

アサートンの講演
スティーヴ:博物館を出たら、次はアサートン博士について調べたいですね。彼が学会でどのような見方をされているのかが分かれば、これから聴く講演のポイントも押さえられるかもしれないですから。
CM:なるほど。アサートンはイリノイ州のエヴァンストンに住んでいるから、シカゴも地元みたいなものだからね。図書館に行けば資料も見つかるかもしれない。
トム:アサートンの講演会まで、それくらいの時間はある?
CM:調べるテーマは絞られていますから、それくらいはできるでしょう。
スティーヴ:図書館に行って資料を調べます。<考古学>で。(コロコロ)M成功です。
CM:アサートンはイギリスの生まれで、エヴァンストンに住んでいるのはここ5年間くらいです。彼は過去に携わった発掘事業で見つかったミイラを実際よりも古い、王朝以前のミイラであると主張して、実際にはそれが間違いであったという一件がありました。その一件以来、彼の評判は地に落ちています。
スティーヴ:なんか、どこかで聞いたような話だな(笑)。
CM:ただし、今回のトトメス・ザ・エルダー発掘により、再び脚光を浴びているといった状況です。この発見に関しては、専門家も疑いの余地がないと認めています。
一同:ふ~む。
トム:真昼間から探れるのはここまでくらいでしょう。
スティーヴ:そうですな。一通り見て回ったし、この後のタイムテーブル的にはアサートン博士の講演会ですかね?
トム:そうだね。
ニコラス:もう夕方くらい? じゃあ、行きましょう。
CM:ではアサートンの講演会に行くということで。皆さんはタクシーで会場へ向かいます。
タクシーは湖岸通りを曲がって南へ向かう。右手は明かりに照らされた夜の町、左手はミシガン湖だ。小さなボートが岸に並んでいる。リンク博物館を通り過ぎて、湖に張り出した狭い半島へ向かう道を曲がる。電気の後光に囲まれたドーム型の建物を通り過ぎると、その真向かいにある正面がガラス張りの建物の前にタクシーを寄せて、$5.00を請求する。
CM:「ジェームズ・アサートン博士 講演会」と横断幕が張られています。
ニコラス:人出は?
CM:盛況です。会場のドアは開いており、座席は埋まり始めています。皆さんが会場に入って間もなく、席は満席になります。すぐにライトが薄暗くなり、タキシードを着た男性がステージに歩み出ると、観衆は行儀の良い拍手で彼を迎えます。タキシードを着た男性はリンク博物館の館長、ヘンリー・ウートンだと自己紹介します。
「今晩、皆様が話をお聞きになる人物は、考古学界で最も有名で、話題の的となっている人物です。彼の理論は単純すぎ、科学に基づいていないと却下されました。それにもかかわらず、今宵、彼は間違いなく今世紀最大の発見を携えて、我々の前にやって来ました。ご紹介します、ジェームズ・アサートン博士です」。
万雷の拍手に迎えられて、背の高い、痩せた、白髪の正装した男性がステージを歩いて演壇に着く。差し出された館長の手をぞんざいに握り返して、そっけなく演壇へと移動する。拍手が収まると、観衆の中を囁き声が飛び交う。「見て、言った通りでしょ……」、「このトトメスの発見で、彼は天狗になってしまったのさ……」、「アサートンは常に傲慢な男だからな」。
CM:聴衆から聞こえてくるヒソヒソ声で、アサートンの評判の悪さがうかがい知れます。
一同:ふ~む。
CM:アサートンの講演が始まります。内容は博物館で貰ったパンフレットに書いている事を言っています(笑)。「そこで、私が“ここだ!”と思ったところを人足に掘らせたところ――」とか、「私が目をつけていたところには、やはりこれがありまして――」とか、手柄を独り占めにしているような印象を強く受けます。
ニコラス:(笑)。
CM:そしてこのトトメス・ザ・エルダーの発見が、エジプト考古学上最も重要な発見であると、何度も繰り返します。完全に自己満悦の数分です。
ニコラス:ウトウトしてます(笑)。
スティーヴ:一応《アンノウンの感知》をしてみますが。(コロコロ)成功。
CM:気配はないね。
スティーヴ:なるほど。
