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『神童』 ・・・・さそうあきら/双葉社(漫画アクション)/全4巻
作品紹介
音楽を志しながらも自らの才能に疑問を感じる青年が出会った一人の少女。
彼女こそ"神童"と呼ばれるべき者・・・"天才"だった。

凡庸を自覚し悩む青年と、神童と呼ばれる少女が心に抱える光と影。
努力では届かない領域、真の才能を感じた青年と、 自らが音楽である故に時に才能に惑わされる少女。

天才ピアニスト「うた」と、音楽を志す青年「ワオ」
二人が出会ってわずか一年"理想の音"を捜した二人の物語。

”神童”と呼ばれた少女の 万物に対する夢と好奇心に満ち溢れた冒険が今、始るー!!
あなたは、本当の天才にであったことがありますか...?

野球の音、さよならの音、友達の音、 おとなになる音、恋の音、嫉妬の音・・・
失恋の音、熱い手のひらの音、凡庸の音、 桜の咲く音、才能の音、理想の音・・・
集中力の音、モーツァルトの音、すれちがいの音、 大丈夫の音、不吉なセミの音、七色の空の音。
そして、成瀬うたの音.......

万物に対する夢と好奇心と切なさに満ち溢れた、音と音楽の世界。
天才少女ピアニスト、成瀬うたが奏でます。
〜各巻巻末より

感想
'99年度の手塚賞受賞時のコメントに「音楽という異質な・・・」 とあるように、音楽を扱った漫画や小説は難しい。 私の知る限りで音楽漫画(というのか)で記憶に残るのは『俺節』『BLOW UP!』とか。
他にもあるでしょうが、近年増えてきた音楽漫画は、 どちらかといえば「芸能界漫画」に近いと思うので。 漫画で"音"を表現するのは難しいのでしょうが、 絵と音は切っても切れない関係だとも聞きますので。 ガルトマンとムソグルスキーの展覧会の絵の件もありますし。
まーくだけて言えば『美味しんぼ』読んだら美味いもの食った気になった。 みたいな感じで、音楽漫画も読後に音楽聴いた気にさせてくれなければ、 もしくは聴きたくならなければいけないと思います。
音楽漫画は基本的に流行系が多くて、連載で読めても内容的に後年はどうか という作品が多いと思うのですが、 その点では『神童』はバッチしです。"音"を感じる作品。

音楽も唄も、その価値なんて私には判りません。
私にとって音楽の良し悪しなんてのは自分の 好き嫌いで十分だと思ってるし、最近アイドルソングしか聴かないし (昔は尾崎とか氷室とか好きだったのに・・・) クラシックなんて部屋で聴いてると気取ってるみたいで恥かしいし、 そもそも音楽聴く習慣あまり無いし。
そんな私でも楽しめる音楽漫画をもっと望む。


絵に癖あります。一般的にいえば下手ともいうのかも知れません。
それでも、私はこの人の絵は好きなのですが・・・ 変にごちゃごちゃしていないし、時々ドキッとするようなコマで魅せると思う。 漫画的にみてみて上手いと思います、私は。作風にあっているし、 物語の邪魔にならずに世界観を引き出す絵。
ついにでに。この人のカラー絵は個性があって綺麗だと思うのですが、 一般的に下手だと言われています。 そうですかねぇ、ホッとするいい絵だと思うけどなぁ。

タイトルの『神童』、途中まで読んでる限りでは『うた』とか 何か別のタイトルのが良かったのでは?とも思いましたが最後まで読んで納得。
ワオの葛藤(正直深刻さを彼からはあまり感じないけど)を、 圧倒的な才能でうたが支え、少しづつワオも自分の音を・・・ という部分は読み始めから予測できるのですが、 終盤の急速展開は予測できませんでした。
天真爛漫で明るいうたですが、中盤あたりから実はかなり泣いてる場面多いです。 「泣いてる」というよりは「涙を浮かべてる」程度のものですが。二度目に読んで気づきました。 天才には天才の悩みがあり、普段がアレなだけに(笑)中々素直にもなれないのでしょう。
そしてラスト。
神童という早熟すぎる天才があたる壁。
12歳の少女にはつらすぎる試練。失ったもの。
それでも悲しいだけでは終わらない結末。結末といってもこれからまだまだ続く・・・のでしょうが。

うたがワオを、ワオがうたが好きだったのは、好きなのは、彼女の彼氏の才能ではなく、 持ってない部分を持っていたからだったとも。補う関係とでもいうのかな? カノンとワオにもいえますが。

最後まで読んでから、また始めのあたりを読むと別の感覚を与えてくれる本。
あたり前のように過ごしていた時間の中にこそ、大事なものがあったんだなぁ・・・と。
何時か私もボートに乗ったらば、ボートのオールに耳をつけ、あの歌を聴いてみようと思った。
"自然の音"雨音とか電車の震動とか、そういうものだって音楽。 ・・・金かからないしね(ぶち壊し)

PS:各巻末にある「さそうあきら選曲『神童』BGM」 聴いてみたいのですが、これだけ揃えるのはレンタルでも大変そう。 是非とも「神童-イメージCD-」を出して欲しいものです。

>「いろんな人の想いが一つになって、響いてくるのがわかるよ。
  全ての響きを合わせて、今、一しずくの歌からはじめよう」




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