国語篇(その二十一)


国語篇(その二十一)

<慣用語概観(その二)>「カ」から「ソ」まで まで)

(平成25-2-1書込み。28-9-1最終修正)(テキスト約205頁)


トップページ 国語篇一覧 この篇のトップ 語 句 索 引

[おことわり]

 この篇は、現代もなお一般的に使われる慣用語(慣用句を含む)の主要なものの中に残る語源不詳または意味不詳の縄文語の意味を解明しようとするシリーズの一です。

 この部類に属する書籍または辞典は、枚挙にいとまがありませんが、ここでは『語源大辞典』堀井令以知編、東京堂出版、1988年に拠り、アート、アーメンなどの外来語、阿吽、阿闍梨などの仏教用語、漢語由来であることが明らかな語、他の篇で対象となっている動植物名、枕詞およびいわゆる女房言葉であまり一般的でないものは除外し、『日本語「語源」辞典』学研編集部編、学研、2004年に所収の語で重要なものを追加して解釈することとしました。

 この慣用語概観では、「ア」から「オ」までを「その一」、「カ」から「ソ」までを「その二」、「タ」から「ノ」までを「その三」、「ハ」から「ワ」までを「その四」に分割して掲載します。また、すでに他の国語篇や地名篇、古典篇、雑楽篇の各篇において取り上げたものは、その旨注記しました。

 縄文語のポリネシア語による解釈は、他の諸篇と同様、原則として、その起源となったと推定される原ポリネシア語から変化したマオリ語(すでに失われた語彙でハワイ語に残るものについてはハワイ語とし、その旨を注記しました)とその意味を英語および日本語によって表記しました。主として使用したマオリ語・ハワイ語の辞典は次の通りです。
 (1)H.W.Williams M.A,Dictionary of the Maori Language,seventh edition,1997,GP Publications.
 (2)P.M.Ryan,The Reed Dictionary of Modern Maori,1995,TVNZ.
 (3)Mary Kawena Pukui and Samuel H.Elbert,Hawaiian Dictionary, revised and enlarged edition,1986,University of Hawaii Press.  

<慣用語概観(その二十一)>

「カ」から「ソ」まで>

目 次 

「カ」

605かい(貝)・かいがら(貝殻)606かい(櫂)607かい(峡)608かい(甲斐)609かいがいしい(甲斐甲斐しい)610かいご(卵)

611かいと(垣内)612かいねり(掻練り)613かいほう(介抱)614かいもく(皆目)615かいもち(掻餅)616かう(買う)617がえんずる(肯んずる)618かおる(薫る)619かか(母)620かがい(耀歌)・うたがき(歌垣)

621かかげる(掲げる)622かかし(案山子)623かかと(踵)624かがなべて(かが並べて)625かがみ(鏡)626かきもち(欠き餅)627かく(書く)628かく(掻く)629かくご(覚悟)630がくや(楽屋)

631かぐら(神楽)632かくらん(霍乱)633がけ(崖)634かけおち(駆落ち)635かけくらべ(駆け比べ)636かけぢゃや(掛け茶屋)637かけひ(筧)638かげぜん(陰膳)639かけひき(駆引き)640かげろう(陽炎)

641かこ(水夫)642がごうじ(鬼)643かごめかごめ644かさ(笠。傘)645かさ(瘡)646がさつ647かざみ(汗衫)648かじ(楫。梶。舵)649かしこ650かしましい(姦しい/a)/

651かじや(鍛冶屋)652かじょう(嘉)653かしわで(柏手。膳。膳夫)654かず(数)655かすか(幽か)656かずく(被く)657かずのこ(数の子)658かすむ(霞む)659かぜ(風)660がせ(偽)

661かせぐ(稼ぐ)662かた(肩)663がた

664かたい(堅い)665かたいなか(片田舎)666かたかな(片仮名)667かたぎ(気質)668かたくな(頑な)669かたぐるま(肩車)670かたこと(片言)

671かたじけない(忝ない)672かたず(固唾)673かたすかし(肩透かし)674かたな(刀)675かたはらいたい(片腹痛い)676がたぴし677かたびら(帷子)678かたみ(形見)679かたむく(傾く)680かたる(語る。騙る)

681がたろ(河太郎)681-2がちぎょうじ(月行事)682かつ(且つ)683かっこう(恰好)683-2かって684がってん(合点)685かっぱ(河童)686かて(糧)687かど(門)688かとく(家督)689かどまつ(門松)690かな(仮名)

691かない(家内)692かなえ(鼎)693かなぐる694かなしい(悲しい)695かなめ(要)696かならず(必ず)697かね(金)698かねて(予て)699かばね(姓)700かばやき(蒲焼き)

701かばん(鞄)702かぶ(株)703かぶき(歌舞伎)704かぶと(兜)705かぶれる706かぶろ(禿)707かべ(壁)708かま(鎌)709かま(釜)710がまぐち(蝦蟇口)/p

711かまくら712かます(叺)713かまち(框)714かまど(竈)715かまとと716かまぼこ(蒲鉾)717がまん(我慢)718かみ(神)719かみ(髪)720かみ(紙)

721かみなり(雷)722かむ(噛む)723がむしゃら(我武者羅)724かめ(甕)725がめつい726かもい(鴨居)727かもす(醸す)728かや(蚊帳)729かやく(加薬)730から(空)

731〜から・〜まで732からうす(唐臼)733からかさ(唐傘)734からきし735がらくた736からくり(機関)737からすみ(唐墨)738からと(唐櫃)739からめて(搦め手)740かりそめ(仮初め)

741かりほ(仮廬)742かるさん(軽衫)743かるた(歌留多)744かろうじて(辛うじて)745かわ(川、河)746かわいい(可哀い。可愛い)747かわきり(皮切り)748かわざんよう(皮算用)749かわせ(為替)750かわたれどき(彼誰時)

751かわや(厠)752かわら(瓦)753かわらけ(土器)754かん(燗)755かんがえる(考える)756かんがみる(鑑みる)757がんくび(雁首)758かんざし(簪)759がんじがらめ(雁字搦め)760かんじき

761かんしゃく(癇癪)762かんじん(肝心)763かんだちめ(上達部)764かんてき(七厘)765かんてら766かんてん(寒天)767かんどう(勘当)768かんな(鉋)769かんなぎ(巫)770かんぬき(閂)

771かんぬし(神主)772かんのむし(疳の虫)773かんばせ(顔)774がんばる(頑張る)775かんばん(看板)776かんむり(冠)

「キ」

777きく(聞く)778きく(効く)779ぎごちない780きこり(木樵)781きさ(象)782きざ(気障)783きさいちべ(私部。私市部)784きさき(后)785きさく786きざし(兆し)787きざはし(階)788きさま(貴様)789きさらぎ(如月)790きしめん(棊子麺)

791きずな(絆)792きせる(煙管)793きた(北)794きたない(汚い)795きたる(来る)796きちょうめん(几帳面)797きっさき(切っ先)798ぎっちょ799きっと(屹度)800きっぷ(切符)

801きっぷ(気風)802きなこ(黄粉)803きぬ(衣。絹)804きぬかつぎ(衣かつぎ)805きぬぎぬ(衣衣。後朝)806きぬた(砧)807きのう(昨日)808きのこ(茸)

809きね(杵)810きのどく(気の毒)

811きば(牙)812きびしょ(急須)・きゅうす(急須)813きびす(踵)814きまりがわるい(きまりが悪い)815きみ(君)916きみ(気味)817きもいり(肝煎)818きゃたつ(脚立)818-2ぎゃふん・ぐうのね819きょう(今日)820ぎょうさん(仰山)

821ぎょうせん(地黄煎)822ぎょうてん(仰天)823きょうとい824きらず(雪花菜)825きらめく(煌めく)826きらら(雲母)827きり(霧)828きり(錐)829きり・ぴん830きりづま(切妻)

831きりふだ(切札)832きりむぎ(切麦)833きわまる(極まる)834きわもの(際物)835きんだち(公達)836きんとん(金団)837きんぴらごぼう(金平牛蒡)

「ク」

838ぐ(具)839ぐあい(具合)840くい(杭)

841ぐいち(五一)842くう(食う)842-2ぐう843ぐうたら844くが(陸)・くぬが(陸)845くがい(公界。苦界)846くくだち(茎立。蔬菜)847くくる(括る)848くさい(臭い)849くさす(腐す)850くさぞうし(草双紙)

851くさび(楔)852くさむら(草むら)853くさり(鎖)854くさる(腐る)855くされえん(腐れ縁)856くさわけ(草分け)857くし(櫛)858くし(串)859くしげ(櫛笥)860くしゃみ(嚔)

861くしろ(釧)862ぐずつく(愚図つく)863くすり(薬)864くせもの(曲者)865くそみそ(糞味噌)866ください(下さい)867くたびれる(草臥れる)868くだもの(果物)869くだらない(下らない)870くだをまく(管を巻く)

871くだん(件)872くち(口)873ぐち(愚痴)874くちうら(口裏)875くちおしい(口惜しい)876くちぐるま(口車)877くちばし(嘴)878くちび(口火)879くちびる(唇)880くつ(靴)

881くっつく882くつろぐ(寛ぐ)883くつわ(轡)884くど(竈)885くどく(口説く)886くねくね887くはしめ(麗女)888くばる(配る)889くふう(工夫)890くべる

891くまで(熊手)892くまどり(隈取り)893くも(雲)894くもすけ(雲助)895くやしい(悔しい)896くら(蔵、倉)897くら(鞍)・くらぼね(鞍橋)898くらい(位)899くらい(暗い)900くらがえ(鞍替え)

901くらす(暮らす)902くらたに(谷)903くらべる(比べる)904くり(庫裏)905くりあわせる(繰り合わせる)906くりや(厨)907くれない(紅)908くれはとり(呉織)909ぐる910くるう(狂う)

911くるま(車)912くるわ(曲輪。郭)913ぐれる914くろ(黒)915くろ(畦)916くろうと(玄人)917くろがね(鐵)918くろまく(黒幕)919くわだてる(企てる)920くわばらくわばら(桑原桑原)

921ぐんぱい(軍配)

「ケ」

922け(食)923け(日)924け(気)925け(褻)926けいあん(桂庵)927けいき(景気)928けいこ(稽古)929けいざい(経済)930けが(怪我)

931けげん(怪訝)932げこ(下戸)933けさ(今朝)934けざやか935けしかける(嗾ける)936けしからん(怪しからん)937けしきばむ(気色ばむ)938けじめ939げす(下種)940げすい(下水)

941げそ(烏賊の足)942げそく(下足)943けた(桁)944げた(下駄)945けたちがい(桁違い)946けだもの(獣)947けち(吝嗇。不吉な前兆)948げち(下知)949けつ(尻)950けっこう(結構)

951けったい(怪態)952げてもの(下手物)953げどう(外道)954けないど955けなげ(健気)956けなるい(羨い)957げに(実に)958けはい(気配)959げびる(下卑る)960けみする(閲する)

961けむり(煙)962げら963けらい(家来)964けりがつく965けれんみ(外連味)966げろ967けわしい(険しい)968けん969けんか(喧嘩)970けんがみね(剣が峰)

