国語篇(その十七)


国語篇(その十七)

<方言概観(その四。都道府県の代表的方言)>

(平成22-5-20書込み。24-4-1修正)(テキスト約83頁)


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[おことわり]

 この篇は、全国の方言の主要なものの中に残る語源不詳または意味不詳の縄文語の意味を解明しようとするものです。これまで国語篇(その二)で東北方言(庄内語・遠野語)を取り上げ、また地名篇や雑楽篇の各篇などでも随処で方言を取り上げてきましたが、これから全国の方言をくまなく解明しょうとすれば、国語研究所『日本言語地図』 大蔵省印刷局、『日本方言大辞典』小学館、佐藤亮一著『都道府県別全国方言小辞典』三省堂などに拠らなければなりませんが、これらはあまりにも膨大で、これらを対象とすることは時間の余裕から不可能です。
 そこで、数ある方言辞典や方言集のうちから、収録語数が約1,200語と比較的にコンパクトで、最近普及しつつある電子辞書数種(カシオXD-GP6900、シャープPW-M100、ソニーIC-700Sなど)にも搭載されている次の辞典を選び、その中に残る縄文語の意味を解明することとしました。
 江端義夫・加藤正信・本堂寛編『全国方言一覧辞典』学研、1998年

 この辞典の内容は、三部に分かれ、第一部は主要な方言219語の都道府県別の一覧を示し、第二部は都道府県別方言ランキングとしてお国言葉番付表各約20語を載せ、第三部は方言についての概説となっています。
 この辞典は、『日本言語地図』などでは意味の規定が難しいとして調査対象から除外されていた語(挨拶、人間の評価、心情、動作、行為、人生儀礼など)も対象とし、さらに全項目アクセント付きという特徴を有します。
 なお、方言は、地域的差異が顕著で、大まかにみても都道府県ごとにそれぞれ幾つかの地域ごとに異なるのが通例です(例えば岐阜県は東美濃、西美濃、飛騨の各地域ごとにかなりの差異が見られます)が、この辞典では、都道府県ごとに原則として一つの方言(沖縄県のみ那覇方言と首里方言の二つ)しか載せないという物足りなさは残ります。しかし、どちらかといえば普通名詞に偏した従来の方言集と比較すれば、今も生き続ける日本人の言語の実像をより具体的に捉えた辞典として評価できると考えます。

 この篇では、上記の第一部および第二部に載せられた方言の中に残る語源不詳または意味不詳の縄文語の意味を解釈することとします。上記の第一部は「ア」から「コ」までの「その一」、「サ」から「ト」までの「その二」と「ナ」から「ワ」までの「その三」と、第二部は「その四」と分割して掲載します。似た方言で容易に音韻の変化が推測できるものは重複して解釈することを避け、現代語で容易にその意味が理解できるものは除外しました。助詞、感嘆詞等の解釈は、例文の文脈に添って行いましたので、辞典所載の例文を参照してください。また、すでに国語篇(その二)や地名篇、雑楽篇の各篇において取り上げたものは、その旨注記しました。

 縄文語のポリネシア語による解釈は、他の諸篇と同様、原則として、その起源となったと推定される原ポリネシア語から変化したマオリ語(すでに失われた語彙でハワイ語に残るものについてはハワイ語とし、その旨を注記しました)とその意味を英語および日本語によって表記しました。主として使用したマオリ語・ハワイ語の辞典は次の通りです。
 (1)H.W.Williams M.A,Dictionary of the Maori Language,seventh edition,1997,GP Publications.
 (2)P.M.Ryan,The Reed Dictionary of Modern Maori,1995,TVNZ.
 (3)Mary Kawena Pukui and Samuel H.Elbert,Hawaiian Dictionary, revised and enlarged edition,1986,University of Hawaii Press.  

目 次 

第二 都道府県の代表的方言

北海道 301しばれる・〜べ・るいべ・はく・ばくる・いずい・なんも・〜でない・〜かい・ううん・べちょべちょ

[東北地方]

青森県 302あずましー(心地良い)・たんげ・〜はんで・かちゃくちゃね・もちょこちぇ・びょん・けやぐ・め・わ・わい・〜きゃ・あさぐ・じゃんぼ・わらはんど

岩手県 303おぼっこ(赤ちゃん)・のこのこ・ばっけぁ・〜なはん・おずげ・ごろじる・〜ら・ばんげ・きゃっぱりする・えんつこ・ちょす・かでる・あんやー・かまりっこ・とろっぺつ・おごご・えっつに・てんこもり・おでぁもず・えんず

宮城県 304めんこえ(かわいい)・えんずえ・おっぴさん・〜ちゃ・〜よ・すける・きかねー・ももた・ちょす・ひまだれかげる・おみょーぬず・ぎりぎり・ぎどごろね・たがぐ・たんばら・ねっばす

秋田県 305もんぞ(寝言)・たまし・きびちょ・しぇんち・わっぱが・おんざる・のさばる・まぐれる・うだで・かちゃぺね・とじぇね・おが・むったり・えがらもがら・〜ぎゃ・〜らせる・きさん・んみゃ・んにゃ・おんじょかしぇる・じゅっぷがする

山形県 306やばつい(湿って気持ちが悪い)・もっかえる・さま・ぶずぐす・むがさり・〜す・わらわら・たがぐ・〜ず・ととこ・かー・ほろぐ・うがえ・あがらっしゃえ・ちゃっちゃど・さぶろ・すなこえ・ぬだばる・てしょずらすえ・うるげる

福島県 307かんかち(やけど)・さすけねー・しなっこい・〜した・おだつ・までーに・〜はー・ほろぐ・にしゃ・しっちゃげる・〜ごじら・はだず・ざんぞ

[関東地方]

茨城県 308ちぐぬぐ(うそをつく)・えがえ・おしゃらぐ・かっちゃぐ・〜ぺ・〜べ・おじる・えしけー・ふんじゃす・あーたに・ごじゃっぺ・ばっとー・えまっと・えしゃる

栃木県 309げんざんぼ(とんぼ)・じりめ・ふくんべ・おしぐれ・じぶくれやま・しみつかれ・はが・おどもり・どどめえろ・いじゃげる・うすずらこぐ・なじょすべー・まめ・こでっちり・もーに・きうきうに・もそえ・まがる・そばえる・〜と・〜ど・〜げー・ほだほだ

群馬県 310どどめ(桑の実)・こ・ぶっこぬき・さくい・つぐむ・でっちる・てわるさ・おもたっつるし・いぼくる・ぼっち・わざと・おこんじょ・めた・おーふー・きなり・きもっきれ・せっこー・あてこともねー・〜のー

埼玉県 311そらっぺ(うそ)・いら・あんべー・つらっぱじねー・おこさま・ぶっつぁる・ほーたろ・きねー・せどんち・おらが・こんだ・ちょーちょーばっこ・くらっせー・ぼっこむ・せんぜー・はしっけー・〜げだ・しっこし・かてる

千葉県 312あおなじみ(青あざ)・〜たい・なりる・おいねー・ござっぱたい・〜べ・がんだめし・あっこむ・くっちゃみ・しっかい・たくさん・ちょーじゃ・しめっこ・〜さー

東京都 313しょっぱい(塩辛い)・おっこちる・せがれ・よっぽど・〜まし・しじん・おっしょさん・〜あっせ・たんねー・かがみっちょー・わりー・ぎょしなれ・けむ・ふるしき・しでー

神奈川県 314〜じゃんか(〜ではないか)・〜だんべー・〜よー・こわい・せう・えむ・しびびー・きょーこつ・しょーがんねー・すすでー・せーがきれる・まちょー・けーむ・くむ・あとっかじ・えら・いっそく

[中部地方]

新潟県 315こんげ(こんなに)・あっきゃ・んな・なら・〜こて・ばーか・おじ・みよける・そーら・かける・さーぶえ・がっと・へぁー・じょんのび・あったらもん

富山県 316きのどくな(ありがとう)・〜まいけ・きときと・なーん・ちゃっちゃと・はしかい・おちょきん・さっくい・やくちゃもない・しょわしない・わやく・ちんと・かりやすい

石川県 317〜まっし(〜なさい)・ながいこって・おいね・なむいね・〜がや・〜け・〜じー・あいそらしー・いじくらしー・おんぼらーと・じゃまない・〜んなん・だんない・はつめー・たんち・なんなさんあーん・はべん・つるつる・ごぼる・げべ

福井県 318〜ねー(〜なさい)・〜ざ・てなわん・〜ま・ほや・じゃみじゃみ・べと・おぞい・つるつるいっぱい・えん・うら・かすな・ものごい・おちょきんする・かたい・にんならん・よーけ・むだかる

山梨県 319おまん(おまえ)・じぶん・ぼこ・ちょびちょびする・のぶい・みぐさい・くむ・だっちもねー・わからんじん・いっさら・でる・よっちゃばる・たいへん・〜さ・〜ちょ・〜し・へー・〜っか

長野県 320ずく(精を出すこと)・やくやく・たたる・わかいしょー・〜すか・つもい・だれどー・ぞぜーる・まえで・わにる・ひとっきり・〜じ・みやましー・ごーさわく

岐阜県 321はんちくたい(気にいらない)・〜えな・くつばしー・きっばずけで・げばいとる・ごく・もやいで・だっしゃもない・しょっぱつ・あしたり・しにきり・なまど・はば・ためらう・わいしたら・ひず・きっつくれー

静岡県 322ごせっぺー(せいせいして心地よい)・らんごく・やっきりする・やぶせったい・おぞぇー・なりき・はだって・くろ・ずなぇー・みるい・おまっち・とびっくら・〜じゃん・こば・しょんなぇー・えーかん・さばく

愛知県 323やっとかめ(久しぶりだ)・〜なも・しとなる・ちゃっと・あぇーまち・いんちゃん・おく・ごぜん・ひきずり・かんこーがえー・いきる・ごたいげさん・たぇーだぇー・あやすい

[近畿地方]

三重県 324なっと(どう)・なっと・みじゃく・おぼたい・つむ・まだまん・〜に・あわい・やにこい・いっち・こぎしろ・やけつり・せんど・そばえる・すま・かえこと・ぼっこ・あちこち

滋賀県 325うみ(琵琶湖)・ほっこりする・おため・〜ほん・かにここ・〜わいなー・かなん・〜のーえー・ごもく・にゅー・ほえない・もんどり・どんつき・よさり

京都府 326〜どす(〜です)・おす・〜え・おいでやす・おやかまっさん・おーきに・あらしゃります・たも・はんなり・のんどり・まったり・いもぼー・おすもじ・むしやしない・おしょらいさん・おしたき・しょーもない・しんどい・こそばい・きさんじ

大阪府 >327おーきに(ありがとう)・〜ねん・あかんたれ・いらち・いけず・えげつない・わや・〜がな・けったい・すかたん・ちゃらんぽらん・ちゃう・〜だす・どんならん・もみない・よーいわんわ・あほらしー・おはよーおかえり

兵庫県 328〜しとー(〜している)・〜てや・ありかー・つれ・ねっから・ほな・〜どい・よーさん・ごーがわく・じょら・たんのする・いぬ

奈良県 329まわり(したく)・ぐいち・きける・〜いす・〜やいす・まとう・やりこい・とこねん・はんざいこ・もむない・えー・とこぎり・なかなか・げんろく・あんじょー・ねがう・はそんする・〜みー・きたなか・はんつ

和歌山県 330〜のし(〜ねえ)・〜ら・おたぐら・あが・やつす・はしりごく・ぎり・べった・おもしゃい・いっけ・まっさけ・てき・いずまえ・あらして・へらこい・ある・あいや・だすい

[中国地方]

鳥取県 331がいに(たいそう)・にょば・きょーさめー・ごす・ごつー・けっぱなずく・つかーさい・しごする・かえでる・〜なー・ねぶか・てご・〜や・だらず・よーに

島根県 332だんだん(ありがとう)・あげ・そげ・こげ・どげ・べったべった・ただも・まめ・えたし・もそぶ・はしる・あだん・にょーば・きしゃがわりー・やくてもね・〜がー・〜し

岡山県 333ちばける(ふざける)・しゃじなっぽー・のせる・ばぶ・あまる・やっちもにゃー・らく・はっとーじ・じなくそ・うずないー・すばろーしー・〜とみー・うがす・〜にー・なんなら・おけんたぇー・いく・かど

広島県 334がんぼー(わんぱく小僧)・がんす・いたしー・えっと・みてる・いなげ・〜のー・いんぐりもんぐり・てれーぐれー・ほぼろーうる・えーたい・くじゅーくる・もとーらん

山口県 335おいでませ(いらっしゃいませ)・〜のんた・いらく・ぶち・あります・あらまし・みしゃげる・〜そ・きすい・きなる・ちゅーかい・こつる・やぶれる・じらおくる・はー・かばち・たう・ほーとくない・〜ちゃ

[四国地方]

徳島県 336しんだい(身体がだるい)・〜じょ・いっこも・かんまん・うちんく・めぐ・はがいたらしー・まがる・〜で・しょーたれ・たっすい・まける・まけまけ・はらおきた・〜でー

香川県 337おきる(満腹になる)・いた・ほーけにする・みまい・けっこい・いただきさん・おとっちゃま・ほっこげ・ひにしる・ひしてがい・いずみ・おみーさん・むつごい・おたしやこし・りくつげ・〜のいや・まんがに・まんでがん・ねんご・たぐる

愛媛県 338おらぶ(叫ぶ)・〜なもし・はせだ・かく・まがる・〜わい・がい・おせ・いやたい・まめ・なんちゃ・おへつ・しゃぐ・じゅるい・こぼ・ねぶる・いーえのことよ・くい

高知県 339いごっそー(頑固者)・こじゃんと・のーんがわりー・ぞーもむ・へんしも・んがいに・こーべる・〜き・んごぜむし・〜ろー・ひせる・にかーらん・よたんぼ・たまるか・く・ちゃがまる・めっそー

[九州地方]

福岡県 340ふつ(よもぎ)・たっぱい・じょーもんさん・びったり・すらごつ・くる・やる・いぼる・こーかる・そーつき・いさぎよか・しろしか・おろよか・えずー・ひょくっと・まいっとき・すいとー・なんの、あーた・〜ばい・〜たい・〜くさ

佐賀県 341なーい(はい)・うーばんぎゃーか・ざーざーざーで・あさん・ぎゃーけ・ごっとい・ちかっと・あえる・ゆんにゅ・〜かんた・ちーはしっ・しっきゃー・りっぱか・〜なたー・ほとめく・みたんなか・おちゃご・きたんぼらっか・いたてくっ・とんこずく

長崎県 342さとやのとーか(甘みがうすい)・あいたー・いっちょん・ばちかぶる・あらかぶ・よんにゅー・なおす・ばさらっか・どーはっしぇん・ほーらっか・さびなか・〜とよ・さるき・はわく・よそわしか・とす・がっしょく

熊本県 343わさもん(流行に素早い人)・むしゃんよか・のさる・はいよ・あくしゃうつ・やりばなし・もだえる・おこなえん・あばかん・ふのよか・とぜんなか・おろ・あとぜき・いろく・うーばんぎゃー・うったつ・こずむ・じんべん・なんさま・よんにゅー・きっちゃする

大分県 344なえ(地震)・だいやー・ほかう・さかしー・つば・いら・かぶで・〜だい・〜たむねー・よだきー・しゃっち・よだつ・あんびょーねー・ひだりー・いのちき・いれくる

宮崎県 345てげ(たいそう)・〜じー・かせー・のさん・よくー・〜こっせん・いっぺこっぺ・はげらしー・ふ・せちー・あば・ふむ・むげねー・なんご・まこち・えじー

鹿児島県 346ぼっけもん(大胆者)・おやっとさー・け・おじゃっ・がっつい・んだもしたん・〜ど・ひっちゃゆっ・おまんさー・がらるっ・ずるっ・いて・いたっくっ・おかべ・たもっ・ずんばい・くさっ・ぎおゆ

沖縄県那覇 347ちゅらさん(美しい)・かむん・っあんまー・〜さい・がんじょーく・まかい・めんせーり・まじゅーん・〜がやー・しくち・くさくさーすん・っいちむし・たかさん・〜てぃさ・〜い

沖縄県首里 348ちゅらさん(きよらか)・かなさん・うぐわん・てぃーだがなし・うちちゅーめー・うちゃーとー・ちゃんぷるー・にぬふぁぶし・うさがゆん・めんしぇーゆん・ゆくいみせーん・〜さい・〜たい・あきさみよー・ちばりょー・めんそーれー・ちゅーうがなびら

第二 都道府県の代表的方言
 

[北海道]

301しばれる・〜べ・るいべ・はく・ばくる・いずい・なんも・〜でない・〜かい・ううん・べちょべちょ

 北海道の代表的な方言には、「しばれる」(凍てつく)(前出国語篇(その十四)の074こおる(凍る)の項を参照してください。)、「なまら」(非常に)(前出国語篇(その十六)の173ひじょうに(非常に)の項を参照してください。)、「しゃっこい」(冷たい)(前出国語篇(その十五)の139つめたい(冷たい)の項を参照してください。)、「おばんです」(今晩は)(前出国語篇(その十四)の080こんばんは(今晩は)の項を参照してください。)、「〜べ」(〜う。助動詞)、「めんこい」(かわいい)(前出国語篇(その十四)の058かわいい(可愛い)の項を参照してください。)、「るいべ」(凍った鮭の刺身)、「はく」(はめる)、「しょっぱい」(塩辛い)(前出国語篇(その十五)の089しおからい(塩辛い)の項を参照してください。)、「なげる」(捨てる)(前出国語篇(その十五)の110すてる(捨てる)の項を参照してください。)、「おっかない」(恐ろしい)(前出国語篇(その十四)の030おそろしい(恐ろしい)の項を参照してください。)、「きしゃ」(電車)(「蒸気の力で軌道の上を走る車」の意味から拡大適用した語と解します。)、「ばくる」(交換する)、「いずい」(目のごみがごろごろする)、「なんも」(いいえ)、「こわい」(疲れてきつい)(前出国語篇(その十五)の133つかれた(疲れた)の項を参照してください。)、「かぶる」(傘をさす)(前出国語篇(その十四)の052かぶる(被る)の項を参照してください。)、「〜でない」(〜じゃない)、「〜かい」(〜か)、「ううん」(いや違う)、「べちょべちょ」(ずぶ濡れ)、「なんぼ」(いくら)(前出国語篇(その十四)の012いくら(幾ら)の項を参照してください。)があります。

 この「〜べ」、「るいべ」、「はく」、「ばくる」、「いずい」、「なんも」、「〜でない」、「〜かい」、「ううん」、「べちょべちょ」は、

  「ペア」、PEA(perhaps,indeed,of course)、「実に〜しよう(強調語)」(「ペア」の語尾のA音が脱落して「ベ」となった)

  「ル・イ・ペ」、RU-I-PE(ru=shake,quiver,scatter;i=past tense;pe=crushed,mashed,soft)、「(寒さに震えた)凍った(魚を)・(融解して)軟らかく・したもの(ルイベ)」(「ペ」が「ベ」となつた)(アイヌ語の「ルイベ」(「ル(融かす)・イペ(食物)」)が語源とされますが、この語は縄文語と表現は異なるものの音・意味とも一致する希有な例の一つです。)

  「ハイ」、HAI(=hei=at,in,with,for)、「(手袋などを)付ける」(この用例には「手袋をハイでいがないと霜焼けになるよ」とあるので、「ハク」でなく「ハイ」として解釈しました。)

  「パクル」、PAKURU(knock,a chant sung to an accompaniment played on two sticks one of which is held between the teeth and struck with the other)、「(ご詠歌の拍子をとる小棒を二本交代で使うように)交換する」(「パクル」が「バクル」となった)

  「イ・ツ・ウイ」、I-TU-UI(i=past tense,from,beside,at,with,by;tu=fight with,energetic(tutu=move with,vigour);ui=disentangle,disengage,unravel)、「(ほどけたもの)ごみが・(眼の)中で・しきりに動く(ごろごろする)」(「ツ」のU音が「ウイ」の語頭のU音と連結して「ツイ」から「ズイ」となった)

  「ナナ・モ」、NANA-MO(nana=tend carefully,nurse;mo=for,pn account of,for the benefit of)、「(お役に立ちたいという)気持ちで・したことです(お礼を言われるほどのことではありません。いいえ)」(「ナナ」が「ナン」となった)

  「テネイ」、TENEI(definitive pron. used epithetically and absolutely,this,repeated to give distributive force,each,any)、「〜だ(〜に違いない)」(「テネイ」が「デナイ」となった)(この用例には「あれ、お隣のばあちゃんデナイの?」とあるのは、否定ではなく肯定の強調ですので、このように解しました。)

  「カイ」、KAI(=kei=that not,do not,whilst)、「〜か、それともそうではないのか」

  「ウ・ウ(ン)ガ」、U-UNGA(u=be firm,be fixed;unga=send,expel,seek)、「決着を・先送りする(真実は探した後に・決まる。それは違う)」(「ウ(ン)ガ」のNG音がN音に変化して「ウナ」から「ウン」となった)

  「ペチペチ・アウ・ペチペチ・アウ」、PETIPETI-AU-PETIPETI-AU(petipeti=a weed growing in fresh-water lake,jellyfish;au=firm,intense)、「(水分を)たっぷり含んだ・水藻のように(びしょ濡れになった)」(「ペチペチ」の反復語尾が脱落して「ベチ」と、「アウ」のAU音がO音に変化して「オ」となり、「ベチ・オ」が「ベチョ」となった)

の転訛と解します。

[東北地方]

[青森県]

302あずましー(心地良い)・たんげ・〜はんで・かちゃくちゃね・もちょこちぇ・びょん・けやぐ・め・わ・わい・〜きゃ・あさぐ・じゃんぼ・わらはんど

 青森県の代表的な方言には、「あずましー」(心地良い)、「まね」(だめだ)(前出国語篇(その十五)の126だめ(駄目)の項を参照してください。)、「たんげ」(すごく)、「しゃっこい」(冷たい)(前出国語篇(その十五)の139つめたい(冷たい)の項を参照してください。)、「〜はんで」(〜から)、「かちゃくちゃね」(散らかっている)、「もちょこちぇ」(くすぐったい)、「びょん」(〜んじゃない)、「けやぐ」(友達)、「ちょす」(いじる)(前出国語篇(その十四)の057からかうの項および国語篇(その二)の96チョスの項を参照してください。)、「め」(うまい)、「めごい」(可愛い)(前出国語篇(その十四)の058かわいい(可愛い)の項を参照してください。)、「わ」(俺)、「わんつか」(ほんの少し)(前出国語篇(その十五)の130ちょっとの項を参照してください。)、「けっぱる」(頑張る)(前出国語篇(その十四)の063がんばる(頑張る)の項を参照してください。)、「じょっぱり」(頑固者)(前出国語篇(その十四)の060がんこ(頑固)の項を参照してください。)、「めぐせ」(恥ずかしい)(前出国語篇(その十六)の167くずかしい(恥ずかしい)の項を参照してください。)、「わい」(おやまあ)、「〜きゃ」(〜ね)、「あさぐ」(歩く)、「ごんぼほる」(だだをこねる)(前出国語篇(その十六)の203むずかるの項を参照してください。)、「じゃんぼ」(髪)、「わらはんど」(子供達)があります。

 この「あずましー」、「たんげ」、「〜はんで」、「かちゃくちゃね」、「もちょこちぇ」、「びょん」、「けやぐ」、「め」、「わ」、「わい」、「〜きゃ」、「あさぐ」、「じゃんぼ」、「わらはんど」は、

  「アツ・マチ」、ATU-MATI(atu=to indicate a direction or motion onwards,used with an adjective to form a comparative or superlative;mati=surfeited)、「最高に・(飽食した)満足した気分の(心地良い)」(「アツ」が「アズ」と、「マチ」が「マシー」となった)

  「タ(ン)ガエ(ン)ガエ」、TANGAENGAE(umbilical cord,an incantation to confer vigour)、「(呪文をかけられたように元気いっぱいの)すごく」(「タ(ン)ガエ(ン)ガエ」のAE音がE音に変化し、反復語尾が脱落して「タンゲ」となった)

  「ハナ・テ」、HANA-TE(hana=shine,glow;te=to give emphasis)、「実に・(輝かしい)素晴らしい(ことだから)」(「ハナ」が「ハン」となった)(喜ばしい、または誇るべき事柄などの場合)
  または「ハネ・テ」、HANE-TE(hane=be confounded,be silenced,be put to shame;te=to give emphasis)、「実に・困った(ことだから)」(「ハネ」が「ハン」となった)(悲しむべき、または恥じるべき事柄などの場合)

  「カチ・イア・クチア・ネイ」、KATI-IA-KUTIA-NEI(kati=leave off,cease,be left in statu quo;kutia=kuti=draw tightly together,contract,pinch;nei,neinei=stretch forward,reaching out)、「実に・それがあったままに放り出してあったり・積み上げてあったりが・限度を超えている(散らかす)」(「カチ」の語尾のI音と「イア」の語頭のI音が連結して「カチア」から「カチャ」と、「クチア」が「クチャ」と、「ネイ」が「ネ」となった) (前出国語篇(その十五)の131ちらかす(散らかす)の項の青森県方言「かちゃくちゃどし」を参照してください。)

  「モチ・アウ・コチ・エ」、MOTI-AU-KOTI-E(moti=consumed,scarce;au=firm,intense;koti=spurt out,flow;e=calling attention,or expressing surprise)、「(気持ちが)夢中で・いっぱいになって・なんと・はじけるようになる(くすぐったい)」(「モチ・アウ」のAU音がO音に変化して「モチョ」と、「コチ・エ」が「コチェ」となった)

  「ピオ・ナ」、PIO-NA(pio=many,be extinguished,extinguish;na=used after words and clauses to indicate position near or connection with the person addressed)、「(〜することが多い(可能性が高い))〜するだろう(〜んじゃない)」(「ピオ」が「ビョ」と、「ナ」が「ン」となった)

  「ケ・イア・(ン)グ(ン)グ」、KE-IA-NGUNGU(ke=diferrent,strange,extraordinary;ia=indeed;ngungu=turn aside,laed astray(whakangungu=fend,derend,protect))、「実に・特別な・(何かの時に)守つてくれる人(友達)」(「イア」が「ヤ」と、「(ン)グ(ン)グ」のNG音がG音に変化し、反復語尾が脱落して「グ」となった)

  「マイ」、MAI((Hawaii)to chew fine,soften,masticate)、「(美味なので)よく噛む(うまい)」(「マイ」のAI音がE音に変化して「メ」となつた)

  「ワ」、WA(=mea=used of persons whom it is unnecessary or imposible to name,so-and-so,such-and-such)、「(名乗るほどの者ではない)俺」

  「ワイ」、WAI(interrogative,who?,what?)、「(何なのか)おやまあ」

  「キア」、KIA(to introduce a proposition,to denote wish or purpose or effect,that,to,in order that)、「〜だね」(「キア」が「キャ」となった)

  「アタ・(ン)グ」、ATA-NGU(ata=gently,slowly,clearly;ngu=a person unable to swim)、「(泳げない人間が・かっこをつける)歩く」(「アタ」が「アサ」と、「(ン)グ」のNG音がG音に変化して「グ」となった)

  「チア(ン)ゴ・パウ」、TIANGO-PAU(tiango=shrunk,contracted;pau=denoting the complete or exhaustive character of any action)、「きっちりと・結い上げた(髪)」(「チア(ン)ゴ」のNG音がN音に変化して「チアノ」から「ジャン」と、「パウ」のAU音がO音に変化して「ボ」となった)

  「ワラ・ハナ・ト」、WARA-HANA-TO(wara=make a indistinct sound,desire;hana=shine,glow,flame;to=drag,haul)、「小さな・(輝くような)騒がしい・(声を)立てるもの(子供達)」(「ハナ」が「ハン」と、「ト」が「ド」となった)

の転訛と解します。

[岩手県]

303おぼっこ(赤ちゃん)・のこのこ・ばっけぁ・〜なはん・おずげ・ごろじる・〜ら・ばんげ・きゃっぱりする・えんつこ・ちょす・かでる・あんやー・かまりっこ・とろっぺつ・おごご・えっつに・てんこもり・おでぁもず・えんず

 岩手県の代表的な方言には、「おぼっこ」(赤ちゃん)(前出国語篇(その十四)の003あかんぼう(赤ん坊)の項を参照してください。)、「のこのこ」(蝉の幼虫)、「ばっけぁ」(蕗のとう)、「〜なはん」(〜ね)、「おずげ」(味噌汁)、「べぁっこ」(少し)(前出国語篇(その十五)の107すくない(少ない)の項を参照してください。)、「せっこぎ」(骨惜しみ)(前出国語篇(その十六)の182ぶしょう(無精)の項を参照してください。)、「ごろじる」(ご覧になる)、「ばっこ」(末っ子)(前出国語篇(その十五)の106すえっこ(末っ子)の項を参照してください。)、「〜ら」(〜よ)、「ばんげ」(夜)、「きゃっぱりする」(川に落ちる)、「えんつこ」(ゆりかご)、「ちょす」(さわる)、「かでる」(仲間に入れる)、「あんやー」(あらあ(女性語))、「かまりっこ」(香り)、「とろっぺつ」(いつも)、「おごご」(漬け物)、「えっつに」(とっくに)、「てんこもり」(山盛り)、「おでぁもず」(お金。代金)、「えんず」((目のごみが)ごろごろする)があります。

 この「のこのこ」、「ばっけぁ」、「〜なはん」、「おずげ」、「ごろじる」、「〜ら」、「ばんげ」、「きゃっぱりする」、「えんつこ」、「ちょす」、「かでる」、「あんやー」、「かまりっこ」、「とろっぺつ」、「おごご」、「えっつに」、「てんこもり」、「おでぁもず」、「えんず」は、

  「ノコ・ノコ」、NOKO-NOKO(noko=a downstream strut of a fish weir)、「(魚を捕らえる筌(うけ)の導樋に入った魚がなすすべなく一直線に筌に直行するさま)周囲の状況に無頓着に姿を現すもの(蝉の幼虫)」(前出国語篇(その一)の131ノコノコの項を参照してください。)

  「パケ・イア」、PAKE-IA(pake=crack,creak,rustle;ia=indeed)、「実に・(雪を)押し分けて現れたもの(蕗のとう)」(「パケ」が「バッケ」と、「イア」が「ァ」となった)

  「ナハナ」、NAHANA(by,belonging to him or her,etc.)、「〜(と同じだ。のようだ)ね」(「ナハナ」が「ナハン」となった)

  「アウ・ツ・カイ」、AU-TU-KAI(au=firm,intense;tu=stand,settle;kai=eat,drink,food)、「(味に)濃厚さが・ある・(液体の)食べ物(味噌汁)」(「あう」のAU音がO音に変化して「オ」と、「ツ」が「ズ」と、「カイ」のAI音がE音に変化して「ケ」から「ゲ」となった)

  「(ン)ガウ・ロウ・チ・ル」、NGAU-ROU-TI-RU(ngau=wander,go about;rou=reach,stretch out;ti=throw,cast;ru=shake,agitate,scatter)、「歩き回り・足を伸ばして・(身体を)放り・出す(歩き回ってみる)」(「(ン)ガウ」のNG音がG音に、AU音がO音に変化して「ゴ」と、「ロウ」が「ロと、「チ」が「ジ」となった)

  「ラ」、RA(there,yonder)、「(そこに〜がある、そこは〜の状態だなど)よ」

  「パ(ン)ゲ」、PANGE(tinder,touchwood made from a spongy fungus)、「(火口で灯をともす)晩(の時間。夜)」(「パ(ン)ゲ」が「パンゲ」となった)

  「キ・イア・パリ・ツル」、KI-IA-PARI-TURU(ki=to (the place),into,towards;ia=indeed;pari=flowing of the tide;turu=last a short time)、「一瞬の間に・実に・流れの・中に落ちる(川に落ちる)」(「キ・イア」が「キャ」から「キャッ」と、「「ツル」が「スル」となった)

  「エネ・ツコフ」、ENE-TUKOHU(ene=flatter,cajole;tukohu=a cylindrical basket used to holding food while steeping in water or while cooking in a hot spring)、「(赤ん坊を)あやす・籠(ゆりかご)」(「エネ」が「エン」と、「ツコフ」のH音が脱落して「ツコ」となつた)

  「チ・オフ・ツ」、TI-OHU-TU(ti=throw,cast;ohu=stoop,surround;tu=stand,settle,fight with,energetic)、「(手を)伸ばして・(囲む)包んで・しまう(さわる)」(「チ・オフ」のH音が脱落して「チオ」から「チョ」と、「ツ」が「ス」となった)

  「カテテ・ル」、KATETE-RU(katete=lengthen by adding a piece,be securely fastened;ru=shake,agitate,scatter)、「奮って・(しっかりと)結びつける(仲間に入れる)」(「カテテ」の反復語尾が脱落して「カテ」から「カデ」となった)

  「アナ・イア」、ANA-IA(ana=there,calling immediate attention;ia=indeed)、「ちょっと・あれを見て(あらあ)」(「アナ」が「アン」と、「イア」が「ヤー」となった)

  「カハ・マリコ」、KAHA-MARIKO(kaha=strong,strength;mariko=phantom,unreal)、「強い・実体のないもの(香り)」(「カハ」のH音が脱落して「カ」と、「マリコ」が「マリッコ」となった)

  「トロ・ツペ・ツ」、TORO-TUPE-TU(toro=stretch forth,survey,explore;tupe=a charm for depriving one's enemies of power,depriving of power;tu=fight with,enwegetic)、「(力をすり減らす)魔法にかかったように・ずっと・懸命に努力する(いつも(働きづめである))」(「ツペ」が「ッペ」となった)

  「オ・(ン)ゴ(ン)ゴ」、O-NGONGO(o=the...of;ngongo=waste away,bscome thin)、「例の・(圧縮された)つけ込まれた(漬け物)」(「(ン)ゴ(ン)ゴ」のNG音がG音に変化して「ゴゴ」となった)

  「エ・ツツ(ン)ギ」、E-TUTUNGI(e=to denote action in progress or temporary condition etc.;tungi,tutungi=set a light to,kindle)、「灯をともし・続けた(時間が経過した。とっくに)」(「ツツ(ン)ギ」のNG音がN音に変化して「ツツニ」から「ッツニ」となった)

  「テ(ン)ガ・コモ・リ」、TENGA-KOMO-RI(tenga=Adam's apple,distended;komo=thrust in,insert;ri=protect,bind)、「脹れ上がるほど・(椀に)よそい・入れた(山盛り)」(「テ(ン)ガ」のNG音がN音に変化して「テナ」から「テン」となった)

  「オ・テア・モツ」、O-TEA-MOTU(O=the...of;tea=interrogative.where?;motu=a heavy kind of stone,piece of flesh or fat)、「例の・石(の貨幣)の・どれ(が代償として適当)か(お金。代金)」(「テア」が「デア」と、「モツ」が「モズ」となった)

  「エ・ナツ」、E-NATU(e=to denote action in progress or temporary condition;natu=scratch,stir up,show ill feeling)、「(ごみが目を)擦(こす)って・いる(目のごみがごろごろする)」(「ナツ」が「ンズ」となった)

の転訛と解します。

[宮城県]

304めんこえ(かわいい)・えんずえ・おっぴさん・〜ちゃ・〜よ・すける・きかねー・ももた・ちょす・ひまだれかげる・おみょーぬず・ぎりぎり・ぎどごろね・たがぐ・たんばら・ねっばす

 宮城県の代表的な方言には、「めんこえ」(かわいい)(前出国語篇(その十四)の058かわいい(可愛い)の項を参照してください。)、「むつける」(すねる)(前出国語篇(その十五)の111すねる(拗ねる)の項を参照してください。)、「えんずえ」(違和感がある)、「すっかげる」(からかう)(前出国語篇(その十四)の057からかうの項を参照してください。)、「おっぴさん」(曾祖父(母))、「〜ちゃ」(〜よ)、「ばが」(ものもらい)(前出国語篇(その十六)の209ものもらい(麦粒腫)の項を参照してください。)、「ししゃます」(扱いに困る)(前出国語篇(その十四)の076こまる(困る)の項を参照してください。)、「おがる」(成長する)(前出国語篇(その二)の02オガルの項を参照してください。)、「うるがす」(水につける)(前出国語篇(その二)の05ウルガスの項を参照してください。)、「すける」(手伝う)、「きかねー」(気が強い)、「ももた」(太股)、「ちょす」(いじる)、「ひまだれかげる」(時間をかける)、「おみょーぬず」(お休みなさい)、「ぎりぎり」(むりやり)、「ぎどごろね」(うたたね)、「たがぐ」(持ち上げる)、「たんばら」(気が短いさま)、「ねっばす」((糊などで)つける)、「おしょすえ」(恥ずかしい)(前出国語篇(その十六)の167はずかしい(恥ずかしい)の項を参照してください。)があります。

 この「えんずえ」、「おっぴさん」、「〜ちゃ」(〜よ)、「ししゃます」、「すける」、「きかねー」、「ももた」、「ちょす」、「ひまだれかげる」、「おみょーぬず」、「ぎりぎり」、「ぎどごろね」、「たがぐ」、「たんばら」、「ねっばす」は、

  「エ・ナツ・エ」、E-NATU-E(e=to denote action in progress or temporary condition;natu=scratch,stir up,show ill feeling;e=calling attention or expressing surprise,to give emphasis)、「(ごみが目を)擦(こす)って・いて・しょうがない(違和感がある)」(「ナツ」が「ンズ」となった)

  「オピ・タナ」、OPI-TANA(opi=terrified;tana=his,her,its)、「彼(彼女)の・怖い(人。曾祖父母)」(「オピ」が「オッピ」と、「タナ」が「サン」となった)

  「チア」、TIA(=etia=as it were,as if,perhaps)、「(〜だろう)〜よ」(「チア」が「チャ」となった)

  「ツケ・ル」、TUKE-RU(tuke=elbow,angle;ru=shake,agitate,scatter)、「奮起して・(人の)腕となって助ける(手伝う)」(「ツケ」が「スケ」となった)

  「キ・カネ」、KI-KANE(ki=full,very;kane=choke)、「しょっちゅう・(人を窒息させる)言葉を詰まらせる(気が強い)」(「カネ」が「カネー」となった)

  「モモ・タ」、MOMO-TA(momo=in good condition,well proportioned;ta=lay,ally)、「良い均衡を保って・並んでいる(太股)」
または「モモ・タ(ン)ガ」、MOMO-TANGA(momo=in good condition,well proportioned;tanga=be assembled)、「良い均衡を保って・組み合わされている(足の)部分(股)」(「タ(ン)ガ」のNG音がN音に変化して「タナ」から「タン」となった)(用例「モモタんどこズボンきづくねえすか?」からしますと「モモタ」でなく「モモタン」の可能性もあります。前出国語篇(その十六)の194また(股)の項を参照してください。)

  「チ・オフ・ツ」、TI-OHU-TU(ti=throw,cast;ohu=stoop,surround;tu=stand,settle,fight with,energetic)、「(手を)伸ばして・(囲む)包んで・しまう(いじる)」(「チ・オフ」のH音が脱落して「チオ」から「チョ」と、「ツ」が「ス」となった)

  「ヒ・マタレカ・(ン)ゲヘ・ル」、HI-MATAREKA-NGEHE-RU(hi=raise,rise;matareka=pleasant,be fond of;ngehe=lazy;ru=shake,agitate,scatter)、「怠けて・いたい気持ちが・湧き・起こった(時間をかける)」(「マタレカ」が「マダレカ」と、「(ン)ゲヘ」のNG音がG音に変化し、H音が脱落して「ゲ」となつた)

  「アウミヒ・アウ・(ン)グツ」、AUMIHI-AU-NGUTU(aumihi=sigh for,greet,welcome;au=firm,intense;ngutu=lip,mouth,talk)、「(口を・しっかり閉じる)おしゃべりは・やめようと・挨拶する(お休みなさい)」(「アウミヒ・アウ」のAU音がO音に変化し、H音が脱落して「オミオ」から「オミョー」と、「(ン)グツ」のNG音がN音に変化して「ヌズ」となつた)

  「(ン)ギア・ヒリ・(ン)ギア・ヒリ」、NGIA-HIRI-NGIA-HIRI(ngia=seem,appear to be;hiri,hihiri=laborious,energetic,eagerly desire)、「たいへん・強い意志が現れて・いるように見える(無理矢理)」(「(ン)ギア」のNG音がG音に変化し、語尾のA音が脱落して「ギ」と、「ヒリ」のH音が脱落して「リ」となった)

  「(ン)ギア・タウ・(ン)ゴロ・ネイ」、NGIA-TAU-NGORO-NEI(ngia=seem,appear to be;tau=come to rest,be suitable;ngoro,ngongoro=snore;nei=to denote proximity to or connection with,to indicate continuance of action)、「気持ちよく・いびきをかいて・いる・ように見える(うたた寝)」(「(ン)ギア」のNG音がG音に変化し、語尾のA音が脱落して「ギ」と、「タウ」のAU音がO音に変化して「ト」から「ド」と、「(ン)ゴロ」のNG音がG音に変化して「ゴロ」と、「ネイ」が「ネ」となった)

  「タカ・(ン)グ」、TAKA-NGU(taka=lie in a heap,heap up;ngu=greedy)、「強い意志で・持ち上げる(持ち上げる)」(「タカ」が「タガ」と、「(ン)グ」のNG音がG音に変化して「グ」となった)

  「タ(ン)ガ・パラ」、TANGA-PARA(tanga,tatanga=alert,complaint;para=bravery,spirit)、「(何かにつけて)文句を言う・気質だ(気が短いさま)」(「タ(ン)ガ」のNG音がN音に変化して「タナ」から「タン」と、「パラ」が「バラ」となった)

  「ネイ・パツ」、NEI-PATU(nei=to denote proximity to or connection with,to indicate continuance of action;patu=strike,pound)、「ぴったりと・打ち付ける((糊などで)つける)」(「ネイ」が「ネッ」と、「パツ」が「バス」となった)

の転訛と解します。

[秋田県]

305もんぞ(寝言)・たまし・きびちょ・しぇんち・わっぱが・おんざる・のさばる・まぐれる・うだで・かちゃぺね・とじぇね・おが・むったり・えがらもがら・〜ぎゃ・〜らせる・きさん・んみゃ・んにゃ・おんじょかしぇる・じゅっぷがする

 秋田県の代表的な方言には、「もんぞ」(寝言)、「たまし」(幽霊)、「きびちょ」(急須)、「しぇんち」(便所)、「わっぱが」(割り当て分)、「おんざる」(おいでになる)、「とっくりげぁる」(ひっくりかえる)(前出国語篇(その十四)の079ころぶ(転ぶ)の項を参照してください。)、「のさばる」(甘える)、「まぐれる」(転がる)、「うだで」(気持ちが悪い)、「かちゃぺね」(軽薄な)、「とじぇね」(さびしい)、「おが」(たくさん)、「むったり」(一心に)、「えがらもがら」(よろよろ)、「〜ぎゃ」(〜(です)か)、「〜らせる」(〜させる)、「きさん」(君)、「んみゃ」(おまえ)、「んにゃ」(いや)、「おんじょかしぇる」(脅す)、「じゅっぷがする」(あきあきする)があります。