CM:アサートンが指示すると、ステージのカーテンが開いてモニターが出てきます。おそらく発掘現場のスライドを見せてくれるのでしょう。カシャ、カシャという具合にスライドが切り替わるたびに、アサートンがその光景の説明をします。スライドの画像は皆さんが博物館で既に見た写真がほとんどです。ただし、半分砂に埋もれたピラミッドを発掘しているスライドが映し出されます。このトトメス・ザ・エルダー王は有名なクフ王たちよりもかなり先行する時代の王なので、もしこのピラミッドがトトメス・ザ・エルダー王のものであるとすれば、ピラミッドという文化の創成期に造られたものではないかと推測されます。
スティーヴ:そうですね。
CM:ピラミッドの先駆けともなる発見ですので、そういう意味でも話題となっているのでしょう。トトメス・ザ・エルダー王のミイラは、このスライドのピラミッドの内部で発見されたとのことです。このピラミッドの周辺にも、数多くの墳墓が最近になって発見されており、トトメス・ザ・エルダー王に仕えていた貴族たちが埋葬されていたと考えられています。
一同:ふむ。嫌な予感が(笑)。
CM:スライドが切り替わると、今度は人間大のスフィンクスが映し出されます。
スティーヴ:ほほう。
CM:体がライオンで、頭部は鷹の形をしています。有名なギザの大スフィンクスとは形状は異なりますが、スフィンクスである事は間違いありません。発掘隊に出資しているのはイギリスの機関なのですが、そのイギリスとエジプト政府の合意により、スフィンクスは現在カイロのアル=アズハル大学に所有権があると説明されます。トトメス展にこのスフィンクスが展示されていないのは、そういう理由です。
トム:「なるほど」。
CM:(アサートン博士)「このスフィンクスの台座にはヒエログリフで興味深いメッセージが刻まれています。翻訳すると、“トトメスの永遠の死の秘密を守るもの。彼の死は私から取り出す事で成される”。“永遠の死”というフレーズは、死後の世界に対するエジプト人の強固な観念を思うと、極めて独特なものです」。
スティーヴ:「“トトメスの永遠の死の秘密を守るもの。彼の死は私から取り出す事で成される”」……。
CM:<神話/伝承>技能を持つキャラクターがいたら、ロールをどうぞ。
スティーヴ:(コロコロ)M成功。
CM:くららも持っているな。(コロコロ)……02。C成功。
スティーヴ:頼りになるなぁ(笑)。
CM:くららがコソッと言うには、「多分あのスフィンクスが、トトメス破壊の秘密を守っているのよ」。
ニコラス:「トトメスを止めるには、あのスフィンクスを何とかしなくてはいけない、ということか」。
トム:「うむ」。
CM:アサートンの講演は1時間続いて、その後、拍手と共に終わります。館長が出てきて、「この後、ロビーで懇親会を開催しますので、アサートン博士に個人的に質問をされたい方がいましたら、どうぞご参加ください」と言います。
ニコラス:参加しましょう。
CM:ロビーに出て行くと、既にアサートンの周りに人だかりができています。取り巻きに囲まれて、アサートンはご満悦です。「さすがですなぁ、博士」、「いやいや、でしょ?」みたいな。
トム:(笑)。我々も「いやぁ、さすがアサートン博士ですなぁ」などと持ち上げつつ、ゴマをすりつつ近寄っていきましょう。
CM:(アサートン博士)「私ほどの聡い研究者でなければ、現地人の戯言のような話から真実を見抜くことはできなかったでしょうな」。
スティーヴ:「トトメス展を見させていただきました。3体の使用人とトトメス王の保存状態が大きく異なっていましたが、あれについてはどのようにお考えですか?」。
CM:(アサートン博士)「単純に、王と使用人の待遇の差というか、処置の差だろう。使用人はあくまで副葬品に過ぎないからな」。
スティーヴ:「スライドにあった見事なスフィンクス像ですが、あれは王の玄室にあったものですか?」。
CM:(アサートン博士)「あれも副葬品の中に紛れていた物だ」。
スティーヴ:「トトメス展でこのような書物(※『写真で見るトトメス・ザ・エルダー』)を買い求めたのですが、写真の撮影などはエドガー・アップルビー氏が取り仕切っているのですか?」。
CM:(アサートン博士)「アップルビー? ……知らんなぁ」。
スティーヴ:「失礼しました。こちらの勘違いだったようです」。……なるほど。
うるさい上階の客
CM:懇親会が終わればもうとっぷりと夜です。
スティーヴ:さぁ、これからどうしますか? とりあえず、ナルティに連絡してみますか?
