国語篇(その二十)


国語篇(その二十)

<慣用語概観(その一)>「ア」から「オ」まで

(平成24-7-1書込み。27-4-1修正)(テキスト約133頁)


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[おことわり]

 この篇は、現代もなお一般的に使われる慣用語(慣用句を含む)の主要なものの中に残る語源不詳または意味不詳の縄文語の意味を解明しようとするシリーズの一です。

 この部類に属する書籍または辞典は、枚挙にいとまがありませんが、ここでは『語源大辞典』堀井令以知編、東京堂出版、1988年に拠り、アート、アーメンなどの外来語、阿吽、阿闍梨などの仏教用語、漢語由来であることが明らかな語、他の篇で対象となっている動植物名、枕詞およびいわゆる女房言葉であまり一般的でないものは除外し、『日本語「語源」辞典』学研編集部編、学研、2004年に所収の語で重要なものを追加して解釈することとしました。

 この慣用語概観では、「ア」から「オ」までを「その一」、「カ」から「ソ」までを「その二」、「タ」から「ノ」までを「その三」、「ハ」から「ワ」までを「その四」に分割して掲載します。また、すでに他の国語篇や地名篇、古典篇、雑楽篇の各篇において取り上げたものは、その旨注記しました。

 縄文語のポリネシア語による解釈は、他の諸篇と同様、原則として、その起源となったと推定される原ポリネシア語から変化したマオリ語(すでに失われた語彙でハワイ語に残るものについてはハワイ語とし、その旨を注記しました)とその意味を英語および日本語によって表記しました。主として使用したマオリ語・ハワイ語の辞典は次の通りです。
 (1)H.W.Williams M.A,Dictionary of the Maori Language,seventh edition,1997,GP Publications.
 (2)P.M.Ryan,The Reed Dictionary of Modern Maori,1995,TVNZ.
 (3)Mary Kawena Pukui and Samuel H.Elbert,Hawaiian Dictionary, revised and enlarged edition,1986,University of Hawaii Press.  

<慣用語概観(その一)>

「ア」から「オ」まで>

目 次 

「ア」

001あいきょう(愛嬌、愛敬)002あいくち(合口・匕首)003あいさつ(挨拶)004あいそう(愛想)005あいだ(間)006あいつ(彼奴)007あいづち(相槌)008あいにく(生憎)009あいのかぜ(あいの風)010あいぼう(相棒)

011あえか012あえぐ(喘ぐ)013あえて(敢えて)014あえない(敢えない)015あえもの(和え物)016あおうま(青馬、白馬)017あおぐ(仰ぐ。扇ぐ)018あおにさい(青二才)019あかぎれ(皹)020あがく(足掻く)

021あかつき(暁)022あがなう(購う・贖う)023あかのたにん(赤の他人)024あからさま(明らさま)025あかん026あかんべ027あき(秋)028あぎと(顎)・あご(顎)029あきれる(呆れる)030あくせく(齷齪)

031あくどい(悪どい)032あくび(欠伸)033あくまで(飽くまで)034あぐら(胡座)035あげつらう036あけぼの(曙)037あげまき(総角)038あこがれる(憧れる)039あこぎ(阿漕)040あざ(痣)

041あさがれい(朝餉)042あさぎいろ(浅黄色、浅葱色)043あさげ(朝食、朝餉)044あさって(明後日)045あざな(字)046あさっぱら(朝っぱら)047あさはか(浅墓)048あさぼらけ(朝朗)049あさましい(浅ましい)050あざむく(欺く)

051あさる(漁る)052あしからず(悪しからず)053あしがる(足軽)054あじきない(味気ない)055あしげ(葦毛)056あした(明日)057あしらう058あじろ(網代)059あす(明日)060あずまや(東屋、四阿)

061あぜ(畦)062あぜくら(校倉)063あぜち(按察使)064あせも(汗疹)065あそぶ(遊ぶ)066あそん(朝臣)067あだ(仇)068あたい(価、値)069あたい(直、費、費直)070あたえる(与える)

071あたかも(恰も、宛も)072あたたかい(暖かい)073あだな(渾名。徒名・虚名)074あたふた075あたま(頭)076あたら077あたらしい(新しい)078あたり(辺)079あたりまえ(当たり前)080あつかう(扱う)

081あつかましい(厚かましい)082あっけない(呆気ない)083あっけらかん084あっせん(斡旋)085あっぱれ(天晴れ)086あつめる(集める)087あつもの(羹)088あてうま(当て馬)089あてがう(宛う)090あてずっぽう(当てずっぽう)

091あでやか(艶やか)092あと(後。跡)093あとがま(後釜)094あどけない095あとずさり(後ずさり)096あとのまつり(後の祭り)097あながち(強ち)098あなかま099あなじ・あなぜ100あなた(貴方、貴男、貴女。彼方)

101あなどる(侮る)102あに(兄)103あにはからんや(豈図らんや)104あね(姉)105あばずれ(阿婆擦れ)106あばた(痘痕)107あばよ108あばらや(荒屋)109あばれる(暴れる)110あぶくぜに(泡銭)

111あぶみ(鐙)112あぶらをうる(油を売る)113あべこべ114あほう(阿呆)115あま(海人。尼)116甘える(甘える)117あまた(数多)118あまつさえ(剰え)119あまのじゃく(天邪鬼)120あまる(余る。落雷する)

121あみ(網)122あも(母。餅)123あやうい(危うい)124あやかし(妖怪。馬鹿者)・あやかり(妖怪。馬鹿者)125あやかる(肖る)126あやしい(怪しい)127あやつこ128あやつり(操り)129あやひと(漢人)130あやふや

131あやまる(謝る。誤る)132あゆむ(歩む)133あら(感嘆。荒・粗。現。新)134あらかじめ(予め)135あらき(殯)136あらし(嵐)137あらす(荒らす)138あらそう(争う)139あらためる(改める)140あらて(新手)

141あらまき(荒巻、新巻)142あらまし143あらゆる(凡ゆる)144あられ(霰)145あられもない146あらわす(表す、現す)147ありあり148ありがたい(有り難い)149ありがとう(有り難う)150ありきたり(在り来たり)

151ありそ(荒磯)152あるいは(或いは)153あるく(歩く)154あるじ(主)155あるへいとう(有平糖)156あわい(間・合)157あわせ(袷)158あわただしい(慌ただしい)159あわてる(慌てる)160あわゆき(沫雪)

161あわれ(哀れ)162あん(餡)163あんか(行火)164あんじょう165あんた(貴方)166あんど(安堵)167あんどん(行灯)168あんない(案内)169あんのじょう(案の定)170あんばい(塩梅)

171あんぽんたん(安本丹)

「イ」

172い(井)173いいなずけ(許嫁)174いう(言う)175いえ(家)176いおう(硫黄)177いおり(庵)178いかが(如何)179いかがわしい(如何わしい)180いかき(笊)

181いかさま182182いかずち(雷)183いかだ(筏)184いかつい(厳い)185いかり(碇、錨)186いかる(怒る)187いき(息)188いきおい(勢い)189いきしな(行きしな)190いきなり

191いきれ(熱)192いくさ(軍)193いくじ(意気地)194いくつ(幾つ)195いくり(海中の岩)196いけ(池)197いけがき(生垣)198いけにえ(生贄)199いけばな(生花)200いこじ(意固地)

201いごっそう202いさ203いざ204いさかい(諍い)205いざかや(居酒屋)206いさぎよい(潔い)207いさご(砂子)208いさましい(勇ましい)209いさめる(諫める)210いざよい(十六夜)

211いさりび(漁火)212いざる(躄る)213いしき(居敷)214いしずえ(礎)215いじましい216いじめる(苛める)217いす(椅子)218いしょう(称唯)219いじらしい220いじわる(意地悪)

221いずみ(泉)222いずれ223いそ(磯)224いそうろう(居候)225いそぐ(急ぐ)226いたい(痛い)227いたいけ(幼気)228いたいたしい(痛々しい)229いたこ(巫子)230いたずら(悪戯)

231いただきます(頂きます)232いたちごっこ(鼬ごっこ)233いたって(至って)234いたにつく(板に付く)235いちかばちか(一か八か)236いちこ(巫子)237いちころ238いちじるしい(著しい)239いちば(市場)240いちま(市松)

241いちもくさん(一目散)242いちもつ(逸物)243いちゃつく243-2いちゃもん244いつくしむ(慈しむ)245いったん(一旦)246いっちょうら(一張羅)247いつつ(五つ)248いってんばり(一点張り)249いっぱし(一端)250いつわり(偽り)

251いと(最。糸)252いど(井戸。尻)253いとど254いとおしい255いとこ(従兄弟。従姉妹)256いとこに(従兄弟煮)257いとさん258いとぞこ(糸底)259いとまごい(暇乞い)260いな(否)

261いなか(田舎)262いなさ263いなす264いなずま(稲妻)265いなせ(鯔背)266いななく(嘶く)267いなのめ(曙)268いなむ(否む)269いなり(稲荷)270いにしえ(古)

271いぬ(寝ぬ)272いぬころ(犬ころ)273いねつむ(稲積む)274いのち(命)275いのり(祈り)276いびき(鼾)277いびつ(歪)278いぶき(息吹)279いぼ(疣)280いま(今)

281いまいましい(忌々しい)282いましめる(戒める)283いまだ(未だ)284いまわ(今際)285いみじくも286いみな(諱。諡)287いもうと(妹)288いもじ(鋳物師)289いやしくも(苟も)290いやに(妙に)

291いやはや292いやみ(嫌味)293いよいよ294いらいら(苛々)295いらか(甍)296いらっしゃい297いらつめ(郎女)298いる(居る)299いる(入る。要る)300いる(射る)

301いろせ302いろり(囲炉裏)303いわう(祝う)304いわお(巌)305いわく(曰く)306いわたおび(岩田帯)307いわば(言わば)308いわゆる(所謂)309いわれ(謂れ)310いんちき

311いんろう(印籠)

「ウ」

312ういろう(外郎)313うおのめ(魚の目)314うかつ(迂闊)315うきな(浮名)316うけたまわる(承る)317うけにいる(有卦に入る)318うごく(動く)319うさんくさい(胡散臭い)320うじ(蛆)

321うじがみ(氏神)322うしなう(失う)323うずくまる(蹲る)324うずめる(埋める)325うそ(嘘)326うぞうむぞう(有象無象)327うそぶく(嘯く)328うた(歌。唄)329うたかた(泡沫)330うたげ(宴)

331うたた(転た)332うたたね(転た寝)333うだつ(卯建)・うだつ(卯建)が上がらない334うちあわせ(打ち合わせ)335うちわ(団扇)336うっかり337うつくしい(美しい)338うつす(移す。写す)339うつせみのよ(空蝉の世)340うったえる(訴える)

341うっちゃる(打っちゃる)342うつつ(現)343うってつけ(打って付け)344うつむく(俯く)345うつらうつら346うとましい(疎ましい)347うながす(促す)348うなずく(頷く)349うなだれる(項垂れる)350うなて(地溝)

351うなる(唸る)352うね(畝、畦)353うねめ(采女)354うば(乳母)355うぶすな(産土)356うまい(旨い)357うまがあう(馬が合う)358うまのはなむけ359うみ(海)360うむ(産む)

361うめく(呻く)362うやうやしい(恭しい)363うやまう(敬う)364うら(浦)365うら(心)366うらがれる(末枯れる)367うらさびしい368うらだな(裏店)369うらなう(占う)370うらなり(末成り)

371うらむ(恨む)372うらやましい(羨ましい)373うらわかい(うら若い)374うらをかく(裏をかく)375うる(売る)376うるう(閏)377うるさい(煩い)378うれい(憂い)379うれしい(嬉しい)380うろん(胡乱)

381うわさ(噂)382うわなり(後妻)383うわのそら(上の空)384うわまえ(上前)385うんこ(大便)386うんざり387うんともすんとも388うんぬん(云々)

「エ」

389え(柄)390えがく(描く)

391えくぼ(靨、笑窪)392えげつない393えこじ(依怙地)394えさ(餌)395えじき(餌食)396えせ(似非)397えたい(得体)398えてして399えと(干支)400えにし(縁)

401えびす(恵比寿)402えぼし(烏帽子)403えみ(笑)404えみし(蝦夷)405えらい(偉い)406えらぶ(選ぶ)407えり(襟)407-2えんがちょ

「オ」

408おあし(御銭)409おい(甥)410おいえ(座敷)

411おいしい(美味しい)412おいそれと413おいて(於いて)414おいてきぼり(置いてきぼり)415おいど(お尻)416おいらく(老いらく)417おいらん(花魁)418おうぎ(扇)419おうな(女。媼)420おうへい(横柄)

421おうよう(大様、鷹揚)422おおきい(大きい)423おおきに(大きに)424おおこわ425おおせ(仰せ)426おおっぴら427おおむこう(大向こう)428おおや(大家)429おおやけ(公)430おおよそ(大凡)

431おおわらわ(大童)432おか(丘、岡)433おかあさん(お母さん)434おかがみ(お鏡)435おかき(煎餅)436おがくず(大鋸屑)437おかげさま(お陰様)438おかしい(可笑しい)439おかす(犯す)440おかず(お菜)

441おかたさま(お方様)442おかっぱ(お河童)443おかっぴき(岡っ引き)444おかばしょ(岡場所)445おかま(男色)446おかみさん(お上さん)447おがむ(拝む)448おかめはちもく(岡目八目)449おから(御殻)450おき(沖)

451おき(熾)452おきて(掟)453おきな(翁)454おぎなう(補う)455おきゃん(お侠)456おきる(起きる)457おく(奥)458おくさま(奥様)459おくのて(奥の手)460おくび

461おくみ(衽)462おくゆかしい(奥床しい)463おくる(送る。贈る)464おけ(桶)465おけらまいり(白朮参り)466おける(於ける)466-2おこし(興)467おこそずきん(御高祖頭巾)468おこたる(怠る)469おこない(行い)470おこり(瘧)

471おごる(奢る)472おさおさ473おさない(幼い)474おさんどん475おし(唖。御師)476おじ(伯父。叔父)477おしい(惜しい)478おじいさま(お祖父様)479おしえる(教える)480おしき(折敷)

>481おしきせ(お仕着せ)482おしめ(襁褓)483おじや(雑炊)484おしゃか(お釈迦)485おしゃま486おじゃる487おじゃん488おしらさま489おしろい(白粉)490おずおず

491おすそわけ(お裾分け)492おせち(お節)493おぞい(お悍い)494おそう(襲う)495おそらく(恐らく)496おそれる(怖れる)497おたあさん(お母さん)498おだてる(煽てる)499おたふく(お多福)500おだぶつ(御陀仏)

501おため502おちど(落度)503おちゃのこさいさい(お茶の子さいさい)504おちようず(お手水)505おちょぼ506おつ(乙)507おっかない508おっくう(億劫)509おっしゃる(仰る)510おっちょこちょい

511おっつかっつ512おっと(夫)513おっとりがたな(押っ取り刀)514おつむ(頭)・つむり(頭)515おつや(お通夜)516おつり(お釣り)517おでん・でんがく(田楽)518おてんば(お転婆)519おとうさん(お父さん)520おとうと(弟)

521おどおど522おとがい(顎)523おとき(御斎)524おとぎばなし(御伽話)525おとこ(男)526おどし(縅)527おとしまえ(落とし前)528おどす(脅す)529おとずれる(訪れる)530おととい(一昨日)

531おととし(一昨年)532おとな(大人)533おとなしい(温和しい)534おとめ(乙女)535おとり(囮)536おどり(踊り)537おどろく(驚く)538おなか(お腹)539おなめ(雌牛)540おなら(屁)

541おに(鬼)542おぬし(お主)543おの(斧)544おのずから(自ずから)545おののく(戦く)546おのれ(己)547おばあさん(お婆さん)548おばけ(お化け)549おはこ(十八番)550おはよう(お早う)

551おび(帯)552おひえ(お冷え)553おびきだす(誘き出す)554おひや(お冷や)555おふくろ(母親)556おへこ(御幣子)557おぼえる(覚える)558おぼこ559おぼつかない(覚束無い)560おまえ(御前)

561おまけ562おまる(御丸)563おみ(臣)564おみおつけ(御味御付)565おみき(御神酒)566おみくじ(御神籤)567おみな(女。媼)568おむつ(お襁褓)569おめおめ570おめでとう(お目出度う)

571おもいきや(思いきや)572おもいやり(思い遣り)573おもう(思う)574おもうさん575おもうつぼ(思う壺)576おもしろい(面白い)577おもちち(両親)578おもちゃ(玩具)579おもて(表)580おもねる(阿る)・おべっか・おべんちゃら

581おもはゆい(面映ゆい)582おもむき(趣)583おもむろ(除)584おもや(母屋)585おもゆ(重湯)586おもろ(神謡)587おもわく(思惑)588おや(親)589おやかた(親方)590おやかた(御館)

591おやじ(親父)592おやすみなさい(お休みなさい)593おやつ(お八つ)594おやま(女形)595および(及び)596およびごし(及び腰)597おり(折)598おれ(俺)599おろか(愚か)600おわす

601おんどをとる(音頭を取る)602おんな(女)603おんばひがさ(乳母日傘)604おんぶ

<修正経緯>

<慣用語概観(その一)>「ア」から「オ」まで
 

「ア」

001あいきょう(愛嬌、愛敬)

 にこやかな、親しみやすいかわいらしさ。また、そういうかわいらしさのあるさまなどをいいます。

 この「あいきょう」は、古くは「あいぎょう」で、室町時代ごろから清濁両形となり、やがて濁音形は滅びて現在に至っています。

 この「あいぎょう」は、

  「アイ・(ン)ギホ(ン)ギホ」、AI-NGIHONGIHO(ai=expressing the reason for which anything is done or the object in view in doing it;ngihongiho=diminutive)、「小さい・が故に愛らしいとか可愛らしいという感覚または感情をもたらすこととなるその小さい人のすがたや小さい人の仕草や行動など」(「(ン)ギホ(ン)ギホ」の反覆語尾が脱落し、NG音がG音に変化し、H音が脱落して「ギオ」から「ギョウ」となり、後に清音化して「キョウ」となった)

の転訛と解します。

002あいくち(合口・匕首)

 @話が互いによく合うこと。また、そのような間柄や、間柄の者。A物と物と相合いところ。物と物との接合部分。あわせめ。さらに、柄の縁と鞘の鯉口とのところに描いた紋所などが互いに合うように作った短刀をいいます。

 A鍔のない短刀。匕首。懐刀をいいます。

 この「あいくち」は、

  @「アイ・クチ」、AI-KUTI(ai=expressing the reason for which anything is done or the object in view in doing it,marking the time or place of an action or event,denoting an action or state consequent upon some previous action;kuti=draw tightly together,purse up,contract)、「(同じ時期、同じ場所で暮らしたとか同じ体験をしたなどの)経験や事実を理由とする・親近感や密着感」

  A「アイ(ン)ガ・クチ」、AINGA-KUTI(ainga=violence,driving force;kuti=draw tightly together,purse up,contract)、「(人に)危害を与える・短い(刃物。匕首)」(「アイ(ン)ガ」の名詞形語尾のNGA音が脱落して「アイ」となった)

の転訛と解します。

003あいさつ(挨拶)

 @人と人との関係が親密になるように働きかけること(とりもち、仲介、紹介、世話など)。人と人との間柄、交際。

 A手紙の往復、応答のことば。交際を維持するための社交的儀礼。

 禅宗用語の挨拶(問答によって門下の僧の悟りの深浅を試すこと)と音は同じで、漢字表現も借用していますが、慣用語の語源ではありません。

 この「あいさつ」は、

  @「アイ・タツ」、AI-TATU(ai=expressing the reason for which anything is done or the object in view in doing it,marking the time or place of an action or event,denoting an action or state consequent upon some previous action;tatu=reach the bottom,be at ease,be content,consent,agree)、「(人と人との)関係を・(深いところで)密接にする」(「タツ」が「サツ」となった)

  A「アイ・タハ・アツ」、AI-TAHA-ATU(ai=expressing the reason for which anything is done or the object in view in doing it,marking the time or place of an action or event,denoting an action or state consequent upon some previous action;taha=side,margin,edge,pass on one side,go by;atu=to indicate a direction or motion onwards,to indicate reciprocated action)、「(人と人との)関係を・表面的に(触れるだけで)・通り過ぎて行く」(「タハ」のH音が脱落して「タ」となり、その語尾のA音と「アツ」の語頭のA音が連結して「タツ」から「サツ」となった)

の転訛と解します。

004あいそう(愛想)

 「あいそ(愛想)」とも。人当たりの良いさま。他人に対する親しみの気持ち。他人に対する茶菓などのもてなし、心付けなど。

 この「あいそう」は、

  「アイ・タウ」、AI-TAU(ai=expressing the reason for which anything is done or the object in view in doing it,marking the time or place of an action or event,denoting an action or state consequent upon some previous action;tau=come to rest,settle down,be suitable,be comely,befit)、「(人と人との)関係を・良好にすることまたはそのもの」(「タウ」のAU音がO音に変化して「ト」から「ソ」、「ソウ」となった)

の転訛と解します。

005あいだ(間)

 二つのものに挟まれた部分。二つの時間に挟まれた時間の部分。人と人との関係や事物相互間の関係。

 この「あいだ」は、

  「アイ・タハ」、AI-TAHA(ai=expressing the reason for which anything is done or the object in view in doing it,marking the time or place of an action or event,denoting an action or state consequent upon some previous action;taha=side,margin,edge,pass on one side,go by)、「(人や事物の位置や時間の)関係の・(余裕)隙間にあるもの」(「タハ」のH音が脱落して「タ」から「ダ」となった)

の転訛と解します。

006あいつ(彼奴)

 話し手、聞き手両者から離れた人、事物などを指し示す語。

 この「あいつ」は、

  「ア・イツ」、A-ITU(a=the...of,belonging to;itu=side(whakaitu=aside,away))、「あの・(目前でなく離れて)脇にいる(奴。物)」

の転訛と解します。

007あいづち(相槌)

 @鍛冶の仕事で、師の打つ間に弟子が槌をいれること。また、互いに槌を打ち合わせること。

 A問いかけに答えること。相手の話に巧みに調子を合わせること。

 この「あいづち」は、

  @「アイ・ツ・チ」、AI-TU-TI(ai=expressing the reason for which anything is done or the object in view in doing it,marking the time or place of an action or event,denoting an action or state consequent upon some previous action;tu=fight with,energetic;ti=throw,overcome)、「(人や事物の位置や時間の調和した)関係の・勢いよく・振り下ろすもの(道具。槌)」(「ツ」が「ヅ」となった)

  A「アイ・ツ・チ」、AI-TU-TI(ai=expressing the reason for which anything is done or the object in view in doing it,marking the time or place of an action or event,denoting an action or state consequent upon some previous action;tu=manner,sort,to signify defree of the quality expressed;ti=throw,overcome)、「(人や事物の位置や時間の調和した)関係の・礼儀として・(調子を合わせて)応答すること」(「ツ」が「ヅ」となった)

の転訛と解します。

008あいにく(生憎)

 予想と違ったり、目的と合わなかったりして、都合の悪いさま。具合の悪いことに。

 この「あいにく」は、

  「アイ・ニヒ・ク」、AI-NIHI-KU(ai=expressing the reason for which anything is done or the object in view in doing it,marking the time or place of an action or event,denoting an action or state consequent upon some previous action;nihi=steep,move stealthly,suprise,dizziness,timidity;ku=silent,wearied,make a low inarticulate sound etc.)、「(人や事物の)関係の・口を濁して・黙り込むこと」(「ニヒ」のH音が脱落して「ニ」となった)

の転訛と解します。

009あいのかぜ(あいの風)

 遠い国から、心にかなう珍しい物を、日本海岸各地では海岸に向かって吹き寄せる風。船を安全に入港させる海岸に向かってまともに吹く風。(以上『語源大辞典』)古くは、「あゆのかぜ」または「あえのかぜ」といいました。

 この「あいのかぜ」については、雑楽篇(その一)の212あいの風の項を参照してください。

 この「あい」は、

   「アイヘ」、AIHE(dolphin,driftwood,drifting)、「(流木など)漂流物を吹き寄せる(風)」(H音が脱落して「アイエ」から「アエ」、「アイ」となった)

の転訛と解します。

010あいぼう(相棒)

 駕籠やもっこなどの前後を担ぐ相手の人。相肩。棒組。転じて、一所に仕事をする相手、仲間。

 この「あいぼう」は、

  「アイ・ポウ」、AI-POU((ai=expressing the reason for which anything is done or the object in view in doing it,marking the time or place of an action or event,denoting an action or state consequent upon some previous action;pou=post,pole,expert)、「(人や事物の位置や時間の調和した)関係の・棒を担ぐ(人。相手)」(「ポウ」が「ボウ」となった)

の転訛と解します。

011あえか

 触れれば落ちるようなさま。危なかしい様子。容姿や気持ちなどがかよわく、なよなよとしたさま。はかなげで美しいさま。

 この「あえか」は、

  「アエ・カハ」、AE-KAHA(ae=calm;kaha=strong,strength(kahakore=weak,kore=not,no))、「(その状態を維持するだけの強さがある)やっとの・静かな(さま。様子)」(「カハ」のH音が脱落して「カ」となった)(「カハコレ」(弱々しいこと)という熟語があり、これが略されて「カハ」だけで(よわよわしいこと)の意で用いられる慣例があった可能性が考えられます。)

の転訛と解します。

012あえぐ(喘ぐ)

 喘ぐ。息が切れる。苦しそうに息をつく。

 この「あえぐ」は、

  「アヘイ・(ン)グ」、AHEI-NGU(ahei=able,possible,within one's power;ngu=silent,greedy,moan,groan)、「やっと(の思いで)・うめき声をあげる(喘ぐ)」(「アヘイ」のH音が脱落して「アエイ」から「アエ」と、「(ン)グ」のNG音がG音に変化して「グ」となった)

の転訛と解します。

013あえて(敢えて)

 困難な状況を推して、積極的に。

 この「あえて」は、

  「アヘイ・テテ」、AHEI-TETE(ahei=able,possible,within one's power;tete=exert oneself,gnash the teeth)、「力を振り絞って・(奮闘)断行する(敢えて)」(「アヘイ」のH音が脱落して「アエイ」から「アエ」と、「テテ」の反覆語尾が脱落して「テ」となった)

の転訛と解します。

014あえない(敢えない)

 どうにも抵抗できないさま。しかたがない。張り合いがなくてがっかりするさま。

 この「あえない」は、

  「アエ・ナイ」、AE-NAI(ae=calm;nai=nei,neinei=stretched forward,reaching out,wagging,vacillating,bobbing up and down)、「(嘆きの)言葉も出せずに(黙って)・地団駄を踏む(ような思いのさま)」

の転訛と解します。

015あえもの(和え物)

 魚介類や野菜などを酢、味噌、ごまなどに混ぜ合わせて作った料理。

 この「あえもの」は、

  「アハ・エ・モノモノ」、AHA-E-MONOMONO(aha=what?,anything whatever,anything at all,do what to?;e=to denote action in progress,to denote future action or condition;monomono=odorous,odour)、「何か(食物)を・(混ぜ合わせるなどの)操作を加えて・香りの高い料理にしたもの(和え物))」(「アハ」のH音が脱落して「ア」と、「モノモノ」の反覆語尾が脱落して「「モノ」となった)

の転訛と解します。

016あおうま(青馬、白馬)

 青毛の馬。毛の色が黒く、青みを帯びた馬。葦毛の馬。

 この「あおうま」については、雑楽篇(その二)の623うま(馬)の項を参照して下さい。なお、「うま」は古くは「むま」と呼ばれていました。

 この「あおうま」は、

  「アオ・ム・マエ」、AO-MU-MAE(ao=daytime,daylight,dawn,cloud,bright;mu=silent;mae=languid,listless,struck with astonishment)、「明け方(の空の色)(古語の「青」は、黒と白との中間の範囲を示す広い色名で、主に青、緑、藍をさし、時には黒、白をもさしたとされ、『日葡辞書』はAuo(アヲ)を「耳の内側の毛がすこし白い、青馬の色。この毛が他の部分の毛のようにすべて黒いときはクロという。」とします。)をした・静かに(黙って)・(尻尾を)ぶらんぶらんと振っている(動物。馬)」(「ム」のM音が脱落して「ウ」と、「マエ」の語尾のE音が脱落して「マ」となった)

の転訛と解します。

017あおぐ(仰ぐ。扇ぐ)

 @上の方を向く。高所を望む。

 A風が起こる。風を起こす。

 この「あおぐ」は、

  @「アオ・(ン)グ」、AO-NGU(ao=daytime,daylight,dawn,cloud,bright;ngu=silent,greedy,moan,groan)、「日の光を・渇望する(空を見上げる。仰ぐ)」(「(ン)グ」のNG音がG音に変化して「グ」となった)

  A「ア・ハウ・(ン)グ」、A-HAU-NGU(a=drive,urge,compel;hau=wind,air,breath;ngu=silent,greedy,moan,groan)、「静かな・風を・起こす(扇ぐ)」(「(ン)グ」のNG音がG音に変化して「グ」となった)

の転訛と解します。

018あおにさい(青二才)

 年が若く、経験の乏しい人。

 この「にさい」については、国語篇(その十二)の452鹿児島小原良節(かごしまおはらぶし)の項の「青年(にせ)」の解釈を参照してください。なお、若者の意の「にいせ(新背)」は、下記の「ニヒ」が「ニイ」と、「タイ」のAI音がE音に変化して「テ」から「セ」となったもので、同語源です。

 この「あおにさい」は、

  「アオ・ニヒ・タイ」、AO-NIHI-TAI(daytime,daylight,dawn,cloud,bright;nihi=steep,move stealthly,dizziness,timidity;tai=a term of address to males or females)、「(明け方のような)未熟な・おずおずと行動する・者(青二才)」(「ニヒ」のH音が脱落して「ニ」と、「タイ」が「サイ」となった)

の転訛と解します。

019あかぎれ(皹)

 冬に手足に発生する皮膚病。手足の皮膚が乾燥して荒れ、弾力がなくなつて皺に沿って割れ目ができるもの。

 この「あかぎれ」は、

  「ア・カ(ン)ギア・レフ」、A-KANGIA-REHU(a=the...of,belonging to;ngia=ka=take fire,be lighted,burn;rehu=chip,split off in chips)、「例の・(火が燃えるように)赤い・(手足の皮膚の皺に沿ってできる)割れ目」(「カ(ン)ギア」のNG音がG音に変化し、語尾のA音が脱落して「カギ」と、「レフ」のH音が脱落して「レ」となった)

の転訛と解します。

020あがく(足掻く)

 馬、牛などが地面を掻くように足を動かす。手足を動かしてもがく。

 この「あがく」は、

  「ア(ン)ガ・アク」、ANGA-AKU(anga=driving force,thing driven etc.(a=drive,urge,compel),face or move in a certain direction,set to,doing anything;aku=delay,scrape out(akuaku=firm,strong))、「力をこめて・動く」(「ア(ン)ガ」のNG音がG音に変化して「アガ」となり、その語尾のA音と「アク」の語頭のA音が連結して「アガク」となつた)

の転訛と解します。

021あかつき(暁)

 明け方のやや明るくなつた時分。もともとは夜を三分した「宵」「夜中」に続く時分。

 この「あかつき」は、

  「ア・カ・ツツキ」、A-KA-TUTUKI(a=the...of,belonging to;ka=take fire,be lighted,burn;tutuki=reach the farthest limit,be finished,be completed)、「例の・(火が燃えるように空が)赤く・なったとき(暁)」(「ツツキ」の反覆語頭が脱落して「ツキ」となった)

の転訛と解します。

022あがなう(購う・贖う)

 罪のつぐないをする。罪滅ぼしのために金、物品などを出す。何かを代償として別のあるものを手に入れる。買い求める。

 この「あがなう」は、

  「ア・(ン)ガ・ナウ」、A-NGA-NAU(a=the...of,belonging to,well;nga=satisfied;nau=come,go)、「例の・(代償を支払うことによって双方に)満足を・(もたらす)得る」(「(ン)ガ」のNG音がG音に変化して「ガ」となつた)

の転訛と解します。

023あかのたにん(赤の他人)

 全く縁のない他人。

 この「あかの」は、

  「アカ・ノ」、AKA-NO(aka=clean off,scrape away;no=of)、「(綺麗に拭い去った)全く無関係・の(人。他人)」

の転訛と解します。

024あからさま(明らさま)

 ありのままで。明白なさま。物事の急に起こるさま。一時的であるさま。

 この「あからさま」は、

  「ア・カラ・タ・マ」、A-KARA-TA-MA(a=the...of,belonging to;kara=secret plan,conspiracy,a request for assistance in war;ta=dash,beat,lay,scoop for bailing a canoe;ma=white,clean,freed from tapu)、「例の・(隠された)秘密を・禁忌を破って・(船底のあか水を掻き出すように)日の光に晒す(世の中に明らかにする)」(「タ」が「サ」となった)

の転訛と解します。

025あかん

 物事がうまく行かぬ。だめである。(「埒があかぬ」の上略とする説があります。)

 この「あかん」は、

  「ア・カナ」、A-KANA(a=the...of,belonging to;kana=stare wildjy,bewhitch(whakana=make grimaces))、「例の・険しい眼で睨む(だめだ)」(「カナ」が「カン」となった)

の転訛と解します。

026あかんべ

 指先で下瞼を下方に押さえて瞼の裏の赤い部分を出して見せること。また、その仕草。主として子供が軽蔑や拒否の気持ちを表す仕草。(「赤目(あかめ)」の変化した語とする説があります。)

 この「あかんべ」は、

  「ア・カナ・パエ」、A-KANA-PAE(a=the...of,belonging to;kana=stare wildjy,bewhitch(whakana=make grimaces);pae=lie across,be laid to the charge of anyone,be cast ashore)、「例の・険しい眼で睨む(さまを)・示す」(「カナ」が「カン」と、「パエ」のAE音がE音に変化して「ペ」から「ベ」となった)

の転訛と解します。

027あき(秋)

 四季の一、秋。

 この「あき」は、

  「アキ」、AKI((Hawaii)to take a nip and let go,to nibble,to furl as sails)、「(稲穂など農作物を摘み取る)収穫する(または収穫物を積み上げる季節。秋)」

の転訛と解します。

028あぎと(顎)・あご(顎)

 上あごと下あごの間。あご。

 この「あぎと」、「あご」は、

  「ア・(ン)ギタ・ウ」、A-NGITA-U(a=the...of,belonging to;ngita=fast,firm,secure;u=bite,gnaw)、「例の・(食物などを)しっかりと・噛み締めるもの(顎)」(「(ン)ギタ」のNG音がG音に変化して「ギタ」となり、その語尾のA音と「ウ」のU音が連結してO音に変化して「ギト」となった)

  「ア・(ン)ガウ」、A-NGAU(a=the...of,of,belonging to,at;ngau=bite,gnaw,hurt)、「(物を)噛む・もの(顎)」(「(ン)ガウ」のNG音がG音に、AU音がO音に変化して「ゴ」となった)

の転訛と解します。

029あきれる(呆れる)

 意外なことにあってどうしてよいかわからなくなる。あっけにとられる。物事の程度のはなはだしさに呆然とする。

 この「あきれる」は、

  「アキ・レイ・ル」、AKI-REI-RU(aki=dash,beat;rei=swampy ground,peat,wet;ru=shake,scatter,quiver)、「奮って・沼地を・突進する(あきれる)」(「レイ」の語尾のI音が脱落して「レ」となつた)

の転訛と解します。

030あくせく(齷齪)

 心にゆとりがなく、目先にだけ心を奪われたようにせわしく事を行うさま。

 この「あくせく」は、

  「ア・クテクテ」、A-KUTEKUTE(a=the...of,belonging to;kutekute=lazy,confused)、「まるで・(混乱)狼狽したように(行動する)」(「クテクテ」の語尾のTE音が脱落して「クテク」から「クセク」となった)

の転訛と解します。

031あくどい(悪どい)

 色、味、やり方などがしつこい。くどい。やり方や性格などがどぎつくて、たちが悪い。

 この「あくどい」は、

  「アクアク・トイ」、AKUAKU-TOI(akuaku=firm,strong;toi=tingle,as the ears,be galled,be irritated)、「すごく・癪に障る(または苛々させられる)」(「アクアク」の反覆語尾が脱落して「アク」と、「トイ」が「ドイ」となった)

の転訛と解します。

032あくび(欠伸)

 倦怠、披露、眠気などから思わず出る深呼吸。

 この「あくび」は、

  「アク・ピヒ」、AKU-PIHI(aku=delay,scrape out,cleanse;pihi=spring up,begin to grow)、「(胸の中の)息を・すべて吐き出し去ること(あくび)」(「ピヒ」のH音が脱落して「ピ」から「ビ」となった)

の転訛と解します。

033あくまで(飽くまで)

 もう飽きたと思うほど十分に。かぎりなく。徹底的に。

 この「あくまで」は、

  「アク・マテ」、AKU-MATE(aku=delay,take time over anything,scrape out,cleanse;mate=dead,extinguished,completed)、「(物事がすべて)完結する・時が来るまで(あくまで)」(「マテ」が「マデ」となった)

の転訛と解します。

034あぐら(胡座)

 両足を組んで座ること。また、そのさま。(この「あぐら」は、「あぐむ(足組)」の転とする説があります。)

 この「あぐら」は、

  「ア・(ン)グ・ウラ(ン)ガ」、A-NGU-URANGA(a=the...of,belonging to;ngu=silent,greedy;uranga=act or circumstance etc. of becoming firm)、「例の・静かに・(両足を組んで)座って鎮座する座り方(胡座)」(「(ン)グ」のNG音がG音に変化して「グ」となり、その語尾のU音と「ウラ(ン)ガ」の語頭のU音が連結し、名詞形語尾のNGA音が脱落して「グラ」となった)

の転訛と解します。

035あげつらう

 物事の善悪、理非などを議論する。また、些細な人の非をことさらにとりたてて言う。

 この「あげつらう」は、

  「ア・(ン)ゲ・ツ・ラウ」、A-NGE-TU-RAU(a=the...of,belonging to;nge=noise,screech;tu=fight with,energetic;rau=hundred,multitude,entangle,embarrassed,confused)、「例の・金切り声を立てて(議論し)・懸命に・(人を)困惑させる」(「(ン)ゲのNG音がG音に変化して「ゲ」となった」)

の転訛と解します。

036あけぼの(曙)

 夜がほのぼのと明けはじめる頃。

 この「あけぼの」は、

  「アケ・ポノ」、AKE-PONO(ake=indicating immediate continuation in time,forthwith,immediately;pono=light upon,come upon,be effected)、「すぐにだんだん・明るくなって行く(頃)」(「ポノ」が「ボノ」となった)

の転訛と解します。

037あげまき(総角)

 古代の幼童の髪の結い方で、髪を中央から左右に分け、両耳の上に巻いて輪をつくり、角のように突き出したもの。

 この「あげまき」は、

  「ア・(ン)ガイ・マキキ」、A-NGAI-MAKIKI(a=the...of,belonging to;ngai=tribe or clan;makiki=stiff,obstinate)、「例の・(それぞれの)部族が・頑固に守つている風習(髪の結い方)」(「(ン)ガイ」のNG音がG音に、AI音がE音にへんかして「ゲ」と、「マキキ」の反覆語尾が脱落して「マキ」となった)

の転訛と解します。

038あこがれる(憧れる)

 ある対象に心が惹かれる。心が奪われて落ち着かない。また、それを求めて思いこがれる。

 この「あこがれる」は、

  「アコ・(ン)ガレ・ル」、AKO-NGARE-RU(ako=split,have a tendency to split,move stir;ngare=send,urge;ru=shake,scatter,quiver)、「(心が体を)離れて・奮って・(惹かれる方へ)出て行く(さま)」(「(ン)ガレ」のNG音がG音に変化して「ガレ」となった)

  または「ア・コ(ン)ガ・レイ・ル」、A-KONGA-REI-RU(a=the...of,belonging to;konga=live coal,charcoal;rei=leap,rush,run,swampy ground,peat,wet;ru=shake,scatter,quiver)、「例の・(心が燃える炭のように)燃え上がって・奮って・走り出す(さま)」(「コ(ン)ガ」のNG音がG音に変化して「コガ」と、「レイ」の語尾のI音が脱落して「レ」となつた)

の転訛と解します。

039あこぎ(阿漕)

 伊勢国阿濃郡(三重県津市)の東方一帯の海岸、阿漕ノ浦。伊勢神宮の供御のための禁漁区でしたが、平太という漁夫がたびたび密漁を行って罰せられたという伝説があります。(逢ふことをあこぎの島に曳く鯛の度重ならば人も知りなん(『古今和歌三帖 三』など。)謡曲『阿漕』ほか。)

 これらの伝説や古歌から転じて、度重なること。また、度重なって広く知れ渡ること。さらに、どこまでも貪ること。しつこくずうずうしいこと。また、そのさま。

 この「あこぎ」は、

  「アコ・(ン)ギ(ン)ゴ(ン)ギ(ン)ゴ」、AKO-NGINGONGINGO(ako=learn,teach;ngingongingo=malignant devouring spirits)、「邪悪な貪欲の(故に海に沈められた漁師の)亡霊が・(地獄の惨苦の)教訓を垂れる(伝説がある海岸。転じて貪欲なこと)」(「(ン)ギ(ン)ゴ(ン)ギ(ン)ゴ」の反覆語尾が脱落し、最初のNG音がG音に、次のNG音がN音に変化して「ギノ」となり、後に語尾の「ノ」が脱落して「ギ」となった)

の転訛と解します。

040あざ(痣)

 皮膚の一部分の色の変化。

 この「あざ」は、

  「ア・タ」、A-TA(a=the...of,belonging to;ta=dash,beat,lay)、「例の・(皮膚の一部に加えられた)打撃の跡のような(色の変化した箇所の称。ほくろとも。)」(「タ」が「ザ」となった)

の転訛と解します。

041あさがれい(朝餉)

 天皇が召し上がる簡単な食事。また、朝食。

 この「あさがれい」は、

  「アタ・(ン)ガ・レヒア」、ATA-NGA-REHIA(ata=early morning;nga=satisfied,breath;rehi=pleasure,enjoyment,gratified)、「朝の・喜んで・満足するもの(食事)」(「アタ」が「アサ」と、「(ン)ガ」のNG音がG音に変化して「ガ」と、「レヒア」のH音および語尾のA音が脱落して「レイ」となった)

の転訛と解します。

042あさぎいろ(浅黄色、浅葱色)

 浅黄色。浅葱色。

 この「あさぎいろ」は、

  「アタ・キヒヒ・イ・ラウ」、ATA-KIHIHI-I-RAU(ata=gently,clearly,deliverately,quite;kihihi=Pittosporum crassifolium;i=past tense,from,beside,with,upon;rau=catch as in a net,gather into a basket etc.,receptacle)、「穏やかな・(トベラノキの花の)黄色い・(色が)定着・しているもの(淺黄色)」(「アタ」が「アサ」と、「キヒヒ」のH音が脱落して「キイ」から「キ」、「ギ」と、「ラウ」のAU音がO音に変化して「ロ」となつた)
 (「kihihi(トベラノキ)」は、日本列島においてありふれた樹種ではありませんから、縄文語では、「やまぶき(山吹)」を意味していた可能性が高いと考えられます。この「あさぎいろ」については雑楽篇(その二)の586やまぶき(山吹)の項を参照してください。)

の転訛と解します。

043あさげ(朝食、朝餉)

 古くは「あさけ」といい、朝の食事。

 この「あさげ」は、

  「アタ・カイ」、ATA-KAI(ata=early morning;kai=eat,drink,food)、「朝の・(食物)食事」(「アタ」が「アサ」と、「カイ」のAI音がE音に変化して「ケ」から「ゲ」となった)

の転訛と解します。

044あさって(明後日)

 明日の次の日。

 この「あさって」は、

   「アタ・ツ・テ」、ATA-TU-TE(ata=early morning;tu=stand.settle;te,tete=young shoot etc.)、「若芽(の位置)に・ある・(朝)日(明後日)」(「アタ」が「アサ」と、「ツ」が「ッ」となった)
 (「あした(明日)」が「アチ・タ」、ATI-TA(ati=descendant;ta=lay)、「(体の子孫である)足(の位置。足元)に・ある(日。すぐ次の日。明日)」(「アチ」が「アシ」となった)と観念され、それよりも遠いものとして「あさって(明後日)」を「若芽」と見立て、「さらにその次の日」を「しあさって」と呼んだものと考えられます。国語篇(その十五)の088しあさっての項を参照してください。)

の転訛と解します。

045あざな(字)

 実名の他の通り名。

 この「あざな」は、

  「アタ・ナ」、ATA-NA(ata=form,shadow,reflected image;na=used after words and clauses to indicate position near or connection with the person addressed,used in relative clauses)、「(実体でなく)影のような・呼び名(あざな)」(「アタ」が「アザ」となった)

の転訛と解します。

046あさっぱら(朝っぱら)

 朝のとんでもなく早い時間。

 この「あさっぱら」は、

  「アタ・ツ・ハラ」、ATA-TU-HARA(ata=early morning;tu=fight with,energetic;hara=violate tapu intentionally or otherwise,sin,offence)、「朝の・強引に・(人の邪魔をしてはいけないという)禁忌を破った(とんでもなく早い時間)」(「アタ」が「アサ」と、「ツ」が「ッ」と、「ハラ」が「パラ」となった)

