく、周知の語彙のように、使ってきました。2CTと記号されるケーブルを説明するに当たり、これらを含む、いわゆる、電線用語について、少し触れておいた方がよさそうです。
 
でも、簡明で要領を得た素晴らしい解説を見つけました。[JUNK AUDIO]さんの[JAの「電線音頭」]というページです。ここをお借りしましょう。
 
JAさん曰く、
”今日、HCを除いてみたら、「CT]と言うケーブルをみつけました。ゴム絶縁キャブタイヤケーブルです。とてもぶっとく、頑丈そうです。記号から類推するに、これがキャブタイヤの元祖ではないでしょうか?” (原文のママです)。
 
そうか、だから、ヴィニル絶縁だとVCTなのか。
では2CTとは何か。
 
軒下にぶら下がっている[電線見本の板]を、何枚か、くるくる廻して、やっと、スターカッドに使えそうなケーブルを見つけました。
 
「この2スケの4芯と1.25の4芯を2mずつ」
包んだ袋は、ずしりと重く、手応え十分です。
「この黒い材質は何ですか」
そんなことも知らないで買うのかい、という顔をして
「ゴムだよ」
げっ、ゴムだって。長岡先生は言っていました。
「ゴムはゴム臭い音がした」
 
切ってしまったものは、しょうがない。いまさら返せない。
これも、何かの縁です。
 
持ち帰って、一寸、剥いてみると、銀色の線が出てきました。値段からして、スズメッキでしょう。
一晩すると、部屋全体に、ゴムの臭いが充満してしまいました。
なにより、このゴム臭を退治する方法を開発することが先決です。
 
1.ケーブルの両端を自己融着テープで覆い、完全に、防水する。
2.このケーブルをプラスチックのタライの中にトグロを巻かせる。
3.トグロが隠れる位まで水を浸す。
4.適量の非塩素系アルカリ性液体洗剤(例えば、マジックリン)を加える。
5.2,3日すると緑茶色になる(ならなければ洗剤を追加する)。
6.緑茶から紅茶、さらにコーヒーになったら(約1週間)、ケーブルを取り出す。
 
これで、鼻を、ケーブルから数センチに近づけて、やっと、感知される程度まで、除臭できています。
 
さて、本題の2CTの説明に進めましょう。
 
キャブタイヤケーブルは、移動用ケーブルの総称として用いられています。
CTなる記号はキャブタイヤを示し、その前に、数字やアルファベットを置いて、そのキャブタイヤケーブルの種類を表します。
 
2CTは天然ゴムを絶縁体およびシースとする2種天然ゴムキャブタイヤケーブルです。
1CTと記号される1種天然ゴムキャブタイヤケーブルが、別に、ありますが、1種は屋外では使用できません。2CTは、1CTと比べ、天然ゴムシースの外傷に対する強度を増しています。
両CTの特徴として、スズメッキ銅線が使用されています。銅線では、天然ゴムの加硫工程で酸化されるためです。
 
VCT(ビニルを絶縁体とシースとするキャブタイヤケーブル)は、摩耗、衝撃、引き裂き試験がなく、機械的外力がほとんど掛からない用途に、また、ビニルの低耐熱性から、熱的に影響を受けない環境で使用されます。
 
2CTとVCTの違いは、
 
1.絶縁体とシースの材質が異なる
2.スズメッキの有無
に加えて
3.絶縁体とシースの厚さが異なる
ことが挙げられます。

例えば、線径が3.5^2mmで2芯の2CTとVCTを対比すると、
 
         絶縁体厚さ(mm)  仕上外径(mm)    質量(g/m)
  2CT       1.1          13.4          262
  VCT       0.8          11.8          202
 
であって、JAさんの仰る通り、2CTがぶっとくて、頑丈そうなことが理解できます。
その他の線径や芯数のケーブルの数値については、株式会社三ツ星の[このページ]に入り、そこで、2CTなりVCTなりをクリックしてください。
 
VCTや2CTに限らず、まだまだ、美味しそうなケーブル(オッと、耐圧300Vのコードを除外する根拠はありませんね)がありそうです。
 
アキバに出たとき、宝くじを買う気分で、これは、と感じたケーブルを、2mだけ切ってもらうのも、一興ではないでしょうか。
 
 
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