苦き追憶

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捜査:クリストフの銃


 クリストフの遺留品とシンシアのロケットを手に入れたエンヴォイたちでしたが、その活用方法について今ひとつ有効な手立てが見出せません。探索系のゲームにおいてここがプレイヤーの腕の見せ所なわけですが、なかなかすんなりと行かないのがRPGというものです。というわけで、ここらでヒントを一つあげましょう。

CM:まだ見落としている点がありますよ。
一同:
CM:クリストフが出現した時の事を思い出しましょう。彼はナイフ(ナイフA)を腰に差して、拳銃(ピストルA)を使っていましたよね? クリストフの鞄の中には何が入っていましたっけ?
リチャード……ナイフ(ナイフB)とホルスター?
ニコラス……ナイフ(ナイフB)はあって、拳銃(ピストルB)はないっていうこと?
CM:そゆことです。
トム拳銃(ピストルB)がどこかにあるっていうことか。
ニコラス警察にはなかったよね? クリストフは殺された時に拳銃は持っていなかったのか?
リチャード襲われた時に奪われたのかもしれないですね。
CM:可能性はありますね。
トム明日になったら、古物商あたりを回って、1920年代の拳銃がないか探してみよう。もしかしたらクリストフがなくした(?)拳銃が見つかるかもしれない。
CM:了解です。では本日はホテルに戻って休息するということで。

CM:翌日になりました。今日は古物商に行くということでしたよね?
トム「このホルスターに合うようなアンティークな銃を探しているんだよ」。
CM:(古物商)「ずいぶんと古いホルスターだねぇ」。
ニコラス「1920年代に水夫たちがよく使っていたと思われるものなんだが」。
CM:(古物商)「ウチでは扱っていないねぇ。どんな銃に合うかも分からないけど、もしかしたらボストン歴史協会で『広大な海』展を開催中だから、同タイプの銃が展示されているかもしれないよ?」。
一同:そんな催し物が!!(笑)
ニコラス行きます!
CM:それでは閑古鳥が鳴いている『広大な海』展にやって来ました。皆さんが入場すると「よくお越しくださいました!」と言って老館長のチェスター・ウィリアムズが出迎えてくれます。「せっかくですから、端からご案内しましょう!」。
トムヒマそうだよ(笑)。
CM:ウィリアムズ館長は無関係な展示品を必要以上に詳細に説明して皆さんを退屈させてくれます。
ニコラス展示品にはアンティーク的な価値のある物もあるの?
CM:あるでしょうね。館長に案内されて展示品を見ていくと、ありました、銃です。1920年代に水夫が使っていた銃だそうですよ。
リチャード「ほほう」。
黄金の指輪CM:銃は黄金の指輪と一緒にケースに入れられています。
リチャード「これは一体……?」。
CM:(ウィリアムズ館長)「1949年に匿名で寄付された品ですな。由来等は分かっていませんが、指輪と一緒に寄贈されたので、一緒に展示しております」。
ニコラス「指輪には何か書かれていませんでしたか?」。
CM:(ウィリアムズ館長)「指輪の内側にラテン語で何かが書かれているのが見えますかな? もちろん皆さん、ラテン語はお読みになられるとは思いますが」。
一同:(笑)(※<古代言語(ラテン語)>技能は誰も持っていませんでした。『クトゥルフ神話TRPG』なら基礎教養なんですがねぇ)
リチャード「間違っていたら恥ずかしいので、ウィリアムズ館長、読んでいただけませんか?」。
CM:(ウィリアムズ博士)「“最愛のシンシアへ”と読めますな」。
リチャードやっと指輪が出てきたな。これでドンピシャでしょう。
トムうむ。
ニコラス問題はこの指輪をどのようにして手に入れるかだけど……。
リチャード「この指輪をしばらくお借りできませんか?」。
CM:(ウィリアムズ館長)「いやー、さすがにそれは。私の私物ではありませんので」。
一同:どうするか……。
CM:ただ、指輪自体は非常に簡素で、悪く言えばどこにでもありそうな感じです。黄金でできた、非常にシンプルなデザインの指輪です。
ニコラス……偽造! なじみのティファニーに行って同じようなものを作ってもらう!(※←ディレッタント)
CM:一日あれば“最愛のシンシアへ”も含めて作る事は可能でしょう。

 エンヴォイたちは翌日の黄金の指輪完成まで待つことにします。

CM:(ティファニー店員)「お待たせしました。こちらがご依頼の指輪です」。
ニコラス「うむ、ご苦労だった」。パサッ(※札束を放る仕草)
CM:(ティファニー店員)「ははー!」(※恭しく札束を受け取る)
リチャードよし。これで時間(午後10:20頃)になったら南の通りをうろついてクリストフの出現を待とう。
CM:まぁ、クリストフは犯罪の現場にしか現れないので、それに該当する事件が起こるかどうかは皆さんのLCK(幸運度)次第ですかね。



