ジョーのお誕生日2010
「フランソワーズ。……と、一緒の時間」 それって去年と同じよとスリーは小さく呟いた。 「それに、……いつも一緒にいるじゃない」 どういう意味? けれどもナインは答えない。 「――まぁ、無理な話だけど」 スリーの口を手のひらで塞ぎ、ナインはそのまま彼女を抱き締めた。 本当に――そういう意味じゃないけど、でも…… 「まあ、いいや」 いつか、ね。 「何が欲しいか、って?そんなの、フランソワーズに決まってるじゃないか」 変な質問だよなあと笑う。 「前はフランソワーズ自身だったし」 あれは楽しかった、と思い出して頬を緩ませた。 「去年は、裸エプロン完全版だし」 さらに頬が緩む。 「いやあ、今年はなんだろうなあ」 ねっ、フランソワーズ? と振り向いたけれど、そこにいたはずのフランソワーズは忽然と姿を消していた。 「あれっ?フランソワーズ?」 **** 「……まったくもう」 今年はどんなのかなあと瞳を輝かせて言われたものの。 「何をしたらいいのよ」 ハードルが高すぎるわ……とフランソワーズは溜め息をついた。 「去年のようなすれちがいは勘弁してほしいな」 本当に、危うく地球的規模のすれちがいになるところだったのだ。 最初から一緒にいればいいんだ。 ジョーは思う。 変に我慢するから、ややこしいことになる。 「ともかく、もうごめんだ」 電話の向こうのフランソワーズは笑ったようだった。 「そんなこと言っても、あなたはレースがあるでしょう?まさか私に来いって言うんじゃないでしょうね?」 もう一押し。 一緒にいたいから。 そう言えば、フランソワーズは頷くだろう。 でも。 フランソワーズだって予定があるだろう。 「勝手に決められても困るわ。私にも予定があるのよ?」 ほら、やっぱり。 「うん。そうだよね」 僕と一緒にいるという方を優先してはくれないだろうか。 そう言ってみようかどうしようか迷っているジョーの耳にフランソワーズの声が響いた。 「ほんと、困るわ。ハリケーンジョーに会いに行く予定が入っているのに」
@旧ゼロの場合 (昨年のお誕生日の出来事はこちら
注:通して読むと全部で12ページあります)
「ま。ジョーったら」
「そういう意味じゃないよ」
「えっ?」
首を傾げじっと見つめる蒼い瞳をしばし見つめ、そうして大きく息をついた。
「無理って何が?」
「オコサマにはまだ早いってこと」
「ま!私、オコサマじゃないもん!」
「はいはい」
「オトナだもん」
「そうだったね」
「だってジョーがオトナに」
「はい、そこまで」
「何が?」
「何でもない」
いつか――
A新ゼロの場合 (昨年のお誕生日はコチラ
注:子供部屋連載のまとめなので長いです)
B超銀の場合 (昨年のお誕生日はコチラ
注:こちらも長いです)
「あら、すれちがってないわ。会えたじゃない」
「運が良かっただけさ」
それは、お互いに同じ事を考えていた証明ではあったけれど。
会いたいと最初から伝えていれば何の問題もないし、そもそも離れなければいいのだ。
「うん。だめかな」
「えっ、だめかなって。ジョー、本気?」
「ああ」
「ああ、って……」
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