トトメスの夜

第1章:シカゴの恐怖
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博物館にて:昼のトトメス

 この立派な石造りの建物は幅広の石段の上に造られている。一列に並んだ観客がガラスのドアから右へとゆっくりと進んでいる。ドアの上にある説明書きはこう読める。「トトメス・ザ・エルダー。忘れられた王。立ち止まらないでください」。

CM:長蛇の列です。
ニコラス大人気! ここで《アンノウンの感知》じゃね?
スティーヴやってみますか。(コロコロ……)う~む、今日は80台しか出ないな(失敗)。
トム我々も列に並ぶかね。
CM:列に並んでしばらくすると、チケットと引き換えにパンフレットをもらえます。パンフレットにはトトメス展全体の見取り図がありますので、(ゴソゴソ)これがその地図です。
スティーヴ「東洋……中世……そして恐竜か。混沌としていて面白いな」(笑)。
トム「恐竜展、見に行きたい」(笑)。

 君たちはその大部分をティラノサウルス・レックスの骨格標本が占めるがらんとしたホールに入る。君の並んでいる列は博物館の他の客からはロープで仕切られている。廊下の左側には「東洋」と「恐竜」の看板が見え、土産物店もある。列は右に移動して、地下室に着く前に急に曲がる階段を下りる。そこでトトメス展が開催されている。
 最初の部屋にはトトメスと共に埋葬されていた様々な副葬品がある。黄金の装飾品、実物大の猫の像、椀と杯、木製の椅子とテーブル、王を地下世界へと運ぶためのボートは、ここのガラスケースの中に陳列されているものの一部に過ぎない。トトメスが発見されたピラミッドとその発掘現場の写真が種類ごとに付されている。
 隣の部屋にはガラスケースの中に直立したミイラが3体展示されている。そばにある説明書きには、ミイラがトトメスと共に埋葬された使用人であると書いてある。ミイラは乱暴に扱えば崩れてしまいそうなほど縮んで萎れている。
 角を曲がると、黄金とラピスラズリで飾られた木製の美しい玉座が見えてくる。それは熟練の技の成せるものだ。
 玉座の隣には王その人がいる。トトメス・ザ・エルダーはガラスケースの中に直立して、内部照明で照らされている。このミイラは他の部屋にあるものとは大きく異なっている。その身体は、包帯に至るまで非常に保存状態が良好だ。埋葬から数千年経っているにもかかわらず、その腕と胸には力が残っているように見え、まるで今にも動き出しそうだ。顔の乾燥した皮膚は少しくぼんでいるだけで、シワの寄った額は考え込んでいるような印象を与えて不気味だ。今にも閉じられた両目が開いて、あなたを見返すかのように思える。
 王の隣にはヒエログリフが刻み込まれた石の破片がある。下にある説明文によると、これはトトメスの石棺の一部で、動かす時に誤って壊れてしまったらしい。ヒエログリフは復活の祈祷文だ。

トトメスのミイラ

スティーヴではせっかく取っておいた<古代言語(ヒエログリフ)>で読んでみます。(コロコロ)成功。
CM:了解。ヒエログリフは「我は永遠なり。定められし時に、我は再び民衆の中を歩む。誰も、我を阻む事はできない」と読める。
トム《アンノウンの感知》……(コロコロ)10、成功。
CM:成功はトムだけですね? ではトムには王のミイラから間違いなくアンノウンの気配が発散されている事が分かります。
トム反応あり!!
CM:どうやらアンノウン絡みの、SAVEの管轄の事件だということは間違いないようです。
スティーヴ他の展示品の中にミイラ作成ツールとかがあると思うんですが?
CM:ああ、カノープスの壷とか?
スティーヴその中に骨髄を抜き出すような道具はありませんよね?
CM:それはないね。
ニコラス王のミイラは当然固定されているんだよね? 固定しているバンドとかに、外されたような跡はない?
CM:それもありません。
ニコラスポーズが変わっているとかもないよね?
トム(笑)。
CM:パンフレットに載っている写真の通りです(笑)。係員が「立ち止まらないでください!」と行って列を流しますので、王のミイラの前でじっくりと観察している時間はありません。人の波に押し流されるようにして、1階に戻ってきてしまったよ、と。