の転訛と解します。

047あさはか(浅墓)

 考えが不十分なさま。思慮が足りないさま。通り一辺の。あっさりとしたさま。

 この「あさはか」は、

  「アタ・ハカ」、ATA-HAKA(ata=gently,clearly,deliverately,quite;(Hawaii)haka=hole,open space,vacancy,empty)、「(考えが)あっさりとして・空っぽである(さま)」(「アタ」が「アサ」となった)

の転訛と解します。

048あさぼらけ(朝朗)

 朝、空がほのかに明るくなつた時。「あけぼの」よりもやや明るい時をさすとする説があります。

 この「あさぼらけ」は、

  「アタ・パウ・ラカイ」、ATA-PAU-RAKAI(ata=early morning;pau=consumed,exhausted,denoting the complete or exhaustive character of any action;rakai=adorn,bedeck,adorn oneself)、「朝の・空の(飾り)赤らみが・消えた(時)」(「アタ」が「アサ」と、「パウ」のAU音がO音に変化して「ポ」から「ボ」と、「ラカイ」のAI音がE音に変化して「ラケ」となった)

の転訛と解します。

049あさましい(浅ましい)

 意外である。驚くべきさまである。あまりのことに呆れかえる。嘆かわしい。

 この「あさましい」は、

  「アタ・マチ・イ」、ATA-MATI-I(ata=expressing disgust,bah!;mati=surfeited;i=ferment,be stirred of the feelings)、「驚きで・一杯の・(気持ちが)湧いてくる(さま)」(「アタ」が「アサ」と、「マチ」が「マシ」となった))

の転訛と解します。

050あざむく(欺く)

 相手にあれこれと誘いかけ自分の思い通りにさせる。相手に本当のことと思わせて欺す。

 この「あざむく」は、

  「アタ・ムク」、ATA-MUKU(ata=form,shadow,reflected image;muku=wipe,rub,smear)、「(実体でなく幻影のような)虚偽を・(相手の心になすりつける)信じ込ませる(欺く)」(「アタ」が「アザ」となった)

の転訛と解します。

051あさる(漁る)

 食物を求める。人や物を探し歩く。

 この「あさる」は、

  「ア・タル」、A-TARU(a=the...of,belonging to;taru=shake,overcome)、「例の・(魚貝や食物などを手に入れる)収集する(漁る)」(「タル」が「サル」となった)

の転訛と解します。

052あしからず(悪しからず)

 悪く思わないように。相手の意向に添えないで済まないという気持ちを表す語。

 この「あしからず」は、

  「ア・チカ・ララ・ツ」、A-TIKA-RARA-TU(a=the...of,belonging to;tika=straight,direct,right;rara=be acattered,rush in disorder,stampede;tu=fight with,energetic)、「例の・(真っ直ぐに)一目散に・躍起になって・逃亡する(こと)」(「チカ」が「シカ」と、「ララ」の反覆語尾が脱落して「ラ」と、「ツ」が「ス」から「ズ」となった)

の転訛と解します。

053あしがる(足軽)

 中世、合戦で軽装で敵地を放火、略奪するなど攪乱戦法に従事した俊敏な兵士。

 この「あしがる」は、

  「アチ・(ン)ガルル」、ATI-NGARURU(ati=offspring,descendant,clan;ngaruru=abundant,strong in growth,flouishing)、「(これから強くなる)元気な・連中(足軽)」(「アチ」が「アシ」と、「(ン)ガルル」のNG音がG音に変化し、反覆語尾が脱落して「ガル」となった)

の転訛と解します。

054あじきない(味気ない)

 @乱暴で手がつけられない。A努力する甲斐がない。する意味がない。自分気持ちに反していて面白くない。胸が締め付けられるように耐え難い。やるせない。

 この「あじきない」は、

  @「アチ・キヒ・ナイ」、ATI-KIHI-NAI(ati=offspring,descendant,clan;kihi=cut off,destroy completely;nai=nei,neinei=stretched forward,reaching out,wagging,vacillating,bobbing up and down)、「徹底的に・殺戮し破壊し尽くす・部類の(人間の)」(「アチ」が「アシ」から「アジ」と、「キヒ」のH音が脱落して「キ」となった)

  A「ア・チキ・ナイ」、A-TIKI-NAI(a=the...of,belonging to;tiki=unsuccessful,unsuccessful person;nai=nei,neinei=stretched forward,reaching out,wagging,vacillating,bobbing up and down;)、「例の・(不運な)試みに失敗して・地団駄を踏んだ(人の)」(「チキ」が「ジキ」となった)

の転訛と解します。

055あしげ(葦毛)

 馬の毛色の名で、栗毛、青毛、鹿毛、などの原毛色に後天的に白色毛が発生してくるもの。

 この「あしげ」は、

  「ア・チ(ン)ゲイ」、A-TINGEI(a=the...of,belonging to;tingei=unsettled,ready to move)、「例の・(何色とも)定め難い(色)」(「チ(ン)ゲイ」のNG音がG音に変化し、語尾のI音が脱落して「シゲ」となった)

の転訛と解します。

056あした(明日)

 あした(明日)。あくる朝。

 この「あした」は、

  「アチ・タ」、ATI-TA(ati=descendant;ta=lay)、「(体の子孫である)足(の位置。足元)に・ある(日。すぐ次の日。明日)」(「アチ」が「アシ」となった)。(この「あした」については044あさっての項および国語篇(その十五)の088しあさっての項を参照してください。)

の転訛と解します。

057あしらう

 (いいかげんに)待遇する。応対する。物を取り合わせる。

 この「あしらう」は、

  「ア・チ・ラフア」、ATI-RAHUA(a=the...of,belonging to;ti=throw,cast;rahua=seize,lay hold of,handle roughly)、「例の・(手荒な)取り扱いを・行った(あしらう)」(「チ」が「シ」と、「ラフア」のH音および語尾のA音が脱落して「ラウ」となった)

の転訛と解します。

058あじろ(網代)

 川の瀬に設ける魚とりの設備。檜皮、竹、葦などを薄く細く削り交差させて編んだもの(垣、屏風、天井、車、団扇、笠など)。

 この「あじろ」は、

  「アチ・ラウ」、ATI-RAU(ati=descendant,clan:rau=catch as in a net,gather into a basket)、「(魚などを)捕らえるもの(網)・と同じ種類のもの(網代)」(「アチ」が「アジ」と、「ラウ」のAU音がO音に変化して「ロ」となった)

の転訛と解します。

059あす(明日)

 あした(明日)。

 この「あす」は、

  「アツ」、ATU(to indicate a direction or motion onwards,or away from the speaker in reference to either time or space,to indicate reciprocated action)、「(今日の)次に来る(日。明日)」(「アツ」が「アス」となった)

の転訛と解します。

060あずまや(東屋、四阿)

 四阿造りの建物。屋根を四方に葺き下ろした方形造り、または寄せ棟造りの建物。

 この「あずまや」は、

  「アツ・マヒ・イア」、ATU-MAHI-IA(atu=to indicate a direction or motion onwards,or away from the speaker in reference to either time or space,to indicate reciprocated action;mahi=work,make,do,perform;ia=indeed,rushing stream)、「(屋根を四方の)方向に向かって・流れるように・葺き下ろした(建物。四阿)」(「アツ」が「アズ」と、「マヒ」のH音が脱落して「マイ」となり、その語尾のI音と「イア」の語頭のI音が連結して「マイア」から「マヤ」となった)

の転訛と解します。

061あぜ(畦)

 田と田の境界をなす小さな堤。

 この「あぜ」は、

  「ア・タイ」、A-TAI(a=the...of,belonging to;tai=the sea,the coast,tide,wave,anger,violence)、「例の・(海のような水面の上に立つ)波のような(田の境界の土の小壁)」(「タイ」のAI音がE音に変化して「テ」から「ゼ」となった)

の転訛と解します。

062あぜくら(校倉)

 三角の木材を組み合わせて造る主として倉庫として用いられた建物。

 この「あぜくら」は、

  「ア・タイ・クラ」、A-TAI-KURA(a=the...of,belonging to;tai=the sea,the coast,tide,wave,anger,violence;kura=red feathers,precious,treasure)、「例の・(壁面が海に立つ)波のような(凹凸がある)・(宝物を所蔵する)倉庫」(「タイ」のAI音がE音に変化して「テ」から「ゼ」となった)

の転訛と解します。

063あぜち(按察使)

 奈良時代に創設された地方行政監督機関。

 この「あぜち」は、

  「ア・タイ・チ」、A-TAI-TI(a=the...of,belonging to;tai=the sea,the coast,tide,wave,anger,violence;ti=throw,cast,overcome)、「例の・(地方行政官に対して)厳格な(監察を)・行う(監督官)」(「タイ」のAI音がE音に変化して「テ」から「ゼ」となった)

の転訛と解します。

064あせも(汗疹)

 汗が体外にうまく排出されないために皮膚にできるかゆみをともなった赤いただれ、小さな水泡性発疹。

 この「あせも」は、

  「ア・テ・マウ」、A-TE-MAU(a=the...of,belonging to;te,whakate=squeeze fluid,out of the anything;mau=fixed,continuing,caught)、「例の・(皮膚から)絞り出されたもの(汗)が・(皮膚に)定着してできるもの(あせも)」(「テ」が「セ」と、「マウ」のAU音がO音に変化して「モ」となった)

の転訛と解します。

065あそぶ(遊ぶ)

 興のおもむくままに行動して楽しむ。思うことをして心を慰める。

 この「あそぶ」は、

  「ア・タウプア」、A-TAUPUA(a=the...of,belonging to;taupua=rest,support oneself)、「休息をとる(心身をリラツクスさせる)・類のもの(遊ぶ)」(「タウプア」のAU音がO音に変化し、P音がB音に、語尾のA音が脱落して「トブ」から「ソブ」となった)

の転訛と解します。

066あそん(朝臣)

 「あそん」は、「あそみ」の変化した語との説があります。

 天武天皇13年に八色の姓(やくさのかばね)に再編成された諸姓の第二位。この「あそん」については雑楽篇(その一)の335姓(かばね)の項を参照してください。

 この「あそみ」、「あそん」は、

  「アト・ミヒ」、ATO-MIHI(ato=thatch,enclose in a fence etc.;mihi=greet,admire)、「(葺いた屋根のように諸部族の)上にある・尊敬すべき(部族)」(゜アト」が「アソ」と、「ミヒ」のH音が脱落して「ミ」となった)

  「アト・ナ」、ATO-NA(ato=thatch,enclose in a fence etc.;na=used after words and clauses to indicate position near or connection with)、「(葺いた屋根のように諸部族の)上に・位置する(部族)」(「アト」音が「アソ」と、「ナ」が「ン」となった)

の転訛と解します。

067あだ(仇)

 自分に向かって害を加えようとするもの。かたき。害となること。うらみ、怨恨。

 この「あだ」は、

  「ア・タ(ン)ガ」、A-TANGA(a=the...of,belonging to;tanga=circumstance or time or place of dashing or striking etc.)、「例の・(自分に)害を加えるもの(かたき、うらみなど)」(「タ(ン)ガ」の名詞形語尾のNGA音が脱落して「タ」から「ダ」となった)

の転訛と解します。

068あたい(価、値)

 その物の値打ちに相当するもの。値段。代金。

 この「あたい」は、

  「ア・タヒ」、A-TAHI(a=the...of,belonging to;tahi=one,together,simultaneously,throughout)、「例の・すべて(まとめて相当するもの。価)」(「タヒ」のH音が脱落して「タイ」となった)

の転訛と解します。

069あたい(直、費、費直)

 大化前代、県主などの地方豪族に与えられた姓(かばね)の一種。

 この「あたい」は、

  「ア・タヒ」、A-TAHI(a=the...of,belonging to;tahi=one,together,simultaneously,throughout(te tahi=the first))、「例の・(地方豪族のうち)第一位にある(氏族)」(「タヒ」のH音が脱落して「タイ」となった)

の転訛と解します。

070あたえる(与える)

 自分の所有物を他人に渡す。上の者が下の者へ授ける。

 この「あたえる」は、

  「ア・タヘ・ル」、A-TAHE-RU(a=the...of,belonging to;tahe=menses,exude,drop,flow;ru=shake,scatter,quiver)、「例の・奮って・(物を)下げ渡す(こと)」(「タヘ」のH音が脱落して「タエ」となつた)

の転訛と解します。

071あたかも(恰も、宛も)

 (よく似ている物事に例えて)さながら。まるで。まさしく。ちょうど。

 この「あたかも」は、

  「アタ・カモ」、ATA-KAMO(ata=form,shadow,reflected image;kamo=eyelash,eye,wink,bubble up)、「(幻影のような)そっくりのものを・目のあたりにするような」

の転訛と解します。

072あたたかい(暖かい)

 体に適度な音戸が加わって心地よい。転じて、金銭が十分にある。思い遣りや理解が籠もっている。

 この「あたたかい」は、

  「アタ・タカイ」、ATA-TAKAI(ata=gently,deliverately;takai=wrap up,wrap round)、「ほどよく・(衣服・寝具などに)包まれている(暖かい)」

の転訛と解します。

073あだな(渾名。徒名・虚名)

 @本名とは別に他人を親しんで、また、あざける気持ちから、その容姿、性質、くせ、挙動などの特徴によつて付けた名。

 A男女関係についての噂。浮き名。事実と違う評判。濡れ衣。

 この「あだな」は、

  @「ア・タ・ナ」、A-TA-NA(a=the...of,belonging to;ta-slant,be oblique,deviate from the perpendicular or parallel;na=used after words and clauses to indicate position near or connection with the person addressed,used in relative clauses)、「例の・(真っ正面からの(正式の)名でなく)斜めからの・呼び名(あだな)」(「タ」が「ダ」となった)

  A「アタ・ナ」、ATA-NA(ata=form,shadow,reflected image;na=used after words and clauses to indicate position near or connection with the person addressed,used in relative clauses)、「(実体でなく)影のような・呼び名(あだな)」(「アタ」が「アダ」となった)

の転訛と解します。

074あたふた

 あわてふためくさま。程度の甚だしいさま。

 この「あたふた」は、

  「アタフ・タ」、ATAHU-TA(atahu=love charm,spell,bewitch;ta=dash,beat,lay)、「(恋敵が急に出現したため女性に自分を)惚れさせるまじないを・かける(あわてふためく)」

の転訛と解します。

075あたま(頭)

 人、動物の首から上の部分。頭脳。頭髪。「あたま(頭)」の同義語として「かしら(頭)」、「こうべ(頭)」があります。

 この「あたま」、「かしら」、「こうべ」は、

  「ア・タマ」、A-TAMA(a=the...of,belonging to;tama=spirit,emotion)、「精神が・宿る場所(頭)」

  「カハ・チラハ」、KAHA-TIRAHA(kaha=crested grebe;tiraha=bundle)、「(カイツブリの冠毛のように)飾り立てた・荷物のような(頭)」(「カハ・チラハ」のH音が脱落して「カ・チラ」から「カシラ」となった)

  「コウ・パイ」、KOU-PAI(kou=knob,end,protuberance,knot of hair when dressed on the top of the head;pai=good,excellent,suitable,pleasant)、「きれいに・(頭髪を)結い上げた頭(頭)」(「パイ」のAI音がE音に変化して「ペ」から「ベ」となった)

の転訛と解します。

076あたら

 そのままむなしく終わるのはもったいない。惜しい。

 この「あたら」は、

  「ア・タラ」、A-TARA(a=the...of,belonging to;tara=loosen,separate)=MOENGA-TARA(a marriage union broken by death;moe=sleep,die,marry;moenga=bed,marriage)、「;例の・(夫婦の一方が死亡して)残された人のような(そのままむなしく終わるのはもったいない)」

の転訛と解します。

077あたらしい(新しい)

 上代では「新」の意の形容詞は「あらたし」で、「あたらし」は「惜しい」の意(076あたらを参照してください。)したが、中古初期頃から「新」の意も「あたらし」が使われるようになったとされます。

 この「あたらしい」、「あらたし」は、

  「ア・タ・アラ・チ」、A-TA-ARA-TI(a=the...of,belonging to;ta=dash,beat,lay;ara=rise,awake,raise;ti=throw,cast)、「例の・何か(分からないこと)が・起こって・襲う(新しいことが起こる。新しい)」(「タ」のA音と「アラ」の語頭のA音が連結して「タラ」と、「チ」が「シ」、「シイ」となった)

  「アラ・タ・チ」、ARA-TA-TI(ara=rise,awake,raise;ta=dash,beat,lay;ti=throw,cast)、「(何かが)勃発して・現れて・襲う(新しいことが起こる。新しい)」(「チ」が「シ」、「シイ」となった)

の転訛と解します。

078あたり(辺)

 基準とする所から近い範囲。また、範囲を明確にしないでその付近の場所をいう。およその目安。

 この「あたり」は、

  「ア・タリ」、A-TARI(a=the...of,belonging to,as far as;tari,tatari=wait,expect)、「だいたい・(何処かと予想される)推測される(場所。辺)」

の転訛と解します。

079あたりまえ(当たり前)

 道理から考えてそうあるべきこと。当然。共同労働の収穫の分配で一人あたり受け取るべき配当。

 この「あたりまえ」は、

  「ア・タリ・マエア」、A-TARI-MAEA(a=the...of,belonging to,as far as;tari,tatari=wait,expect;maea=emerge,be taken out of the ground,be gathered in(mahea=cleared away,free from obstruction,clear))、「だいたい・(予想される)推測されるもの(事柄)が・(現実のもの(事柄)となった)そのとおりになつた」(「マエア」の語尾のA音が脱落して「マエ」となつた)

の転訛と解します。

080あつかう(扱う)

 あれこれと気を使う。人や動物の世話をする。人をもてなす。応対、待遇する。あれこれと操作する。処理するなど。

 この「あつかう」は、

  「アツ・カウ」、ATU-KAU(atu=to indicate a direction or motion onwards,to indicate reciprocated action;kau=alone,without appendage,bare,empty,only,to no purpose)、「(単に)ただただ・行動する(扱う)」

の転訛と解します。

081あつかましい(厚かましい)

 恥知らずで遠慮がない。ずうずうしい。

 この「あつかましい」は、

  「アツ・カマ・チヒ」、ATU-KAMA-TIHI(atu=to indicate a direction or motion onwards,to indicate reciprocated action;kama=eager;tihi=summit,peak,lie in a heap)、「(恥をしらずにただただ)最高に・熱心に・行動する(厚かましい)」(「チヒ」のH音が脱落して「シイ」となった)

の転訛と解します。

082あっけない(呆気ない)

 物事が思ったよりも貧弱、簡単で、物足りない。予期に反して簡単で、張り合いがない。

 この「あっけない」は、

  「アツ・ケ・ナヒ」、ATU-KE-NAHI(atu=to indicate a direction or motion onwards,to indicate reciprocated action,to form a comparative or superative;ke=different,strange,otherwise;(Hawaii)nahi=few,the little)、「この上なく・変わったことが・(予想よりも)少ない(あっけない)」(「アツ」が「アッ」と、「ナヒ」のH音が脱落して「ナイ」となった)

の転訛と解します。

083あっけらかん

 常識的、道徳的に考えれば当然あるはずの屈託、ためらい、恥らいといった感情がなく、平然としているさま。情趣や感興をわきたたせることもなく、空虚な印象を与えるさま。何事もないようなさま。

 この「あっけらかん」は、

  「アツ・ケ・ラカ・ナ」、ATU-KE-RAKA-NA(atu=to indicate a direction or motion onwards,to indicate reciprocated action,to form a comparative or superative;ke=different,strange,otherwise;raka=agile,adept;na=used after words and clauses to indicate position near or connection with the person addressed)、「この上なく・変わったことに・(何も無かったように)快活に(またはいつもと変わりなく行動して)・振る舞っている(あっけらかん)」(「アツ」が「アッ」と、「ナ」が「ン」となった)

の転訛と解します。

084あっせん(斡旋)

 間に入って両者がうまく行くように世話すること。とりもつこと。

 この「あっせん」は、

  「アツ・テナ」、ATU-TENA(atu=to indicate a direction or motion onwards,to indicate reciprocated action;tena=encourage,urge forward)、「(人を)元気づけたり、背中を押すように・行動する(斡旋)」(「アツ」が「アッ」と、「テナ」が「セン」となった)

の転訛と解します。

085あっぱれ(天晴れ)

 見事だ。すばらしい。でかしたなど賞賛する言葉。

 この「あっぱれ」は、

  「アツ・パレ」、ATU-PARE(atu=to indicate a direction or motion onwards,to indicate reciprocated action,to form a comparative or superative;pare=band for the hair,crest,top knot)、「最高の・髪飾り(をつけている。すばらしい。天晴れ)」(「アツ」が「アッ」となった)

の転訛と解します。

086あつめる(集める)

多くの人や物を一箇所に寄せ集める。まとめる。

 この「あつめる」は、

  「アツ・メ・ル」、ATU-ME-RU(atu=to indicate a direction or motion onwards,to indicate reciprocated action,to form a comparative or superative;me=with,denoting concomitance or cocurrence;ru=shake,agitate,scatter)、「奮って・(人や物を)集めるように・行動する(集める)」(「アツ」が「アッ」となった)

の転訛と解します。

087あつもの(羹)

 野菜や魚肉を熱く煮た吸い物。

 この「あつもの」は、

  「アツ・モノ」、ATU-MONO((atu=to indicate a direction or motion onwards,to indicate reciprocated action,to form a comparative or superative;mono,monomono=smell,odorous,odor)、「最高に・いい匂いのするもの(あつもの)」

の転訛と解します。

088あてうま(当て馬)

 牝馬の発情の有無を調べるために牡馬を近づけてみること。また、その牡馬。なお、「うま」は古くは「むま」でした。

 この「あてうま」は、

   「アテ・ム・マエ」、ATE-MU-MAE(ate=liver,heart,spirit,high feeling;mu=silent;mae=languid,listless,struck with astonishment)、「(牝馬に近づいて)最高の気分にさせる・静かに(黙って)・(尻尾を)ぶらんぶらんと振っている(動物。馬)」(「ム」のM音が脱落して「ウ」と、「マエ」の語尾のE音が脱落して「マ」となった)

の転訛と解します。

089あてがう(宛う)

 適当なものとして指し当てる。うまく当てはめる。あるモノを何かにぴったりと当ててくっつける。割り当てて与える

 この「あてがう」は、

  「ア・タエ・(ン)ガウ」、A-TAE-NGAU(a=the...of,belonging to;tae=arrive,come go,reach,extend to;ngau=bite,hurt,act upon,attack)、「例の・(何かを)押し当てて・くっつける(あてがう)」(「タエ」のAE音がE音に変化して「テ」と、「(ン)ガウ」のNG音がG音に変化して「ガウ」となった)

の転訛と解します。

090あてずっぽう(当てずっぽう)

 はっきりした成算もなしに事を行うこと。もた、そのさま。当て推量。

 この「うてずっぽう」は、

  「ア・タエ・ツポウ」、A-TAE-TUPOU(a=the...of,belonging to;tae=arrive,come go,reach,extend to;tupou=bow the head,dive,rush of current,steep,headlong)、「例の・(何かを勝手に押し当てる)推量して・(水に飛び込むように)行動を起こす(あてずっぽう)」(「タエ」のAE音がE音に変化して「テ」と、「ツポウ」のT音がS音に変化して「スポウ」から「ズッポウ」となった)

の転訛と解します。

091あでやか(艶やか)

 女性の容姿、態度が上品で美しいさま。また、はなやかで、艶めかしいさま。

 この「あでやか」は、

  「アテア・イア・カ」、ATEA-IA-KA(atea=clear,free from obstruction;ia=indeed;ka=take fire,be lighted,burn)、「実に・輝くように・清らかなさま(あでやか)」(「アテア」の語尾のA音が脱落して「アデ」と、「イア」が「ヤ」となつた)

の転訛と解します。

092あと(後。跡)

 後方。うしろ。事件や行動の跡。

 この「あと」は、

  「ア・トエ」、A-TOE(a=the...of,belonging to;toe=be left,as a remnant)、「例の・(残ったもの)後にあるもの(後。跡)」(「トエ」の語尾のE音が脱落して「ト」となった)

の転訛と解します。

093あとがま(後釜)

 前人の退いたあとの地位。また、その地位につく人。

 この「あとがま」は、

  「ア・トエ・(ン)ガ・マ」、A-TOE-NGA-MA(a=the...of,belonging to;toe=be left,as a remnant;nga=satisfied,breath;ma=white,clean)、「例の・(残ったもの)後の地位に・(満足する)相応しい・清らかな(人物。後任者)」(「トエ」の語尾のE音が脱落して「ト」と、「(ン)ガ」のNG音がG音に変化して「ガ」となった)

の転訛と解します。

094あどけない

(子供の態度、様子などが)無心で愛らしい。無邪気である。

 この「あどけない」は、

  「ア・タウ・ケ・ナヒ」、ATO-KE-NAHI(a=the...of,belonging to;tau=come to rest,be suitable,be comely,befit;ke=different,strange,otherwise;(Hawaii)nahi=few,the little)、「例の・(子供の態度が)自然で・変わったところが・(極めて)少ない(さま)」(「タウ」のAU音がO音に変化シテ「ト」と、「ナヒ」のH音が脱落して「ナイ」となった)

の転訛と解します。

095あとずさり(後ずさり)

 前を向いたままで後にさがること。思い切って行動しないでぐずぐずすること。

 この「あとずさり」は、

  「ア・トエ・ツ・タリ」、A-TOE-TU-TARI(a=the...of,belonging to;toe=be left,as a remnant;tu=stand,settle,take place;tari=carry,bring,urge,incite)、「例の・(残ったもの)後に・(前向きに)位置したまま・強く動こうとする」(「トエ」の語尾のE音が脱落して「ト」と、「ツ」が「ズ」と、「タリ」が「サリ」となった)

の転訛と解します。

096あとのまつり(後の祭り)

 @祭礼の翌日またはその当日、神饌を下げて飲食すること。後宴。Aまた、物事がその時期を外して無益なものになってしまうこと。

 この「あとのまつり」は、

  「ア・トエ・ノ・マツ・ウリ」、A-TOE-NO-MATU-URI(a=the...of,belonging to;toe=be left,as a remnant,no=of;matu=ma atu=go,come(matu=fat,richness of food);uri=descendant,relative,race)、@「例の・(残ったもの)神饌(を食べる催し)・の・(同じ部族)親類縁者が・集まる行事(祭り)」またはA「例の・(残ったもの。山車など。)後になった(時期を外して無益になったもの)・の・(同じ部族)親類縁者が・集まる行事(祭り)」(「トエ」の語尾のE音が脱落して「ト」と、「マツ」の語尾のU音と「ウリ」の語頭のU音が連結して「マツリ」となった)

の転訛と解します。

097あながち(強ち)

 周囲や相手にかまわず、ひたすら自分の意思を通そうとするさま。強引なさま。異常なほど際立つているさま。(下に打ち消しを伴って)一概に。無闇に。

 この「あながち」は、

  「アナ・(ン)ガ・チ」、ANA-NGA-TI(ana=a particle denotes continuance of action or condition,denotes a temporary condition or an action intended to be performed immediately;nga=satisfied,breathe;ti=throw,cast,overcome)、「(相手を圧倒して)押さえつけて・(自分の意思を通して)満足しようと・(行動を続ける)努力するさま」(「(ン)ガ」のNG音がG音に変化して「ガ」となった)

の転訛と解します。

098あなかま

 ああ、やかましいことよ。静かにしなさいと制止する。

 この「あなかま」は、

  「アナ・カマ」、ANA-KAMA(ana=calling immediate attention;kama=eager)、「何とまあ・躍起になつている(うるさくものを言う)さま」

の転訛と解します。

099あなじ・あなぜ

 予期しない恐ろしい風。「あなぜ」とも。西北風が多いが、地域によって異なります。この「あなじ」については、雑楽篇(その一)の213あなじ(風)の項を参照してください。

 この「あなじ」、「あなぜ」は、

  「アナ・チ」、ANA-TI(ana=calling immediate attention;ti=throw,cast,overcome)、「用心すべき・(何でも)吹き倒す(風)」(「チ」が「ジ」となった)

  「アナ・タイ」、ANA-TAI(ana=calling immediate attention;ti=throw,cast,overcome;tai=the sea,the tide,wave,violence)、「用心すべき・暴れまくる(風)」(「タイ」のAI音がE音に変化して「テ」から「ゼ」となった)

の転訛と解します。

100あなた(貴方、貴男、貴女。彼方)

 @貴方、貴男、貴女。A彼方。

 この「あなた」は、

  「アナ・アタ」、ANA-ATA(ana=his,her,of him,of her,of his,of hers.there;ata=gently,clearly,openly,deliberately,quite)、@「立派な・(貴男、貴女)方(貴方)」またはA「清らかな・彼方」(「アナ」の語尾のA音と「アタ」の語頭のA音が連結して「アナタ」となった)

の転訛と解します。

101あなどる(侮る)

 他人を見下げてばかにする。軽蔑する。

 この「あなどる」は、

  「ア・(ン)ガトロ」、A-NGATORO(a=the...of,belonging to;ngatoro=resound,feeling weak and ill )、「例の・(相手を弱く思慮がない者と感じて)軽蔑する」(「(ン)ガトロ」のNG音がN音に変化して「ナトロ」から「ナドル」となつた)

の転訛と解します。

102あに(兄)

 親を同じくする年上の男子。

 この「あに」は、

  「ア・ニヒ」、A-NIHI(a=the...of,belonging to;nihi=steep,move stealthly)、「例の・(そびえ立つ)背の高い(兄)」(「ニヒ」のH音が脱落して「ニ」となった)

の転訛と解します。

103あにはからんや(豈図らんや)

 (次の文で予想外の事態が起こったとき)そんなことを予想しただろうか。思いがけないことに。

 この「あにはからんや」は、

  「アニパ・カラ(ン)ガ・イア」、ANIPA-KARANGA-IA(anipa=anxious,solicitous;karanga=call,summon,welcome,call out,shout;ia=indeed)、「実に・(予想外の事が起こって驚いて)叫び声を上げることを・心配していた」(「アニパ」のP音がF音を経てH音に変化して「アニハ」と、「カラ(ン)ガ」のNG音がN音に変化して「カラナ」から「カラン」と、「イア」が「ヤ」となった)

の転訛と解します。

104あね(姉)

 親を同じくする年上の女子。

 この「あね」は、

  「ア・ネヘ」、A-NEHE(a=the...of,belonging to;nehe=ancient times,a form of address to an aged person,old age)、「例の・年上の(女子)」(「ネヘ」のH音が脱落して「ネ」となつた)

の転訛と解します。

105あばずれ(阿婆擦れ)

 悪く人擦れがして、厚かましいこと。また、そのような人、さま。乱暴な言動。また、ふざけた行為。

 この「あばずれ」は、

  「アパ・ツレフ」、APA-TUREHU(apa=slave,company of workmen or slaves;turehu=blink,wink,doze,anything dimly seen,ghost)、「ウインクする(お構いなしに人を誘う)・奴隷のような(人ずれがしていること、そのさま)」(「アパ」が「アバ」と、「ツレフ」のH音が脱落して「ズレ」となつた)

の転訛と解します。

106あばた(痘痕)

 天然痘がなおつた跡。また、そのような形状のもの。

 この「あばた」は、

  「ア・パタ」、A-PATA(a=the...of,belonging to;pata=drop of water etc.,seed,cause)、「例の・(天然痘の跡)粒々の跡(あばた)」(「パタ」が「バタ」となった)

の転訛と解します。

107あばよ

 別れを告げる言葉。この「あばよ」については国語篇(その十五)の086さようならの項を参照してください。

 この「あばよ」は、

  「アパ・イオ」、APA-IO(apa=spirit of one dead visiting or inspiring a medium;io=spur,lock of hair,tough)、「ご先祖の霊が現れて・髷(頭)に宿ります(お守りされます)ように(さようなら)」(「アパ」が「アバ」と、「イオ」が「ヨ」となった)

の転訛と解します。

108あばらや(荒屋)

 荒れ果てた家。廃屋。

 この「あばらや」は、

  「ア・パラ・イア」、A-PARA-IA(a=the...of,belonging to;para=sediment,refuse,waste,dust;ia=indeed)、「例の・実に・おんぼろの(家屋)」(「パラ」が「バラ」と、「イア」が「ヤ」となった)

の転訛と解します。

109あばれる(暴れる)

 乱暴な行為をする。勇ましく大胆に行動する。

 この「あばれる」は、

  「アパ・レア・ル」、APA-REA-RU(apa=spirit of one dead visiting or inspiring a medium;rea=spring up,grow,numerous;ru=shake,agitate,scatter)、「死者の霊魂が霊媒に乗り移ったように・活発に・行動する(暴れる)」(「アパ」が「アバ」と、「レア」の語尾のA音が脱落して「レ」となった)

の転訛と解します。

110あぶくぜに(泡銭)

 正当な労働によらないで得た金銭。悪銭。

 この「あぶくぜに」は、

  「ア・プク・テ・ニヒ」、A-PUKU-TE-NIHI(a=the...of,belonging to;puku=swelling,tumour,abdomen;te=the;nihi=steep,move stealthly)、「例の・(膨らむもの)泡のような・いつのまにか消えて行く・銭(泡銭)」(「プク」が「「ブク」と、「テ」が「ゼ」と、「ニヒ」のH音が脱落して「ニ」となった)

の転訛と解します。

111あぶみ(鐙)

 馬具の名で、鞍の両脇に垂れ、乗る時に足を踏み掛け、又、乗馬中に乗り手の足を支えるもの。

 この「あぶみ」は、

  「アプ・ミイ」、APU-MII(apu=force one's way into the ground,burrow,clutch,heap upon,cover;(Hawaii)mii=clasp)、「(乗り手の足を)上に載せて・しっかりと保持するもの(鐙)」(「アプ」が「アブ」と、「ミイ」が「ミ」となった)

の転訛と解します。

112あぶらをうる(油を売る)

 仕事を怠けて無駄話をする。また、仕事の途中で時間を潰して怠ける。この「あぶらをうる」については国語篇(その十六)の158なまけるの項の「あぶらうる」を参照してください。

 この「あぶらをうる」は、

  「アプ・ラ・ワウ・ウル」、APU-RA-WAU-URU(apu=force one's way into the ground,heap upon;ra=by way of;wau,whakawau=hou=enter,force downwards or under;uru=enter,possess,reach a place)、「(油を売るのに時間をかけて高所から)大地に滴たらせる・方法によって・下方へ・届かせる(怠ける)」(「アプ」が「アブ」と、「ワウ」のAU音がO音に変化して「ヲ」となった)

の転訛と解します。

113あべこべ

 物事の順序、位置、関係などが本来の逆になっていること。また、そのさま。

 この「あべこべ」は、

  「アペ・コペ」、APE-KOPE((Hawaii)ape=large taro-like plants;(Hawaii)kope=rake,shovel)、「(タロイモのように)収穫すべきものと・(その)収穫に用いる器具と(を取り違えること。あべこべ)」(「アペ」が「アベ」と、「コペ」が「コベ」となった)

の転訛と解します。

114あほう(阿呆)

 知能が劣っているさま。また、そのような人、行動。この「あほう」については

国語篇(その十六)の164ばかの項の「あほう」を参照してください。

 この「あほう」は、

   「ア・ホウ」、A-HOU(a=the...of;hou=dedicate or initiate a person etc.(whakahou=violate tapu))、「例の・タブーを破る(馬鹿)」

の転訛と解します。

115あま(海人。尼)

 @海または湖で魚類、貝類、海藻などを採るのを業とする人。

 A出家して仏門に入った女性。パーリー語の「amma 母、女性」から、サンスクリット「amba 女」からとする説があります。

 この「あま」は、

  @「ア・マ」、A-MA(a=the...of;ma=white,pale,faded,perished)、「(海に潜ると冷たさに)蒼白となる・種類の(人々)」

  A「ア・マア」、A-MAA(a=the...of,belonging to;(Hawaii)maa=accustumed,used to,knowing thoroughly,habituated,experienced)、「例の・(仏道の修行に)経験を積んだ(女性。尼)」(「マア」が「マ」となった)

の転訛と解します。

116甘える(甘える)

 親しんでなれなれしく振る舞う。なれ親しんで甘ったれる。

 この「あまえる」は、

  「ア・マ・ヘイ・ル」、A-MA-HEI-RU(a=the...of,belonging to;ma=white,cleanfreed from tapu;hei=go towards,tie round the neck,wear round the neck,be bound)、「例の・(子供が)無邪気に・(親の)首にすがり・つく(さま)」(「ヘイ」のH音および語尾のI音が脱落して「エ」となった)

の転訛と解します。

117あまた(数多)

 数量の多いさま。たくさん。程度の甚だしいさま。非常に。

 この「あまた」は、

  「ア・マハ・タ」、、A-MAHA-TA(a=the...of,belonging to;maha=many,abundant;ta=dash,beat,lay)、「例の・数多くの(物や事柄が)・存在する(数多)」(「マハ」のH音が脱落して「マ」となった)

の転訛と解します。

118あまつさえ(剰え)

 物事や状況がそれだけでおさまらないで、さらに余計に加わる意。そればかりか、余分に。驚いたことに、あろうことか。

 この「あまつさえ」は、

  「ア・マツ・タエ」、A-MATU-TAE(a=the...of,belonging to;matu=ma atu=go,come;tae=arrive,reach,extend to,amount to)、「例の・(物事が)起こって・さらに発展する(さま)」(「タエ」が「サエ」となった)

の転訛と解します。

119あまのじゃく(天邪鬼)

 民話などに悪役として登場する鬼。何事でも人の意に逆らった行動ばかりすること。また、そのさま。

 この「あまのじゃく」は、

  「ア・マノ・チ・アクア」、、A-MANO-TI-AKUA(a=the...of,belonging to;mano=interior part,heart;ti=throw,cast,overcome;(Hawaii)akua=god,spirit,ghost,devil,image)、「()()」(「チ」と「アクア」の語尾のA音が脱落した「アク」が連結して「ジャク」となった)

の転訛と解します。

120あまる(余る。落雷する)

 @数量がある基準を超える。才能、勢い、気持ちなどがあふれ出る。能力を越える。割り切れないで、または使い切れないで、余分が出る。

 A落雷する。

 この「あまる(余る)」、「あまる(落雷する)」は、

  @「ア・マルル」、A-MARURU(a=the...of,belonging to;maruru=numerous,plentiful,abounding)、「例の・有り余るほどのもの(余る)」(「マルル」の反覆語尾が脱落して「マル」となった)

  A「ア・マ・アル」、A-MA-ARU(a=the...of,belonging to;ma=white,clean,go,come;aru=follow,pursue)、「例の・(清らかなもの)神が・(天から)追いかけて来たような(落雷する)」(「マ」のA音と「アル」の語頭のA音が連結して「マル」となった)

の転訛と解します。

121あみ(網)

 魚や鳥獣などをとるために、糸、縄、針金などで目をあらく編んだもの。

 この「あみ」は、

  「アミ」、AMI(gather,collect)、「(物を)集めるもの(網)」

の転訛と解します。

122あも(母。餅)

 @(上代語)母。「おも」とも。

 A子供、女性の用語で餅を指した。「あんも」とも。

 この「あも」、「おも」、「あんも」は、

  @「アモ」、AMO(carry on the shoulder,carry on a litter,rush upon)、「(子供を背負う)母」

  @「オモ」、OMO((Hawaii)to suck,absorb,suckling,gasp)、「(子供が乳を吸う)母」

  A「ア・マウ」、A-MAU(a=the...of,belonging to;mau=food product,fixed,continuing,caught)、「例の・(整形した)丸めたもの(餅)」(「マウ」のAU音がO音に変化して「モ」となった)

  A「アノ・マウ」、ANO-MAU(ano=as,as though,as it were;mau=food product,fixed,continuing,caught)、「(整形した)丸めた・もののような(餅)」(「アノ」が「アン」と、「マウ」のAU音がO音に変化して「モ」となった)

の転訛と解します。

123あやうい(危うい)

 危険が迫っているさま。不安だ。

 この「あやうい」は、

  「アイア・ウイ」、AIA-UI((Hawaii)aia=ungodly,godless,irregious,wicked,unbelieving,careless of observance of tapu;ui=disentangle,relax or loosen a noose,ask,enquire)、「信じられないことを(心配になって)・(いろいろと)質問する(さま)」(「アイア」が「アヤ」となった)

の転訛と解します。

124あやかし(妖怪。馬鹿者)・あやかり(妖怪。馬鹿者)

 海に現れる妖怪。不思議であやしいこと。馬鹿者。あやかり。

 この「あやかし」、「あやかり」は、

  「アイ・アカアカ・チ」、AI-AKAAKA-TI(ai=expressing surprise;akaaka=state of turmoil;ti=throw,cast,overcome)、「何と・(騒ぎ、不安、動揺をもたらす)怪しいもの(妖怪。馬鹿者)が・(放り出される)現れる」(「アイ」のI音と、「アカアカ」の反覆語尾が脱落した「アカ」の語頭のA音が連結して「アヤカ」と、「チ」が「シ」となった)

  「アイ・アカアカ・リ」、AI-AKAAKA-RI(ai=expressing surprise;akaaka=state of turmoil;ri=screen,protect,bind)、「何と・(騒ぎと不安をもたらす)怪しいもの(妖怪。馬鹿者)が・(取り付く)現れる」(「アイ」のI音と、「アカアカ」の反覆語尾が脱落した「アカ」の語頭のA音が連結して「アヤカ」となった)

の転訛と解します。

125あやかる(肖る)

 @揺れ動いて変化する。動揺する。A感化されて同様な状態になる。似る。(疫病が)流行する。

 この「あやかる」は、

  @「アイ・アカアカ・ル」、AI-AKAAKA-RU(ai=expressing surprise;akaaka=state of turmoil;ru=shake,agitate,scatter)、「何と・動揺が・激しく起こる」(「アイ」のI音と、「アカアカ」の反覆語尾が脱落した「アカ」の語頭のA音が連結して「アヤカ」となった)

  A「アイ・アカ・ル」、AI-AKA-RU(ai=expressing surprise;aka=yearning,affection;ru=shake,agitate,scatter)、「何と・(あるものに)あこがれて・激しく心を動かす(感化される)」または「何と・(情緒や)病気が・(振り撒かれる)蔓延する」(「アイ」のI音と、「アカ」の語頭のA音が連結して「アヤカ」となった)

の転訛と解します。

126あやしい(怪しい)

 人の知恵でははかれないような不思議さがある。霊妙である。普通と違っている。物の正体、物事の真相、原因、理由などがはっきりとつかめない。

 この「あやしい」は、

  「アイ・アチ・イ」、AI-ATI-I(ai=expressing surprise;ati=offspring,descendant,clan;i=ferment,be stirred of the feelings)、「何と・(不思議なことと)怪しむ気持ちが湧く・部類の(感じ)」(「アイ」のI音と、「アチ」の語頭のA音が連結して「アヤチ」から「アヤシ」となった)

の転訛と解します。

127あやつこ

 魔除けのためのまじないのしるし。多くは赤子の初出のとき、額になべずみ(男子)や朱(女子)で印をつけるもの。

 この「あやつこ」は、

  「アイ・アツ・コウ」、AI-ATU-KOU(ai=expressing surprise;atu=to indicate a direction or motion towards;kou,koukou=anoint,sprinkle)、「何と・(幼児の額に油を塗る)魔除けの印を・付ける(行事)」(「アイ」のI音と、「アツ」の語頭のA音が連結して「アヤツ」と、「コウ」のU音が脱落して「コ」となった)

の転訛と解します。

128あやつり(操り)

 操ること。また、そのしかけ。

 この「あやつり」は、

  「アイ・アツ・リリ」、AI-ATU-RIRI(ai=expressing surprise;atu=to indicate a direction or motion towards;riri=be angry,fight,urge with vehemence,anger,quarrel,combat)、「何と・猛烈に・(人の行動を)強制する(さま)」(「アイ」のI音と、「アツ」の語頭のA音が連結して「アヤツ」と、「リリ」の反覆語尾が脱落して「リ」となった)

の転訛と解します。

129あやひと(漢人)

 大化前代、大陸系渡来人の一系統。漢氏の部下となり、支配下の品部である漢部を監督した者。(その姓は村主(すぐり)が多い。元来は五世紀初頭に朝鮮からきた技術民がこう呼ばれたが、のち中国系と称する渡来人を意味するようになった。)また、姓(かばね)に準ずる名称。中国系の渡来人の系統を意味する。

 この「あやひと」は、

  「アイ・アヒ・ト」、AI-AHI-TO(ai=expressing surprise;ahi=fire,beget;to=drag,,haul,carry the taiaha at the trail)、「何と・火を扱う者(金属技術者)または物を生産する者を・統率する者(指導者)」(「アイ」のI音と、「アヒ」の語頭のA音が連結して「アヤヒ」となった)

  または「ア・イア・ピト」、A-IA-PITO(a=the...of,belonging to;ia=indeed;pito=the first,end,extremity,navel)、「例の・実に・第一人者(指導者)」(「イア」ガ「ヤ」と、「ピト」のP音がF音を経てH音に変化して「ヒト」となった)

