
食糧貯蔵庫
CM:では食糧貯蔵庫まで来ました。ドアを開けると、普通の部屋とは違って、即レンガ造りの床みたいな感じです。当然ですが、かなり清潔に保たれています。
レンガの床に少し小麦粉がこぼれている以外、この部屋は清潔なものだ。スパイスとハーブの香りが漂っている。壁沿いに棚が並んでおり、ビンに入ったジャム、ゼリー、フルーツが並べられ、料理されるのを待っている。
CM:当然目に付く場所に棺が置いてあるということはありませんし、地下室へ行くドアがあるわけでもありません。
スティーヴ:あれ? 地下があるっていう話じゃなかった?
ニコラス:入り口を探します。
CM:では知覚力の段階判定をしてください。気合を入れて。(コロコロコロリ)M成功が最高ですか。よりによって見つかりません(笑)。
スティーヴ:使用人を捕まえて、「どこから地下に行くの?」と聞きます。
CM:では通りがかりのブリジットが「実はですね」と言って壁の一部を操作すると、カチャリと音を立てて棚の裏の動く壁の後ろに隠し扉が現れます。
ニコラス:「何で隠し扉なんかが?」。
CM:(ブリジット)「良くは分かりませんが、古い地所にはこういった隠しスペースがあったりするものですよ」。
トム:「なるほど」。
CM:ブリジットは隠し扉を閉めて立ち去って行きます。
スティーヴ:では同じように操作して隠し扉を開けよう。ガチャ。
CM:扉の向こうは下へ下りる狭い階段になっていて、手元には懐中電灯が置かれています。コツーン、コツーンと足音を響かせて下っていく、と。
古い階段の先は暗闇の中に消えており、風もないのに冷気が君たちを包み込む。どこからともなくネズミが現れて、ちょろちょろと君たちの間をすり抜けると、闇の中へ走り降りていった。
階段を降りていくと、壁が湿った土であることが分かる。列の先頭を歩いていたニコラスは目に見えないクモの巣が突然顔にかかったのを感じる。
CM:皆さんは剥き出しの地面が床になっている、10m×10mくらいの部屋にたどり着きました。
スティーヴ:結構でかいな。
CM:もしかしたら、昔は有事の隠れ場所として使われていたのかもしれない。部屋の真ん中には棺が1つ置かれている。そして、その蓋には「Dracula」と書かれている。
一同:え!?。
CM:え!? と目を瞠っていると、背後の階段の上の扉が「バタン!」と音を立てて閉まります。そして全ての懐中電灯が消えます。
スティーヴ:「イビルウェイか!?」。
トム:確かミイラの時に使われた……。
CM:そうですね。確かアップルビーの部屋で同じような事象が起こりましたね(※「Thutmose’s Night」参照)。隣の人の顔も見えないほどの真っ暗闇です。すると闇の中で「ギィィィィィ……」という、まるで軋んだドアが開く時に立てるような耳障りな音が聞こえます。しかもそれは部屋の真ん中から聞こえました。続いて「ドスン!」という、重い蓋のようなものが地面に落ちる音がします。
トム:む?
スティーヴ:精神集中を始めるべきか?
CM:すると、パッと懐中電灯が再び点きます。そして階段の上のドアがガチャッと開きます。見上げると、逆光を背に受けて誰かが立っています。「どなたか、下にいらっしゃるのですか?」というウェザービーの声が聞こえました。
一同:!
ニコラス:棺はどうなっていますか?
CM:棺の蓋は開いています。中は空っぽですが。
スティーヴ:ウェザービーに「いや、我々が……」と返します。
CM:(ウェザービー)「おや、お客様でしたか」。そう言って彼はカツカツと階段を下りてくるようです。
トム:棺は開いているんだよね?
