池袋ジュンク堂探検記

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3F

 個人的に最も気合いの入る、文芸書、文庫、新書、選書の階。ここは少したっぷりめに時間をとらないととてもまわれない。

 まずはエスカレーターそばの全集・海外文学の棚から。全集は見ても価値がほとんどわからない上に、そもそも金額的に全く手が出ないと思われるためパス。海外文学の棚をはじっこから眺めていく。

 

 海外文学にも十分に棚を使っていて、蔵書数もかなりの物。ただそれでもLIBLOの歩に軍配をあげたくなるのは、平積み、面置きの冊数が少ないからだと思う。数としてはそんなにかわらない、もしくはこちらの方が多いのかも知れないけど、やはり新しい海外文学の作家を発掘するには、多少アピールがあった方が探しやすいのだ。

 最初はフランス文学。知人の本があってびっくりしたけど、俺自身はどうもフランスとは相性が悪い。仏文も今ひとつ肌に合わぬと心で詫びながら簡単に通り過ぎる。ミシェル・ウェルベック『素粒子』(筑摩書房:2600円)だけをチェック。

 隣はドイツ文学の棚。ヘッセとかカフカの名前が並び、そのほかにはナチスを扱った文学作品が多いのが特徴かも。個人的にはエンデなんかにつながるメルヘンの系譜が気に入って、ドイツ文学はちょっと探索していきたいという欲求があるため、すこしじっくり棚を眺めてみる。ギュンター・グラス『女ねずみ』(国書刊行会:2718円)、スペイン史を扱った歴史物、リオン・フォイヒトハンガー『トレド風雲録』(晶文社:3786円)、何年か前に読んで、もはや記憶もおぼろな『狂気の王国』(作品社)の著者、フリードリヒ・グラウザーの著書で、『狂気の王国』の続編でもある『クロック商会』(作品社)など、案の定気になる本が目白押しだ。

 続くラテンアメリカ、東欧文学の棚も、いつも気になっている所。ホルヘ・ルイス・ボルヘスやスタニスワフ・レムなど、おなじみの名前が並ぶ中、ヤロスラフ・ハシェック『不埒な人たち』(平凡社:1800円)は装丁からしてなんだか楽しそう。

 棚の裏に回ると今度はアジア、アフリカ文学が並び、英米文学へと続く。ジョン・ファウルズ『マゴット』(国書刊行会:3200円)は、仮想歴史物の大作。仕掛けもたっぷり、という感じでいかにも面白そうなんだけど、値段とサイズを考えて1年前にも結局あきらめた本。やはり手には取る物の、家にある未読の山や、同じようにボリュームたっぷりでそそるチャールズ・パリサー『五輪の薔薇』(早川書房:上下各4000円)を同じ棚から買って未だに読めてない事実が頭に浮かび、やはり断念。

 もう一本の棚には、平積みの『指輪物語』コーナーから続いて、ファンタジー、幻想文学が並ぶ。「ハリーポッターシリーズ」や『指輪物語』の御陰ですっかり息を吹き返した感のあるファンタジーだけど、棚の内容は、マザーグースからC・S・ルイスまで様々。

 エスカレーター脇のちょっと短い棚からは、海外、国内のエンターテインメント文学が続く。この手の単行本は、近所の書店でも手に入りそうな物から、文庫になるのを待とうかな、と思ってしまう物まで、なかなか真剣にチェックし辛いものが多い。
  案の定、書店で見かけてなんとなく手を出さず仕舞いな恩田陸『ドミノ』(角川書房:1400円)や、伊集院静『ピンの一(ピン)』(幻冬舎:1700円)が目に入る。前者は書店でその装丁を見た時から気になって仕方がなかった。後者にいたっては、もう文庫になってるのに、結局読まずにいる。これを機にやはり読むことにしようかな。

 何年か前に読んで、ハマりまくった辻原登『翔べ麒麟』(読売新聞社:1905円)は未だに棚に健在。確か文庫化されてると思うので、強烈にアピールしていきたい。遣唐使として唐に渡った阿倍仲麻呂が主人公の伝奇物。文春文庫に入っている。
  その辻原登『遊動亭円木』(文芸春秋:1714円)が隣に並んでいて、これまた面白そうだったのに、そういえば買い忘れた。激しく後悔する。

 

 旧レジ前の新刊コーナーでカペル・チャペック『ポケットから出てきたミステリー』(晶文社:2400円)を眺めつつ、奥の新設部分へ向かう。
  新刊コーナーからすぐの文芸評論の棚の後ろには、「プレゼントブック」と銘打たれたコーナーが。なにかと思ってみれば、「こげぱん」などの絵が並んでいた。なるほど、これらはプレゼント用の本だったんですか。自分で読まないような本をプレゼントするって今ひとつ意味が分からないけど、まあいいんでしょう。  

 静かに個人的に目を引くタレント写真集の棚を素通りすると、『本の雑誌』(本の雑誌社)関連の本が並んだ棚。ちゃんと一つのコーナーになるんだからスゴイと思うけど、半分くらいは椎名誠の本だった。

 続いてサブカルチャー関係の棚がそびえる。前からジュンク堂はサブカルの本を一杯扱っていて、以前はその近辺だけ独特な人々がずいぶん集まっていて独自の空間を形成していたんだけど、今日はずいぶんスッキリ。サブカルのコミックがB1に移ったからだろうか。

 

 その奥には広大な敷地を使って文庫、ノベルス、新書の棚がずらりと並ぶ。この階の新設部分のほぼ全域を使って並べられているだけに、迫力はあるけど、じっくり見てみると平積みの本は意外に平凡。通常の棚前にある平積み、面置きも、平積みだけの棚を見ても、特に個性的な本が並んでいる様子はない。もちろん冊数は圧倒的だけど、これだけ棚面積があるんだから、もっと独自に売りたい本をアピールしてもいいような気も。

   特に目に入ったのは河出文庫からでてる「20世紀SFシリーズ」。40年代、50年代と年代ごとに90年代までの短編を収録したシリーズ。既読のものが多かったけど、アンソロジーの作り方としてはなかなか面白い。

 

 大量の文庫、新書の棚に目を眩まされたので、一通り珍しい版元の文庫などを省みつつ、4Fへ向かうことにする。