の転訛と解します。

130あやふや

 物事の確かでないさま。あいまいで判断の付かないさま。疑わしいさま。たよりないさま。

 この「あやふや」は、

  「アイア・フイ・イア」、AIA-HUI-IA((Hawaii)aia=ungodly,godless,irregious,wicked,unbelieving,careless of observance of tapu;hui=put or add together,meet,double up;ia=indeed)、「信用できないことが・実に・積み重なっている(あやふやだ)」(「アイア」が「アヤ」と、「フイ」のI音と「イア」の語頭のI音が連結して「フヤ」となった)

の転訛と解します。

131あやまる(謝る。誤る)

 @詫びる。謝罪する。降参する。辞退する。謝る。

 A道理から外れる。正常でなくなる。誤る。

 この「あやまる」は、

  @「アイア・マ・ハルル」、AIA-MA-HARURU((Hawaii)aia=ungodly,godless,irregious,wicked,unbelieving,careless of observance of tapu;ma=white,clean,go,come;haruru=any dull or heavy sound,roar,resound)、「(神を怖れぬ仕業をした)罪を・償う・(言葉を)声を潜めて言う(謝る)」(「アイア」が「アヤ」と、「マ」のA音と「ハルル」のH音および反覆語尾が脱落して「アル」となったその語頭のA音が連結して「マル」となった)

  A「アイア・マ・ル」、AIA-MA-RU((Hawaii)aia=ungodly,godless,irregious,wicked,unbelieving,careless of observance of tapu;ma=white,clean,go,come;ru=shake,agitate,scatter)、「(信じられないこと)誤ったことを・そのまま・流布する(誤る)」(「アイア」が「アヤ」となった)

の転訛と解します。

132あゆむ(歩む)

 足を動かして進む。歩行する。

 この「あゆむ」は、

  「アイ・フム」、AI-HUMU(ai=substantive;humu=hip-bone)、「(大腿骨)足を・(本質的に)動かすこと(歩む)」(「アイ」のI音と「フム」のH音が脱落した「ウム」の語頭のU音が連結して「アユム」となった)

の転訛と解します。

133あら(感嘆。荒・粗。現。新)

 @物事に驚いたり、感動したりしたときに発する言葉。

 A勢いの激しいさま。勇ましい。乱暴な。粗暴な。粗製の。

 B世に現れている。目に見える形で存在する。

 C新しいもの。

 この「あら」は、

  @「アラ」、ARA(expressing surprise)、「(驚き、感嘆を現す語)あら」

  A「ア・ララ」、A-RARA(a=the...of,belonging to;rara=be scattered,rush in disorder,stampede,effect)、「例の・(動物の群れが驚いて一斉に逃げ出したり、軍勢が雪崩を打って逃げ出すなど)先を争って走り出すような(荒々しいさま)」(「ララ」の反覆語尾が脱落して「ラ」となった)

  B「ア・ララ」、A-RARA(a=the...of,belonging to;rara=be spread out on a stage,broach to,be thrown broadside on)、「例の・(舞台に登場するように)世に現れる(さま)」(「ララ」の反覆語尾が脱落して「ラ」となった)

  C「アラ」、ARA(rise,rise up,awake,raise)、「(登る)新しく登場する(もの)」

の転訛と解します。

134あらかじめ(予め)

 前々から。かねて。

 この「あらかじめ」は、

  「アラ・カチ・マイ」、ARA-KATI-MAI(ara=flooding before birth;kati=block up,prevent,shut or closed of a passage,barrior;mai=to indicate direction or motion towards)、「(出産時の)破水が・(周囲に溢れ出ないように)防止壁を・事前に準備して置く」(「カチ」が「カジ」と、「マイ」のAI音がE音に変化して「メ」となった)

の転訛と解します。

135あらき(殯)

 葬儀の準備や山陵造りが整うまで死体を棺に納めてしばらく仮に置いておくこと。雑楽篇(その一)の330もがり(殯)の項の「あらき(殯)」を参照してください。

 この「あらき」は、

  「アウラキ」、AURAKI(return,go,wail,lament)、「悲嘆(その行事)」(AU音がA音に変化して「アラキ」となった)

の転訛と解します。

136あらし(嵐)

 荒く吹く風。暴風、烈風などを含んだ強風。

 この「あらし」は、

  「ア・ララ・チ」、A-RARA-TI(a=the...of,belonging to;rara=be scattered,rush in disorder,stampede,effect;ti=throw,cast,overcome)、「例の・(動物の群れが驚いて一斉に逃げ出したり、軍勢が雪崩を打って逃げ出すように)荒々しく・襲いかかるもの(嵐))」(「ララ」の反覆語尾が脱落して「ラ」と、「チ」が「シ」となった)

の転訛と解します。

137あらす(荒らす)

乱雑な状態にしたりこわしたりして、だめにする。傷めたり傷つけたりする。土地や建物を手入れせずに放っておく。

 この「あらす」は、

  「アラ(ン)ギ・ツ」、ARANGI-TU(arangi=unsettled,perturbed;tu=stand,settle,fight with,energetic)、「乱雑な状態に(なるように)・懸命に努める(または放っておく)」(「アラ(ン)ギ」の語尾のNGI音が脱落し手「アラ」と、「ツ」が「ス」となった)

の転訛と解します。

138あらそう(争う)

 相手と競う。戦う。自分の気持ちを通そうとして抵抗する。自分の言い分を押し通そうとする。

 この「あらそう」は、

  「ア・ララ・タウ」、A-RARA-TAU(a=the...of,belonging to;rara=be scattered,rush in disorder,stampede,effect;tau=attack(tatau=quarrel))、「例の・(動物の群れが驚いて一斉に逃げ出したり、軍勢が雪崩を打って逃げ出すように)荒々しく・襲いかかる(攻撃する)」(「ララ」の反覆語尾が脱落して「ラ」と、「タウ」のAU音がOU音に変化して「トウ」から「ソウ」」となった)

の転訛と解します。

139あらためる(改める)

 変更を加える。前からあるものを新しいものに取り替える。改善する。容姿や態度、言葉などをきちんと整える。

 この「あらためる」は、

  「アラ・タメメ・ル」、ARA-TAMEME-RU(ara=rise,rise up,awake,raise;tameme=desire;ru=shake,agitate,scatter)、「(新しいものが)出現することを・望み・実行する(改める)」(「タメメ」の反覆語尾が脱落して「タメ」となった)

の転訛と解します。

140あらて(新手)

 そのことに新しく携わる者。とくに、これから戦闘に加わるまだ疲労していない軍勢。新しい手段や方法。

 この「あらて」は、

  「アラ・テ」、ARA-TE(ara=rise,rise up,awake,raise;te,tete=young shoot,frond of a plant,chief)、「(植物の)若芽のように・出現するもの(新しい人材。新手)」

の転訛と解します。

141あらまき(荒巻、新巻)

 主として魚を、あし、わら、竹の皮などで巻いたもの。鮭の内臓を除き、腹の中などに塩を詰めたもの。

 この「あらまき」は、

  「ア・ララ・マキキ」、A-RARA-MAKIKI(a=the...of,belonging to;rara=stage on which kumara etc. are dried,be spread out on a stage;makiki=stiff,standing straight out,obstinate)、「例の・(鮭の内臓を除き塩をまぶして)ある程度乾燥させ・(魚体が)堅くなったもの(新巻。荒巻)」(「ララ」の反覆語尾が脱落して「ラ」と、「マキキ」の反覆語尾が脱落して「マキ」となった)

の転訛と解します。

142あらまし

 だいたいのところ。予想として。

 この「あらまし」は、

  「ア・ラハ・マチ」、A-RAHA-MATI(a=the...of,belonging to;raha=open,extended;mati=surfeited)、「例の・(十分に)伸びて・(飽食した)自分のものとした(理解した。あらまし)」(「ラハ」のH音が脱落して「ラ」と、「マチ」が「マシ」となった)

の転訛と解します。

143あらゆる(凡ゆる)

 ありうる限りの。すべての。

 この「あらゆる」は、

  「ア・ラヒ・ウル」、A-RAHI-URU(a=the...of,belonging to;rahi=great,plentiful,abundant,numerous;uru=enter,possess as a familiar spirit,join,reach,arrive)、「例の・(限りなく)たくさんのものが・集まった(あらゆる)」(「ラヒ」のH音が脱落して「ライ」となり、その語尾のI音と「ウル」の語頭のU音が連結して「ラユル」となった)

の転訛と解します。

144あられ(霰)

 雪に水滴が付着して白色不透明の小さな粒になったもの。この「あられ」については雑楽篇(その一)の240みぞれ(霙)の項の「あられ(霰)」を参照してください。

 この「あられ」は、

   「アラアライ」、ARAARAI(screen on every side)、「(それが降ると)四方八方に衝立ができたように(身動きがつかなくなるもの。霰)」(AA音がA音に、AI音がE音に変化して「アラレ」となった)

の転訛と解します。

145あられもない

 あるはずもない。ありえない。とんでもない。(女性の態度や振る舞いが)女性として適当でない。

 この「あられもない」は、

  「ア・ラレ・マウ・ナイ」、A-RARE-MAU-NAI(a=the...of,belonging to;rare=dull,stupid,laziness,indilence(whakarare=hoodwink,bemuse,distort):mau=carry,bring,fixed,continuing,caught,entangled;nai=nei,neinei=stretched forward,reaching out,wagging,vacillating)、「例の・(女性にあるまじき)ぐうたらな(態度で思わず目を背けないではいられない)・困惑の・極致であるさま」(「マウ」のAU音がO音に変化して「モ」となった)

の転訛と解します。

146あらわす(表す、現す)

 表に出して、はっきり示す。隠さないで見せる。隠さないで口に出して言う。形あるものとして実現させる。

 この「あらわす」は、

  「アラ・ワ・ツ」、ARA-WHA-TU(ara=rise,rise up,awake,raise;wha=be disclosed,get abroad:tu=stand,settle)、「(下や裏にあるものを)上に出して・はっきりと・示す(あらわす)」(「ツ」が「ス」となった)

の転訛と解します。

147ありあり

 現実のあるままをはっきりと。物事の状態や特色が、はっきりと現れているさま。あきらかに。

 この「ありあり」は、

  「アリアリ」、ARIARI(gleaming,clear,undisturbed,bare)、「あきらかに(ありあり)」

の転訛と解します。

148ありがたい(有り難い)

 存在が稀である。世に生きることが難しい。(めったにないくらい)優れている。(その事柄、行為などがめったにないことで)またとなく尊い。かたじけない。うれしい。

 この「ありがたい」は、

  「アリ・(ン)ガタ・アイ」、ARI-NGATA-AI(ari=clear,visible,white,appearance;ngata=appeased,satisfied;ai=expressing the reason for which anything is done)、「(満足)感謝の・態度を・表す(有り難い)」(「(ン)ガタ」のNG音がG音に変化して「ガタ」となり、その語尾のA音と「アイ」の語頭のA音が連結して「ガタイ」となった)

の転訛と解します。

149ありがとう(有り難う)

 かたじけない。うれしく思うなど感謝の気持ちを表す。

 この「ありがとう」は、

  「アリ・(ン)ガタ・アウ」、ARI-NGATA-AU(ari=clear,visible,white,appearance;ngata=appeased,satisfied;au=firm,intense)、「(満足)感謝の・態度を・しっかりと表す(有り難う)」(「(ン)ガタ」のNG音がG音に変化して「ガタ」となり、その語尾のA音と「アウ」の語頭のA音が連結して「ガタウ」となり、AU音がOU音に変化して「ガトウ」となった)

の転訛と解します。

150ありきたり(在り来たり)

 もとからあること。もとのまま。今まで通りでごくありふれていること。

 この「ありきたり」は、

  「アリ・キ・タタリ」、ARI-KI-TATARI(ari=clear,visible,white,appearance;ki=full,very;tatari=wait,expect)、「事柄が・(今まで通り)予期されるものが・多いこと(ありきたり)」(「タタリ」の反覆語頭が脱落して「タリ」となった)

の転訛と解します。

151ありそ(荒磯)

 岩石が多く、荒波の打ち寄せる海岸。あらいそ。

 この「ありそ」は、

   「アリ・タウ」、ARI-TAU(ari=clear,white,appearance;tau=reef,come to rest,beautiful)、「清らかで・美しい(岩石海岸または砂州)」(「タウ」のAU音がO音に変化して「ト」となった)

の転訛と解します。

152あるいは(或いは)

 同類の事柄の中から一方を選び、または様々な事柄を列挙してそのうちの一つを選ぶことを示す言葉。

 この「あるいは」は、

  「アル・ヒワ」、ARU-HIWA(aru=follow,pursue;hiwa=watchful,alert)、「(複数の事柄や人を)注意深く(監視して)・追いかける(そのうちの一つを選ぶ。あるいは)」(「ヒワ」のH音が脱落して「イワ」となった)

の転訛と解します。

153あるく(歩く)

 動き回る。(足を使って)移動する。歩行する。

 この「あるく」は、

  「アル・ク」、ARU-KU(aru=follow,pursue;ku=silent(ku,kuku=firm,stiff,thickened))、「静かに(またはしっかりと足を踏みしめて)・(獲物を追うように)歩く」

の転訛と解します。

154あるじ(主)

 国、家などの長。

 この「あるじ」は、

  「アル・チ」、ARU-TI(aru=follow,pursue;ti=throw,cast,overcome)、「(人を)支配することを・追求する者(主)」(「チ」が「ジ」となった)

の転訛と解します。

155あるへいとう(有平糖)

 1600年頃ヨーロッパから伝わった砂糖菓子の一つ。砂糖に飴を加えて煮詰め、色を付け、いろいろな形に細工して祝い物や供物の飾り菓子とする。

 この「あるへいとう」は、

  「アルヘ・イ・タウ」、ARUHE-I-TAU(aruhe=edible fern root;i=past tense,from,beside,with,by;tau=come to rest,be suitable,be comely)、「(食用の羊歯の根の)デンプン・から(デンプンを糖化して)造った・(お祝いやお祭りなど慶事に)ふさわしい(菓子。有平糖)」(「タウ」のAU音がOU音に変化して「トウ」となった)

の転訛と解します。

156あわい(間・合)

 物と物との交わったところ。重なったところ。また、境目のところ。中間。人と人との間柄。

 この「あわい」は、

  「ア・ワヒ」、A-WAHI(a=the...of,belonging to;wahi=break,split,break through,break open,part,portion,place,locality)、「例の・(物と物と重なつていたところが)離れた(ところ。中間)」(「ワヒ」のH音が脱落して「ワイ」となった)

の転訛と解します。

157あわせ(袷)

 裏地の付いている衣服。

 この「あわせ」は、

  「アウワハ・テ」、AUWAHA-TE(auwaha=meddle,interfere;te=crack)、「(表地と裏地の二枚を)離すことが・できないように仕立てたもの(衣類。袷)」(「アウワハ」のH音が脱落して「アウワ」から「アワ」と、「テ」が「セ」となった)

の転訛と解します。

158あわただしい(慌ただしい)

 物事を急いでしようとして慌てるさま。心がせわしなく落ち着かない。変化がはげしい。

 この「あわただしい」は、

  「アウアハ・タタ・チヒ」、AUAHA-TATA-TIHI(auaha=leap,throb,thrill with passion;tata=dash down,strike repeatedly,oppose,hew out;tihi=summit,top,peak,lie in a heap)、「(最高に)たいへん・急いで・道を切り開いて進むような(あわただしい)」(「アウアハ」のH音が脱落して「アワ」と、「タタ」が「タダ」と、「チヒ」のH音が脱落して「チイ」から「シイ」となった)

の転訛と解します。

159あわてる(慌てる)

 びっくりしてまごつく。うろたえる。非常に急ぐ。

 この「あわてる」は、

  「アウアハ・テ・ル」、AUAHA-TE-RU(auaha=leap,throb,thrill with passion;te=to make a emphatic statement;ru=shake,agitate,scatter)、「非常に・奮って・急いで飛び跳ねるように行動する(あわてる)」(「アウアハ」のH音が脱落して「アワ」となった)

の転訛と解します。

160あわゆき(沫雪)

 泡のように溶けやすいやわらかな雪。この「あわゆき」については雑楽篇(その一)の241あわ(淡)雪の項を参照してください。

 この「あわゆき」は、

   「アワ・ヰウ・キ」、AWHA-WHIU-KI(awha=storm,rain;whiu=throw,place,be gathered together;ki=full,very)、「(雨のような)降るとすぐ溶けて水になる・(大地に)たくさん・(天から投げ出されて)降り積むもの(沫雪)」(「ヰウ」のWH音が脱落して「イウ」から「ユ」となった)

の転訛と解します。

161あわれ(哀れ)

 心の底からのしみじみとした感動や感情、また、そういう感情を起こさせる状況。心に愛着を感じるさま。しみじみとした風情のあるさま。気に毒なさま。もの悲しいさま。はかなく無常なさま。

 この「あわれ」は、

  「ア・ハレ」、A-HARE(a=the...of,belonging to;hare=haere=a spirit supposed to reside in fragmentary rainbows on detached clouds)、「例の・切れ切れの雲にかかるかすかな虹に宿ると信じられている精霊のような(すぐに消えて行くはかない存在)」(「ハレ」が「ワレ」となった)

の転訛と解します。

162あん(餡)

 餅や饅頭の中に詰めるもの。小豆、インゲンなどの豆類または芋類を似てすりつぶし、砂糖または塩を混ぜ、更に煮たもの。この「あん」については国語篇(その十六)の192ぼたもち(牡丹餅)の項の「アンコロモチ」を参照してください。

 この「あん」は、

  「アナ」、ANA(denoting continuance of action or state)、「(豆類や芋類が)煮られて練られたもの(餡)」(「アナ」が「アン」となった)

の転訛と解します。

163あんか(行火)

 炭火を入れて手足を暖める道具。

 この「あんか」は、

  「アナ・カ」、ANA-KA(ana=denoting continuance of action or state;ka=take fire,be lighted,burn)、「(中で)炭火を燃やし・続けるもの(行火)」(「アナ」が「アン」となった)

の転訛と解します。

164あんじょう

 うまい具合に。上手に。具合良く。

 この「あんじょう」は、

  「アナ・チホ」、ANA-TIHO(ana=denoting continuance of action or state;tiho=flaccid,soft)、「おだやかに(具合良く)・物事が進むさま(あんじょう)」(「アナ」が「アン」と、「チホ」のH音が脱落して「チョ」から「ジョウ」となった)

の転訛と解します。

165あんた(貴方)

 (「あなた」の変化した語)近世後期、上位者に用いた。現代、多く下位者に用いる。東京では卑俗な言い方、関西では親愛の情を込めている。

 この「あんた」は、

  「アナ・アタ」、ANA-ATA(ana=to denote a temporary condition or a continuing action;ata=gently,clearly,deliverately)、「清らかで・いらっしゃる(あなた(貴方)。尊称)」(「アナ」の語尾のA音と「アタ」の語頭のA音が連結して「アナタ」となつた)

の転訛と解します。

166あんど(安堵)

 (「堵」は垣の意)垣の内に安んじて居ること。心の落ち着くこと。安心すること。

 この「あんど」は、

  「アナ・タウ」、ANA-TAU(ana=to denote a temporary condition or a continuing action;tau=come to rest,come to anchor,be suitable,bw comely,befit)、「(心が)安らかに(休息し)・続けるさま」(「アナ」が「アン」と、「タウ」のAU音がO音に変化して「ト」から「ド」となつた)

の転訛と解します。

167あんどん(行灯)

 昔の照明器具。木、竹、金属製の角形または円形の枠に紙を張り、中に油皿を置いて火をともすもの。地名篇(その五)の奈良県の(52)柳本古墳群のb 行灯(あんどん)山古墳の項を参照してください。

 この「あんどん」は、

  「ア(ン)ガ・ト(ン)ガ」、ANGA-TONGA(anga=aspect,shell,stone of fruit;tonga=restrained,suppressed,secret(whakatonga=keep oneself quiet,lurk))、「(外側の)殻のような風除けの・内で静かに燃える(灯り。行灯)」(「ア(ン)ガ・ト(ン)ガ」のNG音がN音に変化して「アナ・トナ」から「アントン」、「アンドン」となった)

の転訛と解します。

168あんない(案内)

 道ゃ場所をよく知らない人を手引きすること。また、その人。事情、様子などをしらせること。

 この「あんない」は、

  「アナ・ナイ」、ANA-NAI(ana=to denote a temporary condition or a continuing action,denotes the point to which anything reaches;nai=nei,neinei=stretched forward,reaching out,wagging,vacillating)、「(人が目的の)場所に辿り着けるよう経路を示し・(足を伸ばす)先導すること(案内)」(「アナ」が「アン」となつた)

の転訛と解します。

169あんのじょう(案の定)

 思った通り。はたして。

 この「あんのじょう」は、

  「アノ・ノ・チオホ」、ANO-NO-TIOHO(ano=as,as though,as it were;no=of;tioho=apprehensive)、「(心配)予期して・いた・通りに(案の定)」(「アノ」が「アン」と、「チオホ」のH音が脱落して「チオオ」から「ジョウ」となった)

の転訛と解します。

170あんばい(塩梅)

 程よく配置したり、処置したりすること。食物の味加減を整えること。また、その味加減が良い味加減であること。体の具合。

 この「あんばい」は、

  「アナ・パイ」、ANA-PAI(ana=to denote a temporary condition or a continuing action;pai=good,excellent,suitable,pleasant)、「たいへん具合良く・物事が進むさま(あんばい)」(「アナ」が「アン」と、「パイ」が「バイ」となった)

の転訛と解します。

171あんぽんたん(安本丹)

 愚か者。薬の名になぞらえた語。この「あんぽんたん」については国語篇(その十六)の164ばか(馬鹿)の項の「アンポンタン」を参照してください。

 この「あんぽんたん」は、

   「アナ・ポネ・タナ」、ANA-PONE-TANA(ana=denoting continuance of action or state;pone=in difficulties,troubled;tana=his,her,its)、「人に迷惑をかけ・続ける・奴(馬鹿)」(「アナ」が「アン」と、「ポネ」が「ポン」と、「タナ」が「タン」となった)

の転訛と解します。

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「イ」

172い(井)

 泉や流水また地を掘り下げて水をくみ上げるところ。

 この「イ」は、

  「イ」、I(ferment,be stirred(of the feelings),(ia=current,rushing stream))、「(水が)湧き上がるもの(井)」(または「イア(水流)」の語尾のA音が脱落して「イ」となった)

の転訛と解します。

173いいなずけ(許嫁)

 双方の親同士で、幼いうちから子供の結婚を約束しておくこと。その者。

 この「いいなずけ」は、

  「イヒ・ナ・ツケ」、IHI-NA-TUKE(ihi=power,authority,spell,incantation;na=to indicate position near or connection with,belonging to;tuke=elbow,angle,to indicate any short distance)、「(双方の親が子にかけた)まじないによって・極めて近しい関係(婚約関係)に・置かれている者(許嫁)」(「イヒ」のH音が脱落して「イイ」と、「ツケ」が「ズケ」となった)

  または「イイ・ナ・ツケ」、II-NA-TUKE((Hawaii)ii=tight,difficult to extract,stiff(i=to say,speak,saying);na=to indicate position near or connection with,belonging to;tuke=elbow,angle,to indicate any short distance)、「(双方の親によって)極めて近しい関係(婚約関係)に・置かれて・切り離せない状況にある者(許嫁)」(「ツケ」が「ズケ」となった)

の転訛と解します。

174いう(言う)

 言葉として表現する。しゃべる。この「いう」については国語篇(その三)の第二章 身体語の項の「言う」を参照してください。

 この「いう」は、

  「イ・フ」、I-HU(i=ferment,be stirred of the feelings;hu=resound,bubble up,tenor or drift of a speech)、「感情が湧くのにつれて・(音吐朗々と)しゃべる」

の転訛と解します。

175いえ(家)

 人々が寝起きして生活を営んでいるところ。そこに住んでいる人々。家族。家庭。先祖から代々伝えてきた家族団体。家系。

 この「いえ」は、

  「イ・ヘイ」、I-HEI(i=past tense,beside,with,by,at;hei=go towards,turn towards,tie round the neck,be bound or entangled)、「(人が)帰って・行く(場所)」もしくは「(人が家族として)結ばれて・いる(集団)」(「ヘイ」のH音が脱落して「エイ」から「エ」となった)

  または「イ・ヘイ(ン)ガ」、I-HEINGA(i=past tense,beside,with,by,at;heinga=parent,ancestor)、「(人が)先祖や親と・繋がっている(集団。家系)」(「ヘイ(ン)ガ」のH音および名詞形語尾のNGA音が脱落して「エイ」から「エ」となった)

の転訛と解します。

176いおう(硫黄)

 非金属元素の一で、黄色、無臭のもろい結晶、熱すると溶解し、点火すると青い炎を出して燃える。

 この「いおう」は、

  「イ・アウ」、I-AU(i=ferment,be stirred of the feelings;au=smoke,gall,cloud,mist,fog)、「(火をつけると)嫌な臭いがする煙を出して・燃えさかるもの(硫黄)」(「アウ」のAU音がOU音に変化して「オウ」となった)

の転訛と解します。

 

177いおり(庵)

 草や木で屋根や壁を造った小さな粗末な仮小屋。旅行中に泊まるために造る粗末な小屋。隠者、僧などが住む粗末な仮小屋。

 この「いおり」は、

  「イ・オリ」、I-ORI(i=past tense,beside,with,by,at;ori=cause to wave to and fro,sway,move about)、「(仮に)行き来・する(小屋)」

の転訛と解します。

178いかが(如何)

 (心の中で疑い危ぶむ意を表す)どう。どのように。どうして。

 この「いかが」は、

  「イ・カ(ン)ガ」、I-KANGA(i=past tense,beside,with,by,by reason of,at;kanga=curse,abuse,execrate)、「(健康を損ねて)悪い状況になつて・いる(ことはないか。どんな・状況か)」(「カ(ン)ガ」のNG音がG音に変化して「カガ」となった)

の転訛と解します。

179いかがわしい(如何わしい)

 疑問に思われる。疑わしい。あやしい。道徳上、風紀上好ましくない。

 この「いかがわしい」は、

  「イ・カ(ン)ガ・ワチ」、I-KANGA-WHATI(i=past tense,beside,with,by,by reason of,at;kanga=curse,abuse,execrate;whati=be broken off,be interrupt,turn and go away,run,flow)、「(健康を損ねて)悪い状況になって・しまって・いる(ことはないか。どんな・状況になって・いるか疑わしい)」(「カ(ン)ガ」のNG音がG音に変化して「カガ」と、「ワチ」が「ワシ」から「ワシイ」となった)

の転訛と解します。

180いかき(笊)

 竹製の籠。笊。また、特に味噌こし笊。

 この「いかき」は、

  「イ・カハキ」、I-KAHAKI(i=past tense,beside,with,by,by reason of,at;kahaki=remove by force,carry away)、「それ(笊の目)を用いて・漉し分けるもの(笊)」(「カハキ」のH音が脱落して「カキ」となった)

の転訛と解します。

181いかさま

 @(状態、方法などについて疑問の意を表す)どのよう。どんなふう。(自分の考えや推測などの確かさを表す)たしかに。どう見ても。(相手の意見を肯定して感動的に応答する)いかにも。そのとおり。なるほど。

 Aいかにも本当らしく見せかけたもの。にせもの。ごまかし。いんちき。

 この「いかさま」は、

  @「イ・カ(ン)ガ・タ・アマ」、I-KANGA-TA-AMA(i=past tense,beside,with,by,by reason of,at;kanga=curse,abuse,execrate;ta=dash,beat,lay;(Hawaii)ama=talkative,prattling,tattling)、「(健康を損ねて)悪い状況になって・しまって・いるとの・声が高い(ことはないか疑わしい。どんな・状況になって・いるか・断定する声がある(確かだ。そのとおり))」(「カ(ン)ガ」の語尾のNGA音が脱落して「カ」と、「タ」のA音が「アマ」の語頭のA音と連結して「タマ」から「サマ」となった)
  またはA「イカ・タ・アマ」、IKA-TA-AMA(ika=prized possession;ta=dash,beat,lay;(Hawaii)ama=talkative,prattling,tattling)、「素晴らしい宝物が・あるとの・声が高い(が実は偽物である)」(「タ」のA音が「アマ」の語頭のA音と連結して「タマ」から「サマ」となった)

の転訛と解します。

182182いかずち(雷)

 かみなり。なるかみ。魔物。この「いかずち」については国語篇(その十六)の221H2少子(ちいさこ)部連螺贏(すがる)の項の「いかずち」を参照してください。

 この「いかずち」は、

  「イ・カ・ツチカ」、I-KA-TUTIKA(i=past tense,beside;ka=take fire,be lighted,burn;tutika=upright)、「火(柱)が・真っ直ぐに立つ・た(雷が落ちた。その雷)」(「ツチカ」の語尾の「カ」が脱落して「ツチ」となった)

の転訛と解します。

183いかだ(筏)

 横に並べた木材や竹を蔓や縄で結んで水に浮かべ流すもの。

 この「いかだ」は、

  「イカ・タ」、IKA-TA((ika=cluster,band,troop,heap;ta=dash,beat,lay,allay)、「(木材、竹などを)結束して・(並べた)水に浮かべたもの(筏)」(「タ」が「ダ」となった)

の転訛と解します。

184いかつい(厳い)

 

 この「いかつい」は、

  「イカ・ツヒ」、IKA-TUHI(ika=fighting man,warrior;tuhi=draw,adorn with painting,point out,glow,gleam)、「(輝く)顔を真っ赤にした・戦士のような(いかつい)」(「ツヒ」のH音が脱落して「ツイ」となった)

の転訛と解します。

185いかり(碇、錨)

 船を留めるために綱や鎖をつけて水底に沈めるおもり。

 この「いかり」は、

  「イ・カリ」、I-KARI(i=past tense,beside,with,by,by reason of,at;kari=dig,dig for,wound)、「(爪で掘る)水底に食い込んで・(船を)留めるもの(錨)」

の転訛と解します。

186いかる(怒る)

 自分の望む方向に反するものの存在によって起こされた感情のいらだち。おこること。いきどおり。

 この「いかる」は、

  「イ・カ・ル」、I-KA-RU(i=past tense,beside,with,by,by reason of,at;ka=take fire,be lighted,burn;ru=shake,agitate,scatter)、「(火が燃えるように)顔を真っ赤に・して・興奮する(怒る)」

の転訛と解します。

187いき(息)

 口や鼻を通して吐いたり吸ったりする気体。

 この「いき」は、

  「イキ」、IKI(consume,devour,devastate,sweep away,clear off)、「(深く吸って)大きく吐き出すもの(息)」

の転訛と解します。

188いきおい(勢い)

 他を圧倒する力。元気。活気。気勢。権勢。富裕。情勢。

 この「いきおい」は、

  「イキ・オイ」、IKI-OI(iki=consume,devour,devastate,sweep away,clear off;oi=shudder,move continuously,agitate,disturb)、「(すべてを)圧倒し・続けるような(いきおい)」

の転訛と解します。

189いきしな(行きしな)

 行く時のついで。出かける時。いきがけ。

 この「いきしな」は、

  「イキ・チネイ」、IKI-TINEI(iki=consume,devour,devastate,sweep away,clear off;tinei,tineinei=unsettled,ready to move)、「(すべてを)圧倒しようと・動き始める(際に。行きしな)」(「チネイ」が「チナ」から「シナ」となった)

の転訛と解します。

190いきなり

 予期する間もなく突然なさま。だしぬけな。とつぜんに。

 この「いきなり」は、

  「イキ・(ン)ガリ」、IKI-NGARI(iki=consume,devour,devastate,sweep away,clear off;ngari=annoyance,disturbance,greatness,power)、「(予期しない)障害が起きて・(行動や事態が)白紙に戻った(いきなり)」(「(ン)ガリ」のNG音がN音に変化して「ナリ」となった)

の転訛と解します。

191いきれ(熱)

 蒸されるような熱気やにおい。蒸し暑さ。

 この「いきれ」は、

  「イキ・レイ」、IKI-REI(iki=consume,devour,devastate,sweep away,clear off;rei=wet,sodden)、「(深く吸って)大きく吐き出す息が・蒸し暑く立ちこめる(いきれ)」(「レイ」が「レ」となった)

の転訛と解します。

192いくさ(軍)

 矢を射ること。武人、戦士。兵と兵が戦い合うこと。戦争。

 この「いくさ」は、

  「イク・タ」、IKU-TA((Hawaii)iku=officer as in a society;ta=dash,beat,lay)、「(庶民でなく)戦士が・戦うもの(戦)」(「タ」が「サ」となった)

の転訛と解します。

193いくじ(意気地)

 物事を成し遂げようとする気力、態度、意地。

 この「いくじ」は、

  「イク・タ」、IKU-TI((Hawaii)iku=officer as in a society;ti=throw,cast,overcome)、「戦士が・あくまで相手を圧倒しようとして示す気概(意気地)」(「チ」が「ジ」となった)

の転訛と解します。

194いくつ(幾つ)

 (物の個数が)どのくらい。何個。(年齢が)何歳。

 この「いくつ」は、

  「イ・クフ・ツ」、I-KUHU-TU(i=past tense,beside,with,by,by reason of,at;kuhu=thrust in,insert,conceal;tu=stand,settle)、「隠れて・しまって・いる(のは幾つ)」(「クフ」のH音が脱落して「ク」となった)

の転訛と解します。

195いくり(海中の岩)

 海中にある岩。暗礁。

 この「いくり」は、

  「イ・クフ・ウリ」、I-KUHU-URI(i=past tense,beside,with,by,by reason of,at;kuhu=thrust in,insert,conceal;uri=a dark-coloured hard stone used for making implements)、「(海中に)隠れて・いる・暗色の堅い岩(暗礁)」(「クフ」のH音が脱落して「ク」となり、その語尾のU音と「ウリ」の語頭のU音が連結して「クリ」となった)

の転訛と解します。

196いけ(池)

 窪地に水が自然に溜まったところ。または地面を掘ったり土手を築いたりして水を溜めたところ。湖沼より小さいものをいう。

 この「いけ」は、

  「イケ」、IKE(strike with a hammer or other heavy instrument)、「(大地を)ハンマーで叩いた(ような凹みに水が溜まった場所。池)」

の転訛と解します。

197いけがき(生垣)

 庭木などの低木類を植えてつくった垣根。

 この「いけがき」は、

  「イケ・(ン)ガキ」、IKE-NGAKI((Hawaii)ike=to see,know,feel,greet(hoike=to show,make known,display,exhibit);ngaki=clear off weeds or brushwood,cultivate,plant)、「(木を)植えて・見えるようにした(垣根)」(「(ン)ガキ」のNG音がG音に変化して「ガキ」となった)

の転訛と解します。

198いけにえ(生贄)

 生きものを生きたまま神に供えること。また、その供え物。

 この「いけにえ」は、

  「イケ・ニヒ・ハエ」、IKE-NIHI-HAE(ike=high,lofty,strike with a hammer or other heavy instrument;nihi=move stealthly,come stealthly upon;hae=slit,lacerate,tear,cut,cherish,envy,jealousy,or ill feeling)、「(神を)喜ばすために・突然・鈍器で撃ち殺す(動物または人。生け贄)」(「ニヒ」のH音が脱落して「ニ」と、「ハエ」のAE音がE音に変化して「エ」となった)

の転訛と解します。

199いけばな(生花)

 木の枝や草花などを切り取り、枝葉の形を整え、花器に挿すこと。また、そのもの、その技術、方式。

 この「いけばな」は、

  「イケ・パ(ン)ガ」、IKE-PANGA((Hawaii)ike=to see,know,feel,greet(hoike=to show,make known,display,exhibit);panga=throw,lay,place)、「(木の枝や花などを花瓶や花器に投げ入れて)挿して・(人々に)見せるわざ(生け花)」(「パ(ン)ガ」のNG音がN音に変化して「パナ」から「バナ」となった)

の転訛と解します。

200いこじ(意固地)

 意地を張ってつまらないことに頑固なこと。また、そのような性質、そのさま。

 この「いこじ」は、

  「イ・コチ」、I-KOTI(i=ferment,be stirred of the feelingspast tense,beside,with,by,by reason of,at;koti=divide,interrupt,cut off,so cut across the path of any one)、「(物事を妨害する)人の通行する道を塞いで・動かない(意固地)」(「コチ」が「コジ」となった)

の転訛と解します。

201いごっそう

 高地の方言で、名利にとらわれず信念を貫く者。頑固者。この「いごっそう」については雑楽篇(その一)の201いごっそうの項を参照してください。

 この「いごっそう」は、

  「イ・(ン)ゴト」、I-NGOTO(i=ferment,be stirred of the feelings;ngoto=be deep,be intense of emotions,penetrate,firmly,head)、「物事に強く執着する・思いが心の底から沸き上がってくる」(「(ン)ゴト」のNG音がG音に変化して「ゴト」から「ゴソ」、「ゴッソウ」となった)

の転訛と解します。

202いさ

 @よく分からないこと、答えかねることを聞かれた時に、曖昧な返事をする応答のことば。さあ。ええと。

 A肯定しがたく承伏しがたいことを言われた時に相手の言葉を否定する応答の言葉。いいえ。でも。だって。どうだか。わからない。

 この「いさ」は、

  @「イ・タハ」、I-TAHA(i=past tense,beside,with,by,by reason of,at;taha=side,margin,edge,pass on one side,go by)、「別の道を・行く(答えをはぐらか・す)」(「タハ」のH音が脱落して「タ」から「サ」となつた)

  A「イ・タタ」、I-TATA(i=past tense,beside,with,by,by reason of,at;tata=dash down,strike repeatedly,oppose,contradict)、「反対を・唱える(正面から反対する)」(「タタ」の反覆語尾が脱落して「タ」から「サ」となつた)

の転訛と解します。

203いざ

 相手を誘うために呼びかけることば。さあ。

 この「いざ」は、

  「イ・タ」、I-TA(i=past tense,beside,with,by,by reason of,at;ta=dash,beat,lay)、「(さあ)一緒に・行動しよう(いざ)」(「タ」が「「ザ」となった)

の転訛と解します。

204いさかい(諍い)

 言い争うこと。いざこざ。けんか。

 この「いさかい」は、

  「イ・タカヒ」、I-TAKAHI(i=past tense,beside,with,by,by reason of,at;takahi=trample,tread,plunder,disobey,violate)、「(反抗する)争いを・する」(「タカヒ」のH音が脱落して「サカイ」となった)

の転訛と解します。

205いざかや(居酒屋)

 店先で気楽に酒を飲ませる酒屋。もと、味見に飲ませたものが一杯売りとなり、のちに、簡単な料理を提供するようになつたもの。

 この「いざかや」は、

  「イ・タカ・イア」、I-TAKA-IA(i=past tense,beside,with,by,by reason of,at;taka=revolve,come round,be besieged;ia=indeed)、「実に・取り囲むように・集まる(場所。居酒屋)」(「タカ」が「サカ」から「ザカ」と、「イア」が「ヤ」となった)

  または「イタ・カイ・イア」、ITA-KAI-IA(ita=tight,fast;kai=eat,food;ia=indeed)、「実に・簡単な・(食物)料理(を供する場所。居酒屋)」(「イタ」が「イサ」から「イザ」と、「カイ」のI音と「イア」の語頭のI音が連結して「カヤ」となった)

の転訛と解します。

206いさぎよい(潔い)

 @未練がなく、さっぱりしている。思い切りがよい。わるびれない。

 A自然の事物、風景などが非常に清らかである。汚れていない。清浄だ。心や行為に道徳やきまりに反するところがない。潔白だ。

 この「いさぎよい」は、

  @「イタ・(ン)ギハ・ウイ」、ITA-NGIHA-UI(ita=tight,fast;ngiha=burn,fire;ui=disentangle,disengage,unravel)、「短時間・(心の火を燃やして)興奮して・(すぐに)冷静になる(潔い)」(「イタ」が「イサ」と、「(ン)ギハ」のNG音がG音に変化し、H音が脱落して「ギア」となり、その語尾のA音と「ウイ」の語頭のU音が連結してO音に変化して「ギオイ」から「ギヨイ」となった)

  A「イ・タ(ン)ギ・ホイ」、I-TANGI-HOI(i=past tense,beside,with,by,by reason of,at;tangi=sound,cry,weep(whakatangitangi=cajole,appeal to sympathy of);hoi=heoi=denoting completeness or sufficiency of a statement or enumeration,accordingly,and so,so then,where upon,but,however)、「(自然の)完璧な美しさや(道徳の)完全な遵守などを・賛嘆・する(いさぎよい)」(「タ(ン)ギ」のNG音がG音に変化し「タギ」から「サギ」と、「ホイ」のH音が脱落して「オイ」と、「サギオイ」から「サギヨイ」となった)

の転訛と解します。

207いさご(砂子)

 石の極めて細かいもの。砂。砂子。真砂。

 この「いさご」は、

  「イ・タ(ン)ゴ(ン)ゴ」、I-TANGONGO(i=past tense,beside,with,by,by reason of,at;tangongo=thoroughly ripe or cooked,soft)、「(石が)完全に小さく(軟らかく)・なったもの(砂子)」(「タ(ン)ゴ(ン)ゴ」の反覆語尾が脱落し、NG音がG音に変化して「タゴ」から「サゴ」となった)

の転訛と解します。

208いさましい(勇ましい)

 勢いが強く尻込みしない。勇敢だ。勇壮だ。気乗りがしている。

 この「いさましい」は、

  「イ・タ・マチ」、I-TA-MATI(i=ferment,be stirred of the feelings;ta=dash,beat,lay;mati=surfeited)、「(敵を倒そうと)突進する・気持ちが一杯に・(湧き上る)溢れている(勇ましい)」(「タ」が「サ」と、「マチ」が「マシ」から「マシイ」となった)

の転訛と解します。

209いさめる(諫める)

 禁止する。制止する。諫言する。

 この「いさめる」は、

  「イ・タメメ・ル」、I-TAMEME-RU(i=past tense,beside,with,by,by reason of,at;tameme=desire;ru=shake,agitate,scatter)、「(人の行動に対して)奮つて・希望を・理由とともに言う(諫める)」(「タメメ」の反覆語尾が脱落して「タメ」から「サメ」となった)

の転訛と解します。

210いざよい(十六夜)

 ためらうこと。(十六夜の月の出が遅れることから転じて)十六夜の月。

 この「いざよい」は、

  「イ・タイオヒ」、I-TAIOHI(i=ferment,be stirred of the feelings;taiohi=young,youthful)、「(若さ故に)ためらう・気持ちが湧き出る(ためらう)」または「(湧き出る)月の出が・(若さ故に)ためらうもの(十六夜の月)」(「タイオヒ」のIO音がYO音に変化し、H音が脱落して「タヨイ」から「ザヨイ」となった)

の転訛と解します。

211いさりび(漁火)

 夜、魚を漁船の方へ誘い集めるために燃やすたいまつ、かがり火の類。

 この「いさりび」は、

  「イ・タリ・ヒヒ」、I-TARI-HIHI(i=past tense,beside,with,by,by reason of,at;tari=carry,bring,urge,incite;hihi=pull up,draw up,ray of the sun,any long slender appendages)、「(海中の魚を)海面へ誘い・込む・(太陽の光のような)たいまつ(またはかがり火の灯り)」(「タリ」が「サリ」と、「ヒヒ」の反覆語尾が脱落して「ヒ」から「ビ」となつた)

の転訛と解します。

212いざる(躄る)

 座ったままで移動する。膝をついたり、尻を地に付けたままの姿勢で進む。

 この「いざる」は、

  「イタ・アル」、ITA-ARU(ita=tight,fast;aru=follow,pursue)、「(身体を)縮めて・(追う)進む(躄る)」(「イタ」のA音と「アル」の語頭のA音が連結して「イタル」から「イザル」となった)

の転訛と解します。

213いしき(居敷)

 座。席。尻。

 この「いしき」は、

  「イ・チ・キ」、I-TI-KI(i=past tense,beside,with,by,by reason of,at;ti=throw,cast;ki=to,into,on to,upon,at,indicating occupation or employment etc.)、「そこへ・(体を投げ出す)置く・場所(座席。尻)」(「チ」が「シ」となった)

の転訛と解します。

214いしずえ(礎)

 建造物の柱、壁などの下へ土台となる石を据えること。また、その石。

 この「いしずえ」は、

  「イチ・ツ・ウエ」、ITI-TU-UE(iti=small;tu=stand,settle,fight with,energetic;ue=push,shove,shake)、「懸命に・(叩き震動させて)据え付ける・(小さな岩)石(礎石)」(「イチ」が「イシ」と、「ツ」のU音と「ウエ」の語頭のU音が連結して「ツエ」が「ズエ」となった)

の転訛と解します。

215いじましい

 意地きたない。けちくさい。せせこましい。

 この「いじましい」は、

  「イチ・マチ」、ITI-MATI(iti=small;mati=surfeited)、「(小さい)ほんの少しで・(飽食したように)満足する(いじましい)」(「イチ」が「イジ」と、「マチ」が「マシ」から「マシイ」となった)

の転訛と解します。

216いじめる(苛める)