ニコラス:《アンノウンの感知》でミイラと土産物屋のおっさんからは反応が出たんだから、報告しておこう。もう勤務開けの時間でしょ?
CM:そうですね。Twitterで「仕事終わったなう」と書き込んでいるくらいですから。
ニコラス:(笑)。
スティーヴ:勤務が明けているなら、直接会って話したいんだけど、とメッセージを送りますよ。
CM:ではホテルの部屋に伺う、と返信が来ます。皆さんはアサートンの講演会場からホテルの部屋に戻るということで。
トム:うむ。
CM:では部屋に戻ってきました。ガチャ(ドアを開ける仕草)。
部屋のドアを開けた直後、正体不明のドスンという音を2つ聞く。それは上の階で鉛の靴でエアロビクスをしているかのように聞こえる。そして、バキッ!――部屋の向こう側の天井が抜けて、床にアスベストとグラスファイバーを撒き散らす。
ミイラが天井の開口部を押し開けて逆さまにぶら下がり、君たちに向かって恐ろしい笑みを浮かべる。その唇の間から、不気味なシーッという音が漏れる。ホコリの雲が充満する部屋に飛び降りて、腕を前に伸ばして君たちに向かってくる。
ニコラス:電話を取ってフロントに「ミイラぶら下がってんだけど!?」とクレームをつけます。
CM:いやいや(笑)。
ニコラス:どこかで見たことのあるミイラ?
CM:いえ、少なくとも博物館で見たミイラとは違います。では恐怖判定をします。たったの-35です。
一同:-35!?
ニコラス:(コロコロ)25! H成功。
スティーヴ:凄いな! 私はM成功。逃げていいですか?(笑)
トム:(コロコロ)11だから……H成功。
CM:とりあえず、失敗したくららが現在意志力を14ポイント失って、3ラウンド逃げます。
スティーヴ:私も3ラウンド逃げます。
ニコラス:逃げます。前回の経験から、意志力を減らしてはいけないという事を学んだので。(コロコロ)1ラウンド。
トム:俺も逃げよう。2ラウンド。
CM:1ラウンド目は全員「バッ!」とドアから身を引くという感じですね。イニシアティブです(ニコラス→トム→くらら→スティーヴ→ミイラの順)。
スティーヴ:1ラウンド目は全員逃げますので、ミイラの番です(笑)。
CM:ドアは開いたままで、もうもうとホコリの雲が流れ出てきますが、ミイラ自体は部屋から出てくる様子はありません。2ラウンド目に行きます。
ニコラス:俺の逃走は終了した。ミイラって殴っちゃって良いものなの?
トム:思うままにどうぞ(笑)。
ニコラス:ハッと我に返ったら、ソ~っとドアに近寄って「まだ中にいるの~?」という具合に覗き込みます。
CM:ミイラは部屋の中でシャドー・ボクシングをしてやる気満々ですよ(笑)。
ニコラス:うっそ!?(笑)
CM:シャドー・ボクシングする彼の拳圧で朦々としたホコリが晴れていく位の勢いです(笑)。
一同:(笑)。
ニコラス:なんでそんなに肉体派なんだよ(笑)。どうするかな~? ヌンチャクで「アチョーーーッ!」と行くかな?
CM:移動して攻撃だと1回しか攻撃できませんので注意です。
ニコラス:ミイラの強さがまだ分からないからな。《アストラル・アーマー》を使うか。
CM:ニコラスはアートを使うために集中を始めました。成功ロールは次のラウンドです。ミイラもなにやら精神集中を始めました。もしかしたらイビルウェイを使うのかもしれません。3ラウンド目。
ニコラス:俺からだよね? (コロコロ)成功。《アストラル・アーマー》発動しました。
CM:ニコラスの身体全体がぼんやりとした光に包まれます。
ニコラス:では「アチョーーー!」と言ってミイラに向かっていきます。(コロコロ)命中!
CM:ではスカッという手応えと共にボワンと消えました。何もかもが消えました。
一同:え?
CM:ミイラは消えました。天井に開いていた穴も消えました。それどころか朦々と立っていたホコリの雲も消えました。
ニコラス:え? 俺の《アストラル・アーマー》は?