971げんき(元気)972けんけん(片足跳び)973げんじな(源氏名)974けんずい(間水)975けんぞく(眷属)976けんちんじる(巻繊汁)977げんなり978げんのう(玄翁)979けんのん(剣呑)980けんまく(剣幕)

981けんもほろろ

「コ」

982ご(枯松葉)983こい(恋)984こい(濃い)985こいぐち(鯉口)986こう(恋う)987こうがい(笄)988こうごうしい(神々しい)989こうじ(麹)990こうじ(小路)

991こうとうのないし(勾当内侍)992こうのもの(香の物)993こうぶり(冠)994こうべ(首、頭)995こうむる(被る、蒙る)996こうり(行李)997こおり(氷)998こおり(郡)999こおる(凍る)1000ごかし

1001こがね(黄金)1002こがらし(木枯らし)1003ごき(御器)1004ごきげんよう(ご機嫌よう)1005こく1006こく(扱く)1007こけ(苔)1008こけ(虚仮)1009ごけ(後家)1010こけし(小芥子)

1011こけらおとし(柿落とし)1012こけん(沽券)1013ここのつ(九)1014こころ(心)1015こころざす(志す)1016こころみる(試みる)1017こころもとない(心許ない)1018ござ(茣蓙)1019ございます1020ござる(御座る)

1021こし(腰)1022こしき(甑)1023こじき(乞食)1024こじつける1025こしゃく(小癪)1026こしょうがつ(小正月)1027ごしょう(後生)1028こしらえる(拵える)1029こす(漉す)1030ごす(呉須)

1031こずえ(梢)1032こずむ1033こする(擦る)1034ごぜ(瞽女)1035こせこせ1036こぞ(去年)1037こそこそ1038こそばい・こそばゆい1039こたえる(答える) 1040ごたごた

1041ごたく(御託)1042こたつ(炬燵)1043こだま(木霊、木魂、谺)1044こち(東風)1045ごちそうさま(御馳走様)1046こっけい(滑稽)1047ごっさん(御所様)1048こと(琴)1049こと(事)1050こと(言)

1051ごとく(五徳)1052ことごとく(悉く)1053ことさら(殊更)1054ことじ(琴柱)1055ことば(言葉)1056ことぶき(寿)1057ことわざ(諺)1058ことわる(断る)1059こな(粉)1060こなから(小半、二合半)

1061こなす1062こねり(木練)1063こねる(捏ねる)1064ごねる1065このかみ(長男。氏の長者)1066このむ(好む)1067このわた(海鼠腸)1068こはるびより(小春日和)1069こびる(媚びる)1070こぶ(瘤)

1071ごへいかつぎ(御幣担ぎ)1072こぼつ(毀つ)1073こま(独楽)1074こま(駒)1075こまいぬ(狛犬)1076こまかい(細かい)1077ごまかす(誤魔化す)1078ごますり(胡麻擂り)1079こまたがきれあがる(小股が切れ上がる)1080こまねく(拱く)

1081ごまのはい(胡麻の灰)1082こまもの(小間物)1083こまやか(細やか)1084こまる(困る)1085ごみ(塵)1086こむそう(虚無僧)1087こむらがえり(腓返り)1088こめかみ1089ごめん(ご免)1090こもる(籠もる)

1091こやし(肥料)1092こよい(今宵)1093こよなし1094こよみ(暦)1095こより(紙縒)1096こり(垢離)1097ごりおし(ごり押し)1098ごりょんさん(御寮人様)1099ごろ1100ころがき(枯露柿)

1101ごろつき(無頼漢)1102こわい(怖い)1104こんきい(息苦しい)1105ごんす1106ごんたくれ(ごろつき)1107こんちきしょう(こん畜生)1108こんにちわ(今日は)1109こんぴら(金比羅)1110こんぺいとう(金平糖)

1111こんりんざい(金輪際)1112こんろ(焜炉)

「サ」

1113さいころ(賽子)1114さいせん(賽銭)1115さいなむ(苛む)1116さいのかみ(塞の神)1117さいのかわら(賽の河原)1118さいばら(催馬楽)1119さいわい(幸い)1120さえ(才)

1121さえぎる(遮る)1122さえずる(囀る)1123さえのかみ(塞の神)1124さお(竿)1125さおとめ(早乙女)1126さか(坂)1127さが(性、根)1128さかい(境)1129さかえる(栄える)1130さかしら(賢しら)

1131さかずき(杯)1132さかな(肴)1133さかなみ(逆波。酒波)1134さかやき(月代)1135さかん(左官)1136さぎちょう(左義長)1137さきもり(防人)1138さく(咲く)1139さく(裂く)1140さく(柵)

1141さけ(酒)1142さげすむ(蔑む)1143さける(避ける)1144さざなみ(細波)1145ささめき(私語)1146ささやく(囁く)1147ささら1148さざれいし(細石)1149さじ(匙)1150さしがね(差金)

1151さじき(桟敷)1152ざしき(座敷)1153さしこ(指子。差袴)1154さしこ(刺子)1155さしずめ(差し詰め)1155-2さしぬき(指貫)1156さしみ(刺身)1157さす(砂洲)1158さす(担棒)1159さすが(流石)1160さすが(刺刀)

1161さた(沙汰)1162さだまる(定まる)1163さち(幸)1164さと(里)1165ざとう(座頭)1166さとる(悟る)1167さなぎ(蛹)1168さなきだに1169さなぶり(早苗饗)1170さね(実、核)

1171さばく(捌く。裁く)1172さばをよむ(鯖を読む)1173さび(錆)1174さび(寂)1175さびしい(淋しい、寂しい)1176さぶらう(候う、侍う)1177さま(様)1178さみだれ(五月雨)1179さむらい(侍)1180さや(鞘)

1181さやか(清か)1182さゆ(白湯)1183さようなら(左様なら)1184さよみ(貲布)1185さら(皿)1186さらう(掠う。浚う)1187ざらざら1188さらば1189さる(去る)1190ざる(笊)

1191さるがく(猿楽)1192さるぐつわ(猿轡)1193さるまた(猿股)1194されこうべ(髑髏)1195さわぐ(騒ぐ)1196ざわめき1197さわり(触り)1198ざんぎり(散切り)1199さんさしぐれ(さんさ時雨)1200さんした(三下)

1201さんすけ(三助)・おさん(お三)1202さんばそう(三番叟)1203さんぴん(三一)

「シ」

1204しあさって(明明後日)1205しお(塩)1206しおから(塩辛)1207しおさい(潮騒)1208しおどき(潮時)1209しおり(枝折り。栞)1210しかつめらしい(鹿爪らしい)

1211しかと(確と)1212しがない1213しかめっつら(しかめっ面)1214しがらみ(柵)1215しきい(敷居)1216しきり(仕切り)1217しく(如く。及く。若く)1218しぐさ(仕草)1219しくじる(失敗する)1220じぐち(地口)

1221しぐれ(時雨)1222しける(時化る)1223しこ(四股)1224しごき(扱き)1225しこな(四股名。醜名)1226しこり(凝り)1227しし(宍。獣。猪。鹿)1228しじま(静寂)1229ししまい(獅子舞)1230しずく(滴)

1231したう(慕う)1232したがう(従う)1233したく(支度)1234したしむ(親しむ)1235したたか(強か)1236したたる(滴る)1237したりがお(したり顔)1238しだれる(垂れる)1239じたんだ(地団駄)1240しちりん(七厘)

1241しっかいや(悉皆屋)1242しっくい(漆喰)1243しつけ(仕付。躾)1244しつこい1245しっぺいがえし(竹篦返し)1246しっぽ(尻尾)1247しっぽう(七宝)1248しっぽく(卓袱)1249して(仕手)1250しで(四手)

1251しとうず(下沓)1252しとぎ(粢)1253しどけない1254しとね(褥)1255しどろもどろ1256〜しな1257しない(竹刀)1258しなをつくる(科をつくる)1259しにせ(老舗)1260しのぎ(凌ぎ。鎬)

1261しののめ(東雲)1262しばい(芝居)1263しばく(叩く)1264しばしば(屡々)1265しばらく(暫く)1266しぶき(飛沫)1267しぶる(渋る)1268じべた(地面)1269しま(島)1270しみ(衣魚、紙魚)

1271しみじみ(染み染み)1272じみち(地道)1273しみる(浸みる、染みる)1274しめなわ(注連縄)1275しもうたや(仕舞屋)1276じもく(除目)1277しゃくし(杓子)1278しゃくにさわる(癪に障る)1279しゃくはち(尺八)1280じゃじゃうま(じゃじゃ馬)

1281しゃちこばる(鯱強張)1282しゃっくり1283しゃべる(喋る)1284じゃま(邪魔)1284-2しゃみせん(三味線)・じゃびせん(蛇皮線)・さんしん(三線)1285しゃも(軍鶏)1286しゃもじ(杓文字)1287しゃらくさい(洒落臭い)1288しゃり(舎利)1289じゃり(砂利)1290しゃれ(洒落)

1291じゃんけん1292しゅうとめ(姑)1293じゅうのう(十能)1294しゅく(宿)1295しゅす(繻子)・しゅちん(繻珍)1296じゆばん(襦袢)1297しゅらば(修羅場)1298しゅん(旬)1299しょうぎだおし(将棋倒し)1300じょうご(漏斗)

1301じょうご(上戸)1302しょうし(笑止)1303しょうじ(障子)1304しょうじん(精進)1305じょうだん(冗談)1306しょうもない(仕様もない)1307じょうろ(如雨露)1308じょさいない(如才ない)1309しょたい(所帯)1310しょっちゅう

1311しょっぱい(塩辛い)1312じょっぱり(情張り)1313じょろう(女郎)1314しらげうた(しらげ歌)1315しらける(白ける)1316しらたき(白滝)1317しらばくれる(知らばくれる)1318しらふ(素面)1319しらべる(調べる)1320しらをきる(しらを切る)

1321しり(尻)1322しりぞく(退く)1323しる(汁)1324しる(知る)1325しるい1326しるこ(汁粉)1327しるべ(標)1328じれったい1329しれもの(痴れ者)1330しろ(白)

1331しろ(城)1332しろ(代)1333じろ(地炉)1334しろうと(素人)1335しわ(皺)1336しわがれる(嗄れる)1337しわす(師走)1338しんがり(殿)1339しんき(辛気)1340じんく(甚句)

1341しんこ(米粉)1342しんこ(新香)1343しんしゃく(斟酌)1344じんじょう(尋常)1345しんぞう(新造)1346しんだい(身代)1347しんどい()1348しんぼう(辛抱)1349じんろく(甚六)

「ス」

1350す(巣)

1351す(素)1352すい(粋)1353すいかん(水干)1354すう(吸う)1355ずうたい(図体)1356すえき(須恵器)1357すか(スカ)1358すかさず(透かさず)1359すがた(姿)1360すかたん(スカタン)

1361すき(鋤)1362すき(主基)1363ずく(尽)1364ずく(銑)1365ずくなし(臆病者。怠け者。無精者)1366すげない(素気ない)1367すけべえ(助平)1368すこい1369すごい(凄い)1370すこし(少し)

1371すこぶる(頗る)1372すこやか(健やか)1373すごろく(双六)1374すさまじい(凄まじい)1375すし(寿司)1376ずし(図子。辻子。途子)1377すず(鈴)1378すずり(硯)1379すそ(裾)1380ずだぶくろ(頭陀袋)

