苦き追憶

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捜査:警察署、ハロルド・クリンショウ刑事


CM:ボストン警察署は大きな古いレンガ造りの建物です。中に入ると、疲労した警官、怯えた目撃者、怒った犯罪者でごった返しています。受付にはきびきびとした忙しそうな事務官がいて、元気良く用件を聞いてきます。(事務官)「どのようなご用件ですか?」。
トム「ここ最近起きている殺人事件について調査しているのですが」。
CM:(事務官)「それでしたらハロルド・クリンショウ刑事が担当ですので、あちらへどうぞ」。そう言って、とあるブースを指し示します。ブースには一人の男性がいて、皆さんに背を向けて電話中です。
トム電話が終わるのを待ちましょう。
リチャード何を話しているのか聞き耳を立てながら。
CM:(クリンショウ刑事)「……だから今晩までには何とかしろ、さもなければ地獄行きだぞ!」。
リチャードえ!?
CM:彼のブースは整頓が行き届いています。1個の電話、コンピュータ、小さな家族の写真が入った写真立て。
リチャード家族の写真を見て、自分の妻子を思い出して表情を曇らせます。
ニコラス(笑)。
CM:クリンショウ刑事はガチャン! と電話を叩きつけるように切ります。
リチャードたった今来ましたという風を装って声をかけます。「クリンショウ刑事ですか?」。
CM:ハッとして振り返ると、彼はモゴモゴと弁解します。「申し訳ない。まったく使えない水道業者なんだよ。どのようなご用件で?」。
トム(笑)。
CM:クリンショウ刑事はずんぐりむっくりの中年男性です。
リチャードさて、何と言って質問すべきか。素直に調査している事を言うべきですかねぇ。
ニコラス探偵がいるんだから、普通に「調べています」で良いんじゃないの?
トム「私、私立探偵のトム・カークといいます。ここ最近頻発している連続殺人事件について調べていまして。捜査に支障のない範囲で何か教えていただければと思いまして来ました」。
CM:(クリンショウ刑事)「ふ〜む。なるほどねぇ。で、どのようなことが聞きたいのかね?」。
トム(ニコラスとリチャードに向かって)「……君たち、何か聞きたいことはあるかね?」。
一同:(笑)。
ニコラス「助手のニコラスといいます。被害者の共通点というのは何か分かっているのでしょうか?」。
CM:(クリンショウ刑事)「それは<捜査>技能で段階判定をして成功したら教えてあげようかな」。
ニコラスおりゃ! (コロコロ)H成功。
CM:(クリンショウ刑事)「警察の努力に対して興味を持ってくださってありがとう。ボストンの優秀な刑事たちが捜査に当たっています。この件に関して何か進展があればお知らせするようにしておきます。立ち寄ってくださってありがとう。ドアは右手にあります」。
ニコラスええ〜!? 終了かよ!?
一同:(爆笑)。
CM:ああ、すいません。これはL成功の場合でした(笑)。H成功であれば、事件が起こった時間、場所、死因を教えてくれます。特に極秘事項でもないので、まとめた捜査ファイルを見せてくれます。

殺人事件の詳細

2月18日。ユークリッド通りのゴミ収納庫の中の死体をボストンの警官が発見。被害者は24歳の白人男性。死亡推定時刻は前夜10:30頃、死因は顔と首を覆う第三度火傷。

3月1日。ビッグ・イージー・モーテル432号室で夫が死んでいるのを女性が発見。被害者は46歳の白人男性。死亡推定時刻はその夜の10:20頃、死因は顔と首を覆う第三度火傷。

3月3日。ユークリッド通りから離れた路地で死体が発見される。被害者は18歳のアフリカ系アメリカ人男性、死因は複数回の銃撃によるもの。死亡推定時刻は1日の夜。同じエリアで同じ日の夜に起こったため、警察はこの事件と前の事件に関連性があると疑っている。

3月23日。ダン通りとアーノルド通りの間の路地でさらなる銃殺体が発見される。犠牲者は31歳のアジア人男性。死因は銃撃後のナイフによる刺し傷。

4月3日。さらなる火傷の犠牲者がオーシャン通り845番地の歩道で発見される。被害者は29歳の白人男性。

4月19日。銃殺体。クイック=E=マートの外。クイック=E=マートのオーナーは被害者がその晩、彼から強盗した男に間違いないと証言した。被害者の死体にお金は残っており、クイック=E=マートに返還された。

