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超・究極のBH
瘋癲狼藉帖
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June ***
2006
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Jun-28-2006
布テープの効用(miscellaneous)
コルクと言えばワインの栓、原料のコルク樫の樹皮からワインの栓を抜き、残りを粉砕して固めたブロックをスライスして出来たのがコルクシートです。
SUT-100では、音道のコーナーと空気室の曲面化処理にコルクシート(2mm厚)を使用していますが、これは、カッターナイフで自在に切れて加工しやすいこと、曲げると適度の弾力があって美しく曲がること、などがその理由です。
 
その使い方に若干の進歩がありましたので、紹介しましょう。
2004年のコンテストまでは、布テープで固定するだけでしたが、2005年のフェスティバルでは、コルクシートの表面を布テープで覆い尽くしました。
この写真はスロートの突き当たりコーナー。空気室に処理したコルクシートも同様です。
 
そのオトに対する効果は、立ち上がりのスピードと粒立ちの改善。
 
そして、そのメカニズムは次の3点
1)ザラついたコルクの表面を平滑化
2)多孔性のコルクの表面を封鎖しオトの侵入を阻止
3)ヤワでカルいコルクの振動をダンプ
 
布テープの効用の第五は、ごちゃゴチャして適切な語彙が見つからないから、miscellaneous (イロイロ)です。
 
 
シリーズ「布テープの効用」は、ここで(ひとまず)お開きにしましょう。
最後は、長岡先生の記述です。
 
「−−−−
もう一つの方法は薄いゴムシートを敷くことだ。この場合ゴムは接着剤と考えてほしい。薄いゴムが床とスピーカーのすきまを埋めつくして、まるで接着したように一体化を実現するのである。
−−−−
また接着剤がフルに効果を発揮するには最低数時間、場合によっては数日かかるが、ゴムの場合も同様、というより流動性が悪いので、最低数日間はかかると見た方がよい。ゴムを敷いてすぐ音を出して、どうのこうのといっても始まらないのである。−−−−」
          ”スピーカー使いこなしノウハウ集”
              1984年、オーディオアクセサリー 34号
              2002年、不思議の国の長岡鉄男(2) P43-44 (再掲)
 
コンテストでは、10分間内に、SPの設置と撤去、その間に演奏。
 
          「布テープの効用」 ぞ、恐るべし。
 
 
Jun-22-2006
布テープの効用(可逆的制振材)
[ミューズの方舟]主催のサウンドフェスティバル2005で好評を得た企画の一つに
「続・音質向上のテクニック」がありました。
そこで多くの聴衆の支持を集めたのが
 * スピーカーユニットの固定ネジを覆う粘着材・ひっつき虫
 * ホーンツィーターの外周に巻く粘着付き鉛シート
の音質改善効果です。
 
ひっつき虫の作用メカニズムは、それを処理した部分の振動を軟らかい非弾性ゴムが吸収して外に出さないこと、鉛シートのは異種金属のマスで振動を減少させること。
今回の布テープの効用はこのタグイです。
 
では、JA0506をお持ちの方は、簡単な実験をしてみましょう。
左は鉛シート、中は布テープ、右はフェルトでホーンの外周を巻いたJA0506II。
 
マスで振動を抑える鉛シート、ゴムがホーンの振動を吸収する布テープ、ホーンに接する空気層の振動を包み込むフェルト、と、それらのメカニズムは異なっていて、オトも微妙に違います。
それぞれを組み合わせるのも面白く、どれを選ぶかは、お好み次第です。
 
さて、次は布テープとフェルトでSPユニット(FE208ES)の裏側を処理した例です。
処理したのは3箇所
1)支柱の内側と開口部には、制振を目的に、布テープを二重貼り
2)支柱の外側には、制振と吸音を目的にリピータブル吸音材
3)マグネットヨークに接するフレームの狭い凹みには、同じ吸音材
1)は信号の割合が大きいこと、2)、3)は信号の通り道から外れることから、使い分けています。
 
もともと、フレームとその周辺の問題点は古くから知られていたことですが、広島はオメガの会の岩田さんのエポキシパテを使用する方法の音質改善効果が絶大です。
ただ、美術・工芸のプロの岩田さんから、次のコメントがあります。
「あのフレーム対策は、効果は絶大でも、もはや改造の範疇ですから、覚悟がいりますよね」
なお、岩田さん、今年もステレオ誌工作人間大集合に投稿され、そこに、鉛とエポキシパテで改良した6N-FE88ESの写真があります(7月号、P41)。
 
