AMANO'S
超・究極のBH
良いBHの鉄則
長 岡 先 生 の 原 則 で す
究極のBHとは 超・究極のBHの製作
超・究極への最適化 M E N U
バッフルをゼロに近づける
長岡先生は、不朽の名作であるスワン(D-101)を発表するとき、同時に、いくつかの鉄則を示されています。
「本物の音場再生というのは、音場込みで録音したソースを、最もオーソドックスなステレオシステムで再生することではないのか。それに挑戦したのが今回のシステムである。スタイルは異様だが、コンセプトはオーソドックスそのもの。
では、オーソドックスとは何か。まずそれを説明しよう。」
と言って次の5点を挙げられました。
 
(1)音源は点音源が理想である。
(2)フルレンジ一発が理想である。
(3)軸上正面で聴く。
(4)中高域を重視する。
(5)バッフルはゼロが理想。
 
このうち、(3)は通常のリスニングポジションです。(1)、(2)、(5)は実質的に等価です。そこで、中高域を重視して設計されているFEシリーズを一発だけ使用するBHでは
バッフルをゼロに近づける
これが鉄則の第一です。
「バッフルは音波の放射に多くの規制を加える。低音が上昇するバッフル効果というのもあるが、量は増えても質が低下する場合が多い。それよりもバッフル自体が振動して音源となり、点音源の実現を不可能にする効果の方が問題で、音場感はバッフル面積に反比例するともいえる。」
という物理的解説もされています。
共同通信社 ”別冊FM fan 49号” (1986年春) これは次に復刻
共同通信社 ”開拓者 長岡鉄男” 224ページ(2001年)
D-55に比べて、バッフルが遙かに大きくなってしまったD-57の製作記事の中で、
「バッフルは分割して溝を作っているが、これはバッフルにしまりをつけるというルックスの点と、バッフルの振動を遮断するという狙いだが、後者については疑問もあり、切れ目なしの1枚板とした方がいいかもしれない。」
と書かれたのも、バッフルの大きさに対する先生のコダワリの表れの一つでしょうか。
音楽之友社 ”ステレオ” 1995年7月号38ページ
  
開口部をユニットから離す
スワンは後面開口型のBHです。このメリットについても解説されています。
「後面開口のBHは何機種か作っているが、いずれも繊細感のあるゆったりとした音になっている。これはリアダクトのバスレフとも共通点があり、開口からの中音の放射が直接耳に届かないのと、中高音に対して低音が時間差を持つのが理由と考えられる。」
共同通信社 ”開拓者 長岡鉄男” 226ページ(2001年)
バスレフのダクトの位置についても、別の箇所で、解説があります。
「基本はフロントダクト。ユニットを取り付けたバッフルにダクトを取り付けた方式で、ユニットとの位置関係は、
(a)近接しているもの
(b)距離をとったもの
があり、一長一短である。
(a)の方が音源が集中するのでいいが、ダクトから出入りする気流で中高域が変調されるおそれがあり、ダクトから漏れる中高音も耳に入りやすい。
(b)は前記(a)のデメリットがないが、低音については音源が分散してしまうのがデメリットになる。
以前はフロントダクトが中心だったが、最近はリアダクトの方が増えている。リアダクトのメリットは、変調、中高音の漏れといった(a)タイプのデメリットがないことだが、低音は裏から回って前に出てくるので、量感、スピード感で劣る。」
音楽之友社 ”長岡鉄男のオリジナルスピーカー設計術” 19ページ(1996年)
そもそも、低音は裏から回って前に出ることがBHの原理・本質です。
BHでは、ユニットからの中高音が、開口部からの中低音で、変調されることだけが問題ですから、これを避けるため、
開口部をユニットから離す
これが鉄則の第二です。
   
ホーンの効率では気流抵抗ゼロが理想
ホーンの断面の形状によって気流抵抗が異なりますが、先生は、次のように解説されています。
「ホーンの効率からいくと、気流抵抗ゼロが理想である。そのためにはホーンの断面は真円がベスト」
「キャビネットとしての納まりを考えると、幅一定、高さだけが変化する CW(CONSTANT WIDTH)ホーンが扱いやすい。」
「この方式の難点はスロートがかなりつぶれた長方形になり、気流抵抗が増えることである。例えば、D-55のスロート断面は、50x360mmと横長である。」
「もっとも気流抵抗が大きいことは必ずしもマイナスではない。効率は落ちるがダンプ効果が出て、くせが弱められる。また正方形断面は気流抵抗は小さいが定常波がでやすくなる可能性がある。」
「因みにスーパースワンのスロート断面は60X70mmになっており、かなりいい線だといえる。」
音楽之友社 ”長岡鉄男のオリジナルスピーカー設計術” 30ページ(1996年)
ホーン断面が横長のスタイルは、FE-208SSのように、
「超ハイスピードだが低域を持ち上げるのが難しく、大型BHでやっとという難物」
音楽之友社 ”長岡鉄男のオリジナルスピーカー設計術” 110ページ(1996年)
と評されるような、クセの強いユニットを使いこなすときの(已むを得ない)逃避策の一つでしょう。
また、小口径フルレンジを使うときは、スーパースワンのように、断面が正方形に近いスタイルで、ホーンの効率を高めることが優先されます。
ホーンの効率では気流抵抗ゼロが理想
は物理学的にも理解できる鉄則の一つです。
   