 弱い者に対して意識的、または肉体的な苦痛を与える。意地悪をして苦しめる。この「いじめる」については国語篇(その十四)の013いじめるの項を参照してください。

 この「いじめる」は、

   「イナチ・メ・ル」、INATI-ME-RU(inati=extraordinary,trouble,bane,disaster;me=if,as if;ru=shake,agitate,scatter)、「(人の)心を乱す・ように・傷つける(苛める)」(「イナチ」が短縮化して「イチ」から「イジ」となった)

の転訛と解します。

217いす(椅子)

 腰掛け。椅子。

 この「いす」は、

  「イ・ツ」、I-TU(i=past tense,beside,with,by,by reason of,at;tu=stand,settle)、「そこに・座るもの(椅子)」(「ツ」が「ス」となった)

の転訛と解します。

218いしょう(称唯)

 (称唯(しょうい)を逆に読んだもの)宮中で官人が天皇のお召しを受けたとき、「おお」または「おし」と口を覆って声を発して答えること。

 この「しょうい」は、

  「チオ・オイ」、TIO-OI(tio=cry,call;oi=heoi=denoting completeness or sufficiency of a statement or enumeration)、「(天皇のお召しを)了解したことを・(叫ぶ)答えること(称唯)」(「チオ」のO音と「オイ」の語頭のO音が連結して「チオイ」から「ショウイ」となった)

の転訛と解します。

219いじらしい

 自分より年齢、能力などが劣っている者の心や様子、行動などが、痛々しく同情される様子。けなげでいたわしい。あどけなく、可哀そう。

 この「いじらしい」は、

  「イチ・ラハ・チヒ」、ITI-RAHA-TIHI(iti=small;raha=open,extended;tihi=summit,top,peak,lie in a heap)、「小さくて・最高に・無邪気な(子供のさま。いじらしい)」(「イチ」が「イジ」と、「ラハ」のH音が脱落して「ラ」と、「チヒ」のH音が脱落して「チイ」から「シイ」となった)

の転訛と解します。

220いじわる(意地悪)

 他人、特に弱い者に冷たい仕打ちをすること。人を苦しめたり、困らせたりして、性質が素直でないこと。また、そのような人。

 この「いじわる」は、

  「イ・チ・ワル」、I-TI-WHARU(i=past tense,beside,with,by,by reason of,at;ti=throw,cast,overcome;wharu-a species of earthworm,mud,quagmire)、「泥沼・に・突き落とす(ような仕業。意地悪)」(「チ」が「ジ」となった)

の転訛と解します。

221いずみ(泉)

 地中から湧き出てくる水。又、その場所。

 この「いずみ」は、

  「イ・ツ・ミ」、I-TU-MI(i=past tense,beside,with,by,by reason of,at;tu=stand,settle,fight with,energetic;mi=urine)、「(大地のおしっこである)水が・(精力的に)こんこんと湧き出す・場所(泉)」(「ツ」が「ズ」となった)

の転訛と解します。

222いずれ

 多くの事物の中から一つを取りだして示す。どれ。二つの事物の内、一方を選んで言う。どちら。分からない場所を指す。いずこ。どこ。いずれにしても。どちらにせよ。近々。

 この「いずれ」は、

  「イ・ツ・レフ」、I-TU-REHU(i=past tense,beside,with,by,by reason of,at;tu=stand,settle;rehu=haze,mist,dimly seen,pass out of sight)、「はっきり見えない(ものが)・そこに・あるので(どちらか分からない。いずれ)」(「ツ」が「ズ」と、「レフ」のH音が脱落して「レ」となった)

の転訛と解します。

223いそ(磯)

 岩石の多い波打ち際。とくに海岸で岩塊や岩礁の多い所。この「いそ」については地名篇(その十九)の(3)海岸地名のc岩石海岸地名の(a)磯(いそ)の項を参照してください。

 この「いそ」は、

  「イト」、ITO(object of revenge)、「(復讐をしたかのように)さんざんに打ち砕かれた岩が散乱する(海岸)」(「イト」が「イソ」となった)

の転訛と解します。

224いそうろう(居候)

 他人の家に身を寄せ、養ってもらっていること。また、その人。厄介。

 この「いそうろう」は、

  「イ・タウ・ラウ」、I-TAU-RAU(i=past tense,beside,with,by,by reason of,at;tau=come to rest,settle down,be suitable,be comely;rau=catch as in a net,entangle,embarrassed)、「(他人の家に)気楽に寄宿して・迷惑をかけて・いる(さま。その人)」(「タウ・ラウ」のAU音がOU音に変化して「トウ・ロウ」から「ソウ・ロウ」となった)

の転訛と解します。

225いそぐ(急ぐ)

 目的を早く遂げようとする。急いて事を行う。

 この「いそぐ」は、

  「イ・トア・(ン)グ」、I-TOA-NGU(i=past tense,beside,with,by,by reason of,at;toa=male of animals,brave,rough(totoa=fierce,urgent,stormy);ngu=silent,greedy,moan)、「急き立てられるように・貪欲に・(事を)行う(急ぐ)」(「トア」の語尾のA音が脱落して「ト」から「ソ」と、「(ン)グ」のNG音がG音に変化して「グ」となった)

の転訛と解します。

226いたい(痛い)

 肉体的に苦痛である。体の内部の故障や、外から加えられた打撃などで苦しくつらい。精神的に苦痛である。

 この「いたい」は、

  「イ・タイ」、I-TAI(i=past tense,beside,with,by,by reason of,at;tai,taitai=dash,strike,knock,brush)、「叩かれ・た(ように痛い。痛い)」

の転訛と解します。

227いたいけ(幼気)

 幼くて可愛らしいさま。子供などのいじらしいさま。(物などが)小さくて愛すべきさま。

 この「いたいけ」は、

  「イタ・イケ」、ITA-IKE(ita=tight,fast;ike=high,lofty,strike with a hammer or other heavy instrument)、「(小さい)幼くて・(高潔な)素直なさま」

の転訛と解します。

228いたいたしい(痛々しい)

 非常にかわいそう。見ていて気の毒だ。たいへん哀れだ。

 この「いたいたしい」は、

  「イ・タイ・タ・チヒ」、I-TAI-TA-TIHI(i=past tense,beside,with,by,by reason of,at;tai,taitai=dash,strike,knock,brush;ta=dash,beat,lay;tihi=summit,top,peak,lie in a heap)、「最もひどく・叩きに・叩かれ・た(ように痛い。痛々しい)」(「チヒ」のH音が脱落して「チイ」から「シイ」となった)

の転訛と解します。

229いたこ(巫子)

 東北地方に広くみられる巫女。中年以上の盲目の女性が多く、神下ろしや口寄せを業ととし、おしらさまの祭りなども行う。この「いたこ」については雑楽篇(その一)の107いたこ(巫女)の項を参照してください。

 この「いたこ」は、

  「イタ・カウ」、ITA-KAU(ita=tight,fast;kau=ancestor)、「(誰かの)先祖に・密着する(先祖の霊が乗り移って言葉を伝える巫女)」(「カウ」のAU音がO音に変化して「コ」となった)

の転訛と解します。

230いたずら(悪戯)

 無益な行為。他人に迷惑をかけるような良くない振る舞い。子供などがふざけてするわるさ。この「いたずら」については国語篇(その十四)の014いたずらの項を参照してください。

 この「いたずら」は、

  「イタ・ツラ」、ITA-TURA(ita=tight,fast;tura,turatura=molest,spiteful)、「ちょっとした・(人を)悩ませる仕業(悪戯)」(「ツラ」が「ズラ」となつた)

の転訛と解します。

231いただきます(頂きます)

 食事を始めるときの挨拶の言葉。この「いただきます」については国語篇(その十四)の075ごちそうさまの項の「いただきました」を参照してください。

 この「いただきます」は、

  「イ・タタキ・マツ」、I-TATAKI-MATU(i=past tense;taki,tataki=take to one side,take food from the fire;matu=ma atu=go,come)、「(火から下ろしたばかりの)食物が・(目の前に)やって・来た(いただきます)」(「タタキ」が「タダキ」と、「マツ」が「マス」となった)

の転訛と解します。

232いたちごっこ(鼬ごっこ)

 こどもの遊戯の一つで、何人かで向かい合い、互いに「いたちごっこ」「ねずみごっこ」と唱えながら、相手の手の甲をつまみながら順次その手を重ねてゆく遊び。互いに々ようなことをしあって、なかなか埒があかないこと。愚かしい繰り返しをすること。

 この「いたちごっこ」は、

  「イタ・チヒ・(ン)ゴコ」、ITA-TIHI-NGOKO(ita=tight,fast;tihi=summit,top,peak,lie in a heap;ngoko=itch,tickle)、「最高に・(引き締まった)しなやかな(体を持つ動物。イタチ)が・(手を)つねる(遊び)」(「チヒ」のH音が脱落して「チ」と、「(ン)ゴコ」のNG音がG音に変化して「ゴコ」から「ゴッコ」となった)

の転訛と解します。

233いたって(至って)

 非常に。極めて。全く。

 この「いたって」は、

  「イ・タツ・テ」、I-TATU-TE(i=past tense,beside,with,by,by reason of,at;tatu=reach the bottom,be content,agree;te=to make an emphatic statement)、「実に・頂点に達して・いる(至って)」(「タツ」が「タッ」となった)

の転訛と解します。

234いたにつく(板に付く)

 (「いた」は舞台の意で)役者が経験を積んで、芸が舞台にしっくりと調和する。また、一般に、その仕事にもの慣れているさま。

 この「いたにつく」は、

  「イタ・ニヒ・ツク」、ITA-NIHI-TUKU(ita=tight,fast;nihi=move stealthly;tuku=let go,send,settle down)、「(引き締まった)無駄のない・すべるような・動きをする(いたにつく)」(「ニヒ」のH音が脱落して「ニ」となった)

の転訛と解します。

235いちかばちか(一か八か)

 結果がどうなるか予想のつかないことを、運を天にまかせて思い切ってやってみること。のるかそるか。

 この「いちかばちか」は、

  「イチ・カハ・パチア・カハ」、ITI-KAHA-PATIA-KAHA(iti=small,unimportant;kaha=strong,strength,persistency;patia=spear)、「小さな(刀)が・強いか・槍が・強いか(戦ってみなければ分からない。一か八か)」(「カハ」のH音が脱落して「カ」と、「パチア」の語尾のA音が脱落して「バチ」となった)

の転訛と解します。

236いちこ(巫子)

 生霊、死霊を神がかりして招きよせ、その意中を語る職業の女。口寄せ。神前で神楽を演奏する巫女。雑楽篇(その一)の108いちこ(巫女)の項を参照してください。

 この「いちこ」は、

  「イ・チコ」、I-TIKO(i=beside,past tense;tiko=evacuate the bowels,settled upon as by frost)、「(霊が身体に)憑いた(巫女)」または「(自分の心が)空虚になった(その空間に他人の霊が入り込んだ・巫女)

の転訛と解します。

237いちころ

 (「一度でころり」の意)簡単に倒れるところからたやすく勝負がついたり、心が奪われたりするさま。

 この「いちころ」は、

  「イチ・コロコロ」、ITI-KOROKORO(iti=small,unimportant;korokoro=loose,slack)、「小さくて・ふらふらしている(簡単に倒れる。いちころ)」(「コロコロ」の反覆語尾が脱落して「コロ」となった)

の転訛と解します。

238いちじるしい(著しい)

 物事が目立ってはっきりしている。明白である。顕著である。

 この「いちじるしい」は、

  「イ・チチ・ル・チヒ」、I-TITI-RU-TIHI(i=past tense,beside,with,by,by reason of,at;titi=stick in pegs,adorn by sticking feathers etc.;ru=shake,agitate,scatter;tihi=summit,top,peak,lie in a heap)、「(髪を)最高に・懸命に・飾り立てて・いる(いちじるしい)」(「チチ」が「チジ」と、「チヒ」のH音が脱落して「チイ」から「シイ」となった)

の転訛と解します。

239いちば(市場)

 毎日または定期的に商人が集まって商品の売買、取引をする特定の場所。食料品、日用品などの小売店が集まって共同の設備の中で販売している常設の場所。

 この「いちば」は、

  「イ・チヒ・パ」、I-TIHI-PA(i=past tense,beside,with,by,by reason of,at;tihi=summit,raised fortification or citadel within a pa,lie in a heap;pa=block up,stockade,fortified place)、「柵を巡らした(砦)場所の・高所に設け・られた(人々が集合する)場所(市場)」(「チヒ」のH音が脱落して「チ」と、「パ」が「バ」となった)

の転訛と解します。

240いちま(市松)

 市松人形。市松模様。

 この「いちま」は、

  「イ・チマ」、I-TIMA(i=past tense,beside,with,by,by reason of,at;tima=a wooden implement for cultivating the soil,work the soil with a tima)、「鍬で(四角の畑を)耕し・たような(模様。その人形。市松)」

の転訛と解します。

241いちもくさん(一目散)

 脇目も振らずに駆けるさま。

 この「いちもくさん」は、

  「イチ・モク・タヌ」、ITI-MOKU-TANU(iti=small,unimportant;moku=few,little;tanu=bury,plant,lie buried)、「幼児を・稀に・埋葬する(一目散)」(「タヌ」が「タン」から「サン」となった)

の転訛と解します。

242いちもつ(逸物)

 人物や馬、牛、犬、鷹などの多くの中で特に優れているもの。

 この「いちもつ」は、

  「イ・チヒ・モツ」、I-TIHI-MOTU(i=past tense,beside,with,by,by reason of,at;tihi=summit,top,peak,lie in a heap;motu=severed,separated,cut,anything isolated)、「最高(の能力を持つもの)として・区別され・た(人物や動物。逸物)」(「チヒ」のH音が脱落して「チ」となった)

の転訛と解します。

243いちゃつく

 @男女が仲むつまじく巫山戯合う。

 A言い争う。問題をおこしてひまどる。この「いちゃつく」については国語篇(その十四)の010あわてるの項の「いちゃつく」を参照してください。

 この「いちゃつく」は、

  @「イ・チア・ツク」、I-TIA-TUKU(i=past tense,beside,with,by,by reason of,at;tia=stick in feathers etc.,adorn by sticking in feathers,take a vigorous stroke in paddling;tuku=let go,send,settle down)、「活発に船を漕ぎ・進めるように(巫山戯合う)・行動する(いちゃつく)」(「チア」が「チャ」となった)

  A「イ・チ・アツ・ク」、I-TI-ATU-KU(i=past tense;ti=squeak,tingle;atu=to indicate a direction or motion onwards,to indicate reciprocated action;ku=silent,wearied,exhausted)、「興奮のあまりぞくぞく・して・疲れ果てて・しまう(あわてる)」(「チ・アツ」が「チャツ」となった)

の転訛と解します。

243-2いちゃもん

 (「いちゃつき」の略「いちゃ」に「もんく(文句)」の略「もん」の付いたものかとする説がある)いわれのない言いがかりをいう俗語。難癖。

 この「いちゃもん」は、

  「イ・チア・マウヌ」、I-TIA-MAUNU(i=past tense,beside,with,by,by reason of;tia=etia=as it were,as if;maunu=bait)、「(悪意のある)言葉でいじめ苦しめる・ような・行為(いちゃもん)」(「チア」が「チャ」と、「マウヌ」のAU音がO音に変化して「モヌ」から「モン」となった)

の転訛と解します。

244いつくしむ(慈しむ)

 大切にする。いとおしむ。可愛がる。

 この「いつくしむ」は、

  「イ・ツ・クチ・ム」、I-TU-KUTI-MU(i=past tense,beside,with,by,by reason of,at;tu=fight with,energetic;kuti=draw tightly together,contract,pinch;mu=silent)、「懸命に・静かに・抱きしめ・る(慈しむ)」(「クチ」が「クシ」となった)

の転訛と解します。

245いったん(一旦)

 ある日の朝。一日。永続的でない短期間。一時。一度。一時的であるさま。しばらくの間。ひとたび。

 この「いったん」は、

  「イツ・タ(ン)ガ」、ITU-TANGA(itu=side;tanga=be assembled,row,tier)、「(時間の列)時の流れの・(傍らの)一時期(一旦)」(「イツ」が「イッ」と、「タ(ン)ガ」のNG音がN音に変化して「タナ」から「タン」となった)

の転訛と解します。

246いっちょうら(一張羅)

 所有している衣服の中で、たった一着きりの上等のもの。とっておきの晴れ着。

 この「いっちょうら」は、

  「イ・チオ・ウラ」、I-TIO-URA(i=past tense,beside,with,by,by reason of,at;tio=cry,call;ura=red,glow)、「(賛嘆の)叫び声をあげる・上等の・輝くような(衣服。一張羅)」(「チオ・ウラ」が「チョウラ」となった)

の転訛と解します。

247いつつ(五つ)

 五。五番目。この「いつつ」については国語篇(その九)の05いつつの項を参照してください。

 この「いつつ」は、

  「イ・ツツ」、I-TUTU(i=ferment,turn sour;tutu=Coriaria arborea,a shrub)、「(甘)酸っぱい(猛毒がある)・ドクウツギ(の核果のような。五つの稜がある(五つの種子に分かれる)。五つ)」

の転訛と解します。

248いってんばり(一点張り)

 賭博で一箇所にばかり金銭を賭けること。他を顧みないでただ一つのことだけを対象とすること。

 この「いってんばり」は、

  「イ・ツ・テナ・パリ」、I-TU-TENA-PARI(i=past tense,beside,with,by,by reason of,at;tu=fight with,energetic;tena=encourage,urge forward;pari=bark,as a dog)、「懸命に・奮い立って・犬が吠えるように・(他を顧みずに)行動する(一点張り)」(「ツ」が「ッ」と、「テナ」が「テン」と、「パリ」が「バリ」となった)

の転訛と解します。

249いっぱし(一端)

 (まだ未熟な者が、さま一人前のように思い込んで行動するありさまをあざけり気味にいう)まるで1人前のように振る舞うサマ。人並みに。えらそうに。ひとかど。一人前。

 この「いっぱし」は、

  「イ・ツ・パチパチ」、I-TU-PATIPATI(i=past tense,beside,with,by,by reason of,at;tu=stand,settle,fight with,energetic;patipati=flattering,deceiving,not to be depended upon)、「(他に依存しない)一人前に・自立して・行動する(一端)」(「ツ」が「ッ」と、「パチパチ」の反覆語尾が脱落して「パシ」となった)

の転訛と解します。

250いつわり(偽り)

 うそ。虚偽。(自然に対して)人為を加えること。また、そのもの。

 この「いつわり」は、

  「イ・ツ・ワリ」、I-TU-WARI(i=past tense,beside,with,by,by reason of,at;tu=stand,settle,fight with,energetic;wari=watery(applied to potatoes spoiled by frost))、「懸命に・(降霜で凍った)水っぽい馬鈴薯を・(本物として)固執する(偽り)」

の転訛と解します。

251いと(最。糸)

 @程度の甚だしいさま。たいへん。非常に。

 A繭、綿、麻、毛などの繊維を細く長く伸ばし、撚りをかけて作ったもの。糸。

 この「いと」は、

  @「イト」、ITO(object of revenge,enemy)、「(復讐のように)徹底的に(破壊したような。最も。甚だ)」

  A「イ・ト」、I-TO(i=past tense,beside,with,by,by reason of,at;to=drag,haul)、「(繊維を)伸ばし・たもの(糸)」

の転訛と解します。

252いど(井戸。尻)

 @泉や流水から水を汲み取るところ。井戸。

 A尻。

 この「いど」は、

  @「イ・トト」、I-TOTO(i=past tense,beside,with,by,by reason of,at;toto=ooze,,trickle,gush forth,spring up,rise up)、「水が湧き出る・場所(井戸)」(「トト」の反覆語尾が脱落して「ト」から「ド」となった)

  A「イト」、ITO(object of revenge,enemy)、「(相手から加えられた侮辱に対する)復讐をするもの(屁を出すもの。尻)」(「イト」が「イド」となった)

の転訛と解します。

253いとど

 (「いといと」から)程度がさらに甚だしいさま。ますます。いよいよ。

 この「いとど」は、

  「イト・トト」、ITO-TOTO(ito=object of revenge,enemy;toto=drag a number of objects,chop,ooze,,trickle,gush forth,spring up,rise up)、「(復讐のように)徹底的に(破壊したような)さまが・次々に重なる(最も。甚だ)」(「トト」の反覆語尾が脱落して「ト」から「ド」となった)

の転訛と解します。

254いとおしい

 @自分にとって面白くないと思う心情を表す。つらい。いやだ。

 A他人に対する同情の心を表す。かわいそうだ。気の毒だ。弱小なものへの保護的な愛情を表す。かわいらしい。いじらしい。いとしい。

 この「いとおしい」は、

  @「イ・タウホウ・チヒ」、I-TAUHOU-TIHI(i=past tense,beside,with,by,by reason of,at;tauhou=strange,unaquainted,stranger,one unaquainted with a person or place;tihi=summit,top,peak,lie in a heap)、「(最高に)非常に・(自分が)周囲の人や環境に適合しては・いない(のでつらい。いやだ。いとおしい)」(「タウホウ」のAU音がO音に変化し、H音および語尾のU音が脱落して「トオ」と、「チヒ」のH音が脱落して「チイ」から「シイ」となった)

  A「イ・タウホア・チヒ」、I-TAUHOA-TIHI(i=past tense,beside,with,by,by reason of,at;tauhoa=befriend;tihi=summit,top,peak,lie in a heap)、「(最高に)非常に・(自分が他人の)味方に・なる(世話をする。助ける。いとおしい)」(「タウホア」のAU音がO音に変化し、H音および語尾のA音が脱落して「トオ」と、「チヒ」のH音が脱落して「チイ」から「シイ」となった)

の転訛と解します。

255いとこ(従兄弟。従姉妹)

 父または母の兄弟姉妹の子。

 この「いとこ」は、

  「イ・ト・コ」、I-TO-KO(i=past tense,beside,with,by,by reason of,at;to=drag,haul;ko=used in addressing girls and males)、「(父または母の)血を引いて・いる・女子または男子(いとこ)」

の転訛と解します。

256いとこに(従兄弟煮)

 小豆または豆と野菜の寄せ煮料理。全国に広く行われ、正月、盆、祭礼、収穫祭などに食べる。

 この「いとこに」は、

  「イ・トコ・(ン)ギア」、I-TOKO-NGIA(i=past tense,beside,with,by,by reason of,at;toko=begin to move,swell,increase in bulk,spring up in the mind;ngia=seem,appear to be)、「量(かさ)を増やして・煮た・ように見える料理(いとこに)」(「(ン)ギア」のNG音がN音に変化し、語尾のA音が脱落して「ニ」となった)

の転訛と解します。

257いとさん

 娘さん。幼児。

 この「いとさん」は、

  「イ・タウ・タナ」、I-TAU-TANA(i=past tense,beside,with,by,by reason of,at;tau=come to rest,settle down,be suitable,be comely,befit;tana=his,her,its)、「(見目麗しい)綺麗・な・娘さん(または幼児)」(「タウ」のAU音がO音に変化して「ト」と、「タナ」が「タン」から「サン」となった)

の転訛と解します。

258いとぞこ(糸底)

 陶磁器の底の部分。成形のときに糸でろくろから切り取った底部。糸切り底。糸尻。

 この「いとぞこ」は、

  「イ・ト・トコ」、I-TO-TOKO(i=past tense,beside,with,by,by reason of,at;to=drag,haul;toko=pole,propel with a pole,push or force to a distance)、「(繊維を)伸ばし・たもの(糸)で・(陶磁器を成形の際にろくろから)切り離した部分(糸底)」(「トコ」が「ソコ」、「ゾコ」となった)

の転訛と解します。

259いとまごい(暇乞い)

 暇をくれるように願い出ること。別れを告げること。別れの挨拶。

 この「いとまごい」は、

  「イ・タウ・ウマ(ン)ガ・ウイ」、I-TAU-UMANGA-UI(i=past tense,beside,with,by,by reason of,at;tau=come to rest,settle down,be suitable,be comely,befit;umanga=pursuit,occupation,business;ui=disentangle,disengage,unravel)、「休息を・取るために・仕事から・解放されること(仕事を罷める。暇乞い)」(「タウ」の語尾のU音と「ウマ(ン)ガ」の語頭のU音が連結して「タウマ(ン)ガ」となり、そのAU音がO音に、NG音がG音に変化して「トマガ」となり、その語尾のA音と「ウイ」の語頭のU音が連結してO音に変化して「トマゴイ」となった)

の転訛と解します。

260いな(否)

 相手の言うこと、なすこと、または質問などを拒否したり、同意しなかったりするときに発することば。いや。いいえ。

 この「いな」は、

  「イナ」、INA((Hawaii)if,would that,unless,whether(with a negative))、「そうではないのではないか(否)」

の転訛と解します。

261いなか(田舎)

 都会から離れた土地。地方。また、人家が少なく、へんぴなところ。

 この「いなか」は、

  「ヒ(ン)ガ・カ」、HINGA-KA(hinga=fall from an errect position,lean;ka=kainga=place of abode,unfortified place of residence,country)、「(高い場所から落ちた)都から離れた・(周囲に柵がない)住居地(田舎)」(「ヒ(ン)ガ」のH音が脱落し、NG音がN音に変化して「イナ」となった)

  または「イ・ナカ」、I-NAKA(i=past tense,beside,with,by,by reason of,at;naka=move in a certain direction)、「(都から外に)向かった・方向にある(地域。田舎)」

の転訛と解します。

262いなさ

 東南の方角から吹く風。とくに台風がもたらす強風をさしていう。この「いなさ」については雑楽篇(その一)の214いなさ(風)の項を参照してください。

 この「いなさ」は、

   「イナ・タ」、INA-TA(ina=used to emphasise statements as to quality;ta=dash,beat,lay)、「襲い・かかってくる(風)」

の転訛と解します。

263いなす

 去るようにさせる。帰らせる。悪口を言う。台無しにする。(相撲の技で)攻勢をかわして相手の体勢を崩す。

 この「いなす」は、

  「イ・ナツ」、I-NATU(i=past tense,beside,with,by,by reason of,at;natu=scratch,stir up,mix,tear out,show ill feeling,angry)、「引っ掻いたり、引き剥がしたり、悪口をいったり・する(いなす)」(「ナツ」が「ナス」となった)

の転訛と解します。

264いなずま(稲妻)

 雷雨のとき閃く電光。いなびかり。この「いなずま」については雑楽篇(その一)の237かみなり(雷)の項の「いなずま(稲妻)」を参照してください。

 この「いなずま」は、

  「イナ・ツ・マ(ン)ガ」、INA-TU-UMANGA(ina=adducing a fact as proof of anything,for,since,inasmuch as;tu=fight with,energetic;umanga=pursuit,food,an incantation for the destruction of the enemy)、「激しく・敵を殲滅する(呪術を行った)・結果をもたらすような(現象。稲妻)」(「マ(ン)ガ」の名詞形語尾のNGA音が脱落して「マ」となった)

の転訛と解します。

265いなせ(鯔背)

 勇み肌で粋な若者。また、その様子。威勢がよくてさっぱりした気風の若者。また、その気風。

 この「いなせ」は、

  「イナ・タイ」、INA-TAI(ina=adducing a fact as proof of anything,to emphasis statements as to quality;tai=tide,anger,rage,violence)、「威勢がよくて・特別の性質がある(いなせ)」(「タイ」のAI音がE音に変化して「テ」から「セ」となった)

の転訛と解します。

266いななく(嘶く)

 ウマが声高く鳴く。いなく。

 この「いななく」は、

  「イナ・ナ・ク」、INA-NA-KU(ina-na=simply an expression to attract attention;ku=make a low inarticulate sound,coo,etc.)、「(馬が)注意を惹こうとするように・不明瞭な音を発する(いななく)」

の転訛と解します。

267いなのめ(曙)

 夜明け。しののめ。

 この「いなのめ」は、

  「イナ・ナウマイ」、INA-NAUMAI(ina=adducing a fact as proof of anything,to emphasis statements as to quality;naumai=guest)、「特別な(身が引き締まる思いがする)・訪問客(夜明け(の太陽))」(「ナウマイ」のAU音がO音に、AI音がE音に変化して「ノメ」となった)

の転訛と解します。

268いなむ(否む)

 承知しないということを表す。断る。いやがる。

 この「いなむ」は、

  「イナ・ム」、INA-MU((Hawaii)ina=if,would that,unless,whether(with a negative);mu=murmur at,show discontent with,silent)、「そうではないのではないかと・拒否する(否)」

の転訛と解します。

269いなり(稲荷)

 五穀を司る神(うかのみたまのみこと)。狐の異名。

 この「いなり」は、

  「イ・(ン)ガリ」、I-NGARI(i=past tense,beside,with,by,by reason of,at;ngari=annoyance,disturbance,greatness,power)、「霊力が・抜群の(神)」または「偉大な(神の)・傍らに居る(神)」(「(ン)ガリ」のNG音がN音に変化して「ナリ」となった)

  または「イナ・アリ」、INA-ARI(ina=adducing a fact as proof of anything,for,since,inasmuch as;ari=clear,visible,appearance,excuse)、「霊験が・(現実となる)顕かな(神)」(「イナ」のA音と「アリ」の語頭のA音が連結して「イナリ」となった)

の転訛と解します。

270いにしえ(古)

 久しい以前る過ぎ去った時。過去。

 この「いにしえ」は、

  「イ・ニチ・ヘイ」、I-NITI-HEI(i=past tense,beside,with,by,by reason of,at;niti=toy dart;hei=go towards,turn towards)、「投げ矢が・飛び去った・彼方(いにしえ)」(「ニチ」が「ニシ」と、「ヘイ」のH音が脱落して「エ」となった)

の転訛と解します。

271いぬ(寝ぬ)

 寝る。眠る。この「いぬ(寝ぬ)」については国語篇(その九)の076いぬ(寝ぬ)の項を参照してください。

 この「いぬ」は、

  「イヒ・(ン)グ」、IHI-NGU(ihi=make a hissing or rushing noise;ngu=ghost,silent,dumb,speechless,greedy)、「(幽霊のように)言葉は発さずに・鼾をかく(寝る)」(「イヒ」のH音が脱落して「イ」と、「(ン)グ」のNG音がN音に変化して「ヌ」となった)

の転訛と解します。

272いぬころ(犬ころ)

 犬の子。子犬。この「犬」については、国語篇(その九)の017いぬ(犬)の項および雑楽篇(その二)の628いぬ(犬)の項を参照してください。

 この「いぬころ」は、

  「イ・ヌイ・コロコロ」、I-NUI-KOROKORO(i=ferment,be stirred;nui=large,many;korokoro=loose,slack)、「たくさんの(子犬が)・湧いて出る(ように産まれる動物。犬)で・首輪を付けていないもの(子犬)」(「ヌイ」が「ヌ」と、「コロコロ」の反復語尾が脱落して「コロ」となった)

の転訛と解します。

273いねつむ(稲積む)

 正月に用いられた忌み言葉で、寝るの意。大晦日の晩は寝ずに忌みこもる習俗に基づき、「寝る」を使うことを忌んだ。また、「寝ね伏す」が病気を連想させるので忌んだともいう。

 この「いねつむ」は、

  「イ・ネイ・ツム」、I-NEI-TUMU(i=past tense,beside,with,by,by reason of,at;nei,neinei=stretch foreward;tumu=stump,trunk,foundation,bed of mussels etc.)、「寝床で・(手足を)伸ばして・いる(寝る)」(「ネイ」の語尾のI音が脱落して「ネ」となつた)

の転訛と解します。

274いのち(命)

 人間や生物が生まれてきてから死ぬまでの、生存の持続。

 この「いのち」は、

  「イノ・オチ」、INO-OTI(ino=momo=offspring,descendant,race,breed,blood;oti=finished,gone or come for good)、「(先祖から受け継がれた)血(をもつ身体)が・良好な状態で生存を持続すること(命)」(「イノ」のO音と「オチ」の語頭のO音が連結して「イノチ」となった)

の転訛と解します。

275いのり(祈り)

 神仏に請い願うこと。また、その言葉。

 この「いのり」は、

  「イノイ・オリオリ」、INOI-ORIORI(inoi=beg,pray,prayer;oriori=lull to sleep,chant a lullaby,chant,song)、「(神仏への)願いを・(歌を歌うように)唱えること(祈り)」(「イノイ」の語尾のI音が脱落して「イノ」となり、その語尾のO音と「オリオリ」の反覆語尾が脱落した「オリ」の語頭のO音が連結して「イノリ」となった)

の転訛と解します。

276いびき(鼾)

 睡眠中に、軟口蓋が震動して発する音。鼾。

 この「いびき」は、

  「イヒ・ピキ」、IHI-PIKI(ihi=make a hissing or rushing noise;piki=frizzled,pressed close together(whakapiki=confused speech))、「(絡まった)不規則な音の・いびき声(鼾)」(「イヒ」のH音が脱落して「イ」と、「ピキ」が「ビキ」となった)

の転訛と解します。

277いびつ(歪)

 (飯櫃が長円形であったところから)長円形。小判形。いびつがた。一般に物の形や状態が整っていないで、歪んだり、崩れたりしているさま。

 この「いびつ」は、

  「イヒ・ピピ・ツ」、IHI-PIPI-TU(ihi=split,divide,separate;pipi=half-grown,yielding,flabby;tu=stand,settle)、「(米を入れる桶と水を入れる桶が)分離している(蒸し器)が・(柔軟で長円形に)歪んで・いる(形。歪)」(「イヒ」のH音が脱落して「イ」と、「ピピ」の反覆語尾が脱落して「ビ」となった)

の転訛と解します。

278いぶき(息吹)

 息を吹くこと。呼吸。(神が息を吹く意)風。生気。活気。

 この「いぶき」は、

  「イ・プ・キ」、I-PU-KI(i=ferment,be stirred;pu=blow gently,pipe;ki=full,very)、「(体の中から)湧き上がる・たくさんの・(穏やかな風)息(息吹)」(「プ」が「ブ」となった)

の転訛と解します。

279いぼ(疣)

 皮膚にできる小さな突起物。

 この「いぼ」は、

  「イ・ポイ」、I-POI(i=past tense,beside,with,by,by reason of,at;poi=ball,lump)、「塊に・なったもの(疣)」(「ポイ」の語尾のI音が脱落して「ボ」となった)

の転訛と解します。

280いま(今)

 過去と未来の境になる時。現在。

 この「いま」は、

   「イ・ムア」、I-MUA(i=past tense,beside,with,by,by reason of,at;mua=the front,the former time,the past,the future)、「過去または未来の・際に居る(今)」(「ムア」が「マ」となった)

の転訛と解します。

281いまいましい(忌々しい)

 不吉である。縁起が悪い。忌まわしい。陰気である。心残りである。いやな感じだ。しゃくにさわる。

 この「いまいましい」は、

  「イ・マイマイ・チヒ」、I-MAIMAI-TIHI(i=past tense,beside,with,by,by reason of,at;maimai=a dance to welcomeguest at a mourning;tihi=summit,top,peak,lie in a heap)、「最高の・葬儀の客をもてなす踊りが・行われた(不吉だ。忌々しい)」(「マイマイ」の語尾のI音が脱落して「マイマ」と、「チヒ」のH音が脱落して「チイ」から「シイ」となった)

の転訛と解します。

282いましめる(戒める)

 不都合なことを起こさないように訓戒したり注意したりする。行動を禁止したり抑制したりする。

 この「いましめる」は、

  「イ・ムア・チ・メア・ル」、I-MUA-TI-MEA-RU(i=past tense,beside,with,by,by reason of,at;mua=the front,the former time,the past,the future;ti=throw,cast;mea=thing,reason,fact,so-and-so,do,wish;ru=shake,agitate,scatter)、「将来に・向かって・(過去を鑑みて)どう行動すべきかを・奮って・示す(戒める)」(「ムア」が「マ」と、「「チ」が「シ」と、「メア」の語尾のA音が脱落して「メ」となった)

の転訛と解します。

283いまだ(未だ)

 (後に否定の語を伴って、現在でもなお事柄が実現していない意を表す)まだ。(否定の語を伴わないで、事柄や状態が今になっても変わらずそのままでいる意を表す)今でも。まだ。

 この「いまだ」は、

  「イ・ムア・タ」、I-MUA-TA(i=past tense,beside,with,by,by reason of,at;mua=the front,the former time,the past,the future;ta=dash,beat,lay)、「未来の・(境)際に・いる(状態において。まだ)」(「ムア」が「マ」と、「タ」が「ダ」となった)

の転訛と解します。

284いまわ(今際)

 今はこの世の限りだという時。死に際。

 この「いまわ」は、

  「イ・ムア・ワ」、I-MUA-WA(i=past tense,beside,with,by,by reason of,at;mua=the front,the former time,the past,the future;wa=definite space,interval,area,time,season)、「未来の・(境)際の・この時(今際)」(「ムア」が「マ」となった)

の転訛と解します。

285いみじくも

 まことにうまく。適切にも。巧みにも。まさに。よくも。

 この「いみじくも」は、

  「イ・ミイ・チ・クモウ」、I-MII-TI-KUMOU(i=past tense,beside,with,by,by reason of,at;(Hawaii)mii=attractive,fine-appearing,good-looking;ti=throw,cast;kumou=komou=cover a fire with ashes or earth to keep it smouldering)、「埋火の灰を・綺麗に・掛け均らし・た(いみじくも)」(「ミイ」が「ミ」と、「チ」が「ジ」と、「クモウ」が「クモ」となった)

の転訛と解します。

286いみな(諱。諡)

 @本名。生前の名で、生前にはその名を言うことを忌み、その死後に人々がいうもの。諱。

 A死後に尊んで付けた称号。贈り名。諡。

 この「いみな」は、

  「イ・ミヒ・ナ」、I-MIHI-NA(i=past tense,beside,with,by,by reason of,at;mihi=sigh for,greet,admire,express discomfort;na=satisfied,content,belonging to(nana=tend carefully,nurse))、@「(生前にはその名をいうことを)忌避し・た・(その属性を表した)名(諱)」またはA「(死後に)尊んで・付けた・(その属性・功績を顕した)名(諡)」(「ミヒ」のH音が脱落して「ミ」となった)

の転訛と解します。

287いもうと(妹)

 男性の側から、姉妹を呼ぶ語。のちに年下の女きょうだいに限られた。(兄妹になぞらえて)男の側から親しい女性を指していう。女のきょうだいのうち、年下のほうを指していう。

 この「いもうと」は、

  「イ・モウ・ト」、I-MOU-TO(i=past tense,beside,with,by,by reason of,at;mou=mau=fixed,firm;to=drag,haul,calm)、「いつも・引き従えて・いる(者。妹)」

の転訛と解します。

288いもじ(鋳物師)

 鋳物を作る職人。鋳物師。

 この「いもじ」は、

  「イ・モウ・チ」、I-MOU-TI(i=ferment,be stirred;mou=mau=fixed,firm;ti=throw,cast,overcome)、「堅い(金属)を・(発酵するように)沸かし・(圧倒する)自在に処理する(者。鋳物師)」(「モウ」が「モ」と、「チ」が「ジ」となった)

の転訛と解します。

289いやしくも(苟も)

 かりにも。かりそめにも。(表面では卑下して、ほんとうは自負心を持っている気持ちを表す)不相応にも。柄にもなく。まことに。おろそかにも。

 この「いやしくも」は、

  「イア・チ・クモウ」、IA-TI-KUMOU(ia=indeed;ti=throw,cast;kumou=komou=cover a fire with ashes or earth to keep it smouldering)、「(この私が)ほんとに・埋火の灰を・掛け均らした(からには。いやしくも)」(「イア」が「イヤ」と、「チ」が「シ」と、「モウ」が「モ」となった)

の転訛と解します。

290いやに(妙に)

 変に。妙に。ひどく。非常に。

 この「いやに」は、

  「イア・ニヒ」、IA-NIHI(ia=indeed;nihi=move stealthly,come stealthly upon,surprise)、「実に・(人を)驚かすように(妙に)」(「イア」が「イヤ」と、「ニヒ」のH音が脱落して「ニ」となった)

の転訛と解します。

291いやはや

 驚きあきれたときに発することば。これはまあ。いやいや。

 この「いやはや」は、

  「イア・ハ・イア」、IA-HA-IA(ia=indeed;ha=what!,varying in signification according to the tone in which it is uttered)、「実に・何とまあ・これは(いやはや)」(「イア」が「イヤ」、「ヤ」となった)

の転訛と解します。

292いやみ(嫌味)

 人に不快な感じを与える言い方、身なり、態度をすること。また、そのような言い方、身なり、態度。また、それから受ける不快感、嫌悪感。ことさらに気取ったさま。きざなさま。いやがらせ。あてこすり。

 この「いやみ」は、

  「イア・ミヒ」、IA-MIHI(ia=indeed;mihi=mihi=sigh for,greet,admire,express discomfort)、「実に・不快感を表す(嫌味)」(「イア」が「イヤ」と、「ミヒ」のH音が脱落して「ミ」となった)

の転訛と解します。

293いよいよ

 物事が加層敵に進展するさまをいう。その上に。ますます。物事が進展してきわまり、確実であるさまをいう。確かに。まさに。今にも事柄が実現しようとすること。とうとう。ついに。「ついに」については、国語篇(その十五)の132ついにの項を参照してください。

 この「いよいよ」は、

  「イ・オイ・イ・オイ」、I-OI-I-OI(i=past tense,beside,with,by,by reason of,at;oi=shudder,move continuously,agitate,disturb)、「動き・出す・動き・出す(いよいよ)」(「イ・オイ」が「イヨイ」となり、さらに語尾のI音が脱落して「イヨ」となった)

  または「イ・イオ・イ・イオ」、I-IO-I-IO(i=past tense,from,with,by;io=tough,hard,obstinate)、「苦しい・仕事を・重ねに・重ねて(やっと仕事ができた。ついに)」(「イオ」が「ヨ」となった)

の転訛と解します。

294いらいら(苛々)

 とげなどがたくさん出ているさま。皮膚や粘膜に、ちくちくと繰り返し突かれるよう小さい刺激やひりひりとしみるような刺激を感じるさま。光りや暑気などが強く人を刺激するさま。あせって心に余裕のないさま。国語篇(その一)の003イライラの項を参照してください。

 この「いらいら」は、

  「イライラ」、IRAIRA(freckle,variegated,shine,glitter)、「玉虫色にピカピカ光る(ピカピカの光に刺激されて感情が高ぶる。いらいらする)」

の転訛と解します。

295いらか(甍)

 屋根の一番高いところ。屋根に葺いた瓦。瓦葺きの屋根。

 この「いらか」は、

  「イラ・カ」、IRA-KA(ira,iraira=freckle,variegated,shine,glitter;ka=kainga=place of abode,lodging,,unfortified place of residence)、「住居する・場所(建物)」

の転訛と解します。

296いらっしゃい

 人が来たとき、歓迎の気持ちを表す挨拶の言葉。

 この「いらっしゃい」は、

  「イラ・ツ・チア・アイ」、IRA-TU-TIA-AI(ira=calling attension,there,yonder;tu=stand,settle,fight with,energetic;tia=stick in,drive in pegs etc.,take a vigorous stroke in paddling;ai=expressing the reason for which anything is done)、「やあ・(懸命に努力して)よく・(杖を突いて)やって来られ・ました(いらっしゃい)」(「ツ」が「ッ」と、「チア」のA音と「アイ」の語頭のA音が連結して「チアイ」から「シャイ」となった)

の転訛と解します。

297いらつめ(郎女)

 上代、女子に対する親愛の情をこめた称。いらつひめ。この「いらつめ」については雑楽篇(その一)の301いらつめの項を参照してください。

 この「いらつめ」は、

  「イラ・ツ・マイ」、IRA-TU-MAI(ira,iraira=freckle,variegated,shine,glitter;tu=stand,settle,fight with,energetic;mai,maimai=a dance to welcome guests at a mourning)、「きらきらと・光り輝くような(華のある)・(踊りを踊る)女性(郎女)」(「マイ」のAI音がE音に変化して「メ」となった)

の転訛と解します。

298いる(居る)

 ある場所に存在する。腰を下ろす。座る。住む。

 この「いる」は、

  「ヒ・ル」、HI-RU(hi=raise,draw up,rise;ru=shake,agitate,scatter)、「(背を伸ばして立ち上がる)立って・(置かれて)いる(居る)」(「ヒ」のH音が脱落して「イ」となった)

  または「ウイ・ル」、UI-RU(ui=disentangle,disengage,relax or loosen a noose;ru=shake,agitate,scatter)、「(緊張を解いて。だらんとして)ただ・(置かれて)いる(居る)」(「ウイ」が「ヰ」から「イ」となった)

の転訛と解します。

299いる(入る。要る)

 @外部から、ある場所、環境などに移る。入る。ある限られた範囲(仲間など)内に取り込まれる。心、目、耳などの知覚に取り入れられる。ある特定の状態、段階、境地などに達する。

 Aある物、事(費用、時間、品物)などが要求される。

 この「いる」は、

  「ヰヰ・ル」、WHIWHI-RU(whiwhi=wind round,wrap round,entangled,possessed of,having acquired;ru=shake,agitate,scatter)、@「(所有物となる。中に)入って・(置かれて)いる(入る)」またはA「必要とされて・(置かれて)いる(要る)」(「ヰヰ」の反覆語尾が脱落して「ヰ」から「イ」となった)