ニコラス:では棺の中に十字架とニンニクを投げ込みます。
CM:了解です。棺は浄化されました。ウェザービーは下りてきます。
スティーヴ:「ウェザービーさん、この棺のことはご存知でしたか?」。
CM:(ウェザービー)「もちろん、知っていますとも!」。
スティーヴ:「もちろん? どなたのものです?」。
CM:(ウェザービー)「蓋に書いてあった文字は、お読みになれませんか?」。
スティーヴ:「“Dracula”と書いてあったが……」。
CM:(ウェザービー)「そう。つまり……私のですよ」。
一同:「い!?」。
スティーヴ:「あなたでしたか……」。
CM:(ウェザービー→ドラキュラ伯爵)「せっかく復讐を果たしたというのに、このようなところまで嗅ぎつける輩がいようとは。カーファックスで満足して帰っていれば、お前たちも命を永らえられたのかもしれんものを」。
一同:「……」。
CM:(ドラキュラ伯爵)「先ほどは我が花嫁のミナが世話になったようだな」。
スティーヴ:「ミナ?」。
ニコラス:「いつの間に? 彼女は免れたのではなかったのか!?」。
CM:(ドラキュラ伯爵)「それは原作には書かれなかったことだ!!」。
一同:(笑)。
CM:(ドラキュラ伯爵)「愚かなアムステルダムの教授たちは我が心臓に鋼を打ち込んで倒したと勘違いしたらしいが、我が恐れるのは白木の杭のみ!!」。
一同:弱点、カミングアウト!!(爆笑)
CM:(ドラキュラ伯爵)「何も知らずに立ち去るのならば、我もお前たちの組織の注目を浴びるのは本意ではないからな、生かして帰してやろうと思ったが、ミナをやられたままとあっては、この吸血王ドラキュラ伯爵の名が廃るというもの。前回は望み潰えてトランシルヴァニアの城へ戻され、再び力を蓄えるのに120年もかかってしまったが、怨敵を殲滅することにより我は再び出発点へと戻ってきた。今度こそ、我がこの世界の真の王として夜の帝国を作って見せよう。その一歩目として、お前たちの血を祝い酒として捧げる事にしようか!」。
スティーヴ:「こちらも吸血鬼に大手を振ってロンドンを歩いてもらうわけにはいかない!」。
CM:話している間にウェザービーの顔は消えて、口ひげを生やした、いわゆる貴族然とした紳士の顔になります。そして、タキシードを着てマントをつけた伝統的な姿になっています。トランシルヴァニアの城にいた隠居爺の姿ではなく、若返った絶頂期のドラキュラ伯爵です。
一同:おお!!
ニコラス:そうこなくちゃ!
CM:(ドラキュラ伯爵)「さて、死んでもらうとしよう」。
スティーヴ:よし! 行きますか!!
迫撃、吸血王
世界で最も有名なヴァンパイア、吸血王ドラキュラ伯爵との戦いが始まります。恐怖判定はCIPを使ったり使わなかったりして失敗者はなし。イニシアティブはドラキュラ伯爵→ニコラス→くらら→トム→スティーヴ。
【第1ラウンド】
CM:ドラキュラだよね。さて、どうするか……精神集中を、4回します。
一同:はぁ!? 4回行動!?
CM:まぁ、冷静に考えてみてくださいよ。アンノウンのランキングというものがあれば、ドラキュラ伯爵って上から数えた方が絶対に早いクリーチャーなわけですよ。
スティーヴ:歴代アンノウン世界最強級の1人でしょうな(笑)。
CM:ナメてかかると間違いなく死にますよ(笑)。おそらく、アンノウンでトップ10に入る実力者でしょうから。
ニコラス:いや、まったくナメる気はないんだけど、サイコロが、サイコロがね(笑)。
ニコラスとスティーヴはアートの使用に備えて精神集中。くららとトムは拳銃でドラキュラに鉛玉を打ち込みますが、数発の被弾で怯む伯爵ではありません。
【第2ラウンド】
CM:それじゃ伯爵のイビルウェイが行きますよ〜ん。(コロコロ)突然、トムの持っている拳銃が凄い熱を持ってきます。
トム:「あちっ!!」。
スティーヴ:おっと! ヒート・メタルか!? (※《白熱》ディシプリンです)
CM:次、スティーヴは現在意志力の段階判定をしてください。
スティーヴ:H成功です。
CM:了解です。スティーヴは1ラウンドの間、移動したり、戦ったり、アートを使ったりすることができません(※《停止》ディシプリン)。
スティーヴ:おおう!?