布テープやフェルトを用いる方法の長所は、安い・早い・簡単、だから、気軽に、お試し頂けること、もちろん、結果にご不満なら、復元も容易です。
 
布テープの効用の第四は、有害な振動を無力化する可逆的制振材です。
 
 
Jun-16-2006
布テープの効用(リピータブル吸音材)
ハコの内側に吸音材を用いるのは、密閉型やバスレフ型では一般的です。
ところが、ユニット背面の音も利用するBHでは
「原則として吸音材は使用しない」
ことが長岡先生の良いBHの鉄則の一つとなっています。
 
私もこの鉄則の遵守を心がけ、コーナーの曲面化や音道の最適化で、定在波などによる付帯音を抑制しています。
2003年の[ミューズの方舟]主催のSPコンテストに出展したSUT-100には、吸音材を一切使用しておりませんし、10名ほどのSUT-100の愛用者も、吸音未処理のままで満足されていらっしゃいます。
さはさりながら、これに適切な吸音処理を加えると、オトの解像度、そして、透明感、スピード感が増すことから、2004年のコンテストでは、コッソリ、吸音処理をしていました。
 
これまで、一般の吸音処理では、ウールやフェルトが接着剤や両面テープで固定されています。しかし、これでは剥がし難く、また吸音材の再使用もままなりません。
膨大な回数の試行錯誤の繰り返しを要する最適化のプロセス(適所・適材・適量の探索)を可能にしたのは、SUT独自のセパラブル、そして本テーマの布テープを用いるリピータブル吸音材です。
 
SUTで用いる吸音素材は、厚さが約1mmと3mmのフェルト(ポリエステル)のみ、いずれも、生地屋さんから1平米当たり千円位で購入できます。
 
そのフェルトの上に両面テープを貼り(写真上)、次に、セパレーターを剥がして布テープの布側に貼る(下)。これでリピータブル吸音材の出来上がりです。
これは容易にカットできるので、適量を探すのも容易です。
 
続いて、リピータブル吸音材の使用例をいくつか紹介しましょう。
 
スロートの調節板(厚さ9mm)の直後には、厚さ1mm、巾10mmのフェルト。
 
中段で奥側の音道調節板(15mm)の直後には、巾15mmのフェルト。
その厚さは 1mmか3mm、各人のお好み次第です。
 
中段で前側の音道直後には21mmの段差があって、ここはの厚さ3mm、巾20mmのフェルト。
他の調節板の直後に貼るサイズは推測できますネ。
 
ここまでは段差のある箇所への適用でしたが、次の例は音道の折り返しコーナーです。
中段の前の180度折り返し部分では曲面化処理が難しいので、次の簡便な手法で代用できるなら助かります。
 
高さ80mmの折り返しの対面それぞれに、厚さ3mmで巾20mm(黒)のフェルトと厚さ1mmで巾15mmのフェルト(黄)を沿わせます。
 
そもそも、ハコの中に施す吸音材に求める機能は、ハコの中で発生する有害なオトを減少することです。
有害なオトとは、再生ソフトには存在しない、ハコの中で発生する新しいオト、すなわち、歪です。
ところが、残念なことに、同じ周波数の信号と歪を吸音材は識別しません。
 
では、本質的に吸音材そのものに選択性を求められないとき、吸音処理における最適化を成功させる手法があるでしょうか。
 
第一は処理する場所です。
信号の割合が大きい所、すなわち、信号が進むメインストリートへの処理は不要です。
新たな音が比較的多く発生するのは、気流が乱れたり渦が生じる音道がガクンと変化する所、例えば、音道の折り曲げ部分、音道調節板の直後、などですから、ここに着目しましょう。
 
第二は吸音素材の種類とその量です。
これは、貼ったり剥がしたりの繰り返しです。
各人の好みに合わせて、追い込んでいきましょう。
 
オット、大切なことを忘れるところでした。
あなたのSPで、思い当たる所がありますか。
そこに手が届くなら、早速、リピータブル吸音材を試してみましょう。
効果が認められなければ、剥がすだけです。
 
布テープの効用の第三は、最適な吸音処理の探索に役立つリピータブル吸音材です。
 
 
Jun-12-2006
布テープの効用(可逆的固定材)
布テープは、音道の調節板やコーナーの曲面化コルクシートの固定に適しています。
例えば、スロートをベニヤ板で調節するときは、こうなります。
 