 この「もんぞ」、「たまし」、「きびちょ」、「しぇんち」、「わっぱが」、「おんざる」、「のさばる」、「まぐれる」、「うだで」、「かちゃぺね」、「とじぇね」、「おが」、「むったり」、「えがらもがら」、「〜ぎゃ」、「〜らせる」、「きさん」、「んみゃ」、「んにゃ」、「おんじょかしぇる」、「じゅっぷがする」は、

  「マウヌ・タウ」、MAUNU-TAU(maunu=be drawn from the belt or sheath etc.,come out,go forth;tau=come to rest,be suitable)、「(休んでいる)寝ている・(状況から外へ)出てくるもの(寝言)」(「マウヌ」のAU音がO音に変化して「モヌ」から「モン」と、「タウ」のAU音がO音に変化して「ト」から「ゾ」となった)

  「タマ・アチ」、TAMA-ATI(tama=emotion,strong feeling,mystic sense;ati=descendant,clan)、「神秘的な・部族(幽霊)」(「タマ」の語尾のA音と「アチ」の語頭のA音が連結して「タマチ」から「タマシ」となった)

  「キヒ・ピチ・アウ」、KIHI-PITI-IO(kihi=strip of branches;piti=put side by side,add;io=tough,obstinate,twitch)、「(本体から伸びた枝のような)注ぎ口から・丹念に・(液体を)注ぐもの(急須)」(「キヒ」のH音が脱落して「キ」と、「ピチ」の語尾のI音と「イオ」の語頭のI音が連結して「ピチオ」から「ビチョ」となつた)

  「チエ・ノチ」、TIE-NOTI(tie=abundant,plenty;noti=pich or contract(whakanoti=cover fire with ashes))、「何回となく・(事後に)砂を掛ける(場所。便所)」(「チエ」が「シェ」と、「ノチ」が「ンチ」となった)

  「ワ・ツ・パ(ン)ガ」、WA-TU-PANGA(wa=definite place,area;tu=stand,settle;panga=throw,lay,place)、「(置かれた)割り当てられた・(ところに)ある・場所(割り当て分)」(「ツ」が「ッ」と、「パ(ン)ガ」のNG音がG音に変化して「パガ」となった)

  「オナ・タ・ル」、ONA-TA-RU(ona=of him,of her;ta=dash,lay;ru=shake,agitate,scatter)、「彼(彼女)が・やって来て・いる(おいでになる)」(「オナ」が「オン」と、「タ」が「ザ」となった)

  「ノホ・タパ・ル」、NOHO-TAPA-RU(noho=sit,stay,settle;tapa=call,command;ru=shake,agitate,scatter)、「座ったままで・(人に)命令を・する(甘える)」(「ノホ」のH音が脱落して「ノ」と、「タパ」が「サバ」となった)

  「マ・クレヘ・ル」、MA-KUREHE-RU(ma,mama=light,not heavy,so quick;kurehe=fold,wrinkle;ru=shake,agitate,scatter)、「奮って・軽々と・(折りたたむように)回転する(転ぶ)」(「クレヘ」のH音が脱落し、濁音化して「グレ」となった)

  「ウ・タタイ・(ン)グ」、U-TATAI-NGU(u=be firm,be fixed,reach its limit;tatai=arrange,adorn,be ranged in order;ngu=greedy,moan,groan)、「きちんと(綺麗に)・整えたものが・(汚されて)泣き出すような(気持ちが悪い)」(「タタイ」のAI音がE音に変化して「タテ」から「ダデ」と、「(ン)グ」のNG音がG音に変化して「グ」となった)(『全国方言一覧辞典』の見出しには「ウダデ」とありますが、用例には「腐った魚さ触ったてがにウダデグなった」とありますので、「ウダデグ」の誤りとして解釈しました。)

  「カ・チア・ペネイ」、KA-TIA-PENEI(ka=to denote the commencement of a new action or condition;tia=stick in,adorn by sticking in feathers;penei=like this,treat,do or act in this manner)、「新しく・頭に羽根飾りを付ける・というようなことをする(軽薄な)」(「チア」が「チャ」と、「ペネイ」が「ペネ」となった)

  「ト・チエ・ネイ」、TO-TIE-NEI(to=calm,tranquil;tie=abundance,plenty;nei=to denote proximity to or connection with,to indicate continuance of action)、「たいへん・極限まで・静まりかえっている(さびしい)」(「チエ」が「ジェ」と、「ネイ」が「ネ」となった)

  「オ(ン)ガ」、ONGA(agitate,shake about)、「躍起になって(たくさん)」(NG音がG音に変化して「オガ」となった)

  「ムツ・タリ」、MUTU-TARI(mutu=brought to an end;tari=urge,incite)、「最後まで・奮闘する(一心に)」(「ムツ」が「ムッ」となった)

  「ヘ・(ン)ガラフ・マウ・(ン)ガラフ」、HE-NGARAHU-MAU-NGARAHU(he=wrong,mistaken,perplexed;ngarahu=war dance;mau,maumau=waste,to no purpose)、「おかしな・何も意味のない・戦士の(戦闘の前の)踊りを踊っているような(よろよろ)」(「ヘ」のH音が脱落して「エ」と、「(ン)ガラフ」のNG音がG音に変化し、H音が脱落して「ガラ」と、「マウ」のAU音がO音に変化して「モ」となった)

  「(ン)ギア」、NGIA(seem,appear to be)、「〜のように見える(〜(です)か)」(NG音がG音に変化して「ギア」から「ギャ」となった)

  「ラ・テ・ル」、RA-TE-RU(ra=by way of;te,tete=exert oneself;ru=shake,agitate,scatter)、「奮って・〜させ・る(〜させる)」(「テ」が「セ」となった)

  「キ・タナ」、KI-TANA(ki=to(of a person);tana=his,her,its)、「彼(彼女)・よ(君)」(「タナ」が「サン」となった)

  「ナ・ミヒ・イア」、NA-MIHI-IA(na=by,belonging to;mihi=greet,admire;ia=indeed)、「実に・うやまう・べき人(おまえ)」(「ナ」が「ン」と、「ミヒ」のH音が脱落して「ミ」と、「ミ・イア」が「ミャ」となった)

  「ナ・ニア」、NA-NIA(na=by,belonging to;(Hawaii)nia=malicious gossip,slanderous,to accuse falsely)、「悪評を・たてられるような言動(いや)」(「ナ」が「ン」と、「ニア」が「ニャ」となった)

  「オ(ン)ガ・チオカ・チエ・ル」、ONGA-TIOKA-TIE-RU(onga=agitate,shake about;tioka=pierce;tie=abundance,plenty;ru=shake,agitate,scatter)、「躍起になって・何回も・奮って・刺す(脅す)」(「オ(ン)ガ」のNG音がG音に変化して「オガ」と、「チオカ」が「ジョカ」と、「チエ」が「シェ」となった)

  「チウ・プ(ン)ガ・ツル」、TIU-PUNGA-TURU(tiu=soar,wander,sway to and fro;punga=reason,cause,origin;turu=last a short time)、「ふらふらと出歩きたい・理由が・(脳裏を)かすめる(あきあきする)」(「チウ」が「ジュッ」と、「プ(ン)ガ」のNG音がG音に変化して「プガ」と、「ツル」が「スル」となった)

の転訛と解します。

[山形県]

306やばつい(湿って気持ちが悪い)・もっかえる・さま・ぶずぐす・むがさり・〜す・わらわら・たがぐ・〜ず・ととこ・かー・ほろぐ・うがえ・あがらっしゃえ・ちゃっちゃど・さぶろ・すなこえ・ぬだばる・てしょずらすえ・うるげる

 山形県の代表的な方言には、「やばつい」(湿って気持ちが悪い)、「もっかえる」(倒れる)、「さま」(障子)、「ぶずぐす」(壊す)、「むがさり」(婚礼)、「こわえ」(疲れて苦しい)(前出国語篇(その十五)の133つかれた(疲れた)の項を参照してください。)、「おっかない」(恐ろしい)(前出国語篇(その十四)の030おそろしい(恐ろしい)の項を参照してください。)、「〜す」(〜ね)、「わらわら」(急いで)、「たがぐ」(持つ)、「〜ず」(〜よ)、「ととこ」(鶏)、「かー」(いやはや)、「ほろぐ」(振るい落とす)、「うがえ」(多い)、「あがらっしゃえ」(お入りなさい)、「ちゃっちゃど」(さっさと)、「さぶろ」(スコップ)、「すなこえ」(歯切れが悪い)、「ぬだばる」(腹這いになる)、「てしょずらすえ」(干渉されて煩わしい)、「うるげる」(ふやける)、「ずごねる」(むずかる)(前出国語篇(その十六)の203むずかるの項を参照してください。)があります。

 この「やばつい」、「もっかえる」、「さま」、「ぶずぐす」、「むがさり」、「〜す」、「わらわら」、「たがぐ」、「〜ず」、「ととこ」、「かー」、「ほろぐ」、「うがえ」、「あがらっしゃえ」、「ちゃっちゃど」、「さぶろ」、「すなこえ」、「ぬだばる」、「てしょずらすえ」、「うるげる」は、

  「イア・パツイ」、IA-PATUI(ia=current,rushing stream;patui=walk arm in arm)、「(泥)はねが・(腕を組んで歩く)しっかり付いている(湿って気持ちが悪い)」(「イア」が「ヤ」と、「パツイ」が「バツイ」となった)

  「モツ・カエア・ル」、MOTU-KAEA-RU(motu=separated,moved to a distance;kaea=wander;ru=shake,agitate,scatter)、「(今の位置から)離れて・(ふらふらと)さまよい・出る(倒れる)」(「モツ」が「モッ」と、「カエア」の語尾のA音が脱落して「カエ」となった)

  「タハ・マ」、TAHA-MA(taha=side,margin,edge;ma=to indicate the inclusion of others whom it is not necessary to specify)、「片方に面が・あるもの(障子)」(「タハ」のH音が脱落して「タ」から「サ」となった)

  「プツプツ・(ン)グツ(ン)グツ」、PUTUPUTU-NGUTUNGUTU(putuputu=fern root,roi,roiroi=grate into pulp;ngutungutu=burn,angry dispute)、「徹底的に粉々にして・激しくののしる(壊す)」(「プツプツ」の反復語尾が脱落して「プツ」から「ブズ」と、「(ン)グツ(ン)グツ」の反復語尾が脱落し、NG音がG音に変化して「グツ」から「グズ」となった)

  「ム(ン)ガ・タリ」、MUNGA-TARI(munga=muka=prepared fibre of flax;tari=bring,carry)、「(精錬した繊維)嫁入り道具を・搬入する儀式(婚礼)」(「ム(ン)ガ」のNG音がG音に変化して「ムガ」と、「タリ」が「サリ」となった)
  または「ム・(ン)ガタリ」、MU-NGATARI(mu=silent;ngatari=shake,vibrate)、「無言で・震えている(婚礼)」(「(ン)ガタリ」のNG音がG音に変化して「ガサリ」となった)

  「ツ」、TU(stand,settle)、「〜の状態である(〜ね)(丁寧語)」(「ツ」が「ス」となった)

  「ワラワラ」、WARAWARA(desire,craving)、「(切望する)気が急く(急いで)」

  「タカ・(ン)グ」、TAKA-NGU(taka=lie in a heap,heap up;ngu=greedy)、「強い意志で・持ち上げる(持つ)」(「タカ」が「タガ」と、「(ン)グ」のNG音がG音に変化して「グ」となった)

  「ツ」、TU(fight with,energetic)、「懸命に〜する(〜ね)(強意語)」(「ツ」が「ズ」となった)

  「トト・コ」、TOTO-KO(toto=drag a number of objects,chip or knock off,chop;ko=a wooden implement for digging or planting)、「地面をつついて・餌をあさるもの(鶏)」

  「カ」、KA(at the beginning of a narrative,to introduce a condition)、「さて(今の状態は)(いやはや)」(「カ」が「カー」となった)

  「ホロ・(ン)グ」、HORO-NGU(horo=fall in fragments,drop off or cut,fall off;ngu=greedy)、「強い意志で・落とす(振るい落とす)」(「(ン)グ」のNG音がG音に変化して「グ」となった)

  「ウ(ン)ガ・エ」、UNGA-E(unga=u=be firm,be fixed,reach its limit;e=to give emphasis)、「実に・(極限に達した)多い(多い)」(「ウ(ン)ガ」のNG音がG音に変化して「ウガ」となった)

  「ア・(ン)ガラフ・チア・エ」、A-NGARAHU-TIA-E(a=drive,urge,compel;ngarahu=take counsel,deliberate:tia=stick in,drive in pegs etc.;e=to give emphasis)、「相談の・ために・(杖を突いて)入って・来なさい(お入りなさい)」(「(ン)ガラフ」のNG音がG音に変化し、H音が脱落して「ガラッ」と、「チア」が「シャ」となつた)

  「チア・チア・ト」、TIA-TIA-TO(tia=stick in,drive in pegs etc.,to=drag,haul)、「(杖を)突き・突き(急いで)・引っ張ってくる(さっさと)」(「チア・チア」が「チャッチャ」と、「ト」が「ド」となった)

  「タ・プラウ」、TA-PURAU(ta=the...of,dash,beat;purau=an implement,rake)、「例の・(鋤のような)道具(スコップ)」(「タ」が「サ」と、「フラウ」のAU音がO音に変化して「ブロ」となった)

  「ツ(ン)ガ(ン)ガ・コアエ」、TUNGANGA-KOAE(tunganga=be out of breathe;koae=kowae=divide,part,pick out)、「(言葉の)部分部分が・(息が切れて)途切れ途切れになる(歯切れが悪い)」(「ツ(ン)ガ(ン)ガ」の反復語尾が脱落し、NG音がN音に変化して「ツナ」から「スナ」と、「コアエ」のAE音がE音に変化して「コエ」となった)

  「(ン)グ・タパルル」、NGU-TAPARURU(ngu=a person unable to swim;taparuru=slow,dawdling)、「泳げない人間が・(泳ぎの稽古で)時間を浪費している(腹這いになる)」(「(ン)グ」のNG音がN音に変化して「ヌ」と、「タパルル」の反復語尾が脱落して「タバル」となった)

  「テイ・チオフ・ツラツラ・ツアイ」、TEI-TIOHO-TURATURA-TUAI(tei,teitei=high,summit;tioho=apprehensive;turatura=molest,spiteful;tuai=dark)、「たいへん・心配してもらっているのが・(かえって)迷惑で・(気持ちが)暗くなっている(干渉されて煩わしい)」(「テイ」が「テ」と、「チオフ」のH音が脱落して「ショ」と、「ツラツラ」の反復語尾が脱落して「ズラ」と、「ツアイ」のAI音がE音に変化して「ツエ」から「スエ」となった)

  「ウル・(ン)ゲル」、URU-NGERU(uru=enter,associate oneself with;ngeru,ngerungeru=smooth,soft)、「(水に)浸けられて・柔らかくなる(ふやける)」(「(ン)ゲル」のNG音がG音に変化して「ゲル」となった)

の転訛と解します。

[福島県]

307かんかち(やけど)・さすけねー・しなっこい・〜した・おだつ・までーに・〜はー・ほろぐ・にしゃ・しっちゃげる・〜ごじら・はだず・ざんぞ

 福島県の代表的な方言には、「かんかち」(やけど)、「ずなえー」(大きい)(前出国語篇(その十四)の022おおきい(大きい)の項を参照してください。)、「たれかもの」(怠け者)(前出国語篇(その十六)の157なまけもの(怠け者)の項を参照してください。)、「おど」(赤ん坊)(前出国語篇(その十四)の003あかんぼう(赤ん坊)の項を参照してください。)、「うっつぁし」(うるさい)(前出国語篇(その十四)の018うるさい(煩い・五月蠅い)の項を参照してください。)、「さすけねー」(気にしなくてよい)、「しなっこい」(しなやか)、「〜した」(〜よね)、「おだつ」(はしゃぐ)、「とーみぎ」(とうもろこし)(前出国語篇(その十五)の146とうもろこし(玉蜀黍)の項を参照してください。)、「までーに」(ていねいに)、「〜はー」(〜よ)、「ほまち」(へそくり)(前出国語篇(その十六)の187へそくりの項を参照してください。)、「ほろぐ」(落としてなくす)、「ばっち」(末っ子)(前出国語篇(その十五)の106すえっこ(末っ子)の項を参照してください。)、「にしゃ」(おまえ)、「しっちゃげる」(破れる)、「でんぐる」(転ぶ)(前出国語篇(その十四)の079ころぶ(転ぶ)の項を参照してください。)、「〜ごじら」(〜ごと)、「どしょなし」(臆病者)(前出国語篇(その十五)の101しょうしんもの(小心者)の項を参照してください。)、「はだず」(始める)、「ざんぞ」(陰口)があります。

 この「かんかち」、「さすけねー」、「しなっこい」、「〜した」、「おだつ」、「までーに」、「〜はー」、「ほろぐ」、「にしゃ」、「しっちゃげる」、「〜ごじら」、「はだず」、「ざんぞ」は、

  「カ(ン)ガ・カチ」、KANGA-KATI(kanga=ka=take fire,burn;kati=bite,nip)、「火に・食いつかれた(やけど)」(「カ(ン)ガ」のNG音がN音に変化して「カナ」から「カン」となった)

  「タツ・ケ・ネイ」、TATU-KE-NEI(tatu=be at ease,be content,agree;ke=different,strange,extraordinary;nei=to indicate continuance of action)、「異常なことが・(続く)あっても・安心している(気にしなくてよい)」(「タツ」が「サス」と、「ネイ」が「ネー」となった)

  「チナ・ツ・コイ」、TINA-TU-KOI(tina=fixed,satisfied,contented;tu=stand,settle;koi=move about,good,suitable)、「動きに・満足が・ある(しなやか)」(「チン」が「シナ」と、「ツ」が「ッ」となった)

  「チ・タ」、TI-TA(ti=throw,cast;ta=lay)、「〜をやって・のけた(〜よね)」(「チ」が「シ」となった)

  「アウ・タツ」、AU-TATU(au=bark,howl;tatu=reach the bottom,be at ease,be content)、「(極限まで)喜んで・叫ぶ(はしゃぐ)」(「アウ」のAU音がO音に変化して「オ」と、「タツ」が「ダツ」となった)

  「マタイ・ヌイ」、MATAI-NUI(matai=watch,inspect,examine;nui=many,abundant)、「念入りに・点検する(ていねいに)」(「マタイ」のAI音がE音に変化して「マテ」から「マデー」と、「ヌイ」が「ニ」となった)

  「ハ」、HA(then,so)、「そして(〜よ)」(「ハ」が「ハー」となった)

  「ホロ・(ン)グ」、HORO-NGU(horo=fall in fragments,drop off or cut,fall off;ngu=greedy)、「強い意志で・落として見えなくなる(落としてなくす)」(「(ン)グ」のNG音がG音に変化して「グ」となった)

  「ヌイ・チア」、NUI-TIA(nui=large,great,many;tia=stick in,adorn by sticking in feathers)、「偉大な・(羽根飾りをつけた)首長(敬称。おまえ)」(「ヌイ」が「ニ」と、「チア」が「シャ」となった)

  「チチ・ア・(ン)ガイ・ル」、TITI-A-NGAI-RU(titi=squeak,make a sharp inarticulate sound;a=drive,urge,compel;ngai=tribe,clan;ru=shake,agitate,scatter)、「(紙が破れるような)ビリビリと音を・立てる・部類の行為を・する(破れる)」(「チチ・ア」が「シッチャ」と、「(ン)ガイ」のNG音がG音に、AI音がE音に変化して「ゲ」となった)

  「コ・チラハ」、KO-TIRAHA(ko=to give emphasis;tiraha=bundle,make into a bundle)、「(皮と実を一緒に)ひとまとめに・して(〜ごと)」(「チラハ」のH音が脱落して「ジラ」となった)

  「パ・タツ」、PA-TATU(pa=touch,strike,join in an undertaking;tatu=reach the bottom,be at ease)、「勇んで・仕事に取り掛かる(始める)」(「パ」のP音がF音を経てH音に変化して「ハ」と、「タツ」が「ダズ」となった)

  「タ(ン)ガ・タウ」、TANGA-TAU(tanga=be assembled;tau=bark,noise,report)、「集まった・雑音(陰口)」(「タ(ン)ガ」のNG音がN音に変化して「タナ」から「ザン」と、「タウ」のAU音がO音に変化して「ト」から「ゾ」となった)

の転訛と解します。

[関東地方]

[茨城県]

308ちぐぬぐ(うそをつく)・えがえ・おしゃらぐ・かっちゃぐ・〜ぺ・〜べ・おじる・えしけー・ふんじゃす・あーたに・ごじゃっぺ・ばっとー・えまっと・えしゃる

 茨城県の代表的な方言には、「ちぐぬぐ」(うそをつく)、「えがえ」(大きい)、「おしゃらぐ」(おしゃれ)、「わすら」(いたずら)(前出国語篇(その十四)の014いたずら(悪戯)の項を参照してください。)、「こわえ」(疲れてだるい)(前出国語篇(その十五)の133つかれた(疲れた)の項を参照してください。)、「とっぺつもねー」(とんでもない)(前出国語篇(その十五)の150とんでもないの項を参照してください。)、「かっちゃぐ」(引っ掻く)、「〜ぺ・〜べ」(〜う)、「おじる」(降りる)、「えしけー」(よくない)、「おどめ」(赤ん坊)(前出国語篇(その十四)の003あかんぼう(赤ん坊)の項を参照してください。)、「ふんじゃす」(踏みつぶす)、「まじらっぽえ」(まぶしい)(前出国語篇(その十六)の198まぶしい(眩しい)の項を参照してください。)、「あーたに」(あのように)、「ごじゃっぺ」(でたらめだ)、「けんなるえ」(うらやましい)(前出国語篇(その十四)の017うらやましい(羨ましい)の項を参照してください。)、「ばっとー」(びり)、「えまっと」(もっと)、「えしゃる」(どく)、「ばっち」(末っ子)(前出の福島県307かんかちの項を参照してください。)があります。

 この「ちぐぬぐ」、「えがえ」、「おしゃらぐ」、「かっちゃぐ」、「〜ぺ・〜べ」(〜う)、「おじる」、「えしけー」、「ふんじゃす」、「あーたに」、「ごじゃっぺ」、「ばっとー」、「えまっと」、「えしゃる」は、

  「チ・(ン)グヌ・(ン)グ」、TI-NGUNU-NGU(ti=throw,cast;ngunu=bend,crouch;ngu=greedy,moan,groan)、「悲しげな声で・卑屈に頭を下げ・散らす(うそをつく)」(「(ン)グヌ」のNG音がG音に変化して「グヌ」と、「(ン)グ」のNG音がG音に変化して「グ」となった)

  「エ(ン)ガエ(ン)ガ」、ENGAENGA(overflow)、「(あふれ出るほど)多い(大きい)」(最初のNG音がG音に変化し、語尾のNGA音が脱落して「エガエ」となった)

  「オ・チア・ラ・(ン)グ」、O-TIA-RA-NGU(o=the...of,of,belonging to;tia=stick in,adorn by sticking in feathers;ra=there,yonder,as a suffix;ngu=greedy)、「例によって・どん欲に・羽根飾りをつけて・いる(おしゃれ)」(「チア」が「シャ」と、「(ン)グ」のNG音がG音に変化して「グ」となった)

  「カ・チア・(ン)グ」、KATI-A-NGU(kati=bite,nip;a=drive urge,compel;ngu=greedy)、「どん欲に・引き・ちぎる(引っ掻く)」(「カ」が「カッ」と、「チア」が「チャ」と、「(ン)グ」のNG音がG音に変化して「グ」となった)

  「ペ」、PE(like)、「〜のようだ(〜う)」(また「ペ」が「ベ」となった)

  「オチ・ル」、OTI-RU(oti=(Hawaii)oki=to cut,separate,divide;ru=shake,agitate,scatter)、「(車などから)離れ・る(降りる)」(「オチ」が「オジ」となった)

  「エチ・ケ」、ETI-KE(eti=shrunk,recoil;ke=different,strange,extraordinary)、「(作柄が)いつもと異なって・減少した(よくない)」(「エチ」が「エシ」と、「ケ」が「ケー」となった)

  「フ(ン)ガ・チア・ツ」、HUNGA-TIA-TU(hunga=grind down,rub fine;tia=catch and kill vermin;tu=fight with,energetic)、「懸命に・(擂り)踏み・(虫けらのように)潰す(踏みつぶす)」(「フ(ン)ガ」のNG音がN音に変化して「フナ」から「フン」と、「チア」が「ジャ」と、「ツ」が「ス」となった)

  「アタ・ヌイ」、ATA-NUI(ata=cautiously,quite;nui=many,rank,importance)、「全く・(同じ)条件で(あのように)」(「アタ」が「アータ」と、「ヌイ」が「ニ」となった)

  「(ン)ガウ・チア・ペ」、NGAU-TIA-PE(ngau=bite,hurt,attack;tia=stick in,adorn by stick in feathers;pe=crushed)、「(事実を)曲げて・(羽根で)飾って・めちゃくちゃにする(でたらめだ)」(「(ン)ガウ」のNG音がG音に、AU音がO音に変化して「ゴ」と、「チア」が「ジャッ」となった)

  「パ・トウ」、PA-TOU(pa=touch,reach;tou=anus,posteriors,lower end of anything)、「最後に・到着する(びり)」(「パ」が「バッ」と、「トウ」が「トー」となった)

  「エ・マタウ」、E-MATAU(e=to denote action in progress or temporary condition;matau=know,feel certain of)、「さらに・(感じる)見聞きする(もっと)」(「マタウ」のAU音がO音に変化して「マト」から「マット」となった)

  「エチ・アライ」、ETI-ARAI(eti=shrunk,recoil;arai=screen,block up)、「邪魔をしているものを・引っ込める(退(ど)く)」(「エチ」が「エシ」と、「アライ」のAI音がE音に変化して「アレ」となり、「エシ・アレ」が「エシャレ」となった)(『全国方言一覧辞典』は「えしゃる」としますが、用例の「邪魔だからエシャレ」によりました。)

の転訛と解します。

[栃木県]

309げんざんぼ(とんぼ)・じりめ・ふくんべ・おしぐれ・じぶくれやま・しみつかれ・はが・おどもり・どどめえろ・いじゃげる・うすずらこぐ・なじょすべー・まめ・こでっちり・もーに・きうきうに・もそえ・まがる・そばえる・〜と・〜ど・〜げー・ほだほだ

 栃木県の代表的な方言には、「げんざんぼ」(とんぼ)(前出国語篇(その十五)の151とんぼ(蜻蛉)の項を参照してください。)、「じりめ」(蝉)、「ふくんべ」(ひょうたん)、「おしぐれ」(夕立)、「じぶくれやま」(丘)、「しみつかれ」(初午につくる料理)、「はが」(田植えの相当分)、「おどもり」(子守)、「どどめえろ」(赤紫色)、「いじゃげる」(胸が悪くなる)、「うすずらこぐ」(上の空で聞く)、「なじょすべー」(どうしよう)、「まめ」(細かだ)、「こでっちり」(山になるほどたくさん)、「もーに」(余分に)、「きうきうに」(急いで)、「もそえ」(もたつき長い)、「まがる」(訪ねる)、「そばえる」(甘える)、「〜と・〜ど」(〜よ)、「〜げー」(〜かい)、「ほだほだ」(そうだそうだ)があります。

 この「じりめ」、「ふくんべ」、「おしぐれ」、「じぶくれやま」、「しみつかれ」、「はが」、「おどもり」、「どどめえろ」、「いじゃげる」、「うすずらこぐ」、「なじょすべー」、「まめ」、「こでっちり」、「もーに」、「きうきうに」、「もそえ」、「まがる」、「そばえる」、「〜と・〜ど」、「〜げー」、「ほだほだ」は、

  「チリ・マイ」、TIRI-MAI(tiri=throw or place one by one,scatter;mai=sour,fermented)、「(酸っぱいもの)おしっこを・引っかける(虫。蝉)」(「チリ」が「ジリ」と、「マイ」のAI音がE音に変化して「メ」となった)

  「フク・ナ・パエ」、HUKU-NA-PAE(huku=tail;na=to indicate position near or connection with the person addressed;pae=hirizen,lie on one side,lie ready for use)、「(人の尻尾のように)腰の・近くに・付ける(使用するもの。ふくべ。ひょうたん)」(「ナ」が「ン」と、「パエ」のAE音がE音に変化して「ベ」となった)(雑楽篇(その二)の1042漏斗(じょうご)の項の「瓢(ふくべ)」を参照してください。)

  「オチ・(ン)グ・レイ」、OTI-NGU-REI(oti=then,but;ngu=greedy,moan;rei=leap,rush,run)、「にわかに(急に)・降り出す・強く降る(雨)」(「オチ」が「オシ」と、「(ン)グ」のNG音がG音に変化して「グ」と、「レイ」が「レ」となった)(雑楽篇(その一)の233むらさめ(村雨)の項の「しぐれ(時雨)」を参照してください。)

  「チヒ・プク・レイ・イア・マ」、TIHI-PUKU-REI-IA-MA(tihi=summit,peak,lie in a heap;puku=swelling;rei=breast,there;ia=indeed;ma=white,clear)、「脹れた・胸のように・高くなっている・実に・清らかな(山)(丘)」(「チヒ」のH音が脱落して「ジ」と、「プク」が「ブク」と、「レイ」が「レ」と、「イア」が「ヤ」となった)

  「チヒ・ミヒ・ツカハ・ラエ」、TIHI-MIHI-TUKAHA-RAE(tihi=summit,peak,lie in a heap;mihi=greet,admire;tukaha=strenuous,vigorous,hasty;rae=forehead,temple)、「たいへん・賞賛される・(大根を)力をこめて(粗くおろして)・(鮭の)頭(とともに煮た郷土料理)」(「チヒ」のH音が脱落して「シ」と、「ミヒ」のH音が脱落して「ミ」と、「ツカハ」のH音が脱落して「ツカ」と、「ラエ」のAE音がE音に変化して「レ」となった)(雑楽篇(その二)の562だいこん(大根)の項の「しもつかれ」を参照してください。)

  「ハ・(ン)ガ」、HA-NGA(ha=breath,taste;nga=breathe,take breath,satisfied)、「(ハァハァと荒い)息を・する(仕事を仕上げる分。田植えの相当分)」(「(ン)ガ」のNG音がG音に変化して「ガ」と「グ」となった)(前出国語篇(その十六)の165はかどる(捗る)の項を参照してください。)

  「オ・ト・モリ」、O-TO-MORI(o=the...of,belonging to;to=drag,tingle;mori=fondle,caress)、「実に・(人を)悩ますもの(赤ん坊)を・世話をする人(子守)」(「ト」が「ド」となった)

  「トト・メ・エ・ロ」、TOTO-ME-E-RO(toto=blood;me=as if,as it were;e=by,sometimes used before roto and others;ro=roto=the inside)、「血に・似たものを・内部に・包蔵している(赤紫色)」(「トト」が「ドド」となった)

  「イ・チア・(ン)ゲル」、I-TIA-NGERU(i=with,by,by reson of,at;tia=catch and kill vermin;ngeru,ngerungeru=smooth,soft)、「(ゴキブリなどの)害虫を・平気で・踏みつぶす(胸が悪くなる)」(「チア」が「ジャ」と、「(ン)ゲル」のNG音がG音に変化して「ゲル」となった)

  「ウツ・ツラハ・コ(ン)グ」、UTU-TURAHA-KONGU(utu=return for anything,reply,make response;turaha=keep away,keep clear,open;kongu=cloudy)、「返答が・曇り空の・ままである(上の空で聞く)」(「ウツ」が「ウス」と、「ツラハ」のH音が脱落して「ズラ」と、「コ(ン)グ」のNG音がG音に変化して「コグ」となった)

  「ナ・チオホ・ツペ」、NA-TIOHO-TUPE(na=by,made by,belonging to,by reason of;tioho=apprehensive;tupe=a charm for depriving one's enemies of power)、「まるで・(魔法にかかったように)気が動転して・(どうしたらよいか)心配する(どうしよう)」(「チオホ」のH音が脱落して「チョ」から「ジョ」と、「ツペ」が「スベー」となった)なじょすべー」

  「マハ・メ」、MAHA-ME(maha=many,abundance;me=with,denoting concomittance or concurrence in time)、「何回も・その都度同意を与える(細かだ)」(「マハ」のH音が脱落して「マ」となった)

  「カウ・テ・チリ」、KAU-TE-TIRI(kau=alone,only;te=to make an emphatic statement;tiri=throw or place one by one,place one on another,stack)、「ただただ・そればかりを・積み上げる(山になるほどたくさん)」(「カウ」のAU音がO音に変化して「コ」と、「テ」が「デッ」となった)

  「マウ・ヌイ」、MAU-NUI(mau=fixed,caught,taken;nui=many,plenty)、「たくさん・手に入れた(余分に)」(「マウ」のAU音がOU音に変化して「モー」と、「ヌイ」が「ニ」となった)

  「キキ・ウ・ヌイ」、KIKI-U-NUI((Hawaii)kiki=to flow swiftly,to surt as water;u=be firm,be fixed,reach its limit;nui=many,plenty)、「たいへん・迅速の・極みで(急いで)」(「キキ」の反復語尾が脱落して「キ」と、「ヌイ」が「ニ」となった)

  「マウ・トエ」、MAU-TOE((mau=fixed,caught,taken;toe=be left as a remnant)、「(仕事が)終わっても・やり残しがある(もたつき長い)」(「マウ」のAU音がO音に変化して「モ」と、「トエ」が「ソエ」となった)

  「マ・ア(ン)ガ・ル」、MA-ANGA-RU(ma=for,to emphasis,by means of;anga=face or move in a certain direction,turn to doing anything;ru=shake,agitate,scatter)、「(人と)顔を合わせる・ために・行く(訪ねる)」(「マ」のA音と「ア(ン)ガ」の語頭のA音が連結し、NG音がG音に変化して「マガ」となつた)

  「タウ・パエ・ル」、TAU-PAE-RU(tau=come to rest,be suitable;pae=horizen,lie across,perch,be laid to the charge of anyone;ru=shake,agitate,scatter)、「(鳥が止まり木に止まって休むように子が親の傍らで)のんびりと・休息・する(甘える)」(「タウ」のAU音がO音に変化して「ト」から「ソ」と、「パエ」が「バエ」となった)

  「ト」、TO(drag,haul)、「(引っ張る)やってくる(〜よ)」(「ト」がまたは「ド」となった)

  「(ン)ガエ」、NGAE(wheeze(whakangae=make to call out))、「(大声で)呼ぶ(居るかい)」(NG音がG音に、AE音がE音に変化して「ゲ」から「ゲー」となった)

  「ホタホタ」、HOTAHOTA(urge on,hasten)、「(推し進める)せき立てる(そうだそうだ)」(「ホタホタ」が「ホダホダ」となった)

の転訛と解します。

[群馬県]

310どどめ(桑の実)・こ・ぶっこぬき・さくい・つぐむ・でっちる・てわるさ・おもたっつるし・いぼくる・ぼっち・わざと・おこんじょ・めた・おーふー・きなり・きもっきれ・せっこー・あてこともねー・〜のー

 群馬県の代表的な方言には、「どどめ」(桑の実)(前出国語篇(その十四)の068くわのみ(桑の実)の項を参照してください。)、「かまぎっちょ」(かまきり)(前出国語篇(その十四)の054かまきり(蟷螂)の項を参照してください。)、「こ」(うどんの添え物)、「ぶっこぬき」(そっくりなさま)、「さくい」(気さくだ)、「つぐむ」(しゃがむ)、「でっちる」(うどんの生地を踏む)、「てわるさ」(手仕事)、「おもたっつるし」(荷物)、「になう」(二人で手で持ち運ぶ)(前出国語篇(その十四)の049かつぐ(担ぐ)の項を参照してください。)、「いぼくる」(不平不満を言う)、「ずでー」(すっかり)(前出国語篇(その十五)の108すっかりの項を参照してください。)、「ぼっち」(うどんやそばの玉)、「わざと」(寸志)、「おこんじょ」(意地が悪いさま)、「めた」(しょっちゅう)、「おーふー」(気前がいいさま)、「おやげねー」(可哀想だ)(前出国語篇(その十四)の059かわいそう(可哀想)の項を参照してください。)、「きなり」(思いのまま)、「きもっきれ」(短気だ)、「せっこー」(根気)、「あてこともねー」(たくさん)、「〜のー」(〜ねえ)があります。

 この「こ」、「ぶっこぬき」、「さくい」、「つぐむ」、「でっちる」、「てわるさ」、「おもたっつるし」、「いぼくる」、「ぼっち」、「わざと」、「おこんじょ」、「めた」、「おーふー」、「きなり」、「きもっきれ」、「せっこー」、「あてこともねー」、「〜のー」は、

  「コ」、KO(of place used with reference to future time,to,at)、「(その場所へ)置くもの(うどんの添え物)」

  「プツ・コヌイ・キ」、PUTU-KONUI-KI(putu=lie in a heap,lie one upon another;konui=thumb;ki=to(of place),upon,at,forwith)、「親指を・並べて・みる(そっくりなさま)」(「プツ」が「ブッ」と、「コヌイ」が「コヌ」となった)

  「タ・クイ」、TA-KUI(ta=breathe,be uttered;kui=weak,cowardly,stunted)、「(意志が弱い)淡泊だと・言われる(気さくだ)」(「タ」が「サ」となった)

  「ツ・(ン)グ・ム」、TU-NGU-MU(tu=stand,settle;ngungu=eat greedy,gnaw;mu=silent)、「消耗して・無言になって・座りこむ(しゃがむ)」(「(ン)グ」のNG音がG音に変化して「グ」となった)

  「テ・ツ・チ・ル」、TE-TU-TI-RU(te=to make an emphatic statement;tu=fight with,energetiv;ti=throw,cast,overcome;ru=shake,agitate,scatter)、「全く・懸命に・(生地を圧倒する)踏み・こむ(うどんの生地を踏む)」(「テ」が「デ」と、「ツ」が「ッ」となった)

  「テ・ワル・タ」、TE-WARU-TA(te=crack;waru=scrape,pare,shave;ta=dash,beat,lay)、「(指が分かれているもの)手で・(磨くなどの)仕事をして・いる(手仕事)」(「タ」が「サ」となった)

  「オ・モタ・ツツル・チ」、O-MOTA-TUTURU-TI(o=the...of;mota=adding little force to the clause,just;tuturu=fixed,permanent,upright in a building;ti=throw,cast)、「例の・まさに・(垂直に)四角に・まとめ・あげたもの(荷物)」(「ツツル」が「ッツル」と、「チ」が「シ」となった)

  「イ・ポクル」、I-POKURU(i=ferment,be stirred of the feelings;pokuru=?throw(pokurukuru=lump,full of lumps))、「不平をぶち・まける(不平不満を言う)」(「ポクル」が「ボクル」となった)

  「ポチ」、POTI(corner,basket for cooked food)、「(籠に入った)一塊の食物(うどんやそばの玉)」(「ポチ」が「ボッチ」となった)(

  「ワタ・タウ」、WATA-TAU(wata,watanga=?object of desire;tau=be suitable,be comely)、「ほどよい・志(こころざし。寸志)」(「ワタ」が「ワザ」と、「タウ」のAU音がO音に変化して「ト」となった)

  「オ・コナ・チオホ」、O-KONA-TIOHO(o=the...of;kona=that circumstance;tioho=apprehensive)、「例の(いじめられていることが)・心配される・状況(にある)(意地が悪いさま)」(「コナ」が「コン」と、「チオホ」のH音が脱落して「チョ」から「ジョ」となった)(前出国語篇(その十四)の013いじめる(苛める)の項の「おこんじょする」を参照してください。)

  「メ・タハ」、ME-TAHA(me=with,denoting concomittance or concurrence;taha=pass on one side,go by )、「時の流れに・常に随伴する(しょっちゅう)」(「タハ」のH音が脱落して「タ」となった)

  「オフ」、OHU(do by aid of a company of volunteer workers,surround)、「篤志家が(惜しみなく)援助する(気前がいいさま)」(「オフ」が「オーフー」となった)

  「キ・(ン)ガリ」、KI-NGARI(ki=full,very;ngari=greatness,power)、「力(権力)が・強い(思いのまま)」(「(ン)ガリ」のNG音がN音に変化して「ナリ」となった)

  「キ・モツ・キレア」、KI-MOTU-KIREA(ki=full,very;motu,whakamotu=remain silent and still;kirea=exhausted by frequent cropping)、「いつも・心の平静を保つことに・疲れ果てた(短気だ)」(「モツ」が「モッ」と、「キレア」の語尾のA音が脱落して「キレ」となった)

  「テ・ツコウ」、TE-TUKOU(te=to make an emphatic statement;tukou=dress timber with an adze)、「丹念に・木を斧で削る(柱や板を作る)(根気)」(「テ」が「セ」と、「ツコウ」が「ッコー」となった)

  「ア・テカウ・トモ・ネイ」、A-TEKAU-TOMO-NEI(a=the...of;tekau=ten;tomo=be filled;nei=stretched forward,reaching out)、「例の・十という数を・十分・超えている(たくさん)」(「テカウ」のAU音がO音に変化して「テコ」と、「ネイ」が「ネー」となった)

  「ノホ」、NOHO(sit,stay,lie)、「〜(の状態で)ある(〜ねえ)」(「ノホ」のH音が脱落して「ノー」となった)

の転訛と解します。

[埼玉県]

311そらっぺ(うそ)・いら・あんべー・つらっぱじねー・おこさま・ぶっつぁる・ほーたろ・きねー・せどんち・おらが・こんだ・ちょーちょーばっこ・くらっせー・ぼっこむ・せんぜー・はしっけー・〜げだ・しっこし・かてる

 埼玉県の代表的な方言には、「そらっぺ」(うそ)(前出国語篇(その十四)の016うそつき(嘘つき)の項を参照してください。)、「いら」(たいそう)、「あんべー」(具合)、「つらっぱじねー」(ずうずうしい)、「おこさま」(蚕)、「ぶっつぁる」(おぶさる)、「ほーたろ」(蛍)、「きねー」(来ない)、「せどんち」(裏の家)、「おらが」(自分の家)、「こんだ」(今度)、「どんぶ」(とんぼ)(前出国語篇(その十五)の151とんぼ(蜻蛉)の項を参照してください。)、「ちょーちょーばっこ」(蝶)、「くらっせー」(ください)、「ぼっこむ」(放り込む)、「せんぜー」(野菜(作り))、「はしっけー」(ずる賢い)、「かたす」(片付ける)(前出国語篇(その十四)の047かたづける(片付ける)の項を参照してください。)、「〜げだ」(〜しそうなようすだ)、「けなるい」(うらやましい)(前出国語篇(その十四)の017うらやましい(羨ましい)の項を参照してください。)、「しっこし」(気力)、「かてる」(仲間に入れる)があります。

 この「いら」、「あんべー」、「つらっぱじねー」、「おこさま」、「ぶっつぁる」、「ほーたろ」、「きねー」、「せどんち」、「おらが」、「こんだ」、「ちょーちょーばっこ」、「くらっせー」、「ぼっこむ」、「せんぜー」、「はしっけー」、「〜げだ」、「しっこし」、「かてる」は、