CM:ニコラスに……同じイビルウェイを使います。現在意志力の段階判定をしてください。
ニコラス:おりゃ! H成功!!
CM:ではスティーヴと同じですね。1ラウンドの間、移動したり、戦ったり、アートを使ったりすることができません。
ニコラス:マジ!?
CM:最後にくららの拳銃に向けて《白熱》を使って……(コロコロ)……成功。(くらら)「あちちっ!」。という事でイビルウェイは終了。これからこのラウンドの行動ですね。
ニコラス:!!! そうか!(※ディシプリンは精神集中の翌ラウンドに発動するからです)
CM:伯爵は移動、接近戦闘、精神集中、精神集中。接近戦闘は移動後なので1回しかできませんね。伯爵はニコラスに(コロコロ)失敗。
ニコラス:よし! (※良く考えたら、《停止》中の敵には攻撃は自動命中でした)
くららは拳銃を撃ちますが、乱戦状態での発砲は非常に当たりにくいので(そういうルールです)、命中せず。拳銃はじわじわと熱を持ってきます。射撃の名手であるトムは3発の弾丸を撃ち込みますが、『Chill』最強アンノウンの一人である伯爵はいまだ健在。
一同:……勝てる気しねぇ。
【第3ラウンド】
CM:スティーヴとニコラスは現在意志力で段階判定。(コロコロ)では、スティーヴはさらに1ラウンド、ニコラスはさらに2ラウンド《停止》。そしてこの接敵状態を利用してドラキュラは接近攻撃4回。(コロコロコロコロ)スティーヴの現在活力に17ダメ、1負傷。
スティーヴ:は〜い。精神集中、無効になりました(泣)。
CM:ニコラスの現在活力に21ポイント、12負傷。
ニコラス:……え? よく聞こえなかったんだけど。
CM:12負傷。
ニコラス:……まだ生きています!!
CM:もう1発ニコラスに……活力に9ポイント、3負傷。
ニコラス:残り負傷ボックス1個です! いっそ残り1発も俺に来い!
CM:まぁ、確かに瀕死の敵に止めを刺しに来るでしょうね。伯爵は賢いので。(コロコロ)M成功だから、少なくとも負傷は1D5ポイント行くので……。
ニコラス:俺、終了! ですよ!(笑)
CM:ニコラスは死亡しました。幸運度判定です。成功すれば、急所を外れて一命を取り留めた事になります(※そういうルールです)。CIPを使いますか?
ニコラス:ここは残しておくべきか!?
スティーヴ:使いましょう(笑)。ここで使わない手はありませんよ。
ニコラス:確かに死人にCIPはいらないもんね(笑)。CIPを使いますが、一応ダイスを振ってみましょう。(ニコラスの幸運度は60)おりゃ! (コロコロ)79!
一同:(爆笑)。
CM:CIPを使ったので、失敗は成功になります(笑)。もっとも、一命を取り留めたのが分かるのは戦闘終了後なので、ニコラスはこれで戦闘から脱落ですね。
スティーヴ:くらら、逃げて! そして我々の生き様を誰かに伝えてくれ(笑)。
CM:じゃあ、くららは逃げるよ。階段を走って登っていった。
トム:これで勇敢に戦えるのは俺だけかよ(笑)。でもリボルバーは撃ちつくしたので、<ボクシング>しかないよ! それともリロード(銃弾再装填)か!?
スティーヴ:いや、リロードするなら、スティーヴの腰の拳銃を奪って撃って! そうすれば熱くなった拳銃も手放せるし。
トム:銃を奪ってかぁ。
スティーヴ:ほんの少しでも勝機があるなら、それしかないですよ!
ニコラス:銃なら俺も持っているよ。
トム:でも次のラウンドまでもつかなぁ?