の転訛と解します。

300いる(射る)

 弓につがえた矢を放つ。鉄砲の弾丸をうつ場合にもいう。矢や弾丸を目的物に当てる。光りが強く照らす。

 この「いる」は、

  「ヒヒ・ル」、HIHI-RU(hihi=ray of the sun,feelers of crayfish;ru=shake,agitate,scatter)、「(日の光が射すように矢が)走って・放たれる(射る)」(「ヒヒ」の反覆語尾およびH音が脱落して「イ」となった)

の転訛と解します。

301いろせ

 (同母)同腹の兄弟。この「いろせ」については雑楽篇(その一)の302いろせの項を参照してください。

 この「いろせ」は、

   「イロ・テ」、IRO-TE(iro=submissive as result of punishment,maggot;te=emphasis,crack)、「指導者の命令(または罰)に従順に服している(人間)」(「テ」が「セ」となった)

の転訛と解します。

302いろり(囲炉裏)

 屋内の床を四角に仕切って火を焚き、煮炊きや暖房などに用いる場所。この「いろり」については雑楽篇(その二)の1037いろりの項を参照してください。

 この「いろり」は、

  「ウイラ・オリ」、UIRA-ORI(uira=gleam,lightning,glow;ori=agitate,quiver(oriori=dandle,lull to sleep))、「(火が)赤々と燃えている・(人の)心を優しく揺さぶる(やすらぎが得られる場所。囲炉裏)」(「ウイラ」が「ヰラ」となり、その語尾のA音と「オリ」の語頭のO音が連結してO音に変化して「ヰロリ」となつた)

の転訛と解します。

303いわう(祝う)

 めでたい物事について、喜びの気持ちを改まった言葉や動作であらわす。祝福の物、金銭などを贈る。

 この「いわう」は、

  「ヒワ・アウ」、HIWA-AU(hiwa=light-heartedness,shown in ginging,laughter and jesting,watchful;au=firm,intense)、「充実した・(お祝いの)心が籠もった行為(または行事。祝う)」(「ヒワ」のH音が脱落して「イワ」となり、その語尾のA音と「アウ」の語頭のA音が連結して「イワウ」となった)

の転訛と解します。

304いわお(巌)

 大きな岩。

 この「いわお」は、

  「イ・ワ・アウ」、I-WHA-AU(i=past tense,beside,with,by,by reason of,at;wha=be disclosed,get abroad;au=firm,intense)、「(地中から)露出し・た・堅いもの(大きな岩。巌)」(「アウ」のAU音がO音に変化して「オ」となった)

の転訛と解します。

305いわく(曰く)

 言うこと。外からは分からない隠れた事情や理由、とくに複雑なあまり好ましくない自情。

 この「いわく」は、

  「イ・ウア・ク」、I-UA-KU(i=past tense,beside,with,by,by reason of,at;ua=used in expostulation,used in a somewhat obscure construction;ku=make a low inarticulate sound)、「低い声で・訓戒を・垂れる(曰く)」(「ウア」が「ワ」となった)

  または「イ・ワハ・ク」、I-WAHA-KU(i=past tense,beside,with,by,by reason of,at;waha=mouth,voice,carry on the back(wahanga=load,burden),raise;ku=make a low inarticulate sound)、「低い声で・(重荷を負っている)事情を・話す(曰く)」(「ワハ」のH音が脱落して「ワ」となった)

の転訛と解します。

306いわたおび(岩田帯)

 妊娠五ケ月目の戌の日に腹部の保温、保護と胎児の位置を正常に保つ目的で腹に巻く白布。

 この「いわたおび」は、

  「イ・ワワタ・オ・ピヒ」、I-WAWATA-O-PIHI(i=past tense,beside,with,by,by reason of,at;wawata=desire earnestly,long for,yearning;o=the...of,of,provision for a journey;pihi=spring up,begin to grow)、「(胎児の)健やかな・成長を・切望して・巻くもの(岩田帯)」(「ワワタ」の反覆語頭が脱落して「ワタ」と、「ピヒ」のH音が脱落して「ビ」となった)

の転訛と解します。

307いわば(言わば)

 言ってみれば。たとえて言えば。たとえば。

 この「いわば」は、

  「イ・ワハ・パ」、I-WAHA-PA(i=past tense,beside,with,by,by reason of,at;waha=mouth,voice,carry on the back(wahanga=load,burden),raise;pa=blow,reach one's ears,be heard)、「声を出して・(相手に)聞かせ・ることによって(言わば)」(「ワハ」のH音が脱落して「ワ」と、「パ」が「バ」となった)

  または「イ・ワハ・アパ」、I-WAHA-APA(i=past tense,beside,with,by,by reason of,at;waha=mouth,voice,carry on the back(wahanga=load,burden),raise;apa=not as if)、「声を出して・(話題と)全く違うことを・話すことによって(例えば。言わば)」(「ワハ」のH音が脱落して「ワ」となり、その語尾のA音と「アパ」の語頭のA音が連結して「ワパ」から「ワバ」となった)

の転訛と解します。

308いわゆる(所謂)

 世間一般に言われている。また、一般にそうたとえられている。すでに周知の。言うまでもない。

 この「いわゆる」は、

  「イ・ワイウ・ウル」、I-WAIU-URU(i=past tense,beside,with,by,by reason of,at;waiu=milk,relative;uru=enter,possess,associate oneself with,participate in,arrive)、「親戚と・同等の関係になる(関係が・非常に密接になる)・ことによって(所謂)」(「ワイウ」の語尾のU音と「ウル」の語頭のU音が連結して「ワイウル」から「ワユル」となった)

の転訛と解します。

309いわれ(謂れ)

 物事について一般に言われていること。物事の意味。特に、物事のもととなる根拠、因縁、理由。由緒、由来。

 この「いわれ」は、

  「イ・ワ・アレイ」、I-WHA-AREI(i=past tense,beside,with,by,by reason of,at;wha=be disclosed,get abroad;arei=prevent,obstruct,ward off)、「(物事の意味、理由、由緒などの理解を妨げているもの)不明なことを・明らかに・する()」(「ワ」のA音と「アレイ」の語頭のA音がの語尾の音がの語頭の音とと連結して、語尾のI音が脱落して「ワレ」となった)

の転訛と解します。

310いんちき

 博奕で、不正な手段によって相手の金品を欺し取ること。いかさま。また、本物でない点、ごまかしている点、無責任ででまかせな点などのあるさま。そういう物事。

 この「いんちき」は、

  「イナチ・キ」、INATI-KI(inati=excessive,extraordinary,trouble,bane,disaster;ki=full,very)、「(破滅をもたらす)トラブル(の種)が・一杯であるもの(いんちき)」(「イナチ」が「インチ」となった)

の転訛と解します。

311いんろう(印籠)

 腰に下げる三重または五重の長円筒形の小箱。箱には蒔絵などの細工が施され、緒には緒締め、根付けがある。もと印判を入れ、後に薬を入れるようになったとされる。

 この「いんろう」は、

  「イノ・ロウロウ」、INO-ROUROU(ino=momo=descendant,in good condition,well proportioned;rouroi=small basket for cooked food)、「丁度いい大きさの・籠(印籠)」(「イノ」が「イン」と、「ロウロウ」の反覆語尾が脱落して「ロウ」となった)

の転訛と解します。

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「ウ」

312ういろう(外郎)

 外郎(ういろう)は、中国の官名。定員外の職員の意。(「うい」は唐宋音)元の礼部員外郎で、室町時代日本の帰化した陳宗敬の子孫が立てた家名。代々医薬を業とした。「ういろう」の音が縄文語で下記のように「医薬」の意に通ずるところから、これを家名としたものと考えられる。

 この「ういろう」は、

  「ウイ・ラウ」、UI-RAU(ui=disentangle,disengage,unravel,relax or loosen a noose;rau=hundred,multitude,number)、「萬(の病の悩み)を・解消するもの(漢方薬)」(「ラウ」のAU音がOU音に変化して「ロウ」となった)

の転訛と解します。

313うおのめ(魚の目)

 足の裏、指、掌などの表皮の奥の角質が肥厚したもの。底まめ。この「魚(うお)」については国語篇(その九)の028うおの項を、「目(め)」については国語篇(その九)の024めの項を参照してください。

 この「うおのめ」は、

  「ウ・ワウ・ノ・メイ・メ」、U-WHAU-NO-MEI-ME(u=be fixed;whau=roe of gurnard;no=of;mei=according to,judging by;me=thing)、「(腹に)卵を・抱いている(魚)・の・(見ることによって)判断する・もの(目。魚の目のようなもの)」(「ワウ」のAU音がO音に変化して「ヲ」と、「メイ」の語尾のI音が脱落して「メ」となり、「メ・メ」の反復語尾が脱落して「メ」となった)

の転訛と解します。

314うかつ(迂闊)

 回り遠く、実際に役立たないこと。心が行き届かないこと。注意や心の準備が足りないさま。大変鷹揚でのんびりしているさま。

 この「うかつ」は、

  「ウフ・カハ・アツ」、UHU-KAHA-ATU(uhu=cramp,stiffness,benumbed;kaha=strong,strength,persistency;to indicate a direction or motion onwards,to indicate reciprocated action)、「強力に・事を進める・(心が)麻痺していた(ぼんやりしていた。迂闊)」(「ウフ」のH音が脱落して「ウ」と、「カハ」のH音が脱落して「カ」となったそのA音と「アツ」の語頭のA音が連結して「カツ」となった)

の転訛と解します。

315うきな(浮名)

 当人にとっていやなつらい評判。立てられたくない噂。男女間の常時の噂。艶聞。

 この「うきな」は、

  「ウフ・キ・ナ」、UHU-KI-NA(uhu=cramp,stiffness,benumbed;ki=full,very;na=possessed by,belonging to,by reason of)、「大変・(激痛が走る)いやな・本人(の所業)に帰属すること(悪い評判。うわさ。浮き名)」(「ウフ」のH音が脱落して「ウ」となった)

の転訛と解します。

316うけたまわる(承る)

 (上の人から物や命令などを)つつしんでお受けする。頂く。つつしんで聞く。承諾する。

 この「うけたまわる」は、

  「ウ・カイ・タ・マハ・ル」、U-KAI-TA-MAHA-RU(u=be firm,be fixed,reach its limit;kai=quantity,product,thing,fulfil its proper function,have full play;ta=dash,beat,lay;maha=gratified,satisfied,contented;ru=shake,agitate,scatter)、「奮って・喜んで・全力であたる仕事(または物)を・確かに・受け取る(承る)」(「カイ」のAI音がE音に変化して「ケ」と、「マハ」が「マワ」となった)

の転訛と解します。

317うけにいる(有卦に入る)

 有卦の年まわりに入る。よい運命に巡り会わせる。幸運をつかむ。調子にのる。

 この「うけにいる」は、

  「ウ・カイ・ニヒ・ル」、U-KAI-NIHI-RU(u=be firm,be fixed,reach its limit;kai=quantity,product,thing,fulfil its proper function,have full play;nihi=move stealthly,come stealthly,surprise;ru=shake,agitate,scatter)、「奮って・全力であたる仕事(または物)が・確かに・そっとやって来る(有卦に入る)」(「カイ」のAI音がE音に変化して「ケ」と、「ニヒ」のH音が脱落して「ニイ」となった)

の転訛と解します。

318うごく(動く)

 物事の位置、状態が変わる。また、別の状態に移る。揺れる。震動する。心が動揺する。感動する。ある働きをする。

 この「うごく」は、

  「ウ・(ン)ガウ・ク」、U-NGAU-KU(u=be firm,be fixed,reach its limit;ngau=wander,go about;ku=silent)、「静かに・しっかりと・動き回る(動く)」(「(ン)ガウウ」のNG音がG音に、AU音がO音に変化して「ゴ」となった)

の転訛と解します。

319うさんくさい(胡散臭い)

 なんとなく疑わしい。どことなく怪しくて気が許せない。

 この「うさんくさい」は、

  「ウタ(ン)ガ・クタイタイ」、UTANGA-KUTAITAI(utanga=burden,freight,bearer of burden;kutaitai=of a disagreement taste)、「物事(または人)が・おかしな匂いがする(胡散臭い)」(「ウタ(ン)ガ」のNG音がN音に変化して「ウタナ」から「ウサン」と、「クタイタイ」の反覆語尾が脱落して「クサイ」となった)

の転訛と解します。

320うじ(蛆)

 ハエ、アブなどの昆虫の脚のない幼虫の総称。

 この「うじ」は、

  「ウチ」、UTI(bite)、「(脚を)噛み切られた(虫。蛆)」(「ウチ」が「ウジ」となった)

の転訛と解します。

321うじがみ(氏神)

 氏人が祀る、氏族と関係の深い神や氏族の祖先神。また、その神社。村落共同体が共通の守護神として祀る神。その神社。

 この「うじがみ」は、

  「ウフ・チヒ・カミ」、UHU-TIHI-KAMI(uhu=cramp,stiffness,benumbed;tihi=summit,top,peak;kami=eat)、「最高に・堅い(結束を誇る集団。氏。氏が信仰する)・(あらゆるものを食べる)圧倒する(力をもつもの。神。)」(「ウフ」のH音が脱落して「ウ」と、「チヒ」のH音が脱落して「チ」から「ジ」と、「カミ」が「ガミ」となった)

の転訛と解します。

322うしなう(失う)

 持っていたものをなくす。肉親や親しい友と死に別れる。など。

 この「うしなう」は、

  「ウチ・ナウ」、UTI-NAU(uti=bite;nau=come,go)、「(噛まれる)無くなる(状態が)・来る(失う)」(「ウチ」が「ウシ」となつた)

の転訛と解します。

323うずくまる(蹲る)

 体を丸くしてしゃがむ。また、膝を降り立てて、腰を落としている。しゃがんで礼をする。

 この「うずくまる」は、

  「ウ・ツク・マル」、U-TUKU-MARU(u=be firm,be fixed,reach its limit;tuku=let go,give up,settle down;maru=gentle,calm,power,shadow,shelter,shield)、「ぎりぎりまで・(低い姿勢で)座りこんで・隠れるようにしている(蹲る)」(「ツク」が「ズク」となった)

の転訛と解します。

324うずめる(埋める)

 物の市部または全部を土や灰の中に入れ込んで外から見えなくする。埋葬する。積み重ねて下の物を隠す。

 この「うずめる」は、

  「ウツ・マエ・ル」、UTU-MAE-RU(utu=dip up water etc.,dip into for the purpose of filling;mae=languid,listless,withered,struck with astonishment;ru=shake,agitate,scatter)、「奮って・(枯れたもの、死んだものなど)生気がなくなったものを・(地下や灰の中へ)埋め込む(埋める)」(「ウツ」が「ウズ」と、「マエ」のAE音がE音に変化して「メ」となった)

の転訛と解します。

325うそ(嘘)

 本当でないことを、相手が信じるように伝える言葉。事実に反する事柄。いつわり。この「うそ」については国語篇(その十四)の016うそつきの項を、「いつわり」については本篇の250いつわりの項を参照してください。

 この「うそ」は、

  「ウ・タウ」、U-TAU(u=be firm,be fixed,reach its limit;tau=strange,turn away,look in another direction)、「極端に・(奇妙な。すぐに前言をひるがえす)不合理な(言動。嘘)」(「タウ」のAU音がO音に変化して「ト」から「ソ」となった)

の転訛と解します。

326うぞうむぞう(有象無象)

 種々雑多なくだらない人間や物。ろくでもない連中。

 この「うぞうむぞう」は、

  「ウ・タウ・ム・タウ」、U-TAU-MU-TAU(u=be firm,be fixed,reach its limit;tau=strange,turn away,look in another direction;mu=murmur at,show discontent with,silent)、「とんでもなく・変わった連中や・とんでもなく・不平不満の多い連中(有象無象)」(「タウ」のAU音がOU音に変化して「トウ」から「ゾウ」となった)

の転訛と解します。

327うそぶく(嘯く)

 口をすぼめて息を強く吐き、また、音を立てる。口笛を吹く。また、ある物を見て感嘆のあまりため息をつく。虎などが吠える。てれかくしに空とぼける。そらうそぶく。強がりを言う。

 この「うそぶく」は、

  「ウ・タウ・プク」、U-TAU-PUKU(u=be firm,be fixed,reach its limit;tau=strange,turn away,look in another direction;puku=swelling,affections,memory,desire)、「膨れあがった・極端に・(奇妙な)不合理な(言動。誇大妄想。強がり。空とぼけ。嘯く)」(「タウ」のAU音がO音に変化して「ト」から「ソ」と、「プク」が「ブク」となった)

の転訛と解します。

328うた(歌。唄)

 リズムとメロディーを付けて言葉を声に出すもの。リズムを主として作られた一種の文章の総称。「歌う」については国語篇(その九)の168うたうの項を参照してください。

 この「うた」は、

  「ウ・タハ」、U-TAHA(u=representing an inarticulate sound;taha=side,spasmodic twitching of the muscles etc.,go by)、「不明瞭な声で・声を震わせて(歌うもの。歌)」(「タハ」のH音が脱落して「タ」となった)

の転訛と解します。

329うたかた(泡沫)

 水の上に浮いている泡。はかなく消えやすい物事のたとえにいう。

 この「うたかた」は、

  「ウ・タハ・カタ」、U-TAHA-KATA(u=representing an inarticulate sound;taha=side,spasmodic twitching of the muscles etc.,go by;kata=laugh)、「不明瞭な声で・声を震わせる(歌う)ことや・笑うこと(いずれも一瞬で終わるはかない出来事。泡沫)」(「タハ」のH音が脱落して「タ」となった)

の転訛と解します。

330うたげ(宴)

 酒盛り。酒宴。宴会。

 この「うたげ」は、

  「ウ・タハ・(ン)ガエヘ」、U-TAHA-NGAEHE(u=representing an inarticulate sound;taha=side,spasmodic twitching of the muscles etc.,go by;ngaehe=rustle,murmur)、「不明瞭な声で・声を震わせて(歌を歌い)・がやがやと騒ぐ(集まり。宴)」(「タハ」のH音が脱落して「タ」と、「(ン)ガエヘ」のNG音がG音に、AE音がE音に変化し、H音が脱落して「ゲ」となった)

の転訛と解します。

331うたた(転た)

 状態がどんどん進行していっそうはなはだしくなる意を表す。いよいよ。ますます。状態の異常さに心を動かす意を表す。意外にも。ひどく。変に。

 この「うたた」は、

  「ウ・タタ」、U-TATA(u=be firm,be fixed,reach its limit;tata=dash down,beat down,break in pieces,strike repeatedly,oppose,hew out,near of place or time,suddenly)、「どんどん打撃を受けて・極限に達するようになる(いよいよ。ますます)」または「突然・(何らかの)極限に達する(ひどく。変に)」

の転訛と解します。

332うたたね(転た寝)

 寝るとはなしに寝ること。寝床に入らないで、知らず知らずうとうと眠ること。中古では恋の物思いのためにするものとされた。かりね。

 この「うたたね」は、

  「ウ・タタ・ネイ」、U-TATA-NEI(u=be firm,be fixed,reach its limit;tata=dash down,beat down,break in pieces,strike repeatedly,oppose,hew out,near of place or time,suddenly;nei,neinei=stretched forward,reaching out,wagging,vacillating)、「極端に・細切れの・(手足を伸ばす)睡眠をとる(転た寝)」(「ネイ」が「ネ」となった)

の転訛と解します。

333うだつ(卯建)・うだつ(卯建)が上がらない

 「うだつ」は、梁上の束柱。転じて大和棟民家の妻壁を屋根より一段高くしたものをいう。また、町屋の妻壁の横に張り出した袖壁。

 「うだつがあがらない」は、いつも上から押さえつけられて、出世ができない。運が悪くてよい境遇に恵まれない。

 この「うだつ」、「うだつがあがらない」は、

  「ウ・タツ」、U-TATU(u=be firm,be fixed,reach its limit;tatu=reach the bottom,be at ease,be content,consent)、「満足できる・極限(高さ)に達したもの(妻壁または袖壁。卯建)」(「タツ」が「ダツ」となった)

  「ウ・タツ・カ・ア(ン)ガ・ラ・ナヒ」、U-TATU-KA-ANGA-RA-NAHI(u=be firm,be fixed,reach its limit;tatu=reach the bottom,be at ease,be content,consent;ka=to denote the comencement of a new action;anga=face or move in a certain direction,turn to or set about,doing anything;ra=by way of,then,but;(Hawaii)nahi=few)、「満足できる・極限(の環境、境遇、状態)に達する・ように・状況が良くなることが・(少ない)ない(うだつがあがらない)」(「タツ」が「ダツ」と、「カ」が「ガ」と、「ア(ン)ガ」のNG音がG音に変化して「アガ」と、「ナヒ」のH音が脱落して「ナイ」となった)

の転訛と解します。

334うちあわせ(打ち合わせ)

 物と物とをうまく合うようにすること。似合っていること。楽器を合奏すること。前もって相談しておくこと。

 この「うちあわせ」は、

  「ウ・チア・ワテア」、U-TIA-WATEA(u=be firm,be fixed,reach its limit;tia=stick in,drive in pegs etc.,take a vigorous stroke in paddling;watea=unoccupied,free,open,cautious)、「注意深く・活発な行動ができるよう・決めておく(打ち合わせ)」(「ワテア」の語尾のA音が脱落して「ワテ」から「ワセ」となった)

の転訛と解します。

335うちわ(団扇)

 扇いで風を起こしたり、かざしたりする道具。

 この「うちわ」は、

  「ウ・チ・ハ」、U-TI-HA(u=be firm,be fixed,reach its limit;ti=throw,cast;ha=breath,breathe)、「(息)風を・出すように・作られたもの(団扇)」(「ハ」が「ワ」となった)

の転訛と解します。

336うっかり

 心を奪われている状態にいう。不注意で気付かないでするさま。注意が足りないこと。

 この「うっかり」は、

  「ウツ・カリ」、UTU-KARI(utu=be stunched,cease running,as tears,etc.;kari=dig,dig up,wound,rush along violently)、「止血したところを・引っ掻いてしまうような(うっかり)」(「ウツ」が「ウッ」となった)

の転訛と解します。

337うつくしい(美しい)

 (古くは妻、子、孫、老母などの肉親に対する慈しみをこめた愛情についていったが、次第に意味が広がって、一般に慈愛の心についていう。)かわいい。愛らしい。(幼少の者、ちいさい物などに対して、やや観賞的にいう。)様子がいかにもかわいらしい。愛らしく美しい。可憐である。(美一般を表し、自然物などにもいう。)美麗である。きれいだ。立派だ。

 この「うつくしい」は、

  「ウ・ツ・ク・チヒ」、U-TU-KU-TIHI(u=be firm,be fixed,reach its limit;tu=stand,settle,fight with,energetic;ku=silent,firm,stiff;tihi=summit,top,peak,lie in a heap)、「極めて・最高に・懸命に・(血族として)堅く結びついている(うつくしい)」(「チヒ」のH音が脱落して「チイ」から「シイ」となった)

  または「ウ・ツ・ウク・チヒ」、U-TU-UKU-TIHI(u=be firm,be fixed,reach its limit;tu=stand,settle,fight with,energetic;uku=wash,using clay for soup;tihi=summit,top,peak,lie in a heap)、「極めて・最高に・懸命に・(洗い上げた)綺麗になっている(美しい)」(「ツ」のU音と「ウク」の語頭のU音が連結して「ツク」と、「チヒ」のH音が脱落して「チイ」から「シイ」となった)

の転訛と解します。

338うつす(移す。写す)

 @事物をある位置から他の位置に変える。神仏を他の場所で祀る。配流する。人の配置を変える。興味、関心、話題を転ずる。中味を別のものに入れ替える。時間を費やす。など。

 A元の物に似せて別の物をつくる。見聞したり、考えたりしたことを絵や文章に書く、描写する。写真や映画に撮る。

 この「うつす」は、

  「ウ・ツツ」、U-TUTU(u=be firm,be fixed,reach its limit;tutu=stand errect,be prominent,move with vigour,set on fire,be raised disturbance etc.,summon,assemble)、@「(招集する)場所を移して・固定する(移す)」またはA「(目立たせる)同じようなものを作って(または映像を撮って)・(固定する)残す(写す)」(「ツツ」が「ツス」となった)

の転訛と解します。

339うつせみのよ(空蝉の世)

 この世。現世。人の世。はかないこの世。

 この「うつせみのよ」は、

  「ウ・ツタエ・ミヒ・ノ・イオ」、U-TUTAE-MIHI-NO-IO(u=be firm,be fixed,reach its limit;tutae=dung;mihi=sigh for,greet,express discomfort;no=of;io=tough,hard,obstinate)、「困難に・(の)満ちている・不快な・汚辱が・極限に達している(この世。空蝉の世)」(「ツタエ」のAE音がE音に変化して「ツテ」から「ツセ」と、「ミヒ」のH音が脱落して「ミ」と、「イオ」が「ヨ」となった)

の転訛と解します。

340うったえる(訴える)

 物事の理非曲直の判断を権威ある人または機関に求める。訴訟をする。事情、要求、不平などを人に告げる。神に告げて救助、天罰などを祈る。感覚または心に強く働きかける。

 この「訴える」は、

  「ウ・ツ・タエ・ル」、U-TU-TAE-RU(u=be firm,be fixed,reach its limit;tu=fight with,energetic;tae=arrive,reach,touch of feelings,be overcome;ru=shake,agitate,scatter)、「極限に達するまで・懸命に・奮って・人の感情に(触れる)働き掛ける(訴える)」(「ツ」が「ッ」となった)

の転訛と解します。

341うっちゃる(打っちゃる)

 捨てる。放り出す。手を出したり、口を出したりしないで、そのままにする。土壇場で形成を逆転する。

 この「うっちゃる」は、

  「ウ・ツ・チ・イア・ル」、U-TU-TI-IA-RU(u=be firm,be fixed,reach its limit;tu=fight with,energetic;ti=throw,cast;ia=indeed;ru=shake,agitate,scatter)、「極限に達するまで・懸命に・実に・奮って・放り投げる(うっちゃる)」(「ツ」が「ッ」と、「チ・イア」が「チャ」となった)

の転訛と解します。

342うつつ(現)

 世に実際に存在していること。また、その存在いしているもの。目覚めていて、知覚がはっきりしている状態。正気。(「夢うつつ」と続けることから誤用して)夢か現実かはっきりしないような状態。また、そのもの。

 この「うつつ」は、

  「ウ・ツツ」、U-TUTU(u=be firm,be fixed,reach its limit;tutu=stand errect,be prominent,move with vigour,set on fire,be raised as dust or disturbance etc.,violent,summon,assemble)、「(この世に)しっかりと・存在する(目立っている)こと(現)」

の転訛と解します。

343うってつけ(打って付け)

 人や物事がある目的、またはその場の状況にぴったり適っていること。また、そのさま。もってこい。あつらえむき。

 この「うってつけ」は、

  「ウ・ツタイ・ツ・カイ」、U-TUTAI-TU-KAI(u=be firm,be fixed,reach its limit;tutai=watch,spy,scout;tu=stand,settle,fight with,energetic;kai=fulfil its proper function,have full play)、「監察した(結果)・(人または物事が)きちんと・ある仕事を十分に果たす・ものと(確定)確信した(うってつけ)」(「ツタイ」のAI音がE音に変化して「ツテ」から「ッテ」と、「カイ」」のAI音がE音に変化して「ケ」となった)

の転訛と解します。

344うつむく(俯く)

 頭を前へ垂れる。顔を伏せる。

 この「うつむく」は、

  「ウ・ツム・ク」、U-TUMU-KU((u=be firm,be fixed,reach its limit;tumu=contrary of wind,go against the wind,work to windward;ku=silent)、「無言で・(風に逆らうように)下を向いて・しっかりと立っている(うつむく)」

の転訛と解します。

345うつらうつら

 心がぼんやりしているさま。茫然。眠気、病気などで意識がはっきりしないさま。うとうと。

 この「うつらうつら」は、

  「ウ・ツラハ・ウ・ツラハ」、U-TURAHA-U-TURAHA(u=be firm,be fixed,reach its limit;turaha=keep away,keep clear,be separated,open)、「心が離れて・しまっている・心が離れて・しまっている(うつらうつら)」(「ツラハ」のH音が脱落して「ツラ」となった)

の転訛と解します。

346うとましい(疎ましい)

 いとわしい。嫌気がさす。不気味だ。薄気味悪い。

 この「うとましい」は、

  「ウト・オマ・チヒ」、UTO-OMA-TIHI(uto=revenge,object of one's revenge,sworn enemy;oma=move quickly,run,escape;tihi=summit,top,peak)、「復讐したい相手が・最高に・元気に走り回っている(疎ましい)」(「ウト」の語尾のO音と「オマ」の語頭のO音が連結して「ウトマ」と、「チヒ」のH音が脱落して「チイ」から「シイ」となった)

の転訛と解します。

347うながす(促す)

 人や物を急き立てる。催促する。するように勧める。促進する。

 この「うながす」は、

  「ウ(ン)ガウ(ン)ガ・ツ」、UNGAUNGA-TU(ungaunga=urge repeatedly or insistently;tu=fight with,energetic)、「懸命に・何回となく勧める(促す)」(「ウ(ン)ガウ(ン)ガ」の最初のNG音がN音に、次のNG音がG音に変化して「ウナウガ」から「ウナガ」と、「ツ」が「ス」となった)

の転訛と解します。

348うなずく(頷く)

 了解、肯定、承諾、勧誘などの気持ちを表すために首を縦に振る。首を前へ曲げて合図する。

 この「うなずく」は、

  「ウ(ン)ガ・ツク」、UNGA-TUKU(unga=act or circumstance etc. of becoming firm,place etc/ of arrival;tuku=let go,give up,allow,send,receive)、「(諦める、許す、受け入れるなど)同意したことを・(確認する行為として)首を縦に振る(頷く)」(「ウ(ン)ガ」のNG音がN音に変化して「ウナ」と、「ツク」が「ズク」となった)

の転訛と解します。

349うなだれる(項垂れる)

 心配、落胆、悲しみ、恥ずかしさなどのために気持ちが沈み込んで、頭を前へ低く垂れる。首を前へ傾ける。うつむく。

 この「うなだれる」は、

  「ウ(ン)ガ・タレ・ル」、UNGA-TARE-RU(unga=act or circumstance etc. of becoming firm,place etc/ of arrival;tare=hang,be drawn towards;ru=shake,agitate,scatter)、「(首を)前へ放り・垂れ・たままで(固まって)いる(項垂れる)」(「ウ(ン)ガ」のNG音がN音に変化して「ウナ」と、「タレ」が「ダレ」となった)

の転訛と解します。

350うなて(地溝)

 田に引く用水を通す溝。

 この「うなて」は、

  「ウ(ン)ガ・テ」、UNGA-TE(unga=send,expel,seek;te=crack)、「(田の用水を)通すための・(割れ目)溝(地溝)」(「ウ(ン)ガ」のNG音がN音に変化して「ウナ」となった)

の転訛と解します。

351うなる(唸る)

 力を入れたり、苦しんだり、感心したりして、長く引いた低い声をだす。うめく。力をいれ、長く声ほ引いて歌う。

 この「うなる」は、

  「ウ・(ン)ガル」、U-NGARU(u=be firm,be fixed,reach its limit;ngaru=wave of the sea,corrugation)、「極限に達した・(荒れる海の波のように)音が強弱、長短しながら吠える(唸る)」(「(ン)ガル」のNG音がN音に変化して「ナル」となった)

の転訛と解します。

352うね(畝、畦)

 畑に作物の種を蒔いたり、植え付けたりする目的で、一定の間隔に列情に溝を切り、その土を溝の側に細長く積み上げたもの。

 この「うね」は、

  「ウ・ネヘ」、U-NEHE(u=be firm,be fixed,reach its limit;nehe=rafter of a house)、「(屋根の)垂木のように・(田畑に)作られた溝(畦)」(「ネヘ」のH音が脱落して「ネ」となった)

の転訛と解します。

353うねめ(采女)

 後宮女官の一つで、天皇、皇后の日常の雑益に従事した者。大化前代では国造、県主などの地方豪族の子弟を大王に奉仕させ、令制下では諸国の軍事一族の子女で十三歳から三十歳までの容姿端正な者を選んで出仕させた。この「うねめ」については雑楽篇(その一)の339仕丁(つかへのよほろ)の項の「うねめ」を参照してください。

 この「うねめ」は、

  「ウネ・マイ」、UNE-MAI((Hawaii)une=to urge,disturb,harass;mai=clothing,dance)、「強要され(て朝廷に仕え)た・(着飾り、踊りを踊る)女性」(「マイ」のAI音がE音に変化して「メ」となった))

  または「ウネネ・マイ」、UNENE-MAI(unene=luscious,ashamed,spiritless;mai=clothing,dance)、「恥を忍んで(朝廷に仕えて)いる・(着飾り、踊りを踊る)女性」(「ウネネ」の反復語尾が脱落して「ウネ」と、「マイ」のAI音がE音に変化して「メ」となった)

の転訛と解します。

354うば(乳母)

 母親に代わって子供に乳を与え、その世話をする女。

 この「うば」は、

  「ウ・パ」、U-PA(u=breast of the female,udder,teat;pa=touch,reach,hold personal communication with,operate on,be connected with)、「乳房で(乳を飲ませることで)・(子供と)繋がっている者(乳母)」(「パ」が「バ」となった)

の転訛と解します。

355うぶすな(産土)

 人の出生の地。生地。産土神。

 この「うぶすな」は、

  「ウ・プ・ツ(ン)ガ」、U-PU-TUNGA(u=be firm,be fixed,reach the land,reach its limit;pu=originate,origin,base;tunga=circumstance or time etc. of standing,site,foundation,wound,circumstance etc. of being wounded)、「(部族が)到着した・最初の・(住み着いた)土地(またはその土地の(石が砕かれて細かくなった)砂)」(「プ」が「ブ」と、「ツ(ン)ガ」のNG音がN音に変化して「ツナ」から「スナ」となった)

の転訛と解します。

356うまい(旨い)

 味覚、感覚を満足させるような快い味わいについていう。味がよい。おいしい。また、よい香りだ。

 この「うまい」は、

  「ウマ(ン)ガ・アイ」、UMANGA-AI(umanga=pursuit,occupation,food,accustomed,habituated;ai=expressing the reason for which anything is done,expressing surprise)、「食べ物が・(驚くほど)味がよい(旨い)」(「ウマ(ン)ガ」の名詞形語尾のNGA音が脱落して「ウマ」となり、その語尾のA音と「アイ」の語頭のA音が連結して「ウマイ」となった)

の転訛と解します。

357うまがあう(馬が合う)

 (馬とその乗り手の呼吸がぴったり合う意から)気が合う。しっくりとゆく。意気投合する。

 この「うまがあう」は、

  「ウマ(ン)ガ・アウ」、UMANGA-AU(umanga=pursuit,occupation,food,accustomed,habituated;au=firm,intense)、「(互いに気が)慣れて・ぴったりとしている(馬が合う)」(「ウマ(ン)ガ」のNG音がG音に変化して「ウマガ」となった)

の転訛と解します。

358うまのはなむけ

 旅立つ人の前途の無事を祈って、出発にあたり旅行者と酒食をともにすること。門出を祝う宴会。送別会。餞別。

 この「うまのはなむけ」は、

  「ウマ(ン)ガ・ノ・パナ・ムフカイ」、UMANGA-NO-PANA-MUHUKAI(umanga=pursuit,occupation,food,accustomed,habituated;no=of;pana=thrust or drive away,expel,cause to come or go forth in any way,start;muhukai=absent,inatentive)、「(不在に)旅行に・駆り立てる・(の)前に行う・行事(うまのはなむけ)」(「ウマ(ン)ガ」の名詞形語尾のNGA音が脱落して「ウマ」と、「パナ」のP音がF音を経てH音に変化して「ハナ」と、「ムフカイ」のH音が脱落し、AI音がE音に変化して「ムケ」なった)

の転訛と解します。

359うみ(海)

 広く水をたたえているところ。古くは海洋のほか、大きな湖や沼をも指した。「うみ(海)」については地名篇(その十九)の(1)海域地名のa海地名の(a)海(うみ)の項を参照してください。

 この「うみ」は、

  「ウ・ミ」、U-MI(u=bite,be fixed,reach its limit;mi=stream,river)、「見渡すかぎりの(極限まで達している)・川(のような。海)」または「フミ」、HUMI(abundant,copious)、「(水が)満ち満ちている(または水が膨大にある。場所。海)」(H音が脱落して「ウミ」となった)

の転訛と解します。

360うむ(産む)

 子や卵を母体の外へ出す。出産する。今までなかったものを生ずる。

 この「うむ」は、

  「ウ・ムア」、U-MUA((u=bite,be fixed,reach the land,reach its limit;mua=the front,the former time,before)、「目前に(この世に)・(到着する)現れる(産む)」(「ムア」の語尾のA音が脱落して「ム」となった)

の転訛と解します。

361うめく(呻く)

 嘆息の声をあげる。ため息をつく。苦痛などでうなる。牛や犬などが低く唸る。

 この「うめく」は、

  「ウ・マエ・ク」、U-MAE-KU(u=bite,be fixed,reach its limit;mae=languid,listless,withered,struck with astonishment,paralysed with fear etc.;ku=make a low inarticulate sound)、「極端に・衰弱して・低いうなり声をあげる(呻く)」(「マエ」のAE音がE音に変化して「メ」となった)

の転訛と解します。

362うやうやしい(恭しい)

 相手を敬い、行動をつつましくするさま。鄭重である。

 この「うやうやしい」は、

  「フイア・フイア・チヒ」、HUIA-HUIA-TIHI(huia=feathers of the huia(rare bird),anything much prized;tihi=summit,top,peak,lie in a heap)、「最高に・尊重し・尊重する(恭しい)」(「フイア」のH音が脱落して「ウイア」から「ウヤ」と、「チヒ」のH音が脱落して「チイ」から「シイ」となった)

の転訛と解します。

363うやまう(敬う)

 相手を尊んで礼をつくす。尊敬する。

 この「うやまう」は、

  「フイア・マウ」、HUIA-MAU(huia=feathers of the huia(rare bird),anything much prized;mau=carry bring,fixed,continuing,caught)、「尊重する・(態度を)続ける(敬う)」(「フイア」のH音が脱落して「ウイア」から「ウヤ」となった)

の転訛と解します。

364うら(浦)

 海、湖などの湾曲して陸地に入り込んだところ。入り江。湾。海岸。浜辺。海辺の村里。「うら(浦)」については地名篇(その十九)の(3)海岸地名のb浦地名の(a)浦(うら)の項を参照してください。

 この「うら」は、

   「ウラ(ン)ガ」、URANGA(act or circumstance etc. of becoming firm,place etc. of arrival)、「船が発着する(場所)」(「ウラ(ン)ガ」の名詞形語尾のNGA音が脱落して「ウラ」となった)

の転訛と解します。

365うら(心)

 心。心のうち。

 この「うら」は、

  「フラ」、HURA(remove a covering,uncover,bare,bald)、「(覆いを取り去ったもの)心(または心の中。心)」(「フラ」のH音が脱落して「ウラ」となった)

の転訛と解します。

366うらがれる(末枯れる)

 草木の先の方が色づいて枯れる。声がかれる。

 この「うらがれる」は、

  「ウラ(ン)ガ・レヘ・ル」、URANGA-REHE-RU(uranga=glow,particularly of sunrise or sunset(ura=red,glowing,show red);rehe=wrinkle,fold in the skin,stunted;ru=shake,agitate,scatter)、「赤く色付いて・縮んで・しまう(うらがれる)」(「ウラ(ン)ガ」の名詞形語尾のNG音がG音に変化して「ウラガ」と、「レヘ」のH音が脱落して「レ」となった)

の転訛と解します。

367うらさびしい

 心さびしい。何となくさびしい。ものさびしい。

 この「うらさびしい」は、

  「ウラ(ン)ガ・タピ・チヒ」、URANGA-TAPI-TIHI(uranga=glow,particularly of sunrise or sunset(ura=red,glowing,show red);tapi=apply as dressing to a wound,find fault with,chide;tihi=summit,top,peak,lie in a heap)、「最高に・欠陥がある(落日の輝きが見られない唯暗くなるだけの)・日没(うらさびしい)」(「ウラ(ン)ガ」の名詞形語尾のNGA音が脱落して「ウラ」と、「タピ」が「サビ」と、「チヒ」のH音が脱落して「チイ」から「シイ」となった)

の転訛と解します。

368うらだな(裏店)

 市街地の裏通りや商家の背後の地所に立てられた家。とくに裏通りに面して立てられた粗末な棟割り長屋をいった。

 この「うらだな」は、

  「フラ・タ(ン)ガ」、HURA-TANGA(hura=remove a covering,uncover,bare,bald;tanga=circumstance or time or place of dashing or striking etc.)、「(何の飾りもない)粗末な・住むだけの建物(裏店)」(「フラ」のH音が脱落して「ウラ」と、「タ(ン)ガ」のNG音がN音に変化して「タナ」から「ダナ」となった)

の転訛と解します。

369うらなう(占う)

 占いをする。占いで将来の成り行きや吉凶を定める。

 この「うらなう」は、

  「ウラ(ン)ガ・アウ」、URANGA-AU(uranga=act or circumstance etc. of becoming firm,place etc. of arrival;au=firm,intense)、「(将来の成り行きや吉凶を)確定する行為(占い)を行って・確定する(占う)」(「ウラ(ン)ガ」のNG音がN音に変化して「ウラナ」となり、その語尾のA音と「アウ」の語頭のA音が連結して「ウラナウ」となった)

の転訛と解します。

370うらなり(末成り)

 瓜などの、伸びた蔓の末の方になった実。末っ子。顔が青白く元気のない人。

 この「うらなり」は、

  「フラ・ナ・アリ」、HURA-NA-ARI(hura=remove a covering,uncover,bare,bald;na=by,belonging to,by reason of;ari=clear,visible,appearance)、「(生気がない)ただ・現れ・出ただけのもの(末成り)」(「フラ」のH音が脱落して「ウラ」と、「ナ」のA音と「アリ」の語頭のA音が連結して「ナリ」となった)

の転訛と解します。

371うらむ(恨む)

 自分に対してひどいことをした人、または自分の思い通りにならない物事やその状態などに不満を持ち、悲しく思う。また、残念に思い反発する気持ちを持つ。憤りの気持ちを口に出す。不満を訴える。仕返しをする。

 この「うらむ」は、

  「フラ・ム」、HURA-MU(hura=remove a covering,uncover,bare,bald;mu=murmur at,show discontent with,silent)、「(覆いを取り去ったもの)心が・(不満を表す)恨んでいる(恨む)」(「フラ」のH音が脱落して「ウラ」となった)

の転訛と解します。

372うらやましい(羨ましい)

 他人の様子、状態などが自分より恵まれているように見えて、憎らしく思われる。ねたましい。この「うらやましい」については国語篇(その十四)の017うらやましいの項を参照してください。

 この「うらやましい」は、

  「ウラ・イア・マチ・イ」、URA-IA-MATI-I(ura=red,glowing,show red;ia=indeed;mati=surfeited;i=ferment,be stirred of the feelings)、「(他人の栄光)幸福を(見て)・実に・(自分も飽食する)満足感を味わいたい・気持ちが湧く(羨ましい)」(「イア」が「ヤ」と、「マチ」が「マシ」となった)

  または「ウ・ライア・マチ・イ」、U-RAIA-MATI-I(u=be fixed,be fixed,reach its limit;raia=to give emphasis;mati=surfeited;i=ferment,be stirred of the feelings)、「(他人の幸福を見聞きして自分も)嫌という・ほど・(飽食する)満足感を・味わいたい気持ちが湧く(感情。羨ましい)」(「ライア」が「ラヤ」と、「マチ」が「マシ」となつた)

の転訛と解します。

373うらわかい(うら若い)

 若々しい。ごく若くて可憐である。

 この「うらわかい」は、

  「ウラ・ウアカハ・イ」、URA-UAKAHA-I(ura=red,glowing,show red;uakaha=vigorous,strenuous,difficult;i=ferment,be stirred of the feelings)、「光り輝くような・溌溂とした・気持ちが湧いて出てくる(うら若い)」(「ウアカハ」のH音が脱落して「ワカ」となった)

の転訛と解します。

374うらをかく(裏をかく)

 矢、刀、槍などをものの裏まで突き通す。予想外に出て相手の計略を出し抜く。

 この「うらをかく」は、

  「フラ・オ・カク」、HULA-AU-KAKU((Hawaii)hula=pry,pierce and penetrate,expel,reject;o=find room,get in;kaku=scrape up,scoop up,bruise,shred)、「(矢、刀、槍などを)突き・入れて・傷を負わせる(裏をかく)」または「(相手の予想を)拒絶して・(相手の)中に入って・傷を負わせる(裏をかく)」(「フラ」のH音が脱落して「ウラ」となった)

の転訛と解します。

375うる(売る)

 代金を受け取って品物や権利を他人に渡す。また、買い手を求める。販売する。

 この「うる」は、

  「ウ(ン)ガ・ル」、UNGA-RU(unga=act or circumstance etc. of becoming firm,place etc. of arrival;ru=shake,agitate,scatter)、「(代金と品物または権利を)交換する行為の実行を・奮って行う(売る)」(「ウ(ン)ガ」の名詞形語尾のNGA音が脱落して「ウ」となった)