1381すだれ(簾)1382すったもんだ1383ずつない(術無)1384すっぱぬく(素っ破抜く)1385すてき(素敵)1386すててこ(ステテコ)1387すなわち(即ち)1388ずにのる(図に乗る)1389すばらしい(素晴らしい)1390すばる(昴)

1391すびつ(炭櫃)1392すべからく(須く)1393ずべこう(ズベ公)1394すべた1395すべて(凡て)1396ずぼし(図星)1397ずぼら1398すみか(住処)1399すみません(済みません)1400すむ(住む)

1401すめろき(天皇)・すめらぎ(天皇)1402すもう(相撲)1403ずらかる(逃る)1404すり(掏摸)1405すりこぎ(擂り粉木)1406するどい(鋭い)1407するめ(鯣)1408すわる(座る)1409ずんぎり(寸切り)1410ずんぐり(ズングリ)

1411すんでのこと(すんでの事)1411-2ずんどう(寸胴)1412ずんべらぼう1413すんま(角前)

「セ」

1414せい(所為)1415せい(背)1416せいぞろい(勢揃い)1417せいろう(蒸籠)1418ぜえろく(贅六)1419せかせか1420せがれ(倅)

1421せき(咳)1422せき(関)1423せきぞろ(節季候)1424せけん(世間)1425ぜげん(女衒)1426せこ(勢子)1427せこい1428せちがらい(世知辛い)1429せっかい(節介)1430せっかく(折角)

1431せっかち(性勝ち)1432せっかん(折檻)1433せっき(節季)1434せった(雪駄)・せきだ(席駄)1435せつない(切ない)1436せっぱつまる(切羽詰まる)1437せど(背戸)1438せどうか(旋頭歌)1439せとぎわ(瀬戸際)1440ぜに(銭)

1441ぜひ(是非)1442せむし1443せめて1444せめる(攻める)1445せりふ(台詞)1446せわ(世話)1447せわしい(忙しい)1448せんかた(詮方)1449ぜんざい(善哉)1450ぜんざい(善哉)

1451せんしゅうらく(千秋楽)1452せんすべなし(詮すべ無し)1453せんべい(煎餅)1454せんま1455ぜんまい(発条)1456せんりゅう(川柳)

「ソ」

1457そうざい(総菜)・おばんざい(お番菜)1458そうし(草紙)1459そうず(添水)1460ぞうすい(雑炊)・おじや

1461そうぞうしい(騒々しい)1462そうすかん(総すかん)1463ぞうに(雑煮)1464そうめん(素麺)1465ぞうやく(雑役)1466そうら(束羅)1467ぞうり(草履)1468そうろう(候)1469そおず(案山子)1470そがい(背向)

1471そくい(続飯)1472そくさい(息災)1473そげ(削げ)1474そこ(底)1475そご(齟齬)1476そこなう(損なう)1477そこはかと1478そこばく(若干)1479そそぐ(注ぐ)1480そそぐ(濯ぐ)

1481そそっかしい1482そそのかす(唆す)1483そだつ(育つ)1483-2そっくり1484そっけない(素っ気ない)1485ぞっこん1486そっちのけ(そっち退け)1487そっぱ(反歯)1488そっぽをむく(そっぽを向く)1489そで(袖)1490そでにする(袖にする)

1491そとも(背面。外面)1492そば(傍)1493そびら(背)1494そみんしょうらい(蘇民将来)1495そむく(背く)1496そめる(初める)1497そもそも1498そやさかいに1499そり(橇)1500そりがあわぬ(反りが合わぬ)

1501それがし(某)1502そろえる(揃える)1503そろばん(算盤)1504そんじょそこら(近所そこら)

<修正経緯>

<慣用語概観(その二)>「カ」から「ソ」まで
 

「カ」

605かい(貝)・かいがら(貝殻)

体に石灰質の殻を持つ軟体動物の俗称。法螺貝。貝の杯など。

 この「かい」、「かいがら」は、

  「カイ(ン)ガ」、KAINGA(refuse of a meal as cockle shells etc.)、「(食物の残渣)貝殻(貝)」(「カイ(ン)ガ」の名詞形語尾のNGA音が脱落して「カイ」となった)

  「カイ(ン)ガ・カラ」、KAINGA-KARA(kainga=refuse of a meal as cockle shells etc.;kara,kakara=whelk,cookia suicata(a univalve mollusc))、「(陪貝などの)貝の・貝殻(貝殻)」(カイ(ン)ガ」の名詞形語尾のNGA音が脱落して「カイ」と、「カラ」が「ガラ」となった)

の転訛と解します。

606かい(櫂)

 船の推進具の一つ。普通樫の木で作り、上部を円く、下部を扁平に削り、頂部に横棒を付ける。通常川船や伝馬船で使用し、海船では櫓(ろ)を使用することが多い。この「櫓(ろ)」については、雑楽篇(その二)の1038炉(ろ)の項の「櫓(ろ)」を参照してください。

 この「かい」は、

  「カハ・アイ」、KAHA-AI(kaha=strong,strength,persistency;ai=procreate,beget)、「力を入れて・(作用する)漕ぐもの(櫂)」(「カハ」のH音が脱落した「カ」の語尾のA音と「アイ」の語頭のA音が連結して「カイ」となった)

の転訛と解します。

607かい(峡)

 山と山との間。両側に山の迫っているところ。

 この「かい」は、

  「カヒ」、KAHI(wedge)、「楔状に切れ込んだ(峡谷)」(「カヒ」のH音が脱落して「カイ」となつた)

の転訛と解します。

608かい(甲斐)

 ある行為に値するだけのしるし。ききめ。効果。また、ある行為をしたことに対する値自身の心の満足。ある行為と代わりうる価値があること。また、そのもの。

 この「かい」は、「カイ」、KAI(fulfil its proper function,have full play)、「(十分に)為すべきことを行った(結果得られるもの。甲斐)」

の転訛と解します。

609かいがいしい(甲斐甲斐しい)

 物事を行ったり希望したりする張り合いのあるさまである。期待の通りである。しっかりしていて頼みにできるようなさまである。手際よく、はっきりした態度で物事を行い、効果が上がるようにみえるさまである。勢いよく労を惜しまないさまである。

 この「かいがいしい」は、

  「カイ・(ン)ガイ・チヒ」、、KAI-NGAI-TIHI(kai=fulfil its proper function,have full play;ngai=tribe or clan;tihi=summit,top,peak,lie in a heap)、「最高に・(十分に)為すべきことを行う・部類の行いを行った(甲斐甲斐しい)」(「(ン)ガイ」のNG音がG音に変化して「ガイ」と、「チヒ」のH音が脱落して「チイ」から「シイ」となった)

の転訛と解します。

610かいご(卵)

 (「殻(かい)子」の意とする説がある)卵。なお、「蚕(かいこ)」については、雑楽篇(その二)の817かいこ(蚕)の項を参照してください。

 この「かいご」は、

  「カイ・(ン)ゴ(ン)ゴ」、KAI-NGONGO(kai=consume eat,food;ngongo=sick person,invalid,honey)、「病人の(ための)・食料(卵)」(「(ン)ゴ(ン)ゴ」の反覆語尾が脱落し、NG音がG音に変化して「ゴ」となった)

の転訛と解します。

611かいと(垣内)

 住居の垣の内。樹木などで囲まれた住宅。名田(みょうでん)を含めた名主(みょうしゅ)の屋敷。限られた一区画の土地。

 この「かいと」は、

  「カ・イタウ」、KA-ITAU(ka=take fire,be lighted,burn;itau=girdle for the waist)、「(灯がともる)住居の・(回りを帯を締めたように)垣根(で囲んだところ。垣内)」(「イタウ」のAU音がO音に変化して「イト」となった)

の転訛と解します。

612かいねり(掻練り)

 @砧でよく打って練ったり、糊を落として軟らかくした絹織物。A襲(かさね)の色目の名。表裏ともに打ちとした紅。

 この「かいねり」は、

  @「カイ・ネイ・ヒリ」、KAI-NEI-HIRI(kai=fulfil its proper function,have full play;nei,neinei=stretched forward,reaching out,wagging;hiri=laborious,energetic,eagerly desire)、「極めて・熱心に・(精練の)作業が加えられたもの(精練された絹織物)」(「ネイ」の語尾のI音と「ヒリ」のH音が脱落して「イリ」となった語頭のI音が連結して「ネリ」となった)

  A「カイ・ネイ・イリ」、KAI-NEI-IRI(kai=fulfil its proper function,have full play;nei,neinei=stretched forward,reaching out,wagging;iri=be elevated on something,rest upon,hang)、「極めて・(精練の)作業が加えられたもの(精練された絹織物)が・(何枚も)襲ねられたもの(その色目)」(「ネイ」の語尾のI音と「イリ」の語頭のI音が連結して「ネリ」となった)

の転訛と解します。

613かいほう(介抱)

助け抱くこと。世話をすること。保護すること。傷病者、よっぱらいなどを看護すること。

 この「かいほう」は、

  「カイ・ホウ」、KAI-HOU(kai=fulfil its proper function,have full play;hou=dedicate or initiate a person etc.,make an offering of hair for above purpose)、「全力を尽くして・(人の世話に)献身する(介抱)」

の転訛と解します。

614かいもく(皆目)

 まるまる全部。全く。ちっとも。

 この「かいもく」は、

  「カイ・モク」、KAI-MOKU(kai=quantity,number,product,thing;moku=few,little)、「僅かな(無いに等しい)・(数量の)ものである(皆目)」

の転訛と解します。

615かいもち(掻餅)

 そば粉を熱湯で掻き練った食品。そばがき。

 この「かいもち」は、

  「カイ・マウ・チ」、KAI-MAU-TI(kai=fulfil its proper function,have full play;mau=food product,fixed,continuing,confined,constrained;ti=throw,cast,overcome)、「(懸命にそば粉を熱湯で)練って・(現状を留めないまでに変化した)作った・食品(掻餅)」(「マウ」のAU音がO音に変化して「モ」となった)

の転訛と解します。

616かう(買う)

 或る物と他の物を交換する。代価を払って品物等を受け取る。抽象的な何かを求める。など。

 この「かう」は、

  「カハ・ハウ」、KAHA-HAU(kaha=strong,strength,persistency;hau=property)、「永久に・(自分の)所有物とする(買う)」(「カハ」のH音が脱落して「カ」となったそのA音と、「ハウ」のH音が脱落して「アウ」となったその語頭のA音が連結して「カウ」となった)

の転訛と解します。

617がえんずる(肯んずる)

(本来は否定の意味であつたのが、転じて肯定の意味になったもの)承諾する。ひきうける。肯定する。

 この「がえんずる」は、

  「(ン)ガエ(ン)ガエ・ツ・ル」、NGAENGAE-TU-RU(ngaengae=fail of breath;tu=stand,settle;ru=shake,agitate,scatter)、「(思わず息を呑む)承諾(の返事を)しない・状態の・ままでいる(肯んずる)」(「(ン)ガエ(ン)ガエ」の最初のNG音がG音に、次のNG音がN音に変化して「ガエナエ」から「ガエネ」、「ガエン」と、「ツ」が「ズ」となった)