4月21日。銃殺体とナイフによる刺殺体。23歳の白人男性と21歳の黒人男性。二人とも殺された時にナイフを持っていたが、そのナイフに血は付着していなかった。

6月6日。火傷の被害者。34歳の白人男性。発見場所はオーシャン通り732番地の「空の貝殻亭」640号室。

6月6日。銃撃とナイフ。27歳の白人男性。発見場所はショウマット銀行の屋上。殺された時、被害者は銀行に押し入ろうとしていた。

7月16日。火傷の被害者。29歳のヒスパニック系の男性。ローランド・パークのベンチで発見される。

ニコラス3月1日と6月6日は同時に事件が起こっているね(※3月3日に発見された事件の死亡推定時刻は1日の夜)
リチャード……銃撃とナイフで殺している犯人と、火で殺している犯人は別なんじゃないかという気がしますね。……銃撃とナイフは犯罪者を殺している感じだなぁ。
トム銀行の屋上で夜中に殺されているというのも、不自然っていうかオカシイよな。
CM:クリンショウ刑事によると、唯一6月6日の「空(から)の貝殻亭」で起こった事件について、目撃者がいるそうです。メアリー・ニコルスという空の貝殻亭で働いているメイドが、犯人らしき女性を見かけています。
ニコラス女性?
CM:ただし、メアリー・ニコルスはあまり頭の回転が良いタイプの人じゃないらしく、警察は彼女の証言をそれほど重要視していないみたいです。
一同:ふ〜む。
CM:(クリンショウ刑事)「君たちはまだ気付いてはいないと思うので、私の推理をお話しよう。殺害にいたるそれぞれの方法・動機の違いによって、殺人は2つのグループに分けられる。北寄りで起こった事件が火傷によって殺され、南のグループが武器による襲撃で殺されている。しかも、そちらの助手君(※リチャード)も言っていたが、南グループの犠牲者は何らかの暴力事件やそれに類する罪を犯していた。なお、指紋等の証拠はまったく見つかっていない」。
 捜査ファイルを見た皆さんはもう一度<捜査>技能で段階判定ができます。
トムL成功じゃ。
ニコラスH成功。
リチャード<捜査>技能、持っていないんだよね。失敗。
CM:ニコラスが目敏く見つけますが、そのファイルの内容の細かい所に目を通していると、使われた武器は「1920年代の古いもの」であると記載されています。そして火傷の被害者はベッドで見つかった場合でもシーツや枕が焦げた跡がまったくないそうです。さらに南寄りの犠牲者は全員、強盗や強姦などの前科があります。被害者の所持品は財布も含めて残ったままです。これは路上で起こった殺人事件としては極めて異常なことです。
トムそもそも、骨董品の銃で殺すというのも異常だけどねぇ。
CM:クリンショウ刑事は「何か分かったら教えてくれ」と言って面談を終えます。警察署を出ると、外はもう暗くなっています。
リチャードそれならちょうど良い。10:20くらいになったら、現場をうろついてみますか?
トムそうだね。



捜査:空の貝殻亭


ニコラス最新の事件があったローランド・パークを中心に、北寄りの地域をウロウロしてみます。
CM:北寄りと言うと……「空の貝殻亭」がある付近ですね。

 このエリアは“成人向け”映画館、安っぽいバー、低価格ホテルが集まった場所だ。通りにはほとんど誰も歩いておらず、見知らぬ者が通り過ぎるのを見ると必要以上に怯えている。
 「空の貝殻」はクラシックな趣と塗装されたばかりであるためにこのブロックで最も魅力的な建物かもしれないが、“出血大サービス!”という看板がその魅力の大部分を損なわせている。店内に入ると、バーの役目をする大きな部屋になっている。テーブルはすべて黒く、部屋にはほんのわずかに人がいるだけで、君たちが入ってきた時にドアを見ようともしない。頑丈なオーク材のカウンターの後ろにいた、明るい赤色の髪の大柄のがっしりした女性が顔を上げて、「何のご用?」と尋ねてくる。

