池袋ジュンク堂探検記

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検討・そして購入へ

 全コーナーを見終わったところで、4Fに戻り、奥まったところにある喫茶店で一服がてら、購入する本を検討する。店内は禁煙のため、外のテラス部分でコーヒーを注文。風はそんなに強くないけどちょっと寒くて寂しい気持ちになる。外もすっかり暗くなっているではないか。

 テラスは草木や壁に豆電球でライティングされていて、夜でもいい雰囲気。店側にある小さな農園みたいな物を囲むようにしてテーブルと椅子が配置されている。

 注意ポイントは座る位置。店内をのぞき込むようになる外側、店への入り口に一番近いあたりの席は良い物の、店への入り口から一番遠い所の席に座ると、目に映るのは「代々木ゼミ」と大きく書かれた赤いネオンの光ばかりで、せっかくの雰囲気もぶちこわしなのは間違いない。

 どんなに寒くても俺はタバコ吸うもんね、と一人意味もなく息巻きながら、チェックした書籍の名前をたどっていく。いつも大きな書店に来て残念なのが、面白そうな本が一杯あるのに、その全てを読むわけには行かない、という現実。長く売れる一部の書籍を覗けば、本の寿命は非常に短い。一期一会ではないけど、面白そう、と思ったときに買わずにいると、あっという間に流通から姿を消してしまうのだ。活字中毒者の多くが、本購入中毒者と化してしまう罠はこんな所に潜んでいる。

 

 えいやっと気持ちをかためて、早速購入すべく喫茶店を出る。最初の作戦通り最上階から購入する本を一気にカゴに投げ込んでいく予定だったが、ここでハタと地下のコミック売り場を見ていなかったことに気付き、慌てて地下へ。

 以前は学習参考書と一緒の売り場だったコミックも、コミックとして独立してB1を占領した。流石の品揃えはB1も同様で、もはや売ってないと思っていた俺が子どもの頃、もっと昔のマンガも置いてあって、まだ帰るのかと一安心。浦沢直樹『MONSTER』(小学館)の最終巻が置いてあって、お、完結したのか、と早速持ってきたカゴに入れる。初回限定版で作中に登場した絵本がついている版があるらしい。

 

 コミックのB1を全部眺めて、改めてジュンク堂制覇をひとりこっそり喜びながらエレベーターへ。結局8F、9Fからは購入本がないので、7Fへ直行。『SPACE ATRAS』がやはりかなり気を惹いたんだけど、今回は泣く泣くあきらめ、眺めるだけで楽しい『ナショナル ジオグラフィック』(日経ナショナル ジオグラフィック社)の美しい写真を集めた、『ナショナル ジオグラフィック傑作写真ベスト100』(日経ナショナル ジオグラフィック社)と、ミニ知識風でマニアックな日高敏隆『ネコはどうしてわがままか』(法研)をカゴへ。様々な動物の特徴を、人間的に解説している本だが、題名にネコのわがままさを持ってきたところが勝因だと思う。

 

 6Fも気を惹く書籍が満載で、笑いも得られる楽しい階だったんだけど、やっぱり見送り。続く5Fでは、『アマゾン・ドット・コム』がやっぱり魅力的なんだけど、これ以上アマゾンでお金を払うのもしゃくなので、やはりあきらめる。

 

 自分にとっては重要な専門書も多い4Fでは、あえて自分に関係のある専門書のみを素通りして、社会学の棚からアンソニー・ギデンスの『暴走する世界』(ダイヤモンド社)を手に取ることにする。ここで泣く泣くあきらめた『アイルランド史入門』は次回もう一度出会えれば購入したい。

 

 3Fでは、ファンタジーブームにあやかって、ハンス・ベンマンの『石と笛』(河出書房新社)全4巻をカゴに入れる。 前回ジュンク堂に来たときから気になっていて、今日再びLIBLOでも気を惹いた、ドイツメルヘンの大作。腰を据えて読みにかかるには時期的にももってこいだ、と自分で納得。

 このフロアでは本当に沢山の本をあきらめないとならないのが残念だが、あえて高橋源一郎『ゴヂラ』(新潮社)を手に取ることにした。

 

 いよいよ1Fのレジに到着。その前に自由価格本からさっき目を付けた『GQ』を数冊ピックアップ。どこに注目して買って良いのかわからないので、単純に、表紙にデ・ニーロが写っている「NEW YORK」を特集している2000.4号、クラプトンが表紙の、ジャズを特集している2001.5号、そしてミステリを特集している2001.9号の3冊に決定。

 ジュンク堂のレジは1Fに集中している。かつてのように各階にレジがないのは不便なようだけど、「それぞれの階にレジを置くと、商品管理やお客さんからの問い合わせへの対応などが十分にできない」というジュンク堂の主張もごもっとも。書店員がレジうち人になるよりも、書籍販売、商品管理のプロとして仕事ができる環境である方が、長い目で見ればユーザーにとってはありがたいと思う。

 

 これにてジュンク堂終了、と店を出るが、重い袋を下げたままLIBROに寄り道。帰り道になるので、いつもジュンク堂の袋を下げて来てすまぬすまぬ、と心でわびを入れつつ、足早にもう一度棚を捜索。名作『ゲド戦記』(岩波書店)の作者、アーシュラ・K・ルグィンが文を書いている珍しい絵本『一番美しいクモの巣』(みすず書房)とピアノ職人との出会いを扱ったノンフィクション、T・E・カーハートの『パリ左岸のピアノ工房』(新潮クレストブックス)を購入し、長い一日を終えたのであった。