の転訛と解します。

618かおる(薫る)

 良いにおいがする。煙、霧などが立ちこめる。顔、特に目元などがつやつやと美しく見える

 この「かおる」は、

  「カ・ハウ・ル」、KA-HAU-RU(ka=to denote the commencement of a new action or condition;hau=wind air,breath,project,exceed,excess,property;ru=shake,agitate,scatter)、「(香しい)空気が・匂い立って・分散してゆく(薫る)」(「ハウ」のH音が脱落し、AU音がO音に変化して「オ」となった)

  または「カホラ」、KAHORA(spread about)、「(香しい香りが)周囲に広がって行く(薫る)」(H音が脱落し、語尾の「ラ」が動詞形語尾に多い「ル」となった)

の転訛と解します。

619かか(母)

 子が母親を敬い親しんで呼ぶ語。次第に:敬意が失われた。近世、下層階級で妻をいう語。この「かか」については、国語篇(その十六)の216よめの項の「かか」を参照してください。

 この「かか」は、

  「カ・カハ」、KA-KAHA(ka=take fire,be lighted,burn;kaha=strong,able)、「(家の)火を司る・強い発言力を持つ人(母親)」(「カハ」のH音が脱落して「カ」となった)

の転訛と解します。

620かがい(耀歌)・うたがき(歌垣)

 上代の東国で、歌垣(うたがき)を言う語。なお、「かがい」、「うたがき」については、古典篇(その十八)の4古代社会の状況の(3)歌垣の項を参照してください。

 この「かがい」、「うたがき」は、

  「カハ・(ン)ガヒ」、KAHA-NGAHI(kaha=boundary line of land etc.,ridge of a hill;ngahi=suffer penalty,be punished)、「境界の地(や山の上)で催される・(勝負に負けると)罰則がある(集い)」(「カハ」のH音が脱落して「カ」と、「(ン)ガヒ」のNG音がG音に変化して「ガヒ」となった)

  「ウ・タハ・(ン)ガキ」、U-TAHA-NGAKI(u=be firm,be fixed;taha=pass on one side,go by;ngaki=cultivate,apply oneself to,occupy oneself intently,strive for)、「移りゆくもの(感情)を・止める(歌を詠む)ことに・熱中する(集い)」(「タハ」のH音が脱落して「タ」と、「(ン)ガキ」のNG音がG音に変化して「ガキ」となった)

の転訛と解します。

621かかげる(掲げる)

 物を手などで高く持ち上げる。簾や衣の裾などを巻き上げる。櫛などで上の方へ漉き上げる。灯火をかき立てて明るくする。人目につくようにする。文書、印刷物に載せて示す。

 この「かかげる」は、

  「カ・カハ・アケ・ル」、KA-KAHA-AKE-RU((ka=to denote the commencement of a new action or condition;kaha=strong,strength,persistency;ake=indicating immediate continuation in time,from below,upwards;ru=shake,agitate,scatter)、「強く・力を込めて・奮って・上へ持ち上げる(掲げる)」(「カハ」のH音が脱落して「カ」となったそのA音と「アケ」の語頭のA音が連結して「カケ」となり、濁音化して「カゲ」となった)

の転訛と解します。

622かかし(案山子)

 田畑が鳥獣に荒らされるのを防ぐため、それらの嫌うにおいを出して近付けないようにしたもの。獣の肉を焼いて串に刺したり、毛髪、ぼろ布などを焼いたものを竹に下げたりして田畑に置くおどし。転じて竹や藁で作った等身大の人形を田畑に立てて人がいるようにみせかけたもの。「1469そおず(案山子)」ともいう。

 この「かかし」は、

  「カ・カハ・チ」、KA-KAHA-TI(ka=to denote the commencement of a new action or condition;kaha=boundary line of land etc.,edge,ridge of a hill;ti=throw,cast,overcome)、「(人が常駐しない)僻遠境界の地に・置かれて・睨みをきかしているもの(案山子)」(「カハ」のH音が脱落して「カ」と、「チ」が「シ」となった)

の転訛と解します。

623かかと(踵)

 足の裏の後部。踵骨とそれを覆う厚い丈夫な皮膚がある。きびす。この「かかと」については、国語篇(その十四)の040かかとの項を参照してください。

 この「かかと」は、

  「カカハ・トウ」、KAKAHA-TOU(kaha,kakaha=boundary line of land etc.,edge,ridge of a hill,strong,strength;tou=posteriors,lower end of anything,tail of a bird)、「体の端(にあって強い)・(足の)下の部分(かかと)」(「カカハ」のH音が脱落して「カカ」と、「トウ」が「ト」となつた)

の転訛と解します。

624かがなべて(かが並べて)

 (「日日並べて」の意とする説がある)日数を重ねて。(古事記中巻倭建命東伐条の歌謡に「かがなべて夜には九夜日には十日を」とあります。)

 この「かがなべて」は、

  「カ(ン)ガ・ナ・ペテ(ペケ)」、KANGA-NA-PETE(PEKE)(kanga=curse,abuse,exedrate;na=by,made by,belonging toon account of;pete→peke=be completed,be all included,be all gone or come)、「(東国のまつろわぬ民を呪文を唱えながら)討伐して・それが・やっと完了した(かがなべて)」(「カ(ン)ガ」のNG音がG音に変化して「カガ」と、「ペテ」が「ベテ」となった(現代マオリ語ではT音がK音に変化して「ペケ」となつた))

の転訛と解します。

625かがみ(鏡)

 物の姿や形を映し見るための道具。古くから祭具として用いられたため、大切なもの、清く澄むこと、尊く美しいもの、静かな水面などのたとえにも用いられた。この「かがみ」については、雑楽篇(その一)の368かがみ(鏡)の項を参照してください。

 この「かがみ」は、

  「カ(ン)ガ・ミヒ」、KANGA-MIHI(kanga=curse,abuse,execrate;mihi=sigh for,greet,admire)、「人に呪(のろい)を掛ける・恐るべきもの(鏡)」(「カ(ン)ガ」のNG音がG音に変化して「カガ」と、「ミヒ」のH音が脱落して「ミ」となった)

の転訛と解します。

626かきもち(欠き餅)

 正月の鏡開きの餅を手や槌で欠き割つたもの。縁起の良い鏡餅を刃物で切るのを忌んで手で欠き割つたことによる。のし餅やなまこ形の餅を薄く切って乾燥したもの。焼いたり、揚げたりして食べる。寒中、餅を薄く切って凍らせたもの。湯に浸して食べる。この「もち」については、雑楽篇(その一)の542いね(稲)の項の「もち(糯。餅)」を参照してください。

 この「かきもち」は、

  「カハ・アキ・マウ・チ」、KAHA-AKI-MAU-TI(kaha=strong,strength;aki=dash,beat;mau=food product,fixed,continuing,confined,constrained;ti=throw,cast,overcome)、「力を込めて・割った・(搗いた結果穀粒が圧縮されて)餅に・なったもの(もち)」(「カハ」のH音が脱落して「カ」となったそのA音と「アキ」の語頭のA音が連結して「カキ」と、「マウ」のAU音がO音に変化して「モ」となった)

の転訛と解します。

627かく(書く)

 物の表面に絵や図を描く。髪などの上に文字を記す。文章に作る。著作する。

 この「かく」は、

  「カ・ハク」、KA-HAKU(ka=to denote the commencement of a new action or condition;(Hawaii)haku=to compose,invent,put in order,arrange)、「(絵、図や文字などの)形を整えて記す・ことを行う(書く)」(「カ」のA音と「ハク」のH音が脱落した「アク」の語頭のA音が連結して「カク」となった)

の転訛と解します。

628かく(掻く)

 手や足またはそれに似たもので物の表面をこする。また、そのようにして切り取り、削り取る。腕や手首を上下または左右に動かす。櫛で髪を梳く。など。この「かく」については、国語篇(その九)の163かくの項を参照してください。

 この「かく」は、

  「カハ・アク」、KAHA-AKU(kaha=strong,strength;aku=delay,take time over anything,scrape out,cleanse)、「強く・掻きむしる(掻く)」(「カハ」のH音が脱落して「カ」となったそのA音と「アク」の語頭のA音が連結して「カク」となった)

の転訛と解します。

629かくご(覚悟)

 迷いを去り、真実の道理を悟ること。あらかじめ心構えをすること。諦めること。記憶すること。

 この「かくご」は、

  「カハ・アク・(ン)ガウ」、KAHA-AKU-NGAU(kaha=strong,strength,persistency;aku=delay,take time over anything,scrape out,cleanse;ngau=bite,hurt,act upon,attack,wander,go about,raise a cry)、「(人の心の中の迷いや雑念を)打ち壊して・強く永久に・取り去る(覚悟)」(「カハ」のH音が脱落して「カ」となったそのA音と「アク」の語頭のA音が連結して「カク」と、「(ン)ガウ」のNG音がG音に、AU音がO音に変化して「ゴ」となった)

の転訛と解します。

630がくや(楽屋)

 雅楽で楽人の演奏する場所、および舞人の装束着用の場所、また、それらの人が休息に用いる場所。劇場や演奏場などで、出演者が出演の準備のために化粧をしたり衣装をつけたりまたは休息をしたりする舞台裏などの部屋。

 この「がくや」は、

  「(ン)ガハ(ン)ガハ・クフ・イア」、NGAHANGAHA-KUHU-IA(ngahangaha=frivorous;kuhu=thrust in,insert,conceal;ia=indeed)、「実に・(舞台の)裏側に入り込んだ・(関係者が)勝手気ままに振る舞うことができる場所(楽屋)」(「(ン)ガハ(ン)ガハ」の反覆語尾が脱落し、NG音がG音に変化し、H音が脱落して「ガ」と、「クフ」のH音が脱落して「ク」と、「イア」が「ヤ」となった)

の転訛と解します。

631かぐら(神楽)

 (「神座(かむくら)」の変化した語とする説がある)神を祀るために神前に奏する舞楽。諸社、民間に行われる芸能。(巫女が舞う巫女神楽。神話・伝説を黙劇または科白劇で演じる里神楽・太太神楽。清めの湯をふりかける湯立神楽。家ごとに獅子頭をまわし息災延命を祈る獅子神楽など。)能の舞の一種。狂言の林と舞。など。この「かぐら」については、雑楽篇(その一)の121かぐら(神楽)の項を参照してください。

 この「かぐら」は、

  「カハ・(ン)グ・ラ」、KAHA-NGU-RA(kaha=a general term for several charms used when fishing or snaring etc.;ngu=silent,speechless.greedy,moan;ra=wed)、「(漁労や狩猟の際などの)まじないを・無言で・(いくつか)まとめて行う(一連の所作。神楽)」(「カハ」のH音が脱落して「カ」と、「(ン)グ」のNG音がG音に変化して「グ」となった)

の転訛と解します。

632かくらん(霍乱)

 (「揮霍撩乱(きかくりょうらん。もがいて手を激しく振り回す意)」の略とする説がある)暑気あたりによっておこる諸病の総称。現在の日射病または熱中症をさす。

 この「かくらん」は、

  「カク・ラ(ン)ギ」、KAKU-RANGI(kaku=make a harsh grating sound;rangi,rangirangi=roast,scorch,dry,annoy,vex)、「苦悶の声を上げる・(強い)太陽光で熱された病状(霍乱)」(「ラ(ン)ギ」のNG音がN音に変化して「ラニ」から「ラン」となった)

