CALL of CTHULHU Variant





〜ディープワンの呼び声〜


TRPG『クトゥルフの呼び声』を「ディープワン(DeepOnes、深きもの)」でプレイするハウスルールです。



キャラクターの創造 −Create Your Character−


 『Call of Deep Ones』(以下CoD)では以下に挙げる3種族の中から1つを選んでキャラクターを創造します。


【1】ディープワン(深きもの) −Deep Ones−
ディープワン  時のない深海に住まう水陸両棲の種族です。大いなるクトゥルフ、ダゴン、ハイドラといった深海の神性に仕えています。
 まばたきをしない、飛び出した眼が特徴の魚のような顔をしており、皮膚はツルツルで、背は鱗に覆われています。首の左右にあるエラのおかげで水中でも呼吸可能であり、手足についた水掻きで水中を自在に泳ぎ回ります。反面、地上では飛び跳ねるような不器用な歩行しか出来ません。
 ディープワンは海底ではほとんどの人間より遥かに強力な存在です。しかし、姿形が人間とはかけ離れすぎているので、地上にある人間の都市に紛れて行動するのは非常に困難です。ディープワンが人間の都市で活動するには、深夜の月の光さえ差し込まない裏通りを歩くか、下水道を行くしかないでしょう。
 能力値
STR  4D6
CON  3D6
SIZ  3D6+6
INT  2D6+6
POW  3D6
DEX  3D6
APP  1D6
EDU  2D6
(※+40%分の技能ポイント)
武器:かぎ爪 25% ダメージ 1D6+db
    ハンティング・スピア 25% ダメージ 1D6+db(貫通可)
装甲:1ポイントの皮膚と鱗
正気度喪失:人間があなたを見ると正気度を0/1D6ポイント失います。

血統の判定 −The Blood−
 全ての能力値が決定したディープワンは1D100を振ります。このロールで自分のPOW以下を出したディープワンは「偉大なるディープワン(Great Deep Ones)」(後述)です。【1-2.】偉大なるディープワン −Great Deep Ones−へ進んで特殊ボーナスを得ることが出来ます。

生まれの判定 −Where Are You Come From?−
 次に「生まれ表」を振って出身地を決めます。出身地によっては特殊ボーナスがあるので、それを得ます。

呪文の判定 −Spells−
 最後に上記のボーナスを加えた後、POWが14以上あるディープワンは呪文を知っている可能性があります。呪文を知っているディープワンは司祭であり、指導者的な立場にあります。
 POWが14〜16なら1D4回、17〜18なら1D6回、それ以上なら1D8回「呪文表」を振って呪文を決定します。


【1-2】偉大なるディープワン −Great Deep Ones−
 全てのディープワンの指導者的立場にある「父なるダゴン」か「母なるハイドラ」(もしくはその両方)の血を引く存在が「偉大なるディープワン」です。不浄の血を色濃く受け継いでいます。
 血統の判定で偉大なるディープワンとなったキャラクターは、APP以外の能力値に3D6ポイントを自由に振り分けられます。このボーナスは生まれの判定時に得られるものとは別に得られるものです。
 また、偉大なるディープワンは皆司祭の地位にあり、必ず最低1つの呪文を知っています。POWが13以下のキャラクターは「呪文表」を1回振ります。POWが14以上であれば、通常通り(上記「呪文の判定」参照)呪文を獲得することが出来ます。
 偉大なるディープワンは必ず一行のリーダーとなります。


例:ディープワン サンプル・キャラクター
赤鱗のグァオン、インド洋に巣くうディープワン
STR  21   CON  14   SIZ  21   INT  10   POW  15
DEX  10   APP   5   EDU  12   SAN  75   耐久力  18
ダメージ・ボーナス:+2D6
武器:かぎ爪 60%、ダメージ 1D6+db
ハンティング・スピア 70% ダメージ 1D6+db(貫通可)
装甲:1ポイントの皮膚と鱗
技能:回避 50%、隠す 40%、隠れる 40%、聞き耳 45%、追跡 50%、投げる 50%、ナビゲート 40%、目星 50%、ピアに騙される 75%
呪文:《忘却の波(改訂版)》、《門の創造》、《ロブスターを魅了する》

 グァオンはインド洋を根城にするディープワンです。大司祭クトゥルフのためであれば、躊躇なくその命を投げ出す覚悟のできている真の勇者です。ただし、頭はあまり良くありません。
 特徴的な赤茶けた鱗から"赤鱗のグァオン"と呼ばれ、仲間からも尊敬されています。ディープワンの中では男前なほうです。