土産物店

ニコラス(博物館の見取り図を見て)ここに土産物店があるね。ここで例のバッジが売っているのかな?
スティーヴバッジもそうですが、もっと分厚い、詳しいパンフレットとかは置いてありますか?
CM:ありますよ。

 この小さな土産物店には博物館のコレクションのすべてを網羅した土産物と本が売っている。入っていくと、正面に商品の棚がある。棚にはおもちゃの恐竜、東洋の古代遺物の絵葉書、キーホルダー、ポスター、塗り絵帳といった様々なトトメスの土産物がある。さらにいくつかのバッジも売っている。バッジには「シカゴ・リンク博物館でトトメス王を見ました」と書かれている。

ニコラスバッジを買います。
トムでは私は塗り絵を。

 店の反対側に並ぶ本は微々たる物だ。タイトルは『エジプトの神々』E.ウォリス・バッジ著、『恐竜大図鑑』、『東洋の秘宝』、『写真で見るトトメス・ザ・エルダー』、『明王朝の芸術』、『巨人の時代』といったものだ。
 レジカウンターの後ろの、若くて非常に可愛い黒髪の女性が声をかけてくる。「いらっしゃいませ、何をお求めですか?」。

ニコラス「ここの店で一番の売れ筋は何だい?」。
CM:「このバッジですよ」と言って彼女が指差したのは「シカゴ・リンク博物館でトトメス王を見ました」と書かれた説得力のあるバッジです。
ニコラス「一日に何個くらい売れるの?」。
CM:(店員)「来た方のほとんどが買っていかれますので……一日4,000個くらいでしょうか?」。
ニコラスそんなバカな(笑)。
CM:冗談はさておき、100個単位で売れるそうです。トトメス展のお土産としては鉄板です。
スティーヴ「私はこれを」と言って、厚めの方のパンフレットを。
CM:『写真で見るトトメス・ザ・エルダー』をお買い上げください。
スティーヴそれを買っておきましょう。
トム「では私はこれを」と言って『巨人の時代』(※恐竜関連の本)を買います(笑)。
CM:(店員)「まいどあり~」。

 女性のそばにいた背が低くて痩せた白髪交じりの男性があなたに微笑む。彼は茶色のツイードのジャケットを着て、その折り返しにバッジをつけている。それには それぞれ"I ♥ my cat" 、"Meow Power"と書かれている。彼は女性に顔を向けてこう言う。「ちょっとキーホルダーを取ってくるよ」。彼女が頷くと、彼は足を引きずって店から出て行く。

エドガー・アップルビースティーヴ……《アンノウンの感知》。成功。
CM:老人からアンノウンの気配を感じます。
スティーヴ仲間に目配せをしてから、彼の後をつけてみますが。
CM:「関係者以外立ち入り禁止」という札の掛かったエリアに入って行ってしまう。
スティーヴ今は周りに人もいるでしょうし、立ち入り禁止区域に入り込んだらすぐにバレるだろうなぁ。引き返します。
ニコラス店員のお姉ちゃんに「あの人はこの店の店主なのかい?」。
CM:(店員)「あの人、エドガー・アップルビーさんというのですが、彼はこのトトメス展について各地を回っているグッズ屋さんです」。つまり、バッジやキーホルダーを作って販売しているのは彼です。
ニコラスああ、そうなのか!
スティーヴなるほど。
ニコラス「アンノウン関連の人物が売っているグッズとなると……」。
トム「いや、安心しろ。俺が買ったのはトトメス展と関係がない『巨人の時代』だから」。
ニコラス「いや、安心しろ、じゃないよ」(笑)。
トム「そういえば、バッジを買ったのは君だけだな」。チラッと(笑)。「ちょっと今夜は用心したほうが良いんじゃない?」と言ってニヤニヤ笑いを。
ニコラス(笑)。立ち入り禁止区域の奥まで行って締め上げてやりたい所だけど……捕まるよな、やっぱり(笑)。
CM:(店員)「もっとアップルビーさんに話を聞きたいのなら、クロイデン・ホテルに泊まっているので、訪ねてみたらどうですか? 勤務時間外であれば、部屋にいると思いますよ」。
ニコラス(地図を見て)クロイデン・ホテル……ここか。



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