の転訛と解します。

633がけ(崖)

 山や岸などが険しくそばだつている所。きりぎし。

 この「がけ」は、

  「(ン)ガ・ケイ」、NGA-KEI(nga=the;kei=stern of a canoe)、「例の・(船の艫のように)険しく切り立つている(場所。崖)」(「(ン)ガ」のNG音がG音に変化して「ガ」と、「ケイ」が「ケ」となった)

の転訛と解します。

634かけおち(駆落ち)

 逃げて行方をくらますこと。戦国時代、農民が戦乱をきっかけに離村したり、または重税から逃れるために離郷すること、また組織的に領主に反抗するため郷村を離れること。江戸時代、貧困、悪事などによつて居住地を逃亡し、行方をくらますこと。相思の男女が互いに示し合わせてひそかに他所へ逃げ隠れること。

 この「かけおち」は、

  「カケ・オチ」、KAKE-OTI(kake=ascend,beat to windward in sailing,climb upon or over,be superior to;oti=finished,gone or come for good)、「(風向きに逆行して)周囲の規律や反対を押し切って・無事に逃げおおせること(駆け落ち)」

の転訛と解します。

635かけくらべ(駆け比べ)

 走って遅速を競争すること。競走。かけっこ。

 この「かけくらべ」は、

  「カ・アケ・ク・ウラ(ン)ガ・パエ」、KA-AKE-KU-URANGA-PAE(ka=take fire,be lighted,burn;ake=go;ku=a game,play at ku;uranga=act or circumstance etc. of becoming firm,place etc. of arrival;pae=horizen,region,direction,lie across,be cast ashore)、「火のように(気持ちを燃え立たせて)・(進む)走って・到着した・順位を定める・(遊び)ゲーム(駆け比べ)」(「カ」のA音と「アケ」の語頭のA音が連結して「カケ」と、「ク」のU音と「ウラ(ン)ガ」の語頭のU音が連結し、名詞形語尾のNGA音が脱落して「クラ」と、「パエ」のAE音がE音に変化して「ペ」から「ベ」となった)

の転訛と解します。

636かけぢゃや(掛け茶屋)

 (「かけ」は葭簀などをさしかける意とも、小屋などを組み立てる意とも、腰を掛ける意ともいう)路傍、社寺の境内などに小屋がけした粗末な茶屋。通行人の休息に供する。腰掛け茶屋。

 この「かけぢゃや」は、

  「カケ・チア・イア」、KAKE-TIA-IA(kake=the stay supporting the perch in a pewa(bird snare);tia=stick in,drive in pegs etc.,adorn by sticking in feathers,stake;ia=indeed)、「鳥の罠の止まり木を支える支柱を・(それと分からないように)実に・綺麗に飾ったような(小屋。掛け茶屋)」(「チア」が「チャ」から「ヂャ」と、「イア」が「ヤ」となった)

の転訛と解します。

637かけひ(筧)

 地上にかけ渡して、水を導く樋。節を抜いた竹や、中心部をくりぬいた木などを樋として用いる。

 この「かけひ」は、

  「カケ・ヒ」、KAKE-HI(kake=ascend,,beat to windward in sailing,climb upon or over,be superior to;hi=raise,draw up,rise)、「(水の流れを)高い所へ・引き上げて流すもの(筧)」

の転訛と解します。

638かげぜん(陰膳)

 旅行などで不在の人が飢えないように祈つて、留守宅でその人のために供える食事。

 この「かげぜん」は、

  「カ・(ン)ガエ・テネ」、KA-NGAE-TENE(ka=to denote the commencement of a new action or condition;ngae=wheeze(whakangae=make to call out,of a decoy parrot);tene=be importunate)、「(不在の人を呼び戻す)無事で戻るよう・しつこく・祈るもの(陰膳)」(「(ン)ガエ」のNG音がG音に、AE音がE音に変化して「ゲ」と、「テネ」が「テン」から「ゼン」となった)

の転訛と解します。

639かけひき(駆引き)

 馬を操って前進したり、後退したりすること。商売、交渉などで、相手の出方や事情に応じて、自分の有利になるように処置すること。臨機応変の対応。

 この「かけひき」は、

  「カケ・ヒキ」、KAKE-HIKI(kake=ascend,beat to windward in sailing,climb upon or over,be superior to;hiki=lift up,raise,nurse,convey)、「(自分の立場を)引き上げて・(有利な)優越した立場に立つこと(駆け引き)」

の転訛と解します。

640かげろう(陽炎)

 光りと陰とが微妙なたゆたいを見せる現象。特に、春の晴れた日に野原などで見られる光が不規則に揺れ動く現象。この「かげろう」については、雑楽篇(その一)の348かぎろひ(陽炎)の項を参照してください。

 この「かげろう」は、

   「カ・(ン)ガイ・ロウ」、KA-NGAI-ROU(ka=take fire,be lighted,burn;ngai=tribe,clan;rou=a long stick used to reach anything,stretch out,reach out,staggering)、「ゆらゆらと立ち上る・部類の・燃える火(炎。陽炎)」(「(ン)ガイ」のNG音がG音に、AI音がE音に変化して「ゲ」となった)

の転訛と解します。

641かこ(水夫)

(「か」は楫(かじ)、「こ」は人の意とする説がある。)船を操る人。楫取り。船乗り。船頭。(日本書紀応神紀13年9月条に「凡て水手(ふなこ)を鹿子(かこ)という。」とある。)江戸時代、船頭以外の船員、または船頭、楫取り、知工、親爺など幹部を除く一般船員をいう。

 この「かこ」は、

  「カカウ」、KAKAU(swim,wade)、「(良く)泳ぐ(人。水夫)」(AU音がO音に変化して「カコ」となった)

の転訛と解します。

642がごうじ(鬼)

 (元興寺の鐘楼に鬼がいたという伝説から)鬼のこと。特に、目、口などを指で広げて鬼の顔のまねをしたり、顔を怒らせたりなどして、子供をおどし、なだめすかす時にもいう。がごじ。がごぜ。げごうじ。がんごうじ。

 この「がごうじ」は、

  「(ン)ガ(ン)ガオ・チ」、NGANGAO-TI(ngangao=ornamented with markings of a toki(axe)(ngao=dress timber with an adze,alternate ridge and depression as on timber dressed by an adze);ti=throw,cast,overcome)、「(材木を斧で刻んだような)ごつごつした顔を・見せるもの(鬼)」(「(ン)ガ(ン)ガオ」のNG音がG音に、AO音がOU音に変化して「ガゴウ」と、「チ」が「ジ」となった)

の転訛と解します。

643かごめかごめ

 (この「かごめ」は「かこむ(囲む)」の命令形とする説がある。)児童の遊戯の名。また、その際に歌う童歌。

 この「かごめかごめ」は、

  「カ・(ン)ガウ・マイ・カ・(ン)ガウ・マイ」、KA-NGAU-MAI-KA-NGAU-MAI(ka=to denote the commencement of a new action or condition;ngau=wander,go about;mai=to indicate direction or motion towards)、「ぐるぐると・回って・(方角を示す)後ろにいる子が誰かを当てよう(繰り返し)(かごめかごめ)」(「(ン)ガウ」のNG音がG音に、AU音がO音に変化して「ゴ」と、「マイ」のAI音がE音に変化して「メ」となった)

の転訛と解します。

644かさ(笠。傘)

 雨や雪を防ぎ、また日の光を遮るために頭にかぶるもの。古くはかぶりがさで、後に柄をつけた傘、さしがさができた。

 この「かさ」は、

  「カハ・タ」、KAHA-TA(kaha=lashings of the attached sides of a canoe,rope,boundary line of the land etc.;ta=dash,beat,lay)、「(カヌーの波よけ板と同じく雨や日の光を)遮るために・(頭に)載せるもの(笠)」(「カハ」のH音が脱落して「カ」となった)

の転訛と解します。

645かさ(瘡)

 天然痘、できもの、はれものなど、皮膚病の総称。また、傷の治り際にできるかさぶたをもいう。特に梅毒をいう。

 この「かさ」は、

  「カハ・タ」、KAHA-TA(kaha=strong,strength,persistency;ta=dash,beat,lay)、「(強い)甚大で永久的な傷を・負うもの(瘡)」(「カハ」のH音が脱落して「カ」となった)

の転訛と解します。

646がさつ

 言葉や動作が下品で荒っぽいこと。また、そのさま。粗暴。粗野。音ゃ雰囲気などに洗練されたところがなく、荒く、ざつなこと。

 この「がさつ」は、

  「(ン)ガハ(ン)ガハ・タツ」、NGAHANGAHA-TATU(ngahangaha=frivorous;tatu=reach the bottom,be at ease,consent,strike one foot against the other)、「(言葉や動作が)軽薄・粗暴で・最低なこと(がさつ)」(「(ン)ガハ(ン)ガハ」の反覆語尾が脱落し、NG音がG音に変化し、H音が脱落して「ガ」と、「タツ」が「サツ」となった)

の転訛と解します。

647かざみ(汗衫)

 (汗衫の音「かんさん」の変化とする説がある。)汗取りの一重の短衣。男女ともに用いた。平安以後、後宮奉仕の童女の正装となつた。

 この「かざみ」は、

  「カ・タミ」、KA-TAMI(ka=to denote the commencement of a new action or condition;tami=press down,repress,smother,completed in weaving)、「(汗を)抑制・するもの(かざみ)」(「タミ」が「ザミ」となつた)

の転訛と解します。

648かじ(楫。梶。舵)

 (楫)船を漕ぐのに用いる道具。櫓や櫂の総称。(梶。舵)船の進行方向を操作するため船尾に設ける装置。

 この「かじ」は、

  「カハ・アチ」、KAHA-ATI(kaha=strong,able,persistency;ati,atiati=drive away)、「(船を追いやる)推進することが・できるもの(または方向を転換するもの。楫。梶。舵)」(「カハ」のH音が脱落し、その語尾のA音が「アチ」の語頭のA音と連結して「カチ」から「カジ」となった)

の転訛と解します。

649かしこ

 @おそろしいこと。恐れ多いこと。もったいないこと。すぐれていること。すばらしいこと。

 A「恐れ多く存じます」の略で手紙の結びに用いる語。後世は女性のみ用いる。

 この「かしこ」は、

  @「カ・チコ」、KA-TIKO(ka=to denote the commencement of a new action or condition;tiko=stand out,protrude(whakatikotiko=large,vast,extensive))、「たいへん・優れている(または傑出しているなど)(かしこ)」(「チコ」が「シコ」となつた)

  A「カ・チコ」、KA-TIKO(ka=to denote the commencement of a new action or condition;tiko=evacuate the bowels)、「これで・(容器を空にする、紙を空白にする)手紙を終わります(かしこ)」(「チコ」が「シコ」となつた)

の転訛と解します。

650かしましい(姦しい)

 やかましい。騒がしい。騒々しい。

 この「かしましい」は、

  「カチ・マチ」、KATI-MATI(kati=bite,nip;mati=surfeited)、「(がみがみ言う)うるさく話すのに・(飽食する)うんざりする(姦しい)」(「カチ」が「カシ」と、「マチ」が「マシ」から「マシー」、「マシイ」となった)