「またあのマーシュ家の娘に騙されている気がするギョ!」


【2】ディープワンとの混血児 −Deep One Hybrids−
ディープワンとの混血児  ディープワンとの混血児はディープワンと人間との婚姻によって産まれます。そうした子孫たちは普通の人間として誕生しますが、通常、10代の早い時期に身体に変化が起こり始めます。中年になると、ほとんどの混血児は全体に奇形を示します。多くは閉め切られた家の秘密として、匿われてしまいます。数年すると、彼らはディープワンへの最終変態を終え、深海へと旅立っていきます。
 ディープワンとの混血児は「インスマス面」(ディープワンやその混血児の一大拠点として知られる北米の漁村インスマスがその名の由来です)という顕著な特徴を有しています。半蛙、もしくは半魚のような面立ちなのです。「インスマス面」の人間は周囲の人々から忌み嫌われはするでしょうが、完全なディープワンのように街を歩けないほどではありません。なるべく帽子やマスクで顔を覆ったほうが良いでしょうが…。
 能力値
STR  3D6
CON  3D6
SIZ  2D6+6
INT  2D6+6
POW  3D6
DEX  3D6
APP  2D6-1
EDU  2D6
(※+50%分の技能ポイント)
技能:水泳 60%
正気度喪失:人間があなたを見ると0もしくは0/1D4もしくは0/1D6ポイント正気度を失います(好きなものを選んでください)。

呪文の判定 −Spells−
 POWが14以上あるディープワンとの混血児は1D4個の呪文を知っています。「呪文表」を振って呪文を決定してください。

深海の盟友 −Fellows from Deep Sea−
 ディープワンとの混血児は、その特殊な生い立ちから、個人的な仲間/庇護者とのコネクションがあります。これは彼らが人間であり、且つ怪物でもあることの証明に他なりません。こうした個人的な仲間/庇護者を「深海の盟友」と呼びます。
 マジックポイントを1ポイント消費することで、混血児は盟友を呼ぶことが出来ます(盟友が複数人数でも1ポイントです)。ただし、盟友は自らに備わった移動手段で混血児の元へやってこなくてはなりません。大抵の盟友は深海より砂浜へ上がってくることでしょう。盟友がともに行動している間、消費された1マジックポイントは回復しません。 盟友は持てる力を振り絞って混血児を手助けしてくれます。ただし、盟友は使い魔とは違うので、自殺を促すような命令に従うことはありません。もしも盟友が死んでしまったら、新しく盟友を得ることは(通常)出来ません。
 ディープワンとの混血児は「深海の盟友表」を1回振って、盟友を決定します。


例:ディープワンとの混血児 サンプル・キャラクター
大海 成人、男、?才、蔭洲升に潜む影
STR  12   CON  12   SIZ  17   INT   9   POW  16
DEX  11   APP   9   EDU  10   SAN  80   耐久力  15
ダメージ・ボーナス:なし
武器:パンチ 60% ダメージ 1D3+db
技能:回避 70%、隠す 50%、隠れる 60%、聞き耳 70%、自動車の運転 50、忍び歩き 50%、ジャンプ 60%、水泳 60%、目星 70%
呪文:《ルルイエの霞》、《ディープワンとの接触》
深海の盟友:ディープワン(1人)

 日本の鄙びた漁村・蔭洲升(いんすます)出身。
 大都会の片隅で、肉体労働に精を出す日々を送っています。意外と非力ですが、ガタイが良いので力仕事を任されるのが悩みの種です。
 住んでいる安アパートには、仏壇に模した「だごん様」の祭壇があります。


【3】人間 −Human−
人間  人間です。しかし、その魂は汚れきっています。ここでプレイできる人間はディープワンの唾棄すべき協力者です。
 「普通の」人間はディープワンや混血児とは異なり、コソコソと人目をはばかる様に街を歩く必要はありません。CoDにおいて、情報収集については「普通の」人間が最も有効に働いてくれるでしょう。

能力値
STR  3D6
CON  3D6
SIZ  2D6+6
INT  2D6+6
POW  3D6
DEX  3D6
APP  3D6
EDU  3D6+3

呪文の判定 −Spells−
 能力値を決定した結果、POWが14以上ある人間は1D3個の呪文を知っています。「呪文表」を振って呪文を決定してください。

魔道書 −Tomes−
 「普通の」人間であるPCが忌まわしき深海の秘密に魅せられるようになった原因が、魔道書です。人間のPCは「魔道書表」を振って決定した魔道書を所持しています。
 所持する魔導書によっては、特殊な<言語の読み書き>技能を取得しなくてはなりません。50%以上の<読み書き>技能を持っていれば、その魔道書を完全に理解していることにして良いでしょう(SANを喪失し、<クトゥルフ神話>技能を得ます)。魔道書を完全に理解しているPCは、所持する魔道書の持つ<クトゥルフ神話>技能へのボーナス5%につき1個の呪文を追加で得ることができます(端数切り捨て)。