リチャード「とりあえずビールを貰おうか。(ニコラスを指して)彼にはミルクを」。
CM:女バーテンは「オーケイ」と言って各人の前にグラスを置きます。
リチャードビールを飲みながら「今日はやけに空いているね」と話しかけます。
CM:(女バーテン)「最近この辺りも物騒でねぇ。あまりお客が来ないので困っているのさ」。
リチャード「そういえば、この店でも事件があったそうじゃないか?」。
CM:(女バーテン)「え? いや、その、う〜ん、そんな風に言われているけど、大部分はこの先にある「オオサカ・リカー」という酒屋の周辺で起こった事さね。うちは関係ないよ!」。
リチャード店内を見回してみますけど、メアリー・ニコルスらしき人物はいますか?
CM:店員はこのバーテンだけだね。バーテンの名前はメイ・ユースタス
リチャード「この店であった事件の目撃者がいるって聞いたんだけど?」。
CM:(メイ)「う〜ん、あまり大きな声では言いたくないんだけどねぇ」。メイによると、バーで夜遅くまで過ごした男女が部屋をとって2階に上がって行った、と。その内の男の方が事件の被害者です。ただし、その日は店が忙しかったので、女の方の容貌とか特徴は思い出せないのだとメイは言います。バーの従業員のメアリーが女性を見かけたと警察に証言したけど、メアリーは注目を集めたいだけなのだとメイは考えているようです。「メアリーは頭が煙に巻かれた間抜け」だとメイは言います。
リチャード「なるほど。興味深い話だね。そのメアリーさんとやらは今はいないのかい?」。
CM:(メイ)「メアリーなら地下で洗濯をしていると思うよ」。
リチャード「ちょっと話を聞かせてもらっても良いかな?」。
CM:(メイ)「意味はないと思うけどねぇ」と言って店の奥にある扉を指差します。
リチャード「ありがとう」と言って、ビールの代金とチップを置いてそちらへ向かいます。

 地下室へのドアを開けると、熱と蒸気が顔に当たる。大型機械のうるさい駆動音が聞こえる。見回すと、いくつもの工業用洗濯機が支柱を引き抜かんばかりに揺れながら動いている。小柄な中年女性が反対側の角に座って本を読んでいる。彼女は酒場の制服を着ており、機械の騒音であなたたちには気付いていない。彼女まであと数フィートのところまで近づくと、彼女は飛び上がって驚いて、叫ぶ。「ああ、びっくりしたわ。ここで何をしているの? 道に迷ったのかしら?」。

リチャード「メアリーさんかい?」。
CM:(メアリー)「ええ、そうよ」。
リチャードこちらも名乗って、「あなたが今起こっている殺人事件の犯人を目撃したと聞いて、興味を引かれたんだよ。できたら、話を聞かせてもらえないか?」。
CM:メアリーはキョロキョロと皆さんの顔を見回しています。皆さん、PER(人格)で段階判定をしてみましょう(コロコロ……リチャードのH成功が最高)。それでは「もしPCの一人がハンサムな若者であれば、彼女は特に恥ずかしがって、そのPCを密かに盗み見るようになります」とシナリオに書いてあるので、リチャードのほうをチラチラと盗み見るようになります。
トム(笑)。中年女性からの熱い視線が。
CM:メアリーはリチャードに向かってこう話します。

 「ええと、夕方の掃除のシフトに入っていたんですよ。時間を基準としてなるべく多くの人が泊まれるようにしているので、いつも部屋を用意しておくんです。それはともかく、642号室へ行こうとしていたんですけど、ボーっとしていたのかしら、640号室のドアを開けちゃったんです。ええと、中には女性がいて、哀れな男性の上に立っていました。以前彼をバーで見た事があるんですよ、すごくキュートな男性でした。でも彼は動いていなかったの。眠っているのだと思ったわ。女性は私にはまったく気付いていませんでした。中に入った時にうるさい音を立てていたにもかかわらずですよ。彼女はただ男性の上に立っていて、私は向きを変えて出て行きました。すごく変な音を聞いたので、最後に振り向いたら、女性はいませんでした。あんなに素早く彼女がどこへ行ったのかは分かりませんが、彼女はそこにはいなかったの。まあ、ちょっとは心配だったけど、慌てて部屋から出ると642号室を掃除したわ。私が見た中で、最も変な出来事だったわ。男性が殺されたって聞いたのは、翌日仕事に来た時よ。しかも、彼には奥さんがいたの! 誰が何をするか分からないものねぇ。それで、私はブーツを突っかけるとお巡りの所までまっすぐ走って、今あなたたちにしたのと同じ話をしたわ」。

リチャード「女性がどんな顔をしていたかは覚えていないかい?」。
CM:メアリーは難しい顔をした後、「若い女性だったのは間違いないわ」と答えます。
リチャードそうか……。「興味深い話をありがとう」と言って、少しチップを渡してバーへ戻りましょう。

 その晩は事件は起こらず、エンヴォイたちは翌日の調査に備えて床に就きました。




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