の転訛と解します。

651かじや(鍛冶屋)

 @鍛冶を職業とする人。また、その家。

 A鉄梃子(かなてこ)で、一方の端が鉤の手状に曲り、先端に釘の頭を挟む裂け目があつて釘抜きに用いられるもの。

 この「かじや」は、

  @「カ・チア」、KA-TIA(ka=take fire,be lighted,burn;tia=stick in,drive in pegs etc.,adorn by sticking in feathers,take a vigorous stroke in paddling)、「(燃えるように)真っ赤に熱した鉄を・懸命に叩いて加工する職業(鍛冶屋)」(「チア」が「チヤ」から「ジヤ」となった)

  A「カチ・イア」、KATI-IA(kati=bite,nip;ia=indeed)、「実に・(一方の端が釘の頭に噛み付いて)釘を抜く(ことができるもの。かじや)」(「カチ」が「カジ」と、「イア」が「ヤ」となった)

の転訛と解します。

652かじょう(嘉)

 古く陰暦6月16日、疫病を除くためといって神に供えた菓子または餅をたべた風習。室町末ごろからの風習で、この名称は、これが行われはじめた仁明天皇、嘉元(848)年の年号によるとも、室町幕府が用いた宋銭、嘉定通宝によるともいわれる。

 この「かじょう」は、

  「カチ・アウ」、KATI-AU(kati=block up,prevent,shut of a passage,close up,in contact,barrier;au-firm,intense)、「(病気や災いを)堅く・防護する(まじない。嘉)」(「カチ」が「カジ」と、「アウ」のAU音がOU音に変化して「オウ」となり、「カジ・オウ」から「カジョウ」となった)

の転訛と解します。

653かしわで(柏手。膳。膳夫)

 @神を拝するとき、手を打ち鳴らすこと。はくしゅ。

 A古代、宮中で食膳の調理を司どった人。(柏の葉を食器として用いたところからという説がある。)この「かしわで」については、雑楽篇(その二)の512かしは(柏)の項の「かしはで」を参照してください。

 この「かしわで」は、

  @「カチ・ワテア」、KATI-WATEA(kati=block up,prevent,shut of a passage,close up,in contact,barrier;watea=unoccupied,clear,free,open,cautious)、「清らかな(手を)・合わせて(祈ること。柏手)」(「カチ」が「カシ」と、「ワテア」の語尾のA音が脱落して「ワデ」となった)

  A「カ・チ・ハテペ」、KA-TI-HATEPE(ka=take fire,burn;ti=throw,cast;hatepe=cutoff,proceed in an orderly manner)、「(食材を)キチンと処理して(切り刻んで)・火に・かける(料理する、調理に長けた。部族)」(「チ」が「シ」となり、「ハテペ」の語尾の「ペ」が脱落し、「ハテ」が「ワデ」となった) p>の転訛と解します。

654かず(数)

 物の順序を表す呼び名。物の数利用や分量などを示す呼び名。数の多いこと、など。

 この「かず」は、

  「カ・アツ」、KA-ATU(ka=to denote the commencement of a new action or condition;atu=to indicate a direction or motion onwards,to indicate reciprocated action)、「1,2,3と反覆して・(処理する)測るもの(数)」(「カ」のA音と「アツ」の語頭のA音が連結して「カツ」から「カズ」となった)

の転訛と解します。

655かすか(幽か)

 物事の度合いが、知覚を働かせタリ記憶をたぐったりすることによつて、かろうじて認められる程度であるさま。人気がなくて物寂しいさま。また、ひっそりとして人目につかないさま。勢いのないさま。

 この「かすか」は、

  「カ・ツカツカ」、KA-TUKATUKA(ka=to denote the commencement of a new action or condition;tukatuka=start up,proceed forward)、「動きを・やっと始める状態の(幽か)」(「ツカツカ」の反覆語尾が脱落して「スカ」となった)

の転訛と解します。

656かずく(被く)

 頭に被る。頭上に頂く。被衣を被って顔を隠す。貴人から禄として衣服を頂いて肩にかける。損害を負担する。など。

 この「かずく」は、

  「カ・ツク」、KA-TUKU(ka=to denote the commencement of a new action or condition;tuku=let go,give up,allow,send,present,evade a blow etc.,settle down)、「(日の光りなどの打撃を避ける)頭に被る(被く)」(「ツク」が「ズク」となった)

の転訛と解します。

657かずのこ(数の子)

 にしんの卵。塩漬けにしたものを塩数の子、乾燥したものを干し数の子という。この「かずのこ」については、雑楽篇(その二)の729にしん(鰊・鯡・春告魚)の項の「かずのこ(数の子)」を参照してください。

 この「かずのこ」は、

   「カ・ツヌ・コ」、KA-TUNU-KO(ka=take fire,be lighted,burn;tunu=roast,broil;ko=descend,cause to descend)、「火で・(炙って)乾燥した・(ニシンの)子(数の子)」(「ツヌ」が「ツノ」となった)

の転訛と解します。

658かすむ(霞む)

 物の形や音、声などがぼやけてはっきりしない状態になる。霞がかかる。姿がかすかにしか見えなくなる。など。

 この「かすむ」は、

  「カ・ツム」、KA-TUMU(ka=to denote the commencement of a new action or condition;tumu=halt suddenly,twitch,start,grunt)、「(突然グズグズしだす)物の形や音、声などがぼやけてはっきりしない・状態になる(霞む)」(「ツム」が「スム」となった)

の転訛と解します。

659かぜ(風)

 空気の流れ。なりゆき。風習。など。この「かぜ」については、国語篇(その九)の195windの項の「かぜ」を参照してください。

 この「かぜ」は、

  「カハ・テ」、KAHA-TE(kaha=strong,able;te=crack)、「強い力で・(草木を)吹き分けるもの(風)」(「カハ」のH音が脱落して「カ」となった)

の転訛と解します。

660がせ(偽)

 偽物。まやかしもの。嘘。(てきや、盗人仲間の隠語)

 この「がせ」は、

  「(ン)ガ・アテア」、NGA-ATEA(nga=the;atea=clear,free from obstruction,out of the way,cautious)、「例の・(道に外れた)偽もの(偽)」(「(ン)ガ」のNG音がG音に変化して「ガ」となったそのA音と、「アテア」の語尾のA音が脱落して「アセ」となったその語頭のA音が連結して「ガセ」となった)

の転訛と解します。

661かせぐ(稼ぐ)

 懸命に働く。仕事に励む。努力する。利得を得ようとして心を砕く。熱心に求める。

 この「かせぐ」は、

  「カテテ・(ン)グ」、KATETE-NGU(katete=lengthen by adding a piece,move forward,be securely fastened,piece joined to a spear to lengthen it;ngu=silent,greedy,moan)、「貪欲に・(利得を)増やそうと努める(稼ぐ)」(「カテテ」の反覆語尾が脱落して「カテ」から「カセ」と、「(ン)グ」のNG音がG音に変化して「グ」となった)

の転訛と解します。

662かた(肩)

 腕とからだが続く関節の上部。

 この「かた」は、

  「カハ・タ」、KAHA-TA(kaha=edge,ridge of a hill;ta=dash,beat,lay)、「(岡の稜線に相当する)胸部の・上にある(場所=肩)」(「カハ」のH音が脱落して「カ」となった)

の転訛と解します。

663がた

 (「ガタが来る」の形で用いられる)機械などの不調を示す語。また、比喩的に組織、健康などの不安定をもいう。

 この「がた」は、

  「(ン)ガタタ」、NGATATA(split,chapped,open(ngatatata=fissured,marked with cracks))、「(隙間がある)滑らかに動かない(がた)」(「(ン)ガタタ」の反覆語尾が脱落し、NG音がG音に変化して「ガタ」となつた)

の転訛と解します。

664かたい(堅い)

 物の形状や状態がしっかりしていて、それを外的な力で変化させることが難しいさま。心が確定していて、動揺しにくいさま。など。

 この「かたい」は、

  「カハ・タヒ」、KAHA-TAHI(kaha=strong,strength,persistency;tahi=one,single,unique,together,throughout)、「すべて(の部分)が・(強い)変わらない(堅い)」(「カハ」のH音が脱落して「カ」と、「タヒ」のH音が脱落して「タイ」となった)

の転訛と解します。

665かたいなか(片田舎)

 都を遠く離れた土地。辺鄙な地方。

 この「かたいなか」は、

  「カ・アタ・ヒ(ン)ガ・カ」、KA-ATA-HINGA-KA(ka=to denote the commencement of a new action or condition;ata=gently,clearly,openly,deliverately;hinga=fall from an errect position,lean;ka=kainga=place of abode,unfortified place of residence,country)、「空気が・澄んでいる・(高い場所から落ちた)都から離れた・(周囲に柵がない)住居地(田舎)」(「カ」のA音と「アタ」の語頭のA音が連結して「カタ」と、「ヒ(ン)ガ」のH音が脱落し、NG音がN音に変化して「イナ」となった)

の転訛と解します。

666かたかな(片仮名)

 国語を書き表すのに用いる音節文字で、48個を一組とするもの。

 この「かたかな」は、

  「カ・アタ・カハ・ナ」、KA-ATA-KAHA-NA(ka=to denote the commencement of a new action or condition;ata=gently,clearly,openly,slowly,deliverately;kaha=strong,able,strength;na=to add emphasis sometimes equivalent to the expression as I was telling you or as I say,by,made by,belonging to,by way of)、「(素朴な)単純な・形の・言葉を表現することが・できるもの(片仮名)」(「カ」のA音と「アタ」の語頭のA音が連結して「カタ」と、「カハ」のH音が脱落して「カ」となった)

の転訛と解します。

667かたぎ(気質)

 風習。ならわし。また、物事のやり方や生活態度。顔や体の様子。容姿や身のこなし。性質。きだて。

 この「かたぎ」は、

  「カハ・アタ・ア(ン)ギ」、KAHA-ATA-ANGI(kaha=strong,able,persistency;ata=gently,clearly,openly,slowly,deliverately;angi=light air,fragment smell)、「(強い)変わらない・明確な・(生来持っている空気のような)性質(気質)」(「カハ」のH音が脱落し、その語尾のA音と「アタ」の語頭のA音が連結して「カタ」となり、その語尾のA音と「ア(ン)ギ」の語頭のA音が連結し、NG音がG音に変化して「カタギ」となった)

の転訛と解します。

668かたくな(頑な)

 素直でなく、心がねじけているさま。まちがつた考えを固執しているさま。偏屈。片意地。なかなか考えを代えないさま。一途に思い込むさま。頑固一徹。愚かで物わかりが悪いさま。教養がなく、見苦しいさま。

 この「かたくな」は、

  「カハ・タ・ク・ナ」、KAHA-TA-KU-NA(kaha=strong,able,persistency;ta=dash,beat,lay;ku,kuku=firm,stiff,thickend;na=by,made by,belonging to,by way of)、「(強い)変わらない・(考えを)持ち・固執する・部類の(頑な)」(「カハ」のH音が脱落して「カ」となった)

の転訛と解します。

669かたぐるま(肩車)