  「イ・ラヒ」、I-RAHI(i=in comparison with,belonging to;rahi=great,abundant)、「たいへん・たくさん(たいそう)」(「ラヒ」のH音が脱落して「ラ」となった)

  「アナ・パイ」、ANA-PAI(ana=denoting continuance of action or state;pai=good,excellent,suitable)、「良好な・状態(具合)」(「アナ」が「アン」と、「パイ」のAI音がE音に変化して「ペ」から「ベー」となった)

  「ツラ・ツパ・チネイ」、TURA-TUPA-TINEI(tura,turatura=molest,spiteful;tupa=rough,barren;tinei,tineinei=unsettled,confused,disordered)、「粗野で・規律がないふるまいをして・人を当惑させる(ずうずうしい)」(「ツパ」が「ッパ」と、「チネイ」が「ジネー」となった)

  「オ・コ・タマ」、O-KO-TAMA(o=th...of;ko=sing,resound;tama=son,child)、「例の・(桑の葉を食べる大きな)音を立てる・子供達(蚕)」(「タマ」が「サマ」となった)

  「プツ・ツア・ル」、PUTU-TUA-RU(putu=lie in a heap,lie one upon another;tua=back,on the farther side;ru=shake,agitate,scatter)、「奮って・背中の・上に乗る(おぶさる)」(「プツ」が「ブッ」となった)

  「ホアタ・ロ」、HOATA-RO(hoata=the moon on the third day;ro=roto=inside)、「体内で・三日月のような(ほのかな光が)点滅する(虫。蛍)」(「ホアタ」のOA音がO音に変化して「ホータ」となった)

  「キヒ・ネイ」、KIHI-NEI(kihi=indistinct of sound,barely audible;nei=to indicate continuance of action)、「(人の来る)気配がない・ままだ(来ない)」(「キヒ」のH音が脱落して「キ」と、「ネイ」が「ネー」となった)

  「タイ・トヌ・チ」、TAI-TONU-TI(tai=the other side;tonu=denoting continuance,still,quite,just;ti=throw,cast)、「ちょうど・(別の側)裏に・位置しているもの(裏の家)」(「タイ」のAI音がE音に変化して「テ」から「セ」と、「トヌ」が「ドン」となった)

  「オラ(ン)ガ」、ORANGA(livelifood,satisfaction)、「(楽しい)暮らし(自分の家)」(NG音がG音に変化して「オラガ」となった)

  「コナ・タ」、KONA-TA(kona=that place,that time;ta=dash,beat,lay)、「(次ぎに)やってきた・その時(今度)」(「コナ」が「コン」と、「タ」が「ダ」となった)

  「チホ・チホ・パカウ」、TIHO-TIHO-PAKAU(tiho=flacid,soft;pakau=wing of a bird,kite)、「(柔らかに)ゆっくり。ゆっくり・羽根を動かす(虫。蝶)」(「チホ」のH音が脱落して「チョー」と、「パカウ」のAU音がO音に変化して「パコ」から「バッコ」となった)

  「クラ・ツテ」、KURA-TUTE(kura=red feathers,treasure;tute=shove,pull)、「(財産)大事な物を・(押す)差し出す(ください)」(「ツテ」が「ッセー」となった)

  「ポ・コナ・ムフ」、PO-KONA-MUHU(po,popo=crowd round,throng;kona=that place;muhu=grope,push one's way through bushes etc.)、「密集して・あの場所へ・入り込む(放り込む)」(「ポ」が「ボッ」と、「コナ」が「コン」から「コ」と、「ムフ」のH音が脱落して「ム」となった)

  「テナ・テ」、TENA-TE(tena=that,this;te,tete=young shoot,fond of a plant of fern)、「あの・植物の若芽(野菜。野菜作り)」(「テナ」が「テン」から「セン」と、「テ」が「ゼー」となった)

  「パチ・ツ・ケヒ」、PATI-TU-KEHI(pati=try to obtain by coaxing,flattery(patipati=deceiving);tu=stand,settle;kehi=defame,speak ill of)、「人をだますと・定評が・ある(ずる賢い)」(「パチ」のP音がF音を経てH音に変化して「ハシ」と、「ツ」が「ッ」と、「ケヒ」のH音が脱落し「ケー」となった)

  「(ン)ゲ・タ」、NGE-TA(nge=without apparent modification of the sense;ta=dash,lay)、「〜の感じに変わりが・ない(〜しそうなようすだ)」(「(ン)ゲ」のNG音がG音にへんかして「ゲ」と、「タ」が「ダ」となった)

  「チ・ツ・コチ」、TI-TU-KOTI(ti=throw,cast;tu=fight with,energetic;koti=tattooing on the cheeks)、「懸命に(痛みを我慢して)・(頬に)入れ墨を・入れる(気力(があることを示す))」(「チ」が「シ」と、「コチ」が「コシ」となった)

  「カテテ・ル」、KATETE-RU(katete=lengthen by adding a piece,be securely fastened;ru=shake,agitate,quiver)、「奮って・(仲間に)追加する(仲間に入れる)」(「カテテ」の反復語尾が脱落して「カテ」となった)

の転訛と解します。

[千葉県]

312あおなじみ(青あざ)・〜たい・なりる・おいねー・ござっぱたい・〜べ・がんだめし・あっこむ・くっちゃみ・しっかい・たくさん・ちょーじゃ・しめっこ・〜さー

 千葉県の代表的な方言には、「あおなじみ」(青あざ)、「〜たい」(〜なさい)、「なりる」(生る)、「おいねー」(だめだ)、「ござっぱたい」(長っちり)、「ひでっぷしー」(まぶしい)(前出国語篇(その十六)の198まぶしい(眩しい)の項を参照してください。)、「〜べ」(〜よう)、「がんだめし」(芯のあるご飯)、「あっこむ」(またぐ)、「じょんごろ」(おたまじゃくし)(前出国語篇(その十四)の031おたまじゃくし(蝌蚪)の項を参照してください。)、「くっちゃみ」(まむし)、「ぽっける」(転ぶ)(前出国語篇(その十四)の079ころぶ(転ぶ)の項を参照してください。)、「しっかい」(たくさん)、「おかしー」(恥ずかしい)(前出国語篇(その十六)の167はずかしい(恥ずかしい)の項を参照してください。)、「いしなんご」(くるぶし)(前出国語篇(その十四)の067くるぶし(踝)の項を参照してください。)、「ゆーじん」(のろま)(無精者)(前出国語篇(その十六)の163のろまの項を参照してください。)、「ちょこしんぼ」(うそつき)(前出国語篇(その十四)の016うそつき(嘘つき)の項を参照してください。)、「ちょーじゃ」(松かさ)、「ぶしょったかり」(無精者)(前出国語篇(その十六)の182ぶしょう(無精)の項を参照してください。)、「ちっと」(少し)(前出国語篇(その十五)の130ちょっとの項を参照してください。)、「しめっこ」(末っ子)、「〜さー」(〜よ)があります。

 この「〜たい」、「なりる」、「おいねー」、「ござっぱたい」、「〜べ」、「がんだめし」、「あっこむ」、「くっちゃみ」、「しっかい」(たくさん)、「ちょーじゃ」、「しめっこ」、「〜さー」は、

  「アオ・ナチ・ミヒ」、AO-NATI-MIHI(ao=daytime,cloud;nati=pinch or contract;mihi=sigh for,express discomfort)、「(昼間の空の)青い色をした・(顔に)付いた・不愉快なもの(青あざ)」(「ナチ」が「ナジ」と、「ミヒ」のH音が脱落して「ミ」となった)

  「タイ」、TAI(taitai=dash,strike,knock,brush)、「(軽く)行動する(〜なさい)」

  「(ン)ガリ(ン)ガリ・ル」、NGARINGARI-RU(ngaringari=increase in numbers;ru=shake,agitate,quiver)、「勢いよく・(果実などの)数が増える(生(な)る)」(「(ン)ガリ(ン)ガリ」の反復語尾が脱落し、NG音がN音に変化して「ナリ」となった)

  「オイ・ネイ」、OI-NEI(oi=heoi=denoting completeness or sufficiency of a statement,there is no more,there are none other;nei=to indicate continuance of action)、「(これ以上)行動の必要は・ない(だめだ)」(「ネイ」が「ネー」となった)

  「(ン)ガウ・タツ・パタ・イ」、NGAU-TATU-PATA-I(ngau=bite,hurt,act upon,attack;tatu=reach the bottom,be at ease;pata,whakapata=ancient times;i=past tense)、「(他人の家に)押しかけて・のんびりと・長い時間を過ご・した(長っ尻)」(「(ン)ガウ」のNG音がG音に、AU音がO音に変化して「ゴ」と、「タツ」が「ザッ」となった)

  「ペ」、PE(like)、「〜したい(〜よう)」(「ペ」が「ベ」となった)

  「(ン)ガ(ン)ガ・タ・マエ・エチ」、NGANGA-TA-MAE-ETI(nganga=stone of fruit,core of a boil;ta=stand,settle;mae=languid,listless,withered;eti=shrink,recoil)、「芯が・ある・水が(後退して)すっかり無くなって・軟らかくなった(炊きあがった。飯)」(「(ン)ガ(ン)ガ」の最初のNG音がG音に、次のNG音がN音に変化して「ガナ」から「ガン」と、「タ」が「ダ」と、「マエ」のAE音がE音に変化し、そのE音が「エチ」の語頭のE音と連結して「メチ」から「メシ」となった)

  「アツ・カウ・ムフ」、ATU-KAU-MUHU(atu=to indicate direction or motion onwards;kau=swim,wade;muhu=grope,push one's way through the bushes etc.)、「前方へ・苦労して・やっと渡る(またぐ)」(「アツ」が「アッ」と、「カウ」のAU音がO音に変化して「コ」と、「ムフ」のH音が脱落して「ム」となった)

  「クチ・イア・ミヒ」、KUTI-IA-MIHI(kuti=pinch,contract;ia=indeed;mihi=sigh for,greet,acknowlege an obligation)、「(頭が圧縮された)頭が平べったい・実に・尊崇すべき(蛇。まむし)」(「クチ・イア」が「クッチャ」と、「ミヒ」のH音が脱落して「ミ」となった)

  「チヒ・ツ・カイ」、TIHI-TU-KAI(tihi=summit,top;tu=stand,settle;kai=quantity,number)、「量が・最高で・ある(たくさん)」(「チヒ」のH音が脱落して「シ」と、「ツ」が「ッ」となった)

  「チオ・オチ・イア」、TIO-OTI-IA(tio,tiotio=rock-oyster,barnacle;oti=finished;ia=indeed)、「(松かさの)鱗片が・実に・開き終わった(牡蠣のように突起がある)もの(松かさ)」(「チオ」が「チョ」と、「チョ・オチ」が「チョーチ」と、「チョーチ・イア」が「チョージャ」となった)

  「チ・マエ・コ」、TI-MAE-KO(ti=throw,cast,overcome;mae=languid,withered,struck with astonishment etc.;ko=addressing to girles and males)、「(親を)弱気に・させた(これ以上産めないと思わせた)・子(末っ子)」(「チ」が「シ」と、「マエ」のAE音がE音に変化して「メッ」となった)

  「タ」、TA(dash,lay)、「やってくる(〜よ)」(「タ」が「サー」となった)

の転訛と解します。

[東京都]

313しょっぱい(塩辛い)・おっこちる・せがれ・よっぽど・〜まし・しじん・おっしょさん・〜あっせ・たんねー・かがみっちょー・わりー・ぎょしなれ・けむ・ふるしき・しでー

 東京都の代表的な方言には、「しょっぱい」(塩辛い)(前出国語篇(その十五)の089しおからい(塩辛い)の項を参照してください。)、「おっこちる」(落ちる)、「せがれ」(息子)、「よっぽど」(余程)、「〜まし」(〜ませ)、「こけら」(鱗)(前出国語篇(その十四)の019うろこ(鱗)の項を参照してください。)、「しじん」(主人)、「ありがてー」(ありがたい)(前出国語篇(その十四)の009ありがとう(有り難う)の項を参照してください。)、「おっしょさん」(お師匠さん)、「〜あっせ」(〜くださいませ)、「たんねー」(足りない)、「かがみっちょー」(とかげ)、「あめんぼー」(つらら)(前出国語篇(その十五)の142つらら(氷柱)の項を参照してください。)、「わりー」(悪い)、「ぎょしなれ」(おやすみなさい)、「とーなす」(かぼちゃ)(前出国語篇(その十四)の053かぼちゃ(南瓜)の項を参照してください。)、「おっかない」(恐ろしい)(前出国語篇(その十四)の030おそろしい(恐ろしい)の項を参照してください。)、「けむ」(煙)、「ふるしき」(風呂敷)、「かたす」(片付ける)(前出国語篇(その十四)の047かたづける(片付ける)の項を参照してください。)、「しでー」(ひどい)があります。

 この「おっこちる」、「せがれ」、「よっぽど」、「〜まし」、「しじん」、「おっしょさん」、「〜あっせ」、「たんねー」、「かがみっちょー」、「わりー」、「ぎょしなれ」、「けむ」、「ふるしき」、「しでー」は、

  「オ・カウ・チ・ル」、O-KAU-TI-RU(o=find room,get in;kau=alone,only;ti=throw,cast;ru=shake,agitate,scatter)、「奮って・空間に・ただ・(身を)投げる(落ちる)」(「オ」が「オッ」と、「カウ」のAU音がO音に変化して「コ」となった)

  「テ・(ン)ガレ」、TE-NGARE(te=crack(tete=young shoot,fond of a plant or fern);ngare=family,multitude,body of men)、「(若芽)若い・分身(息子)」(「テ」が「セ」と、「(ン)ガレ」のNG音がG音に変化して「ガレ」となった)

  「イオ・ツ・ポタウ」、IO-TU-POTAU(io=tough,hard,obstinate;tu=stand,settle;potau=misgiving)、「強い・疑念が・ある(余程)」(「イオ」が「ヨ」と、「ツ」が「ッ」と、「ポタウ」のAU音がO音に変化して「ポド」となった)

  「マチ」、MATI(matimati=deep affection)、「強く思う(〜ませ)」(「マチ」が「マシ」となった)

  「チヒ・チニ」、TIHI-TINI(tihi=summit,top,lie in a heap;tini=host)、「高い位置にいる・主人(主人)」(「チヒ」のH音が脱落して「シ」と、「チニ」が「ジン」となった)

  「オ・ツ・チホウ・タナ」、O-TU-TIHOU-TANA(o=the...of;tu=fight with,energetic;tihou=an implement used for cultivating;tana=his,her,its)、「例の・懸命に・(弟子を)教育する・彼(彼女)(お師匠さん)」(「ツ」が「ッ」と、「チホウ」のH音が脱落して「ショ」と、「タナ」が「サン」となった)

  「アツ・テ」、ATU-TE(atu=to indicate a direction or motion onwards;te=to make an emphatic statement)、「〜(へ向かって)行動する(〜くださいませ)」(「アツ」が「アッ」と、「テ」が「セ」となった)

  「タノア・ネイ」、TANOA-NEI(tanoa=belittle,make of no account;nei=to indicate continuance of action)、「取るに足りない・状況だ(足りない)」(「タノア」が「タン」と、「ネイ」が「ネー」となった)

  「カ・(ン)ガミ・チオフ」、KA-NGAMI-TIOHU(ka=take fire,burn;ngami=swallow up;tiohu=stoop)、「(身体の色を)赤くして・身をかがめて・(虫などを)飲み込むもの(とかげ)」(「(ン)ガミ」のNG音がG音に変化して「ガミッ」と、「チオフ」のH音が脱落して「チョ」となった)

  「ウア・リ」、UA-RI(ua=used in exexpostulation;ri=screen,protect,bind)、「(ふるいに懸ける)取捨選択する・ことを勧める(悪い)」(「ウア」が「ワ」と、「リ」が「リー」となった)

  「(ン)ギオ・チ・(ン)ガレ」、NGIO-TI-NGARE(ngio=extiguished,faded;ti=throw,cast;ngare=send,urge)、「(私の前から)姿を消して・(身体を)横たえ・なさい(おやすみなさい)」(「(ン)ギオ」のNG音がG音に変化して「ギョ」と、「チ」が「シ」と、「(ン)ガレ」のNG音がN音に変化して「ナレ」となった)

  「ケ・ム」、KE-MU(ke=different,strange;mu=murmur at,be discontent with)、「奇妙な・不快なもの(煙)」(「煙(けむり)については、国語篇(その九)の078 smoke(けぶり・けむり)の項を参照してください。)

  「フル・チキ」、HURU-TIKI(huru=contract,,draw in;tiki=fetch,proceed to do anything)、「(荷物を)纏めて・持ち運ぶもの(風呂敷)」(「チキ」が「シキ」となった)

  「ヒ・テイ」、HI-TEI(hi=expressing contempt;tei,teitei=high,summit)、「最高に・軽蔑する(ひどい)」(「ヒ」のH音がS音に変化して「シ」と、「テイ」が「デー」となった)

の転訛と解します。

[神奈川県]

314〜じゃんか(〜ではないか)・〜だんべー・〜よー・こわい・せう・えむ・しびびー・きょーこつ・しょーがんねー・すすでー・せーがきれる・まちょー・けーむ・くむ・あとっかじ・えら・いっそく

 神奈川県の代表的な方言には、「〜じゃんか」(〜ではないか)、「〜だんべー」(〜だろう)、「かったりー」(疲れてだるい)(前出国語篇(その十五)の133つかれた(疲れた)の項を参照してください。)、「ちっとんべー」(少しばかり)(前出国語篇(その十五)の107すくない(少ない)の項を参照してください。)、「〜よー」(〜よ・〜さ)、「うっちゃる」(捨てる)(前出国語篇(その十五)の110すてる(捨てる)の項を参照してください。)、「こわい」(固い)、「あんばい」(健康・天候などの具合)(前出埼玉県の311そらっぺ(うそ)の「あんべー」の項を参照してください。)、「せう」(言う)、「えむ」(熟して割れる)、「しびびー」(からすのえんどう)、「きょーこつ」(おおげさだ)、「しょーがんねー」(仕方がない)、「すすでー」(悪賢い)、「せーがきれる」(息が切れる)、「まちょー」(まともだ)、「けーむ」(全然)、「くむ」(崩れる)、「あとっかじ」(後頭部が出ていること)、「えら」(たくさん)、「いっそく」(100のまとまり)があります。

 この「〜じゃんか」、「〜だんべー」、「〜よー」、「こわい」、「せう」、「えむ」、「しびびー」、「きょーこつ」、「しょーがんねー」、「すすでー」、「せーがきれる」、「まちょー」、「けーむ」、「くむ」、「あとっかじ」、「えら」、「いっそく」は、

  「チア・ナカ」、TIA-NAKA(tia=etia=as it were,as if;naka=denoting position near or connection with the person spoken to)、「まるで〜のよう・だよね(〜ではないか)」(「チア」が「ジャ」と、「ナカ」が「ンカ」となった)

  「タナ・ペ」、TANA-PE(tana=his,her,its;pe=like)、「それは・〜のようだ(〜だろう)」(「タナ」が「ダン」と、「ペ」が「ベー」となった)

  「イアウア」、IAUA(calling attention,here!)、「〜だよ・〜さ(注意・強調語)」(AU音がO音に変化し、語尾のA音が脱落して「イオ」から「ヨー」となった)

  「コワ・アイ」、KOWHA-AI(kowha=split open,take out of the shell,cookies taken out of the shells;ai=substantive)、「(蒸籠から)取り出した・存在感があるもの((おこわのように)固い)」(「コワ」の語尾のA音が「アイ」の語頭のA音と連結して「コワイ」となった)

  「テ・ウ」、TE-U(te=to make an emphatic statement;u=say)、「きちんと・言う(言う)」(「テ」が「セ」となった)

  「エ・ム」、E-MU(e=to denote action in progress or temporary condition;mu=mutu=cropped,having the end cut off,truncated)、「状態が変わって・(端の部分が)離れる(熟して割れる)」

  「チピ・ピ」、TIPI-PI(tipi=pare,slice,glide;pi=young of birds,eye)、「眼(のような種子)を・(莢が)割れて放り出すもの(からすのえんどう)」(「チピ」が「シビ」と、「ピ」が「ビ」となった)

  「キオ・コツア」、KIO-KOTUA((Hawaii)kio=projection,to protorude;kotua=token of respect,regard)、「飛び抜けて・尊敬を表す(おおげさだ)」(「キオ」が「キョー」と、「コツア」の語尾のA音が脱落して「コツ」となった)

  「チオフ・(ン)ガナ・ネイ」、TIOHU-NGANA-NEI(tiohu=stoop;ngana=be eagerly intent,obstinate,strong;nei=to denote proximity to or connection with the speaker)、「ひたすら・とことん・頭を下げる(仕方がない)」(「チオフ」のH音が脱落して「チオウ」から「ショー」と、「(ン)ガナ」のNG音がG音に変化して「ガナ」から「ガン」と、「ネイ」が「ネー」となった)

  「ツ・ツテ」、TU-TUTE(tu=fight with,energetic;tute-shove,push(tutetute=jostle,hustle))、「懸命に・人を悩ます(悪賢い)」(「ツ」が「ス」と、「ツテ」が「スデー」となった)

  「テ(ン)ガ・キレア・ル」、TENGA-KIREA-RU(tenga=Adam's apple;kirea=exhausted by frequent cropping;ru=shake,agitate,scatter)、「(激しい労働で)のどが・たいへん・疲れる(息が切れる)」(「テ(ン)ガ」のNG音がG音に変化して「テガ」から「セーガ」と、「キレア」の語尾のA音が脱落して「キレ」となった)

  「マチ・アウ」、MATI-AU(mati=surfeited(matimati=deep affection);au=firm,intense)、「感情が深く・しっかりしている(まともだ)」(「アウ」のAU音がO音に変化して「オ」となり、「マチ・オ」が「マチョー」となった)

  「ケ・エ・ム」、KE-E-MU(ke=different,strange,extraordinary;e=to denote action in progress or temporary condition;mu=show discontent with,silent)、「たいへん・状態が変わって・(人を)不快にする(全然())」(「ケ・エ」が「ケー」となった)(全然

  「ク・ム」、KU-MU(ku=silent;mu=mutu=cropped,having the end cut off,truncated)、「静かに・(端の部分が)離れる(崩れる)」

  「アト・カチ」、ATO-KATI(ato=thatch,enclose in a fence,etc.;kati=bite,nip)、「(屋根を葺く)頭髪(の下)が・食いちぎられている(後頭部が出ていること)」(「アト」が「アトッ」と、「カチ」が「カジ」となった)

  「ヱラ」、WHERA(spread out,open)、「(水田に田螺などが)一面に広がっている(たくさん)」(WH音が脱落して「エラ」となった)

  「ヒ・ト・クフ」、HI-TO-KUHU(hi=rise,raise;to=drag;kuhu=thrust in,insert)、「(籠や箱などに)うず高く・積み・込む(ほどの量。100のまとまり)」(「ヒ」のH音が脱落して「イッ」と、「ト」が「ソ」と、「クフ」のH音が脱落して「ク」となった)

の転訛と解します。

[中部地方]

[新潟県]

315こんげ(こんなに)・あっきゃ・んな・なら・〜こて・ばーか・おじ・みよける・そーら・かける・さーぶえ・がっと・へぁー・じょんのび・あったらもん

 新潟県の代表的な方言には、「こんげ」(こんなに)、「あっきゃ」(おや、まあ)、「んな」(君)、「なら」(君達)、「〜こて」(〜ですよ)、「ばーか」(大変に)、「おじ」(弟)、「しょーたれ」(不潔)(前出国語篇(その十六)の182ぶしょう(無精)の項を参照してください。)、「のめし」(怠け者)(前出国語篇(その十六)の157なまけもの(怠け者)の項を参照してください。)、「みよける」(卵がかえる)、「しょーしー」(恥ずかしい)(前出国語篇(その十六)の167はずかしい(恥ずかしい)の項を参照してください。)、「そーら」(そうだ)、「かける」((教室で)指名する)、「えとしげ」(可愛らしいさま)(前出国語篇(その十四)の058かわいい(可愛い)の項を参照してください。)、「さーぶえ」(寒い)、「かねっこり」(つらら)(前出国語篇(その十五)の142つらら(氷柱)の項を参照してください。)、「がっと」(雪道の落とし穴)、「なんぎー」(体調が悪い)(前出国語篇(その十五)の128だるい(怠い・懈い)の項を参照してください。)、「へぁー」(もう)、「じょんのび」(気持ちが良いさま)、「あったらもん」(大事な物)、「じゃみる」(だだをこねる)(前出国語篇(その十六)の203むずかるの項を参照してください。)があります。

 この「こんげ」、「あっきゃ」、「んな」、「なら」、「〜こて」、「ばーか」、「おじ」、「みよける」、「そーら」、「かける」、「さーぶえ」、「がっと」、「へぁー」、「じょんのび」、「あったらもん」は、

  「コナ・(ン)ガエ」、KONA-NGAE(kona=that place,that circumstance;ngae=wheeze(ngaengae=fail of breath))、「(あの)このような・(びっくりして)息を呑むような(こんなに)」(「コナ」が「コン」と、「(ン)ガエ」のNG音がG音に、AE音がE音に変化して「ゲ」となった)

  「アツ・キア」、ATU-KIA(atu=used with an adjective to form a comparative or superative;kia=to denote wish or purpose or effect,in the exclamation of surprise)、「なんと・大変なこと(おや、まあ)」(「アツ」が「アッ」と、「キア」が「キャ」となった)

  「ナ・ナ」、NA-NA(na=by,belonging to;na=indicating paretage or descent)、「(親か子)年長かまたは年下・の(君)」(最初の「ナ」が「ン」となった)

  「ナ・ラ」、NA-RA(na=indicating paretage or descent;ra=wed)、「(親か子)年長かまたは年下が・結びついている(君達)」

  「カウ・テ」、KAU-TE(kau=alone,only;te=to make an emphatic statement)、「ただ・そけだけだ(〜ですよ)」(「カウ」のAU音がO音に変化して「コ」となった)

  「パカハ」、PAKAHA(violent,severe,firm)、「力強く(大変に)」(H音が脱落して「バーカ」となった)

  「オチ」、OTI(finished(whakaotinga=youngest child of a family))、「(年少の子)弟」(「オチ」が「オジ」となった)

  「ミヒ・オケ・ル」、MIHI-OKE-RU(mihi=greet,be expressed;oke=struggle,wriggle,put forth one's strength;ru=shake,agitate,scatter)、「(卵が)身震いして・外へ手足を伸ばして・出てくる(卵がかえる)」(「ミヒ」のH音が脱落して「ミイ」と、「ミイ・オケ」が「ミヨケ」となった)

  「トフ・ラ」、TOHU-RA(tohu=mark,proof,point out;ra=intensive particle)、「証拠を見せ・つける(そうだ)」(「トフ」のH音が脱落して「トウ」から「ソー」となった)

  「カ・カイ・ル」、KA-KAI-RU(ka=to denote the commencement of a new action or condition;kai=reach,arrive at;ru=shake,agitate,scatter)、「奮って・(大勢の中から選んで指名の対象に)辿り・つく((教室の中で)指名する)」(「カイ」のAI音がE音に変化して「ケ」となった)

  「タ・プエ」、TA-PUE(ta=dash,beat,lay;(Hawaii)pue=to huddle or sit crouched as with cold)、「(寒さが)襲ってきて・縮こまる(寒い)」(「タ」が「サー」と、「プエ」が「ブエ」となった)

  「(ン)ガツ・ト」、NGATU-TO(ngatu=crushed,mashed;to=drag)、「(人を)引きずり・込むもの((雪道の)落とし穴)」(「(ン)ガツ」のNG音がG音に変化して「ガッ」となった)

  「ヘ・エア」、HE-EA(he=wrong,mistaken;ea=apear above water,be brought to land)、「(間違つて)早く・現れた(もう)」(「ヘ」のE音と「エア」の語頭のE音が連結して「ヘァー」となった)

  「チオ・ナナオ・ピヒ」、TIO-NANAO-PIHI(tio=cry,call;nanao=handle,feel with the hand;pihi=spring up,begin to grow)、「大きな声を出して・手足を・伸ばす(気持ちが良いさま)」(「チオ」が「ジョ」と、「ナナオ」のAO音がO音に変化して「ナノ」から「ンノ」と、「ピヒ」のH音が脱落して「ビ」となった)

  「アタ・アラ・モナ」、ATA-ARA-MONA(ata=gentry,slowly,cautiously;ara=rise,awake,have the eyes open;mona=for him,for her)、「彼(彼女)の・眼を見開いて・注意深く扱うもの(大事な物)」(「アタ」の語尾のA音と「アラ」の語頭のA音が連結して「アッタラ」と、「モナ」が「モン」となった)

の転訛と解します。

[富山県]

316きのどくな(ありがとう)・〜まいけ・きときと・なーん・ちゃっちゃと・はしかい・おちょきん・さっくい・やくちゃもない・しょわしない・わやく・ちんと・かりやすい

 富山県の代表的な方言には、「きのどくな」(ありがとう)(前出国語篇(その十四)の009ありがとう(有難う)の項を参照してください。)、「〜まいけ」(〜(う)か)、「きときと」(魚が新鮮なさま)、「〜ちゃ」(〜ね)(前出宮城県の項の「〜ちゃ」を参照してください。)、「なーん」(いいえ)、「ちゃっちゃと」(早く)、「またいする」(片付ける)(前出国語篇(その十四)の047かたづける(片付ける)の項を参照してください。)、「だやい」(だるい)(前出国語篇(その十五)の128だるい(怠い。懈い)の項を参照してください。)、「そぼれる」(驚く)(前出国語篇(その十六)の176びっくりするの項を参照してください。)、「はしかい」(賢い)、「おちょきん」(正座)、「さっくい」(人なつこい)、「ねね」(赤ん坊)(前出国語篇(その十四)の003あかんぼう(赤ん坊)の項を参照してください。)、「やくちゃもない」(どうしようもない)、「ぎゃわず」(蛙)(前出国語篇(その十四)の039かえる(蛙)の項を参照してください。)、「しょわしない」(せわしない)、「わやく」(散らかっているさま)、「けなるい」(うらやましい)(前出国語篇(その十四)の017うらやましい(羨ましい)の項を参照してください。)、「ちんと」(きちんと)、「となわ」(とうもろこし)(前出国語篇(その十五)の146とうもろこし(玉蜀黍)の項を参照してください。)、「はかいく」(はかどる)(前出国語篇(その十六)の165はかどる(捗る)の項を参照してください。)、「かりやすい」(易しい)、「まいどはや」(ごめんください)(前出国語篇(その十四)の077ごめんください(ご免下さい)の項を参照してください。)があります。

 この「〜まいけ」、「きときと」、「なーん」、「ちゃっちゃと」、「はしかい」、「おちょきん」、「さっくい」、「やくちゃもない」、「しょわしない」、「わやく」、「ちんと」、「かりやすい」は、

  「マイ・ケイ」、MAI-KEI(mai=to indicate direction or motion towards;kei=that not,lest,do not)、「〜だろう・かどうか(〜(う)か)」(「ケイ」が「ケ」となった)

  「キ・タウ・キ・タウ」、KI-TAU-KI-TAU(ki=full,very;tau=turn away(tatau=turn about,vacillate))、「どんどん・跳ねて・跳ねまくって・いる(魚が新鮮なさま)」(「タウ」のAU音がO音に変化して「ト」となった)

  「ナヌ」、NANU(confused,murmur,express disapointment or dissatisfaction)、「(あなたの)期待に添えないが(いいえ)」(「ナヌ」が「ナーン」となった)

  「チア・チア・ト」、TIA-TIA-TO(tia=stick in,take a vigorous stroke in paddling;to=drag,open or shut a door or a window)、「元気に(櫂を漕ぐように)・活発に・仕事をする(早く)」(「チア・チア」が「チャッチャ」となった)

  「パチ・ツ・ケヒ」、PATI-KAI(pati=try to obtain by coaxing,flattery(patipati=deceiving);kai=fulfil its proper function,have full play)、「人をだますことを・ちゃんとやってのける(賢い)」(「パチ」のP音がF音を経てH音に変化して「ハシ」となった)(前出埼玉県の「はしっけー」の項を参照してください。)

  「オチ・アウキ・ナ」、OTI-AUKI-NA(oti=finished,go or come for good;auki=old,of long standing,na=by,acted on in any way by,belonging to)、「良い(正しい)姿勢で・長時間座った・ままでいる(正座)」(「アウキ」のAU音がO音に変化して「オキ」となり、「オチ・オキ」が「オチョキ」と、「ナ」が「ン」となった)

  「タク・ウイ」、TAKU-UI(taku=threaten behind one's back;ui=disentangle,relax or loosen noose)、「(人の)後ろにくっついて・気持ちを和ませる(人なつこい)」(「タク」が「サック」となり、その語尾のU音と「ウイ」の語頭のU音が連結して「サックイ」となった)

  「イア・クチア・マウ・ナイ」、IA-KUTIA-MAU-NAI(ia=indeed;kutia=kuti=draw tightly together,contract;mau=fixed,continuing,entangled;nai=nei=a shrub)、「実に・(あの密集した)茂みのように・びっしりと・固まってしまっている(どうしようもない)」(「イア」が「ヤ」と、「クチア」が「クチャ」と、「マウ」のAU音がO音に変化して「モ」となった)

  「チオ・ワチ・ナイ」、TIO-WHATI-NAI(tio=cry,call;whati=turn and go away,flee,run;nai=nei,neinei=stretch forward)、「何やら叫びながら・ずっと・走り回る(せわしない)」(「チオ」が「ショ」と、「ワチ」が「ワシ」となった)

  「ワイア・クフ」、WAIA-KUHU(waia=accustomed,practised,familiarised;kuhu=thrust in,conceal)、「習慣として・(隠す)なんでも放り込む(状態。散らかっているさま)」(「ワイア」が「ワヤ」と、「クフ」のH音が脱落して「ク」となった)(前出国語篇(その十五)の131ちらかす(散らかす)の項の「わやくする」を参照してください。)

  「チナ・ト」、TINA-TO(tina=fixed,firm,steady;to=drag,open or shut a door or a window)、「(着実に)きちんと・仕事をする(きちんと)」(「チナ」が「チン」となった)

  「カリア・ツイ」、KARIA-TUI(karia=by and by;tui=lace,sew)、「すぐに・裁縫できる(易しい)」(「カリア」が「カリヤ」と、「ツイ」が「スイ」となった)

の転訛と解します。

[石川県]

317〜まっし(〜なさい)・ながいこって・おいね・なむいね・〜がや・〜け・〜じー・あいそらしー・いじくらしー・おんぼらーと・じゃまない・〜んなん・だんない・はつめー・たんち・なんなさんあーん・はべん・つるつる・ごぼる・げべ

 石川県の代表的な方言には、「〜まっし」(〜なさい)、「ながいこって」(お久しぶり)、「おいね」(うん)、「なむいね」(いや)、「〜がや」(〜のか)、「〜け」(〜の・〜か)、「〜じー」(〜なあ)、「あいそらしー」(愛想がよい)、「いじくらしー」(不快でしつこい)、「おんぼらーと」(のんびりと)、「じゃまない」(大丈夫だ)、「〜んなん」(〜しなくてはいけない)、「だんない」(かまわない)、「はつめー」(聡明な)、「だら」(ばか)(前出国語篇(その十六)の164ばか(馬鹿)の項を参照してください。)、「たんち」(坊ちゃん)、「ねまる」(座る)(前出国語篇(その十五)の114すわる(座る)の項を参照してください。)、「なんなさんあーん」(仏前でのお参り)、「きときと」(魚が新鮮なさま)(前出富山県の「きときと」の項を参照してください。)、「はべん」(かまぼこ)、「つるつる」(液体がこぼれそうだ)、「ごぼる」(雪の中に足がはまる)、「げべ」(びり。最下位)があります。

 この「〜まっし」、「ながいこって」、「おいね」、「なむいね」、「〜がや」、「〜け」、「〜じー」、「あいそらしー」、「いじくらしー」、「おんぼらーと」、「じゃまない」、「〜んなん」、「だんない」、「はつめー」、「たんち」、「なんなさんあーん」、「はべん」、「つるつる」、「ごぼる」、「げべ」は、

  「マ・アチアチ」、MA-ATIATI(ma=go,come;atiati=drive away)、「(早く)来るよう・(強要する)せかす(〜なさい)」(「アチアチ」の反復語尾が脱落して「アチ」から「ッシ」となった)

  「ナ・ア(ン)ガ・アイ・カウテアテア」、NA-ANGA-AI-KAUTEATEA(na=by,belonging to;anga=face or move in a certain direction;ai=marking the time or place of an action or event;kauteatea=coming at intervals)、「長く・引き伸ば・された・(間隔をおいた )後にやって来た(お久しぶり)」(「ナ」のA音と「ア(ン)ガ」の語頭のA音が連結し、NG音がG音に変化して「ナガ」となり、その語尾のA音と「アイ」の語頭のA音が連結して「ナガイ」と、「カウテアテア」のAU音がO音に変化し、反復語尾が脱落して「コテア」となり、その語尾のA音が脱落して「コテ」から「コッテ」となった)

  「オイ・ネイ」、OI-NEI(oi=heoi=denoting completeness or sufficiency of a statement or enumeration,there is no more,accordingly;nei,neinei=stretched forward)、「確かにそうだ・よね(うん)」(「ネイ」が「ネ」となった)

  「ナ・ムイ・ネイ」、NA-MUI-NEI(na=by,belonging to;mui=swarm round,molest;nei,neinei=stretched forward)、「どちらかといえば・(紛らわしくて)人を悩ますものだ・ね(いや)」(「ネイ」が「ネ」となった)

  「(ン)ガイ・イア」、NGAI-IA(ngai=pant,sob;ia=indeed)、「何と・(息を切らして)熱心に(〜しょうとする)(〜のか)」(「(ン)ガイ」のNG音がG音に変化し、語尾のI音と「イア」の語頭のI音が連結して「ガイア」から「ガヤ」となった)

  「ケイ」、KEI((=kai)that not,do not,whilst)、「〜か、それともそうではないのか(〜の。〜か)」(「ケイ」が「ケ」となった)(前出北海道の「〜かい」の項を参照してください。)

  「チヒ」、TIHI(top,summit)、「(最高だ)いいなあ(〜なあ)」(H音が脱落して「チー」から「ジー」となった)

  「アイ・トラ・チヒ」、AI-TORA-TIHI(ai=expressing the reason for which anything is done or the object in view in doing it;tora=burn,blaze,be erect;tihi=top,summit)、「最高に・(笑顔を)輝かせて・行動する(愛想がよい)」(「トラ」が「ソラ」と、「チヒ」のH音が脱落して「シー」となった)

  「イ・チ・クフ・ウラ・チヒ」、I-TI-KUHU-URA-TIHI(i=past tense,beside;ti=throw,cast,overcome;kuhu=insert,conceal,introduce oneself into;ura=red,glow;tihi=top,summit)、「ずっと・(顔を)輝かすことを・隠す(陰気な顔をする)・ことを(最高に)最大に・行った(不快でしつこい)」(「チ」が「ジ」と、「クフ」のH音が脱落して「ク」となり、その語尾のU音と「ウラ」の語頭のU音が連結して「クラ」と、「チヒ」が「シー」となった)

  「オナ・ポラ・タウ」、ONA-PORA-TAU(ona=of him,of her;pola=large sea-going canoe,ship:tau=come to rest,be suitable,befit)、「彼(彼女)が・大きな外洋船の上で・休息している(のんびりと)」(「オナ」が「オン」と、「ポラ」が「ボラー」と、「タウ」のAU音がO音に変化して「ト」となった)

  「チア・マナ・アイ」、TIA-MANA-AI(tia=etia=as if,as it were;mana=authority,influence,power;ai=expressing the reason for which anything is done or the object in view in doing it)、「(仕事を成し遂げる)力が・ある・ようだ(大丈夫だ)」(「チア」が「ジャ」と、「マナ」の語尾のA音と「アイ」の語頭のA音が連結して「マナイ」となった)

  「ナ・ナナ」、NA-NANA(na=by,acted on in any way of,belonging to;nana=eyebrow,used only in the imperative,look!,behold!)、「さあ・見てろよ(と言ったからには)(〜しなくてはいけない)」(「ナ」が「ン」と、「ナナ」が「ナン」となった)

  「タノア・ナイ」、TANOA-NAI(tanoa=belittle,make of no account;nai=nei,neinei=stretch forward)、「(軽視)無視し・続ける(かまわない)」(「タノア」の語尾のA音が脱落して「タノ」から「ダン」となった)

  「ハ・ツ・メ」、HA-TU-ME(ha=what!;tu=stand,settle,fight with,energetic;me=thing,think)、「何と・よく・考えをめぐらすことよ(聡明な)」(「メ」が「メー」となつた)

  「タナ・アチ」、TANA-ATI(tana=his,her,its;ati=offspring,descendant)、「彼(彼女)の・子孫(坊ちゃん)」(「タナ」の語尾のA音と「アチ」の語頭のA音が連結して「タナチ」から「タンチ」となった)

  「ナ・ナナ・タナ・アナ」、NA-NANA-TANA-ANA(na=by,acted on in any way of,belonging to;nana=eyebrow,used only in the imperative,look!,behold!;tana=his,her,its;ana=denoting continuance of action or state)、「(彼)仏様を・拝見するのに・似た行為(拝礼)を・行う(仏前でのお参り)」(「ナナ」が「ンナ」と、「タナ」が「サン」と、「アナ」が「アーン」となった)

  「パ・ペヌ」、PA-PENU(pa=be struck;penu=quite,completely)、「完全に・(魚を)摺って作ったもの(かまぼこ)」(「パ」のP音がF音を経てH音に変化して「ハ」と、「ペヌ」が「ベン」となった)

  「ツルツル」、TURUTURU(=turu=leak,drip)、「(液体が)漏れる(液体がこぼれそうだ)」

  「(ン)ガウ・パウル」、NGAU-PAURU(ngau=bite,hurt,act upon,attack;pauru=a method of planting sweet potato)、「(甘藷を植えるように)穴の中に入って・しまう(雪の中に足がはまる)」(「(ン)ガウ」のNG音がG音に、AU音がO音に変化して「ゴ」と、「パウル」のAU音がO音に変化して「ポル」から「ボル」となった)

  「(ン)ゲ・ペ」、NGE-PE(nge=noise,screech;pe=crushed,mashed)、「完全に圧倒されて・悲鳴を上げる(びり。最下位)」(「(ン)ゲ」のNG音がG音に変化して「ゲ」と、「ペ」が「ベ」となった)

の転訛と解します。

[福井県]

318〜ねー(〜なさい)・〜ざ・てなわん・〜ま・ほや・じゃみじゃみ・べと・おぞい・つるつるいっぱい・えん・うら・かすな・ものごい・おちょきんする・かたい・にんならん・よーけ・むだかる

