ハコの内側に吸音材を用いるのは、密閉型やバスレフ型では一般的です。
ところが、ユニット背面の音も利用するBHでは
「原則として吸音材は使用しない」
ことが
長岡先生の良いBHの鉄則の一つとなっています。
私もこの鉄則の遵守を心がけ、コーナーの曲面化や音道の最適化で、定在波などによる付帯音を抑制しています。
2003年の[ミューズの方舟]主催のSPコンテストに出展したSUT-100には、吸音材を一切使用しておりませんし、10名ほどのSUT-100の愛用者も、吸音未処理のままで満足されていらっしゃいます。
さはさりながら、これに適切な吸音処理を加えると、オトの解像度、そして、透明感、スピード感が増すことから、2004年のコンテストでは、コッソリ、吸音処理をしていました。
これまで、一般の吸音処理では、ウールやフェルトが接着剤や両面テープで固定されています。しかし、これでは剥がし難く、また吸音材の再使用もままなりません。
膨大な回数の試行錯誤の繰り返しを要する最適化のプロセス(適所・適材・適量の探索)を可能にしたのは、SUT独自のセパラブル、そして本テーマの布テープを用いるリピータブル吸音材です。
SUTで用いる吸音素材は、厚さが約1mmと3mmのフェルト(ポリエステル)のみ、いずれも、生地屋さんから1平米当たり千円位で購入できます。
そのフェルトの上に両面テープを貼り(写真上)、次に、セパレーターを剥がして布テープの布側に貼る(下)。これでリピータブル吸音材の出来上がりです。
これは容易にカットできるので、適量を探すのも容易です。
続いて、リピータブル吸音材の使用例をいくつか紹介しましょう。
スロートの調節板(厚さ9mm)の直後には、厚さ1mm、巾10mmのフェルト。
中段で奥側の音道調節板(15mm)の直後には、巾15mmのフェルト。
その厚さは 1mmか3mm、各人のお好み次第です。
中段で前側の音道直後には21mmの段差があって、ここはの厚さ3mm、巾20mmのフェルト。
他の調節板の直後に貼るサイズは推測できますネ。
ここまでは段差のある箇所への適用でしたが、次の例は音道の折り返しコーナーです。
中段の前の180度折り返し部分では曲面化処理が難しいので、次の簡便な手法で代用できるなら助かります。
高さ80mmの折り返しの対面それぞれに、厚さ3mmで巾20mm(黒)のフェルトと厚さ1mmで巾15mmのフェルト(黄)を沿わせます。
そもそも、ハコの中に施す吸音材に求める機能は、ハコの中で発生する有害なオトを減少することです。
有害なオトとは、再生ソフトには存在しない、ハコの中で発生する新しいオト、すなわち、歪です。
ところが、残念なことに、同じ周波数の信号と歪を吸音材は識別しません。
では、本質的に吸音材そのものに選択性を求められないとき、吸音処理における最適化を成功させる手法があるでしょうか。
第一は処理する場所です。
信号の割合が大きい所、すなわち、信号が進むメインストリートへの処理は不要です。
新たな音が比較的多く発生するのは、気流が乱れたり渦が生じる音道がガクンと変化する所、例えば、音道の折り曲げ部分、音道調節板の直後、などですから、ここに着目しましょう。
第二は吸音素材の種類とその量です。
これは、貼ったり剥がしたりの繰り返しです。
各人の好みに合わせて、追い込んでいきましょう。
オット、大切なことを忘れるところでした。
あなたのSPで、思い当たる所がありますか。
そこに手が届くなら、早速、リピータブル吸音材を試してみましょう。
効果が認められなければ、剥がすだけです。
布テープの効用の第三は、最適な吸音処理の探索に役立つリピータブル吸音材です。