 人を肩に載せたり、首に跨がらせたりして、かつぐこと。古くは、片方の肩に腰かけさせるだけの場合も言った。この「かたぐるま」については、国語篇(その十四)の046かたぐるま(肩車)の項を参照してください。

 この「かたぐるま」は、

  「カハ・タ・クル・ウマ」、KAHA-TA-KURU-UMA(kaha=edge,ridge of a hill;ta=dash,beat,lay;kuru=strike with the fist,pound,pelt;uma=bosom,chest)、「(岡の稜線に相当する)胸部の・上にある(場所=肩)に(乗って)・胸部を・圧迫する(肩車)」(「カハ」のH音が脱落して「カ」と、「クル」の語尾のU音と「ウマ」の語頭のU音が連結して「クルマ」から濁音化して「グルマ」となった)

の転訛と解します。

670かたこと(片言)

 語形、発音、言い回し、使い方などが不完全、不正確な言葉。また、不完全、不正確なために意味のよく通じない言葉。

 この「かたこと」は、

  「カ・アタ・コト」、KA-ATA-KOTO(ka=to denote the commencement of a new action or condition;ata=gently,clearly,openly,slowly,deliverately;koto=sob,make a low sound)、「ぼそぼそと・のろくて・低い発音の言葉(片言)」(「カ」のA音と「アタ」の語頭のA音が連結して「カタ」となった)

の転訛と解します。

671かたじけない(忝ない)

 高貴なものがいやしいものにせっすしていることがもったいない。恐れ多い。恐縮だ。尊ぶべきものと比べて恥ずかしい。分に過ぎた恩恵や、好意、親切を受けて、有り難く嬉しい。

 この「かたじけない」は、

  「カ・アタ・チケ・ヌイ」、KA-ATA-TIKE-NUI(ka=to denote the commencement of a new action or condition;ata=gently,clearly,openly,slowly,deliverately;tike,tiketike=lofty,important,exalted,height;nui=large,great,many,abundant,superior)、「たいへん・清らかで・高貴・極まりない(ものに接して恐れ多い。忝ない)」(「カ」のA音と「アタ」の語頭のA音が連結して「カタ」と、「チケ」が「ジケ」と、「ヌイ」が「ナイ」となった)

の転訛と解します。

672かたず(固唾)

 「固唾を呑む」の用法で、事の成り行きを見守って緊張しているさまをいう。

 この「かたず」は、

  「カ・タツ」、KA-TATU(ka=to denote the commencement of a new action or condition;tatu=strike one foot against the other,stumble,reach the bottom,be at ease,be content,consent,agree)、「(事の成り行きが吉と出るか凶と出るかが心配で)立ちすくんで・いるさま(固唾)」(「タツ」が「タズ」となった)

の転訛と解します。

673かたすかし(肩透かし)

 相撲の決まり手の一つで、四つに組んだ相手の肩をはたいて前に落とすもの。意気込んで立ち向かってくる相手を、うまくそらすこと。

 この「かたすかし」は、

  「カハ・タ・ツカツカ・アチアチ」、KAHA-TA-TUKATUKA-ATIATI(kaha=edge,ridge of a hill;ta=dash,beat,lay;tukatuka=start up,proceed forward;atiati=drive away)、「(岡の稜線に相当する)胸部の・上にある(場所=肩)を・(前へ押す)はたいて・(押しやる)落とすもの(肩透かし)」(「カハ」のH音が脱落して「カ」と、「ツカツカ」の反覆語尾が脱落して「ツカ」から「スカ」となり、その語尾のA音と「アチアチ」の反覆語尾が脱落した「アチ」の語頭のA音が連結して「スカチ」から「スカシ」となった)

の転訛と解します。

674かたな(刀)

 (「な」は刃の古語で、「片刃」の意とする説がある)片刃にこしらえた武器。太刀の短いもの。腰刀。脇差しと対の大刀。

 この「かたな」は、

  「カハ・タ(ン)ガ」、KAHA-TANGA(kaha=strong,strength:tanga=be assembled,row)、「強い(武器の)・(短い脇差しと対で用いる)大刀(刀)」(「カハ」のH音が脱落して「カ」と、「タ(ン)ガ」のNG音がN音に変化して「タナ」となった)

の転訛と解します。

675かたはらいたい(片腹痛い)

 傍で見ていても心が痛む。気の毒に思う。心苦しい。傍で見ていて苦々しく思う。滑稽である。笑止である。傍の人に対して気がひける。きまりが悪い。

 この「かたはらいたい」は、

  「カ・アタ・ハラ・イ・タィ」、KA-ATA-HARA-I-TAI(ka=to denote the commencement of a new action or condition;ata=gently,clearly,openly,slowly,deliverately;hara=violate tapu intentionally or otherwise,sin,offence,miss,make a false stroke,come short of;i=past tense;tai,taitai=dash,strike,knock,perform certain ceremonies to remove tapu etc.)、「(素朴な)単純な・間違いを・しでかして・咎められて・いる(気の毒だ。片腹痛い)」または「のろまな・ことに・(してはならない)禁忌を犯して・咎められて・いる(苦々しく思う。笑止である。片腹痛い)」(「カ」のA音と「アタ」の語頭のA音が連結して「カタ」となった)

の転訛と解します。

676がたぴし

 造りが悪かったり、古くなったりした木造の家具、建具などの立てる音を表す語。663がたの項を参照してください。

 この「がたぴし」は、

  「(ン)ガタタ・ピヒ・チ」、NGATATA-PIHI-TI(ngatata=split,chapped,open(ngatatata=fissured,marked with cracks);pihi=cut,split,spring up(a ka pihi=a cry to encourage paddlers in a canoe);ti=throw,cast)、「(隙間がある)滑らかに動かないで・(隙間が)きしんで(叫び声)音を・出す(がたぴし)」(「(ン)ガタタ」の反覆語尾が脱落し、NG音がG音に変化して「ガタ」と、「ピヒ」のH音が脱落シテ「ピ」と、「チ」が「シ」となつた)

の転訛と解します。

677かたびら(帷子)

 几帳(きちょう)、御帳(みちょう)、壁代(かべしろ)などに用いて、隔てとする垂れ布。夏は生絹(すずし)、冬は練絹を用いる。裏をつけない布製の衣類の総称。夏に着るひとえの着物。仏式で葬るとき死者に着せる着物。

 この「かたびら」は、

  「カ・アタ・ピララ」、KA-ATA-PIRARA(ka=to denote the commencement of a new action or condition;ata=gently,clearly,openly,slowly,deliverately;pirara=separated,scattered,divided,wide apart)、「清らかに・作られた・(部屋などの空間を)隔てるもの(帷子)」または「清らかに・仕立てられた・(裏地を分離した)ひとえの衣類(帷子)」(「カ」のA音と「アタ」の語頭のA音が連結して「カタ」と、「ピララ」の反覆語尾が脱落して「ピラ」から「ビラ」となった)

の転訛と解します。

678かたみ(形見)

 死んだ人、又は遠く別れた人を思うよすがとなるもの。遺品や遺児。本物の代わりとなるもの。形代。過ぎ去ったものを思い出す種となるもの。祈念。なごり。

 この「かたみ」は、

  「カ・アタ・ミヒ」、KA-ATA-MIHI(ka=to denote the commencement of a new action or condition;ata=gently,clearly,openly,slowly,deliverately;mihi=sigh for,greet,admire,express discomfort,show itself of affection etc.)、「清らかで・懐かしさに・溢れているもの(形見)」(「カ」のA音と「アタ」の語頭のA音が連結して「カタ」と、「ミヒ」のH音が脱落して「ミ」となった)

の転訛と解します。

679かたむく(傾く)

 斜めになる。かしぐ。太陽や月が沈みかける。盛んな状態から次第に衰えの状態になる。物事の状態や人の気持ち、考えなどが、ある方向にかたよる。時間が過ぎる。

 この「かたむく」は、

  「カ・タハ・ム・クフ」、KA-TAHA-MU-KUHU(ka=to denote the commencement of a new action or condition;taha=side,edge,part,pass on one side,go by;mu=silent;kuhu=thrust in,insert,conceal,introduce oneself into)、「(どちらか)片方へ動いて・(静かに)徐々に・(地平線の)下へ入って・ゆく(沈む。傾く)」(「タハ」のH音が脱落して「タ」と、「クフ」のH音が脱落して「ク」となった)

  または「カタハ・ムク」、KATAHA-MUKU(kataha=herring;muku=wipe,rub,smear)、「(鯡の骨のように)斜めに・(拭う)動く(傾く)」(「カタハ」のH音が脱落して「カタ」となった)

の転訛と解します。

680かたる(語る。騙る)

 @物事を順序立てて話して聞かせる。物事を言葉で述べて相手に伝える。文章に節を付けて読む。朗読するように述べる。芸能としての語物を演ずる。(この「語物」は、「もとは二人以上集まった人の前で述べること」(堀井令以知編『語源大辞典』)との説がありますが、演者が物事の経緯、内容を分かり易く解説するとともに、二人以上の人が語り合う場面を演ずることが本質であったと考えられます。)いつも語り合っているように親しくする。親しく交わる。

 A嘘をまことらしく言って、人をあざむく。偽る。人を欺して金品などをまき上げる。詐欺にかける。

 この「かたる」は、

  @「カ・タハルア」、KA-TAHARUA(ka=to denote the commencement of a new action or condition;taharua=of two aspects or bearings,a person related to two tribes)、「二つの局面(第三者として物事を解説するとともに、当事者としての発言を演ずる)を・表現してみせる(語る)」(「タハルア」のH音および語尾のA音が脱落して「タル」となった)

  A「カ・タルル」、KA-TARURU(ka=to denote the commencement of a new action or condition;taruru=beguile,entice)、「人を・あざむく(騙る)」(「タルル」の反覆語尾が脱落して「タル」となった)

の転訛と解します。

681がたろ(河太郎)

 かっぱ(河童)の異称。この「がたろ」については、雑楽篇(その一)の259河童(かっぱ)の項の「がわたろ」および国語篇(その十四)の050かっぱ(河童)の項の「がたろ」を参照してください。

 この「がたろ」は、

   「(ン)ガタ・ロ」、NGATA-RO(ngata=tangata=man:ro=roto=lake,swamp,places inland or up a fiver)、「川(湖など)に棲む・奴(やつ。河童)」(「(ン)ガタ」のNG音がG音に変化して「ガタ」となった)

の転訛と解します。

681-2がちぎょうじ(月行事)

 毎月交替で、町内や組合などの事務を代行する当番。月番。

 この「がちぎょうじ」は、

  「(ン)ガチ・(ン)ギホ(ン)ギホ・オチ」、NGATI-NGIHONGIHO-OTI(ngati=ngai=tribe or clan,sometimes used with a common noun to indicate a group of persons not necessarily trival;ngihongiho=diminutive;oti=finished,gone or come for good)、「(町内や組合などの組織の)細々とした仕事を・丹念に処理する・(役目の)人(月行事)」(「(ン)ガチ」のNG音がG音に変化して「ガチ」と、「(ン)ギホ(ン)ギホ」の反復語尾が脱落し、NG音がG音に変化し、H音が脱落して「ギオ」となり、「オチ」と連結して「ギオオチ」から「ギョウジ」となった)

の転訛と解します。

682かつ(且つ)