 福井県の代表的な方言には、「〜ねー」(〜なさい)、「〜ざ」(〜よ)、「てなわん」(ずる賢い)、「〜ま」(〜よ)、「くどい」(塩辛い)(前出国語篇(その十五)の089しおからい(塩辛い)の項を参照してください。)、「ほや」(そうだ)、「じゃみじゃみ」(画面が砂嵐状態だ)、「べと」(土)、「おとましー」(惜しい)(前出国語篇(その十六)の207もったいないの項を参照してください。)、「おぞい」(古い)、「つるつるいっぱい」(液体がこぼれそう)、「えん」(いない)、「うら」(私)、「かすな」(とても)、「ものごい」(精神的につらい)、「てきねー」(病気で体がつらい)(前出国語篇(その十五)の128だるい(怠い。懈い)の項を参照してください。)、「おちょきんする」(正座する)、「かたい」(体が丈夫で元気)、「にんならん」(構わない)、「よーけ」(たくさん)、「むだかる」(糸状のものがもつれる)、「かやる」(倒れる)(前出国語篇(その十四)の079ころぶ(転ぶ)の項を参照してください。)があります。

 この「〜ねー」、「〜ざ」、「てなわん」、「〜ま」、「ほや」、「じゃみじゃみ」、「べと」、「おぞい」、「つるつるいっぱい」、「えん」、「うら」、「かすな」、「ものごい」、「おちょきんする」、「かたい」、「にんならん」、「よーけ」、「むだかる」は、

  「ネイ」、NEI(to indicate continuance of action)、「行動を続ける(〜なさい)」(「ネイ」が「ネー」となった)

  「タ」、TA(a term of address with certain tribes,friend)、「(友よ)呼びかけ(〜よ)」(「タ」が「ザ」となった)

  「テナ・ワナワナ」、TENA-WANAWANA(tena=that,this;wanawana=bristle,fear,fearsome)、「あの・恐ろしい(人)(ずる賢い)」(「ワナワナ」の反復語尾が脱落して「ワナ」から「ワン」となった)

  「マ」、MA(go,come)、「来てね(〜よ)」

  「ホイ・イア」、HOI-IA(hoi=heoi=denoting completeness or suffciency of a statement or enumeration,there is no more;ia=indeed)、「実に・申し分がない(そうだ)」(「ホイ」の語尾のI音と「イア」の語頭のI音が連結して「ホイア」から「ホヤ」となった)

  「チア・ミミ・チア・ミミ」、TIA-MIMI-TAI-MIMI(tia=etia=as if,as it were;mimi=urine,stream)、「まるで・大雨が・降っている・ようだ(画面が砂嵐状態だ)」(「チア」が「ジャ」と、「ミミ」の反復語尾が脱落して「ミ」となった)

  「ペト」、PETO(be consumed)、「(岩が)細かく砕かれたもの(土)」(「ペト」が「ベト」となった)

  「オ・トイ」、O-TOI(o=the...of,belonging to;toi=top,origin,native)、「例の・(源のように)古い(古い)」(「トイ」が「ゾイ」となった)

  「ツルツル・イツ・パイ」、TURUTURU-ITU-PAI(turuturu=turu=leak,drip;itu=side;pai=good,suitable,be agreeable)、「(液体が容器の)縁に・ちょうどぴったりまであって・漏れる(液体がこぼれそう)」(「イツ」が「イッ」となった)

  「ヘヌミ」、HENUMI(be out of sight,disappear behind anything)、「(人の姿が)見えなくなった(いない)」(H音および語尾のMI音が脱落して「エヌ」から「エン」となった)

  「ウラ(ン)ガ」、URANGA(act or circumstance etc. of becoming firm)、「実体があるもの(私)」(名詞形語尾のNGA音が脱落して「ウラ」となった)

  「カツア・ナ」、KATUA-NA(katua=fullgrown,adult;na=to indicate position near or connection with the person addressed)、「すっかり大人になった・ね(とても)」(「カツア」の語尾のA音が脱落して「カス」となった)

  「モノ・(ン)ゴイ」、MONO-NGOI(mono=plug,caulk,disable by means of incantations;ngoi=strength,energy,creep)、「人の力を奪う魔法にかけられたように・気力がなくなる(精神的につらい)」(「(ン)ゴイ」のNG音がG音に変化して「ゴイ」となった)

  「オチ・アウキ・ナ・ツル」、OTI-AUKI-NA-TURU(oti=finished,go or come for good;auki=old,of long standing,na=by,acted on in any way by,belonging to;turu=kneel)、「良い(正しい)姿勢で・長時間座った・ままで・膝を曲げる(正座する)」(「アウキ」のAU音がO音に変化して「オキ」となり、「オチ・オキ」が「オチョキ」と、「ナ」が「ン」と、「ツル」が「スル」となった))(前出富山県の「おちょきん(正座)」の項を参照してください。)

  「カハ・タイ」、KAHA-TAI(kaha=strong,persistency;tai=the sea,tide,rage)、「強くて・荒々しい(体が丈夫で元気)」(「カハ」のH音が脱落して「カ」となった)

  「ニニ・(ン)ガラ(ン)ガラ」、NINI-NGARANGARA(nini=growing(ninia=suffused with light);ngarangara=anything small)、「ごく小さな(無視して良い)ことが・いっぱいだ(構わない)」(「ニニ」が「ニン」と、「(ン)ガラ(ン)ガラ」のNG音がN音に変化し、語尾のRA音が脱落してて「ナラナ」から「ナラン」となった)

  「イオ・カイ」、IO-KAI(io=tough,obstinate;kai=quantity,number)、「(しつこいほどの)たくさんの・数量(たくさん)」(「イオ」が「ヨー」と、「カイ」のAI音がE音に変化して「ケ」となった)

  「ムフ・タカル」、MUHU-TAKARU(muhu=stupid,incorrect;takaru=splash about,flounder)、「とんでもなく・もがく(糸状のものがもつれる)」(「ムフ」のH音が脱落して「ム」と、「タカル」が「ダカル」となった)

の転訛と解します。

[山梨県]

319おまん(おまえ)・じぶん・ぼこ・ちょびちょびする・のぶい・みぐさい・くむ・だっちもねー・わからんじん・いっさら・でる・よっちゃばる・たいへん・〜さ・〜ちょ・〜し・へー・〜っか

 山梨県の代表的な方言には、「おまん」(おまえ)、「じぶん」(おまえ)、「ぼこ」(子供)、「ちょびちょびする」(調子づいてでしゃばる)、「のぶい」(ずうずうしい)、「みぐさい」(みっともない)、「くむ」(交換する)、「とぶ」(走る)(前出国語篇(その十六)の166はしる(走る)の項を参照してください。)、「えらい」(大変)(前出国語篇(その十六)の173ひじょうに(非常に)の項を参照してください。)、「だっちもねー」(つまらない)、「わからんじん」(わからずや)、「いっさら」(一つも(〜ない))、「でる」(できる)、「よっちゃばる」(集まる)、「ほーとー」(郷土料理のうどんの名)(雑楽篇(その二)の543むぎ(麦)の項を参照してください。)、「たいへん」(たくさん)、「〜さ」(〜んだよ)、「〜ちょ」(〜な)、「〜し」(〜よ)、「へー」(もう)、「ささらほーさら」(うまくいかない状態だ)(前出国語篇(その十五)の126だめ(駄目)の項を参照してください。)、「〜っか」(〜うか)があります。

 この「おまん」、「じぶん」、「ぼこ」、「ちょびちょびする」、「のぶい」、「みぐさい」、「くむ」、「だっちもねー」、「わからんじん」、「いっさら」、「でる」、「よっちゃばる」、「たいへん」、「〜さ」、「〜ちょ」、「〜し」、「へー」、「〜っか」は、

  「ワウ・マナナ」、WAU-MANANA(wau=I,me;manana=bent,wag,rise)、「私に・頭を下げる者(おまえ)」(「ワウ」のAU音がO音に変化して「ヲ」から「オ」と、「マナナ」の反復語尾が脱落して「マナ」から「マン」となった)(なお、「おまえ」は、「ワウ・マ・ヘア」、WAU-MA-HEA(wau=I,me;ma=come,go;hea=any place)、「私の・(前の)場所に・立つ者(おまえ)」(「ワウ」のAU音がO音に変化して「ヲ」から「オ」と、「ヘア」のH音と語尾のA音が脱落して「エ」となった)と解します。)

  「チプ・ナ」、TIPU-NA(tipu=tupu=grow,be firmly fixed,genuin,own;na=by,belonging to)、「(私の)前に立つ・者(おまえ)」(「チプ」が「ジブ」と、「ナ」が「ン」となった)(この語は、他県では「自分自身(own)・の」の意で使われることが多いものです。)

  「ポ・コ」、PO-KO(po,popo=crowd round,throng;ko=in addressing girls and males)、「群れて(遊んで)いる・子供たち(子供)」(「ポ」が「ボ」となった)

  「チオ・ピ・チオ・ピ・ツル」、TIO-PI-TIO-PI-TURU(tio=cry,call;pi=young of birds etc.;turu=last a short time)、「小さな子供が・キャーキャーと・うるさく・短時間・騒ぐ(調子づいてでしゃばる)」(「チオ」が「チョ」と、「ピ」が「ビ」と、「ツル」が「スル」となった)

  「(ン)ガウ・プヒ」、NGAU-PUHI(ngau=bite,hurt,attack;puhi=virgin,betrothed woman)、「婚約中の女性に・言い寄る(ずうずうしい)」(「(ン)ガウ」のNG音がN音に、AU音がO音に変化して「ノ」と、「プヒ」のH音が脱落して「ブイ」となった)

  「ミヒ・(ン)グ・タイ」、MIHI-NGU-TAI(mihi=sigh for,greet,show itself;ngu=greedy;tai=tide,rage,violent)、「荒々しく・がつがつと食べる・さまを見せる(みっともない)」(「ミヒ」のH音が脱落して「ミ」と、「(ン)グ」のNG音がG音に変化して「グ」と、「タイ」が「サイ」となった)

  「クフ・ウム」、KUHU-UMU(kuhu=insert,conceal;umu=earth-oven)、「(食べ物を)地中の蒸し焼き竈の・中に入れる(他の人の食べ物と見分けがつかなくなる)(交換する)」(「クフ」のH音が脱落して「ク」となり、そのU音と「ウム」の語頭のU音が連結して「クム」となった)

  「タ・チモ・ネイ」、TA-TIMO-NEI(ta=the...of,dash,beat,lay;timo=peck as a bird,prick;nei,neinei=stretched forward,reaching out)、「例の・ただただ・鳥がつついているようなさま(つまらない)」(「タ」が「ダッ」と、「ネイ」が「ネー」となった)

  「ワカ・ラ(ン)ガ・チナ」、WAKA-RANGA-TINA(waka=canoe;ranga=raise,pull up;tina=fixed,firm,satisfied)、「カヌーを・陸に引き上げて・置けばよい(と考えている人)(わからずや)」(「ラ(ン)ガ」のNG音がN音に変化して「ラナ」から「ラン」と、「チナ」が「ジン」となった)

  「イツ・タラ」、ITU-TARA(itu=side(whakaitu=aside,away);tara=make a buzzing sound,gossip)、「余計な噂話などは・そっちのけで(一切しない)(一つも(〜ない)」(「イツ」が「イッ」と、「タラ」が「サラ」となつた)

  「タイ・ル」、TAI-RU(tai=dash,strike,knock,perform certain ceremonies to remove tapu etc.;ru=shake,agitate,scatter)、「奮って・(試験、仕事などに)挑む(できる)」(「タイ」のAI音がE音に変化して「デ」となった)

  「イオ・チア・パルル」、IO-TIA-PARURU(io=tough,hard,obstinate;tia=stick in,drive in pegs;paruru=close together,compact,place close together)、「しっかりと・杖をついて・(固まる)集まる(集まる)」(「イオ」が「ヨッ」と、「チア」が「チャ」と、「パルル」の反復語尾が脱落して「バル」となった)

  「タイ・ヘ(ン)ガ」、TAI-HENGA(tai=the sea,tide;henga=food for working party)、「(海のように)大量の・労働者達の食事(たくさん)」(「ヘ(ン)ガ」のNG音がN音に変化して「ヘナ」から「ヘン」となった)

  「タ」、TA(a term of address with certain tribes,friend)、「(友よ)呼びかけ(〜んだよ)」(「タ」が「サ」となった)(前出福井県の「〜ざ(〜よ)」の項を参照してください。)

  「チ・アウア」、TI-AUA(ti=throw,cast;aua=(imperative)not)、「禁止の命令を・下す(〜(する)な)」(「アウア」のAU音がO音に変化し、語尾のA音が脱落して「オ」となり、「チ・オ」が「チョ」となった)

  「チ」、TI(throw,cast)、「(何かの行動を)する、しなさい(〜よ)」(「チ」が「シ」となった)

  「ヘヘ」、HEHE(gone astray,at a loss)、「良かれ悪しかれすでに決まった(動き出している)ことだ(もう)」(「ヘヘ」が「ヘー」となった)

  「ツカツカ」、TUKATUKA(start up,proceed forward)、「出発する(〜(しよ)うか」(反復語尾が脱落して「ツカ」から「ッカ」となった)

の転訛と解します。

[長野県]

320ずく(精を出すこと)・やくやく・たたる・わかいしょー・〜すか・つもい・だれどー・ぞぜーる・まえで・わにる・ひとっきり・〜じ・みやましー・ごーさわく

 長野県の代表的な方言には、「ずく」(精を出すこと)、「とぶ」(走る)(前出国語篇(その十六)の166はしる(走る)の項を参照してください。)、「もーらしー」(かわいそう)(前出国語篇(その十四)の059かわいそう(可哀相)の項を参照してください。)、「やくやく」(わざわざ)、「たたる」(建つ)、「わかいしょー」(若い人たち)、「〜すか」(〜ものか)、「つもい」(入れにくくてきつい)、「だれどー」(誰と誰)、「ぞぜーる」(甘える)、「まえで」(前)、「わにる」(はにかむ)、「へら」(舌)(前出国語篇(その十五)の091した(舌)の項を参照してください。)、「いただきました」(ごちそうさまでした)(前出国語篇(その十四)の075ごちそうさま(ご馳走様)の項を参照してください。)、「ひとっきり」(しばらく)、「〜じ」(〜ですよ)、「はかいく」(はかどる)(前出国語篇(その十六)の165はかどる(捗る)の項を参照してください。)、「めった」(めっきり)(前出国語篇(その十六)の205めっきりの項を参照してください。)、「みやましー」(きりっとすばやい)、「ごーさわく」(腹が立つ)、「はーるかぶり」(久しぶりだ)(前出国語篇(その十六)の172ひさしぶり(久しぶり)の項を参照してください。)があります。

 この「ずく」、「やくやく」、「たたる」、「わかいしょー」、「〜すか」、「つもい」、「だれどー」、「ぞぜーる」、「まえで」、「わにる」、「ひとっきり」、「〜じ」、「みやましー」、「ごーさわく」は、

  「ツク」、TUKU(let go,send,present,set to)、「(意志を集中して)行動する(精を出すこと)」(「ツク」が「ヅク」となった)

  「イア・アク・イア・アク」、IA-AKU-IA-AKU(ia=indeed;aku=delay,take time over anything)、「実に・そのために時間を割いて・さらに・時間をかけて(わざわざ)」(「イア」が「ヤ」となり、そのA音と「アク」の語頭のA音が連結して「ヤク」となった)

  「タタ・ル」、TATA-RU(tata=dash down,strike repeatedly,hew out;ru=shake,agitate,scatter)、「奮って・(木材などを)切り刻んで組み立てる(建つ)」

  「ウアカハ・アイ・チホイ」、UAKAHA-AI-TIHOI(uakaha=vigorous,strenuous;ai=expressing the reason for which anything is done;tihoi=wander,unsettled,divergent)、「(若さによる)元気が・いっぱいで・もてあましている人々(ワカイ人たち)」(「ウアカハ」のH音が脱落して「ワカ」となり、その語尾のI音と「アイ」の語頭のI音が連結して「ワカイ」と、「チホイ」のH音および語尾のI音が脱落して「チオ」から「ショー」となった)

  「ツ・カ」、TU-KA(tu=stand,settle;ka=to denote the commencement of a new action or condition)、「〜の状態で・ある(〜ものか)」(「ツ」が「ス」となった)

  「ツ・モヒ」、TU-MOHI(tu=fight with,energetic;mohi,mohimohi=smooth,sleek)、「懸命に努力して・(やっと)滑らかに動く(入れにくくてきつい)」(「モヒ」のH音が脱落して「モイ」となった)

  「タ・レヘ・ト」、TA-RAHE-TO(ta=dash,lay;rehe=expert,neat-handed deft person;to=drag,haul)、「(そこに)居る・熟練(または老練)者(と)・(その者が)引き連れる者(誰と誰)」(「タ」が「ダ」と、「レヘ」のH音が脱落して「レ」と、「ト」が「ドー」となった)

  「タウ・テイ・ル」、TAU-TEI-RU(tau=come to rest,lie steeping in water,be suitable;tei,teitei=high,summit,top;ru=shake,agitate,scatter)、「奮って・最高に・(母の懐で)休息する(甘える)」(「タウ」のAU音がO音に変化して「ト」から「ゾ」と、「テイ」が「ゼー」となった)

  「マ・ヘア・テ」、MA-HEA-TE(ma=a few other close relationships;hea=what place,any place;te=to make an emphatic statement)、「最も・近い・場所(前)」(「ヘア」のH音および語尾のA音が脱落して「エ」と、「テ」が「デ」となった)

  「ワハ・ニヒ・ル」、WAHA-NIHI-RU(waha=mouth,voice;nihi=move stealthly,come stealthly upon;ru=shake,agitate,scatter)、「そっと小さな・声で・話す(はにかむ)」(「ワハ」のH音が脱落して「ワ」と、「ニヒ」のH音が脱落して「ニ」となった)

  「ピトイ・キヒ・イリ」、PITOI-KIHI-IRI(pitoi=tie in a bunch;kihi=cut of,strip of branches etc.;iri=rest upon,hang,be suspended)、「一纏めの(時間を)・切り取って・棚上げしておく(しばらく)」(「ピトイ」のP音がF音を経てH音に変化し、語尾のI音が脱落して「ヒト」から「ヒトッ」と、「キヒ」のH音が脱落し、その語尾のI音と「イリ」の語頭のI音が連結して「キリ」となった)

  「チ」、TI(persistency)、「(〜の状態であることを)強調する(〜ですよ)」(「チ」が「ジ」となった)

  「ミミ・イア・マチ」、MIMI-IA-MATI(mimi=urine,stream;ia=indeed;mati=surfeited)、「(行動が)実に・すべて・流れる急流のようだ(きりっとすばやい)」(「ミミ」の反復語尾が脱落して「ミ」と、「イア」が「ヤ」と、「マチ」が「マシー」となった)

  「(ン)ゴ・タ・ワク」、NGO-TA-WAKU(ngo=cry;ta=dash,beat,lay;waku=rub,scrape,abrade)、「叫び声を上げて・神経を消耗・する(腹が立つ)」(「(ン)ゴ」のNG音がG音に変化して「ゴ」から「ゴー」と、「タ」が「サ」となった)

の転訛と解します。

[岐阜県]

321はんちくたい(気にいらない)・〜えな・くつばしー・きっばずけで・げばいとる・ごく・もやいで・だっしゃもない・しょっぱつ・あしたり・しにきり・なまど・はば・ためらう・わいしたら・ひず・きっつくれー

 岐阜県の代表的な方言には、「はんちくたい」(気にいらない)、「かがはえー」(まぶしい)(前出国語篇(その十六)の198まぶしい(眩しい)の項を参照してください。)、「〜えな」(〜ね)、「くつばしー」(くすぐったい)、「きっばずけで」(取りあえず)、「だしかん」(駄目だ)(前出国語篇(その十五)の126だめ(駄目)の項を参照してください。)、「げばいとる」(ふさわしくない)、「ごく」(大変強い力で)、「もやいで」(共同で)、「だっしゃもない」(散らかしている)、「しょっぱつ」(一番初め)、「あらびる」(駆けまわって騒ぐ)(前出国語篇(その十六)の181ふざける(巫山戯る)の項を参照してください。)、「あしたり」(明日)、「しにきり」(一所懸命)、「なまど」(青大将)、「はば」((木や草の)葉)、「こてがう」(転ぶ)(前出国語篇(その十四)の079ころぶ(転ぶ)の項を参照してください。)、「ためらう」(身体を大切にする)、「わいしたら」(もしかしたら)、「ひず」(元気)、「きっつくれー」(大嫌い)、「へら」(舌)(前出長野県の「へら(舌)」の項を参照してください。)、「あば」(さようなら)(前出国語篇(その十五)の086さようなら(左様なら)の項を参照してください。)があります。

 この「はんちくたい」、「〜えな」、「くつばしー」、「きっばずけで」、「げばいとる」、「ごく」、「もやいで」、「だっしゃもない」、「しょっぱつ」、「あしたり」、「しにきり」、「なまど」、「はば」、「ためらう」、「わいしたら」、「ひず」、「きっつくれー」は、

  「ハニ・チ・クタイタイ」、HANI-TI-KUTAITAI(hani=speak ill of,disparage;ti=throw,cast;kutaitai=of a disagreeable taste)、「同意できないという気持ちをこめて・(他人を)非難・する(気にいらない)」(「ハニ」が「ハン」と、「クタイタイ」の反復語尾がだつらくして「クサイ」となった)

  「エナ」、ENA(plural of definitive tena,those near or connected with the person spoken to)、「〜だね(〜ね)」

  「ク・ツパ・チ」、KU-TUPA-TI(ku=silent,wearied;tupa=start,turn sharply aside,escape;ti=throw,cast)、「(それを)我慢できずに・身体をくねらせて・逃げ出す(くすぐったい)」(「ツパ」が「ツバ」と、「チ」が「シー」となった)

  「キ・パツ・ケテケテ」、KI-PATU-KETEKETE(ki=full,very;patu=strike,beat,ill treat in any way;ketekete=express surprise etc.,disappointment)、「全く・びっくりするほど・(その場に)ふさわしくない対応をとる(取りあえず)」(「キ」が「キッ」と、「パツ」が「バズ」と、「ケテケテ」の反復語尾が脱落して「ケデ」となった)

  「(ン)ガイ・パイ・トルトル」、NGAI-PAI-TORUTORU(ngai=tribe,clan;pai=good,excellent,suitable,agreeable;torutoru=few)、「ふさわしい・部類に属するものが・稀である(ふさわしくない)」(「(ン)ガイ」のNG音がG音に、AI音がE音に変化して「ゲ」と、「パイ」が「バイ」と、「トルトル」の反復語尾が脱落して「トル」となった)

  「(ン)ガウ・ク」、NGAU-KU(ngau=bite,hurt,attack;ku=firm,stiff,thickened)、「強い力で・作用する(大変強い力で)」(「(ン)ガウ」のNG音がG音に、AU音がO音に変化して「ゴ」となった)

  「マウ・イア・アイ・テ」、MAU-IA-AI-TE(mau=carry,bring,take up,lay hold of;ia=indeed;ai=expressing the reason for which anything is done;te=to make an emphatic statement)、「(兄弟が)実に・(一緒に)持って・使い・通す(共同で)」(「マウ」のAU音がO音に変化して「モ」と、「イア」が「ヤ」となり、その語尾のA音が「アイ」の語頭のA音とと連結して「ヤイ」と、「テ」が「デ」となった)

  「タツ・チ・イア・マウ・ナイ」、TATU-TI-IA-MAU-NAI(tatu=reach the bottom,be at ease,stumble;ti=throw,cast;ia=indeed;mau=fixed,continuing;nai=nei=to denote proximity to or connection with the speaker)、「最低(の状態)に・実に・(ごみを)撒き散らした・ままにして・平然としている(散らかしている)」(「タツ」が「ダッ」と、「チ」が「シ」と、「イア」が「ヤ」と、「マウ」のAU音がO音に変化して「モ」となった)

  「チオホ・ツ・パツ」、TIOHO-TU-PATU(tioho=apprehensive;tu=stand,settle,fight with,energetic;patu=strike,beat,kill)、「(何かを)やってのけるのに・ものすごく・心配する(一番初め)」(「チオホ」のH音が脱落して「チオ」から「ショ」と、「ツ」が「ッ」となった)

  「ア・チタハ・リ」、A-TITAHA-RI(a=the...of;titaha=lean to one side,decline as the sun,pass on one side;ri=screen,protect,bind)、「例の・日が落ちた時刻に・連なる時間(明日)」(「チタハ」のH音が脱落して「チタ」から「シタ」となった)(古代では日が落ちると翌日が始まるとされていました)

  「チニ・キ・ヒリ」、TINI-KI-HIRI(tini=very many,myriad;ki=full,very;hiri,hihiri=laborious,brisk,energetic)、「とても・たいへん・熱心に(一所懸命)」(「チニ」が「シニ」と、「ヒリ」のH音が脱落して「リ」となった)

  「ナ・マトマト」、NA-MATOMATO(na=by,belonging to;matomato=deep,green)、「緑色を・した(蛇)(青大将)」(「マトマト」の反復語尾が脱落して「マド」となった)

  「ワ・パ」、WHA-PA(wha=leaf,flake;pa=clump,group,flock,etc.)、「葉の・群れ((木や草の)葉)」(「ワ」のWH音がH音に変化して「ハ」と、「パ」が「バ」となった)

  「タ・メア・ラウ」、TA-MEA-RAU(ta=the...of;mea=thing,reason,cause;rau=hundred,multitude)、「例の・(身体の)為になることを・たくさん行う(身体を大切にする)」(「メア」の語尾のA音が脱落して「メ」となった)
  なお、「逡巡する」意の「ためらう」は、「タハ・メ・ラウ」、TAHA-ME-RAU(taha=side,edge,pass on one side(tataha=swerve);me=if,ad if;rau=project,extend(whakarau=take captive,confuse))、「脇道に外れる・かどうか・困惑する(逡巡する)」(「タハ」のH音が脱落して「タ」となった)

  「ワイ・チタハ・アラ」、WHAI-TITAHA-ARA(whai=cat's cradle,play at cat's cradle;titaha=lean to one side,vary from,crooked;ara=rise,awake,raise)、「綾取りをするように・(突然)全く違った状況が・現れる(もしかしたら)」(「ワイ」のWH音がW音に変化して「ワイ」と、「チタハ」のH音が脱落して「シタ」となり、その語尾のA音と「アラ」の語頭のA音が連結して「シタラ」となった)

  「ヒ・ツ」、HI-TU(hi=raise,rise;tu=fight with,energetic)、「(気分が)高揚して・精力的に行動する(元気)」(「ツ」が「ズ」となった)

  「キ・ツク・レヘ」、KI-TUKU-REHE(ki=full,very;tuku=let go,leave,present;rehe=wrinkled,wizened,stunted)、「たいへん・(気持ちを)しなびさせて・しまう(大嫌い)」(「キ」が「キッ」と、「レヘ」のH音が脱落して「レエ」から「レー」となった)

の転訛と解します。

[静岡県]

322ごせっぺー(せいせいして心地よい)・らんごく・やっきりする・やぶせったい・おぞぇー・なりき・はだって・くろ・ずなぇー・みるい・おまっち・とびっくら・〜じゃん・こば・しょんなぇー・えーかん・さばく

 静岡県の代表的な方言には、「ごせっぺー」(せいせいして心地よい)、「らんごく」(乱雑だ)、「やっきりする」(頭にくる)、「やぶせったい」(うっとうしい)、「おぞぇー」(質が悪い)、「なりき」(おおざっぱ)、「ひどろしー」(まぶしい)(前出国語篇(その十六)の198まぶしい(眩しい)の項を参照してください。)、「はだって」(わざと)、「くろ」(端)、「ぶしょったぇー」(だらしない)(前出国語篇(その十五)の127だらしないの項を参照してください。)、「ずなぇー」(強い)、「みるい」(熟していない)、「おまっち」(おまえ達)、「とびっくら」(競走)、「〜じゃん」(〜ではないか)、「こば」(そば)、「いあんばいです」(良い天気です)(前出国語篇(その十四)の036おはよう(お早う)の項を参照してください。)、「まめったい」(まめまめしい)(前出国語篇(その十六)の199まめの項を参照してください。)、「しょんなぇー」(仕方ない)、「かんだりー」(体がだるい)(前出国語篇(その十五)の128だるい(怠い。懈い)の項を参照してください。)、「えーかん」(かなり)、「さばく」(破る)があります。

 この「ごせっぺー」、「らんごく」、「やっきりする」、「やぶせったい」、「おぞぇー」、「なりき」、「はだって」、「くろ」、「ずなぇー」、「みるい」、「おまっち」、「とびっくら」、「〜じゃん」、「こば」、「しょんなぇー」、「えーかん」、「さばく」は、

  「(ン)ガウ・テペ」、NGAU-TEPE(ngau=bite,hurt,act upon,attcK;tepe=congeal,limit(whakatepe=do completely or without omission))、「(邪魔なものを)完全に・一掃した(せいせいして心地よい)」(「(ン)ガウ」のNG音がG音に、AU音がO音に変化して「ゴ」と、「テペ」が「セッペー」となった)

  「ラ(ン)ゴ・クフ」、RANGO-KUHU(rango=land overgrown with fern or scrub;kuhu=insert,introduce oneself into,join a company)、「羊歯や灌木が鬱蒼と茂る土地に・入り込んだような(乱雑だ)」(「ラ(ン)ゴ」が「ランゴ」と、「クフ」のH音が脱落して「ク」となった)

  「イア・ツキ・イリ・ツル」、IA-TUKI-IRI-TURU(ia=indeed;tuki=pound,beat,attack;iri=be elevated on something,hang(whakairi=elevate,hang up,impute;turu=last a short time))、「実に・衝撃を受けて・(短時間で)いっぺんに・(感情が)高ぶる(頭にくる)」(「イア」が「ヤ」と、「ツキ」が「ッキ」となり、その語尾のI音が「イリ」の語頭のI音と連結して「ッキリ」と、「ツル」が「スル」となった)

  「イア・プタイ・タイ」、IA-PUTAI-TAI(ia=indeed;putai=sea foam,misty,driving rain;tai=tide,anger,violence)、「実に・激しく・滲み通る霧に似た雨のような(うっとうしい)」(「イア」が「ヤ」と、「プタイ」のAI音がE音に変化して「プテ」から「ブセッ」となった)

  「オ・トエ」、O-TOE(o=the...of;toe=be left as remnant)、「例の・残り物(質が悪い)」(「トエ」が「ゾエー」となった)

  「(ン)ガリ・キ」、NGARI-KI(ngari=greatness,power(ngaringari=increase in numbers);ki=full,very)、「(扱うことが)十分に・大きい(大ざっぱ)」(「(ン)ガリ」のNG音がN音に変化して「ナリ」となった)

  「ワタ・ツテ」、WHATA-TUTE(whata=elevate,support,bring into prominence,protrude;tute=shove,push(tutetute=hustle))、「(ことさらに)目立つように・推し進める(わざと)」(「ワタ」のWH音がH音に変化して「ハダ」と、「ツテ」が「ッテ」となった)

  「クロ」、KULO(=kuloa=name of the night before graduation day in hula,a long waiting with feasts ceremonies lasting for hours)、「(儀式で)長く待たされた時間の最後のとき(端)」

  「ツ・ナ・エ」、TU-NA-E(tu=fight with,energetic;na=by,belonging to,by way of;e=to give emphasis)、「全く・よく・懸命にがんばる(強い)」(「ツ」が「ズ」と、「エ」が「エー」となった)

  「ミヒ・ル・ヰヰ」、MIHI-RU-WIWI(mihi=greet,show itself;ru=shake,agitate,scatter;wiwi=rushes,flinch)、「外観が・(内部から奮い立って )熟するのに・逡巡している(熟していない)」(「ミヒ」のH音が脱落して「ミ」と、「ヰヰ」のW音が脱落して「イイ」から「イ」となった)

  「ワウ・マハ・チ」、WAU-MAHA-TI(wau=I,me;maha=gratified,satisfied,many,abundance;ti=throw,cast)、「私に・満足を・与える者(おまえ達)」(「ワウ」のAU音がO音に変化して「ヲ」から「オ」と、「マハ」のH音が脱落して「マッ」となった)

  「ト・ピヒ・ツ・クラ」、TO-PIHI-TU-KURA(to=drag,haul;pihi=climb,ascend;tu=fight with,energetic;kura=red feathers used as a chaplet,treasure)、「(身体を)高く・上げて(跳ぶように走る)・懸命に・(栄冠の)羽根飾りを獲得しようとする(競走)」(「ピヒ」のH音が脱落して「ピ」と、「ツ」が「ッ」となった)

  「チア・ナ」、TIA-NA(tia=etia=as it were,as if;na=by,belonging to,by way of)、「まるで〜のよう・だよね(〜ではないか)」(「チア」が「ジャ」と、「ナ」が「ン」となった)

  「コパ」、KOPA(space in front of a house,the floor space in a house to the left of one entering)、「家の前または家の入り口を入った左の場所(そば)」(「コパ」が「コバ」となった)

  「チオ(ン)ガ・ナヱ」、TIONGA-NAWE(tionga=decoy,parrot;nawe=be set on fire,be unmovable,be at fault)、「囮の鳥が・うまく動かなかった(失敗した)(仕方ない)」(「チオ(ン)ガ」のNG音がN音に変化して「チオナ」から「ション」と、「ナヱ」のW音が脱落して「ナエー」となった)

  「エ・カネヘ」、E-KANEHE(e=to give emphasis;kanehe=trifle,anything small)、「非常に大きな・ちょっとした事(かなり)」(「エ」が「エー」と、「カネヘ」のH音が脱落して「カネ」から「カン」となった)

  「タパ・イ」、TAPA-I(tapa=margin,edge,cut,split;i=past tense)、「(障子などを)破っ・た(破る)」(「タパ」が「サバ」となった)(例文の「サバイちゃつて困る」によりました)

の転訛と解します。

[愛知県]

323やっとかめ(久しぶりだ)・〜なも・しとなる・ちゃっと・あぇーまち・いんちゃん・おく・ごぜん・ひきずり・かんこーがえー・いきる・ごたいげさん・たぇーだぇー・あやすい

 愛知県の代表的な方言には、「やっとかめ」(久しぶりだ)(前出国語篇(その十六)の172ひさしぶり(久しぶり)の項を参照してください。)、「〜なも」(〜ね)、「まわし」(したく)(前出国語篇(その十五)の092したく(支度)の項を参照してください。)、「しとなる」(育つ)、「だちかん」(だめ)(前出国語篇(その十五)の126だめ(駄目)の項を参照してください。)、「おそがぇー」(恐ろしい)(前出国語篇(その十四)の030おそろしい(恐ろしい)の項を参照してください。)、「ちゃっと」(急いで)、「あぇーまち」(けが)、「けなるい」(うらやましい)(前出国語篇(その十四)の017うらやましい(羨ましい)の項を参照してください。)、「こーとい」(地味な)(前出国語篇(その十五)の097じみ(地味)の項を参照してください。)、「いんちゃん」(石拳)、「おく」(やめる)、「ごぜん」(食事)、「らんごく」(乱雑だ)(前出静岡県の「らんごく(乱雑だ)」の項を参照してください。)、「ひきずり」(すき焼き)、「かんこーがえー」(利発な)、「いきる」(蒸す)、「たしなぇー」(乏しい)(したく)(前出国語篇(その十五)の107すくない(少ない)の項を参照してください。)、「ごたいげさん」(ご苦労さま)、「たぇーだぇー」(わざわざ)、「あやすい」(たやすい)、「がなる」(どなる)(前出国語篇(その十五)の148どなる(怒鳴る)の項を参照してください。)があります。

 この「〜なも」、「しとなる」、「ちゃっと」、「あぇーまち」、「いんちゃん」、「おく」、「ごぜん」、「ひきずり」、「かんこーがえー」、「いきる」、「ごたいげさん」、「たぇーだぇー」、「あやすい」は、

  「ナ・モ」、NA-MO(na=by,belonging to,by way of;mo=for,in preparation for,in consideration of the fact that)、「〜だ・ね(〜ね)」

  「チト・(ン)ガル」、TITO-NGARU(tito=compose,do anything without previous practice;ngaru=some obstruction supposed to be in the nose of a new-born child)、「新生児の鼻にあった障害を・取り除いた(ので子供がよく育つ)(育つ)」(「チト」が「シト」と、「(ン)ガル」のNG音がN音に変化して「ナル」となった)

  「チア・ツトフ」、TIA-TUTOHU(tia=stick in,take a vigorous stroke in paddling;tutohu=receive a proposal favourably,give consent to,point out,direct)、「直に・(杖を突いて)行く(急いで)」(「チア」が「チャ」と、「ツトフ」のH音が脱落して「ット」となった)

  「アヱ・マハ・チ」、AWHE-MAHA-TI(awhe=stir,disturb,pass round or behind;maha=many,abundance;ti=throw,overcome)、「大きな・(打ち負かされる)挫折(ここでは怪我)に・遭遇する(けが)」(「アヱ」のWH音が脱落して「アェー」と、「マハ」のH音が脱落して「マ」となった)

  「イナ・チア(ン)ゴ」、INA-TIANGO(ina=adducing a fact as proof of anything,for,as,inasmuch;tiango=shrunk,contracted)、「握りしめた(拳を)・(勝負の)証拠とする(どう変化するかによって決定する遊び。石拳)」(「イナ」が「イン」と、「チア(ン)ゴ」のNG音がN音に変化して「チアノ」から「チャン」となった)

  「オクウ」、OKUU((Hawaii)crouch,to perch as a bird)、「(鳥のように)止まり木に止まったままになる((出歩くのを)止める)」(「オクウ」が「オク」となった)(例文の「会社へ行くのをオクわ」によりました。)

  「(ン)ガウ・テナ」、NGAU-TENA(ngau=bite,hurt,attack;tena=encourage,urge forward)、「食べることを・進ませる(食事)」(「(ン)ガウ」のNG音がG音に、AU音がO音に変化して「ゴ」と、「テナ」が「ゼン」となった)

  「ピキ・ツ・ウリ」、PIKI-TU-URI(piki=closely curled of hair,plume for the head;tu=fight with,energetic;uri=descendant,relative,race)、「高級な牛肉であること(牛肉の血統)を・懸命に・自慢する料理(すき焼き)」(「ピキ」のP音がF音を経てH音に変化して「ヒキ」と、「ツ」ガ「ズ」となり、その語尾のU音が「ウリ」の語頭のU音と連結して「ズリ」となった)

  「カネ・コフ(ン)ガ・エヘ」、KANE-KOHUNGA-EHE(kane=head;kohunga=a superior variety of flax;ehe=expressing surprise)、「頭が・優れていて・びっくりする(利発な)」(「カネ」が「カン」と、「コフ(ン)ガ」のH音が脱落し、NG音がG音に変化して「コウガ」から「コーガ」と、「エヘ」のH音が脱落して「エー」となった)

  「イ・キ・ル」、I-KI-RU(i=ferment,be stirred of the feelings;ki=full,very;(Hawaii)ikiiki=stifling heat and humidity;ru=shake,agitate,scatter)、「たいへん・蒸し蒸しして・気持ちが落ち着かない((気候が)蒸す)」

  「(ン)ガウ・タイ・(ン)ガイ・タマ」、NGAU-TAI-NGAI-TAMA(ngau=wander,go about;tai=tide,anger,violent;ngai=tribe or clan;tama=son,man)、「苦労して・歩き回った・(部族)職業の・男子よ(ご苦労様)」(「(ン)ガウ」のNG音がG音に、AU音がO音に変化して「ゴ」と、「(ン)ガイ」のNG音がG音に、AI音がE音に変化して「ゲ」と、「タマ」が「サマ」となった)

  「タエ・タエ」、TAE-TAE(tae=arrive,reach(whakataetae=try strength,contend))、「遠路はるばる・やって来た(わざわざ)」(「タエ・タエ」が「タェーダェー」となった)

  「アイア・ツイ」、AIA-TUI(aia=kaitoa=it is good,it servs one right,etc.;tui=pierce,lace,sew)、「簡単に・(裁縫などが)できる(たやすい)」(「アイア」が「アヤ」と、「ツイ」が「スイ」となった)

の転訛と解します。

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[近畿地方]

[三重県]

324なっと(どう)・なっと・みじゃく・おぼたい・つむ・まだまん・〜に・あわい・やにこい・いっち・こぎしろ・やけつり・せんど・そばえる・すま・かえこと・ぼっこ・あちこち

 三重県の代表的な方言には、「なっと」(どう)、「さいこ」(でしゃばること)(前出国語篇(その十五)の144でしゃばり(出しゃばり)の項を参照してください。)、「みじゃく」(こわす)、「こやかい」(冷たい)(前出国語篇(その十五)の139つめたい(冷たい)の項を参照してください。)、「だんない」(構わない)(前出石川県の「だんない(構わない)」の項を参照してください。)、「ちみぎる」(つねる)(前出国語篇(その十五)の136つねる(抓る)の項を参照してください。)、「おぼたい」(重い)、「つむ」(混む)、「まだまん」(まだ)、「〜に」(〜よ)、「あわい」(間)、「やにこい」(もろい)、「いっち」(いちばん)、「こぎしろ」(小ねずみ)、「わやく」(いたずら)(前出国語篇(その十四)の014いたずら(悪戯)の項を参照してください。)、「やけつり」(やけど)、「せんど」(何度も)、「そばえる」(しゃれる)、「すま」(隅)、「かえこと」(交換)、「ぼっこ」(値打ちのないさま)、「あちこち」(さかさまだ)があります。

 この「なっと」、「みじゃく」、「おぼたい」、「つむ」、「まだまん」、「〜に」、「あわい」、「やにこい」、「いっち」、「こぎしろ」、「やけつり」、「せんど」、「そばえる」、「すま」、「かえこと」、「ぼっこ」、「あちこち」は、

  「ナ・ツトフ」、NA-TUTOHU(na=by,belonging to,by way of;tutohu=point out,indicate,sign)、「(存在・状況などを)示す・もの(どう)」(「ツトフ」のH音が脱落して「ット」となった)

  「ミチ・アク」、MITI-AKU(miti=a weapon made of a heavy stone;aku=delay,scrape out,cleanse)、「重い石の槌で・(きれいに)形あるものをなくす(こわす)」(「ミチ」が「ミジ」と、「ミジ・アク」が「ミジャク」となった)

  「アウ・パウ・タイ」、AU-PAU-TAI(au=firm,intense;pau=consumed,exhausted,denoting the complete or exhaustive character of any action;tai=anger,violence)、「固く緻密で・(持ち上げて運ぶと)ひどく・疲れるもの(重い)」(「アウ」のAU音がO音に変化して「オ」と、「パウ」のAU音がO音に変化して「ボ」となった)

  「ツ・ムフ」、TU-MUHU(tu=fight with,energetic;muhu=insert,conceal)、「懸命に・(中へ)入ってくる(混む)」(「ムフ」のH音が脱落して「ム」となった)

  「マタ・マヌ」、MATA-MANU(mata=raw,uncooked,unripe,fresh;manu=float,overflow)、「(いまだに)未熟の・ままである(まだ)」(「マタ」が「マダ」と、「マヌ」が「マン」となった)

  「ニヒ」、NIHI(move stealthly,come stealthly)、「そっと動き出す(〜よ)」(H音が脱落して「ニ」となった)