CM:だからスティーヴが死んでいく間にトムが生き残って銃を撃つんですよ(笑)。実際、それしか手はねぇな。
スティーヴ:あるいは、くららに続いて逃げるかですよ。
トム:そうだな……。よし、このラウンドはニコラスの拳銃を取る事に費やそう。
【第4ラウンド】
CM:伯爵は1回精神集中をして、3回接近戦闘をします。スティーヴの活力に20ポイントと4負傷。
スティーヴ:まだ意識はあります。
CM:さらに活力に13ポイントと4負傷。
スティーヴ:それで活力が0です。気絶しました。
CM:もう1発あるのでトムを殴ります。移動して目標を変えたので-40か。(コロコロ)失敗。
トム:接敵されているからゼロ距離だよね? M成功で25ポイント、M成功で21ポイント!
CM:うひゃひゃ(笑)。まだドラキュラは死んでいませんよ。
トム:3発目にCIPを使っておきましょう。こういう時に限って良い目が出るもんだよね。(コロコロ)H成功なので、CIPによってワンランク上がってC成功。
CM:それで確実にオーバーキルです。ドラキュラ伯爵は霧になって姿を消しました。
一同:ふぅ〜。
残りの棺の在り処
どうにか激戦を勝利したエンヴォイたちは回復系のアートを駆使してニコラスとスティーヴの治療に当たります。トムとくららという回復系のディシプリン持ちが無事だったのは僥倖でした。くららが《治癒》でニコラスの負傷を癒し、トムが《活力回復》でスティーヴを治します。
満身創痍ながら、エンヴォイたちは最後の仕上げにかからなくてはなりません。
ニコラス:残る棺は4つ?
CM:怪しいのはどこでしょうね?
ニコラス:ウェザービーの私室でしょ。霧になったドラキュラはどうなるんだ?
スティーヴ:回復のために棺に帰るんでしょう。
ニコラス:回復の速度ってどれくらい?
CM:まぁ、一晩眠れば回復するという、ザックリとした話ですな。
スティーヴ:つまり、今晩中にカタを付けようってことですね。
CM:ウェザービーの部屋へ行きますよね? では当然扉には鍵がかかっていますよ。
トム:<開錠>……失敗! バンバンバン! 拳銃でドアノブを破壊します。
CM:了解です。社会的な面倒事は後回しにして、扉は開きました。
スティーヴ:部屋の中を見渡すと?
CM:キングサイズのベッドが鎮座ましています。
スティーヴ:ベッドカバーを取ります。
CM:そこには2つずつ重ねられた棺が横に並んで、合計4つ。
スティーヴ:開けて十字架を入れて行きます。
CM:その内の一つに、目を見開いたまま、胸の前で手を交差させた姿勢で横たわるドラキュラ伯爵が入っています。
トム:よし! ではスタッフが駆けつけてくる前に……。
スティーヴ:白木の杭をドスン!
ニコラス:ナイフで首をバッサリ!
CM:(ドラキュラ伯爵)「ぐごぉぉぉぉぉ……」。くぐもった断末魔の悲鳴が部屋の中に響き渡って、ドラキュラ伯爵の身体は塵となって消滅しました。
一同:「ふぅぅ……」。
結末
CM:拳銃の発砲音を聞きつけたスタッフによって警察が来て、皆さんの身柄を拘束したりもしますが、結局のところエステートの持ち主でもあるアンリ・ボールトン卿が「何でもありません」と弁護してくれて、すぐに釈放されます。
スティーヴ:そこはお任せして平気でしょう。「いやぁ、どうにか死なずに済みました」。
CM:(ボールトン卿)「おそらく、吸血王ドラキュラ伯爵は、これで永遠に封じられたはずだ」。
ニコラス:「家令がヴァンパイアであることにはお気づきにはならなかったのですか?」。
CM:(ボールトン卿)「その件については面目ない。なにせゲストハウスとして使うだけで、自分で訪れる事は滅多にないのだよ。まぁ、ドラキュラ伯爵にしてみれば、120年前に根城にしていたカーファックスを囮にして、彼を倒したヴァンパイア・ハンターたちの拠点でもあったヒリンガムを今回の根城にすることが、我々に対する皮肉な嘲りだったのかもしれないな」。
(了)
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