の転訛と解します。

376うるう(閏)

 暦と季節の食い違いを調節するために日数または月数を普通の年より多くすること。また、その年、月、日。この「うるう」については雑楽篇(その一)の187うるう(閏)の項を参照してください。

 この「うるう」は、

  「ウル・フイ」、URU-HUI(uru=enter,possess as a familiar spirit,associate oneself with;hui=put or add together,double up,assembly)、「(暦の中に歳または月を)挿入して・(通常の歳または月の)仲間とする(歳または月。閏歳。閏月)」(「フイ」のH音が脱落して「ウイ」となり、さらにその語尾のI音が脱落して「ウ」となった)

の転訛と解します。

377うるさい(煩い)

 行き届いて完全であるさま。またねその度が過ぎて反発されたり敬遠されたりするさま。技芸がすぐれていて嫌みなほどである。ものが多くつきまといすぎて煩わしい。うっとうしい。やかましい。面倒だ。いやな感じだ。

 この「うるさい」は、

  「ウル・タイ」、URU-TAI(uru=head,chief,top;tai=the sea,tide,wave,anger,rage,violence(taitai=dash,strike,knock))、「上司が・暴虐である(煩い)」または「頭が・(叩かれる)痛くなる(煩い)」(「タイ」が「サイ」となった)

の転訛と解します。

378うれい(憂い)

 苦しいこと。つらいこと。災い。難儀。不安。また、心配なさま。なんとなく心に入り込んでくる物悲しさ。感傷的な気分。憂愁。不吉なこと。嘆き悲しむこと。古くは「うれへ」であったとされる。

 この「うれへ」は、

  「ウ・レヘア」、U-REHEA(u=bite,be fixed,reach its limit;rehea=be balked,be baffled)、「極めて・(妨害されて)尻込みする(または当惑する)こと(憂い)」(「レヘア」の語尾のA音が脱落して「レヘ」となり、さらに語尾のE音がI音に変化して「レイ」となった)

の転訛と解します。

379うれしい(嬉しい)

 物事がその人にとって望ましい状況にある、満足される状態にあると感じたときに生ずる感情で、おもわず笑顔になるようなあかるく晴れやかな快い気持ちをいう。喜ばしい。好ましい。有り難い。

 この「うれしい」は、

  「ウ・レヒア・イ」、U-REHIA-I(u=bite,be fixed,reach its limit;rehia=pleasure,amusement,enjoyment,pleasant,gratiful;i=ferment,be stirred of the feelings)、「極めて・楽しい・気持ちが湧いてくる(嬉しい)」(「レヒア」のH音がS音に変化し、語尾のA音が脱落して「レシ」となった)

の転訛と解します。

380うろん(胡乱)

 乱雑であること。勝手気ままでやりっぱなし出在ること。不確実であること。不誠実であること。あやしく疑わしいこと。

 この「うろん」は、

  「ウ・ロ(ン)ゴ」、U-RONGO(u=bite,be fixed,reach its limit;rongo=apprehend by senses except sight,hear,feel,smell,taste,obey)、「極めて・疑わしい(胡乱)」(「ロ(ン)ゴ」のNG音がN音に変化して「ロノ」から「ロン」となった)

の転訛と解します。

381うわさ(噂)

 物事や事の身の上について陰で話をすること。また、その話。世間でいいふらす話。風雪。噂。

 この「うわさ」は、

  「ウ・ウアタハ」、U-UATAHA(u=bite,be fixed,reach its limit;uataha=incline)、「極めて・(傾斜した)偏った(話。噂)」(「ウアタハ」のH音が脱落して「ウアタ」から「ワサ」となった)

  または「ウワ・タタハ」、UWHA-TATAHA(uwha=female,calm,woman;tataha=swerve)、「女性が(好んで)する・(脱線した)偏った裏の(話。噂)」(「タタハ」の反覆語頭およびH音が脱落して「タ」から「サ」となった)

の転訛と解します。

382うわなり(後妻)

 後にめとった妻。古くは、初めて迎えた妻、本妻に対して次の妻をいい、後には死別または離縁した妻のあとに迎えた妻をいった。(前妻が後妻を嫉妬するところから)ねたみ。この「うわなり」については雑楽篇(その一)の349うわなり打ちの項の「うわなり」を参照してください。

 この「うわなり」は、

  「ウア・(ン)ガリ」、UA-NGARI(ua=expostulation,don't;ngari=annoyance,disturbance,greatness,power)、「(前妻軍がうっぷんを晴らすのを)邪魔しては・ならない(女性達。後妻軍。後妻)」(「ウア」が「ウワ」と、「(ン)ガリ」のNG音がN音に変化して「ナリ」となった)

の転訛と解します。

383うわのそら(上の空)

 空の上。心が浮き浮きして落ち着かないさま。よそに心を奪われて、あることに注意が向かないこと。漠然としてクモをつかむようなさま。軽々しいさま。

 この「うわのそら」は、

  「ウア・ナウ・トラ」、UA-NAU-TORA(ua=expostulation,don't;nau=come,go;tora=burn,blaze,be errect,used of showing warlike feelings)、「(情熱を)燃やす・ことが・ない(無関心である。上の空)」(「ウア」が「ウワ」と、「ナウ」のAU音がO音に変化して「ノ」と、「トラ」が「ソラ」となった)

の転訛と解します。

384うわまえ(上前)

 うわまい(上米)の転とされる。古く寺社が年貢米の幾分を初穂として寄進させた米。口米。通行税の一種。近世諸国の年貢米が神領などを通過する際に運送船から取った金。仕事や売買の仲介をする者がはねる代金、賃金の市部。また、それを取ること。

 この「うわまえ」は、

  「ウア・マハ・ハエ」、UA-MAHA-HAE(ua=expostulation,don't;maha=many,abundant;hae=slit,lacerate,tear,cut,cause painsplit)、「決して・多く・取ってはならないもの(上前)」(「ウア」が「ウワ」と、「マハ」のH音が脱落して「マ」となり、そのA音と「ハエ」のH音が脱落して「アエ」となった語頭のA音が連結して「マエ」となった)

の転訛と解します。

385うんこ(大便)

 大便をいう幼児語。

 この「うんこ」は、

  「ウヌ・カウ」、 UNU-KO(unu=pull off,put off,draw out,pull out,bring out;kau=multitude,company)、「(体の中から)押し出す・大量の塊(大便)」(「ウヌ」が「ウン」と、「カウ」のAU音がO音に変化して「コ」となった)

の転訛と解します。

386うんざり

 予想外のことにがっかりしたり、びっくりしたりするさま。呆れ驚くさま。物事が十分過ぎて、飽き飽きして嫌になるさま。

 この「うんざり」は、

  「ウ(ン)ガ・タタリ」、UNGA-TATARI(unga=send,cause to come forth,expel,seek;tatari=wait,expect)、「期待したものが(来るには来たが)・遠くへ押しやられた(期待が外れた。うんざり)」(「ウ(ン)ガ」のNG音がN音に変化して「ウナ」から「ウン」と、「タタリ」の反覆語頭が脱落して「タリ」から「サリ」、「ザリ」となった)

の転訛と解します。

387うんともすんとも

 一言の反応もないさま。何の一言も。

 この「うんともすんとも」は、

  「ウ(ン)ガ・トモ・ツ(ン)ガ・トモ」、UNGA-TOMO-TUNGA-TOMO(unga=send,cause to come forth,expel,seek;tomo=pass in,enter,begin,assault;tunga=send)、「(ウンという連絡を)送った・(という通知が)届いたか・(スンという連絡を)送った・(という通知が)届いたか(うんともすんとも)」(「ウ(ン)ガ」のNG音がN音に変化して「ウナ」から「ウン」と、「ツ(ン)ガ」のNG音がN音に変化して「ツナ」から「スン」となった)

の転訛と解します。

388うんぬん(云々)

 引用文またはそれに類する一続きの言葉を記し、それ以下を省略したり、ぼかしたりするときに末尾に添える言葉。また、間接話法で「という話である」と結ぶ言葉。

 この「うんぬん」は、

  「ウヌウヌ」、UNUUNU(pull out several things)、「いくつかの事柄を(引き出す)話す(云々)」(「ウヌウヌ」が「ウンヌン」となった)

の転訛と解します。

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「エ」

389え(柄)

 手で持つために器物に取り付けた棒状の部分。取手。

 この「え」は、

  「ウエ」、UE(push,shove,shake)、「(器物を)動かすために持つもの(柄)」(「ウエ」が「ヱ」、「エ」となった)

の転訛と解します。

390えがく(描く)

 物の形を絵や図の形に書き表す。物事の有様を文章、音楽などで表現する。描写する。

 この「えがく」は、

  「ヱア・カク」、WEA-KAKU((Hawaii)wea=to help,tempt,trace,a red dye,to print or colorred;kaku=scrape up,scoop up,bruise,shred)、「(岩や石を)傷つけて・(赤い染料で)線を引く(描く)」(「ヱア」の語尾のA音が脱落して「ヱ」と、「カク」が「ガク」となった)

の転訛と解します。

391えくぼ(靨、笑窪)

 笑うとき、頬に生じる小さな凹み。

 この「えくぼ」は、

  「エ・ク・パウ」、E-KU-PAU(e=to denote action in progress or temporary condition;ku=silent;pau=consumed,exhausted,denoting the complete or exhaustive character of any action)、「無言で・(笑うときに頬に)生ずる・(消耗した)凹み(笑窪)」(「パウ」のAU音がO音に変化して「ポ」から「ボ」となった)

の転訛と解します。

392えげつない

 人に度を越した迷惑、不快の感じを与えるさま。特に、言い方ややり方が露骨でいやらしい。ずうずうしく無遠慮である。思いやりがなく、残酷である。

 この「えげつない」は、

  「エ・ケ・ツ・ヌイ」、E-KE-TU-NUI(e=to denote action in progress or temporary condition,calling attention or expressing surprise;ke=different,strange,extraordinary;tu=stand,settle,fight with,energetic;nui=large,many)、「たいへん・驚くほど・異様な(言動や行動を)・躍起になってする(えげつない)」(「ケ」が「ゲ」と、「ヌイ」が「ナイ」となった)

の転訛と解します。

393えこじ(依怙地)

 つまらないことに頑固なこと。また、そのさま。

 この「えこじ」は、

  「エ・コチ」、E-KOTI(e=to denote action in progress or temporary condition,calling attention or expressing surprise;koti=cut in two,interrupt,cut off)、「驚く程・(人の話の腰を折る)自説に固執する(依怙地)」(「コチ」が「コジ」となった)

の転訛と解します。

394えさ(餌)

 鳥、獣、虫、魚などに与えて飼育するための食物。また、生き物をおびき寄せて捕らえる目的で用いる食物。人を誘惑するために与える金銭や利益など。

 この「えさ」は、

  「エア・タ」、EA-TA(ea=appear above water,rise,be brought to land,be required;ta=dash,beat,lay)、「(魚などが)食いついて・水面に上がってくるものまたは釣り上げられるもの(餌)」(「エア」の語尾のA音が脱落して「エ」と、「タ」が「サ」となった)

の転訛と解します。

395えじき(餌食)

 食物。食料。鳥獣の餌となる食物。または、餌として食われる物。餌。

 この「えじき」は、

  「エ・チキ」、E-TIKI(e=to denote action in progress or temporary condition,to denote future action or condition;tiki=fetch,go for a purpose)、「やがて・取られる(食われる)もの(餌食)」(「チキ」が「ジキ」となった)

の転訛と解します。

396えせ(似非)

 見かけはそれらしく見えるが、実はそうではないことを表す。にせもの。まやかし。備えているはずの、また備えていなければならない要素、性質、才能、技量などが欠けている、または劣っていることを表す。

 この「えせ」は、

  「エ・テ」、E-TE(e=calling attention or expressing surprise;te=not,crack(tete=figurehead of a canoe without arms or legs;whakate=squeeze fluid out of anything))、「何と・(カヌーの舳先の手足のない彫像のように)あるべきものがない偽物(似非)」(「テ」が「セ」となった)

の転訛と解します。

397えたい(得体)

 物事の本質、実態。正体。この「えたい」については雑楽篇(その二)の1104得体(えたい)の項を参照してください。

 この「えたい」は、

   「エ・タイ」、E-TAI(e=to denote action in progress or temporary condition,to give emphasis,why,of course;tai(e tai)=used only as a term of address to males or females)、「(何処の)誰かと・呼びかける(素性・正体が不明の相手。またその相手の素性・正体)」

の転訛と解します。

398えてして

 ある一定の方向になりがちな傾向を認める意を表す語。ともすると。とかく。

 この「えてして」は、

  「エテ・チテイ」、ETE-TITEI(ete=thicken in cooking(eke=generally place oneself or be placed upon another object,and so);titei=tutai=watch,spy)、「観察すると・(料理の味が濃くなるように)ある傾向がある(えてして)」(「チテイ」の語尾のI音が脱落して「チテ」から「シテ」となった)

の転訛と解します。

399えと(干支)

 (「え」は兄、「と」は弟の意)十干を五行(木、火、土、金、水)に二つづつ分けて、それぞれ陽の気を表す「え」と、陰の気を表す「と」に当て、これに十二支を順に組み合わせて六十の組み合わせをつくり、年月日、時刻、方位などを表す名称としたもの。

 この「えと」は、

  「ヘイ・ト」、HEI-TO(hei=go towards;to=drag,haul)、「先頭に立つもの(兄)と・(それに引かれる)続くもの(弟)」(「ヘイ」のH音および語尾のI音が脱落して「エ」となった)

の転訛と解します。

400えにし(縁)

 縁。ゆかり。縁故。

 この「えにし」は、

  「エ・ニヒ・チ」、E-NIHI-TI(e=to denote action in progress or temporary condition,to denote future action or condition;nihi=move stealthly,come stealthly,surprise;tithrow,cast,overcome)、「驚くことに・いつのまにか忍び寄ってきて・関係ができるもの(縁)」(「ニヒ」のH音が脱落して「ニ」と、「チ」が「シ」となった)

の転訛と解します。

401えびす(恵比寿)

 七福神の一。蛭子神とも、事代主命ともいわれる。風折り烏帽子に狩衣、指貫を着け、釣り竿で鯛を釣り上げている姿をしている。商家の福の神として祀られてきた。また、異境から訪れて陵墓要覧もたらす神。漂着する神。など。この「えびす」については雑楽篇(その一)の371あずまのひな(東夷)の項の「えびす(恵比寿)」を参照してください。

 この「えびす」は、

  「エ・ピ・ツ」、E-PI-TU(e=to denote action in progress or temporary condition,by,of the agent,to give emphasis;(Hawaii)pi=to sprinkle as water with the fingers(PPN pihi);tu=stand,settle,fight with,energetic)、「精力的に・(指で水を振り掛ける)災を除き福を授ける・(有難い)神」(「ピ」が「ビ」と、「ツ」が「ス」となった)

の転訛と解します。

402えぼし(烏帽子)

 元服した男子が用いたかぶりものの一種。

 この「えぼし」は、

  「エ・ポウ・チ」、E-POU-TI(e=to denote action in progress or temporary condition,by,of the agent,to give emphasis;pou=pole,stick in or errect a stake etc.,fix,place;ti=throw,cast)、「きちんと(威儀を正して)・縦に伸ばして・(頭に)載せたもの(烏帽子)」(「ポウ」が「ボ」と、「チ」が「シ」となった)

の転訛と解します。

403えみ(笑)

 にっこりすること。微笑。ほほえみ。また、花の咲くこと。果実が熟して外皮が割れること。

 この「えみ」は、

  「エ・ミイ」、E-MII(e=to denote action in progress or temporary condition,by,of the agent,to give emphasis;(Hawaii)mii=attractive,fine-appearing,good-looking)、「かすかに・(頬を緩めて人を魅せる)ほほえむこと(笑)」(「ミイ」が「ミ」となった)

の転訛と解します。

404えみし(蝦夷)

 上代、東日本に住み、中央政府に服さなかった部族。この「えみし」については雑楽篇(その一)の369えみし(愛彌詩。蝦夷。蝦荻。毛人)の項を参照してください。

 この「えみし」は、

  「エミ・チ」、EMI-TI(emi=be assembled,be gathered together,be ashamed;ti=throw,cast,overcome)、「(朝廷によって)征服された・(辺境で)徒党を組んでいた(者達)」(「チ」が「シ」となった)

の転訛と解します。

405えらい(偉い)

 物事の程度のはなはだしいさま。思いもかけない。苦痛などが激しくたいへんである。疲れている。物事の状態などのすぐれているさま。社会的な地位、身分が高い。行動や識見がすぐれている。

 この「えらい」は、

  「エ・ラヒ」、E-RAHI(e=to denote action in progress or temporary condition,by,of the agent,to give emphasis;rahi=great(physically or morally),abundant,numerous,multitude)、「たいへん・(身体的にも道徳的にも)ぬきんでている(偉い)」(「ラヒ」のH音が脱落して「ライ」となった)

の転訛と解します。

406えらぶ(選ぶ)

 二つ以上の対象の中から、ある目的、基準にかなうものを取り出す。選択する。くべつする。才覚ある者を抜擢する。選び集めて書物を作る。

 この「えらぶ」は、

  「エ・ラプ」、E-RAPU(e=to denote action in progress or temporary condition,by,of the agent,to give emphasis;rapu=seek,look for,apply to any one for advice,ascertain,squeeze)、「慎重に・(ある基準に適合するもの)探して確定する(選ぶ)」(「ラプ」が「ラブ」となった)

の転訛と解します。

407えり(襟)

 衣服の首の回りに当たる部分。その部分につける布。首の後ろの部分。上衣、下着を重ねて、一つに前を合わせること。

 この「えり」は、

  「エ・リ」、E-RI(e=to denote action in progress or temporary condition,by,of the agent,to give emphasis;ri=screen,protect,bind)、「(首を)きちんと・保護するもの(またはそこに付ける布。またはそれを合わせること)(襟)」

の転訛と解します。

407-2えんがちょ

 関東地方の子供の民俗で、子供が道路の牛馬や犬の糞を踏んづけたり、何か見るからに汚いものに触ったところを二人以上の子供に目撃された場合、@その触った子供が「えんがちょ」と言って他の子供に手を触れると、その子供に汚れが移るとされ、また、A汚れを移されていない子供が「えんがちょ」と言って指を切る仕草をすれば、汚れを持った子供は汚れを他に移せなくなって「えんがちょ」「えんがちょ」と囃し立てられながら自宅に帰らなければならなくなる遊びである。

 この「えんがちょ」は、

  「エ(ン)ガ・チホイ」、ENGA-TIHOI(enga=anxiety;tihoi=diverge,go to distance,turn aside,wander)、@「(心配なもの)汚れが・(傍ら(の手を触れた子供)に)移ったよ(えんがちょ)」または@「(心配なもの)汚れが・(回りの子供がみんな指を切ったため、移せる相手が居なくなって)うろうろしているよ(えんがちょ)」(「エ(ン)ガ」が「エンガ」と、「チホイ」のH音および語尾のI音が脱落して「チオ」から「チョ」となった)

の転訛と解します。

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「オ」

408おあし(御銭)

 (もと女性語で「金銭」の丁寧語)貨幣の総称。とくに穴あき銭をいうことが多い。

 この「おあし」、「」は、

  「オ・カチ」、O-KATI(o=the...of;kati=bite,nip(kakati=grip,nip,tie in bundle))、「例の・(穴の開いた金属の小片)貨幣(御銭)」(「カチ」のK音が脱落して「アチ」から「アシ」となった)

の転訛と解します。

409おい(甥)

 自分の兄弟姉妹の産んだ男の子。

 この「おい」は、

  「オヒ」、OHI(grow,be vigorous,applied to childhood)、「(兄弟姉妹の)元気な男の子(甥)」(「オヒ」のH音が脱落して「オイ」となった)

の転訛と解します。

410おいえ(座敷)

 貴人、大名などの家の敬称。主人、主君の家、転じて他人の家の敬称。家の中の床張りの部分。また、畳敷きの部屋、居間。良家の主婦の呼称。芸能の家元など。

 この「おいえ」は、

  「オ・イ・ヘイ」、O-I-HEI(o=the...of;i=past tense,beside,from,with,by,at,belonging to;hei=tie round the neck,snare by the neck,be bound or entangled)、「例の・(人がそれぞれの事情でそこに)縛り付けられて・いるもの(家。座敷)」(「ヘイ」のH音および語尾のI音が脱落して「エ」となった)

の転訛と解します。

411おいしい(美味しい)

 物の味がよい。うまい。物事が好ましい状態である。自分にとって都合がよい。

 この「おいしい」は、

  「オイ・チヒ」、OI-TIHI(oi=heoi=denoting completeness or sufficiency of a statement or enumeration,implying that what followsis the natural result of what has just been stated,but,however;tihi=summit,top,peak,lie in a heap)、「最高に・(食物の味など、物事の状態が)好ましい(美味しい)」(「チヒ」のH音が脱落して「チイ」から「シイ」となった)

の転訛と解します。

412おいそれと

 依頼、必要に応じて簡単に事をするさま。すぐに。右から左に。

 この「おいそれと」は、

  「アウヒ・トレ・ト」、AUHI-TORE-TO(auhi=be hindered,be distressed,grief,anxiety;tore=burn,blaze,be errect,used of showing warlike feelings,inflamed of the eyes,quick or keen of the eyesight;to=drag,haul)、「悲しみに沈んでいる(状態)を・やる気満々(の状態)に・引っ張ってくる(おいそれと)」(「アウヒ」のAU音がO音に変化し、H音が脱落して「オイ」と、「トレ」が「ソレ」となった)

の転訛と解します。

413おいて(於いて)

 動作、作用の行われる場所、時間などを示す。・・で。・・にあって。事物、人物などについて、それに関連することを示す。・・に関して。・・について。仮定の条件を示す。・・の場合には。

 この「おいて」は、

  「オヒア・テ」、OHIA-TE(ohia=long after,approve,think on the spur of the moment;te=to make an emphatic statement)、「(ある特定の事象が生ずる)時点の(まさに頂点で考える)・こと(おいて)」(「オヒア」のH音および語尾のA音が脱落して「オイ」となった)

  または「オイ・テ」、OI-TE(oi=heoi=denoting completeness or sufficiency of a statement or enumeration,implying that what followsis the natural result of what has just been stated,but,however;te=to make an emphatic statement)、「(ある事象の完結がどんな)結果をもたらす・こと(おいて)」

の転訛と解します。

414おいてきぼり(置いてきぼり)

 後に残るものを見捨てて、立ち去ること。置き去りにすること。江戸本所にあった「置いてけ掘」からとする説がある。

 この「おいてきぼり」は、

  「アウヒ・テキ・ポリ」、AUHI-TEKI-PORI(auhi=be hindered,be distressed,grief,anxiety;teki=outer fence of a stockade;pori=people,dependant,tribe)、「城柵の外側に(放置されて)・嘆き悲しんでいる・人達(置いてきぼり)」(「アウヒ」のAU音がO音に変化し、H音が脱落して「オイ」と、「ポリ」が「ボリ」となった)

の転訛と解します。

415おいど(お尻)

 「おしり」をいう女性語。

 この「おいど」は、

  「オ・イ・タウ」、O-I-TAU(o=the...of;i=past tense,beside,with,by,by reason of;tau=come to rest,aettle down,be suitable)、「(体の中の)腰を・下ろす・ところ(部分。お尻)」(「タウ」のAU音がO音に変化して「ト」から「ド」となった)

の転訛と解します。

416おいらく(老いらく)

 歳を取り、老いてゆくこと。老い。老年。転じて、年をとってから、安楽な生活にはいること。

 この「おいらく」は、

  「オイ・ラハ・ク」、OI-RAHA-KU(oi=grow,abundant;raha=open,extended;ku=silent,wearied,exhausted)、「(成長が・進んで)年を・取って・疲れ果てた(状態。おいらく)」(「ラハ」のH音が脱落して「ラ」となった)

の転訛と解します。

417おいらん(花魁)

 (江戸吉原で妹分の女郎や禿が、姉女郎を「おいらの(姉女郎)」と呼んだことからとする説がある)姉女郎。転じて、位の高い遊女の称。普通、部屋持ち以上の遊女にいう。また、一般の女郎。

 この「おいらん」は、

  「オヒア・ラ(ン)ガ」、OHIA-RANGA(ohia=long after,approve,think on the spur of the moment;ranga=raise,ridge of a hill,company of persons)、「仲間の・頂点に登りつめた(女郎)」または「(仲間の中で)高い地位に登りたいと・切望している(女郎)」(「オヒア」のH音および語尾のA音が脱落して「オイ」と、「ラ(ン)ガ」のNG音がN音に変化して「ラナ」から「ラン」となった)

の転訛と解します。

418おうぎ(扇)

 手に持って振り、風を送る道具。

 この「おうぎ」は、

  「ホウ・(ン)ギア」、HOU-NGIA(hou=feather,tail feather;ngia=seem,appear to be)、「注ェ(を束ねたもの)に・似ているもの(扇)」(「ホウ」のH音が脱落して「オウ」と、「(ン)ギア」のNG音がG音に変化し、語尾のA音が脱落して「ギ」となった)

の転訛と解します。

419おうな(女。媼)

 女。女性。特に、若い女。また、年老いた女。老女。(以上は「おみな」の転とする説があります。)この「おうな(媼)」については国語篇(その十三)の001翁(おきなの項の「媼(おうな)」の解釈を、「おみな(女。媼)」については、本篇の568おみなの項および国語篇(その五)の209おみなえし(女郎花)の項の「おみな」を参照してください。

 この「おうな」は、

  「ホウ・ナ」、HOU-NA(hou=new recent,fresh,distant)、「(新鮮な)若い・類(たぐい)の(女。若い女)」または「(久しく隔たった)年を取った・類(たぐい)の(女。媼)」(「ホウ」のH音が脱落して「オウ」となった)または「オウ・ナ」、OU-NA((Hawaii)ou=hump up:na=satisfied,indicate position near,belonging to)、「(老いて)背が曲がっ・た(者。媼)」

の転訛と解します。

420おうへい(横柄)

 おごり高ぶって、人を見下げたり無視したりする態度をとること。威張って無礼であること。傲慢。尊大。

 この「おうへい」は、

  「ホウ・ヘイ」、HOU-HEI(hou=enter,force downwards or under,persist;hei=tie round the neck,be bound or entangled)、「(人を)押さえつけて・当惑させる(横柄)」(「ホウ」のH音が脱落して「オウ」となった)

の転訛と解します。

421おうよう(大様、鷹揚)

 ゆったりとして威厳があること。小さなことにこだわらないで、おっとりしているさま。動作のゆっくりしているさま。

 この「おうよう」は、

  「オウ・イ・ハウ」、OU-I-HAU(uo,ouou=few;i=past tense,beside,with,by,by reason of;hau=eager,brisk,seek,project,exceed,excess)、「丹念に詮索・することが・殆どない(大様。鷹揚)」(「ハウ」のH音が脱落し、AU音がOU音に変化して「オウ」となり、「イ・オウ」が「ヨウ」となった)

の転訛と解します。

422おおきい(大きい)

 空間を占める容積や面積が大である。年長である。音量が大きい。数量が多い。重大である。

 この「おおきい」は、

  「オホ・キ・イ」、OHO-KI-I(oho=start feom fear,wake up,arise;ki=full,very;i=past tense,beside,with,by,by reason of)、「十分に・(立ちはだかるように)大きく・なっている(大きい)」(「オホ」のH音が脱落して「オオ」となった)

の転訛と解します。

423おおきに(大きに)

 @はなはだ。たいそう。大いに。大様に。まさしく。まさに。

 A(関西で礼の言葉)どうもありがとう。

 この「おおきに」は、

  @「オホ・キ・ヌイ」、OHO-KI-NUI(oho=start feom fear,wake up,arise;ki=full,very;nui=large,many)、「十分に・(立ちはだかるように)大きく・多い(大きに)」(「オホ」のH音が脱落して「オオ」と、「ヌイ」が「ニ」となった)

  A「オ・ホキ・ニヒ」、O-HOKI-NIHI(o=the...of;hoki=return,restorative charm;nihi=move stealthly,come stealthly upon,surprise)、「例の(貴方のご厚意に対する)・(神からの)ご褒美が・(そっとやってくる)ありますように(おおきに)」(「ホキ」のH音が脱落して「オキ」と、「ニヒ」のH音が脱落して「ニ」となった)

の転訛と解します。

424おおこわ

 なんと恐ろしい。

 この「おおこわ」は、

  「オホ・カウア」、OHO-KAUA(oho=start feom fear,wake up,arise;kaua=a large kind of caterpillar)、「大きな毛虫(が出てきて)・恐ろしい(おおこわ)」(「オホ」のH音が脱落して「オオ」と、「カウア」のAU音がOU音に変化して「コウア」から「コワ」となった)

の転訛と解します。

425おおせ(仰せ)

 上位者のいいつけを敬っていう。おいいつけ。御命令。おっしゃること。おことば。

 この「おおせ」は、

  「オホ・テ」、OHO-TE(oho=start feom fear,wake up,arise,begin speaking;te,tete=exert oneself,gnash teeth)、「権力を行使して・しゃべる(仰せ)」(「オホ」のH音が脱落して「オオ」と、「テ」が「セ」となった)

の転訛と解します。

426おおっぴら

 遠慮や隠し立てをしないこと。表だったさま。公然。

 この「おおっぴら」は、

  「オホ・ピララ」、OHO-PIRARA(oho=start feom fear,wake up,arise,begin speaking;pirara=separated,scattered,divided,wide apart,gaping,branching,dishevelled)、「(立ち上がる)明らかになって・知れ渡る(おおっぴら)」(「オホ」のH音が脱落して「オオ」から「オオッ」と、「ピララ」の反覆語尾が脱落して「ピラ」となった)

の転訛と解します。

427おおむこう(大向こう)

 劇場で、舞台から見て正面の当たる観客席後方の料金の安い立見席。

 この「おおむこう」は、

  「オホ・ムア・コウ」、OHO-MUA-KOU(oho=start feom fear,wake up,arise,begin speaking;mua=the front,the fore part,the former,the past;kou=knob,stump,protuberance)、「(立ち上がる)立っている・(舞台の)前の・(突起している)やたら目立つ(連中。)」(「オホ」のH音が脱落して「オオ」と、「ムア」の語尾のA音が脱落して「ム」となった)

の転訛と解します。

428おおや(大家)

 大きな家。一族の中心となる家。本家。(物置、納屋などに対して)家人が住居とする建物。母屋。貸家の持ち主またはその代理人。差配人。

 この「おおや」は、

  「オホ・イア」、OHO-IA(oho=start feom fear,wake up,arise,begin speaking;ia=indeed)、「実に・(立ち上がる)大きな(威圧感がある。家。本家。母屋。または高姿勢の(人。貸家の持ち主またはその代理人)」(「オホ」のH音が脱落して「オオ」と、「イア」が「ヤ」となった)

の転訛と解します。

429おおやけ(公)

 大きな家。屯倉などの大きな建造物。朝廷、政府、官庁、幕府。天皇。皇后。国家。社会。好適なこと。表だったこと。など。

 この「おおやけ」は、

  「オホ・イ・アケ」、OHO-I-AKE(oho=start feom fear,wake up,arise,begin speaking;i=past tense,beside,with,by,at;ake=from below,upwaeds,qualify the action or condition of that which is in the superior position)、「(立ち上がる)堂々とした・(他に)優越して・いる(公)」(「オホ」のH音が脱落して「オオ」と、「イ・アケ」が「ヤケ」となった)

の転訛と解します。

430おおよそ(大凡)

 大きく一つにまとめられた全体。細部にこだわらず大まかなところを把握すること。この「おおよそ」については国語篇(その十四)の024おおよそ(大凡)の項を参照してください。

 この「おおよそ」は、

   「オホ・イホ・タウ」、OHO-IHO-TAU(oho=wake up,arise;iho=up above,from above;tau=turn away,look in another direction)、「高い・見地から・(物事を)概観する(凡そ)」(「オホ」のH音が脱落して「オオ」と、「イホ」のH音が脱落して「イオ」から「ヨ」と、「タウ」のAU音がO音に変化して「ト」から「ソ」となった)

の転訛と解します。

431おおわらわ(大童)

 @年長者で理髪をせず、加冠しないままに幼童の姿を残している姿。髪の結びが解けて垂れ下がること。武士が戦場で兜を失い、髪ほ頬や肩に垂らした姿になること。

 A事に臨んで一生懸命に活動するさま。夢中になって事をするさま。

 この「おおわらわ」は、

  @「オホ・ウア・ラハ」、OHO-UA-RAHA(oho=start feom fear,wake up,arise,begin speaking;ua=backbone,neck,back of the neck;raha=open,extended)、「(立ち上がる)年長で堂々と・(髪を結ばずに)後ろに・垂らしている(人。大童)」(「オホ」のH音が脱落して「オオ」と、「ウア」が「ワ」と、「ラハ」が「ラワ」となった)

  A「オホ・ウアウア・ラワ」、OHO-UAUA-RAWA(oho=start feom fear,wake up,arise,begin speaking;uaua=sinew,vein,firmness,strenuous,vigorous;rawa=quite,very,indently,carefuly,permanently,really,indeed)、「(立ち上がる)堂々と・極めて・精力的に活動する(人。大童)」(「オホ」のH音が脱落して「オオ」と、「ウアウア」の反覆語尾が脱落して「ウア」から「ワ」となった)

の転訛と解します。

432おか(丘、岡)

 土地の小高くなったところ。低い山。台地になつたところ。

 この「おか」は、

  「オ・カハ」、O-kAHA(o=the...of;kaha=lashings of the bulwark of a canoe,edge,ridge of a hill)、「あの・(周囲に)塁壁を巡らしたような高まり(丘。岡)」(「カハ」のH音が脱落して「カ」となった)

の転訛と解します。

433おかあさん(お母さん)

 母を敬い親しんで言う語。

 この「おかあさん」は、

  「オ・カ・タナ」、O-KA-TANA(o=the...of;ka=take fire.be lighted,burn;tana=his,her,its)、「あの・炊事など火を燃やす(管理する)・彼女(お母さん)」(「カ」が「カア」と、「タナ」が「サン」となった)

の転訛と解します。

434おかがみ(お鏡)

 鏡の尊敬・丁寧語。また、鏡餅。この「かがみ(鏡)」については雑楽篇(その一)の368かがみ(鏡)の項を参照してください

 この「おかがみ」は、

  「オ・カ(ン)ガ・ミヒ」、O-KANGA-MIHI(o=the...of;kanga-curse,abuse,execrate;mihi=sigh for,greet,admire)、「人に呪(のろい)を掛ける・恐るべきもの(鏡)」(「カ(ン)ガ」のNG音がG音に変化して「カガ」と、「ミヒ」のH音が脱落して「ミ」となった)

の転訛と解します。

435おかき(煎餅)

 欠(かき)餅。元来は鏡餅を欠いて食べたのにはじまるが、現代では米や小麦粉で作ったせんべいもいう。

 この「おかき」は、

  「オ・カハキ」、O-KAHAKI(o=the...of;kahaki=remove by force,continue a line)、「例の・(鏡餅を)欠いたようなもの(煎餅)」(「カハキ」のH音が脱落して「カキ」となった)

の転訛と解します。

436おがくず(大鋸屑)

 大鋸や鋸で材木などを挽いたときに出るくず。

 この「おがくず」は、

  「アウ(ン)ガ・クク・ツ」、AUNGA-KUKU-TU(aunga=not including;kuku=nip,anything used as pncers or tweezers;tu=stand,settle,fight with,energetic)、「懸命に・(鋸で木材を)挽いてできた・(中味がない)滓のようなもの(大鋸屑)」(「アウ(ン)ガ」のAU音がO音に、NG音がG音に変化して「オガ」と、「クク」の反覆語尾が脱落して「ク」と、「ツ」が「ズ」となった)

の転訛と解します。

437おかげさま(お陰様)

 人の好意や親切などに対して感謝の気持ちを表すことば。

 この「おかげさま」は、

  「オ・カハ・(ン)ガイ・タ・マ」、O-KAHA-NGAI-TA-MA(o=the...of;kaha=a general term for several charms used when fishing or snaring birds etc.;ngai=tribe or clan;ta=stand,settle;ma=white,clear)、「例の・(物事の)成功のまじないの・類を・清らかに・行った(貴方様のお陰。お陰様)」(「カハ」のH音が脱落して「カ」と、「(ン)ガイ」のNG音がG音に、AI音がE音に変化して「ゲ」と、「タ」が「サ」となった」)

の転訛と解します。

438おかしい(可笑しい)

 @普通と違って笑うべきさまである。滑稽でおもしろおかしい。軽蔑の笑いをおぼえるさまである。

 A普通と違って格別の趣があるさま。普通の状態ではないものに対して、いぶかしさや奇異を感ずるさま。

 この「おかしい」は、

  @「オ・カカハ・チヒ」、O-KAKAHA-TIHI(o=the...of;kakaha=laughing owl;tihi=summit,top,lie in a heap)、「例の・高い所に止まっている・笑い梟(ふくろう)のように(可笑しい)」(「カカハ」の反覆語頭およびH音が脱落して「カ」と、「チヒ」のH音が脱落して「シイ」となった)

  A「オ・カチ・イヒ」、O-KATI-IHI(o=the...of;kati=leave off,so be it,well,enough,block up,prevent,shut,bite nip;ihi=split,separate,charm,shudder,coward)、「例の・他のものと(別れて)違って・良いものだ(おかしい)」または「例の・他のものと(別れて)違って・(対応を妨害する)いぶかしさを感ずる(おかしい」(「カチ」が「カシ」となり、その語尾のI音と「イヒ」の語頭のI音が連結し、H音が脱落して「カシイ」となった)

の転訛と解します。

439おかす(犯す)

 邪魔になる物事を乗り越える。押し切って行う。悪事を行う。他の者の権利などを侵害する。

 この「おかす」は、

  「オ・カハ・ツ」、O-KAHA-TU(o=the...of;kaha=strong,strength,persistency;tu=stand,fight with,be hit,be wound)、「例の・(強く)力で・害を与える(犯す)」(「カハ」のH音が脱落して「カ」と、「ツ」が「ス」となった)

の転訛と解します。

440おかず(お菜)

 飯の菜。副食物。この「おかず」については国語篇(その十四)の025おかず(お菜)の項を参照してください。

 この「おかず」は、

   「オ・カツア」、O-KATUA(o=the...of;katua=adult,main portion of anything)、「例の・食事の主要部分(おかず)」(「カツア」の語尾のA音が脱落して「カツ」から「カズ」となつた)(古い時代の庶民の食事は、現在のように主食と副食の区別が明確ではなかったと考えられます。)

の転訛と解します。

441おかたさま(お方様)

 他人の妻を敬ってしう語。お内儀さま。

 この「おかたさま」は、

  「オ・カ・アタ・タ・マ」、O-KA-ATA-TA-MA(o=the...of;ka=take fire.be lighted,burn;ata=gently,deliverately,cautiously,quite;ta=stand,settle;ma=white,clear)、「あの・立派に・炊事など火を燃やす(家事を管理する)・清らかに・坐す(人。お方様)」(「カ」のA音と「アタ」の語頭のA音が連結して「カタ」と、「タ」が「サ」となった)

の転訛と解します。

442おかっぱ(お河童)

 (河童の頭髪に似ているところから)前髪は眉の上で、横、後ろは首筋で切りそろえた断髪。また、そのような髪形。この「かっぱ(河童)」については雑楽篇(その一)の259河童の項を参照してください

 この「おかっぱ」は、

  「オ・カ・ツパ」、O-KA-TUPA(o=the...of;ka=when,as soon as,should;tupa=escape)、「例の・(姿を見られると)直ぐに・逃げる(動物。河童)のような(髪形。お河童)」(「ツパ」が「ッパ」となった)

の転訛と解します。

443おかっぴき(岡っ引き)

 近世、町奉行所の同心に私的に召し抱えられて、犯罪人の探索、逮捕の役に当たった者。目明かし。

 この「おかっぴき」は、

  「オ・カツア・ピキ」、O-KATUA-PIKI(o=the...of;katua=adult,main portion of anything;piki=second,assistant,helper in work)、「例の・(犯罪捜査の主体)業務を司る(官吏の)・助手(岡っ引き)」(「カツア」の語尾のA音が脱落して「カツ」から「カッ」となつた)

の転訛と解します。

444おかばしょ(岡場所)

 (吉原に対して「おか(岡)」すなわち「脇の」場所の意とされる)江戸で閑居の吉原以外の品川、新宿、板橋、千住などの私娼街の総称。

 この「おかばしょ」は、

  「アウカハ・パ・チオフ」、AUKAHA-PA-TIOHU(aukaha=lashings of the bulwark of a canoe,string as fern root or timber;pa=stockade,fortified place;tiohu=stoop)、「一連の(または(カヌーの舷側の波よけ板のように)脇にある)・品位(を落とした)のない・(周囲を塀で囲んだ)場所(岡場所)」(「アウカハ」のAU音がO音に変化し、H音が脱落して「オカ」と、「パ」が「バ」と、「チオフ」のH音が脱落して「チオ」から「ショ」となった)

の転訛と解します。

445おかま(男色)

 尻、とくに男の尻をいう。転じて男色。また、相手の男性。

 この「おかま」は、

  「オカ・ママ」、OKA-MAMA(oka=prick.stab;mama=ooze through small apertures,leak,kidney)、「(尿・便などを)漏らす(尻の穴に)・(例のものを)差し込むこと(男色)」(「ママ」の反覆語尾が脱落して「マ」となつた)

の転訛と解します。

446おかみさん(お上さん)

 公家の夫人を敬って呼ぶ語。他人の妻を敬って呼ぶ語。他家の年老いた妻。

 この「おかみさん」は、

  「オ・カ・ミヒ・タ・マ」、O-KA-MIHI-TA-MA(o=the...of;ka=take fire.be lighted,burn;mihi=sigh for,greet,admire;ta=stand,settle;ma=white,clear)、「あの・尊敬すべき・炊事など火を燃やす(家事を管理する)・清らかに・坐す(人。お方様)」(「ミヒ」のH音が脱落して「ミ」と、「タ」が「サ」となった)

の転訛と解します。

447おがむ(拝む)

 貴人の前で身を折り曲げて礼をする。拝礼する。手を合わせて神仏などに祈る。目上の人に拝顔する。懇願する。嘆願する。

 この「おがむ」は、

  「アウ(ン)ガ・アム」、AUNGA-AMU(aunga=not including;amu=grumble,begrudge,complain)、「意味のないことを・ぶつぶつ言う(拝む)」(「アウ(ン)ガ」のAU音がO音に、NG音がG音に変化して「オガ」となり、その語尾のA音と「アム」の語頭のA音が連結して「オガム」となった)

の転訛と解します。

448おかめはちもく(岡目八目)

 (局外から他人の囲碁を見ると、打っている人より形成がよく分かる意から)局外から観察する者のほうが、当事者よりかえって物事の真相や利害得失がはっきりわかることの例え。(縄文語による解釈では、下記の通り通説とは異なる意味です。「八目」を漢語由来の語(八つの目)として解釈すれば、通説の意となります。)

 この「おかめはちもく」は、

  「アウカハ・メイ・メ・パチ・モク」、AUKAHA-MEI-ME-PATI-MOKU(aukaha=lashings of the bulwark of a canoe,string as fern root or timber;mei=according to,judging by;me=thing;pati=try to obtain by coaxing,flattery,etc.;moku=few,little)、「(カヌーの舷側の波よけ板のように)脇にいる(人の)・物を・(見て)判断するもの(眼)では・(対局者を)喜ばす(助言する)ことは・殆どできない(岡目八目)」(「アウカハ」のAU音がO音に変化し、H音が脱落して「オカ」と、「メイ」のI音が脱落して「メ」となり、「メ・メ」が「メ」と、「パチ」のP音がF音を経てH音に変化して「ハチ」となった)

の転訛と解します。

449おから(御殻)

 (豆腐の原料の)大豆のしぼりかす。もと女房詞。

 この「おから」は、

  「アウ(ン)ガ・アライ」、AUNGA-ARAI(aunga=not including;arai=screen,block up,obstruct,hinder)、「中味がない(滓で)・邪魔になるもの(おから)」(「アウ(ン)ガ」のAU音がO音に、NG音がG音に変化して「オガ」となり、清音化して「オカ」となったその語尾のA音と「アライ」の語頭のA音が連結して「オカライ」となり、語尾のI音が脱落して「オカラ」となった)

の転訛と解します。

450おき(沖)

 海、湖、川などの陸地から遠いほう。田畑の人里から遠く開けたところ。

 この「おき」は、

  「オキ」、OKI((Hawaii)to cut,separate)、「(岸、人里から遠く)離れたところ(沖)」

の転訛と解します。

451おき(熾)

 (熾火の略)消し炭。

 この「おき」は、

  「オキオキ」、OKIOKI(rest,pause((Hawaii)oki=finish,end,extraordinary))、「(薪が燃えた後)休憩しているもの(消し炭)」(「オキオキ」の反覆語尾が脱落して「オキ」となった)

の転訛と解します。

452おきて(掟)