  「チ・ワヒ」、A-WAHI(a=the...of;wahi=break,split,break open)、「例の・(裂けている)割れている場所(間)」(「ワヒ」のH音が脱落して「ワイ」となった)

  「イア・ニヒ・コイ」、IA-NIHI-KOI(ia=indeed;nihi=steep,move stealthly,timidity;koi=move about)、「実に・自信なく・動く(もろい)」(「イア」が「ヤ」と、「ニヒ」のH音が脱落して「ニ」となった)

  「イ・ツ・チヒ」、I-TU-TIHI(i=past tense;tu=stand,settle;tihi=summit,top,lie in a heap)、「最高の(一番の)・場所に・居る(いちばん)」(「ツ」が「ッ」と、「チヒ」のH音が脱落して「チ」となった)

  「コ(ン)ギオ・チロ」、KONGIO-TIRO(kongio=be shrivelled up;tiro=look,view,examine)、「(普通の鼠が)縮小したように・見える(小ねずみ)」(「コ(ン)ギオ」のNG音がG音に変化し、語尾のO音が脱落して「コギ」と、「チロ」が「シロ」となった)

  「イア・カ・アイ・ツリ」、IA-KA-AI-TURI(ia=indeed;ka=take fire,burn;ai-expressing the reason for which anything is done;turi=deaf,obstinate)、「実に・火が・しつこく・(作用した)傷を負わせた(やけど)」(「イア」が「ヤ」と、「カ」の語尾のA音と「アイ」の語頭のA音が連結して「カイ」となり、そのAI音がE音に変化して「ケ」となった)

  「テネ・ト」、TENE-TO(tene=be importunate;to=drag,open or shut a door or a window)、「しつこく・繰り返す(何度も)」(「テネ」が「セン」と、「ト」が「ド」となった)

  「トパ・ヘル」、TOPA-HERU(topa=soar;heru=come for the hair)、「(気持ちが)高揚して・髪を櫛けずる(しゃれる)」(「トパ」が「ソバ」と、「ヘル」のH音が脱落して「エル」となった)

  「ツ・ウマ」、TU-UMA(tu=stand,settle;(Hawaii)uma=curve)、「(湾曲して)奥まった・場所に居る(隅)」(「ツ」が「ス」となり、その語尾のU音が「ウマ」の語頭のU音と連結して「スマ」となった)(なお、「すみ(隅)」は、「ツ・ウミ」、TU-UMI(tu=stand,settle;(Hawaii)umi=to strangle,choke,throttle)、「窒息してしまう・場所に居る(隅)」(「ツ」が「ス」となり、その語尾のU音が「ウミ」の語頭のU音と連結して「スミ」となった)と解します。)

  「カヱ・コタオ」、KAWE-KOTAO(kawe=carry,bring(kawe ke=divert,change);kotao=cool)、「冷静に(判断して行う)・交換(交換)」(「カヱ」のW音が脱落して「カエ」と、「コタオ」ののAO音がO音に変化して「コト」となった)

  「ポコ」、POKO(go out as fire,be extinguished)、「火が消えたような(値打ちのないさま)」(「ポコ」が「ボッコ」となった)

  「アチ・コチヒ」、ATI-KOTIHI(ati=beginning;kotihi=top,summit)、「頂上から・(登山を)始める(さかさまだ)」(「コチヒ」のH音が脱落して「コチ」となった)

の転訛と解します。

[滋賀県]

325うみ(琵琶湖)・ほっこりする・おため・〜ほん・かにここ・〜わいなー・かなん・〜のーえー・ごもく・にゅー・ほえない・もんどり・どんつき・よさり

 滋賀県の代表的な方言には、「うみ」(琵琶湖)、「ほっこりする」(疲れる)、「いかい」(大きい)(前出国語篇(その十四)の022おおきい(大きい)の項を参照してください。)、「なんど」(おやつ)(前出国語篇(その十四)の061かんしょく(間食)の項を参照してください。)、「ほたえる」(騒ぐ)(前出国語篇(その十五)の087さわぐ(騒ぐ)の項を参照してください。)、「おため」(返礼の品)、「〜ほん」(〜よね)、「もんてくる」(帰って来る)(前出国語篇(その十六)の208もどる(もどる)の項を参照してください。)、「かにここ」(やっと)、「〜わいなー」(〜よね)、「かなん」(やりきれない)、「〜のーえー」(〜なあ)、「ごもく」(ごみ)、「にゅー」(藁・草を積んだ物)、「ほえない」(あっけない)、「きる」(かぶる)(前出国語篇(その十四)の052かぶる(被る)の項を参照してください。)、「もんどり」(魚獲り用の竹籠)、「だんない」(差し支えない)(前出三重県の「だんない(構わない)」の項を参照してください。)、「どんつき」(突き当たり)、「いとしげない」(かわいそう)(前出国語篇(その十四)の059かわいそう(可哀相)の項を参照してください。)、「よさり」(夜)があります。

 この「うみ」、「ほっこりする」、「おため」、「〜ほん」、「かにここ」、「〜わいなー」、「かなん」、「〜のーえー」、「ごもく」、「にゅー」、「ほえない」、「もんどり」、「どんつき」、「よさり」は、

  「フミ」、HUMI(abundant,abundance)、「とてつもなく大きい(海。湖)(琵琶湖)」(H音が脱落して「ウミ」となった)

  「ホ・コリ・ツル」、HO-KORI-TURU(ho=put out the lips(a mark of derision),droop;kori=move,wriggle,bestir oneself;turu=last a short time)、「弱々しい・動きを・する(疲れる)」(「ホ」が「ホッ」と、「ツル」が「スル」となった)(前出国語篇(その十五)の139つかれた(疲れた)の項の「ほっこりした」を参照してください。)

  「アウタハ・メア」、AUTAHA-MEA(autaha=eddy,to one side;mea=thing,reason)、「相手側へ(贈る)・品物(返礼の品)」(「アウタハ」のAU音がO音に変化し、H音が脱落して「オタ」と、「メア」の語尾のA音が脱落して「メ」となった)

  「ホノ」、HONO(be on the point of,proceed to do)、「ほんとにそうだよね(〜よね)」(「ホノ」が「ホン」となった)

  「カニ・ココ」、KANI-KOKO(kani=rub backwards and forwards,saw;koko=dig or plant with a ko,dig up)、「鍬を前後に揮って・(固い土を)耕すように(やっと)

  「ワイ(ン)ガ」、WAINGA(=wai=memory,recollections of words heard or instruction given)、「(聞いたり、教えられたりした言葉を)思い出すよね(〜よね)」(NG音がN音に変化して「ワイナー」となった)

  「カナ・ワナ」、KANA-WHANA(kana=stare wildly,bewitch;whana=recoil,spring back)、「(人に)魔法をかけようとしても・後退してしまう(不可能だ)(やりきれない)」(「カナ」の語尾のA音と、「ワナ」のWH音が脱落して「アナ」となったその語頭のA音が連結して「カナン」となった)

  「ノヘア」、NOHEA(whence)、「どうして(そんなことになるのか、またはしなければならないのか)(〜なあ)」(H音および語尾のA音が脱落して「ノーエ」となった)(例文の「そんなこと言われたけんど、かなんノーエー」により解釈しました。)

  「(ン)ガウ・マウ・ク」、NGAU-MAU-KU(ngau=bite,hurt,attack,wander,go about;mau,maumau=waste,to no purpose;ku=firm,stiff,not fluid or watery)、「ばらばらの・うち捨てられた・固形物(ごみ)」(「(ン)ガウ」のNG音がG音に、AU音がO音に変化して「ゴ」と、「マウ」のAU音がO音に変化して「モ」となった)

  「ニウ」、NIU(small sticks used for purposes of divinations,dress timber smooth with an axe)、「(占いで使った)木の細棒(藁・草を積んだ物)」(「ニウ」が「ニュー」となった)

  「ホヘ・ナイ」、HOHE-NAI(hohe=active,strong;nai=nei,neinei=stretched forward,reaching out)、「(元気で)さっさと進んだ(あっけない)」(「ホヘ」の語尾のH音が脱落して「ホエ」となった)

  「モノ・ト・オリ」、MONO-TO-ORI(mono=disable by means of incantations;to=drag;ori=cause to wave to and fro,sway,move about)、「(魚が)魔法に掛けられたように無抵抗で・泳いで・(竹籠に)引き入れられる(魚獲り用の竹籠)」(「モノ」が「モン」と、「ト」の語尾のO音が「オリ」の語頭のO音と連結して「ドリ」となった)

  「トノ・ツキ」、TONO-TUKI(tono=still,quite,just,only;tuki=pound,beat,attack)、「まさに・突き当たった場所(突き当たり)」(「トノ」が「ドン」となった)突き当たり

  「イホ・オタ・アリ」、IHO-OTA-ARI(iho=that wherein consists the strength of a thing as of an army etc.;ota=unripe,refuse;ari=clear,visible)、「(月光で)明るく清らかな・(未熟の)まだ更けない・(連続した)時間(夜)」(「イホ」のH音が脱落して「イオ」から「ヨ」となり、その語尾のO音が「オタ」の語頭のO音と連結して「ヨタ」から「ヨサ」となり、その語尾のA音が「アリ」の語頭のA音と連結して「ヨサリ」となった)

の転訛と解します。

[京都府]

326〜どす(〜です)・おす・〜え・おいでやす・おやかまっさん・おーきに・あらしゃります・たも・はんなり・のんどり・まったり・いもぼー・おすもじ・むしやしない・おしょらいさん・おしたき・しょーもない・しんどい・こそばい・きさんじ

 京都府の代表的な方言には、「〜どす」(〜です)、「おす」(あります)、「〜え」(〜よ)、「おいでやす」(いらっしゃい)、「おやかまっさん」(お邪魔しました)、「おーきに」(ありがとう)、「あらしゃります」(ございます)、「たも」(ください)、「はんなり」(華やか)、「のんどり」(のんびりゆったりと)、「まったり」(柔らかくコクがある)、「いもぼー」(里芋と棒鱈の煮物)、「おすもじ」(お寿司)、「むしやしない」(空腹時の軽食)、「おしょらいさん」(お精霊様)、「おしたき」(お火焚き)、「しょーもない」(つまらない)、「しんどい」(苦しい)、「こそばい」(くすぐったい)、「きさんじ」(快活であるようす)があります。

 この「〜どす」、「おす」、「〜え」、「おいでやす」、「おやかまっさん」、「おーきに」、「あらしゃります」、「たも」、「はんなり」、「のんどり」、「まったり」、「いもぼー」、「おすもじ」、「むしやしない」、「おしょらいさん」、「おしたき」、「しょーもない」、「しんどい」、「こそばい」、「きさんじ」は、

  「タウ・ツ」、TAU-TU(tau=come to rest,settle down,be suitable;tu=stand,settle)、「ゆったりと・(休んで)居る(〜です)」(「タウ」のAU音がO音に変化して「ド」と、「ツ」が「ス」となった)

  「アウ・ツ」、AU-TU(au=firm,intense;tu=stand,settle)、「(物の実体が)きちんと・存在する(あります)」(「アウ」のAU音がO音に変化して「オ」と、「ツ」が「ス」となった)(なお、「おす」の反対語の「おへん」は、「アウ・ヘヌミ」、AU-HENUMI(au=firm,intense;henumi=be out of sight,disappear behind anything)、「(物の実体が)きちんとあったものが・見えなくなった(ありません)」(「アウ」のAU音がO音に変化して「オ」と、「ヘヌミ」の語尾の「ミ」が脱落して「ヘン」となった)と解します。)

  「エ」、E(to give emphasis)、「〜だ(〜よ)」

  「オイ・タイア・ツ」、OI-TAIA-TU(oi=shudder,move continuously;taia=by and by;tu=stand,settle)、「(お客が)歩いて・今・到着した(いらっしゃい)」(「タイア」のAI音がE音に変化して「テア」から「デヤ」と、「ツ」が「ス」となった)

  「オ・イア・カマ・ツ・タ(ン)ギ」、O-IA-KAMA-TU-TANGI(o=the...of;ia=indeed;kama=eager;tu=fight with,energetic;tangi=sound,cry,weep)、「例によって・実に・熱心に・懸命に・大声を上げました(お邪魔しました)」(「イア」が「ヤ」と、「ツ」が「ッ」と、「タ(ン)ギ」のNG音がN音に変化して「タニ」から「サン」となった)

  「オホ・キ・ニヒ」、OHO-KI-NIHI(oho=wake up,arise of feelings;ki=full,very;nihi=steep,move stealthly,surprise)、「(感謝の気持ちが)びっくりするほど・たくさん・湧いて来た(ありがとう)」(「オホ」のH音が脱落して「オオ」から「オー」と、「ニヒ」のH音が脱落して「ニ」となった)

  「アラ・チ・アリ・マツ」、ARA-TI-ARI-MATU(ara=rise,raise;ti=throw,cast;ari=clear,visible;matu=ma atu=go,come)、「(人、事柄の存在が)明らかに・現れ・出でて・やってきた(ございます)」(「チ・アリ」が「シャリ」と、「マツ」が「マス」となった)

  「タマウ」、TAMAU(fasten,love ardently,betroth)、「熱烈に(愛する)欲している(ください)」(AU音がO音に変化して「タモ」となった)

  「ハナ・(ン)ガリ」、HANA-NGARI(hana=shine,glow,flame;ngari=greatness,power,annoyance)、「輝くようで・力がある(華やか)」(「ハナ」が「ハン」と、「(ン)ガリ」のNG音がN音に変化して「ナリ」となった)

  「ノホア(ン)ガ・タウ・オリ」、NOHOANGA-TAU-ORI(nohoanga=seat;tau=come to rest,settle down,be suitable;ori=cause to wave to and fro,sway,move about)、「席について・休息して・ぶらぶらと歩く(のんびりゆったりと)」(「ノホア(ン)ガ」のH音が脱落し、NG音がN音に変化して「ノナ」から「ノン」と、「タウ」のAU音がO音に変化して「ド」となり、その語尾のO音が「オリ」の語頭のO音と連結して「ドリ」となった)(なお、「のんびり」は、「ノホア(ン)ガ・ピリ(ン)ガ」、NOHOANGA-PIRINGA(nohoanga=seat;piringa=hiding place,place of retirement)、「引退して(または隠れ家で)・席について(休息して)いる(のんびり)」(「ノホア(ン)ガ」のH音が脱落し、NG音がN音に変化して「ノナ」から「ノン」と、「ピリ(ン)ガ」の語尾のNGA音が脱落して「ビリ」となった)と解します。)

  「マタ・ハリ」、MATA-HARI(mata=raw,uncooked,unripe,fresh;hari=dance,feel or show gladness)、「新鮮で・(人の)舌を喜ばせる(柔らかくコクがある)」(「マタ」が「マッタ」となり、その語尾のA音が、「ハリ」のH音が脱落して「アリ」となったその語頭のA音と連結して「マッタリ」となった)

  「イヒ・マウ・ポウ」、IHI-MAU-POU(ihi=split,separate;mau=carry,take up;pou=pole,stake)、「(地上の)茎から切り離して・収穫するもの(芋)と・棒のようになったもの(棒鱈)と(里芋と棒鱈の煮物)」 (「イヒ」のH音が脱落して「イ」と、「マウ」のAU音がO音に変化して「モ」と、「ポウ」が「ボー」となった)(なお、「たら(鱈)」については、雑楽篇(その二)の728たら(鱈)の項を参照してください。)

  「アウ・ツイ・モチ」、AU-TU-MOTI(au=firm,intense;tui=pierce,hurt,sew;moti=consumed,surfeited)、「舌を刺す(刺激のあるもの=酢)を・しっかりと・(飽食した)十分に取り入れたもの(お寿司)」(「アウ」のAU音がO音に変化して「オ」と、「ツイ」の語尾のI音が脱落して「ス」と、「モチ」が「モジ」となった)

  「ム・ウチ・イア・チナ・アイ」、MU-UTI-IA-TINA-AI(mu=insects;uti,utiuti=annoy,worry;ia=indeed;tina=fixed,satisfied,contented;ai=expressing the reason for which anything is done)、「(空腹になると)腹を悩ませる・虫を・実に・満足させて・しまうもの(空腹時の軽食)」(「ム」の語尾のU音が「ウチ」の語頭のU音と連結して「ムシ」と、「イア」が「ヤ」と、「チナ」の語尾のA音が「アイ」の語頭のA音と連結して「シナイ」となった)

  「オ・チオラ・アイ・タナ」、O-TIORA-AI-TANA(o=the...of;tiora=split,marauding party;ai=expressing the reason for which anything is done;tana=his,her,its)、「例の・(この世と)離れた世界から・やってきた・彼(彼女)たち(お精霊様)」(「チオラ」が「ショラ」となり、その語尾のA音が「アイ」の語頭のA音と連結して「ショライ」と、「タナ」が「サン」となった)

  「オチ・タキ」、OTI-TAKI(oti=finished,gone or come for good;taki=lead,begin a speech,entice,conduct)、「(火が)具合良く(燃えるように)・導く行事(お火焚き)」(「オチ」が「オシ」となった)(なお、古くは「ほたけ」、「おほたき」と呼んでいました。この「ほたけ」は、「ハウ・タケ」、HAU-TAKE(hau=eager,brisk;take=stump,cause,beginning)、「(新年の初めに火が)勢いよく(燃えるようにする)・(火を祀る)初めの行事」(「ハウ」のAU音がO音に変化して「ホ」となった)と、「おほたき」は、「オ・ハウ・タキ」、O-HAU-TAKI(o=the...of;hau=eager,brisk;taki=lead,begin a speech,entice,conduct)、「例の・(新年の初めに火が)勢いよく(燃えるように)・導く(火を祀る)行事」(「ハウ」のAU音がO音に変化して「ホ」となった)と解します。)

  「チオホ・オモ・ナイ」、TIOHO-OMO-NAI(tioho=apprehensive;(Hawaii)omo=to suck,absorb,gasp;nai=nei,neinei=stretched forward,reaching out)、「心配を・吸い・尽くす(心配の甲斐がない)(つまらない)」(「チオホ」のH音が脱落して「ショオ」となり、その語尾のO音が「オモ」の語頭のO音と連結して「ショーモ」となった)

  「チニ・トイ」、TINA-TOI(tini=very many,caulk;toi=tingle,be galled,be irritated)、「ひどく・苦しい(苦しい)」(「チニ」が「シニ」から「シン」と、「トイ」が「ドイ」となった)

  「コト・パイ」、KOTO-PAI(koto=loathing,averse;pai=good,excellent)、「(一種の快感があって)我慢できずに・いやがる感じ(くすぐつたい)」(「コト」が「コソ」と、「パイ」が「バイ」となった)

  「キタ・ナチ」、KITA-NATI(kita=sing,stridulate;nati=pinch or contract)、「(蝉のように)歌を歌い続ける気質が・身に付いている(快活であるようす)」(「キタ」が「マサ」と、「ナチ」が「ンジ」となった)

の転訛と解します。

[大阪府]

327おーきに(ありがとう)・〜ねん・あかんたれ・いらち・いけず・えげつない・わや・〜がな・けったい・すかたん・ちゃらんぽらん・ちゃう・〜だす・どんならん・もみない・よーいわんわ・あほらしー・おはよーおかえり

 大阪府の代表的な方言には、「おーきに」(ありがとう)(前出京都府の「おーきに(ありがとう)」の項を参照してください。)、「〜ねん」(〜のよ)、「あかんたれ」(どうしようもない性格)、「ぼちぼち」(そろそろ)(前出国語篇(その十六)の213ゆっくりの項を参照してください。)、「いらち」(短気者)、「いけず」(いじわる)、「えげつない」(ひどい)、「わや」(無茶苦茶だ)、「〜がな」(〜じゃないか)、「けったい」(妙だ)、「すかたん」(でたらめ)、「ずぼら」(無精だ)(前出国語篇(その十六)の182ぶしょう(無精)の項を参照してください。)、「こすい」(ずるい)(前出国語篇(その十五)の113ずるい(狡い)の項を参照してください。)、「ちゃらんぽらん」(いいかげんだ)、「ちゃう」(違う)、「〜だす」(〜です)、「どんならん」(どうにもならない)、「もみない」(まずい)、「よーいわんわ」(呆れるわ)、「いちびる」(悪ふざけする)(前出国語篇(その十六)の181ふざける(巫山戯る)の項を参照してください。)、「あほらしー」(ばかばかしい)、「おはよーおかえり」(いってらっしゃい)、「はんなり」(華やか)(前出京都府の「はんなり(華やか)」の項を参照してください。)があります。

 この「〜ねん」、「あかんたれ」、「いらち」、「いけず」、「えげつない」、「わや」、「〜がな」、「けったい」、「すかたん」、「ちゃらんぽらん」、「ちゃう」、「〜だす」、「どんならん」、「もみない」、「よーいわんわ」、「あほらしー」、「おはよーおかえり」は、

  「ネネ」、NENE(calling attention,jest,be saucy)、「〜するのだ(〜のよ)」(「ネネ」が「ネン」となった)

  「ア・カナ・タレ」、A-KANA-TARE(a=the...of,drive,urge,compel;kana=stare wildly,bewitch;tare=hang,gasp for breath,be intent upon)、「(気に入らない気持ちを表す)強く・睨み据えられる(駄目な性格を)・ぶら下げている(どうしようもない性格)」(「カナ」が「カン」となった)

  「イラ・チ」、IRA-TI(ira=freckle,variegated,glitter;ti=throw,cast)、「くるくる変わる気分を・(人に)ぶつける人(短気者)」

  「イケ・ツ」、IKE-TU(ike=strike with a hammer or other heavy instrument;tu=fight with,energetic)、「(人を)懸命に・金槌で叩くようにひどい仕打ちをする(いじわる)」(「ツ」が「ズ」となった)

  「エ・(ン)ゲ・ツ・ナイ」、E-NGE-TU-NAI(e=to give emphasis;nge=noise,screech;tu=fight with,energetic;nai=nei,neinei=stretched forward,reaching out)、「とてつもなく・懸命に・悲鳴を・上げ続ける(ひどい)」(「(ン)ゲ」のNG音がG音に変化して「ゲ」となった)

  「ワイア」、WHAIA(bewitch,injure by spells)、「魔法にかけられたように状況が悪化する(無茶苦茶だ)」(WH音がW音に変化して「ワヤ」となった)

  「(ン)ガナ」、NGANA(be eagerly intent,persist,obstinate,strong)、「(〜に)強く主張する(〜じゃないか)」(NG音がG音に変化して「ガナ」となった)

  「ケ・ツタイ」、KE-TUTAI(ke=strange,different;tutai=watch,spy,sentry)、「観察すると・おかしい(妙だ)」(「ツタイ」が「ッタイ」となった)

  「ツ・カタ・ナ」、TU-KATA-NA(tu=fight with,energetic;kata=laugh,laugh at;na=by,belonging to,by reason of)、「(あてがはずれたこと、だまされたこと、まぬけな見当違いをしたことなどを)笑い・飛ばして・しまう(でたらめ)」(「ツ」が「ス」と、「ナ」が「ン」となった)

  「チア・ラ(ン)ガ・ポラ(ン)ガ」、TIA-RANGA-PORANGA(tia=stick in,adorn by sticking in feathers;ranga=raise,pull up;poranga=float)、「高く・登ったり・漂流したり(いいかげんだ)」(「チア」が「チャ」と、「ラ(ン)ガ」のNG音がN音に変化して「ラナ」から「ラン」と、「ポラ(ン)ガ」のNG音がN音に変化して「ポラナ」から「ポラン」となった)

  「チ・アフ」、TI-AHU(ti=aqueak,make a sharp inarticulate sound;ahu=move in a certain direction,point in a certain direction)、「(人が)ある方向へ進むのを・咎めて甲高い声を上げる(違う)」(「アフ」のH音が脱落して「アウ」となり、「チ・アウ」から「チャウ」となった)

  「タツ」、TATU(reach the bottom,be at ease,be content,agree)、「(〜に)同意する(〜です)」(「タツ」が「ダス」となった)

  「ト(ン)ガ(ン)ガ・ラ(ン)ガ」、TONGANGA-RANGA(tonganga=uncooked,raw,broken;ranga=raise,pull up(rangaa=rush,charge))、「何かをしようとしても・こわれていてできない(どうにもならない)」(「ト(ン)ガ(ン)ガ」のNG音がN音に変化して「トナナ」から「ドンナ」と、「ラ(ン)ガ」のNG音がN音に変化して「ラナ」から「ラン」となった)

  「モミ・ナイ」、MOMI-NAI(momi=suck,suck up,swallowed up;nai=nei,neinei=stretched forward,reaching out)、「(味が)吸い・尽くされた(まずい)」

  「イ・オイ・ワナワナ」、I-OI-WANAWANA(i=past tense;oi=shout,shudder,move comtinuously,agitate;wanawana=spines,bristle,fear,thrill)、「(怒り)驚いて・叫び声を・あげた(呆れるわ)」(「イ・オイ」が「ヨーイ」と、「ワナワナ」の語尾のNA音が脱落して「ワンワ」となった)

  「ア・ホラ・チヒ」、A-HORA-TIHI(a=the...of,as far as;hora=scatter over a surface,spread out;tihi=summit,top)、「例の・最高に・風呂敷を広げた話をする(ばかばかしい)」(「チヒ」が「「シイ」となった)

  「オハ・イオ・オカカ・ヘイ・リ」、OHA-IO-OKAKA-HEI-RI(oha=greet;io=tough,obstinate;okaka=feel a longing,be eager;hei=go towards,turn towards;ri=shut out with a screen)、「障害を排除して・帰ることを・強く願うと・念を押して・挨拶する(いってらっしゃい)」(「イオ」が「ヨー」と、「オカカ」の反復語尾が脱落して「オカ」と、「ヘイ」のH音が脱落して「エ」となった)

の転訛と解します。

[兵庫県]

328〜しとー(〜している)・〜てや・ありかー・つれ・ねっから・ほな・〜どい・よーさん・ごーがわく・じょら・たんのする・いぬ

 兵庫県の代表的な方言には、「〜しとー」(〜している)、「〜てや」(お〜になる)、「ほかす」(捨てる)(前出国語篇(その十五)の110すてる(捨てる)の項を参照してください。)、「なおす」(片付ける)(前出国語篇(その十四)の047かたづける(片付ける)の項を参照してください。)、「ずつない」(苦しい)(前出国語篇(その十五)の141つらい(辛い)の項の「ずつない」を参照してください。)、「さんこにする」(散らかす)(前出国語篇(その十五)の131ちらかす(散らかす)の項を参照してください。)、「てれくさい」(恥ずかしい)(前出国語篇(その十六)の167はずかしい(恥ずかしい)の項を参照してください。)、「ありかー」(してよいのか)、「つれ」(友達)、「すけない」(少ない)(前出国語篇(その十五)の107すくない(少ない)の項を参照してください。)、「ねっから」(ぜんぜん)、「ほな」(それでは)、「どつく」(殴る)(前出国語篇(その十六)の153なぐる(殴る)の項を参照してください。)、「〜どい」(〜だい)、「こまい」(小さい)(前出国語篇(その十五)の129ちいさい(小さい)の項を参照してください。)、「よーさん」(たくさん)、「ごーがわく」(腹が立つ)、「じょら」(あぐら)、「せんどぶり」(久しぶり)(前出国語篇(その十六)の172ひさしぶり(久しぶり)の項を参照してください。)、「いてる」(凍る)(前出国語篇(その十四)の074こおる(凍る)の項を参照してください。)、「かげんだ」(日陰)(前出国語篇(その十六)の171ひかげ(日陰)の項を参照してください。)、「たんのする」(退屈する)、「いぬ」(帰る)があります。

 この「〜しとー」、「〜てや」、「ありかー」、「つれ」、「ねっから」、「ほな」、「〜どい」、「よーさん」、「ごーがわく」、「じょら」、「たんのする」、「いぬ」は、

  「チト」、TITO(do anything without previous practice)、「(行きあたりばったりで)行動する(〜している)」(「チト」が「シトー」となった)

  「タイア」、TAIA(by and by)、「すぐに〜する(お〜になる。尊敬語)」(AI音がE音に変化して「テア」から「テヤ」となった)

  「アリ・カ」、ARI-KA(ari=clear,visible,appearance;ka=to denote the commencement of a new action or condition)、「(ある行動をとる)姿を見せ・つける(してよいのか)」(「カ」が「カー」となった)

  「ツ・ウレ」、TU-URE(tu=stand,settle;ure=man,male)、「男子として・同席する者(友達)」(「ツ」のU音が「ウレ」の語頭のU音と連結して「ツレ」となった)

  「ネ・ツカハ・ハラ」、NE-TUKAHA-HARA(ne=giving emphasis to a question or request or proposal;tukaha=strenuous,vigorous,hasty,passionate;hara=violate tapu,sin,offence)、「熱烈に(反省なく)・罪を犯して・いる(ぜんぜん)」(「ツカハ」のH音が脱落して「ッカ」となり、その語尾のA音が、「ハラ」のH音が脱落した「アラ」の語頭のA音と連結して「ッカラ」となった)

  「ホ(ン)ガ」、HONGA(tilt,make to lean on one side)、「別の方向へ向かう(それでは)」(NG音がN音に変化して「ホナ」となった)

  「トイ」、TOI(move quickly,trot,encourage,incite)、「急いで行動する(〜だい)」(「トイ」が「ドイ」となった)

  「イホ・タ(ン)ガ」、IHO-TANGA(iho=up above,downwards,denoting immediate sequence of events or ideas;tanga=be assembled)、「山のように・集まった(たくさん)」(「イホ」のH音が脱落して「イオ」から「ヨー」と、「タ(ン)ガ」のNG音がN音に変化して「タナ」から「サン」となった)

  「(ン)ゴ(ン)ガ・ハク」、NGONGA-HAKU(ngonga=beaten,crushed;haku=complain of,find fault with)、「不平不満が・(外へ出ずに身体の中に)鬱積した(腹が立つ)」(「(ン)ゴ(ン)ガ」のNG音がG音に変化して「ゴーガ」と、「ハク」が「ワク」となった)

  「チ・オラ」、TI-ORA(ti=throw,cast;ora=alive,well in health,safe)、「楽な姿勢に・身体を置く(あぐら)」(「チ・オラ」が「チョラ」から「ジョラ」となった)

  「タ(ン)ガ(ン)ガオ・ツル」、TANGANGAO-TURU(tangangao=subside;turu=last a short time)、「(感情が)静まった・状態になる(退屈する)」(「タ(ン)ガ(ン)ガオ」のNG音がN音に、AO音がO音に変化して「タナノ」から「タンノ」と、「ツル」が「スル」となった)

  「イ・(ン)グ(ン)グ」、I-NGUNGU(i=from,beside,with,by,at;ngungu=glance off,turn aside(whakangungu=defend,protect,shield))、「(人を保護するもの)ねぐらに・向かう(帰る)」(「(ン)グ(ン)グ」の反復語尾が脱落し、NG音がN音に変化して「ヌ」となった)

の転訛と解します。

[奈良県]

329まわり(したく)・ぐいち・きける・〜いす・〜やいす・まとう・やりこい・とこねん・はんざいこ・もむない・えー・とこぎり・なかなか・げんろく・あんじょー・ねがう・はそんする・〜みー・きたなか・はんつ

 奈良県の代表的な方言には、「まわり」(したく)(前出国語篇(その十五)の092したく(支度)の項を参照してください。)、「ぐいち」(ちぐはぐなさま)、「きける」(疲れる)、「〜いす・〜やいす」(〜ます)、「ろっく」(平らなようす)(前出国語篇(その十六)の178ひらたい(平たい)の項を参照してください。)、「まとう」(弁償する)、「やりこい」(やわらかい)、「とこねん」(夕涼みの台)、「はんざいこ」(物のすきま)、「おとろしー」(めんどうくさい)(前出国語篇(その十六)の206めんどう(面倒)の項を参照してください。)、「もむない」(まずい)、「えー」(良い)、「ほーせき」(おやつ)(前出国語篇(その十四)の061かんしょく(間食)の項を参照してください。)、「とこぎり」(徹底的に)、「なかなか」(どういたしまして)、「げんろく」(ひざがしら)、「あんじょー」(うまく)、「ねがう」(訴える)、「けなるい」(うらやましい)(前出国語篇(その十四)の017うらやましい(羨ましい)の項を参照してください。)、「はそんする」(修理する)、「〜みー」(〜ねー)、「きたなか」(半分)、「はんつ」(半端なさま)があります。

 この「ぐいち」、「きける」、「〜いす・〜やいす」、「まとう」、「やりこい」、「とこねん」、「はんざいこ」、「もむない」、「えー」、「とこぎり」、「なかなか」、「げんろく」、「あんじょー」、「ねがう」、「はそんする」、「〜みー」、「きたなか」、「はんつ」は、

  「(ン)グ(ン)グ・イチ」、NGUNGU-ITI(ngungu=eat,greedily,gnau;iti=small)、「少し・(食いちぎられている)小さい(ちぐはぐなさま)」(「(ン)グ(ン)グ」の反復語尾が脱落し、NG音がG音に変化して「グ」となった)

  「キ・カイ・ル」、KI-KAI-RU(ki=full,very;kai=consume,eat;ru=shake,agitate,scatter)、「たいへん・消耗・する(疲れる)」(「カイ」のAI音がE音に変化して「ケ」となった)(前出国語篇(その十五)の133つかれた(疲れた)の項を参照してください。)

  「(イア・)イ・ツ」、(IA-)I-TU(ia=indeed;i=past tense;tu=stand,settle)、「(実に・)そこに・いる(〜ます)」(「イア」が「ヤ」と、「ツ」が「ス」となった)

  「マ・トウ」、MA-TOU(ma=for,by means of,by way of;tou=wet,plant(toutou=put articles into a receptacle,offer and withdraw))、「(失った物、価値を)別のものによって・取り戻す(弁償する)」

  「イア・リヒ・コイ」、IA-RIHI-KOI(ia=indeed;rihi=flat;koi=move about)、「実に・平らに・伸ばしやすい(やわらかい)」(「イア」が「ヤ」と、「リヒ」のH音が脱落して「リ」となった)

  「タウ・コネネ」、TAU-KONENE(tau=come to rest,be suitable;konene=stranger,wanderer,person belonging to a tribe which has been broken up and scattered)、「(夕涼みに)散策する人たちが・休息するもの(夕涼みの台)」(「タウ」のAU音がO音に変化して「ト」と、「コネネ」が「コネン」となった)

  「パナ・タイ・カウ」、PANA-TAI-KAU(pana=thrust or drive away,expel,cause to come or go forth in any way;tai,taitai=dash,strike,knock;kau=swim,wade)、「(蛇が)身をくねらせて・(物のすきまに)押し・入り込む(物のすきま)」(「パナ」のP音がF音を経てH音に変化して「ハン」と、「タイ」が「ザイ」と、「カウ」のAU音がO音に変化して「コ」となった)

  「モ・ムフ・ナイ」、MO-MUHU-NAI(mo=for,for the benefit of;muhu=stupid,untaught,incorrect;nai=nei,neinei=stretched forward,reaching out)、「(味が)もともと・ぼけて・しまっている(まずい)」(「ムフ」のH音が脱落して「ム」となった)

  「エヒ」、EHI(well)、「良い(感嘆詞)(良い)」(H音が脱落して「エイ」から「エー」となった)

  「トコ・(ン)ギア・イリ」、TOKO-NGIA-IRI(toko=begin to move,spring up in the mind of feelings and emotions;ngia=seem,appear to be;iri=be elevated on something,hang)、「(気持ちを)奮い立たせて・別人のように・高揚した境地に置いて(勉強する)(徹底的に)」(「(ン)ギア」のNG音がG音に変化し、語尾のA音が脱落して「ギ」となり、その語尾のI音が「イリ」の語頭のI音と連結して「ギリ」となった)

  「ナカナカ」、NAKANAKA(move to or from)、「(お礼を言われたことに対して私の気持ちは)揺れています(どういたしまして)」

  「(ン)ゲネ・ロク」、NGENE-ROKU(ngene=wrinkle,fold,fat;roku=bend,be weighed down)、「曲がる(関節の)・肥った箇所(ひざがしら)」(「(ン)ゲネ」のNG音がG音に変化して「ゲネ」から「ゲン」となった)

  「アナ・チオホ」、ANA-TIOHO(ana=denotes a temporary condition,a continuing action,or an action intended to be performed immediately;)、「心配しながら・(予期した通り)事が進んだ(うまく)」(「アナ」が「アン」と、「チオホ」のH音が脱落して「チオオ」から「ジョー」となった)

  「ネ・(ン)ガフ」、NE-NGAHU(ne=giving emphasis to a question or request or proposal;ngahu=drive home,fix)、「強く・論じて納得、理解させる(訴える)」(「(ン)ガフ」のNG音がG音に変化し、H音が脱落して「ガウ」となった)

  「ハハ・タウ(ン)ガ・ツル」、HAHA-TAUNGA-TURU(haha=seek,look for,procure;taunga=resting place;turu=last a short time)、「(船を)ドックに入れて・良好な状態に・する(修理する)」(「ハハ」の反復語尾が脱落して「ハ」と、「タウ(ン)ガ」のAU音がO音に、NG音がN音に変化して「トナ」から「ソン」と、「ツル」が「スル」となった)

  「ミヒ」、MIHI(greet)、「もしもし(〜ねー)」(「ミヒ」のH音が脱落して「ミー」となった)

  「キタ・ナカ」、KITA-NAKA(kita=tightly,fast;naka=denoting position near or condition;(Hawaii)naka=to crack open)、「(二つに)割れて・小さくなった(半分)」

  「ハ(ン)ガイ・ツ」、HANGAI-TU(hangai=opposite,across,astride;tu=stand,settle)、「二股を・懸けている(半端なさま)」(「ハ(ン)ガイ」のNG音がN音に変化し、語尾のI音が脱落して「ハナ」から「ハン」となった)

の転訛と解します。

[和歌山県]

330〜のし(〜ねえ)・〜ら・おたぐら・あが・やつす・はしりごく・ぎり・べった・おもしゃい・いっけ・まっさけ・てき・いずまえ・あらして・へらこい・ある・あいや・だすい

 和歌山県の代表的な方言には、「〜のし」(〜ねえ)、「〜ら」(〜よ)、「おたぐら」(あぐら)、「あが」(私の)、「やつす」(おめかしする)、「こーと」(地味だ)(前出国語篇(その十五)の097じみ(地味)の項を参照してください。)、「もむない」(おいしくない)(前出奈良県の「もむない(まずい)」の項を参照してください。)、「おとろし」(恐ろしい)(前出国語篇(その十四)の030おそろしい(恐ろしい)の項を参照してください。)、「おがる」(叫ぶ)(前出国語篇(その十五)の082さけぶ(叫ぶ)の項を参照してください。)、「はしりごく」(かけっこ)、「ぎり」(つむじ)、「べった」(びり)、「おもしゃい」(面白い)、「いっけ」(親戚)、「まっさけ」(彼岸花)、「てき」(あいつ)、「いずまえ」(行儀)、「あらして」(あるじゃないか)、「へらこい」(なれなれしい)、「でばつく」(ものもらい)(前出国語篇(その十六)の209ものもらい(麦粒腫)の項を参照してください。)、「ある」(いる)、「あいや」(ああ)、「だすい」(粗い)があります。

 この「〜のし」、「〜ら」、「おたぐら」、「あが」、「やつす」、「はしりごく」、「ぎり」、「べった」、「おもしゃい」、「いっけ」、「まっさけ」、「てき」、「いずまえ」、「あらして」、「へらこい」、「ある」、「あいや」、「だすい」は、

  「ノチ」、NOTI(pinch or contract as with a band or ligature(whakanoti=cover fire with ashes to prevent it from burning quickly out))、「(暑さが)身に張り付くようだ(〜ねえ)」(「ノチ」が「ノシ」となった)(この解釈は、例文の「今日は暑いノシ」によりました。)

  「ラ」、RA(there,yonder)、「そこへ(連れて行こう)(〜よ)」(この解釈は、例文の「連れて持て行こラ」によりました。)

  「ホタ・ハ(ン)グ・ウラ(ン)ガ」、HOTA-HANGU-URANGA(hota=press on;hangu=dumb,quiet,not talkative;uranga=act or circumstance etc. of becoming firm)、「(席に)座り込み・無言で・固まってしまっている(あぐら)」(「ホタ」のH音が脱落して「オタ」と、「ハ(ン)グ」のH音が脱落し、NG音がG音に変化して「アグ」となり、「オタ」の語尾のA音が「アグ」の語頭のA音と連結して「オタグ」と、「ウラ(ン)ガ」の名詞形語尾のNGA音が脱落して「ウラ」となり、「オタグ」の語尾のU音が「ウラ」の語頭のU音と連結して「オタグラ」となった)

  「ア(ン)ガ」、ANGA(face or move in a certain direction,turn to doing anything)、「あたりを見回すもの(私の)」(NG音がG音に変化して「アガ」となった)

  「イア・ツツ」、IA-TUTU(ia=indeed;tutu=stand erect,be prominent)、「実に・目立つようにする(おめかしする)」(「イア」が「ヤ」と、「ツツ」が「ツス」となった)

  「パチ・リ(ン)ゴ・ク」、PATI-RINGO-KU(pati=ooze,spurt,sprush;ringo=a variety of eel;ku=silent)、「(大きな)鰻が・静かに・奔流のように走るような(かけっこ)」(「パチ」のP音がF音を経てH音に変化して「ハチ」から「ハシ」と、「リ(ン)ゴ」のNG音がG音に変化して「リゴ」となった)

  「(ン)ギア・リ」、NGIA-LI(ngia=seem,appear to be;(Hawaii)li=to furl or reef as a sail)、「(頭の毛が帆を巻くように)巻いている・ように見える(つむじ)」(「(ン)ギア」のNG音がG音に変化し、語尾のA音が脱落して「ギ」となった)

  「パエ・ツ・タハ」、PAE-TU-TAHA(pae=horizon,be thrown down,demolished;tu=stand,settle;taha=side,edge)、「打ちのめされて・端に・いる(びり)」(「パエ」のAE音がE音に変化して「ペ」から「ベ」と、「ツ」が「ッ」と、「タハ」のH音が脱落して「タ」となった)(なお、「びり」は、「ピリ」、PILI((Hawaii)border,edge of time units especially of late night(ka pili o ke ahiahi=at the end of the evening))、「(一番)遅い順番(びり)」(「ピリ」が「ビリ」となった)と解します。)

  「オ・モチ・アイ」、O-MOTI-AI(o=the...of;moti=consumed,surfeited;ai=lie with a female,copulate)、「例の・(女性との)交わりを・堪能する(面白い)」(「モチ・アイ」が「モシャイ」となった)
(なお、「おもしろい(面白い)」は、「オ・モチロ・オイ」、O-MOTIRO-OI(o=the...of,belonging to;motiro=look longingly at,beg;oi=heoi=denoting completeness or sufficiency of a statement or enumeration)、「例の・物事が自分の願っている通りにならないかと・見ていること(面白い)」(「モチロ」が「モシロ」となり、その語尾のO音と「オイ」の語頭のO音が連結して「モシロイ」となった)または「オ・モチ・ロイ」、O-MOTI-ROI(o=the...of;moti=consumed,surfeited;roi,whakaroiroi=wandering,unstable,unsettled)、「例の・いろいろな場所を訪れることを・堪能する(面白い)」(「モチ」が「モシ」となった)と解します。)