予めこのように引いておいた線に合わせて布テープを貼ると綺麗に仕上がります。
 
音道調節板や曲面化コルクシートの固定に布テープを使用する理由は、その接着力が強いというのではなく、後で剥がすことができることです。
 
そもそも、最適化とは、ヤマを探すということです。
音道調節板の場合、音道の断面は決まっていて巾は一定ですから、探索するのは厚さと長さです。
ベニヤ板の厚さはその規格から、5.5mm、9mm、12mm、15mm、18mm−−−
となっています。
最適な厚さは12mmというときは、その両側の9mmと15mmでは12mmより劣ることを確認したということ、すなわち、ヤマを捉えたということです。
また、最適な長さは、厚さによって異なります。
この事情は、バスレフで最適のポートを探すのに対応しています(その断面積により最適の長さが異なる)。
ということで、一つの音道について最適な調節板を探すには、少なくとも9枚の候補を吟味することになります。
SUT-100では、調節する音道は4本あって、最適化には、すくなくとも
9*4*2=72枚の調節板が必要です。
悩ましいのは、各音道について最適な調節板は、それぞれが独立しているのではなく、他の音道の調節板の影響を受けるということです。例えば、スロートだけを最適化し、続いて、他の音道を最適化し、再びスロート最適化すると、その調節板は別のサイズになります。
各調節板のサイズが一定に収束するまで、作業を繰り返すのが、トータルとしての最適化です。
 
冗長な記述になってしまいましたが、要は、最適化のプロセスでは、調節板を貼ったり剥がしたりが膨大な回数になりますが、布テープを用いると、これが比較的容易になる、ということです。
ただ、布テープの接着力は強靭で、一週間も放置すると簡単には剥がせなくなることがあります。
 
所望のサイズに切った布テープを、予め3〜4回、貼ったり剥がしたりして、その接着力を減弱させましょう。
 
布テープの効用の第二は、音道調節板や曲面化シートなどの可逆的固定材です。
 
      ご注意: 布テープを可逆的固定材として使用するときは
            その部位を塗装してはなりませぬ
 
 
Jun-08-2006
布テープの効用(薄いゴム)
この五月の黄金週間に、SUT-100(88ESR)を製作された市原市のSさんから
「それにしてもこのSPの実力は計り知れないものがありますね。
エージング無しにもかかわらず、2年間使い続けたD-37ESの低音を凌駕しています。ただし、瞬発力はESが上のようですが」
とのコメントと共に、次の完成直後の写真を頂いておりました。
 
続いて
「SUTが完成してほぼ4週間が経過しましたので、その後の経過等を報告いたします−−−−
完成後の音の変化は、ユニットのエージングと相まって、完成初期には大きく変動しておりましたが、最近はその変化率が小さくなってきたように感じます。
また、ソースの録音状態が如実に現れるようです」
30年は使用したいと仰って塗装されたSUTの開口部にはフロントグリルが装着され、下には大理石。
隣にあったのD-37ESは撤去されたとのことです。
 
創意豊かで繊細、しかも緻密で器用なSさんからは、ご利用されたSUT-100の組立キットなどについて、いくつかのお小言とアドバイスを頂きましたが、その一つがこのPDFファイルです。
「添付の図は、音道調節板の設置位置と若干の加工部位を示したものです。
これで間違いが無いようでしたら、今後SUTを製作されるかたへの説明用に使用していただけますと幸いです」
若干の加工部位とは、音道のコーナーの曲面処理および中段と下段の天板における布テープを用いるスペーサー貼付の位置ですが、いずれも、すべて、適切に作図されています。
 
実は、組立キットには、音道調節板が同梱されていますが、その設置位置が私のサイトのどこにも記載されていなかったのです。
 
 
ということもあって、これから数回に亘って、段間のスペーサーとしても使用する布テープの効用について、連載することにしましょう。
私が使用しているのはオカモト製で、品番はNo111かNo112、厚さが約0.3mmのものです。これが最善というのではなく、これしか使ったことがないだけです。
シールには、「重梱包に最適な丈夫で強い布テープ」と書かれています。
布テープは薄い粘着性ゴムテープの面があり、重ね貼りができますから、ハコの僅かの狂いなら救済でき、段間のスペーサーとして適しています。
また、重ねる枚数によって、微妙に音が変わるのも面白いところです。
 
布テープの効用の第一は、スペーサーにも適した、厚さを加減できる薄いゴムです。
 
 
 
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