 公に定められた規定。法律。法度。法制。取り決め。約束事。いましめ。しきたり。風習。

 この「おきて」は、

  「オ・キ・テ」、O-KI-TE(o=the...of;ki=full,very;te=not)、「例の・(してはならないという)禁止(規定)が・たくさんあるもの(掟)」

の転訛と解します。

453おきな(翁)

 年老いた男。この「おきな(翁)」については国語篇(その十三)の001翁(おきな)の項を参照してください。

 この「おきな」は、

  「オキ・ナ」、OKI-NA((Hawaii)oki=to stop,finish;na=satisfied,indicate position near,belonging to)、「(人生の)終わりに・近い(者。翁 )」

の転訛と解します。

454おぎなう(補う)

 不足を満たす。欠けているものを付け加える。補う。相手に与えた損害、罪などの埋め合わせをする。償う。

 この「おぎなう」は、

  「オ・(ン)ギア・ナウナウ」、O-NGIA-NAUNAU(o=the...of;ngia=seem,appear to be;naubau=take up)、「例の・(緩みを引き締める)本来あるべき状態に戻す・ことに似た行為をする(補う)」(「(ン)ギア」のNG音がG音に変化し、語尾のA音が脱落して「ギ」と、「ナウナウ」の反覆語尾が脱落して「ナウ」となった)

の転訛と解します。

455おきゃん(お侠)

 若い女が活発すぎて軽はずみなこと。また、そのような娘。お転婆。この「おきゃん(お侠)」については国語篇(その十四)の033おてんば(お転婆)の項の「おきゃん」を参照してください。

 この「おきゃん」は、

  「オ・キ・ア(ン)ギ」、O-KI-ANGI(o=the...of;ki=full,very;angi=free,without hindrance,move freely)、「例の・全く・勝手気ままに振る舞う(娘。おきゃん)」(「ア(ン)ギ」のNG音がN音に変化して「アニ」から「アン」となり、「キ・アン」が「キャン」となつた)

の転訛と解します。

456おきる(起きる)

 横になっていたものが立つ。傾いていたものがもとの状態にもどる。眠っていたものが目覚める。また、目覚めて立つ。

 この「おきる」は、

  「アウキ・ル」、AUKI-RU(auki=old,of long standing;ru=shake,agitate,scatter)、「奮って・(長時間立つために)立ち上がる(起きる)」(「アウキ」のAU音がO音に変化して「オキ」となった)

の転訛と解します。

457おく(奥)

 入り口や表などから遠く入ったところ。奥まったところ。建物の内部で外面から遠い部分。身分の高い者の妻。内密なこと。心の底。など。

 この「おく」は、

  「オ・クフ」、O-KUHU(o=the...of;kuhu=thrust in,insert,conceal)、「例の・(入り口や表などから)遠く入り込んだところまたは隠れているところ(奥)」(「クフ」のH音が脱落して「ク」となった)

の転訛と解します。

458おくさま(奥様)

 公家の内室、大名の正妻など、身分ある人の妻をうやまって呼ぶ語。のちに上流の武家や富商の妻などにもいいね現在は広く一般に用いられる。

 この「おくさま」は、

  「オ・クフ・タ・マ」、O-KUHU-TA-MA(o=the...of;kuhu=thrust in,insert,conceal;ta=stand,settle;ma=white,clear)、「例の・(家の中の)遠く入り込んだ奥に・清らかに・座している(人。奥様)」(「クフ」のH音が脱落して「ク」と、「タ」か「サ」となった)

の転訛と解します。

459おくのて(奥の手)

 技芸などの秘訣。とっておきの手段、方法。

 この「おくのて」は、

  「オ・クフ・ノ・テ」、O-KUHU-NO-TE(o=the...of;kuhu=thrust in,insert,conceal;no=of;te=crack)、「例の・(入り口や表などから遠く入り込んだ奥の)普段は隠している・(ところ)の・(指が分かれている)手(手段、方法など。奥の手)」(「クフ」のH音が脱落して「ク」となった)

の転訛と解します。

460おくび

 胃の中のガスが口の外へ出るもの。げっぷ。また、あくび。

 この「おくび」は、

  「オ・クフ・ピヒ」、O-KUHU-PIHI(o=the...of;kuhu=thrust in,insert,conceal;pihi=spring up,begin to grow)、「例の・(胃や肺の中の)遠く入り込んだ奥から・湧き上がってくるもの(おくび)」(「クフ」のH音が脱落して「ク」と、「ピヒ」のH音が脱落して「ピ」から「ビ」となった)

の転訛と解します。

461おくみ(衽)

 和服の左右の前身頃の前襟から裾まで縫い付ける、半幅の細長い布。

 この「おくみ」は、

  「オ・クフ・ミイ」、O-KUHU-MII(o=the...of;kuhu=thrust in,insert,conceal;(Hawaii)mii=attractive,fine-appearing,good-looking)、「例の・(和服の襟から裾まで)遠く入り込んだ・(和服を)美しく見せるもの(衽)」(「クフ」のH音が脱落して「ク」と、「ミイ」の反覆語尾が脱落して「ミ」となった)

の転訛と解します。

462おくゆかしい(奥床しい)

 その奥にあるものに心が惹かれる。深い心遣いが見えてねなんとなく慕わしい。深い思慮があるようにみえる。上品で深みがあり、心惹かれる。

 この「おくゆかしい」は、

  「オ・クイ・ウカ・チヒ」、O-KUI-UKA-TIHI(o=the...of;kui=weak,cowardly,stunted;uka=hard,firm,be fixed;tihi=summit,top,lie in a heap)、「例の・最高に・すべて控えめに行動することが・身に付いている(さま。奥床しい)」(「クイ・ウカ」が「クユカ」と、「チヒ」のH音が脱落して「チイ」から「シイ」となった)

の転訛と解します。

463おくる(送る。贈る)

 自分のところにあり、または自分の自由になるものを手許から離して他へ移す。去って行く人を見守ってついて行く。時を過ごす。恩返し、償いなどを果たす。

 この「おくる」は、

  「オ・ク・ウル」、O-KU-URU(o=the...of,provision for a journey;ku=silent,wearied,make a low inarticulate sound;uru=enter,possess as a familiar spirit,associate oneself with,participate in,become accessory to an action,reach a place)、「(旅立つ人への)旅行に必要な品を・低い声で挨拶をして・(相手の所有とする)渡す(送る。贈る)」または「(旅立つ人への)旅行に必要な品を(持って)・疲れに憔悴しながら・(別れの場所または目的地まで)ついて行く(送る。贈る)」または「(死者の)あの世への旅立ちに必要な品を(持って)・疲れに憔悴しながら・(葬送の場所まで)ついて行く(送る。贈る)」(「ク」の語尾のU音と「ウル」の語頭のU音が連結して「クル」となった)

の転訛と解します。

464おけ(桶)

 杉またはさわらの細長い板を縦に並べ併せて輪にして底をつけ、箍で締めた円い器。(「オ(麻)ケ(笥)」からとする説がある。)この「おけ(桶)」については雑楽篇(その二)の1042漏斗(じょうご)の項の「桶(おけ)」を参照してください。

 この「おけ」は、

  「アウアウ・カイ」、AUAU-KAI(auau=frequently,basket of seed potatoes;kai=eat,food)、「食物を・入れる容器(桶)」(「アウアウ」のAU音がO音に変化し、反復語尾が脱落して「オ」と、「カイ」のAI音がE音に変化して「ケ」となった)

の転訛と解します。

465おけらまいり(白朮参り)

 京都八坂神社のおけら祭りに参詣すること。

 この「おけらまいり」は、

  「オケ・ラハ・マイ・イリ」、OKE-RAHA-MAI-IRI(oke=struggle,wriggle,strive,be eager;raha=great,abundant;mai=to indicate direction or motion towards;iri=a spell to influence,attract,or render visible one at a distance,affect with such a spell)、「何回も何回も・(のたうち回るように火縄を)くるくる廻す(斎火を持って帰る)・(無病息災を)祈念する(おまじないのために)・(神社へ)行く(行事。オケラ参り)」(「ラハ」のH音が脱落して「ラ」となった)

の転訛と解します。

466おける(於ける)

 動作、作用が行われる場所、時間などを示す。…においての。…にあっての。両者の関係を示す。…に対する。

 この「おける」は、

  「オ・ケ・ヘル」、O-KE-HERU(o=the...of;ke=different,strange,in or to a different place ,in a different direction,at a different time;heru=begin to flow,glide as anything floating in the water)、「例の・(動作、作用などが)動き出す・その場所または時間(於ける)」(「ケ」のE音と、「ヘル」のH音が脱落して「エル」となったその語頭のE音が連結して「ケル」となった)

の転訛と解します。

おこし(興)

 もち米を蒸して乾かし煎つたものに、水飴、砂糖、蜜をまぶして固めた菓子。  この「おこし」は、

  「オ・コチ」、O-KOTI(o=the...of;koti=spurt out,flow,come inti blume)、「例の・(煎ったために)膨らんだ(米または粟で作った菓子。おこし)」(「コチ」が「コシ」となった)

の転訛と解します。

467おこそずきん(御高祖頭巾)

 (御高祖(日蓮上人)の像の頭巾に似ているところからとされる)目の部分だけ残して、頭や他の部分を全部包む防寒頭巾。

 この「おこそずきん」は、

  「オ・(ン)ゴト・ツ・フキ(ン)ガ」、O-NGOTO-TU-HUKINGA(o=the...of;ngoto=head;tu=stand,settle;hukinga=huki=transfix,stick in as feathers in hair,glance suddenly)、「例の・頭を・包む・(人をちらっと見る)目の部分だけが開いている(頭巾。御高祖頭巾)」(「(ン)ゴト」のNG音がG音に変化た「ゴト」が清音化して「コト」から「コソ」と、「ツ」が「ズ」となったその語尾のU音と、「フキ(ン)ガ」のH音が脱落し、NG音がN音に変化して「ウキナ」から「ウキン」となったその語頭のU音が連結して「ズキン」となった)

の転訛と解します。

468おこたる(怠る)

 しなくてはならないコトをしないで、なまける。精を出さないでいる。油断する。いい加減にして、過失を犯す。

 この「おこたる」は、

  「オコ・タル」、OKO-TARU((Hawaii)oko=to move ahead of others,to try to be better than others;taru=thing,sometimes with an idea of disparagement or unpleasantness involved)、「(人の)先頭に立って模範となるような行動をすることについて・悪評がある(怠る)」

の転訛と解します。

469おこない(行い)

 行うこと。行動。ふるまい。仏事勤行。特に、年頭の修正会、修二会。神事を勤めること。年頭または春先に村々で行われる祈祷行事。人の品行。

 この「おこない」は、

  「オコ・ナイ」、OKO-NAI((Hawaii)oko=to move ahead of others,to try to be better than others;nai=nei,neinei=stretched forward,reaching out)、「(人の)先頭に立って模範となるような行動をすることについて・進んで行うこと(行い)」

の転訛と解します。

470おこり(瘧)

 間欠熱の一種。悪寒、発熱が隔日または毎日時を定めて起こる病気。

 この「おこり」は、

  「オ・コリ」、O-KORI(o-the...of;kori=move,wriggle,bestir oneself,use action in oratory)、「例の・のたうち、身もだえする(病気。瘧)」

の転訛と解します。

471おごる(奢る)

 人に優越した自分の立場を当然と思う。必要以上に贅沢をする。転じて、自分のカネで飲食や物品を他人にふるまう。

 この「おごる」は、

  「アウ(ン)ガ・ウル」、AUNGA-URU(aunga=not including;uru=uru=enter,possess as a familiar spirit,associate oneself with,participate in,become accessory to an action,reach a place(whakauru=join,aid,assist))、「(財布が)空の(人に)・(援助)合力する(奢る)」(「アウ(ン)ガ」のAU音がO音に、NG音がG音に変化して「オガ」となり、その語尾のA音と「ウル」の語頭のU音が連結してO音に変化して「オゴル」となった)

の転訛と解します。

472おさおさ

 物事の内容、質などを十分に確実に備えて、あるいは条件、体裁などを整えての意。殆ど。ろくに。(以上、打ち消し、否定を伴う)たしかに。きちんと。しっかり。

 この「おさおさ」は、

  「オタオタ」、OTAOTA(a wand or rod to which the mana of a dead man was supposed to be transferred,that it might be conveyed to his successors)、「(「オサオサ」と呼ばれる棒で死者のマナ(霊力)がそれに憑依して、後継者に受け継がれるという)魔法の棒を備えるように(物事の内容、質などを十分に確実に備えて、あるいは条件、体裁などを整えている)」(「オタオタ」が「オサオサ」となった)

の転訛と解します。

473おさない(幼い)

 小さい。幼少である。子供っぽい。考えが未熟である。しっかりした思慮分別がない。

 この「おさない」は、

  「オタ・ナイ」、OTA-NAI(ota=unripe,uncooked;nai=nei,neinei=stretched forward,reaching out)、「未熟の、または幼い・ままである(幼い)」(「オタ」が「オサ」となった)

の転訛と解します。

474おさんどん

 腰元や台所で働く下女の通称。台所での仕事。炊事。

 この「おさんどん」は、

  「オ・タノア・トナ」、O-TANOA-TONA(o=the...of;tanoa=belittle,make of no account;tona=his,her,its)、「例の・(台所で働いている)取るに足りない・彼女(おさんどん)」(「タノア」の語尾のA音が脱落して「タノ」から「サン」と、「トナ」が「トン」から「ドン」となった)

の転訛と解します。

475おし(唖。御師)

 @古くは「おふし」または「おうし」(日本書紀天智七年二月条は「建皇子…唖(おふし)にして…」とある)。発声や聴覚の器官の障害によつて言葉を発することができないこと。また、その者。

 A(御祈師の意)僧侶の祈祷者や神官で祈祷を専門にする者。平安末期以降、特定の信者と師壇関係を結んで、それらの人々のために巻数、守札等を配布するなど祈祷をして、その代償に米銭の寄進を得た神官または社僧。

 この「おし」は、

  @「オフ・チ」、OHU-TI(ohu=stoop;ti=throw,cast)、「(言葉を)発することに・萎縮する(発することができない。唖)」(「チ」が「シ」となって「オフシ」となった。また、「オフ」のH音が脱落して「オウ」と、「チ」が「シ」となって「オウシ」となった。また、「オウシ」が短縮化して「オシ」となった)

  A「オ・チヒ」、O-TIHI(o=the...of;tihi=summit,top,peak,lie in a heap)、「例の・たいへん高い地位にある者(御師)」(「チヒ」のH音が脱落して「チ」から「シ」となった)

の転訛と解します。

476おじ(伯父。叔父)

 父または母の兄弟。また、父または母の姉妹の夫。

 この「おじ」は、

  「オ・チヒ」、O-TIHI(o=the...of;tihi=summit,top,peak,lie in a heap)、「例の・高い地位にある者(伯父。叔父)」(「チヒ」のH音が脱落して「チ」から「シ」、「ジ」となった)

の転訛と解します。

477おしい(惜しい)

 いつも自分のものにしておきたいほどかわいい。しとしい。事物を愛するまりに手放しにくい。心を惹かれて手放しにくい。思うようにならなかったり、物事のねうちが生かされなかったりするのを残念に思う。心残りである。

 この「おしい」は、

  「オチ・イヒ」、OTI-IHI(oti=finished,gone or come for good;ihi=split,divide,separate)、「(自然の推移や時間の経過によって)終わったり消えたりして・(手許から)離れる(惜しい)」(「オチ」が「オシ」と、「イヒ」のH音が脱落して「イ」となった)

の転訛と解します。

478おじいさま(お祖父様)

 祖父を敬い親しんで呼ぶ語。

 この「おじいさま」は、

  「オ・チヒ・イヒ・タ・マ」、O-TIHI-IHI-TA-MA(o=the...of;tihi=summit,top,peak,lie in a heap;ihi=split,divide,separate;ta=stand,settle;ma=white,clear)、「例の・さらに離れた(伯父・叔父より一段高い)・高い地位にあって・清らかに・坐す者(お祖父様)」(「チヒ」のH音が脱落して「チ」から「ジ」と、「イヒ」のH音が脱落して「イ」と、「タ」が「サ」となった)

の転訛と解します。

479おしえる(教える)

 行動や身の処し方などについて注意を与えて導く。しましめる。さとす。知っている事や自分の気持ち、要求などを他の人に告げ知らせる。知識、技芸などを身につけるようにさせる。

 この「おしえる」は、

  「オ・チヘル」、O-TIHERU(o=the...of;tiheru=convey in a hollow vessel,bail water out of a canoe etc.)、「例の・(知識などを)空の容器に入れて運ぶように(教え込む。教える)」(「チヘル」のH音が脱落して「チエル」から「シエル」となった)

の転訛と解します。

480おしき(折敷)

 桧のへぎで作る角盆。食器などを載せて使った。

 この「おしき」は、

  「オ・チヒ・キ」、O-TIHI-KI(o=the...of;tihi=summit,top,peak,lie in a heap;ki=full,very)、「例の・たくさん(の食器を)・(その)上に載せるもの(折敷)」(「チヒ」のH音が脱落して「「シ」となった)

の転訛と解します。

481おしきせ(お仕着せ)

 江戸幕府から諸役人、囚人に衣服を支給すること。また、その衣服。時候に応じて主人から奉公人、客から遊女などへ衣服を与えること。また、その衣服。

 この「おしきせ」は、

  「オチ・キテ」、OTI-KITE(oti=finished,gone or come for good;kite=see,find,recognise(whakakite=reveal,disclose,display))、「(外部に対してそれを着用した者の身分を)知らせるために・(幕府または雇用主が)定めて着用させる(衣服。お仕着せ)」(「オチ」が「オシ」と、「キテ」が「キセ」となった)

の転訛と解します。

482おしめ(襁褓)

 幼児などが尻にあてて、大便や小便を有卦、汚れを防ぐ布や紙。むつき。この「おしめ(襁褓)」については国語篇(その十四)の028おしめ(襁褓)の項を参照してください。

 この「おしめ」は、

  「オ・チ・メ」、O-TI-ME(o=the...of;ti=throw,cast;me=with,denoting concomittance or concurrence in time)、「例の・(乳児の尻に必ず)一緒に・付けられたもの(おしめ)」(「チ」が「シ」となった)

の転訛と解します。

483おじや(雑炊)

 雑炊をいう女性語。味噌などで味をつけて炊き込んだ粥の一種。

 この「おじや」は、

  「オチ・イア」、OTI-IA(oti=finished,gone or come for good;ia=indeed)、「実に・(完成した)よく煮込んだ(粥。おじや)」(「オチ」が「オジ」と、「イア」が「ヤ」となった)

の転訛と解します。

484おしゃか(お釈迦)

 釈迦牟尼を敬っていう語(漢語語源)。四月八日の釈迦誕生日に行う灌仏会。(誕生仏が裸体であるところから)はだか。転じて、勝負などに負けて無一文になること。製品を作りそこなうこと。また、その不良品。

 この「おしゃか」は、

  「オチ・アカ」、OTI-AKA(oti=finished,gone or come for good;aka=clean off,scrape away)、「(賭博などが)結着して・(綺麗に無くなる)無一文になる(お釈迦)」(「オチ・アカ」が「オチャカ」から「オシャカ」となった)

  または「オチ・アカアカ」、OTI-AKAAKA(oti=finished,gone or come for good;akaaka=fibrous roots,state of turmoil)、「(製造が)終わって・(不良品と分かって)騒ぎになる(お釈迦)](「アカアカ」の反覆語尾が脱落し、「オチ・アカ」が「オチャカ」から「オシャカ」となった)

の転訛と解します。

485おしゃま

 子供が人前をはばからないで、ませたふるまいをすること。また、そのような子、そのさま。猫をいう(盗人仲間の隠語)。おしゃべれなこと。又、その人。この「おしゃま(お喋り)」については国語篇(その十四)の029おしゃべり(お喋り)の項の「おしゃま」および国語篇(その十五)の144でしゃばり(出しゃばり)の項の「おしゃま」を参照してください。

 この「おしゃま」は、

  「オ・チア・マ」、O-TIA-MA(o=the...of;tia=stick in,adorn by sticking in feathers;ma=clean,white,for,by)、「例の・羽根を(鉢巻に)挿す・といった(大人と同じ)仕草をする(さま)」(「チア」が「チャ」から「シャ」となつた)

の転訛と解します。

486おじゃる

 (「お出(い)である」の変化とする説がある)来る、行く、居る、あるの意の敬語。

 この「おじゃる」は、

  「オ・チア・ル」、O-TIA-RU(o=the...of;tia=stick in,drive in pegs etc.,adorn by sticking in feathers,take a vigorous stroke in paddling;ru=shake,agitate,scatter)、「例の・(奮って)姿勢を正して・杖を突いて歩く(または頭に注ェ飾りをして(威儀を正して)居る)(おじゃる)」(「チア」が「ジャ」となった)

の転訛と解します。

487おじゃん

 (「じゃん」は駄目になる意の「じゃみ」の変化かとか、火事を知らせる半鐘の「ジャン」の音からとする説がある)物事が不成功に終わること。だめになること。

 この「おじゃん」は、

  「オチ・ア(ン)ゴ」、OTI-ANGO(oti=finished,gone or come for good;ango=gape,be open of things not fitting together,be consumed)、「(物事が)すべて(消耗)消滅して・終了した(おじゃん)」(「ア(ン)ゴ」のNG音がN音に変化して「アノ」から「アン」となり、「オチ・アン」が「オジャン」となった)

の転訛と解します。

488おしらさま

 東北地方で広く信仰されている家の神で、神体は一尺内外の木か竹の棒でこれに布を着せ重ねたもの。

 この「おしらさま」は、

  「オ・チラ・タ・マ」、O-TIRA-TA-MA(o=the...of;tira=file of men,a pole or wand used in the sacred place;ta=stand,settle;ma=white,clear)、「例の・(家の神の祀りに用いる布を着せ重ねた)一対の棒で・清らかに・祀られているもの(おしらさま)」(「チラ」が「シラ」と、「タ」が「サ」となった)

の転訛と解します。

489おしろい(白粉)

 顔や肌に塗って色白に美しく見せる化粧料。この「おしろい(白粉)」については雑楽篇(その二)の1050べに(紅)の項の「おしろい(白粉)」を参照してください。

 この「おしろい」は、

  「オ・チロ・オイ」、O-TIRO-OI(o=of,belonging to;tiro=look;oi=grow(oinga=childhood,youth))、「(それを付けると)若く・見える・もの(白粉)」(「チロ」の語尾のO音と「オイ」の語頭のO音が連結して「チロイ」から「シロイ」となった)

の転訛と解します。

490おずおず

 怖れや緊張でためらっているさま。おそるおそる。こわごわ。おどおど。

 この「おずおず」は、

  「オフ・ツ・オフ・ツ」、OHU-TU-OHU-TU(ohu=stoop;tu=stand,settle)、「身をかがめて・立ち止まり・身をかがめて・立ち止まりしながら(おずおず)」(「オフ」のH音が脱落して「オ」と、「ツ」が「ズ」となった)

の転訛と解します。

491おすそわけ(お裾分け)

 人から貰った品物や利益の一部分を他人に分けてやること。また、その物。

 この「おすそわけ」は、

  「オ・ツタワケ」、O-TUTAWAKE(o=the...of;tutawake=spell,dedicate to a god,effect by a spell or occult means)、「例の・神様へのお供物(のお下がりを他人へ分けること)(お裾分け)」(「ツタワケ」が「ツタウアケ」から「ツタウワケ」、「スソワケ」となった)

の転訛と解します。

492おせち(お節)

 正月、節供など年中行事の行なわれる日。節日。物日。節の日につくるご馳走や、お供えの餅。また、それをふるまうこと。お節料理。

 この「おせち」は、

  「オ・テイ・チ」、O-TEI-TI(o=the...of;tei=high,tall,lofty,summit,top;ti=throw,cast)、「例の・(年中行事が行われる)最高の・(日に定められた)日(節日)」(「テイ」が「テ」から「セ」となった)

の転訛と解します。

493おぞい(お悍い)

 気が強い。強情だ。恐ろしい。怖い。悪い。悪賢い。賢い。

 この「おぞい」は、

  「オ・トイ」、O-TOI(o=the...of;toi=move quickly,trot,encourage,incite(whakatoi=annoy,rease,irritate,mock,floatanswer perversely or rudely))、「例の・俊敏に立ち回る(または人を元気づける、または人を悩ます、または人を嘲る)(おぞい)」(「トイ」が「ゾイ」となつた)

の転訛と解します。

494おそう(襲う)

 不意に敵に攻めかけたりね人に危害を加えたりする。襲撃する。悪霊、物の怪などが乗り移る。悪霊などに襲われる。

 この「おそう」は、

  「オ・タウ」、O-TAU(o=the...of,of,belonging to;tau=attack)、「一種の・襲撃を行う(襲う)」(「タウ」のAU音がOU音に変化して「トウ」から「ソウ」となった)

の転訛と解します。

495おそらく(恐らく)

 恐れることには。気がかりなことは。はばかりながら。おそらく。かならずや。多分。

 この「おそらく」は、

  「オ・トラ・アク」、O-TORA-AKU(o=the...of,of,belonging to;tora=burn,be erect,used of showing warlike feelings;aku=delay,take time over anything,scrape out,cleanse)、「例の・(すごく興奮するような)事態が・後になって生ずることになる(ことを恐れる。恐らく)」(「トラ」が「ソラ」となり、その語尾のA音と「アク」の語頭のA音が連結して「ソラク」となった)

の転訛と解します。

496おそれる(怖れる)

 恐怖を感ずる。びくびくする。心がひるむ。何か悪いことが起こるのではないかと気遣う。心配する。あやぶむ。おそれ多く思う。恐れ入る。

 この「おそれる」は、

  「オ・トレ・ル」、O-TORE-RU(o=the...of,of,belonging to;tore=burn,be erect,used of showing warlike feelings,inflamed of the eyes;ru=shake,agitate,scatter)、「例の・(すごく興奮するような)事態が・生じてしまう(ことを恐れる。怖れる)」(「トレ」が「ソレ」となった)

の転訛と解します。

497おたあさん(お母さん)

 (寝殿造りの対屋(たいのや)に住んでいる方の意からとする説がある)母を言う尊敬語。宮中、宮家、公家、また、加茂の神官、本願寺両家などの家庭で用いる。

 この「おたあさん」は、

  「オ・タ・タナ」、O-TA-TANA(o=the...of;ta=dash,beat,lay,dash water out of a canoe;tana=his,her,its)、「あの・カヌーのあか水を汲み出す(家庭を守って管理する)・彼女(お母さん)」(「タ」が「タア」と、「タナ」が「サン」となった)

の転訛と解します。

498おだてる(煽てる)

 人や動物の気持ちを乱したり、あおるように騒ぐ。まわりではやし立ててからかう。盛んに褒めて人の気持ちをあおり立てる。

 この「おだてる」は、

  「オ・タテ・ル」、O-TATE-RU(o=the...of,of,belonging to;tate,tatetate=rattle,make any sharp recurring noise,tick,loose,slack of lashings;ru=shake,agitate,scatter)、「例の・いい加減な気持ちにさせるように・あおり立てる(煽てる)」(「タテ」が「ダテ」となった)

の転訛と解します。

499おたふく(お多福)

 おたふく面。おたふく面のような醜い顔の女。おかめ。転じて、自分の妻を謙遜していう。

 この「おたふく」は、

  「オ・タフ・クイ」、O-TAHU-KUI(o=the...of,of,belonging to;tahu=make grimaces in a dance;kui=woman)、「例の・しかめっつらをした・女の(面。その面のような顔の女)」(「クイ」の語尾のI音が脱落して「ク」となった)

の転訛と解します。

500おだぶつ(御陀仏)

 死ぬこと。往生。だめになること。また、失敗に終わること。

 この「おだぶつ」は、

  「オタ・プツ」、OTA-PUTU(ota=unripe,uncooked,refuse,dregs;putu=lie in a heap,swell,heap)、「一山の・ごみ(死体。また、失敗作品)」(「オタ」が「オダ」と、「プツ」が「ブツ」となった)

の転訛と解します。

501おため

 目上の相手に対し利益をはかること。御為(おため)紙の略(関西で、贈り物を貰ったとき、その容器(重箱、風呂敷など)に入れて返す白紙をいう)。

 この「おため」は、

  「オ・タメ」、O-TAME(o=the...of;tame=food,eat)、「例の・食料(相手の利益を供給すること)(おため)」または「例の・食料(頂き物のお返しに代えて入れる白紙)(おため)」

の転訛と解します。

502おちど(落度)

 あやまち。手落ち。過失。おつど。

 この「おちど」は、

  「オ・チト」、O-TITO(the...of;tito=compose,do anything without previous practice(whakatito=deny,disbelieve))、「例の・(否定される行為)過ち(落ち度)」(「チト」が「チド」となった)

の転訛と解します。

503おちゃのこさいさい(お茶の子さいさい)

 物事が容易にすらすらできるという意にいう。

 この「おちゃのこさいさい」は、

  「オチ・アノ・カウ・タイタイ」、OTI-ANO-KAU-TAITAI(oti=finished;ano=still,again,also,repeated,quite,just,indeed;kau=swim,wade;taitai=dash,knock,perform certain ceremonies to remove tapu etc.)、「(実に)簡単に・抜き手を切って・泳いで・みせる(お茶の子さいさい)」(゜オチ・アノ」が「オチャノ」と、「カウ」のAU音がO音に変化して「コ」と、「タイタイ」が「サイサイ」となった)

の転訛と解します。

504おちようず(お手水)

 手や顔などを洗い清めること。また、その水の丁寧語。大小便、また、便所の丁寧語。

 この「おちょうず」は、

  「オ・チオフ・ウツ」、O-TIOHU-UTU(o=the...of,of,belonging to;tiohu=stoop;utu=dip up water etc.,dip into for the purpose of filling)、「例の・(身を)屈めて・(水に浸す)手を洗うこと(お手水)」(「チオフ」のH音が脱落して「チオウ」から「チョウ」となり、その語尾のU音と「ウツ」の語頭のU音が連結して「チョウツ」から「チョウズ」となった)

の転訛と解します。

505おちょぼ

 江戸時代、可愛らしい少女につけた名称。転じて、かわいいおぼこ娘、美少女。江戸後期、京都、大坂の遊里で芸妓の供や使い走りをした少女。また、京都、大坂などで、茶屋などで働く少女をいう。

 この「おちょぼ」は、

  「オ・チオホ・ポホ」、O-TIOHO-POHO(o=the...of,of,belonging to;tioho=apprehensive;poho=chest,stomach,bosom,seat of affection)、「(いつも)心配そうに・気遣いをしている・類(たぐい)の(少女。おちょぼ)」(「チオホ」のH音が脱落して「チオ」から「チョ」と、「ポホ」のH音が脱落して「ボ」となった)

の転訛と解します。

506おつ(乙)

 @十干の第二番目。乙(きのと)。甲に次ぐ第二位。うすぼんやりしている人。(一番の次は二番という)物事の道理、事情。

 A普通と違って、一種のしゃれた情趣があるさま。一風変わっているさま。

 この「おつ」は、

  @「オ・イツ」、O-ITU(o=the place...of;itu=side)、「(一番目または一番の)脇に・位置する(二番目または二番)」(「イツ」の語頭のI音が脱落して「ツ」となった)

  A「オイ・ツ」、OI-TU(oi=heoi=denoting completeness or sufficiency of a statement or enumeration,well;tu=stand,settle)、「(なかなか)良いものが・ある(乙だ)」(「オ・イツ」が「オイ・ツ」に変化し、さらに「オイ」の語尾のI音が脱落して「オ」となった)

の転訛と解します。

507おっかない

 強力なもの、害を加えそうなもの、また、危険なことや望ましくない結果が起こりそうなことに対して、こわいと感じる。恐ろしい感じである。数量がすこぶる多い。ぎょうぎょうしい。

 この「おっかない」は、

  「オカ・ナイ」、OKA-NAI(oka=prick,stab,any sharp weapon used for stabbing or piercing;nai=nei,neinei=stretched forward,reaching out)、「鋭い槍が・突き出されるような(おっかない)」(「オカ」が「オッカ」となった)

の転訛と解します。

508おっくう(億劫)

 煩わしくて気が進まないさま。めんどうくさいこと。

 この「おっくう」は、

  「アウ・ツ・クフ」、AU-TU-KUHU(au=firm,intense;tu=fight with,energetic;kuhu=thrust in,insert,conceal,introduce oneself into,join a company)、「(既存の)集団に(新規に)加入して・懸命に努力して・不動の地位を獲得する(億劫)」(「アウ」のAU音がO音に変化して「オ」と、「ツ」が「ッ」と、「クフ」のH音が脱落して「クウ」となった)

の転訛と解します。

509おっしゃる(仰る)

 言うの尊敬語。言われる。仰せられる。そういう名前でいらつしゃる。

 この「おっしゃる」は、

  「オ・ツ・チ・イア・ル」、O-TU-TI-IA-RU(o=the...of,of,belonging to;tu=stand,settle,fight with,energetic;ti=throw,cast,overcome;ia=indeed;ru=shake,agitate,scatter)、「威厳が・あって・奮って・実に・(圧倒する)命令(する言葉を)発する」(「ツ」が「ッ」と、「チ」が「シ」と、「イア」が「ヤ」から「ャ」となった)

の転訛と解します。

510おっちょこちょい

 落ち着いて考えないで、軽々しく物事をすること。又、そのさま。軽々しく行動するひと。軽薄者。

 この「おっちょこちょい」は、

  「オ・ツ・チ・オコイ・チ・オイ」、O-TU-TI-OKOI-TI-OI(o=the...of,of,belonging to;tu=stand,settle,fight with,energetic;ti=throw,cast,overcome;okoi=scrape,abrade;oi=grow,be abundant)、「懸命に・大きく・しようとして・(すり減らす)小さく・していた・ような類の仕業(またその人。おっちょこちょい)」(「ツ」が「ッ」と、「オコイ」の語尾のI音が脱落して「オコ」となり、「チ・オコ」が「チョコ」と、「チ・オイ」が「チョイ」となった)

の転訛と解します。

511おっつかっつ

 差異が少なく殆ど程度が々であるさま。殆ど同時であるさま。優劣がないさま。

 この「おっつかっつ」は、

  「オ・ツツ・カ・ツツ」、O-TUTU-KA-TUTU(o=the...of,of,belonging to;tutu=move with vigour,set on fire,insubordinate,violent,vigorous;ka=take fire,be lighted,burn)、「荒々しく・行動し・(また)火となって・荒々しく燃える(どちらもさして差異がない。おっつかっつ)」(「ツツ」が「ッツ」となった)

の転訛と解します。

512おっと(夫)

 妻に対する夫君。亭主。

 この「おっと」は、

  「オ・ツ・ト」、O-TU-TO(the...of;tu=fight with,energetic;to=drag,haul)、「例の・(妻・家族を)力強く・引っ張る(導く)者(夫)」(「ツ」が「ッ」となった)

の転訛と解します。

513おっとりがたな(押っ取り刀)

 危急の場合、刀を腰に差すひまもなく、手に持ったままでいること。また、急いで駆けつけることの形容。

 この「おっとりがたな」は、

  「オ・ツ・トリ・カハ・タ(ン)ガ」、O-TU-TORI-KAHA-TANGA(the...of;tu=fight with,energetic;tori=cut;kaha=strong,strength;tanga=be assembled,row,tier)、「(危急の場合の)例の・急いで・(腰に結びつけるための紐を)切った・強い力を・持つもの(刀)(を持って行動するさま。押っ取り刀)」(「ツ」が「ッ」と、「カハ」のH音が脱落して「カ」と、「タ(ン)ガ」のNG音がN音に変化して「タナ」となった)

の転訛と解します。

514おつむ(頭)・つむり(頭)

 (「つむり(頭)」の略とされる)あたま。かしら。こうべ。。頭の毛。

 この「おつむ」、「つむり」は、

  「オ・ツム」、O-TUMU(o=the...of;tumu=promontry,headland,stump,contrary of wind)、「例の・(身体から)突き出ているもの(頭)」

  「ツム・ウリ」、TUMU-URI(tumu=promontry,headland,stump,contrary of wind;uri=descendant,relative)、「(身体から)突き出ている・類のもの(頭)」(「ツム」の語尾のU音と「ウリ」の語頭のU音が連結して「ツムリ」となった)

の転訛と解します。

515おつや(お通夜)

 社寺に籠もって夜通し祈願すること。死者を墓場に送り出すまでの間、家族縁者などが、夜通し棺の傍で過ごすこと。夜伽。

 この「おつや」は、

  「オ・ツ・イア」、O-TU-IA(o=the...of,of,belonging to;tu=fight with,energetic;ia=indeed,each,every)、「例の・実に・熱心に(死者の夜伽をする行事または夜通し祈願をする行事。お通夜)」(「イア」が「ヤ」となった)

の転訛と解します。

516おつり(お釣り)

 釣り銭の丁寧語。

 この「おつり」は、

  「オ・ツ・ウリウリ」、O-TU-URIURI(o=the...of,of,belonging to;tu=stand,settle;uriuri=short in time or distance)、「(受け取った金銭から商品などの代金を差し引いた残りの)不足する金銭を・満たす・だけのもの(お釣り)」(「ウリウリ」の反覆語尾が脱落して「ウリ」となり、「ツ」のU音と「ウリ」の語頭のU音が連結して「ツリ」となった)

の転訛と解します。

517おでん・でんがく(田楽)

 おでんは、@田楽豆腐のこと。また、とくに焼いた豆腐に木の芽味噌をぬつて食べる木の芽田楽をいうこともある。Aこんにゃくを串に刺し、味噌を塗りつけた田楽。B煮込みおでん。こんにゃく、豆腐、芋、はんぺん、がんもどきなどを煮込みにしたもの。

 この「おでん」、「でんがく」は、

  @「オ・タイ(ン)ガ」、O-TAINGA(o=the...of,of,belonging to;tainga=place for bailing in a canoe(ta=dash water out of a canoe,so bail))、「例の・(豆腐の)水気を切った(調理した料理。おでん)」(「タイ(ン)ガ」のAI音がE音に、NG音がN音に変化して「テナ」から「デン」となった)

  A、B「オ・テ(ン)ガ」、O-TENGA(o=the...of,of,belonging to;tenga=Adam's apple,distended,strained,gorged,extinguished)、A「例の・(水を吸って膨らんだ)こんにゃく(を調理した料理。おでん)」またはB「例の・(こんにゃく、豆腐、芋、はんぺん、がんもどきなど)たくさんの食物(を調理した料理。おでん)」(「テ(ン)ガ」のNG音がN音に変化して「テナ」から「デン」となった)

  「タイ(ン)ガ・ク」、TAINGA-KU(tainga=place for bailing in a canoe(ta=dash water out of a canoe,so bail);ku,kuku=firm,stiff,thickend,not fluid or watery)、「(豆腐の)水気を切って・堅くした(調理した料理。田楽)」(「タイ(ン)ガ」のAI音がE音に変化して「テンガ」から「デンガ」となった)

の転訛と解します。

518おてんば(お転婆)

 (オランダ語オンテムバアルontembaarからとする説がある)慎みや恥じらいに乏しく、活発に動き回ること。また、そのさま。特にそのような女性。この「おてんば(お転婆)」については国語篇(その十四)の033おてんば(お転婆)の項を参照してください。

 この「おてんば」は、

  「オ・タイナ・パ」、O-TAINA-PA(o=the...of;taina=younger brother of a man,younger sister of a woman;pa=touch,reach,strike,accost)、「例の・ずうずうしく人に(話しかけるなど)接する・若い娘(お転婆)」(「タイナ」のAI音がE音に変化して「テナ」から「テン」と、「パ」が「バ」となった)

の転訛と解します。

519おとうさん(お父さん)

 父を敬い親しんで呼ぶ語。

 この「おとうさん」は、

  「オ・トフ・タナ」、O-TOHU-TANA(o=the...of;tohu=mark,,sign,point out,show,point at,look towards;tana=his,her,its)、「あの・(家族に)指示をする・彼(お父さん)」(「トフ」のH音が脱落して「トウ」と、「タナ」が「サン」となった)

の転訛と解します。

520おとうと(弟)

 年下の兄弟。おとうと。

 この「おとうと」は、

  「アウト・ウト」、AUTO-UTO(auto=trailing behind,slow,dilatory,drag out,protract;uto=revenge,marked men)、「(兄の)後ろについて行く・目立つ人(弟)」(「アウト」のAU音がO音に変化して「オト」となった)

の転訛と解します。

521おどおど

 緊張したり、恐れたりして、心が落ち着かないさま。

 この「おどおど」は、

  「アウト・アウト」、AUTO-AUTO(auto=trailing behind,slow,dilatory,drag out,protract)、「(すぐに決断できずに)ぐずぐずしている(おどおど)」(「アウト」のAU音がO音に変化して「オト」から「オド」となった)

の転訛と解します。

522おとがい(顎)

 下顎。顎。この「おとがい」については、国語篇(その十四)の004あごの項の「おとがい」を参照してください。)

 この「おとがい」は、

  「アウト・(ン)ガヒリ」、AUTO-NGAHIRI(auto=trailing behind,slow,drag out;ngahiri=pestle or pounder for fern root)、「ゆっくりと・(食物を)噛み砕くもの(顎)」(「アウト」のAU音がO音に変化して「オト」と、「(ン)ガヒリ」のNG音がG音に変化し、H音が脱落して「ガイリ」となり、さらに語尾の「リ」が脱落して「オトガイ」となった)

の転訛と解します。

523おとき(御斎)

 (「とき(斎)」は「時」で僧家での正午以前の食事の意)寺または仏事法会のときの食事。

 この「おとき」は、

  「オ・ト・オキオキ」、O-TO-OKIOKI(o=the...of;to=set as the sun,dive;okioki=rest,pause)、「例の・休息の・(定刻に)到達した(休息の食事。おとき)」(「オキオキ」の反覆語尾が脱落して「オキ」となり、「ト」のO音と「オキ」の語頭のO音が連結して「トキ」となつた)

の転訛と解します。

524おとぎばなし(御伽話)

 人の退屈を慰めるため、語り合う話。転じて、子供に語って聞かせるための昔話や童話の類。現実離れした空想的な話。

 この「おとぎばなし」は、

  「オ・ト(ン)ギア・パ(ン)ガ・チ」、O-TONGIA-PANGA-TI(o=the...of,of,belonging to;tongia=to,tokia=moisten,wet,anoint(toto=ooze,trikle,gush forth);panga=riddle,game of guessing;ti=throw,cast)、「例の・ぽつんぽつんと(水が滴り落ちるような)・謎かけの(遊びの話を)・するもの(御伽話)」(「ト(ン)ギア」のNG音がG音に変化し、語尾のA音が脱落して「トギ」と、「パ(ン)ガ」のNG音がN音に変化して「パナ」から「バナ」と、「チ」が「シ」となった)

の転訛と解します。

525おとこ(男)

 若々しく生命力の盛んな男子。老幼に関係なく、男性。男子。この「おとこ(男)」については国語篇(その九)の050の項を参照してください。

 この「おとこ」は、

  「オ・トカウ」、O-TOKAU(o=the...of;tokau=plain,devoid of ornament)、「装身具を着けない・者(男)」(「トカウ」のAU音がO音に変化して「トコ」となった)

  または「オ・トコ」、O-TOKO(o=the...of;toko=pole,rod(tokotoko=quater-staff))、「六尺棒(武器)を使う・者(男)」

の転訛と解します。

526おどし(縅)

 鎧の札(さね)を糸や皮で綴ること。

 この「おどし」は、

  「オ・タウチチ」、O-TAUTITI(o=the...of;tautiti=stick in as feathers into the hair or anything into one's girdle,belt,girdle)、「例の・(注ェを髪に挿したり、貝殻、色石などを飾り帯に組み込むように)鎧の札を色糸や色皮で綴り飾り立てること(縅)」(「タウチチ」のAU音がO音に変化し、反覆語尾が脱落して「トチ」から「ドシ」となった)

の転訛と解します。

527おとしまえ(落とし前)

 (てきや、盗人仲間の隠語から)もめごとの仲に立って話をつけること。失敗や、事故、無銭飲食などの後始末をつけること。

 この「おとしまえ」は、

  「オ・トチ・ママエ」、O-TOTI-MAMAE(o=the...of;toti=limp,halt;mamae=pain,feel pain or distress of body or mind)、「例の・(自らの非をなかなにか認めようとしない)ぐずな奴に・(賠償を払うなどの)傷みを感じさせること(落とし前)」(「トチ」が「トシ」と、「ママエ」の反覆語頭が脱落して「マエ」となった)

の転訛と解します。

528おどす(脅す)

 怖がらせる。恐れさせる。脅かす。脅迫する。びっくりさせる。驚かす。

 この「おどす」は、

  「オ・ト・ホツ」、O-TO-HOTU(o=the...of,of,belonging to;to=drag,haul;hotu=sob,pant,sigh,desire eagerly,chafe with animosity etc.)、「(人を)怖がらせ・(泣き出すぐらいまで)追い詰める・類の行動をする(脅す)」(「ト」が「ド」となったその語尾のO音と、「ホツ」のH音が脱落して「オツ」から「オス」となったその語頭のO音が連結して「ドス」となった)

の転訛と解します。

529おとずれる(訪れる)