  「イツ・カイ(ン)ガ」、ITU-KAINGA(itu=side;kainga=place of abode or lodging or encampment,unfortified place of residence)、「居住地の・近くに居る者達(親戚)」(「イツ」が「イッ」と、「カイ(ン)ガ」のAI音がE音に変化し、名詞形語尾のNGA音が脱落して「ケ」となった)

  「マツ・タカイ」、MATU-TAKAI(matu=ma atu=go,come;takai=wrap up,wrap round,covering)、「(秋になると)一面に広がって・咲く花(彼岸花)」(「マツ」が「マッ」と、「タカイ」のAI音がE音に変化して「タケ」から「サケ」となった)

  「テキ」、TEKI(drift with the anchor down but not touching the bottom)、「(碇が海底に届かずに漂流する船のように)ふらふら歩いている奴(あいつ)」

  「ウイ・ツ・マ・ヘア」、UI-TU-MA-HEA(ui=disentangle,ask,enquire;tu=fight with,energetic;ma=white,clear;hea=where,whence,any place,elsewhere)、「懸命に・清らかな・(しきたり)作法を・追求すること(行儀)」(「ウイ」が「イ」と、「ツ」が「ズ」と、「ヘ」のH音が脱落して「エ」となった)

  「アラ・チ・テ」、ARA-TI-TE(ara=rise,raise;ti=throw,cast;te=to make an emphatic statement)、「出現して・いる・よ(あるじゃないか)」(「チ」が「シ」となった)

  「ヘレア・コイ」、HEREA-KOI(herea=here=conciliate,propitiate;koi=move about,good,suitable)、「(人を)懐柔するように・立ち回る(なれなれしい)」(「ヘレア」が「ヘラ」となった)

  「アル」、ARU(follow,pursue)、「(人を)探し求める(いる)」

  「アイア」、AIA(=kaitoa=expressing satisfaction or complacency at all event,it is good,it serves one right etc.)、「よしよし(ああ)」(「アイア」が「アイヤ」となった)

  「タハ・ツイ」、TAHA-TUI(taha=side,edge,spasmodic twitching of the muscles;tui=pierce,sew,lace)、「痙攣しながら・縫うように(粗い)」(「タハ」のH音が脱落して「ダ」と、「ツイ」が「スイ」となった)

の転訛と解します。

[中国地方]

[鳥取県]

331がいに(たいそう)・にょば・きょーさめー・ごす・ごつー・けっぱなずく・つかーさい・しごする・かえでる・〜なー・ねぶか・てご・〜や・だらず・よーに

 鳥取県の代表的な方言には、「がいに」(たいそう)、「にょば」(女)、「きょーさめー」(驚くほどひどく)、「ごす」(くれる)、「ごつー」(ひどく)、「けっぱなずく」(つまずく)、「つかーさい」(ください)、「しょーから」(わんぱくだ)(前出国語篇(その十六)の219わんぱくもの(わんぱく者)の項を参照してください。)、「しごする」(処理する)、「かえでる」((卵を)かえす)、「えらい」(つらい)(前出国語篇(その十五)の141つらい(辛い)の項を参照してください。)、「〜なー」(〜ね)、「ねぶか」(葱)、「なるい」(平たい)(前出国語篇(その十六)の178ひらたい(平たい)の項を参照してください。)、「てご」(手伝い)、「〜や」(〜よ)、「ほしー」(もったいない)(前出国語篇(その十六)の207もったいないの項を参照してください。)、「だらず」(愚かだ)、「よーに」(ほんとうに)、「こまい」(小さい)(前出国語篇(その十五)の129ちいさい(小さい)の項を参照してください。)があります。

 この「がいに」、「にょば」、「きょーさめー」、「ごす」、「ごつー」、「けっぱなずく」、「つかーさい」、「しごする」、「かえでる」、「〜なー」、「ねぶか」、「てご」、「〜や」、「だらず」、「よーに」は、

  「(ン)ガイ・ヌイ」、NGAI-NUI(ngai=tribe or clan;nui=large,many)、「大きな・部類に属する(たいそう)」(「(ン)ガイ」のNG音がG音に変化して「ガイ」と、「ヌイ」が「ニ」となった)

  「ニヒ・オパ」、NIHI-OPA(nihi=move stealthly,dizziness,timidity;opa=throw,pelt)、「内気さを・表している(女)」(「ニヒ」のH音が脱落して「ニ」となり、「ニ・オパ」が「ニョバ」となった)

  「キオ・タメタメ」、KIO-TAMETAME((Hawaii)kio=projection,mock warfare;tametame=move the lips)、「口汚く・(中傷合戦をする)罵り合う(驚くほどひどく)」(「キオ」が「キョー」と、「タメタメ」の反復語尾が脱落して「サメー」となった)

  「(ン)ガウ・タ(ン)ガ」、NGAU-TANGA(ngau=bite,hurt;tanga=alert,prompt,ready)、「(一噛み)一つを・すぐに渡してくれ(くれる)」(「(ン)ガウ」のNG音がG音に、AU音がO音に変化して「ゴ」と、「タ(ン)ガ」のNG音がN音に変化して「タナ」から「サン」となった)(この解釈は、例文の「わにもひとつゴサんかあ」によりました。)

  「(ン)ガウ・ツ」、NGAU-TU(ngau=bite,hurt,attack;tu=fight with,energetic)、「荒々しく・襲いかかる(ひどく)」(「(ン)ガウ」のNG音がG音に、AU音がO音に変化して「ゴ」と、「ツ」が「ツー」となった)

  「ケツ・パナ・ツク」、KETU-PANA-TUKU(ketu=remove earth etc. by pushing or digging with a blunt instrument,clear away,begin to ebb;pana=thrust or drive away,expel,cause to come or go forth in any way;tuku=let go,put off,send)、「(地面の)土を後ろに蹴り・捨てるように・前へ(倒れるように)進む(つまづく)」(「ケツ」が「ケッ」と、「ツク」が「ズク」となった)

  「ツカハ・タヒ」、TUKAHA-TAHI(tukaha=headstrong,hasty,passionate;tahi=one)、「(これ)ひとつ・(熱望する)欲しい(ください)」(「ツカハ」のH音が脱落して「ツカー」と、「タヒ」のH音が脱落して「タイ」から「サイ」となった)

  「チ・(ン)ガウ・ツル」、TI-NGAU-TURU(ti=throw,cast,overcome;ngau=bite,hurt,act upon,attack;turu=last a short time)、「仕事を片付けて・し・まう(処理する)」(「チ」が「シ」と、「(ン)ガウ」のNG音がG音に、AU音がO音に変化して「ゴ」と、「ツル」が「スル」となった)

  「カヱ・テ・ル、KAWE-TE-RU(kawe=carry,convey,induce;te=crack;ru=shake,agitate,scatter)、「(卵に)ひびが入って・(ひよこが)外へ・出てくる((卵を)かえす)」(「カヱ」のW音が脱落して「カエ」と、「テ」が「デ」となった)

  「ナ」、NA(by,belonging to,by reason of)、「〜だな(〜ね)」(「ナ」が「ナー」となった)

  「ネイ・プカフ」、NEI-PUKAHU(nei,neinei=stretched forward,reaching out;pukahu=abundant)、「(白い根(茎)が)たいへん長く・伸びている野菜(葱)」(「ネイ」が「ネ」と、「プカフ」のH音が脱落して「ブカ」となった)葱

  「タイ・(ン)ガウ」、TAI-NGAU(tai=sometimes with a qualifying force;ngau=bite,hurt,attack,act upon)、「限定された・仕事をする(手伝い)」(「タイ」のAI音がE音に変化して「テ」と、「(ン)ガウ」のNG音がG音に、AU音がO音に変化して「ゴ」となった)

  「イア」、IA(indeed)、「実に〜だ(〜よ)」(「イア」が「ヨ」となった)

  「タラ・ツ」、TARA-TU(tara=peak,disturb,ruffle,rough;tu=stand,settle)、「(人を)いらいら・させる(愚かだ)」(「タラ」が「ダラ」と、「ツ」が「ズ」となった)

  「イオ・ニヒ」、IO-NIHI(io=tough,hard,obstinate;nihi=move stealthly)、「(重い荷物を持って)苦労して・ゆっくり進んだ(ほんとうに)」(「イオ」が「ヨー」と、「ニヒ」のH音が脱落して「ニ」となった)(この解釈は、例文の「荷物が重くてヨーニえらい目したわい」によりました。)

の転訛と解します。

[島根県]

332だんだん(ありがとう)・あげ・そげ・こげ・どげ・べったべった・ただも・まめ・えたし・もそぶ・はしる・あだん・にょーば・きしゃがわりー・やくてもね・〜がー・〜し

 島根県の代表的な方言には、「だんだん」(ありがとう)(前出国語篇(その十四)の009ありがとう(有り難う)の項を参照してください。)、「ばんじまして」(今晩は)(前出国語篇(その十四)の080こんばんは(今晩は)の項を参照してください。)、「あげ」(そう)、「そげ」(そう)、「こげ」(こう)、「どげ」(どう)、「べったべった」(たびたび)、「ただも」(いつも)、「ちょんぼし」(少し)(前出国語篇(その十五)の107すくない(少ない)の項を参照してください。)、「まめ」(丈夫だ)、「ちょっこし」(ちょっと)(前出国語篇(その十五)の130ちょっとの項を参照してください。)、「まめ」(丈夫だ)、「えたし」(体の具合が悪い)、「おぞい」(恐ろしい)(前出国語篇(その十四)の030おそろしい(恐ろしい)の項を参照してください。)、「もそぶ」(運ぶ)、「まくれる」(転ぶ)(前出国語篇(その十四)の079ころぶ(転ぶ)の項を参照してください。)、「はしる」(ひりひり痛む)、「あだん」(あらまあ)、「にょーば」(妻)、「きしゃがわりー」(腹立たしい)、「やくてもね」(つまらない)、「〜がー」(〜よね)、「〜し」(人)があります。

 この「あげ」、「そげ」、「こげ」、「どげ」、「べったべった」、「ただも」、「まめ」、「えたし」、「もそぶ」、「はしる」、「あだん」、「にょーば」、「きしゃがわりー」、「やくてもね」、「〜がー」、「〜し」は、

  「ア・(ン)ガイ」、A-NGAI(a=yes,well,well then;ngai=tribe or clan)、「その・ようなこと(そう)」(「(ン)ガイ」のNG音がG音に、AI音がE音に変化し「ゲ」となった)

  「タウ・(ン)ガイ」、TAU-NGAI(tau=come to rest,be suitable,be possible;ngai=tribe or clan)、「まあその・ようなこと(そう)」(「タウ」のAU音がO音に変化して「ト」から「ソ」と、「(ン)ガイ」のNG音がG音に、AI音がE音に変化し「ゲ」となった)

  「コ・(ン)ガイ」、KO-NGAI(ko=to give emphasis,to denote the predicate;ngai=tribe or clan)、「この・ようなこと(こう)」(「(ン)ガイ」のNG音がG音に、AI音がE音に変化し「ゲ」となった)

  「ト・(ン)ガイ」、TO-NGAI(to=drag,haul;ngai=tribe or clan)、「(示す先は)どの・ようなこと(どう)」(「ト」が「ド」と、「(ン)ガイ」のNG音がG音に、AI音がE音に変化し「ゲ」となった)

  「ペタペタ」、PETAPETA(worn out,rags)、「(摺り切れるほど)何回も(たびたび)」(「ペタペタ」が「ベッタベッタ」となった)

  「タタ・マウ」、TATA-MAU(tata=wag,nod;mau=fixed,continuing,caught)、「感謝の挨拶を・続けている(いつも)」(「タタ」が「タダ」と、「マウ」のAU音がO音に変化して「モ」となった)

  「マハ・メア」、MAHA-MEA(maha=many,abundance;mea=thing,cause,fact,do,deal with,make)、「たくさん・仕事をこなす(丈夫だ)」(「マハ」のH音が脱落して「マ」と、「メア」の語尾のA音が脱落して「メ」となった)

  「ハエ・タ・チ」、HAE-TA-TI(hae=slit,cherish envy or jealousy of ill feeling,cause pain,fear;ta=dash,beat,lay;ti=throw,cast)、「(身体に)痛みが・襲って・来た(体の具合が悪い)」(「ハエ」のH音が脱落し、AE音がE音に変化して「エ」と、「チ」が「シ」となった)

  「マウ・トヌ」、MAU-TONU(mau=carry,bring;tonu=denoting continuance,quite,just,only)、「ちょっと・運ぶ(運ぶ)」(「マウ」のAU音がO音に変化して「モ」と、「トヌ」が「ソン」となった)(この解釈は、例文の「モソンてて、わけないがね」によりました。)

  「パ・チ・ル」、PA-TI-RU(pa=be struck;ti=squeak,tingle;ru=shake,agitate,scatter)、「ひりひりとした痛みが・襲って・うずく(ひりひり痛む)」(「パ」のP音がF音を経てH音に変化して「ハ」と、「チ」が「シ」となった)

  「アタ・ナ」、ATA-NA(ata=gently,clearly,quite,true;na=to call attention,to introduce some new element or emphatic statement)、「ほんとう・かね(あらまあ)」(「アタ」が「アダ」と、「ナ」が「ン」となった)

  「ニヒ・オパ」、NIHI-OPA(nihi=move stealthly,dizziness,timidity;opa=throw,pelt)、「内気さを・表している(妻)」(「ニヒ」のH音が脱落して「ニ」となり、「ニ・オパ」が「ニョーバ」となった)(前出鳥取県の「にょば(女)」の項を参照してください。)

  「キ・チア・(ン)ガワリ」、KI-TIA-NGAWARI(ki=full,very;tia=abdomen,stomach;ngawari=soft,supple,moving quickly)、「腹が・ものすごく・(動いている)煮えくりかえっている(腹立たしい)」(「チア」が「シャ」と、「(ン)ガワリ」のNG音がG音に変化して「ガワリー」となった)

  「イア・クタイタイ・モウ・ネ」、IA-KUTAITAI-MAU-NE(ia=indeed;kutaitai=of a disagreeable taste;mau,maumau=waste,to no purpose;ne=giving emphasis to a question or request or proposal)、「実に・まずくて・何の役にも立たない・ものだ(つまらない)」(「イア」が「ヤ」と、「クタイタイ」の反復語尾が脱落し、AI音がE音に変化して「クテ」と、「マウ」のAU音がO音に変化して「モ」となった)

  「(ン)ガ」、NGA(satisfied,breathe)、「(満足した)その通りだ(〜よね)」(「(ン)ガ」のNG音がG音に変化して「ガー」となった)

  「チヒ」、TIHI(summit,top)、「(最高の)立派な人(人)」(H音が脱落して「チ」から「シ」となった)

の転訛と解します。

[岡山県]

333ちばける(ふざける)・しゃじなっぽー・のせる・ばぶ・あまる・やっちもにゃー・らく・はっとーじ・じなくそ・うずないー・すばろーしー・〜とみー・うがす・〜にー・なんなら・おけんたぇー・いく・かど

 岡山県の代表的な方言には、「ちばける」(ふざける)(前出国語篇(その十六)の181ふざける(巫山戯る)の項を参照してください。)、「ぼっけー」(非常に)(前出国語篇(その十六)の173ひじょうに(非常に)の項を参照してください。)、「おえん」(だめだ)(前出国語篇(その十五)の126だめ(駄目)の項を参照してください。)、「きょーてー」(恐ろしい)(前出国語篇(その十四)の030おそろしい(恐ろしい)の項を参照してください。)、「しゃじなっぽー」(いたどり)、「のせる」(傘に入れる)、「ばぶ」(餅)、「あまる」(腐る)、「やっちもにゃー」(つまらない)、「ひずらしー」(まぶしい)(前出国語篇(その十六)の198まぶしい(眩しい)の項を参照してください。)、「らく」(大丈夫だ)、「はっとーじ」(かめむし)、「じなくそ」(くだらないこと)、「うずないー」(むずかしい)、「すばろーしー」(情けない)、「〜とみー」(〜よ)、「うがす」(はがす)、「〜にー」(〜ものか)、「なんなら」(なあんだ)、「おけんたぇー」(ずうずうしいようす)、「いく」(火事になる)、「かど」(庭)があります。

 この「しゃじなっぽー」、「のせる」、「ばぶ」、「あまる」、「やっちもにゃー」、「らく」、「はっとーじ」、「じなくそ」、「うずないー」、「すばろーしー」、「〜とみー」、「うがす」、「〜にー」、「なんなら」、「おけんたぇー」、「いく」、「かど」は、

  「チア・チナ・ツポウ」、TIA-TINA-TUPOU(tia=abdomen,stmach;tina=fixed,firm,exhausted,constipated;tupou=bow the head,steep(tupoupou=serious illness))、「(食べると)腹が・重篤な・便秘になる(いたどり)」(「チア」が「シャ」と、「チナ」が「ジナ」と、「ツポウ」が「ッポー」となった)

  「(ン)ゴテ・ル」、NGOTE-RU(ngote=suck;ru=shake,agitate,scatter)、「(傘の中に)吸収・する(傘に入れる)」(「(ン)ゴテ」のNG音がN音に変化して「ノテ」から「ノセ」となった)

  「パプア」、PAPUA(well grown,with spreading branches)、「よく伸びている(餅)」(語尾のA音が脱落して「バブ」となった)

  「ア・マテ」、A-MATE(a=of,belonging to;mate=dead,extinguished,sick,damaged)、「損なわれた・ような(腐る)」(「マテ」が「マッテ」となった)(この解釈は、例文の「もうアマっとるけえ捨てんしゃあ」によりました。)

  「イア・ツ・チモ・ニア」、IA-TUTI-MAU-NIA(ia=indeed;tu=fight with,energetic;timo=peck as a bird,prick;niania=anything small)、「実に・懸命に・小さなものを・つつく(つまらない)」(「イア」が「ヤ」と、「ツ」が「ッ」と、「ニア」が「ニャー」となった)

  「ラ・クチア」、RA-KUTIA(ra=by way of;kutia=kuti=draw tightly together,contract,pinch)、「しっかり(堅固に)作られて・いる(大丈夫だ)」(「クチア」が「クジャ」となった)(この解釈は、例文の「そこまでえ頑丈にせんでもラクジャ」によりました。)

  「パツ・トウ・チ」、PATU-TOU-TI(patu=strike,ill treat in any way,bruise scent plants;tou=anus,posteriors;ti=throw,cast)、「嫌な臭いを・おしりから・発射いるもの(かめむし)」(「パツ」のP音がF音を経てH音に変化して「ハッ」と、「トウ」が「トー」と、「チ」が「ジ」となった)

  「チナク・タウ」、TINAKU-TAU(tinaku=germinate,delay(whakatinaku=loiter);tau=come to rest,be suitable)、「ただぶらぶらとして・休んでいる(くだらないこと)」(「チナク」が「ジナク」と、「タウ」のAU音がO音に変化して「ト」から「ソ」となった)

  「ウツ・ナ・イヒ」、UTU-NA-IHI(utu=return for anything,reward,make response;na=by,belonging to,by way of;ihi=power,authority,essential force)、「理解(して応答)するのに・たいへん力が・いること(むずかしい)」(「ウツ」が「ウズ」と、「イヒ」のH音が脱落して「イー」となった)

  「ツ・パロ・チヒ」、TU-PARO-TIHI(tu=stand,settle;paro=shrunk,withered;tihi=summit,top)、「最高に・うちひしがれた・(表情が)顔に出ている(情けない)」(「ツ」が「ス」と、「パロ」が「バロー」と、「チヒ」のH音が脱落して「シー」となった)

  「ト・ミヒ」、TO-MIHI(to=drag,haul,mihi=sigh for,lament.greet)、「〜になるのを・嘆く(〜よ)」(「ミヒ」のH音が脱落して「ミー」となった)

  「ウ(ン)ガ・ハエ・アツ」、UNGA-HAE-ATU(unga=act or circumstance etc. of becoming firm,place etc. of arrival;hae=slit,tear,cut;atu=to indicate a direction or motion onwards)、「引き・剥がす・状態にする(はがす)」(「ウ(ン)ガ」のNG音がG音に変化して「ウガ」となり、「ハエ」のH音が脱落して「アエ」となり、「ウガ」の語尾のA音と「アエ」のAE音と「アツ」の語頭のA音が連結して「ウガツ」となった)

  「ニヒ」、NIHI(move stealthly,timidity)、「逡巡する(〜するものか)」(H音が脱落して「ニー」となった)

  「ナナ・アラ」、NANA-ARA(nana=by or belonging to him or her;ara=and then)、「そして・(こう)なつた(なあんだ)」(「ナナ・アラ」が「「ナンナラ」となった)

  「オ・ケノ・タエ」、O-KENO-TAE(o=the...of;keno=night(kekeno=look about,chief);tae=arrive,extend to,touch of feeling)、「まるで・首長のように・振る舞っている(ずうずうしいようす)」(「ケノ」が「ケン」と、「タエ」が「タエー」となった)

  「ヒク」、HIKU(tail of a fish(whakahiku=to follow on,commence))、「(火事などが)始まる(火事になる)」(H音が脱落して「イク」となった)

  「カ・アト」、KA-ATO(ka=to denote the commencement of a new action or condition;ato=enclosed in a fence)、「垣根を引き回した・場所(庭)」(「カ」の語尾のA音が「アト」の語頭のA音と連結して「カド」となった)(なお、「かど(門)」は、「カ・ト」、KA-TO(ka=to denote the commencement of a new action or condition;to=drag,open or shut a door a window)、「と、「戸を開閉する・場所(門)」(「ト」が「ド」となった)と解します。)

の転訛と解します。

[広島県]

334がんぼー(わんぱく小僧)・がんす・いたしー・えっと・みてる・いなげ・〜のー・いんぐりもんぐり・てれーぐれー・ほぼろーうる・えーたい・くじゅーくる・もとーらん

 広島県の代表的な方言には、「かんぼー」(わんぱく小僧)(前出国語篇(その十六)の219わんぱくもの(わんぱく者)の項を参照してください。)、「はぶてる」(ふくれっ面をする)(前出国語篇(その十五)の111すねる(拗ねる)の項を参照してください。)、「がんす」(ございます)、「いたしー」(むずかしい)、「いびせー」(恐ろしい)(前出国語篇(その十四)の030おそろしい(恐ろしい)の項を参照してください。)、「えっと」(たくさん)、「みてる」(なくなる)、「はしる」(ひりひり痛む)(前出島根県の「はしる(ひりひり痛む)」の項を参照してください。)、「みやすい」(たやすい)(前出国語篇(その十四)の062かんたん(簡単)の項を参照してください。)、「いなげ」(変だ)、「〜のー」(〜ねえ)、「かばちたれ」(理屈言い)(前出雑楽篇(その一)の205かばちたれの項を参照してください。)、「いんぐりもんぐり」(くねくね)、「てれーぐれー」(なんとかかんとか)、「ほぼろーうる」(嫁が無断で里に帰る)、「おらぶ」(どなる)(前出国語篇(その十五)の082さけぶ(叫ぶ)の項を参照してください。)、「とらげる」(片付ける)(前出国語篇(その十四)の047かたづける(片付ける)の項を参照してください。)、「つくなむ」(しゃがむ)(前出国語篇(その十四)の041かがむ(屈む)の項を参照してください。)、「えーたい」(いつも)、「くじゅーくる」(不平を言う)、「もとーらん」(理不尽な)があります。

 この「がんす」、「いたしー」、「えっと」、「みてる」、「いなげ」、「〜のー」、「いんぐりもんぐり」、「てれーぐれー」、「ほぼろーうる」、「えーたい」、「くじゅーくる」、「もとーらん」は、

  「(ン)ガナ・ツ」、NGANA-TU(ngana=be eagerly intent,persist,obstinate;tu=fight with,energetic)、「懸命に・固執する(ございます)」(「(ン)ガナ」のNG音がG音に変化して「ガナ」から「ガン」と、「ツ」が「ス」となった)

  「イタ・チヒ」、ITA-TIHI(ita=tight,fast;tihi=summit,top)、「最高に・堅い(解きほぐすのが難しい)(むずかしい)」(「チヒ」のH音が脱落して「シー」となった)

  「エト」、ETO(lean)、「(果物が生つた枝が)たわわに曲がっている(たくさん)」(「エト」が「エット」となった)

  「ミ・タイ・タ」、MI-TAI-TA((Hawaii)mi=urine,to void urine;tai=tide,anger,rage;ta=dash,dash water out of a canoe)、「尿を・放出し・尽くす(ように)(なくなる)」(「タイ」のAI音がE音に変化して「テ」となった)(この解釈は、例文の「もう砂糖がミテたんか?」によりました。)

  「ヒ(ン)ガ・(ン)ガイ」、HINGA-NGAI(hinga=fall from an erect position,be overcome with astonishment or fear;ngai=tribe or clan)、「びっくりした(または恐れおののいた)ような・部類に属する(表情など。変だ)」(「ヒ(ン)ガ」のH音が脱落し、NG音がN音に変化して「イナ」と、「(ン)ガイ」のNG音がG音に、AI音がE音に変化して「ゲ」となった)

  「ノア」、NOA(free from tapu or any other restriction,denoting absence of limitations or conditions)、「(何も邪魔されずに)おほらかに〜している(〜ねえ)」(「ノア」の語尾のA音が脱落して「ノー」となった)

  「イナ・(ン)ゴリ・マウヌ・(ン)ゴリ」、INA-NGORI-MAUNU-NGORI(ina=adducing a fact as proof of anything,foe since,inasmuch as,to emphasis statement as to quality;ngori=weak,listless(ngoringori=a small black eel);maunu=be drawn from belt or sheath etc.,be loosened)、「全く・弱々しく・帯を緩めたように・だらしなく(歩く)(くねくね)」(「イナ」が「イン」と、「(ン)ゴリ」のNG音がG音に、O音がU音に変化して「グリ」と、「マウヌ」のAU音がO音に変化して「モン」となった)

  「テレ・(ン)グ・レイ」、TERE-NGU-REI(tere=drift,float,swift,moving quickly;ngu=silen,greedy,moant;rei=leap,rush,run)、「()(なんとかかんとか)」(となつた)てれーぐれー」(

  「ホポ・ロ・ウル」、HOPO-RO-URU(hopo=fearful,apprehensive,overawed;ro,roro=go;uru=enter,arrive,be anxious)、「(将来への)不安から・(家を)出て・(里に)帰る(嫁が無断で里に帰る)」(「ホポ」が「ホボ」と、「ロ」が「ロー」となった)

  「エ・タヒ」、E-TAHI(e=to give emphasis;tahi=one,together,then.throughout,quit)、「全く・ずっと(いつも)」(「エ」が「エー」と、「タヒ」のH音が脱落して「タイ」となった)

  「クチ・チウ・クル 」、KUTI-TIU-KURU(kuti=draw tightly together,contract,pinch;tiu=wander,sway to and fro,swift;kuru=strike with the fist,pelt,throw)、「口で・あれやこれやと・人を叩く(不平を言う)」(「クチ」の語尾のTI音が「チウ」の語頭のTI音とと連結して「クチウ」から「クジュー」となった)

  「モト・ラ(ン)ガ」、MOTO-RANGA(moto=strike with the fist;ranga=avenge a death)、「拳骨で殴って・復讐する(理不尽な)」(「モト」が「モトー」と、「ラ(ン)ガ」のNG音がN音に変化して「ラナ」から「ラン」となった)

の転訛と解します。

[山口県]

335おいでませ(いらっしゃいませ)・〜のんた・いらく・ぶち・あります・あらまし・みしゃげる・〜そ・きすい・きなる・ちゅーかい・こつる・やぶれる・じらおくる・はー・かばち・たう・ほーとくない・〜ちゃ

 山口県の代表的な方言には、「おいでませ」(いらっしゃいませ)、「〜のんた」(〜ねえ)、「いらく」(乾く)、「ぶち」(とても)、「あります」(ございます)、「くじゅーくる」(叱る)(前出広島県の「くじゅーくる(不平を言う)」の項を参照してください。)、「あらまし」(粗雑だ)、「せんない」(面倒くさい)(前出国語篇(その十六)の206めんどう(面倒)の項を参照してください。)、「みしゃげる」(割れる)、「〜そ」(〜の)、「きすい」(筋ばって固い)、「きなる」(いい気になる)、「ちゅーかい」(まるっきり)、「こつる」(咳き込む)、「やぶれる」(故障する)、「しろしー」(やかましい)(前出国語篇(その十四)の018うるさい(煩い。五月蠅い)の項を参照してください。)、「じらおくる」(駄々をこねる)、「はー」(もう)、「かばち」(口答え)、「たう」(届く)、「ほーとくない」(汚らしい)、「〜ちゃ」(てば・〜さ・〜よ)があります。

 この「おいでませ」、「〜のんた」、「いらく」、「ぶち」、「あります」、「あらまし」、「みしゃげる」、「〜そ」、「きすい」、「きなる」、「ちゅーかい」、「こつる」、「やぶれる」、「じらおくる」、「はー」、「かばち」、「たう」、「ほーとくない」、「〜ちゃ」は、

  「オイ・タイア・マテ」、OI-TAIA-MATE(oi=shudder,move continuously;taia=by and by;mate=in want of,overcome with any emotion,finished)、「(お客が)歩いて・今・到着されました(いらっしゃいませ)」(「タイア」のAI音がE音に変化し、語尾のA音が脱落して「デ」と、「マテ」が「マセ」となった)

  「ノホア(ン)ガ・タ」、NOHOANGA-TA(nohoanga=seat;ta=dash.beat,lay)、「(〜の)状態で・いる(〜ねえ)」(「ノホア(ン)ガ」のH音が脱落し、NG音がN音に変化して「ノオアナ」から「ノン」となった)

  「イラ・ク」、IRA-KU(ira=calling attention,there,yonder;ku,kuku=firm,stiff,thickened,not fluid or watery)、「何と・水気がない(乾く)」

  「プ・チヒ」、PU-TIHI(pu=precise,very,exceedingly;tihi=summit,top)、「最高に・すごく(とても)」(「プ」が「ブ」と、「チヒ」のH音が脱落して「チ」となった)

  「アリ・マツ」、ARI-MATU(ari=clear,visible;matu=ma atu=go,come)、「(事柄の存在が)あきらかに・なりました(ございます)」(「マツ」が「マス」となった)

  「ハラ・マチ」、HARA-MATI(hara=miss,make a false stroke;mati=surfeited)、「(仕事に)ミスが・多すぎる(粗雑だ)」(「ハラ」のH音が脱落して「アラ」と、「マチ」が「マシ」となった)

  「ミチ・イア・(ン)ゲル」、MITI-IA-NGERU(miti=a heavy stone from which weapons were made;ia=indeed,rushing stream;ngaeru,ngerungeru=smooth,spft)、「(石のような)堅くて重いものが・実に(奔流のように上から落ちて)・粉々になる(割れる)」(「ミチ」が「ミシ」と、「イア」が「ャ」と、「(ン)ゲル」のNG音がG音に変化して「ゲル」となった)

  「ト」、TO(the...of,the one of,that of)、「〜その(〜の)」(「ト」が「ソ」となった)

  「キ・ツイ」、KI-TUI(ki=full,very;tui,tuitui=lace,fasten up,render inaccessible)、「非常に・(縛りあげたように)堅くて歯が立たない(筋ばって固い)」(「ツイ」が「スイ」となった)

  「キ・ナツ」、KI-NATU(ki=full,very;natu=scratch,stir up,be vexed)、「非常に・(人を)いらいらさせる(いい気になる)」(この解釈は、例文の「えっとキナッたらつまらんぞ」によりました。)

  「チウ・カイ」、TIU-KAI(tiu=soar,wander,sway to and fro,unsettled;kai=riddle,puzzle)、「つかみ所のない・難問だ(まるっきり)」(「チウ」が「チュー」となった)

  「コア・ツツ」、KOA-TUTU((Hawaii)koa=brave,bold,fearless;tutu=move with vigour,be raised as dust or disturbance etc.)、「激しく・(咳をして飛沫をまき散らす)咳をする(咳き込む)」(「コア」の語尾のA音が脱落して「コ」と、「ツツ」が「ツッ」となった)(この解釈は、例文の「コツッてばっかりおるが風邪かね?」によりました。)

  「イ・アプル」、I-APURU(i=past tense,from,by,by reason of;apuru=shut up,suppress,overwhelm)、「(何かの原因で)動きを止め・た(故障する)」(「イ・アプル」が「ヤブル」となった)(この解釈は、例文の「この時計はヤブレたんかいのう」によりました。)

  「チラハ・アウ・クル」、TIRAHA-AU-KURU(tiraha=slow,face upwards,lying open;au=bark,howl;kuru=strike with the fist,pelt,throw)、「寝転がって・大きな声で叫び・(地面を)叩く(駄々をこねる)」(「チラハ」のH音が脱落して「ジラ」と、「アウ」のAU音がO音に変化して「オ」となった)

  「ハ」、HA(what!,then,so)、「もう(もう)」(「ハ」が「ハー」となった)

  「カパ・チ」、KAPA-TI(kapa=disobedient,wayward,play,row;ti=throw,cast)、「従順でないこと(言葉)を・投げつける(口答え)」(「カパ」が「カバ」となった)((前出雑楽篇(その一)の205かばちたれの項を参照してください。)

  「タウ」、TAU(come to rest,settle down,be suitable,be possible,be able)、「間に合う(届く)」

  「ホト・クイ・ナイ」、HOTO-KUI-NAI(hoto=begin,be apprehensive,dislike;kui=weak,cowardly,stunted;nai=nei=to denote proximity to or connection with the speaker)、「極めて・(人に)嫌がられ・二の足を踏まれるもの(汚らしい)」(「ホト」が「ホート」と、「クイ」の語尾のI音が脱落して「ク」となった)

  「チア」、TIA(stick in,drive in pegs etc.,persistency)、「(それでも)きちんと進んで行く(てば・〜さ・〜よ)」(「チア」が「チャ」となった)

の転訛と解します。

[四国地方]

[徳島県]

336しんだい(身体がだるい)・〜じょ・いっこも・かんまん・うちんく・めぐ・はがいたらしー・まがる・〜で・しょーたれ・たっすい・まける・まけまけ・はらおきた・〜でー

 徳島県の代表的な方言には、「しんだい」(身体がだるい)(前出国語篇(その十五)の128だるい(怠い。懈い)の項を参照してください。)、「せこい」(息苦しい)(前出国語篇(その十四)の011いきぐるしい(息苦しい)の項を参照してください。)、「〜じょ」(〜よ)、「ごっつい」(すごく)(前出国語篇(その十六)の173ひじょうに(非常に)の項を参照してください。)、「いっこも」(全然)、「つまえる」(しまう)(前出国語篇(その十四)の047かたづける(片付ける)の項を参照してください。)、「かんまん」(構わない)、「どくれる」(すねる)(前出国語篇(その十五)の111すねる(拗ねる)の項を参照してください。)、「さら」(新しい)(前出国語篇(その十四)の005あたらしい(新しい)の項を参照してください。)、「うちんく」(私の家)、「めぐ」(壊す)、「はがいたらしー」(いらだたしい)、「まがる」(邪魔になる)、「〜で」(〜ですか)、「しょーたれ」(だらしない人)、「たっすい」(くだらない)、「まける」(あふれる)、「まけまけ」(あふれそうなようす)、「へらこい」(ずるい)(前出国語篇(その十五)の113ずるい(狡い)の項を参照してください。)、「はらおきた」(満腹になった)、「はります」(平手で叩く)(前出国語篇(その十六)の153なぐる(殴る)の項を参照してください。)、「〜でー」(〜ではないか)があります。

 この「〜じょ」、「いっこも」、「かんまん」、「うちんく」、「めぐ」、「はがいたらしー」、「まがる」、「〜で」、「しょーたれ」、「たっすい」、「まける」、「まけまけ」、「はらおきた」、「〜でー」は、

  「チオホ」、TIOHO(apprehensive)、「〜が心配だ(〜よ)」(H音が脱落して「ジョ」となった)

  「イツ・コモ」、ITU-KOMO(itu=side(whakaitu=aside,away);komo=thrust in,put in,insert)、「(〜の中に)入り込むことが・できない(全然)」(「イツ」が「イッ」となった)(この解釈は、例文の「忙しくて、イッコモ遊べんかった」によりました。)

  「カネヘ・マナ」、KANEHE-MANA(kanehe=trifle,anything small;mana=influence,be effectual)、「僅かな・影響しか与えない(構わない)」(「カネヘ」のH音が脱落して「カネ」から「カン」と、「マナ」が「マン」となった)

  「ウチ・ナク」、UTI-NAKU(uti=bite(utiuti=annoy,worry);naku=belonging to me,mine)、「私の・(壊れた)あばらや(私の家)」(「ナク」が「ンク」となった)

  「マエ・(ン)グ」、MAE-NGU(mae=languid,listless,withered;ngu=greedy(ngungu=gnaw))、「(どん欲に)徹底的に・打ち倒す(壊す)」(「マエ」のAE音がE音に変化して「メ」と、「(ン)グ」のNG音がG音に変化して「グ」となった)

  「ハ(ン)ガイ・タラ・チヒ」、HANGAI-TARA-TIHI(hangai=oppose,confronting;tara=disturb,ruffle;tihi=summit,top)、「最高に・(人を)いらだたせる(行為に)・直面する(いらだたしい)」(「ハ(ン)ガイ」のNG音がG音に変化して「ハガイ」と、「チヒ」のH音が脱落して「シー」となった)

  「マ(ン)ガ(ン)ガ・ル」、MANGANGA-RU(manganga=confusing,perplexing;ru=shake,agitate,scatter)、「(人を)困惑さ・せる(邪魔になる)」(「マ(ン)ガ(ン)ガ」反復語尾が脱落し、NG音がG音に変化して「マガ」となった)

  「テヘア」、TEHEA(which?,where?)、「(〜か〜でないか)どっちですか(〜ですか)」(H音および語尾のA音が脱落して「デ」となった)

  「チオチオ・タレ」、TIOTIO-TARE(tiotio=having sharp projections,barnacle;tare=hang,be drawn towards(taretare=ragged,tattered))、「(いつも乗る舟に)フジツボの類を・付着させたままにしている(だらしない人)」(「チオチオ」の反復語尾が脱落して「チオ」から「ショー」となった)

  「タツ・ツイ」、TATU-TUI(tatu=reach the bottom,be at ease,agree;tui=pierce,lace,sew)、「(布を)やすやすと・縫う(くだらない)」(「タツ」が「タッ」と、「ツイ」が「スイ」となった)

  「マ・アケ・ル」、MA-AKE-RU(ma=go,come;ake=indicating immediate continuation in time,from below,upwards;ru=shake,agitate,scatter)、「今にも・こぼれる・ような(あふれる)」(「マ」のA音と「アケ」の語頭のA音が連結して「マケ」となった)

  「マ・アケ・マ・アケ」、MA-AKE-MA-AKE(ma=go,come;ake=indicating immediate continuation in time,from below,upwards)、「いまにも・こぼれそうな(あふれそうなようす)」(「マ」のA音と「アケ」の語頭のA音が連結して「マケ」となった)

  「パラ・オキ・タ」、PARA-OKI-TA(para=bravery,spirit;oki,okioki=rest,pause;ta=dash,beat,lay)、「(勇気が宿る場所)腹が・(休んだ)食べるのを止め・た(満腹になった)」(「パラ」のP音がF音を経てH音に変化して「ハラ」となった)

  「テヘア」、TEHEA(which?,where?)、「(どこか)ここ(にある)ではないか(〜ではないか)」(H音および語尾のA音が脱落して「デー」となった)

の転訛と解します。

[香川県]

337おきる(満腹になる)・いた・ほーけにする・みまい・けっこい・いただきさん・おとっちゃま・ほっこげ・ひにしる・ひしてがい・いずみ・おみーさん・むつごい・おたしやこし・りくつげ・〜のいや・まんがに・まんでがん・ねんご・たぐる

 香川県の代表的な方言には、「おきる」(満腹になる)、「いた」(ください)、「ほーけにする」(馬鹿にする)、「みまい」(見なさい)、「けっこい」(きれいな)、「いただきさん」(魚の行商の女性)、「おとっちゃま」(臆病者)、「ほっこげ」(ばかげている)、「ひにしる」(つねる)、「ひょーげる」(おどける)(前出国語篇(その十六)の181ふざける(巫山戯る)の項を参照してください。)、「ひしてがい」(一日おき)、「いずみ」(井戸)、「おみーさん」(雑炊)、「むつごい」(味がしつこい)、「おたしやこし」(私なんか)、「りくつげ」(格好つけたさま)、「〜のいや」(〜のか)、「まんがに」(まれに)、「まんでがん」(全部)、「ねんご」(自慢)、「たぐる」(咳をする)があります。

 この「おきる」、「いた」、「ほーけにする」、「みまい」、「けっこい」、「いただきさん」、「おとっちゃま」、「ほっこげ」、「ひにしる」、「ひしてがい」、「いずみ」、「おみーさん」、「むつごい」、「おたしやこし」、「りくつげ」、「〜のいや」、「まんがに」、「まんでがん」、「ねんご」、「たぐる」は、

  「オキ・ル」、OKI-RU(oki,okioki=rest,pause;ru=shake,agitate,scatter)、「(腹が休む)食べるのを止め・る(満腹になる)」

  「イ・タハ」、I-TAHA(i=beside,with,at(the place),by;taha=side,edge(whakataha=go on one side,put on one side))、「ここに・置いてくれ(ください)」(「タハ」のH音が脱落して「タ」となった)

  「ホ・カイ・ヌイ・ツル」、HO-KAI-NUI-TURU(ho=put out the lips,pout,a mark of derision;kai=fulfil its proper function,have full play;nui=great,many;turu=last a short time)、「(口を突き出して人を)嘲笑することを・じゅうぶんに・さんざん・行う(馬鹿にする)」(゜ホ」が「ホー」と、「カイ」のAI音がE音に変化して「ケ」と、「ヌイ」が「ニ」と、「ツル」が「スル」となった)

  「ミイ・マイ」、MII-MAI((Hawaii)mii=clasp;mai=to indicate direction or motion towards)、「あの(方向に向かって)・(視線を)凝らす(見なさい)」(「ミイ」が「ミ」となった)

  「ケツ・コイ」、KETU-KOI(ketu=remove earth etc.,clear away darkness;koi=sharp,good,suitable)、「目が醒めるように・きれいな(きれいな)」(「ケツ」が「ケッ」となった)

  「イ・タタキ・タナ」、I-TATAKI-TANA(i=past tense,with,by,at,upon;taki,tataki=take to one side,bring along;tana=his,her,its)、「(頭の)上に・(荷物を)載せて運搬する・彼女(達)(魚の行商の女性)」(「タタキ」が「タダキ」と、「タナ」が「サン」となった)

  「アウト・ツ・チア・マ」、AUTO-TU-TIA-MA(auto=trailing behind,slow,dilatory;tu=stand,settle;tia=stick in,drive in pegs etc.;ma=a particle used after names of persons)、「のろのろと・立ちすくみながら・行動する・者(臆病者)」(「アウト」のAU音がO音に変化して「オト」と、「ツ」が「ッ」と、「チア」が「チャ」となった)