レムナント:クリストフ


 この後、CMはエンヴォイたちに事件が起こるかどうか幸運度で一般判定をさせます(運が良ければ犯罪が起こるというのも、なんだか矛盾している気がしますが、気にしない)。成功する者もいれば失敗する者もいて、なかなかクリストフは現れません。そしてダイスを振り続ける事14回目……。

CM:(ようやく全員成功したか)では2週間くらい経ったある日の午後10:20頃、「ドン! ドォン!」という聞いたことのある銃声が行く手の路地を曲がった方角から聞こえてきます。「あっちよ!」とくららが路地の先を指差します。
一同:ダッシュ!
CM:皆さんはついに、運良く、強盗の現場に居合わせたのでした。
一同:(笑)。
CM:駆けつけると、3人目のガラの悪い若者の咽喉笛をナイフでかき斬ったばかりのクリストフと遭遇します。
一同:笑い事じゃねぇな。
CM:クリストフは前回と同じく殺したチンピラのポケットの中をゴソゴソと漁り始めます。
リチャード「クリストフ! 探しているのはこれか!?」(指輪を差し出す)。
CM:するとクリストフはチンピラのポケットを漁るのをやめて、指輪を凝視します。そしてリチャードに近づくと「これは私から盗んだものかね?」と尋ねます。
リチャード「いや、違う!」。
ニコラス「君のために取り戻したものだ!」。
リチャード「シンシアはまだ空の貝殻亭で君の帰りを待っているぞ! それを君に伝えに来た!!」。
CM:クリストフはもう一度指輪を見ると、それを手にとって「ついに再び、我が愛を見つけることができた!」と叫びます。そして彼は空の貝殻亭に向かって走り出します。
一同:追う!!



再会の恋人


CM:クリストフの走る速度はかなり速いものですが、皆さんが見失ってしまうほどではありません。前方に空の貝殻亭のけばけばしい看板が見えてきました。空の貝殻亭に着くとクリストフは「バーン!」と勢いよく入り口の扉を開けて、「シンシア! 戻ってきたよ、愛しい人!」と叫びます。メイが驚いて「何だってんだい、アンタ!?」と言っています。
リチャード「まあまあまあ!」と言ってメイを押さえます。
ニコラス他の客は?
CM:「何だ、何だ!?」と他の客たちはざわめいています。
 リチャードは持っていたロケットが急激に冷たくなるのを感じます。そしてロケットからシンシアが現れます。しかし、先日見たシンシアとは姿が異なっています。愛らしい容姿ですが、必ずしもリチャード好みの容姿というわけではありません。おそらく、これがシンシアの“本当の”姿なのでしょう。
トムなるほど。
CM:シンシアは憤怒の形相で「今までどこにいたの!?」とクリストフに詰め寄ります。しかしクリストフはその問いに答えることなく黄金の指輪を差し出して、「シンシア、君にプロポーズをしに来たよ。結婚してくれ」と言います。するとシンシアの表情は一変して、晴れやかに微笑して、赤面して「もちろん返事はイエスよ、愛する人」と答えます。2人は抱き合うとキスをして、そのままスゥーッと消えて行きます。
ニコラス《アストラル・アーマー》をキラキラさせて、それを見送ります。
CM:祝福の《アストラル・アーマー》! そんな使い方が!!(笑)
リチャード「……今度の絵の題材は決まったぞ!」。
CM:ちょうど地下の洗濯室から出てきたメアリーがその現場を目撃して感激しています。2人がいた場所には黄金の指輪と銀のロケットが残っています。一部始終を目撃した何も知らない一般のお客さんたちは「幽霊が出たーーーーー!」と悲鳴をあげて入り口や裏口から逃げ出して行きました。
トム(笑)。

CM:くららはメアリーと一緒になって「素敵! こんなの、小説でも読んだことないわ!」と言って感動に浸っています。振り向くと、バーテンのメイがカウンターに人数分の飲み物を用意してくれました。(メイ)「こいつは私のオゴリだよ」。
リチャードではメイにロケットと指輪を渡して、「一緒に飾ってやってくれ」と。
CM:(メイ)「こりゃ、良い客寄せ話になるよ」。おそらく、ひどく誇張された美談として、店の売り物にするつもりなんでしょうな(笑)。
ニコラス目撃者も複数いるから信憑性もあるしね(笑)。
CM:ではメアリーも含めて、そこにいた人たちは皆手にグラスを持ちます。そして、「乾杯!」。

 後日談。
 ある日、ボストン歴史協会内を見回っていたチェスター・ウィリアムズ館長はふと違和感を覚えた。展示ケースに顔を近づけて、館長は首を捻る。
 「はて、確かこの拳銃と一緒に金の指輪が展示してあったと思ったが、どこにやったかな……?」。
 “贋物の”金の指輪は、銀のネックレスと一緒に、空の貝殻亭のショーケースで輝いている。




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