CM:キラキラ光っています(笑)。
ニコラス:またかよ!(笑)(※『Caulfield Place: R.I.P.』の対「動く死体」戦参照)
一同:(爆笑)。
ニコラス:え~? またかよ。最悪だよ。
CM:非常に強力な《完全幻覚》という触覚以外の感覚を伴うイビルウェイがあります。
ニコラス:え~?
CM:まさに「ええっ!?」という感じで呆然としています。戻ってきたトムは何事もなかったような部屋の中に《アストラル・アーマー》に包まれたニコラスがプルプルと身体を震わせているのでビックリです(笑)。
トム:(爆笑)。
ニコラス:またしても無駄遣い(笑)。
CM:みんな部屋に戻ってきました。部屋には何も痕跡が残っていません。くららが「さすがニコラスね!」と言います。
ニコラス:「一撃だったよ」。
CM:一息ついた頃に「よう、お待たせ!」と言ってナルティがやって来ます。人数分のマックを買ってきてくれました。
スティーヴ:「実は……」。マックを食べながら、かくかくしかじかでたった今あったことも含めて話します。
CM:(ナルティ)「なるほど。敵が我々の存在に気付いているという事が、これで間違いなくなったな」。
トム:「うむ。そうだね」。
スティーヴ:「まぁ、ある程度折込済みではあったのだが。いきなり幻覚を使ってくるとは思っていなかった」。
ニコラス:「……脅しなのか、これは?」。
CM:(ナルティ)「警告なんだろうな、おそらく」。
スティーヴ:「今日のこちらの調査結果なのだが……。トトメス王のミイラと土産物屋のアップルビーという人物にアンノウンの反応があった。アップルビーはトトメス展のグッズ販売員として展覧会について回っているらしい」。
ニコラス:「つまり、これまでの殺人事件が起こった都市に、同じタイミングで滞在していたというわけだ」。
CM:(ナルティ)「それは怪しいな」。
スティーヴ:「エドガー・アップルビーという人物を詳しく調べたい所なんだが、そこは警察の方が詳しい情報を仕入れられるだろうから、君に任せられるか?」。
CM:(ナルティ)「前科歴がなければ警察の資料から浮かび上がってくるとは限らないのだが……了解した。できるだけ探ってみよう」。
ニコラス:ゲーム的な確認なんだけど、人間に見えるアップルビーに《アンノウンの感知》が反応したっていう事は、彼が人間ではないという事なのか、それともアンノウンに関連した何かを持っているということなのか?
CM:それは何とも言えない部分ですねぇ。例えば、今、このホテルの部屋で《アンノウンの感知》をすれば、それは感じられます。なぜなら、つい今しがたイビルウェイが使われたからです。
ニコラス:ほほう。
CM:つまり、アップルビーが何か催眠系のイビルウェイの影響下にあるとしたら、それも《アンノウンの感知》に引っかかります。そしてもちろん、彼がアンノウンそのものであっても同じように感じられます。イビルウェイが使われたか、アンノウンが存在するか、あるいは少し前にアンノウンが存在“した”場合も感知に引っかかります。
スティーヴ:とりあえず、前科歴でも何でも良いので、それがあるかないかだけでも当たってもらいましょう。
CM:(ナルティ)「当たってみよう」。
スティーヴ:さて、今晩はこれで終わるとして、我々は明日からアップルビーを張ってみるかどうかですね。
トム:うん。ミイラの方は見張るまでもないかな。
スティーヴ:さすがに「トトメス王のミイラが動いた!」となると、あの警備だし、絶対に映像記録も残るでしょうからね。
CM:そうだね。ミイラが歩いたりすれば、さすがに警備員が何も言わないという事はないだろう。
スティーヴ:そうなると、連続殺人の実行犯としてはエドガー・アップルビーが一番怪しい。我々には捜査権も逮捕権も何もないので、とりあえず張っておくというのは手ですよね。
トム&ニコラス:うむ。
スティーヴ:昼間はきっと土産物屋に出勤するだろうから、張るのは夜かな。
トム:そうなると、昼間はする事がないんだけど。
スティーヴ:「とりあえず、もう真夜中だし、今晩はこれで休むとしよう。明日の昼間に何をするかは明日考えるという事で」。
ニコラス:「これで本当に無事眠れるのか、というのはあるが」。
しかしその晩は何事もなく休む事ができ、全員意志力を最高値まで回復させたのでした。
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