  「ホツ・コ(ン)ゲヘ」、HOTU-KONGEHE(hotu=sob,sigh,desire eagerly,chafe with animosity;kongehe=feeble,without strength)、「低脳が・喜んで求めるもの(ばかげている)」(「ホツ」が「ホッ」と、「コ(ン)ゲヘ」のNG音がG音に変化し、H音が脱落して「コゲ」となった)

  「ヒニ・チ・ル」、HINI-TI-RU((Hawaii)hini=weak,feeble,delivate;ti=throw,cast,overcome;ru=shake,agitate,scatter)、「弱く・(圧倒する)力を加え・る(つねる)」(「チ」が「シ」となった)

  「ヒヒ・テ・(ン)ガイ」、HIHI-TE-NGAI(hihi=pull up,draw up;te=crack;ngai=tribe or clan)、「(割れ目)休みを作って・(引き上げる)担当する・部類のやり方(一日おき)」(「ヒヒ」が「ヒシ」と、「(ン)ガイ」のNG音がG音に変化して「ガイ」となった)

  「イツ・ミミ」、ITU-MIMI(itu=side;mimi=make water,urine,stream)、「水が流れ出る・そばの場所(井戸)」(「イツ」が「イズ」と、「ミミ」の反復語尾が脱落して「ミ」となった)

  「オ・ミイ・タ(ン)ガ」、O-MII-TANGA(o=the...of;(Hawaii)mii=attractive,good-looking;tanga=be assembled)、「例の・魅力がある(食材が)・組み合わされているもの(雑炊)」(「ミイ」が「ミー」と、「タ(ン)ガ」のNG音がN音に変化して「タナ」から「サン」となった)

  「ムツ・(ン)ゴイ」、MUTU-NGOI(mutu=finish,brought to an end;ngoi=strength,energey)、「究極の・力がある(味がしつこい)」(「(ン)ゴイ」のNG音がG音に変化して「ゴイ」となった)

  「オタ・チア・コチ」、OTA-TIA-KOTI(ota=unripe,refuse;tia=stick in,drive in pegs etc.;koti=divide,interrupt,cut off)、「(私は未熟な)若いために・行くことを・阻まれてきた(私なんか)」(「チア」が「シャ」と、「コチ」が「コシ」となった)(この解釈は、例文の「オタシャコシいっぺんも行たことない」によりました。)

  「リリ・ク・ツ(ン)ゲヘ」、RIRI-KU-TUNGEHE(riri=be anger,fight,urge with vehemence,chide;ku=silent;tungehe=quail,be alarmed)、「無言で・さも厳めしそうにしているため・(ひるむ)近寄り難い(格好つけたさま)」(「リリ」の反復語尾が脱落して「リ」と、「ツ(ン)ゲヘ」のNG音がG音に変化し、H音が脱落して「ツゲ」となった)

  「ノ・イア」、NO-IA(no=from,belonging to,owing to;ia=indeed)、「ほんとに・(〜なにをして)いるのか(〜のか)」(「イア」が「イヤ」となった)

  「マ(ン)ガマ(ン)ガ・ニヒ」、MANGAMANGA-NIHI(mangamanga=unsteady,tottering;nihi=move stealthly,surprise)、「不確かなことが・そっとやって来て驚く(まれに)」(「マ(ン)ガマ(ン)ガ」の反復語尾が脱落して「マンガ」と、「ニヒ」のH音が脱落して「ニ」となった)

  、MANO-TE-NGANA(mano=thousand,indefinitely large number;te=to make an emphatic statement;ngana=be eagerly intent,obstinate,strong)、「(ここにある限りの)多数が・是非とも・欲しい(全部)」(「マノ」が「マン」と、「テ」が「デ」と、「(ン)ガナ」のNG音がG音に変化して「ガナ」から「ガン」となった)

  「ネネ・(ン)ゴ」、NENE-NGO(nene=jest,be saucy;ngo=cry,grunt)、「(喜びがこみあげてきて)快活に・叫ぶ(自慢)」(「ネネ」が「ネン」と、「(ン)ゴ」のNG音がG音に変化して「ゴ」となった)

  「タ(ン)グル」、TANGURU(deep-toned,gruff,rushing rapid of water)、「奔流のような・重い息をする(咳をする)」(NG音がG音に変化して「タグル」となった)

の転訛と解します。

[愛媛県]

338おらぶ(叫ぶ)・〜なもし・はせだ・かく・まがる・〜わい・がい・おせ・いやたい・まめ・なんちゃ・おへつ・しゃぐ・じゅるい・こぼ・ねぶる・いーえのことよ・くい

 愛媛県の代表的な方言には、「おらぶ」(叫ぶ)(前出国語篇(その十五)の082さけぶ(叫ぶ)の項を参照してください。)、「〜なもし」(〜ねえ)、「いなげ」(奇妙だ)(前出広島県の「いなげ(変だ)」の項を参照してください。)、「はせだ」(仲間はずれ)、「かく」(運ぶ)、「へらこい」(意地が悪い)(前出国語篇(その十五)の113ずるい(狡い)の項を参照してください。)、「だんだん」(ありがとう)(前出国語篇(その十四)の009ありがとう(有り難う)の項を参照してください。)、「まがる」(触る)、「〜わい」(〜よ)、「がい」(ひどいさま)、「おせ」(大人)、「いやたい」(嫌な)、「まめ」(元気だ)、「なんちゃ」(何も)、「おへつ」(おべっか)、「しゃぐ」(轢く)、「じゅるい」(ぬかるんでいる)、「こぼ」(子供)、「ねぶる」(なめる)、「おっちら」(ゆっくり)(前出国語篇(その十六)の213ゆっくりの項を参照してください。)、「いーえのことよ」(どういたしまして)、「くい」(とげ)があります。

 この「〜なもし」、「はせだ」、「かく」、「まがる」、「〜わい」、「がい」、「おせ」、「いやたい」、「まめ」、「なんちゃ」、「おへつ」、「しゃぐ」、「じゅるい」、「こぼ」、「ねぶる」、「いーえのことよ」、「くい」は、

  「ナ・モチ」、NA-MOTI(na=by,made by,belonging to;moti=consumed,scarce,surfeited)、「(これが)全部・ですよ(〜ねえ)」(「モチ」が「モシ」となった)

  「ハテア・タ」、HATEA-TA(hatea=faded,decolourised;ta=dash,beat,lay)、「(仲間の前から姿が)消されて・しまう(仲間はずれ)」(「ハテア」の語尾のA音が脱落して「ハセ」と、「タ」が「ダ」となった)

  「カク」、KAKU(scrape up,scoop up,bruise)、「取り去る(運ぶ)」

  「マ・(ン)ガラフ・レナ」、MA-NGARAHU-RENA(ma=for,by means of,by way of;ngarahu=charcoal,cinder;rena=stretch out,disturbed)、「(火が付いた)木炭(のように熱いもの)・には・(妨害されている)触われない」(「(ン)ガラフ」のNG音がG音に変化し、H音が脱落して「ガラ」と、「レナ」が「レン」となった)(この解釈は、例文の「熱いけん、マガラれんよ」によりました。)

  「ワイ」、WHAI(follow,look for,go in serch of,aim at,practise)、「(〜を)やってのける(〜よ)」

  「(ン)ガイ・ナ」、NGAI-NA(ngai=pant,sob;na=by,belonging to)、「泣きじゃくる・ような(ひどいさま)」(「(ン)ガイ」のNG音がG音に変化して「ガイ」となった)

  「アウ・タエ」、AU-TAE(au=firm,intense;tae=arrive,extend to,touch of feelings,proceed to)、「毅然として・行動する(者。大人)」(「アウ」のAU音がO音に変化して「オ」と、「タエ」のAE音がE音に変化して「テ」から「セ」となった)

  「イア・タイ」、IA-TAI(ia=indeed;tai=tide,anger,rage,violent)、「実に・粗暴な(嫌な)」(「イア」が「イヤ」となった)

  「マハ・メア」、MAHA-MEA(maha=many,abundance;mea=thing,reason,do,deal with,say)、「動き・続ける(元気だ)」(「マハ」のH音が脱落して「マ」と、「メア」の語尾のA音が脱落して「メ」となった)

  「ナナ・チア」、NANA-TIA(nana=by or belonging to him or her;tia=stiCk in,drive in pegs etc.)、「彼(彼女)にとって・行うべきこと(何も)」(「ナナ」が「ナン」とね「チア」が「チャ」となった)(この解釈は、例文の「工場行っても、ナンチャないてや」によりました。)

  「アウ・ハエ・ツ」、AU-HAE-TU(au=firm,intense;hae=slit,cherish envy or jealousy or ill feeling;tu=fight with,energetic)、「懸命に・深刻に・(人の心の中に)妬み心を植え付ける行為(おべっか)」(「アウ」のAU音がO音に変化して「オ」と、「ハエ」のAE音がE音に変化して「ヘ」となった)(なお、「おべっか」は、「オ・ペカ」、O-PEKA(o=the...of;(Hawaii)peka,pekapeka=to tattle,tell tales,act as stool pigeon)、「例の・告げ口をする(おべっか)(「ペカ」が「ベッカ」となった)」と解します。)

  「チ・イア・(ン)グ」、TI-IA-NGU(ti=throw,cast,overcome;ia=indeed;ngu=moan,groan)、「圧倒されて・実に・うめき声を上げる(轢く)」(「チ」が「シ」と、「イア」が「ャ」と、「(ン)グ」のNG音がG音に変化して「グ」となった)

  「チウ・ルヒ」、TIU-RUHI(tiu=swing,swift,unsettled;ruhi=weak,languid)、「ぐじゃぐじゃに・どろどろになつている(ぬかるんでいる)」(「チウ」が「ジュ」と、「ルヒ」のH音が脱落して「ルイ」となった)

  「コ・ポ」、KO-PO(ko=in addressing girls and males;po,popo=crowd round,throng)、「群れて(遊んで)いる・子供たち(子供)」(「ポ」が「ボ」となった)(前出山梨県の「ぼこ(子供)」の項を参照してください。)

  「ネイ・プル」、NEI-PURU(nei,neinei=stretch forward,reaching out;puru=plug,thrust in,cram in)、「ずっと・(舌で)しゃぶる(なめる)」(「ネイ」が「ネ」と、「プル」が「ブル」となった)

  「イヒ・エ・ノ・コトコト・イオ」、IHI-E-NO-KOTOKOTO-IO(ihi=power,spell;e=calling attention or expressing surprise;no=of;kotokoto=small,of no account;io=muscle,twitch)、「ほんの少し・(身体を)動かした・ことによる・力が働いた・だけのことです(どういたしまして)」(「イヒ」のH音が脱落して「イー」と、「コトコト」の反復語尾が脱落して「コト」と、「イオ」が「ヨ」となった)

  「クヒ」、KUHI(insert)、「突き刺さるもの(とげ)」(H音が脱落して「クイ」となった)

の転訛と解します。

[高知県]

339いごっそー(頑固者)・こじゃんと・のーんがわりー・ぞーもむ・へんしも・んがいに・こーべる・〜き・んごぜむし・〜ろー・ひせる・にかーらん・よたんぼ・たまるか・く・ちゃがまる・めっそー

 高知県の代表的な方言には、「いごっそー」(頑固者)(前出雑楽篇(その一)の201いごっそうの項を参照してください。)、「はちきん」(向こう見ずな人)(前出雑楽篇(その一)の202はちきんの項を参照してください。)、「こじゃんと」(徹底的に)、「のーんがわりー」(具合が悪い)、「ぞーもむ」(気をもむ)、「へんしも」(一刻も早く)、「んがいに」(ひどく)、「こーべる」(気取る)、「〜き」(〜から)、「んごぜむし」(ごきぶり)、「〜ちゃ」(〜てば)(前出山口県の「〜ちゃ」(てば・〜さ・〜よ)の項を参照してください。)、「〜ろー」(〜だろう)、「ひせる」(泣き叫ぶ)、「にかーらん」(〜らしい)、「よたんぼ」(酔っぱらい)、「たまるか」(たいへんだ)、「まける」(こぼれる)(前出徳島県の「まける(あふれる)」の項を参照してください。)、「く」(家)、「ちゃがまる」(だめになる)、「めっそー」(あまり)、「んごくんどー」(怠け者)(前出国語篇(その十六)の157なまけもの(怠け者)の項を参照してください。)、「えんこー」(河童)(前出国語篇(その十四)の050かっぱ(河童)の項を参照してください。)、「いられ」(せっかち)があります。

 この「こじゃんと」、「のーんがわりー」、「ぞーもむ」、「へんしも」、「んがいに」、「こーべる」、「〜き」、「んごぜむし」、「〜ろー」、「ひせる」、「にかーらん」、「よたんぼ」、「たまるか」、「く」、「ちゃがまる」、「めっそー」は、

  「コチ・アナ・ト」、KOTI-ANA-TO(koti=divide,cut off(kotinga=boundary line);ana=denoting continuance of action or state;to=drag,haul)、「(境界線)限界に・達する・まで(徹底的に)」(「コチ・アナ」が「コジャン」となった)

  「ノフノフ・(ン)ガワリ」、NOHUNOHU-NGAWARI(nohunohu=unpalatable,nauseous;ngawari=soft,moving easily)、「すぐに・気分が悪くなる(具合が悪い)」(「ノフノフ」のH音が脱落して「ノウノ」から「ノーン」と、「(ン)ガワリ」のNG音がG音に変化して「ガワリー」となった)

  「トフ・モホ・ムフ」、TOHU-MOHO-MUHU(tohu=mark,point out,show;moho=block head,trouble,stupid=;muhu=grope,feel after,push one's way)、「愚か者が・手探りで動くような・行動を見せる(気をもむ)」(「トフ」のH音が脱落して「トウ」から「ゾー」と、「モホ」のH音が脱落して「モ」と、「ムフ」のH音が脱落して「ム」となった)

  「ヘア・ナチ・マウ」、HEA-NATI-MAU(hea=what place?,any place,what time?;nati=pinch or contract;mau=fixed,continuing,caught)、「どれだけの時間を・短縮・できるか(一刻も早く)」(「ヘア」の語尾のA音が脱落して「ヘ」と、「ナチ」が「ンシ」と、「マウ」のAU音がO音に変化して「モ」となった)

  

  「(ン)ガイ・ヌイ」、NGAI-NUI(ngai=pant,sob;nui=large,many)、「たいへん・泣きじゃくるような(ひどく)」(「(ン)ガイ」が「ンガイ」と、「ヌイ」が「ニ」となった)(前出愛媛県の「がい(ひどいさま)」の項を参照してください。)

  「カウパエ・ル」、KAUPAE-RU(kaupae=form of horse or trestle used in raising a heavy ridge-pole;;ru=shake,agitate,scatter)、「奮って・(テントの棟木を馬型支持具で支えるように)仰々しくしつらえる(気取る)」(AU音がO音に、AE音がE音に変化して「コベ」から「コーベ」となった)こーべる」(気取る

  「キ」、KI(to,into,for,in consequence of,by means of)、「〜(の状況)だから(〜から)」

  「(ン)ゴテ・ムイ・チ」、NGOTE-MUI-TI(ngote=suck;mui=swarm round,infest,molest;ti=throw,cast)、「(そこらを)なめ回って・迷惑を・与えるもの(ごきぶり)」(「(ン)ゴテ」が「ンゴゼ」と、「ムイ」が「ム」と、「チ」ガ「シ」となった)

  「ロウ」、ROU(a long stick used to reach anything,reach or procure,stretch out)、「〜(の状況)になっている(〜だろう)」(「ロウ」が「ロー」となった)

  「ヒ・テリ」、HI-TERI(hi=make a hissing noise;teri,teriteri=shake,jolt)、「ヒーヒー泣いて・(手足を)ばたばたさせる(泣き叫ぶ)」(「テリ」が「セリ」となった)(この解釈は、例文の「子供がヒセリよる」によりました。)

  「ニヒ・カラ(ン)ガ」、NIHI-KARANGA(nihi=neap of the tide,move stealthly,come stealthly upon;karanga=call,summon,welcome)、「招集が・近づいている(〜らしい)」(「ニヒ」のH音が脱落して「ニ」と、「カラ(ン)ガ」のNG音がN音に変化して「カラナ」から「カーラン」となった)

  「イオ・タ(ン)ガ・ポイ」、IO-TANGA-POI(io=tough,hard,obstinate;tanga=be assembled;ball,swing)、「しつこく・身体をふらふらさせ・続ける人(酔っぱらい)」(「イオ」が「ヨ」と、「タ(ン)ガ」のNG音がN音に変化して「タナ」から「タン」と、「ポイ」の語尾のI音が脱落して「ボ」となった)

  「タ・マル・ウカ」、TA-MARU-UKA(ta=dash,beat,lay;maru=bruised,crushed,killed;uka=hard,firm,be fixed)、「襲われて・怪我をさせられて・しまう(たいへんだ)」(「まる」の語尾のU音が「ウカ」の語頭のU音と連結して「マルカ」となった)

  「クフ」、KUHU(insert,conceal,cooking-shed)、「(人が)隠れる場所(家)」(H音が脱落して「ク」となった)

  「チ・ア(ン)ガ・マル」、TI-ANGA-MARU(ti=throw,cast;anga=driving force,thing driven etc.;maru=bruised,crushed,killed)、「すごい力が・加わって・破壊された(だめになる)」(「ア(ン)ガ」のNG音がG音に変化して「アガ」となり、「チ・アガ」が「チャガ」となった)

  「メ・ツトフ」、ME-TUTOHU(me=with active verbs to form an optative,to form a mild imperative;tutohu=receive a proposal favourabley,give consent to,point out)、「〜することに同意して・ほしい(あまり)」(「ツトフ」のH音が脱落して「ッソー」となった)(この解釈は、例文の「あの子はメッソーおこられんぞね(あの子はあまり叱ってはいけないよ)」によりました。)

  「イラ・レイ」、IRA-REI(ira=variegated,glitter;rei=leap,rush,run)、「(走るように)急いで・(気分が)変化する人(せっかち)」(「レイ」の語尾のI音が脱落して「レ」となった)

の転訛と解します。

[九州地方]

[福岡県]

340ふつ(よもぎ)・たっぱい・じょーもんさん・びったり・すらごつ・くる・やる・いぼる・こーかる・そーつき・いさぎよか・しろしか・おろよか・えずー・ひょくっと・まいっとき・すいとー・なんの、あーた・〜ばい・〜たい・〜くさ

 福岡県の代表的な方言には、「ふつ」(よもぎ)、「たっぱい」(体格)、「じょーもんさん」(娘さん)、「びったり」(だらしない女)、「すらごつ」(うそ)、「くる」((あなたの所へ)行く)、「やる」(くれる)、「いぼる」(泥の中にめりこむ)、「こーかる」(威張る)、「そーつき」(うろつきまわる)、「いぇずか」(恐ろしい)(前出国語篇(その十四)の030おそろしい(恐ろしい)の項を参照してください。)、「いさぎよか」(さわやかに元気だ)、「しろしか」(うっとうしい)、「おろよか」(よくない)、「えずー」(大変)、「ひょくっと」(ひょっこり)、「まいっとき」(もうしばらく)、「すいとー」(好きだ)、「なんの、あーた」(どう致しまして)、「〜ばい」(〜よ)、「〜たい」(〜さ)、「〜くさ」(〜とも)があります。

 この「ふつ」、「たっぱい」、「じょーもんさん」、「びったり」、「すらごつ」、「くる」、「やる」、「いぼる」、「こーかる」、「そーつき」、「いさぎよか」、「しろしか」、「おろよか」、「えずー」、「ひょくっと」、「まいっとき」、「すいとー」、「なんの、あーた」、「〜ばい」、「〜たい」、「〜くさ」は、

  「プツ」、PUTU(lie in a heap,swell(puputu=close together,of close construction))、「密集して生育するもの(よもぎ)」(P音がF音を経てH音に変化して「フツ」となった)

  「タツ・パイ」、TATU-PAI(tatu=reach the bottom,be at ease,consent;pai=good,excellent,suitable)、「並外れて・すくすくと育った(体格)」(「たつ」が「タッ」となった)

  「チオホ・モナ・タナ」、TIOHO-MONA-TANA(tioho=apprehensive;mona-fat,rich.appetising in good condition;tana=his,her its)、「肥ることを・心配する・彼女(娘さん)」(「チオホ」のH音が脱落して「ジョー」と、「モナ」が「モン」と、「タナ」が「サン」となった)

  「ピタリ」、PITARI(incite,provoke)、「人を立腹させる(だらしない女)」(「びたり」が「ビッタリ」となった)だらしない女

  「ツラ・(ン)ゴ・ツ」、TURA-NGO-TU(tura,turatura=molest,spiteful;ngo=cry,grunt;tu=fight with,energetic)、「躍起になって・意地の悪い・言葉を吐く(うそ)」(「ツラ」が「スラ」と、「(ン)ゴ」のNG音がG音に変化して「ゴ」となった)

  「ク・ウル」、KU-URU(ku=kua=denoting that an action is completed or a condition established at the time indicated,has had,will have;uru=enter,reach a place,arrive)、「間もなく・(あなたの所へ)到着する((あなたの所へ)行く)」(「ク」のU音が「ウル」の語頭のU音と連結して「クル」となった)

  「イ・アモ」、I-AMO(i=past tense,by reason of,for want of,with;amo=carry on the shoudder,rush upon)、「(もらって)肩に担いで・来た(くれる)」(「イ・アモ」が「ヤモ」から「ヤム」、「ヤン」となった)(この解釈は、例文の「おじいちゃんのうちいヤンしちゃった」によりました。)

  「イ・パウル」、I-PAURU(i=past tense,by reason of,belonging to;pauru=pairu=pairua,whakapairua=nausea,feeling of disgust)、「不快な気持ちに・なる(泥の中にめりこむ)」(「パウル」のAU音がO音に変化して「ボル」となった)

  「コフ・カル」、KOHU-KARU(kohu,kohukohu=curse;karu=eye(karukaru=staring angrily))、「怒ったように人を睨み付け・罵る(威張る)」(「コフ」のH音が脱落して「コー」となった)

  「トイ・ツ・ウキ」、TOI-TU-UKI(toi=move quickly,encourage;tu=fight with,energetic;uki=distant times(ukiuki=lasting,continuous))、「躍起になって・長時間・動きまわる(うろつきまわる)」(「トイ」の語尾のI音が脱落して「ソー」と、「ツ」のU音が「ウキ」の語頭のU音とと連結して「ツキ」となった)(この解釈は、例文の「わっかときゃ夜どおしソーツキよった」によりました。)

  「イ・タ(ン)ギ・オカカ」、I-TANGI-OKAKA(i=past tense,by reason of,belonging to;tangi=cry,weep,salute,mourn;okaka=feel a longing,be eager)、「元気よく・敬礼を・する(さわやかに元気だ)」(「タ(ン)ギ」のNG音がG音に変化して「サギ」と、「オカカ」の反復語尾が脱落して「オカ」となり、「サギ・オカ」が「サギヨカ」となった)

  「チロ・チカ」、TIRO-TIKA(tiro=look;tika=streight,right,correct(tikanga=rule,custom,anything normal or usual))、「(毎日毎日が)判で押したように・見える(うっとうしい)」(「チロ」が「シロ」と、「チカ」が「シカ」となった)

  「ホロイ・オカカ」、HOROI-OKAKA(horoi=cleanse,wash,wipe;okaka=feel a longing,be eager)、「懸命に・清浄しなればならないもの(よくない)」(「ホロイ」のH音が脱落して「オロイ」と、「オカカ」の反復語尾が脱落して「オカ」となり、「オロイ・オカ」が「オロヨカ」となった)

  「エ・ツ」、E-TU(e=to give emphasis;tu=fight with,energetic)、「たいへん・努力する(大変)」(「ツ」が「ズー」となった)

  「ヒオイ・クツ・ト」、HIOI-KUTU-TO(hioi=thin,lean;kutu=louse;to=drag,haul)、「(ごく稀に)突然・しらみが・物を引っ張るように(ひょっこり)」(「ヒオイ」の語尾のI音が脱落して「ヒョ」と、「クツ」が「クッ」となった)(なお、「ひょっこり」は、「ヒオイ・ツコリピ」、HIOI-TUKORIPI(hioi=thin,lean;tukoripi=act as a vagabond)、「(ごく稀に)突然・漂泊者が現れるように(ひょっこり)」(「ヒオイ」の語尾のI音が脱落して「ヒョ」と、「ツコリピ」の語尾のP音が脱落して「ッコリ」となった)と解します。)

  「マイチ・トキ」、MAITI-TOKI(maiti=small;toki=fetch)、「すこし(の時間を)・(保持する)待つ(もうしばらく)」(「マイチ」が「マイッ」となった)

  「ツヒ・トフ」、TUHI-TOHU(tuhi=redden,glow,gleam;tohu=mark,point out,show,look towards)、「赤くなって・前を見る(好きだ)」(「ツヒ」のH音が脱落して「スイ」と、「トフ」のH音が脱落して「トー」となった)

  「ナナ・ノホ・アタ」、NANA-NOHO-ATA(nana=by or belonging to him or her;noho=sit,settle;ata=gently,clearly,deliberately,quite)、「あなたのために・誠実に・致しました(どう致しまして)」(「ナナ」が「ナン」と、「ノホ」のH音が脱落して「ノ」と、「アタ」が「アータ」となった)

  「パイ」、PAI(good,suitable,pleasant,good-looking)、「(〜ということは)喜ばしいことだ(〜よ)」(「パイ」が「バイ」となった)

  「タイ」、TAI(dash,strike,knock,brush)、「(軽く触る)〜したものだ(〜さ)」

  「クタ」、KUTA(encumbrance or clog as old and infirm people on a march)、「(大勢には影響がない邪魔者)何と言うことはないもの(〜とも)」(「クタ」が「クサ」となった)

の転訛と解します。

[佐賀県]

341なーい(はい)・うーばんぎゃーか・ざーざーざーで・あさん・ぎゃーけ・ごっとい・ちかっと・あえる・ゆんにゅ・〜かんた・ちーはしっ・しっきゃー・りっぱか・〜なたー・ほとめく・みたんなか・おちゃご・きたんぼらっか・いたてくっ・とんこずく

 佐賀県の代表的な方言には、「なーい」(はい)、「うーばんぎゃーか」(おおまかだ)、「ざーざーざーで」(ざあざあと)、「あさん」(あなた)、「ぎゃーけ」(風邪)、「ごっとい」(ずっと)、「ちかっと」(ほんの少し)、「あえる」(雨や実が落ちる)、「ゆんにゅ」(よけいに)、「よめくさん」(お嫁さん)(前出国語篇(その十六)の216よめ(嫁)の項を参照してください。)、「えすか」(恐ろしい)(前出国語篇(その十四)の030おそろしい(恐ろしい)の項を参照してください。)、「〜かんた」(〜かい)、「やーらしか」(かわいい)(前出国語篇(その十四)の058かわいい(可愛い)の項を参照してください。)、「ちーはしっ」(うかつにも〜する)、「しっきゃー」(全部)、「りっぱか」(美しい)、「〜なたー」(〜ねえ)、「ほとめく」(もてなす)、「みたんなか」(みっともない)、「おちゃご」(結納の宴会)、「きたんぼらっか」(きたない)、「いたてくっ」(行って来る)、「とんこずく」(子供が反抗する)があります。

 この「うーばんぎゃーか」、「ざーざーざーで」、「あさん」、「ぎゃーけ」、「ごっとい」、「ちかっと」、「あえる」、「ゆんにゅ」、「〜かんた」、「ちーはしっ」、「しっきゃー」、「りっぱか」、「〜なたー」、「ほとめく」、「みたんなか」、「おちゃご」、「きたんぼらっか」、「いたてくっ」、「とんこずく」は、

  「ナイ」、NAI(=nei=here)、「ここに(あります)(はい)」

  「ウパネ・(ン)ギア・カハ」、UPANE-NGIA-KAHA(upane=abreast,in even rank;ngia=seem,appear to be;kaha=ridge of a hill)、「山の稜線を・横一線だと・見ている(おおまかだ)」(「ウパネ」が「ウーバン」と、「(ン)ギア」のNG音がG音に変化して「ギャー」と、「カハ」のH音が脱落して「カ」となった)

  「タタ・タテ」、TATA-TATE(tata=near,suddenly;tate,tatetate=rattle,make any sharp recurring noise,tick)、「s突然・鋭い反復する音がしてきた(ざあざあと)」(「タタ」が「ザーザー」と、「タテ」が「ザーデ」となった)

  「ア・タナ」、A-TANA(a=particle used before names of persons,before personal pronouns;tana=his,her,its)、「(あの)・あなた(あなた)」(「タナ」が「サン」となった)

  「(ン)ギア・ケ」、NGIA-KE(ngia=seem,appear to be;ke=different,strange,otherwise)、「(平常と)変わった(体調を)・感ずる(風邪)」(「(ン)ギア」のNG音がG音に変化して「ギャー」となった)

  「(ン)ガウ・ツ・トイ」、NGAU-TU-TOI(ngau=wander,go about;tu=fight with,energetic;toi=move quickly,encourage)、「精力的に・奮って・歩き回る(ずっと)」(「(ン)ガウ」のNG音がG音に、AU音がO音に変化して「ゴ」と、「ツ」が「ッ」となった)

  「チカ・ツトフ」、TIKA-TUTOHU(tika=streight,direct,just,right,;tutohu=give consent to,point out,indicate,direct)、「すぐ近くにあることを・示している(ほんの少し)」(「ツトフ」のH音が脱落して「ット」となった)

  「ハエ」、HAE(slit,tear,cut)、「(天から雨が切り離される)落ちる(雨や実が落ちる)」(H音が脱落して「アエー」となった)(この解釈は、例文の「ほあら、雨のアエーようごたる」によりました。)

  「ヰウ(ン)ガ・ヌイ」、WHIUNGA-NUI(whiunga=plaited border of a cloak;nui=large,many)、「上着の縁のひだを・大きく作っている(よけいに)」(「ヰウ(ン)ガ」のWH音が脱落し、NG音がN音に変化して「イウナ」から「ユン」と、「ヌイ」が「ニュ」となった)

  「カネヘ・タ」、KANEHE-TA(kanehe=trifle,desire,yearning,fond;ta=dash,beat,lay)、「(望みの)好みのことを・している(〜かい)」(「カネヘ」のH音が脱落して「カン」となった)

  「チヒ・パチパチ・ツ」、TIHI-PATIPATI-TU(tihi=summit,top;patipati=flattering,depriving,not to be depend upon;tu=stand,settle)、「(最高に)全く・惑わされて・しまった(うかつにも〜する)」(「チヒ」のH音が脱落して「シー」と、「パチパチ」の反復語尾が脱落し、P音がF音を経てH音に変化して「ハシ」と、「ツ」が「ッ」となつた)

  「チ・イツ・キア」、TI-ITU-KIA(ti=throw,cast,overcome;itu=side;kia=to denote wish or purpose or effect)、「端(から端まで)を・(支配する)対象と・する(全部)」(「チ」のI音が「イツ」の語頭のI音と連結して「シツ」から「シッ」と、「キア」が「キャー」となった)

  「リパ・アカ」、RIPA-AKA(ripa=ridge,horizen,row,rank;aka=clean off,scrape away)、「清浄になった・等級の(美しい)」(「リパ」が「リッパ」となり、その語尾のA音が「アカ」の語頭のA音と連結して「リッパカ」となつた)

  「(ン)ガタ」、NGATA(appeased,satisfied)、「(苦痛、不安などを慰める)和らげる(〜ねえ)」(NG音がN音に変化して「ナター」となった)

  「ハウ・ト・メケメケ」、HAU-TO-MEKEMEKE(hau=food used in the ceremonies;to=drag.haul;mekemeke=assembled)、「(お祭りのような)ご馳走を・集めて・提供する(もてなす)」(「ハウ」のAU音がO音に変化して「ホ」と、「メケメケ」の反復語尾が脱落して「メケ」となった)(この解釈は、例文の「こんにゃホトメッけん家さん来んこう?」によりました。)

  「ミヒ・タ(ン)ガ・ナカ」、MIHI-TANGA-NAKA(mihi=sigh for,greet,express discomfort;tanga=be assembled;naka=denoting position near or connection with the person spoken to)、「(人を)不快にさせるもの(服装、ふるまいなど)を・身に・付けている(みっともない)」(「ミヒ」のH音が脱落して「ミ」と、「タ(ン)ガ」のNG音がN音に変化して「タン」となった)

  「オチ・ア(ン)ゴ」、OTI-ANGO(oti=finished,gone or come for good;ango=gape,be open,of things not fitting together)、「(結納が)完了して・(新たな親戚付き合いが)始まる(ことを祝う。結納の宴会)」(「ア(ン)ゴ」のNG音がG音に変化して「アゴ」となり、「オチ・アゴ」が「オチャゴ」となった)

  「キ・タ(ン)ガ・ポラカ」、KI-TANGA-PORAKA(ki=full,very;tanga=be assembled;poraka=cryfish pot)、「たくさん・えび(漁の)籠が・集まっている(きたない)」(「タ(ン)ガ」のNG音がN音に変化して「タン」と、「ポラカ」が「ボラッカ」となった)

  「イタ・テ・ク・ツツ」、ITA-TE-KU-TUTU(ita=tight,fast;te=to make an emphatic statement;ku=kua=denotingthat an action is completed or a condition established;tutu=move with vigour)、「ほんの・ちょっと・行って・(仕事を終えて)帰って来る(行って来る)」(「ツツ」の反復語尾が脱落して「ッ」となった)

  「ト(ン)ガコ・ツク」、TONGAKO-TUKU(tongako=scab,fester;tuku=let go,allow,set to,settle)、「(心が化膿する)不満が渦巻いて・わだかまる(子供が反抗する)」(「ト(ン)ガコ」のNG音がN音に変化して「トンコ」と、「ツク」が「ズク」となった)

の転訛と解します。

[長崎県]

342さとやのとーか(甘みがうすい)・あいたー・いっちょん・ばちかぶる・あらかぶ・よんにゅー・なおす・ばさらっか・どーはっしぇん・ほーらっか・さびなか・〜とよ・さるき・はわく・よそわしか・とす・がっしょく

 長崎県の代表的な方言には、「さとやのとーか」(甘みがうすい)、「あいたー」(あっ)、「いっちょん」(ちっとも)、「ばちかぶる」(罰があたる)、「どんく」(蛙)(前出国語篇(その十四)の039かえる(蛙)の項を参照してください。)、「あらかぶ」(かさご)、「よんにゅー」(たくさん)、「なおす」(元に返す)、「ばさらっか」(ずさんだ)、「どーはっしぇん」(落花生)、「ほーらっか」(でたらめだ)、「さびなか」(味付けがうすい)、「〜とよ」(〜のよ)、「さるき」(歩きまわる)、「きゃーなえる」(ひどく疲れる)(前出国語篇(その十五)の133つかれた(疲れた)の項を参照してください。)、「ひゃくひろ」(鯨の腸)(前出国語篇(その十六)の169はらわた(腸)の項を参照してください。)、「せからしか」(やかましい)(前出国語篇(その十四)の018うるさい(煩い。五月蠅い)の項を参照してください。)、「はわく」(掃く)、「よそわしか」(きたない)、「とす」(吐く)、「びーどろ」(つらら)(前出国語篇(その十五)の142つらら(氷柱)の項を参照してください。)、「がっしょく」(不仲)があります。

 この「あいたー」、「いっちょん」、「ばちかぶる」、「あらかぶ」、「よんにゅー」、「なおす」、「ばさらっか」、「どーはっしぇん」、「ほーらっか」、「さびなか」、「〜とよ」、「さるき」、「はわく」、「よそわしか」、「とす」、「がっしょく」は、

  「タタウ・イア・ノホ・タウカ」、TATAU-IA-NOHO-TAUKA(tatau=draw or push a sliding board,squeeze,express;ia=indeed;noho=sit,settle;tauka=stay,wait a while)、「実に・(甘味を)入れるのを・少し・控えた(甘みがうすい)」(「タタウ」のAU音がO音に変化して「タト」から「サト」と、「イア」が「ヤ」と、「ノホ」のH音が脱落して「ノ」と、「タウカ」のAU音がO音に変化して「トーカ」となった)

  「アイ・タ」、AI-TA(ai=expressing surprise;ta=a term of address with certain tribes,friend!)、「あっ・友よ(あっ)」(「タ」が「ター」となった)

  「イ・ツ・チオニオニ」、I-TU-TIONIONI(i=past tense,by,by reason of,by way of;tu=fight with,energetic;tionioni=waggle,flutter,hover as a bird remaining)、「懸命に・(浮かんで)一箇所に止まって・いる(前進しないでいる)(ちっとも)」(「ツ」が「ッ」と、「チオニオニ」の反復語尾が脱落して「チョン」となった)

  「パ・チ・カプ・ル」、PA-TI-KAPU-RU(pa=strike,assault,be struck;ti=throw,cast,overcome;kapu=hollow of the hand,close the hand;ru=shake,agitate,scatter)、「打撃が・加えられて・手の中に・置かれる(罰があたる)」(「パ」が「バ」と、「カプ」が「カブ」となった)

  「アラ・カプ」、ARA-KAPU(ara=rise,raise;kapu=close the hand,curly of the hair)、「(頭部が突出して)大きくて・鰭が波打っている魚(かさご)」(「カプ」が「カブ」となった)(関東地方では「かさご」と呼びます。この「かさご」は「カタ・(ン)ガウ」、KATA-NGAU(kata=laugh(kakata=brown,rusty colour);ngau=bite,hurt,attack)、「大きく口を開けて(または紅褐色の)・餌に食いつく魚(かさご)」(「カタ」が「カサ」と、「(ン)ガウ」のNG音がG音に、AU音がO音に変化して「ゴ」となった)と解します。)

  「イオ・ヌヌイ」、IO-NUNUI(io=tough,hard,obstinate;nunui=large,many)、「たいへん・多数(たくさん)」(「イオ」が「ヨ」と、「ヌヌイ」が「ンニュー」となった)

  「ナ・オチ」、NA-OTI(na=by,belonging to;oti=finished,gone or come for good)、「(いい状態)元の状態に・する(元に返す)」(「オチ」が「オシ」となった)(この解釈は、例文の「早うナオシておかんねえ」によりました。)

  「パ・タラ・ツカハ」、PA-TARA-TUKAHA(pa=reach,strike,operate on;tara=loose,separate;tukaha=strenuous,vigorous,headstrong)、「勝手気ままに・規律のない・仕事をする(ずさんだ)」(「パ」が「バ」と、「タラ」が「サラ」と、「ツカハ」のH音が脱落して「ッカ」となった)

  「トフ・パツ・チエ(ン)ガ」、TOHU-PATU-TIENGA(tohu=mark,point out,show;patu=strike,beat;tienga=tianga=mat to lie on)、「(敷物)地面を・突き・刺しているように見える植物(落花生)」(「トフ」のH音が脱落して「ドー」と、「パツ」のP音がF音を経てH音に変化して「ハッ」と、「チエ(ン)ガ」のNG音がN音に変化して「シェン」となった)

  「ホラ・ツカハ」、HORA-TUKAHA(hora=scatter over a surface,spread out,display;tukaha=strenuous,vigorous,headstrong)、「勝手気ままに・さらけ出す(でたらめだ)」(「ホラ」が「ホーラ」と、「ツカハ」のH音が脱落して「ツカ」となった)

  「タ・アピ・ナ・アカ」、TA-API-NA-AKA(ta=the...of;api,apiapi=crowded,dense;na=by,belonging to;aka=clean off,scrape away)、「例の(味の)・濃さが・取り去った・ようだ(味付けがうすい)」(「タ」のA音が「アピ」の語頭のA音と連結して「サビ」と、「ナ」のA音が「アカ」の語頭のA音と連結して「ナカ」となった)

  「トイ・アウ」、TOI-AU(toi=move quickly;au=firm,intense)、「しっかり・走り去った(終わった)(〜のよ)」(「アウ」のAU音がO音に変化して「オ」となり、「トイ・オ」が「トヨ」となった)

  「タ・アル・ウキ」、TA-ARU-UKI(ta=the...of;aru=follow,pursue;uki,ukiuki=old,lasting,continuous)、「例の・(人を追うように)歩き・続ける(歩き回る)」(「タ」のA音が「アル」の語頭のA音と連結して「サル」となり、その「サル」の語尾のU音が「ウキ」の語頭のU音と連結して「サルキ」となった)(この解釈は、例文の「よう公園ばサルキよらす」によりました。)

  「ワ・ワカニ」、WHA-WHAKANI(wha=leaf;whakani=rub backwards and forwards,saw)、「木の葉を・(箒を)前後に動かして掃く(掃く)」(「ワ」のWH6音がH音に変化して「ハ」と、「ワカニ」が「ワカン」となった)(この解釈は、例文の「はよう庭をハワカんねえ」によりました。)

  「イオ・トワ・チ・カ」、IO-TOWHA-TI-KA(io=tough,hard,obstinate;towha=toha=spread out;ti=throw,cast;ka=to denote the commencement of a new action or condition)、「(汚れを)しっかりと・広げて・撒き・ちらす(きたない)」(「イオ」が「ヨ」と、「トワ」が「ソワ」と、「チ」が「シ」となった)

  「ト・チ」、TO-TI(to=drag,haul;ti=throw,cast)、「(胃から)引き出して・まき散らす(吐く)」(「チ」が「シ」となった)(この解釈は、例文の「食べ過ぎてようトシてばい」によりました。)

  「(ン)ガツ・チ・ホコイ」、NGATU-TI-HOKOI(ngatu=crushed,mashed;ti=throw,cast,overcome;hokoi=beloved)、「愛し合っていたのが・壊れて・しまった(不仲)」(「(ン)ガツ」のNG音がG音に変化して「ガッ」と、「チ」が「シ」と、「ホコイ」のH音が脱落し、OI音がU音に変化して「オク」となり、「シ・オク」が「ショク」となった)

の転訛と解します。

[熊本県]

343わさもん(流行に素早い人)・むしゃんよか・のさる・はいよ・あくしゃうつ・やりばなし・もだえる・おこなえん・あばかん・ふのよか・とぜんなか・おろ・あとぜき・いろく・うーばんぎゃー・うったつ・こずむ・じんべん・なんさま・よんにゅー・きっちゃする

 熊本県の代表的な方言には、「わさもん」(流行に素早い人)、「むしゃんよか」(かっこいい)、「のさる」(恵まれる)、「はいよ」(ください)、「あくしゃうつ」(困り果てる)、「やりばなし」(無鉄砲だ)、「もだえる」(あせる)、「もっこす」(頑固者)(前出国語篇(その十四)の060がんこ(頑固)の項を参照してください。)、「おこなえん」(耐えられない)、「あばかん」(たくさん)、「ふのよか」(運がいい)、「とっけむにゃー」(とんでもない)(前出国語篇(その十五)の150とんでもないの項を参照してください。)、「とぜんなか」(寂しい)、「おろ」(あまり〜でない)、「あとぜき」(あと閉め)、「いろく」(乾燥する)、「うーばんぎゃー」(おおざっぱだ)、「うったつ」(盛装する)、「こずむ」(積み上げる)、「じんべん」(不思議だ)、「なんさま」(とにかく)、「よんにゅー」(余るほど)、「きっちゃする」(つらそうにする)があります。