 人の下を訪ねる。訪問する。ある状態、時節がやってくる。手紙で様子を尋ねる。

 この「おとずれる」は、

  「アウト・ツレ・ル」、AUTO-TURE-RU(auto=trailing behind;ture=bend,bow;ru=shake,agitate,scatter)、「(人を)追いかけるように・頭を下げて・(面会を)求める(訪れる)」(「アウト」のAU音がO音に変化して「オト」と、「ツレ」が「ズレ」となった)

の転訛と解します。

530おととい(一昨日)

 昨日の前の日。この「おととい(一昨日)」については国語篇(その十四)の034おとといの項を参照してください。

 この「おととい」は、

  「アウト・タウイ」、AUTO-TAUI(auto=trailing behind:taui=flight,retreat)、「(退却した)過ぎ去った(日の)・(さらに)後ろにある(日。一昨日)」(「アウト」のAU音がO音に変化して「オト」と、「タウイ」のAU音がO音に変化して「トイ」となつた)

の転訛と解します。

531おととし(一昨年)

 昨年の前の年。この「とし(年)」については国語篇(その九)の200の項を参照してください。

 この「おととし」は、

  「アウト・タウ・チ」、AUTO-TAU-TI(auto=trailing behind:tau=season,year;ti=throw,cast)、「(放り投げた)過ぎ去った・年の・(さらに)後ろにある(年。一昨年)」(「アウト」のAU音がO音に変化して「オト」と、「タウ」のAU音がO音に変化して「ト」と、「チ」が「シ」となつた)

の転訛と解します。

532おとな(大人)

 一族、集団の主だった者。年長者。長老。成人式(男は元服。女は裳着)を終えた者。成人。

 この「おとな」は、

  「オ・トフ(ン)ガ」、O-TOHUNGA(o=the...of;tohunga=skilled person,wizard,priest)、「例の・(呪術者、祈祷者などの集団の)統率者(大人)」または「例の・(技能に長けた)一人前の成人(大人)」(「トフ(ン)ガ」のH音が脱落し、NG音がN音に変化して「トナ」となった)

の転訛と解します。

533おとなしい(温和しい)

 従順、温和である。穏やかである。落ち着いている。(着物の柄などが)地味で落ち着いている。この「おとなしい(地味)」については国語篇(その十五)の097じみ(地味)の項の「おとなしい」を参照してください。

 この「おとなしい」は、

  「アウト・ナ・チヒ」、AUTO-NA-TIHI(auto=trailing behind,slow;na=by,belonging to;tihi=summit,top)、「徹底して・(同年配の人の意見、嗜好に)追従する・ような(温和しい)」(「アウト」のAU音がO音に変化して「オト」と、「チヒ」のH音が脱落して「チイ」から「シイ」となった)

の転訛と解します。

534おとめ(乙女)

 若々しく生命力の盛んな女子。成年に達した未婚の女性。処女。年のいかない女の子。童女。天女。

 この「おとめ」は、

  「アウト・マイ」、AUTO-MAI(auto=trailing behind,slow;mai,maimai=a dance to welcome guest at a tangi)、「(同年配の人の意見、嗜好に)追従する(温和しい)・舞を舞う(女性。乙女)」(「アウト」のAU音がO音に変化して「オト」と、「マイ」のAI音がE音に変化して「メ」となった)

の転訛と解します。

535おとり(囮)

 鳥を誘い寄せて捕らえるための同類の鳥。他のものを誘い寄せるための手段として用いるもの。好餌。

 この「おとり」は、

  「アウト・リ」、AUTO-RI(auto=trailing behind,slow;ri=screen,protect,bind)、「(囮の)後を追ってきたものを・捕らえるためのもの(囮)」(「アウト」のAU音がO音に変化して「オト」となった)

の転訛と解します。

536おどり(踊り)

 (音楽に合わせて)手足、体を動かし、身振り、手振りをしながら、リズムにあった動作をすること。また、その動作。舞踊。

 この「おどり」は、

  「アウト・オリ」、AUTO-ORI(auto=trailing behind,slow,protract;ori=cause to wave to and fro,sway,quiver,move about)、「ゆっくりと・(動き回る)踊る(踊り)」(「アウト」のAU音がO音に変化して「オト」から「オド」となり、その語尾のO音と、「オリ」の語頭のO音が連結して「オドリ」となった)

の転訛と解します。

537おどろく(驚く)

 意外なことがあって心が動く。心の平静を失う。びっくりする。はっとして気づく。眠りから覚める。この「おどろく(驚く)」については国語篇(その十六)の176びっくりするの項の「おどろく」を参照してください。

 この「おどろく」は、

  「アウト・ラウ・ク」、AUTO-RAU-KU(auto=trailing behind,slow,protract;rau=catch as in a net,entangle,embarrassed,confused;ku=silent,wearied,exhausted)、「(意外なことがあって)その後は・困惑して・言葉が出ない(驚く)」(「アウト」のAU音がO音に変化して「オト」から「オド」と、「ラウ」のAU音がO音に変化して「ロ」となった)

  または「アウト・ロク」、AUTO-ROKU(auto=trailing behind,slow,protract;roku=bend,grow weak,decline of a person dying,a fire going out etc.)、「(意外なことがあって)その後は・元気が無くなる(びっくりする)」(「アウト」のAU音がO音に変化して「オト」から「オド」となった)

の転訛と解します。

 

538おなか(お腹)

 腹。もと、女房詞。この「おなか(お腹)」については国語篇(その九)の009の項を参照してください。

 この「おなか」は、

  「アウ(ン)ガ・カ」、AUNGA-KA(aunga=not including;ka=screech)、「空くと・グーグー鳴るもの(腹)」(「アウ(ン)ガ」のAU音がO音に、NG音がN音に変化して「オナ」となった)

の転訛と解します。

539おなめ(雌牛)

 雌牛。

 この「おなめ」は、

  「オ(ン)ガ・メ」、ONGA-ME(onga=agitate,shake about;me=if,as if,like)、「(大きな乳房を)揺らしている・ようにみえる動物(雌牛)」(「オ(ン)ガ」のNG音がN音に変化して「オナ」となった)

の転訛と解します。

540おなら(屁)

 屁(へ)。また、屁をひること。

 この「おなら」は、

  「オ(ン)ガ・ラ」、ONGA-RA(onga=agitate,shake about;ra=make a continued dull sound,roar)、「鈍い音を立てて・勢いよく放つもの(おなら)」(「オ(ン)ガ」のNG音がN音に変化して「オナ」となった)

の転訛と解します。

541おに(鬼)

 (「隠(おん)」が変化したもので、隠れて人の目に見えないものの意とする説がある)死者の霊魂。精霊。もののけ。幽魂。想像上の怪物。餓鬼。夜叉など。この「おに(鬼)」については国語篇(その三)の(3)法則その三(母音は大幅に省略)の項の「オニ」を参照してください。

 この「おに」は、

  「オ・ヌイ」、O-NUI(o=the...of,belonging to;nui=large,many)、「巨大な・生物(鬼)」(「ヌイ」のUI音がI音に変化して「ニ」となった)

  または「オニ」、ONI(move,wriggle)、「(得体の知れない)うごめくもの(鬼)」

の転訛と解します。

542おぬし(お主)

 (室町時代以後用いられ、対等または対等に近い下位者に対する語として男女ともに用いた)そなた。おのし。

 この「おぬし」、「」は、

  「オ・ヌイ・チヒ」、O-NUI-TIHI(o=the...of,belonging to;nui=large,many;tihi=summit,top,peak,lie in a heap)、「偉大で・高い地位におられる・類の方(お主)」(「ヌイ」が「ヌ」と、「チヒ」のH音が脱落して「チ」から「シ」となった)

の転訛と解します。

543おの(斧)

 木を伐ったり割ったりする道具。小型のまさかり。よき。この「おの(斧)」については雑楽篇(その二)の1046斧(おの)の項を参照してください。

 この「おの」は、

  「オ・(ン)ガウ」、O-NGAU(o=the...of;ngau=bite,hurt,attack)、「強い・打撃を加えるもの(道具。斧)」(「(ン)ガウ」のNG音がN音に、AU音がO音に変化して「ノ」となった)

の転訛と解します。

544おのずから(自ずから)

 物事がもとからあったそのままに。物事が行われていくうちにひとりでに。自然に。たまたま。偶然に。もしかして。万一。自分自身で。

 この「おのずから」は、

  「オ・ナウ・ツカ・アラ」、O-NAU-TUKA-ARA(o=the...of,belonging to;come,go;tuka,tukatuka=start up,proceed forward;ara=rise,awake,raise)、「例の・(物事が)進んで・行く(うちに)・(自然に)あることが起こる(おのずから)」(「ナウ」のAU音がO音に変化して「ノ」と、「ツカ」が「ズカ」となり、その語尾のA音と「アラ」の語頭のA音が連結して「ズカラ」となった)

の転訛と解します。

545おののく(戦く)

 恐れて震える。わななく。戦慄する。

 この「おののく」は、

  「オ・(ン)ガウ(ン)ガウ・ク」、O-NGAUNGAU-KU(o=the...of,belonging to;ngaungau=disturbance,noise,quarrel;ku=silent,weary,exhausted)、「不安で不安で・憔悴する・類の(戦く)」(「(ン)ガウ(ン)ガウ」のNG音がN音に、AU音がO音に変化して「ノノ」となった)

の転訛と解します。

546おのれ(己)

 その人。またはそのもの自身。自分。自称(卑下)。対称(目下の者の対するか、あるいは相手を見下し、またはののしる時)

 この「おのれ」は、

  「オ・ノホ・ラエ」、O-NOHO-RAE(o=the...of;noho=stay,settle;rae=forehead,temple,promontory)、「この(自分の)・額(またはこめかみ)に・宿るもの(自分の魂。自分自身)」(「ノホ」のH音が脱落して「ノ」と、「ラエ」のAE音がE音に変化して「レ」となった)

の転訛と解します。

547おばあさん(お婆さん)

 祖母を敬い親しんでいう語。年寄りの女。また、老女を敬い親しんでいう語。

 この「おばあさん」は、

  「オ・パハ・タナ」、O-PAHA-TANA(o=the...of;paha=arrive suddenly,attack(whakapaha=exclaim in astonishment,sigh,express regret);tana=his,her,its)、「あの・過去を懐かしみ、死者を悼むことが多い・彼女(お婆さん)」(「パハ」のH音が脱落して「バア」と、「タナ」が「サン」となった)

の転訛と解します。

548おばけ(お化け)

 化け物。妖怪。幽霊。異様なもの。奇っ怪なもの。人間離れしたさま。京阪地方の風習で、節分または年越しの日に老女が結った娘風の髪形または娘が結った人妻風の髪形。(この「おばけ(髪形)」については雑楽篇(その一)の169おばけの項を参照してください。)鯨の脂身を晒した食品。(この「おばけ(鯨)」については雑楽篇(その二)の734くじら(鯨)の項の「おばけ」を参照してください。)

 この「おばけ」は、

  「オ・パハ・ケ」、O-PAHA-KE(o=the...of;paha=arrive suddenly,attack;ke=different,strange,extraordinary)、「例の・(人を)突然襲う・奇っ怪なもの(お化け)」(「パハ」のH音が脱落して「バ」となった)

の転訛と解します。

549おはこ(十八番)

 とっておきの、得意とする芸。転じてその人が良くやる動作やよく口にする言葉。

 この「おはこ」は、

  「オ・ハコ」、O-HAKO(o=the...of;hako=straight,erect(whakahako=bedeck oneself))、「例の・(理想的なものとして掲げる)得意中の得意とする芸(十八番)」

の転訛と解します。

550おはよう(お早う)

 相手が早く出てきたことに対する挨拶の言葉。朝はじめて合った時の挨拶の言葉。この「おはよう(お早う)」については国語篇(その十四)の036おはようの項を参照してください。

 この「おはよう」は、

  「オハ・イオ」、OHA-IO(oha=greet;io=muscle,tough,obstinate,twitch)、「(ちょっと触れる程度に)軽く・挨拶する」(「イオ」が「ヨ」から「ヨウ」、「ヨー」となった)

の転訛と解します。

551おび(帯)

 衣服を着るとき、腰の辺りに巻いて結ぶもの。

 この「おび」は、

  「オ・ピヒ」、O-PIHI(o=the...of;pihi=some ornament for the person,watertight(pihipihi=a garment for the waist))、「例の・(腰に巻く)締めるもの(帯)」(「ピヒ」のH音が脱落して「ビ」となった)

の転訛と解します。

552おひえ(お冷え)

 麻、木綿等の綿入れの夜着。

 この「おひえ」は、

  「オ・ヒ・ヘイ」、O-HI-HEI(o=the...of;hi=raise,draw up,rise;hei=tie round the neck,wear round the neck,be bound or entangled)、「例の・(夜着の)首回りに(綿を)着せて・(夜着の厚さを)高くしたもの(お冷え)」(「ヘイ」のH音および語尾のI音が脱落して「エ」となった)

の転訛と解します。

553おびきだす(誘き出す)

 だまして誘い出す。誘き出す。

 この「おびきだす」は、

  「オ・ピキ・タツ」、O-PIKI-TATU(o=the...of;piki=support in work,come to the rescue of;tatu=reach the bottom,be at ease,be content,consent agree)、「例の・(実はそうでないのに)人助けの仕事と・(同意して)信じて行う(誘き出す)」(「ピキ」が「ビキ」と、「タツ」が「ダス」となった)

の転訛と解します。

554おひや(お冷や)

 水。とくに冷たい飲料水。もと、女房詞。冷や飯。

 この「おひや」は、

  「オ・ヒ・イア」、O-HI-IA(o=the...of;hi=make a hissing noise;ia=indeed,current,stream)、「例の・(冷たいと)叫び声を上げる・水(お冷や)」(「イア」が「ヤ」となった)

の転訛と解します。

555おふくろ(母親)

 母親を敬って言う語。また、母親を親しんで呼ぶ語。現在では他人に対してへりくだって言う語。 

 この「おふくろ」は、

  「オ・フクロア」、O-HUKUROA(o=the...of;hukuroa=train,retinue)、「例の・(つきっきりで世話をしてくれる)随行員(おふくろ)」(「フクロア」の語尾のA音が脱落して「フクロ」となった)

の転訛と解します。

556おへこ(御幣子)

 (氏子)山城国紫野の今宮神社の氏子。京都西陣の織物工。ふんどしの異名。

 この「おへこ」は、

  「オ・ヘイ・コ」、O-HEI-KO(o=the...of;hei=go towards,turn towards,be requited,tie round the neck,wear round the neck,be bound or entangled,;ko=to or at of place,in addressing males and females)、「例の・(今宮神社または西陣に)結び付けられている・人達(御幣子)」(「ヘイ」のH音が脱落して「ヘ」となった)

の転訛と解します。

557おぼえる(覚える)

 自然にそう思われる。自然に思い出される。(他の刺激などを)感じる。思い出す。(教わったり見聞したりしたことを)心に留める。記憶する。体得する。

 この「おぼえる」は、

  「オポ・ヘル」、OPO-HERU((Hawaii)opo=to lay a foundation as of stones,to dam up as water;heru=begin to flow of the tide,glide as anything floating in the water)、「(知識を溜める)ダム(を造って)・(水)知識を溜める(覚える)」(「オポ」が「オボ」と、「ヘル」のH音が脱落して「エル」となった)

の転訛と解します。

558おぼこ

 @まだ世間のことをよく知らない男や娘。うぶな男や生娘。髪を切り下げて結ばないでいる児童。

 A赤子。

 この「おぼこ」は、

  @「アウ・ポホ・コ」、AU-POHO-KO(au=firm,intense;poho=chest,bosom,seat of affections;ko=addressing to girls and males)、「(感情)世間知が・(堅い)足りない・男女(おぼこ)」または「胸が・(堅い)膨らんでいない・娘(おぼこ)」(「アウ」のAU音がO音に変化して「オ」と、「ポホ」のH音が脱落して「ポ」から「ボ」となった)

  A「オ・パウ・コ」、O-PAU-KO(o=the...of,belonging to;pau=consumed,denoting the complete or exhaustive character of any action;ko=addressing to girls and males)、「「実に・徹底した(顔を真っ赤にして泣きわめき、疲れると睡る)・子(赤ん坊)」(「パウ」のAU音がO音に変化して「ポ」から「ボ」となった)

の転訛と解します。

559おぼつかない(覚束無い)

 (景色などが)ぼんやりしてはっきりしない。(対象の様子がはっきりせず)気がかりだ。不安だ。頼りない。疑わしい。不確かだ。

 この「おぼつかない」は、

  「アウ・ポホ・ツカハ・ナイ」、AU-POHO-TUKAHA-NAI(au=firm,intense;poho=chest,bosom,seat of affections;tukaha=strenuous,vigorous,headstrong,passionate;nai=nei,neinei=stretch forward,reaching out)、「感情が・溌溂と・活動する(には)・(堅い)不足がある(覚束無い)」(「ポホ」のH音が脱落して「ポ」から「ボ」と、「ツカハ」のH音が脱落して「ツカ」となった)

の転訛と解します。

560おまえ(御前)

 目上の人に対し敬意をもつて用いる二人称代名詞。江戸後期以降、対等または下位者に対して用いる語となつた。

 この「おまえ」は、

  「オ・マエ」、O-MAE(o=the...of,belonging to;mae=languid,listless,withered,struck with astonishment,paralysed with fear,etc.)、「恐れ多くて(その前では)動けなくなる・お方(御前)」

の転訛と解します。

561おまけ

 商品の値を安く売ったり、景品、付録をつけたりすること。またねそのつけた品。

 この「おまけ」は、

  「オ・マハケ」、O-MAHAKE(o=the...of,belonging to;mahake=small)、「ほんの・少しの(おまけ)」(「マハケ」のH音が脱落して「マケ」となった)

の転訛と解します。

562おまる(御丸)

 病人、子供の用いる持ち運びのできる便器。>

 この「おまる」は、

  「オ・マル」、O-MARUA(o=the...of,belonging to;marua=pit,valley,hollow)、「例の・(大小便を受ける)穴(御丸)」(「マルア」の語尾のA音が脱落して「マル」となった)

の転訛と解します。

563おみ(臣)

 姓(かばね)の名。大化前代に畿内の在地有力豪族にあたえられた。天武朝に八色の゛いにより地位が低下した。この「おみ(臣)」については雑楽篇(その一)の334臣(おみ)の項および雑楽篇(その一)の335姓(かばね)の項の「臣(おみ)」を参照してください。

 この「おみ」は、

  「オ・ミヒ」、O-MIHI(o=the...of,belonging to;mihi=greet,admire)、「実に・尊敬される(部族)」(「ミヒ」のH音が脱落して「ミ」となった)

の転訛と解します。

564おみおつけ(御味御付)

 味噌汁をいう丁寧語。

 この「おみおつけ」は、

  「オ・ミオ・ツ・カイ」、O-MIO-TU-KAI(o=the...of,belonging to;(Hawaii)mio=to move swiftly,current;tu=stand,settle,fight with,energetic;kai=food)、「例の・(流れ)水に・(たいそう)手を加えた・食物(おみおつけ)」(「カイ」のAI音がE音に変化して「ケ」となった)

の転訛と解します。

565おみき(御神酒)

 神前に供える酒。この「みき(神酒)」については雑楽篇(その二)の1011酒(さけ)の項の「みき(神酒)」を参照してください。

 この「おみき」は、

  「オ・ミヒ・キ」、O-MIHI-KI(o=the...of;mihi=greet,admire;ki=full,very)、「例の・(神から下された)実に・尊い(酒)」(「ミヒ」のH音が脱落して「ミ」となった)

の転訛と解します。

566おみくじ(御神籤)

 神仏によつて吉凶を占うくじ。

 この「おみくじ」は、

  「オ・ミヒ・クフ・ウチ」、O-MIHI-KUHU-UTI(o=the...of;mihi=greet,admire;kuhu=thrust in,insert,conceal;uti=bite)、「例の・(神から下された)尊い・当たり(籤)が・(たくさんの籤の)中に入っているもの(御神籤)」(「ミヒ」のH音が脱落して「ミ」と、「クフ」のH音が脱落して「ク」となり、その語尾のU音と「ウチ」の語頭のU音が連結して「クチ」から「クジ」となった)

の転訛と解します。

567おみな(女。媼)

 @若い女。(女) A年とった女。老女。(媼)
 この「おみな(女。媼)」については国語篇(その五)の209をみなへし(女郎花)の項の「をみな(女)」および「おみな(媼)」を参照してください。

 この「おみな」は、

  @「アウ・ミイ・ナ」、AU-MII-NA(au=firm,intense;(Hawaii)mii=attractive,good-looking;na=to indicate position near or connection with the person addressed)、「ひきしまって(ピチピチして)・美しい・類の(女)」(「アウ」のAU音がO音に変化して「ヲ」と、「ミイ」の語尾のI音が脱落して「ミ」となつた)

  A「オミ・ナ」、OMI-NA((Hawaii)omi=to wither,droop;na=to indicate position near or connection with the person addressed)、「元気がなくなった・類の(女。嫗)」

の転訛と解します。

568おむつ(お襁褓)

 幼児の尻に当てて大小便を受ける布。「むつき(襁褓)」の丁寧語。おしめ。この「おむつ(お襁褓)」については国語篇(その十四)の028おしめ(襁褓)の項の「おむつ(お襁褓)」を参照してください。

 この「おむつ」は、

  「オ・ムツ」、O-MUTU(o=the...of;mutu=brought to an end,left off)、「例の・(乳児の排尿行為の)始末をするもの」

の転訛と解します。

569おめおめ

 恥じるべきことと感じても、勇気がないため、また、恐れなどから、恥をそそぐことをしないさま。転じて、恥知らずのさま。恥を感じないで平然としているさま。この「おめおめ」については国語篇(その一)の010オメオメの項を参照してください。

 この「おめおめ」は、

  「アウ・メ・アウ・メ」、AU-ME-AU-ME(au=gall,smoke;me=if,like,as it were)、「苦々しいもの(または鉄面皮)の・ような(恥を感じないで平然としているさま。おめおめ)」(「アウ」のAU音がO音に変化して「オ」となった)

の転訛と解します。

570おめでとう(お目出度う)

 新年やおめでたいことが合った時の挨拶の言葉。この「おめでとう(お目出度う)」については国語篇(その十四)の038おめでとう(お目出度う)の項を参照してください。

 この「おめでとう」は、

  「オ・マイタイ・トフ」、O-MAITAI-TOHU(o=the...of;maitai=good,beautiful,agreeable;tohu=mark,sign,point out,show,lay by)、「全く・良いことが・見えている(おめでとう)」(「マイタイ」のAI音がE音に変化して「メテ」から「メデ」と、「トフ」のH音が脱落して「トウ」となった)

の転訛と解します。

571おもいきや(思いきや)

 前々からそうなる、またはそうであると思っただろうか、思いもしなかった。意外にも。

 この「おもいきや」は、

  「アウ・モヒ・キヒ・イア」、AU-MOHI-KIHI-IA(au=smoke,cloud,rapid;mohi,mohimohi=smooth,sleek,tend;kihi=cut off,destroy completely;ia=indeed)、「(頭が)速く・スムーズに(回転して考えたことを)・なんと・すべて否定して(思いきや)」(「アウ」のAU音がO音に変化して「オ」と、「モヒ」のH音が脱落して「モイ」と、「キヒ」のH音が脱落して「キ」と、「イア」が「ヤ」となった)

の転訛と解します。

572おもいやり(思い遣り)

 推察。想像。思慮分別。人の身の上や立場、心情などについての察し。察していたわりの気持ちをもつこと。また、その気持ち。

 この「おもいやり」は、

  「アウ・モヒ・イア・リ」、AU-MOHI-IA-RI(au=smoke,cloud,rapid;mohi,mohimohi=smooth,sleek,tend;ia=indeed;ri=screen,protect,bind)、「(他人の心情を頭が)速く・スムーズに(回転して察したことを)・実に・(護る)いたわること(思い遣り)」(「アウ」のAU音がO音に変化して「オ」と、「モヒ」のH音が脱落して「モイ」と、「イア」が「ヤ」となった)

の転訛と解します。

573おもう(思う)

 (面(顔)に現れる意とする説、重い気分からとする説などがある)物事を理解したり、感受したりするために心を動かす。ある対象に心を向ける。

 この「おもう」は、

  「アウ・モフ」、AU-MOHU(au=smoke,cloud,rapid;mohu=smoulder)、「(頭が)速く(回転しながら)・(埋め火のように)表面的には動かない状況でいる(思う)」(「アウ」のAU音がO音に変化して「オ」と、「モフ」のH音が脱落して「モウ」となった)

の転訛と解します。

574おもうさん

 (母屋にいる人の意とする説がある)父を敬って呼ぶ語。宮中、宮家、公家、また、加茂の神官、本願寺両家などの家庭で用いる。

 この「おもうさん」は、

  「オ・モウ(ン)ガ・タナ」、O-MOUNGA-TANA(o=the...of;mounga=anything excellent,treasure;tana=his,her,its)、「あの・素晴らしく卓越した・彼の方(おもうさん)」(「モウ(ン)ガ」の名詞形語尾のNGA音が脱落して「モウ」と、「タナ」が「サン」となった)

の転訛と解します。

575おもうつぼ(思う壺)

 予期した状態。目的としたところ。期待したとおりになること。

 この「おもうつぼ」は、

  「アウ・モフ・ツポウ」、AU-MOHU-TUPOU(au=smoke,cloud,rapid;mohu=smoulder;tupou=bow the head,stoop down,dive,headlong)、「(頭が)速く(回転しながら)・(埋め火のように)表面的には動かない状況(頭の中で考えている状況)に・(飛び込む)事態が発展する(思う壺)」(「アウ」のAU音がO音に変化して「オ」と、「モフ」のH音が脱落して「モウ」と、「ツポウ」が「ツボ」となった)

の転訛と解します。

576おもしろい(面白い)

 見て楽しい。愉快だ。気持ちがいい。興味をそそられる。趣がある。望ましい情タイスである。こっけいである。この「おもしろい(面白い)」については国語篇(その十七)の330〜のしの項の「おもしゃい」の部の「おもしろい(面白い)」を参照してください。

 この「おもしろい」は、

  「オ・モチロ・オイ」、O-MOTIRO-OI(o=the...of,belonging to;motiro=look longingly at,beg;oi=heoi=denoting completeness or sufficiency of a statement or enumeration)、「例の・物事が自分の願っている通りにならないかと・見ていること(面白い)」(「モチロ」が「モシロ」となり、その語尾のO音と「オイ」の語頭のO音が連結して「モシロイ」となった)

  または「オ・モチ・ロイ」、O-MOTI-ROI(o=the...of;moti=consumed,surfeited;roi,whakaroiroi=wandering,unstable,unsettled)、「例の・いろいろな場所を訪れることを・堪能する(面白い)」(「モチ」が「モシ」となった)

の転訛と解します。

577おもちち(両親)

 母と父。両親。

 この「おもちち」は、

  「オモオモ・チチ」、OMOOMO-TITI(omoomo=gourd(whakaomoomo=tend a child or invalid,use sparingly,husband);titi=peg,be fastened with pegs)、「子供や病人などの世話をする・(結婚によって)結び付けられた者達(両親)」(「オモオモ」の反覆語尾が脱落して「オモ」となつた)

の転訛と解します。

578おもちゃ(玩具)

 子供の遊び道具。

 この「おもちゃ」は、

  「オモオモ・チア」、OMOOMO-TIA(omoomo=gourd;tia=stick in,drive in pegs etc.,adorn by sticking in feathers)、「注ェなどで飾りを付けた(または棒に結び付けた(千成り瓢箪のようなもの))・ひょうたん(玩具)」(「オモオモ」の反覆語尾が脱落して「オモ」と、「チア」が「チャ」となつた)

の転訛と解します。

579おもて(表)

 覆われていない、物事の外側や外面の部分。一対をなすものの主立った部分。この「おもて(表)」については国語篇(その十八)の135オモテの項を参照してください。

 この「おもて」は、

  「オモ・タエ」、OMO-TAE((Hawaii)omo=lid,cover,plug,cork;tae=arrive,reach,extend to space or time)、「(カバーするもの)外側を・延長した場所(表)」(「タエ」のAE音がE音に変化して「テ」となった)

の転訛と解します。

580おもねる(阿る)・おべっか・おべんちゃら

 他人の機嫌を取って、気にいられようとする。追従する。へつらう。おべっかを使う。おべんちゃらを言う。この「おべっか」、「おべんちゃら」については国語篇(その十四)の037おべっかの項の「おべっか」および「おべんちゃら」を参照してください。

 この「おもねる」、「おべっか」、「おべんちゃら」は、

  「オ・マウ・(ン)ゲル」、O-MAU-NGERU(o=the...of;mau=fixed,continuing,established,caught;ngeru,ngerungeru=smooth,soft,sleek)、「例の・人に取り入るような・(言動を)繰り返す(阿る)」(「マウ」のAU音がO音に変化して「モ」と、「(ン)ゲル」のNG音がN音に変化して「ネル」となった)

  「オ・パイ・ツカハ」、O-PAI-TUKAHA(o=the...of;pai=good,excellent,suitable,satisfactory,pleasant,agreeable;tukaha=strenuous,vigorous,headstrong,passionate)、「例の・人を喜ばす(言動を)・熱心にする(おべっか)」(「パイ」のAI音がE音に変化して「ペ」から「ベ」と、「ツカハ」のH音が脱落して「ッカ」となった)

  「オ・パイ(ン)ガ・チア・アラ」、O-PAINGA-TIA-ARA(o=the...of;painga=pai=good,excellent,suitable,satisfactory,pleasant,agreeable;tia=stick in,drive in pegs etc.,adorn by sticking in feathers;ara=namely,in other words)、「例の・人を喜ばす(言動を)・(注ェなどで)飾るように(おおげさに誇張して)・別の言葉で言う(おべんちゃら)」(「パイ(ン)ガ」のAI音がE音に、NG音がN音に変化して「ペナ」から「ベン」と、「チア」の語尾のA音と「アラ」の語頭のA音が連結して「チアラ」から「チャラ」となった)

の転訛と解します。

581おもはゆい(面映ゆい)

 顔を合わせるのが恥ずかしい。きまりが悪い。てれくさい。

 この「おもはゆい」は、

  「オ・マウ・ハイ・ウイ」、O-MAU-HAI-UI(o=the...of;mau=fixed,continuing,established,caught;hai=not;ui=disentangle,disengage,unravel,relax or loosed a noose,ask)、「例の・緊張が解け・ない・ままでいる(面映ゆい)」(「マウ」のAU音がO音に変化して「モ」と、「ハイ・ウイ」が「ハユイ」となった)

の転訛と解します。

582おもむき(趣)

 心がある方向へ動いてゆくこと。また、その方向。事柄の内容のだいたいの方向、内容、趣旨。事柄の成り行き。物事についての感興、情趣、風情。

 この「おもむき」は、

  「オ・マウ・ムフ・キ」、O-MAU-MUHU-KI(o=the...of;mau=fixed,continuing,established,caught,entangled,retained;muhu=grope,feel after,push one's way through bushes etc.;ki=to(of place),into,upon,towards,at,against,for,full,very)、「例の・(感情や事柄が)ある方向へ向かって・動いて行き・続けること(趣)」または「例の・(感情が)十分に・感興を受け・続けること(趣)」(「マウ」のAU音がO音に変化して「モ」と、「ムフ」のH音が脱落して「ム」となった)

の転訛と解します。

583おもむろ(除)

 動き方がゆっくりしているさま。しずか。ゆるやか。

 この「おもむろ」は、

  「オ・マウ・ムフ・ロ」、O-MAU-MUHU-RO(o=the...of;mau=fixed,continuing,established,caught;muhu=grope,feel after,push one's way through bushes etc.;ro=roto=inside)、「例の・内部を・探し・終えたところで(次の行動に移る。除)」(「マウ」のAU音がO音に変化して「モ」と、「ムフ」のH音が脱落して「ム」となった)

の転訛と解します。

584おもや(母屋)

 寝殿造りなどの建物の中央の部分。屋敷の中で世帯主の住む主要な家屋。

 この「おもや」は、

  「オ・モウ(ン)ガ・イア」、O-MOUNGA-IA(o=the...of;mounga=anything excellent,treasure;ia=indeed)、「あの・実に・卓越した(家屋。母屋)」(「モウ(ン)ガ」の名詞形語尾のNGA音が脱落して「モウ」から「モ」と、「イア」が「ヤ」となった)

の転訛と解します。

585おもゆ(重湯)

 水分を多くした粥の上澄み液。病人や幼児の主食とする。

 この「おもゆ」は、

  「オ・マウ・イ・ウ」、O-MAU-I-U(o=the...of;mau=food products;i=ferment,turn sour;u=bite,gnaw,be firm,be fixed,reach its limit)、「例の・(米から炊いた食品の)粥で・湧いて・頂点に達している(沸騰した湯のように薄いもの)(重湯)」(「マウ」のAU音がO音に変化して「モ」と、「イ」と「ウ」が連結して「ユ」となった)

の転訛と解します。

586おもろ(神謡)

 沖縄古代の歌謡。神事や宮廷の祝宴などに歌われた叙事詩。

 この「おもろ」は、

  「アウ・モロ」、AU-MORO(au=firm,intense;(Hawaii)molo=to turn,twist,spin,to interweave and interlace)、「激しい感情が・錯綜して(歌われている歌謡。神謡)」(「アウ」」のAU音がO音に変化して「オ」となった)

の転訛と解します。

587おもわく(思惑)

 心の中で考えていること。予測。ある人を恋い慕うこと。また、その相手。特に相場の変動を予想すること。また、その予想によって売買すること。

 この「おもわく」は、

  「オ・マウ・ハク」、O-MAU-HAKU(o=the...of;mau=fixed,continuing,established,caught,entangled,retained;haku=complain of,find fault with)、「例の・(その事柄の内容、成行きに)不安があるものについて・(予測する)考えを巡らすこと(思惑)」(「マウ」のAU音がO音に変化して「モ」と、「ハク」が「ワク」となった)

の転訛と解します。

588おや(親)

 子を産んだ人。また、他人の子を自分の子として養い育てる人。祖先の人々の総称。元祖。上に立つ者。中心になるもの。

 この「おや」は、

  「オイ・イア」、OI-IA(oi=heoi=denoting completeness or sufficiency of a statement or enumeration;ia=indeed)、「実に・完璧に(子を育てる)役割を果たす人(親)」(「オイ」の語尾のI音と「イア」の語頭のI音が連結して「オイア」から「オヤ」となった)

の転訛と解します。

589おやかた(親方)

 親の代わりとなるような人。また、親のように尊敬すべき人。年上の者。家を継ぐべき長兄。集団のかしら。

 この「おやかた」は、

  「オイ・イア・カハ・タ」、OI-IA-KAHA-TA(oi=heoi=denoting completeness or sufficiency of a statement or enumeration;ia=indeed;kaha=rope,edge,ridge of a hillline of ancestry;ta=dash,beat,lay)、「実に・完璧に(子を育てる)役割を果たす(人。親のような)・(集団の)最高の地位に・居る人(親方)」(「オイ」の語尾のI音と「イア」の語頭のI音が連結して「オイア」から「オヤ」と、「カハ」のH音が脱落して「カ」となった)

の転訛と解します。

590おやかた(御館)

 高貴な人の邸宅。奉公先の屋敷。そこに住む主人をいう尊敬語。

 この「おやかた」は、

  「オ・イア・カタエ」、O-IA-KATAE(o=the...of;ia=indeed;katae=how great)、「例の・実に・巨大な(建物。御館)」(「イア」が「ヤ」「カタエ」の語尾のE音が脱落して「カタ」となった)

の転訛と解します。

591おやじ(親父)

 父親を親しんで呼ぶ語。年取つた男を親しんで、または見下して呼ぶ語。かしら立つたものを呼ぶ語。

 この「おやじ」は、

  「オイ・イア・チチ」、OI-IA-TITI(oi=heoi=denoting completeness or sufficiency of a statement or enumeration;ia=indeed;titi=stick in ,as a peg etc.,adorn by sticking feathers etc.)、「実に・完璧に(子を育てる)役割を果たす人(親)で・(羽根の)髪飾りまたは首飾りをしている者(親父)」(「オイ」の語尾のI音と「イア」の語頭のI音が連結して「オイア」から「オヤ」と、「チチ」の反覆語尾が脱落して「チ」から「ジ」となった)

の転訛と解します。

592おやすみなさい(お休みなさい)

 就寝の際の挨拶の言葉。「休憩しなさい」と言う呼びかけの言葉。

 この「おやすみなさい」は、

  「オ・イア・ツ・ミヒ・ナ・タイ」、O-IA-TU-MIHI-NA-TAI(o=the...of;ia=indeed;tu=stand,settle;mihi=greet,compliment;na=by,belonging to,indicating parentage or descent;tai=a term of address to males or females)、「あの・きちんと・挨拶を・して・親(または子)の名を・呼ぶ(おやすみなさい)」(「イア」が「ヤ」と、「ツ」が「ス」と、「タイ」が「サイ」となった)

  または「オ・イア・ツ・ミ・ナ・タイ」、O-IA-TU-MI-NA-TAI(o=the...of;ia=indeed;tu=stand,settle;(Hawaii)mi=urine;na=by,belonging to,indicating parentage or descent;tai=a term of address to males or females)、「あの・きちんと・小用を・足して(寝なさいまたは休憩しなさい)と・親(または子)の名を・呼ぶ(おやすみなさい)」(「イア」が「ヤ」と、「ツ」が「ス」と、「タイ」が「サイ」となった)

の転訛と解します。

593おやつ(お八つ)

 八つ時(現在の午前・午後2時頃から4時頃。京、大坂では八つを本願寺の太鼓がつげるので「お」を冠したという)。昔の時刻の八つ時にあたる午後3時前後に食べる間食。一般の間食。この「おやつ」については国語篇(その十四)の061かんしょく(間食)の項の「おやつ」を参照してください。

 この「おやつ」は、

   「オ・イ・ワ・ツ」、O-I-WHA-TU(o=the...of;i=by,with,at,upon;wha=four,fourth;tu=stand,be erect,be set)、「例の・(四の)上に・四を・重ねる(八。昔の「八つ時」(現在の午後三時ごろ)に出る間食)」(「ワ」のWH音が脱落して「ア」となり、直前の「イ」と連結して「ヤ」となつた)

の転訛と解します。

594おやま(女形)

 歌舞伎で女の役をする男の役者。

 この「おやま」は、

  「オ・イア・マ」、O-IA-MA(o=the...of;ia=indeed;ma=to express dual relationship caused by marriage of persons belonging to different generations,a few other close relationship)、「例の・実に・(二重の関係を有する者)男が女の役を演ずる役者(女形)」(「イア」が「ヤ」となった)

の転訛と解します。

595および(及び)

 およぶこと。届く限り。名詞と名詞を繋ぎ、並列の関係にあることを示す。

 この「および」は、

  「オ・イオ・ピヒ」、O-IO-PIHI(o=the...of;io=muscle,spur,line,column;pihi=spring up,begin to grow)、「例の・カラム(名詞または名詞句のまとまり)が・続々とでてくる(及び)」(「イオ」が「ヨ」と、「ピヒ」のH音が脱落して「ピ」から「ビ」となった)

の転訛と解します。

596およびごし(及び腰)

 腰を少し曲げ、爪先立って遠くの物を取ろうと手を伸ばしたときのような不安定な姿勢。へっぴり腰。何かに取り組む姿勢に自身がなくて、おどおどしているさま。あいまいな態度。

 この「およびごし」は、

  「オイ・オピ・コチ」、OI-OPI-KOTI(oi=shudder,move continuously,agitate,disturb;opi=terrified;koti=cut in two,divide,interrupt,cut off)、「震えながら・伸ばした手が掴んだものから離れることを・恐れているさま(及び腰)」(「オイ・オピ」が「オヨピ」から「オヨビ」と、「コチ」が「コシ」となった)

の転訛と解します。

597おり(折)

 時の折り目、時点をいう。時節。季節。機会。際。ものを折ること。また、そのもの。薄い板で造った容器、櫃、箱など。

 この「おり」は、

  「オリ」、ORI(cause to wave to and fro,sway,move about)、「(前後左右に揺れる。振れる)折ること(折り)」

の転訛と解します。

598おれ(俺)

 対称。下位の者に対して、または相手をののしる時などに用い、軽蔑の意を含む。自称。古くは、広く貴賤男女を問わず目上にも目下にも用いたが、現代では、男子が改まらない場面で、同等または目下に対して用いる。

 この「おれ」は、

  「ホレ」、ORE(bald,bare,deficient,silly,empty-headed)、「愚か者(俺)」(「ホレ」のH音が脱落して「オレ」となった)

の転訛と解します。

599おろか(愚か)

 認識、表現などの程度が不十分なさま。粗略なさま。頭の働きが鈍いさま。性質、状態我不十分であるさま。

 この「おろか」は、

  「オロ・カハ」、ORO-KAHA(oro=defame,backbite;kaha=strong,strength,persistency)、「(頭の働きが鈍いなどと)強く・(非難)中傷されるさま(愚か)」(「カハ」のH音が脱落して「カ」となった)

の転訛と解します。

600おわす

 「ある」「いる」の尊敬語。いらっしゃる。おいでになる。とくに、この世にいる、生きているの意の尊敬語。生きていらっしゃる。「行く」「来る」の尊敬語。いらっしゃる。

 この「おわす」は、

  「オ・ワ・ツ」、O-WA-TU(o=the...of;wa=definite space,area,region,indefinite country;tu=stand,settle)、「あの・(特定の)場所に・(いる)おられる(おわす)」(「ツ」が「ス」となった)

の転訛と解します。

601おんどをとる(音頭を取る)

 合唱の調子を整えるために歌いはじめる。拍子をとる。他の人に先立って物事をする。首唱者となる。

 この「おんどをとる」は、

  「オ(ン)ガ・ト・ワウ・トル」、ONGA-TO-WAU-TORU(onga=agitate,shake about;to=drag,haul;wau=quarrel,wrangle,discuss;toru=toro=stretch forth,extend,survey,explore)、「(他人を)動かし・引っ張るために・議論を吹っ掛け・(物事を)進めて行く(音頭を取る)」(「オ(ン)ガ」のNG音がN音に変化して「オナ」から「オン」と、「ト」が「ド」と、「ワウ」のAU音がO音に変化して「ヲ」となった)

の転訛と解します。

602おんな(女)

 女性。婦人。とくに、精神的にも肉体的にも1人前となった女性。夫に対する妻。愛人。女中。遊女。など。この「おんな」については国語篇(その九)の099おんなの項を参照してください。

 この「おんな」は、

  「オ・ナナ」、O-NANA(o=the...of;nana=tend carefully,nurse)、「例の・人の世話(看護・育児)を・する者(女)」(「ナナ」が「ンナ」となった)

の転訛と解します。

603おんばひがさ(乳母日傘)

 乳母(おんば)に抱かれ、日傘をさしかけられるなどして大事に育てられること。「乳母(うば)」については、本篇の354うば(乳母)の項を参照してください。

 この「おんばひがさ」は、

  「オ・ナナ・アパ・ヒ・カハ・タ」、O-NANA-APA-HI-KAHA-TA(o=the...of;nana=tend carefully,nurse;apa=slave,company of workmen or slaves,seek;hi=raise,draw up,rise;kaha=crested grebe;ta=dash,beat,lay)、「例の・人の世話(看護・育児)を・する女の・(奴隷)召使い(によって)・高く掲げられた・(かいつぶりの)冠毛を・載せたような(飾りを付けた傘。傘の下で大事に育てられるさま)」(「ナナ」の反覆語尾が脱落して「ナ」となり、そのA音と「アパ」の語頭のA音が連結して「ナパ」から「ンバ」と、「カハ」のH音が脱落して「カ」から「ガ」と、「タ」が「サ」となった)

の転訛と解します。

604おんぶ

 子供を背負うこと。また、せおわれること。他人にたよること。この「おんぶ」については国語篇(その十六)の161ねんねこの項の「オンブバンテン」を参照してください。

 この「おんぶ」は、

  「オニ・プ(ン)ガ」、ONI-PUNGA(oni=move,wriggle;punga=swelling,joint,fix with an anchor)、「身をよじって暴れる(子供を)・(背中に固定)負ぶうこと(おんぶ)」(「オニ」が「オン」と、「プ(ン)ガ」の名詞形語尾のNGA音が脱落して「ブ」となった)

の転訛と解します。

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<修正経緯>

1 平成25年4月1日

 407-2えんがちょの項を追加しました。

2 平成25年7月15日

 503おちゃのこさいさいの解釈を修正し、517おでん・でんがくの項を修正しました。

3 平成27年4月1日

 243-2いちゃもんの項を追加しました。

国語篇(その二十)終り


U R L:  http://www.iris.dti.ne.jp/~muken/
タイトル:  夢間草廬(むけんのこや)
       ポリネシア語で解く日本の地名・日本の古典・日本語の語源
作  者:  井上政行(夢間)
ご 注 意:  本ホームページの内容を論文等に引用される場合は、出典を明記して ください。
(記載例  出典:ポリネシア語で解く日本の地名・日本の古典・日本語の語源
http://www.iris.dti.ne.jp/~muken/timei05.htm,date of access:05/08/01 など)
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