例:人間 サンプル・キャラクター
ピア・"マルグレーテ"・マーシュ、女、23歳、魂の汚れた修道女
STR   9   CON   8   SIZ  12   INT  18   POW  14
DEX  15   APP  16   EDU  17   SAN  57   耐久力  10
ダメージ・ボーナス:なし
武器:ポケット・ナイフ 70%、ダメージ 1D3+db
技能:言いくるめ 60%、応急手当 60%、オカルト 55%、クトゥルフ神話 13%、信用 35%、心理学 60%、説得 40%、天文学 35%、値切り 40%、博物学 40%、目星 40%、ラテン語の読み書き 50%、歴史 30%、グァオンを騙す 75%
呪文:《魚を呼び寄せる》、《ディープワンとの接触》、《ガタノソアとの接触》
魔道書:クタート・アクアディンゲン(ラテン語版)

 シスター・マルグレーテことピアは類まれな美貌の持ち主で、インスマスのマーシュ家の出身者です。容貌に先祖返りの兆候は出ていませんが、背中には小さなヒレがあり、肌の所々に薄い鱗があります。
 クトゥルフに心酔しており、いつか海底都市ルルイエの神殿で結婚式を挙げるのが夢です。

「海草でぬらつくルルイエ神殿のヴァージンロードをいつか歩いてみたいの。グァオン? プッ、あはははっ」



職業の選択について −Templates−

 原則としてルールブックに記載の「職業のサンプル」に従って主要技能を獲得します。ただし、特にディープワンのキャラクターは多くの場合サンプルをそのまま適用できないので、キーパーとプレイヤーが話し合って適宜修正を加えた方が良いでしょう。

 新しい職業:「漁師」「部族的漁夫」「部族的戦士」



キャラクター間の会話について −Communication−

 プレイヤー・キャラクター間の会話は原則としてルルイエ語で行われます。ディープワンとの混血児や生粋の人間も、技能やロール無しに仲間のルルイエ語を理解することが可能です。ただし、ディープワンのキャラクターが仲間以外の人間とルルイエ語以外で会話をする際は、技能とロールが必要です。



SANチェックについて −SAN Check−

 正気度のルールについては特殊なものが用いられます。
 CoDのキャラクターは自分たちの崇拝する水生の神性(クトゥルフやダゴン、ハイドラ等)を目撃しても正気度ロールの必要はありません。同胞のユグやオトゥームの従者等を目撃した際も同様です。 自らの仕える神性以外の存在(アザトースやツァトゥグァの無形の落とし子等)を目撃した際は通常通りSANチェックが必要です。また、同じ深海の住人ではあるものの、系統の違う生物たち(緑の深淵の住人等)を目撃した際も、同様にSANチェックが必要です。
 正気度喪失の際のルールは通常ルールに準じますが、完全に発狂したディープワンは深海の主の下へと泳ぎ去ってしまうことでしょう。
 CoDのキャラクターが目撃してもSANチェックの必要が無い神話的生物は以下の通りです。

 クトゥルフ*
 ガタノソア*
 ゾス=オムモグ*
 イソグサ†
 クサイラ†
 オトゥーム†
 クトゥルフの落とし子*
 ダゴン*
 ハイドラ*
 プチチア=リイ※
 ディープワン*
 ディープワンとの混血児†
 ユグ†
 深みに棲むもの†
 オトゥームの従者†

 *:ルールブック参照
 †:The Creature Companion(未訳)参照
 ※:"ハイドラの娘"プチチア=リイは信じられないほど齢を重ねたディープワンです。現在はイハ=ンスレイを棲み家としています。能力値等はダゴン/ハイドラと同じものとします。



デザイナーズ・ノート
 最初に言い訳をしておきますと、このヴァリアント・ルールは"未知なる恐怖への挑戦"という『クトゥルフの呼び声』のテーマとは相反するものです。しかし「たまにはダークヒーローがやりたい」という気持ちもあるわけでして、どうせやるなら本格的に、ということで作られたのがこのルールです。
 「最近シナリオがマンネリだな〜」とか「お前のシナリオの傾向は全てお見通しだ!」とか言うときに、飛び道具的に使って話のネタくらいになれば幸いです。

参考資料:
 クトゥルフの呼び声 ルールブック
 キャンペーン・シナリオ ヨグ=ソトースの影
 クトゥルー神話辞典
 The Creature Companion
 The Keeper's Companion
 The Keeper's Companion2
 Escape from Innsmouth
 The Encyclopedia Cthulhiana

設定協力:
 へむれん
 (敬称略)