90度は180度より有利
先生は、折り曲げホーンの問題点として、折り曲げ部分での気流の乱れを指摘されています。
「ホーンの音道は曲面構成が理想だが、アマチュア工作では曲面はほとんど無理である。」
「折り曲げには90度と180度があるが、180度は気流の乱れが起きやすいので90度の方が有利である。」
「また一本一本の音道の長さは異なっている方がよい。長さが同じだと特定の波長での定常波が強調されるおそれがある。」
実例として、すべて90度折り曲げで、音道の長さも異なるので非常に有利であり、実際に音もよいスパイラルホーンを挙げられています。もちろん、例外も示されています。
音楽之友社 ”長岡鉄男のオリジナルスピーカー設計術” 33ページ(1996年)
実践的理論家として有名な”コエフ”さんは、スパイラルホーンを、スワンのスタイルに納めた「八角堂」を発表されています。その周波数特性の素晴らしさに驚嘆します。
気流の乱れが比較的小さいことから
90度は180度より有利
も鉄則として選ばれるでしょう。
   
ユニット中心までの高さは1m以下
「ユニットの中心が1m以上になるのはさけたい。通常、ソファにかけた人の耳の高さは1mだからである。視覚面も考えると90cmがベストだ。」
音楽之友社 ”長岡鉄男のオリジナルスピーカー設計術(2)” 102ページ(1997年)
先生のこの「高さ」に対するコダワリもかなり大きい。
「D−55は−−−−床からユニットのセンターまでの高さは 771mm でやや低めだ(正しくは781mmですが)。」
これが D−57(892mm)を製作した動機の一つでした。
音楽之友社 ”ステレオ” 1995年7月号34ページ
「ルックスも良く、スクリーンとのマッチングも最高、音も文句なしと、しばらくは満足していたが、やがてユニットの床からの高さが気になり出した。208Sのセンターは床から750mm、耳の高さより250mm低い。これをもっと高くする。」
かくして誕生したのがネッシー II (960mm)です。
音元出版 ”オーディオアクセサリー” 97号(2000年) これは次に復刻
          音元出版 ”不思議の国の長岡鉄男 1” 222ページ(2001年)
リア専用スピーカーのQS−101「リアカノン」(1115mm)やセミナー会場用のD−150「モア」(1737mm)などのように、その高さが、その使用目的から、必要な場合は別として、
ユニットの中心までの高さは1m以下
は、誰もが感覚的に容易に納得できる鉄則です。
   
原則として吸音材は使用しない
これは、D−55の製作記事(”D−55の設計”の項)で、前後にコメントなしに、ズバリと一言だけ仰っている言葉です。
音楽之友社 ”ステレオ” 1989年6月号63ページ
吸音材に関する先生の解説はかなり多い。そのいくつかを抜粋します。
 
「吸音材というのは音圧を受けて振動し、その振動エネルギーを熱エネルギーに変換してしまうものである。」
「吸音材の効果は
(1)ユニット背面の音を吸収する。
(2)定常波を抑える。
(3)Qocの上昇を迎(抑?)える。
といったところだ。」
「一般に、密閉型は多めに、バスレフは少めにといわれている。」
音楽之友社 ”長岡鉄男のオリジナルスピーカー設計術” 16ページ(1996年)
「吸音材を大量に使うとユニット背面の音を殺すことができるので、いやな音が出にくい。foでのブーミーさもとれる。」
「デメリットとしては吸音材込みの空気は密度が上がったような感じになり、振動板の自由な動きを妨げるので、切れ込み、立ち上がり、エネルギー感といったものは低下する。」
音楽之友社 ”長岡鉄男のオリジナルスピーカー設計術(2)” 101ページ(1997年)
従って、
原則として吸音材は使用しない
ことは、D−55のように、背面の音を生かし切る「究極のBH」を目指すときの鉄則となります。

鉄則は以上の他にもあります(例えば、音道の全長)
  それらの多くは、次の本に詰まっています         .
音楽之友社 ”長岡鉄男のオリジナルスピーカー設計術
 
   
「超・究極のBH」の条件
ここで「超・究極のBH」とは何かを定義しましょう。
 
「究極のBH」 とされるD−55をベースとして、これを超えるBHを
「超・究極のBH」 と呼ぶ

 
これがシンプルで納得されやすい定義ではないでしょうか。
しかし、新たな問題が生じます。何をもって「超える」と判断するか、その基準が必要です。
そこで、「良いBHの鉄則」の登場です。個々の鉄則を、重要性について順位付けすることは不可能ですが、
* いくつかの鉄則で確実にD−55を上回っている
* いずれの鉄則でもD−55を下回らない
この2点を満たすBHを「超・究極のBH」となりうる候補とすることに矛盾は生じません。
もちろん、その2点は候補となりうる必要条件であって、最終的には、耳による判断です。
 



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