 この「わさもん」、「むしゃんよか」、「のさる」、「はいよ」、「あくしゃうつ」、「やりばなし」、「もだえる」、「おこなえん」、「あばかん」、「ふのよか」、「とぜんなか」、「おろ」、「あとぜき」、「いろく」、「うーばんぎゃー」、「うったつ」、「こずむ」、「じんべん」、「なんさま」、「よんにゅー」、「きっちゃする」は、

  「ワタ・モナ」、WATA-MONA(wata=object of desire;mona=for him,for her)、「(興味があるものを)熱烈に欲しがる・彼(彼女)(流行に素早い人)」(「ワタ」が「ワサ」と、「モナ」が「モン」となつた)

  「ム・チ・アナ・イオ・カ」、MU-TI-ANA-IO-KA(mu=silent;ti=throw,cast;ana=there,calling immediate attention;io=tough,hard,obstinate:ka=take fire,burn,be lighted)、「黙って・いて・何と・大変・輝いている(かっこいい)」(「チ・アナ」が「シャン」と、「イオ」が「ヨ」となった)

  「ノホ・タツ」、NOHO-TATU(noho=sit,stay,settle;tatu=reach the bottom,be content)、「ようやく・(夫婦の間に止まった)授かった(恵まれる)」(「ノホ」のH音が脱落して「ノ」と、「タツ」が「サッ」となった)(この解釈は、例文の「むぞがるくさ、ようよノサッた初孫だもの」によりました。)

  「ハイ・イオ」、HAI-IO(hai=hei=go towards,turn towards,be requited;io=tough,hard,obstinate)、「(代金の代わりの物を)しっかりと・渡してください(ください)」(「イオ」が「ヨ」となった)

  「ア・クチア・ウツ」、A-KUTIA-UTU(a=the...of,drive,urge,compel;kuti,kutia=draw tightly together,contract,pinch;utu=return for anything,make response)、「(何かの)対応が・強い力で・封じ込まれている(困り果てる)」(「クチア」が「クシャ」となった)

  「イア・リパ・ナチ」、IA-RIPA-NATI(ia=indeed;ripa=ridge,side,edge,boundary;nati=pinch or contract)、「実に・端が・狭い(余裕がない)(無鉄砲だ)」(「イア」が「ヤ」と、「リパ」が「リバ」と、「ナチ」が「ナシ」となった)

  「マウ・タエ・ル」、MAU-TAE-RU(mau=fixed,caught,entangled,expressing feeling of horror or admiration;tae=arrive,reach,touch of feelings,be overcome;ru=shake,agitate,scatter)、「(恐れの気持ち)心配に・押しつぶされ・る(あせる)」(「マウ」のAU音がO音に変化して「モ」と、「タエ」が「ダエ」となった)(この解釈は、例文の「間に合うどかてモダエち息の切れた」によりました。)

  「オコオコ・ナ・エ(ン)ガ」、OKOOKO-NA-ENGA(okooko=carry in the arms,nurse;na=by,belonging to,by reason of;enga=anxiety)、「(なすべき仕事などを)抱えて行くことが・どうにも・不安だ(耐えられない)」(「オコオコ」の反復語尾が脱落して「オコ」と、「エ(ン)ガ」のNG音がN音に変化して「エン」となった)

  「アパアパ・カノ」、APAAPA-KANO(apaapa=heap;kano=colour,kind,seed(kakano=texture,stock))、「在庫が・山のようだ(たくさん)」(「アパアパ」」の反復語尾が脱落して「アバ」と、「カノ」が「カン」となった)

  「フ(ン)ゴイ・イオ・カ」、HUNGOI-IO-KA(hungoi=father-in-law,mother-in-law;io=tough,hard,obstinate:ka=kainga=place of abode(whakakainga-make a home))、「義理の父(または母)が・しっかり・家庭を作る(家庭的な人だ)(運がいい)」(「フ(ン)ゴイ」のNG音がN音に変化し、語尾のI音が脱落して「フノ」と、「イオ」が「ヨ」となった)

  「タウテ・ナナ・カ」、TAUTE-NANA-KA(taute=mature,tend,mourn;nana=raging,in a passion;ka=by or belonging to,to denote the commencement of a new action or condition)、「嘆き悲しむ・気持ちが湧いて・くる(寂しい)」(「タウテ」のAU音がO音に変化して「トゼ」と、「ナナ」が「ンナ」となった)

  「オロ」、ORO(sharpen on a stone,defame(orooro=be annihilated;oroko=(with a negative)only just))、「(すり減らされて)少なくなっている(あまり〜でない)」

  「アウト・テキ」、AUTO-TEKI(auto=trailing behind;teki=scrape lightly,graze)、「(人の)後を追って・(戸をこする)引いて閉める(あと閉め)」(「アウト」のAU音がA音に変化して「アト」と、「テキ」が「ゼキ」となった)

  「イ・ラウ・カ」、I-RAU-KU(i=from,with,by reason of;rau=hundred,multitude;ka=take fire,burn,be lighted)、「十分に・火に・かざす(かける)(乾燥する)」(「ラウ」のAU音がO音に変化して「ロ」となった)(この解釈は、例文の「雨だけん洗濯物なイロカんばい」によりました。)

  「ウパネ・(ン)ギア」、UPANE-NGIA(upane=abreast,in even rank;ngia=seem,appear to be)、「(何でも)横一線だと・見ている(おおざっぱだ)」(「ウパネ」が「ウーバン」と、「(ン)ギア」のNG音がG音に変化して「ギャー」となった)(前出佐賀県の「うーばんぎゃーか(おおまかだ)」の項を参照してください。)

  「ウツ・タツア」、UTU-TATUA(utu=return for anything,satisfaction,make response,etc.;tatua=girdle,put on as a girdle)、「満足するだけの・(女性用の)飾り帯で飾り立てる(盛装する)」(「ウツ」が「ウッ」と、「タツア」の語尾のA音が脱落して「タツ」となった)

  「コ・ツ(ン)ガ」、KO-TUNGA(ko=togive emphasis,(at place)to,at;tunga=circumstance of standing(whakatu=erect,set up,raise))、「(そこに)積み・上げる(積み上げる)」(「ツ(ン)ガ」のNG音がN音に変化して「ツナ」から「ズン」となった)(この解釈は、例文の「そけコズンどけ」によりました。)

  「チネイ・ペナ」、TINEI-PENA(tinei,tineinei=unsettled,disordered;pena=like that,in that way)、「不規則な(予測できない)・やり方(珍しい。不思議だ)」(「チネイ」が「ジン」と、「ペナ」が「ペン」となった)(前出長崎県民謡のぶらぶら節の「じんぺん(神変)」の項を参照してください。)

  「ナナ・タマ」、NANA-TAMA(nana=tend carefully,nurse,raging,in a passion;tama=son,man,in a number of proverbial expression)、「人の・気が高ぶる(苛立つ)(とにかく)」(「ナナ」が「ナン」と、「タマ」が「サマ」となった)

  「イオ・ヌヌイ」、IO-NUNUI(io=tough,hard,obstinate;nunui=large,many)、「じゅうぶん・たくさん(余るほど)」(「イオ」が「ヨ」と、「ヌヌイ」が「ンニュー」となった)

  「キ・チア・チ」、KI-TIA-TI(ki=full,very;tia=squeek,tingle;ti=throw,cast)、「たいへん・痛そうな様子を・見せる(つらそうにする)」(「キ」が「キッ」と、「チア」が「チャ」と、「チ」が「シ」となった)(この解釈は、例文の「キッチャシてあそぶ元気もなか」によりました。)

の転訛と解します。

[大分県]

344なえ(地震)・だいやー・ほかう・さかしー・つば・いら・かぶで・〜だい・〜たむねー・よだきー・しゃっち・よだつ・あんびょーねー・ひだりー・いのちき・いれくる

 大分県の代表的な方言には、「なえ」(地震)、「よーらく」(つらら)(つらら)(前出国語篇(その十五)の142つらら(氷柱)の項を参照してください。)、「さるがりー」(肩車)(前出国語篇(その十四)の046かたぐるま(肩車)の項を参照してください。)、「ひちんぼ」(片足とび)(前出国語篇(その十四)の045かたあしとび(片足跳び)の項を参照してください。)、「だいやー」(あらまあ)、「ほかう」(御神酒を捧げる)、「さかしー」(壮健だ)、「つば」(唇)、「いら」(魚の鱗)、「かぶで」(全く)、「〜だい」(〜よ)、「〜たむねー」(〜たい気にならない)、「よだきー」(おっくうだ)、「しゃっち」(強いて)、「よだつ」(心を決める)、「いろく」(乾燥する)(前出熊本県の「いろく(乾燥する)」の項を参照してください。)、「あんびょーねー」(心配だ)、「ひだりー」(空腹だ)、「いのちき」(生計)、「のさる」(天から授かる)(前出熊本県の「のさる(恵まれる)」の項を参照してください。)、「がまる」(からかう)(前出国語篇(その十四)の057からかうの項を参照してください。)、「いれくる」(ごまかす)があります。

 この「なえ」、「だいやー」、「ほかう」、「さかしー」、「つば」、「いら」、「かぶで」、「〜だい」、「〜たむねー」、「よだきー」、「しゃっち」、「よだつ」、「あんびょーねー」、「ひだりー」、「いのちき」、「いれくる」は、

  「ナヱ」、NAWE(be set on fire,be kindled or excited as feelings,be at fault,scar)、「(地面に)断層ができた(地震)」(「ナヱ」のWE音がE音に変化して「ナエ」となった)(古典篇(その八)の219H3玉田(タマタ)宿禰の項の「地震(なゐふる)」を参照してください。)

  「タイ・イア」、TAI-IA(tai=sometimes with a qualifying force;ia=indeed)、「何と・実に(あらまあ)」(「タイ」が「ダイ」と、「イア」が「ヤー」となった)

  「ハウ・カウ」、HAU-KAU(hau=food used in the ceremonies;kau=only,as soon as)、「(神事にあたって)最初に神に供える・食事(御神酒を捧げる)」(「ハウ」のAU音がO音に変化して「ホ」となった)

  「タカ・チヒ」、TAKA-TIHI(taka=heap,lie in a heap;tihi=summit,top)、「(体調が)最高に・好調だ(壮健だ)」(「タカ」が「サカ」と、「チヒ」のH音が脱落して「シー」となった)

  「ツ・パハハ」、TU-PAHAHA(tu=stand,settle;pahaha=split open,ripped up)、「(顔の)割れて開く(場所に)・あるもの(唇)」(「パハハ」のH音が脱落して「バ」となった)

  「イラ」、IRA(freckle,other natural mark on the skin,variegated)、「(魚の皮膚に付いている)キラキラと変色するもの(魚の鱗)」

  「カ・プテテ」、KA-PUTETE(ka=to denote the commencement of a new action or condition;putete=tie or knot as a bag or cloth etc.)、「(すべてを)ひとまとめに・してしまう(全く)」(「プテテ」の反覆語尾が脱落して「ブデ」となった)

  「タイ」、TAI(dash,strike,knock,brush)、「(強く主張する)〜だ(〜よ)」(「タイ」が「ダイ」となった)

  「タ・アム・ネイ」、TA-AMU-NEI(ta=dash,beat,lay;amu=grumble,begrudge,complain;nei=stretched foeward,reaching out)、「〜することを・嫌がる気持ちが・いっぱいだ(〜たい気にならない)」(「タ」のA音が「アム」の語頭のA音と連結して「タム」と、「ネイ」が「ネー」となった)

  「イオ・タキ・イヒ」、IO-TAKI-IHI(io=tough,hard,obstinate;taki=track,lead,recite,challenge;ihi=shudder,coward)、「丹念に・仕事をするのが・(臆病だ)気後れがする(おっくうだ)」(「イオ」が「ヨ」と、「タキ」が「ダキ」となり、その語尾のI音が「イヒ」の語頭のI音と連結し、H音が脱落して「ダキー」となつた)

  「チ・アチアチ」、TI-ATIATI(ti=throw,cast,overcome;atiati=drive away)、「圧倒する勢いで・強要する(強いて)」(「チ」ガ「シ」となり、「アチアチ」の反覆語尾が脱落して「シ・アチ」から「シャッチ」となった)

  「イオ・タタ」、IO-TATA(io=tough,hard,obstinate;tata=wag,nod(whakatata=approuch))、「しっかりと・(どうするかを決めて)返答する(心を決める)」(「イオ」が「ヨ」と、「タタ」が「ダタ」となった)(この解釈は、例文の「不精もな、いいころヨダタにゃええせん」によりました。)

  「アナ・ピオ・ネイ」、ANA-PIO-NEI(ana=denoting continuance of action or state;pio=extinguished,go out;(Hawaii)pio=captive,prisoner,victim;nei=stretched foeward,reaching out)、「(人が)消えて(または囚人になって)・しまって・いる(心配だ)」(「アナ」が「アン」と、「ピオ」が「ビョー」と、「ネイ」が「ネー」となった)

  「ヒタリタリ」、HITARITARI(tease,provoke)、「(人に何かを)しつこくせがんだり怒りっほくなる(空腹だ)」(反覆語尾が脱落して「ヒタリ」から「ヒダリー」となった)

  「イノ・チキ」、INO-TIKI(ino=momo=in good condition,well proportioned;tiki=fetch,proceed to do anything,go for a purpose)、「(仕事や生活を)良好な具合に・営む(生計)」

  「イ・レヘア・クル」、I-REHEA-KURU(i=from,with,by reason of,by way of;rehea=be balked,be baffled;kuru=strike with the fist,pelt)、「(人を)惑わ・せて・叩く(ごまかす)」(「レヘア」のH音および語尾のA音が脱落して「レ」となった)

の転訛と解します。

[宮崎県]

345てげ(たいそう)・〜じー・かせー・のさん・よくー・〜こっせん・いっぺこっぺ・はげらしー・ふ・せちー・あば・ふむ・むげねー・なんご・まこち・えじー

 宮崎県の代表的な方言には、「てげ」(たいそう)、「よだきー」(おっくうだ)(前出大分県の「よだきー(おっくうだ)」の項を参照してください。)、「〜じー」(〜よ)、「ぐらしー」(かわいそうだ)(前出国語篇(その十四)の059かわいそう(可哀相)の項を参照してください。)、「かせー」(手伝い)、「のさん」(身体がだるい)、「あたれー」(もったいない)(前出国語篇(その十六)の207もったいないの項を参照してください。)、「よくー」(休む)、「〜こっせん」(〜ではないか)、「いっぺこっぺ」(一所懸命)、「はげらしー」(くやしい)、「けしぬ」(死ぬ)(前出国語篇(その十五)の094しぬ(死ぬ)の項を参照してください。)、「ふ」(運)、「せちー」(苦しい)、「だれる」(疲れる)(前出国語篇(その十五)の133つかれた(疲れた)の項を参照してください。)、「あば」(新品)、「ふむ」(履く)、「むげねー」(悲しい)、「なんご」(遊び)、「かざむ」(嗅ぐ)(前出国語篇(その十四)の042かぐ(嗅ぐ)の項を参照してください。)、「まこち」(ほんとうに)、「えじー」(賢い)があります。

 この「てげ」、「〜じー」、「かせー」、「のさん」、「よくー」、「〜こっせん」、「いっぺこっぺ」、「はげらしー」、「けしぬ」、「ふ」、「せちー」、「あば」、「ふむ」、「むげねー」、「なんご」、「まこち」、「えじー」は、

  「テ・(ン)ゲア」、TE-NGEA(te=the,to make an emphatic statement;ngea=very numerous,abundant)、「すごく・膨大な(たいそう)」(「(ン)ゲア」のNG音がG音に変化し、語尾のA音が脱落して「ゲ」となった)

  「チ」、TI(throw,cast)、「(身体を放り出すように)動き出す(〜よ)」(「チ」が「ジー」となった)

  「カハ・テイ」、KAHA-TEI(kaha=strong,strength;tei,teitei=high,tall,summit)、「(強さ)力を・(高く)強くする(手伝い)」(「カハ」のH音が脱落して「カ」と、「テイ」が「セー」となった)

  「(ン)ガウ・タ(ン)ガ」、NGAU-TANGA(ngau=bite,hurt,attack;tanga=be assembled)、「身体(のあちこち)が・(打撃を受けて)弱っている(身体がだるい)」(「(ン)ガウ」のNG音がN音に、AU音がO音に変化して「ノ」と、「タ(ン)ガ」のNG音がN音に変化して「タナ」から「サン」となった)

  「イオ・カウワハ」、IO-KAUWAHA(io=tough,hard,obstinate;kauwaha=kaua=do not)、「ちゃんと・休みなさい(休む)」(「イオ」が「ヨ」と、「カウワハ」のAU音がO音に変化し、H音が脱落して「コワ」となった)(この解釈は、例文の「まあ、ヨコわっしゃい(まあ、お休みなさい)」によりました。)

  「コテ(ン)ギテ(ン)ギ」、KOTENGITENGI(gentle wind)、「生暖かい風(が吹いているから、明日は雨になるのではないか)(〜ではないか)」(反覆語尾が脱落し、NG音がN音に変化して「コテニ」から「コッセン」となった)(この解釈は、例文の「明日、雨降るコッセン?」によりました。)

  「イ・ツペ・コ・ツペ」、I-TUPE-KO-TUPE(i=from,with,by reason of,by way of;tupe=a charm for depriving one's enemies of power,affect by the tupe charm;ko=sing,shout)、「(誰かの)力を奪う呪文を・唱え・に・唱える(一所懸命)」(「ツペ」が「ッペ」となった)

  「ハ・(ン)ゲラ・チ」、HA-NGERA-TI(ha=what!;ngera=many,numerous;ti=throw,cast)、「何と(後悔が)・たくさん・思い出されること(くやしい)」(「(ン)ゲラ」のNG音がG音に変化して「ゲラ」と、「チ」が「シー」となった)

  「フ(ン)ガ」、HUNGA(down,decayed,putrid)、「(運気が)下降している(運(が悪い))」(語尾のNGA音が脱落して「フ」となった)(この解釈は、例文の「今日はフのわりい一日じゃった」によりました。)

  「テ・チ」、TE-TI(te=the,to make an emphatic statement;ti=throw,cast,overcome)、「実に・圧倒される(苦しい)」(「テ」が「セ」と、「チ」が「チー」となった)

  「アパ」、APA((Hawaii)to delay,waste time;whakapakanga=youngest)、「遅く現れたもの(新品)」(「アパ」が「アバ」となった)

  「プ・ウム」、PU-UMU(pu=origin,root,foot of a mountain;umu=earth oven,scarf)、「足を・(木靴に)堀りくぼめたところに入れる(履く)」(「プ」のP音がF音を経てH音に変化して「フ」となり、その語尾のU音が「ウム」の語頭のU音と連結して「フム」となった)

  「ム・(ン)ゲ・ネイ」、MU-NGE-NEI(mu=silent;nge=noise,screech;nei=stretch forward,reaching out)、「黙って・泣き声を・押さえ込む(悲しい)」(「(ン)ゲ」のNG音がG音に変化して「ゲ」と、「ネイ」が「ネー」となった)

  「ナ・(ン)ガ(ン)ガウ」、NA-NGANGAU(na=by,belonging to;ngangau=noise,quarrel)、「(人形が人のように)口論をする・ようなもの(遊び)」(「(ン)ガ(ン)ガウ」の最初のNG音がN音に、次ぎのNG音がG音に、AU音がO音に変化して「ナゴ」から「ンゴ」となった)(この解釈は、例文の「人形ナンゴしようか?」によりました。)

  「マ・コチ」、MA-KOTI(ma=white,clean;koti=spurt out,come into bloom)、「きれいに・花が咲いたようだ(ほんとうに(うれしい))」(この解釈は、例文の「退院でけて、マコチよかった」によりました。)

  「エ・チヒ」、E-TIHI(e=calling attention or expressing surprise;tihi=summit,top)、「最高に・すばらしい(賢い)」(「チヒ」のH音が脱落して「ジー」となった)

の転訛と解します。

[鹿児島県]

346ぼっけもん(大胆者)・おやっとさー・け・おじゃっ・がっつい・んだもしたん・〜ど・ひっちゃゆっ・おまんさー・がらるっ・ずるっ・いて・いたっくっ・おかべ・たもっ・ずんばい・くさっ・ぎおゆ

 鹿児島県の代表的な方言には、「ぼっけもん」(大胆者)((前出雑楽篇(その一)の204ぼっけもんの項を参照してください。)、「おやっとさー」(お疲れさま)、「け」(貝)、「おじゃっ」(いらっしゃる)、「がっつい」(ちょうど)、「んだもしたん」(あらまあ)、「〜ど」(〜よ)、「ぐらしか」(かわいそう)(前出国語篇(その十四)の059かわいそう(可哀相)の項を参照してください。)、「むぜ」(かわいい)(前出国語篇(その十四)の058かわいい(可愛い)の項を参照してください。)、「ひっちゃゆっ」(落ちる)、「わっぜ」(たいそう)(前出国語篇(その十六)の173ひじょうに(非常に)の項を参照してください。)、「げんなか」(恥ずかしい)(前出国語篇(その十六)の167はずかしい(恥ずかしい)の項を参照してください。)、「おまんさー」(あなた)、「がらるっ」(叱られる)、「ずるっ」(全部)、「いて」(熱い)、「いたっくっ」(行って来る)、「おかべ」(豆腐)、「たもっ」(食べる)、「にせ」(青年)(前出国語篇(その十二)の452鹿児島小原良節(かごしまおはらぶし)の項の「にせ(青年)」を参照してください。)、「ずんばい」(たくさん)、「くさっ」(綴る)、「ぎおゆ」(理屈を言う)があります。

 この「おやっとさー」、「け」、「おじゃっ」、「がっつい」、「んだもしたん」、「〜ど」、「ひっちゃゆっ」、「おまんさー」、「がらるっ」、「ずるっ」、「いて」、「いたっくっ」、「おかべ」、「たもっ」、「ずんばい」、「くさっ」、「ぎおゆ」は、

  「オイ・アトアト・タハ」、OI-ATOATO-TAHA(oi=heoi=denoting completeness or sufficiency of a statement or enumeration;atoato=recite names etc.;taha=pass on one side,go by)、「(仕事が無事に)終わってよかったねと・すれちがいざまに・声を掛ける(お疲れさま)」(「アトアト」の反覆語尾が脱落して「アト」となり、「オイ・アト」が「オヤット」と、「タハ」のH音が脱落して「サー」となった)

  「カヒ」、KAHI(=kakahi=a salt-water bivalve mollusc)、「(鹹水産の)貝(貝)」(H音が脱落した後のAI音がE音に変化して「ケ」となった)

  「オチ・アツ」、OTI-ATU(oti=finished,gone or come for good;atu=to indicate a direction or motion onwards)、「(向こうから)こちらに・来られた(いらっしゃる)」(「オチ」が「オジ」と、「オジ・アツ」が「オジャッ」となった)

  「(ン)ガ・ツヒ」、NGA-TUHI(nga=the,satisfied,breathe;tuhi=delineate,write,point at)、「まさに・正確に言うと(ちょうど)」(「(ン)ガ」のNG音がG音に変化して「ガッ」と、「ツヒ」のH音が脱落して「ツイ」となった)

  「(ン)ガタ・モチ・タ(ン)ガ」、NGATA-MOTI-TANGA(ngata=snail,anything small,speck;moti=consumed,scarce,surfeited;tanga=be assembled)、「些末な事が・たくさん・集まっている(あらまあ)」(「(ン)ガタ」のNG音がN音に変化して「ナタ」から「ンダ」と、「モチ」が「モシ」と、「タ(ン)ガ」のNG音がN音に変化して「タン」となった)

  「タウ」、TAU(come to rest,be suitable,befit,be able)、「結構だ(〜よ)」(AU音がO音に変化して「ド」となった)

  「ヒ・チア・ヰウ」、HI-TIA-WHIU(hi=raise,rise,dawn;tia=stick in,drive in pegs,etc.;whiu=throw,place,drive)、「落ちるのを・押しに・押す(落ちる)」(「ヒ」が「ヒッ」と、「チア」が「チャ」と、「ヰウ」が「ユッ」となった)

  「ワウ・マナナ・タハ」、WAU-MANANA-TAHA(wau=I,me;manana=bent,wag,rise;taha=side,edge,pass on one side)、「私に・(道の)側で・頭を下げる者(あなた)」(「ワウ」のAU音がO音に変化して「ヲ」から「オ」と、「マナナ」の反復語尾が脱落して「マナ」から「マン」と、「タハ」のH音が脱落して「サー」となった)

  「(ン)ガラ・ル」、NGARA-RU(ngara=snarl;ru=shake,agitate,scatter)、「奮って・がみがみと怒鳴る(叱られる)」(「(ン)ガラ」のNG音がG音に変化して「ガラ」と、「ル」が「ルッ」となった)

  「ツ・ルツ」、TU-RUTU(tu=fight with,energetic;rutu=dash down,nod from side to side,sway)、「懸命に・隅から隅まで圧倒した(平らげた)(全部)」(「ツ」が「ズ」と、「ルツ」が「ルッ」となった)

  「ヒ・タイナ」、HI-TAINA(hi=make a hissing noise;taina=singe)、「焦げるような熱さに・悲鳴を上げる(熱い)」(「ヒ」のH音が脱落して「イ」と、「タイナ」のAI音がE音に変化し、語尾のNA音が脱落(名詞形語尾のNGA音の脱落に誘発された)して「テ」となった)

  「イタ・ツツ・ク・ツツ」、ITA-TUTU-KU-TUTU(ita=tight,fast;tutu=move with vigour;ku=kua=denoting that an action is completed or condition established)、「ちょっと・行って・(用事を)終えて・帰って来る(行って来る)」(「ツツ」の反復語尾が脱落して「ッ」となった)(前出佐賀県の「いたてくっ(行って来る)」の項を参照してください。)

  「オ・カハ・ペ」、O-KAHA-PE(o=the...of;kaha=strong,strength;pe=crushed,mashed,soft)、「例の・(大豆を)強く・すり下ろして作ったもの(豆腐)」(「カハ」のH音が脱落して「カ」と、「ペ」が「ベ」となった)

  「タ・モツ」、TA-MOTU(ta=dash,beat,overcome,lay;motu=piece of flesh or fat)、「肉片に・飛びかかる(食べる)」

  「ツ・ヌイ・パイ」、TU-NUI-PAI(tu=stand,settle;nui=large,many;pai=good,excellent,suitable)、「(物が)いい具合に・たくさん・ある(たくさん)」(「ツ」が「ズ」と、「ヌイ」が「ン」と、「パイ」が「バイ」となった)

  「ク・タツ」、KU-TATU(ku=kua=denoting that an action is completed or condition established;tatu=reach the bottom,be at ease,consent)、「納まるところに納まり・終わっている(綴じる)」(「タツ」が「サッ」となった)

  「(ン)ギア・ワウ・ヰウ」、NGIA-WAU-WHIU(ngia=seem,appear to be;wau=quarrel,erangle,make a noise,discuss;whiu=throw,place,drive,collect)、「議論の・ようなことを・言う(理屈を言う)」(「(ン)ギア」のNG音がG音に変化し、語尾のA音が脱落して「ギ」と、「ワウ」のAU音がO音に変化して「ヲ」から「オ」と、「ヰウ」が「ユ」となった)

の転訛と解します。

[沖縄県那覇]

347ちゅらさん(美しい)・かむん・っあんまー・〜さい・がんじょーく・まかい・めんせーり・まじゅーん・〜がやー・しくち・くさくさーすん・っいちむし・たかさん・〜てぃさ・〜い

 沖縄県那覇の代表的な方言には、「ちゅらさん」(美しい)、「かむん」(たべる)、「くわっちーさびたん」(ごちそうさま)(前出国語篇(その十四)の075ごちそうさま(ご馳走様)の項を参照してください。)、「っあんまー」(母)、「〜さい」(〜(だ)よ)、「がんじょーく」(丈夫に)、「まぎさん」(大きい)(前出国語篇(その十四)の022おおきい(大きい)の項を参照してください。)、「まかい」(椀)、「めんせーり」(いらっしゃる)、「まじゅーん」(一緒に)、「〜がやー」(〜かな)、「れーじな」(非常に)(前出国語篇(その十六)の173ひじょうに(非常に)の項を参照してください。)、「しくち」(仕事)、「ちゃーびら」(ごめんください)(前出国語篇(その十四)の077ごめんください(ご免下さい)の項を参照してください。)、「くさくさーすん」(いらいらする)、「っいちむし」(生き物)、「ふーんくうぃーん」(すっかり)(前出国語篇(その十五)の108すっかりの項を参照してください。)、「たかさん」(高い)、「こむん」(数える)(前出国語篇(その十四)の044かぞえる(数える)の項を参照してください。)、「〜てぃさ」(〜そうだ)、「っいやりん」(たぶん)(前出国語篇(その十五)の125たぶん(多分)の項を参照してください。)、「っあったに」(めっきり)(前出国語篇(その十六)の205めっきりの項を参照してください。)、「〜い」(〜か)があります。

 この「ちゅらさん」、「かむん」、「っあんまー」、「〜さい」、「がんじょーく」、「まかい」、「めんせーり」、「まじゅーん」、「〜がやー」、「しくち」、「くさくさーすん」、「っいちむし」、「たかさん」、「〜てぃさ」、「〜い」は、

  「チ・ウラ・タ(ン)ガ」、TI-URA-TANGA(ti=throw,cast;ura=red,brown,glowing;tanga=be assembled)、「光を・周囲に発する(美しさを)・持っている(美しい)」(「チ・ウラ」が「チュラ」と、「タ(ン)ガ」のNG音がN音に変化して「タナ」から「サン」となった)

  「カム・ナ」、KAMU-NA(kamu=eat,munch;na=to indicate position near or connection with the person addressed)、「そこで・食べる(たべる)」(「ナ」が「ン」となった)

  「ツ・ア(ン)ガ・ママ」、TU-ANGA-MAMA(tu=fight with,energetic;anga=driving force,thing driven etc.;mama=perform certain rites with the object of nulifying a hostile spell or of removing tapu,free from tapu)、「懸命に・(家族の)平安を乱す災いを除くために・呪文を唱える人(母)」(「ツ」が「ッ」と、「ア(ン)ガ」のNG音がN音に変化して「アン」と、「ママ」が「マー」となった)

  「タ・アイ」、TA-AI(ta=dash,beat,lay;ai=expressing the reason for which anything is done)、「(すでに)ここに・いる(〜(だ)よ)」(「タ」が「サ」となり、そのA音が「アイ」の語頭のA音と連結して「サイ」となった)

  「(ン)ガナ・チオ・ク」、NGANA-TIO-KU(ngana=be eagerly intent,obstinate,strong;tio=rock-oyster;ku=kua=denoting that an action is completed or condition established)、「岩牡蠣のように・(武骨で)頑丈に・作ってある(丈夫に)」(「(ン)ガナ」のNG音がG音に変化して「ガン」と、「チオ」が「ジョー」となった)

  「マ・カイ」、MA-KAI(ma=for,to be possessed by,by means of,by way of;kai=consume,eat,food)、「食物を・容れるもの(椀)」

  「メネ・タイリ」、MENE-TAIRI(mene=show wrinkles,comtort the face;tairi=be suspended(whakatairi=place in an elevated position))、「厳めしい顔をして・(座敷の)高い場所に座る(いらっしゃる)」(「メネ」が「メン」と、「タイリ」のAI音がE音に変化して「セーリ」となった)

  「マ・アチ・ウ(ン)ガ」、MA-ATI-UNGA(ma=for,to be possessed by,by means of,by way of;ati=descendant,clan;unga=act or circumstance of becoming firm)、「同じ(部族の)・仲間に・なる(一緒に)」(「マ」のA音が「アチ」の語頭のA音と連結して「マチ」から「マジ」と、「ウ(ン)ガ」のNG音がN音に変化して「ウナ」から「ウン」と、「マジ・ウン」から「マジューン」となった)

  「(ン)ガイ・イア」、NGAI-IA(ngai=tribe or clan;ia=indeed)、「実に・〜と同じ種類だ(かな)(〜かな)」(「(ン)ガイ」のNG音がG音に変化して「ガイ」となり、その語尾のI音が「イア」の語頭のI音と連結して「ガイア」から「ガヤー」となった)

  「チ・ク・ウチ」、TI-KU-UTI(ti=throw,cast,overcome;ku=kua=denoting that an action is completed or condition established;uti,utiuti=annoy,worry)、「悩ましいことを・やって・のけること(仕事)」(「チ」が「シ」と、「ク」のU音が「ウチ」の語頭のU音と連結して「クチ」となった)

  「クタ・クタ・ツヌ」、KUTA-KUTA-TUNU(kuta=encumbrance or clog as old and infirm people on a march;tunu=inspire with fear)、「邪魔者が・足手まといになって・(人の気持ちを)不安に駆り立てる(いらいらする)」(「クタ・クタ」が「クサクサー」と、「ツヌ」が「スン」となった)

  「ツ・イチ・ムイ・チ」、TU-ITI-MUI-TI(tu=fight with,energetic;iti=small,unimportant;mui=swarm round,infest,molest;ti=throw,cast)、「懸命に生きている・小さな・(人に)害を・及ぼすもの(生き物)」(「ツ」が「ッ」と、「ムイ」の語尾のI音が脱落して「ム」と、「チ」が「シ」となった)

  「タカ・タ(ン)ギ」、TAKA-TANGI(taka=heap,lie in a heap;tangi=sound,cry,weep)、「高いと・悲鳴を上げている(高い)」(「タ(ン)ギ」のNG音がN音に変化して「タニ」から「サン」となった)

  「タイ・タ」、TAI-TA(tai=sometimes with a qualifying force;ta=dash,beat,lay)、「〜に取り組んで・いるという(〜そうだ)」(「タイ」のAI音がEI音に変化して「ティ」となった)

  「ヰ」、WI(tussock grass,a kind of rushes )、「(それは)草の一種か(〜か)」(「ヰ」が「イ」となった)

の転訛と解します。

[沖縄県首里]

348ちゅらさん(きよらか)・かなさん・うぐわん・てぃーだがなし・うちちゅーめー・うちゃーとー・ちゃんぷるー・にぬふぁぶし・うさがゆん・めんしぇーゆん・ゆくいみせーん・〜さい・〜たい・あきさみよー・ちばりょー・めんそーれー・ちゅーうがなびら

 沖縄県首里の代表的な方言には、「ちゅらさん」(きよらか)、「かなさん」(いとおしい)、「うぐわん」(祈願)、「てぃーだがなし」(おてんとうさま)、「うちちゅーめー」(おつきさま)、「うちゃーとー」(お供えのお茶)、「ちゃんぷるー」(具をまぜたおかず)、「にぬふぁぶし」(北極星)、「うさがゆん」(召し上がる)、「めんしぇーゆん」(いらっしゃる)、「ゆくいみせーん」(お休みになる)、「よーんなー」(ゆっくり)(前出国語篇(その十六)の213ゆっくりの項を参照してください。)、「やふぁってーん」(ていねいに)(前出国語篇(その十五)の143ていねい(丁寧)の項を参照してください。)、「なげーさ」(しばらく)(前出国語篇(その十六)の172ひさしぶり(久しぶり)の項を参照してください。)、「いっぺー」(たいそう)(前出国語篇(その十六)の173ひじょうに(非常に)の項を参照してください。)、「〜さい」(〜よ)、「〜たい」(〜わ)、「あきさみよー」(まあ)、「ちばりょー」(がんばれよ)、「めんそーれー」(いらっしゃい)、「ちゅーうがなびら」(こんにちは)、「にふぇーでーびる」(ありがとうございます)(前出国語篇(その十四)の009ありがとう(有難う)の項を参照してください。)があります。

 この「ちゅらさん」、「かなさん」、「うぐわん」、「てぃーだがなし」、「うちちゅーめー」、「うちゃーとー」、「ちゃんぷるー」、「にぬふぁぶし」、「うさがゆん」、「めんしぇーゆん」、「ゆくいみせーん」、「〜さい」、「〜たい」、「あきさみよー」、「ちばりょー」、「めんそーれー」、「ちゅーうがなびら」は、

  「チ・ウラ・タ(ン)ガ」、TI-URA-TANGA(ti=throw,cast;ura=red,brown,glowing;tanga=be assembled)、「光を・周囲に発する(清らかさを)・持っている(清らか)」(「チ・ウラ」が「チュラ」と、「タ(ン)ガ」のNG音がN音に変化して「タナ」から「サン」となった)(前出沖縄県那覇の「ちゅらさん(美しい)」の項を参照してください。)

  「カ・ナ・タ(ン)ガ」、KA-NA-TANGA(ka=take fire,be lighted,burn;na=by,belonging to,by reason of;tanga=be assembled)、「火が燃えるような・温かさを・持っている(いとおしい)」(「タ(ン)ガ」のNG音がN音に変化して「タナ」から「サン」となった)

  「ウ・(ン)ガナ」、U-NGANA(u=be firm,be fixed,reach its limit;ngana=be eagerly intent,obstinate,strong)、「頂点に達した・強い願い(祈願)」(「(ン)ガナ」のNG音がG音に変化して「ガン」となった)

  「テイ・タ・(ン)ガナ・チ」、TEI-TA-NGANA-TI(tei=high,tall,summit;ta=dash,beat,lay;ngana=be eagerly intent,obstinate,strong;ti=throw,cast,overcome)、「(天の)頂点に・あって・すべての力を・発散しているもの(おてんとうさま)」(「テイ」が「ティー」と、「タ(ン)ガ」のNG音がG音に変化して「ダガ」と、「ナチ」が「ナシ」となった)

  「ウチ・チウ・メ」、UTI-TIU-ME(uti=bite;tiu=soar,wander,sway to and fro;me=if,as if,like)、「満ち欠けをしながら・空をさまよっている・ように見えるもの(お月様)」(「チウ」が「チュー」と、「メ」が「メー」となった)

  「ウ・チア・タウ」、U-TIA-TAU(u=be firm,be fixed,reach its limit;(Japanese)tia=tea;tau=come to rest,settle down,suitable)、「(仏様の)休息のために・置かれた・お茶(お供えのお茶)」(「チア」が「チャー」と、「タウ」のAU音がO音に変化して「トー」となった)

  「チ・アナ・プル」、TI-ANA-PURU(ti=throw,cast;ana=denoting continuance of action or state;puru=plug,thrust in,cram in)、「(食材を鍋に)放り込んで・混ぜて・調理した料理(具をまぜたおかず)」(「チ・アナ」が「チャン」と、「プル」が「プルー」となった)

  「ヌヌイ・フア・ポウチニ」NUNUI-HUA-POUTINI(nunui=great,large,many;hua=handspike,lever,steer;poutini=a star)、、「偉大な・(船の舵をとる)進路を示す・星(北極星)」(「ヌヌイ」が「ニヌ」と、「フア」が「ファ」と、「ポウチニ」のOU音がU音に変化し、語尾のNI音が脱落して「ブシ」となった)

  「ウタ(ン)ガ・ヰウ・(ン)ガ」、UTANGA-WHIU-NGA(utanga=burden,bearer of burden;whiu=throw,place,drive,collect;nga=satisfied,content)、「(重い責任を負う)責任者が・摂取して・満足する(召し上がる)」(「ウタ(ン)ガ」のNG音がG音に変化して「ウサガ」と、「ヰウ」が「ユ」と、「(ン)ガ」のNG音がN音に変化して「ナ」から「ン」となった)

  「メネ・チエ・ヰウ・(ン)ガ」、MENE-TIE-WHIU-NA(mene=show wrinkles,comtort the face;tie=abundance;whiu=throw,place,drive,collect;nga=satisfied,content)、「たいへん・厳めしい顔をして・席に着いて・満足する(いらっしゃる)」(「メネ」が「メン」と、「チエ」が「シェー」と、「ヰウ」が「ユ」と、「(ン)ガ」のNG音がN音に変化して「ナ」から「ン」となった)

  「ヰウ・ク・イミ・テナ」、WHIU-KU-IMI-TENA(whiu=throw,place,drive,collect;ku=silent;(Hawaii)imi=to look,search,seek;tena=encourage,urge forward)、「静かに・黙って・鋭気(元気)を・養う(お休みになる)」(「ヰウ」が「ユ」と、「テナ」が「セーン」となった)

  「タイ」、TAI(a term of address to males or females)、「〜だね(〜よ)(男性語)」

  「タイ」、TAI(a term of address to males or females)、「〜だね(〜わ)(女性語)」(「タイ」が「サイ」となった)

  「ア・キタ・アミ・イオ」、A-KITA-AMI-IO(a=and,the...of,of,belonging to;kita=tightly,intensely;ami=odour;io=tough,hard,obstinate)、「この・濃厚で・しつこい・臭い(まあ)」(「キタ」が「キサ」となり、その語尾のA音が「アミ」の語頭のA音と連結して「キサミ」と、「イオ」が「ヨー」となった)

  「チ・パリ・アウ」、TI-PARI-AU(ti=throw,cast,overcome;pari=flowing of the tide,flow over of the tide,overpower,baffle;au=firm,intense)、「しっかりと・(潮流のようなすべてを押し流す)力を・発揮しろ(がんばれよ)」(「パリ」が「バリ」と、「アウ」のAU音がO音に変化して「オ」となり「バリ・オ」が「バリョー」となった)

  「メネ・タウ・レヘ」、MENE-TAU-REHE(mene=show wrinkles,comtort the face;tau==come to rest,settle down,suitable;rehe=intensive)、「厳めしい顔をして・どっしりと・座る(いらっしゃい)」(「メネ」が「メン」と、「タウ」のAU音がO音に変化して「ソー」と、「レヘ」のH音が脱落して「レー」となった)

  「チウ・ウ(ン)ガ・ナピ・イラ」、TIU-UNGA-NAPI-IRA(tiu=soar,wander,prompt;unga=send,expel;napi=cling tightly,pinch;ira=calling attention)、「即座に・簡潔な・(注意の声)挨拶の言葉を・(送る)掛ける(こんにちは)」(「チウ」が「チュー」と、「ウ(ン)ガ」のNG音がG音に変化して「ウガ」と、「ナピ」が「ナビ」となり、その語尾のI音が「イラ」の語頭のI音と連結して「ナビラ」となった)

の転訛と解します。

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<修正経緯>

1 平成24年4月1日

 330〜のしの項の「おもしゃい」の部の「おもしろい(面白い)」の解釈の一部を修正しました。

国語篇(その十七)終り


U R L:  http://www.iris.dti.ne.jp/~muken/
タイトル:  夢間草廬(むけんのこや)
       ポリネシア語で解く日本の地名・日本の古典・日本語の語源
作  者:  井上政行(夢間)
Eメール:  muken@iris.dti.ne.jp
ご 注 意:  本ホームページの内容を論文等に引用される場合は、出典を明記してください。
(記載例  出典:ポリネシア語で解く日本の地名・日本の古典・日本語の語源
http://www.iris.dti.ne.jp/~muken/timei05.htm,date of access:05/08/01 など)
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