 ある行為や心情が、他の行為や心情と並んで存在する関係にあることを表す。同時に。加えて。一方で。ある行為や心情が、他の行為や心情に直ちに移ることを表す。…間もなく。…するとすぐ。たちまち。ある行為ゃ心情が、本格的でない形で短時間だけ、またはまたはかりそめに成り立つことをしめす。とりあえず。わずかに。ある行為や心情が、他の行為や心情に先立って成り立つことを表す。あらかじめ。先に。

 この「かつ」は、

  「カ・ツ」、KA-TU(ka=to denote the commencement of a new action or condition,when,as soon as,should,if;tu=stand,be erect,settle,be placid,be turned)、「新しい行為または状況が・(古い行為または状況と共に)存在する」、「直ちに・(新しい)行為または状況に移る」、「あたかも・(新しい)行為または状況にある(ような)」または「すでに・(新しい)行為または状況にある(ような)」

の転訛と解します。

683かっこう(恰好)

 基準、標準と合うこと。ふさわしいこと。値段がちょうど手頃であること。姿、形、様子。みかけ。はたから見える状態。体裁。対面。

 この「かっこう」は、

  「カ・ツコウ」、KA-TUKOU(ka=to denote the commencement of a new action or condition;tukou=dress the timber with an adze)、「(材木を斧で削って)形を整える・処理をしたもの(恰好)」(「ツコウ」が「ッコウ」となった)

の転訛と解します。

683-2かって(勝手)

 @物事を行うときなどの都合ゃ便利。転じて、自分にとって都合のよいやり方。また、具合のよいさま。A自分のしたいように振る舞うさま。わがままなさま。B建物の中や、場所などのありさま。また、物事のやり方。C飲食物を調理する所。台所。また、そこで働く者。転じて、暮らし向き。生計。

 この「かって」は、

  @、B「カ・ツテ」、KA-TUTE(ka=to denote the commencement of a new action or condition;tute=shove,push,nudge,a charm to ward off malign influences)、「物事を遂行する・(にあたっての)やり方や条件(勝手)」(「ツテ」が「ッテ」となった)

  A「カ・ツ・タイ」、KA-TU-TAI(ka=to denote the commencement of a new action or condition;tu=fight with,energetic;tai,taitai=dash,strike,knock,perform certain ceremonies to remove tapu etc.)、「力に任せて・物事を遂行する・(にあたっての)やり方や条件(勝手)」(「ツ」が「ッ」と、「タイ」のAI音がE音に変化して「テ」となった)

  C「カ・ツタイ」、KA-TUTAI(ka=take fire,be lighted,burn,to denote the commencement of a new action or condition;tutai=watch,spy,sentory,scout)、「(炊事の)火を・監視する場所または人(勝手)」(「ツタイ」のAI音がE音に変化して「ツテ」から「ッテ」となった)

の転訛と解します。

684がってん(合点)

 和歌、連歌、俳句などを批評する際に、よしとするものに点をつけること。回状を見終わり、承知の意を表すために、自分の名の上に鉤形の線を付けること。相手の言い分を承知すること。納得すること。事情を理解すること。その心積もりでいること。

 この「がってん」は、

  「(ン)ガツ・テ(ン)ガ」、NGATU-TENGA(ngatu=crushed,mashed;tenga=goitre,Adam's apple,distended,gorged)、「(喉の膨らみ)喉につかえていたものが・(粉々になった、(妨げていたものが)無くなってスッと胸に落ちる)同意する(納得する、合意の表示をする。合点)」(「(ン)ガツ」のNG音がG音に変化して「ガツ」から「ガッ」と、「テ(ン)ガ」のNG音がN音に変化して「テナ」から「テン」となった)

の転訛と解します。

685かっぱ(河童)

 想像上の動物。水陸両棲で、4、5才の子供くらいの大きさをし、口先が尖り、背には高良や鱗があり、手足には水かきがある。頭には皿と呼ばれる少量の水が入った凹みがあり、その水があるうちは陸上でも力が強いが、無くなると死ぬ。水中に他の動物を引き込み、生き血を吸う。この河童については、雑楽篇(その一)の259河童(かっぱ)の項の「がわたろ」および国語篇(その十四)の050かっぱ(河童)の項の「がたろ」を参照してください。

 この「かっぱ」は、

  「カ・ツパ」、KA-TUPA(ka=to denote the commencement of a new action or condition,when,as soon as,should;tupa=escape)、「(姿を見られると)直ぐに・逃げる(やつ。河童)」 (「ツパ」が「ッパ」となつた。また「カ」が「ガ」となった)

の転訛と解します。

686かて(糧)

 旅行などに携帯した食料。糒の類。食料。糧食。

 この「かて」は、

  「カテテ」、KATETE(large pig or other animal)、「(日常食べる食料が無くなった場合にやむを得ず手をつけるもの)繁殖用の(大)豚やその他の動物(糧)」(「カテテ」の反覆語尾が脱落して「カテ」となった)

の転訛と解します。

687かど(門)

 家の周囲に巡らしたかこいの出入り口。また、家の出入り口。もん。

 この「かど」は、

  「カ・ト」、KA-TO(ka=to denote the commencement of a new action or condition;to=drag,haul,open or shut a door window)、「扉を開閉・するところ(門)」(「ト」が「ド」となった)

の転訛と解します。

688かとく(家督)

 中世、一門、一族の首長のこと。棟梁。家を継ぐべき子。嫡子。惣領。武士が主君から与えられた俸禄。江戸時代、家産、家督相続。

 この「かとく」は、

  「カハ・ト・クア」、KAHA-TO-KUA(kaha=strong,able,strength,persistency;to=drag,haul;kua=denoting that an action is completed or a condition established at the time indicated)、「強力に・(一族を)統括する・地位を確立した者(家督)」(「カハ」のH音が脱落して「カ」と、「クア」の語尾のA音が脱落して「ク」となった)

の転訛と解します。

689かどまつ(門松)

 新年を祝って家の門口に立てる一対または一本の松。松飾り。

 この「かどまつ」は、

  「カ・ト・マツ」、KA-TO-MATU(ka=to denote the commencement of a new action or condition;to=drag,haul,open or shut a door window;matu=fat,richness of food,kernel of a matter)、「扉を開閉・するところ(門に)・(立てる)油分の多い木(松。門松)」(「ト」が「ド」となった)

の転訛と解します。

690かな(仮名)

 (「かりな」の転じた「かんな」の撥音「ん」の無表記からとする説がある。「な」は文字の意とする)日本に発声、発達した音節文字。本字である漢字を真名(まな)というのに対して、平仮名、片仮名、変体仮名をいい、また、表音文字として万葉仮名を加えていうことがある。和字。国字。

 この「かな」は、

  「カハ・ナ」、KAHA-NA(kaha=strong,able,strength;na=to add emphasis sometimes equivalent to the expression as I was telling you or as I say,by,made by,belonging to,by way of)、「言葉を表現することが・できるもの(仮名)」(「カハ」のH音が脱落して「カ」となった)

の転訛と解します。

691かない(家内)

家の内。また、家族。妻。自分の妻を謙遜していう場合が多い。

 この「かない」は、

  「カ・ヌイ」、KA-NUI(ka=take fire,be lighted,burn;nui=large,many)、「炊事(をはじめ)・多くの仕事をしている者(家族の者。妻)」(「ヌイ」が「ナイ」となった)

の転訛と解します。

692かなえ(鼎)

 古く飲食物を煮るのに用いた金属の器。元来は古代中国の祭器。

 この「かなえ」は、

  「カ・ナヘ」、KA-NAHE(ka=take fire,be lighted,burn;nahe=alone,only,ancient times)、「炊事・専用の器具(鼎)」(「ナヘ」が「ナエ」となった)

の転訛と解します。

693かなぐる

 荒々しく払いのける。荒々しく引き抜く。また、乱暴に奪い取る。

 この「かなぐる」は、

  「カハ・ナ・クル」、KAHA-NA-KURU(kaha=strong,strength;na=by,made by,belonging to,by way of;kuru=strike with the fist,pound,pelt,throw)、「(力を込めて)荒々しく・殴るなどの・暴行をする(かなぐる)」(「カハ」のH音が脱落して「カ」と、「クル」が濁音化して「グル」となった)

の転訛と解します。

694かなしい(悲しい)

 死、別離などに直面して心が強くいたむ。なげかわしい。いたましい。男女、親子などの間での切ない愛情を表す。身にしみていとおしい。かわいくてたまらない。いとしい。心にしみて感ずる。しみじみと心を打たれる。など。

 この「かなしい」は、

  「カ・ナ・チヒ」、KA-NA-TIHI(ka=take fire,be lighted,burn;na=by,made by,belonging to,by way of;tihi=sough,moan of the wind,summit,top,lie in a heap)、「(心=悲嘆が)燃える・ようで・(悲しみに)うめいている(悲しい)」、「(心=愛情が)燃える・ようで・最高に(いとおしい)(悲しい)」または「(心=興味が)燃える・ようで・(高みにいる)たいへん興奮している(悲しい)」(「チヒ」のH音が脱落して「チイ」から「シイ」となった)

の転訛と解します。

695かなめ(要)

 扇の末端で骨をまとめている楔。刀の目貫。(転じて)ある物事を支える最も大切な部分や事柄、人物。要石。

 この「かなめ」は、

  「カハ・アナ・メア」、KAHA-ANA-MEA(kaha=strong,able,persistency;ana=denoting continuance of action or state;mea=thing,reason,cause,fact)、「(物事や状態を)永く可能と・している・(肝心な)もの(または理由など。要)」(「カハ」のH音が脱落して「カ」となったそのA音と「アナ」の語頭のA音が連結して「カナ」と、「メア」の語尾のA音が脱落して「メ」となった)

の転訛と解します。

696かならず(必ず)

 間違いなく。確実に。たしかに。きつと。

 この「かならず」は、

  「カ・アナ・ラ・ツ」、KA-ANA-RA-TU(ka=to denote the commencement of a new action or condition;ana=denoting continuance of action or state;ra=wed;tu=stand,be erect,settle,be placid)、「(ある)行為が・(それに先立つその条件となる行為に)連続して・(結婚したように)随伴して・生起する(必ず)」(「カ」のA音と「アナ」の語頭のA音が連結して「カナ」と、「ツ」が「ズ」となった)

の転訛と解します。

697かね(金)

 @金属(金、銀、銅、鉄など)の総称。また、その原料の鉱石、鉱物。

 A貨幣。金銭。おかね。

 この「かね」は、

  @「カ・ナヱ」、KA-NAWE(ka=take fire,be lighted,burn;nawe=be set on fire,be kindled or excited as feelings)、「燃える火に・かける(製錬する)もの(金属)」(「ナヱ」のAWE音がE音に変化して「ネ」となった)

  A「カネヘ」、KANEHE(trifle,desire,affection,yerning)、「欲しくてたまらないもの(金銭)」(「カネヘ」のH音が脱落して「カネ」となった)

の転訛と解します。

698かねて(予て)

 将来を見越す心情を表す。…を見越して。(日数、期間、を表す語を受けて)…前から。いまからもう。はやくも。前から。ずっと。以前に。かつて。

 この「かねて」は、

  「カ・ネヘ・テ」、KA-NEHE-TE(ka=to denote the commencement of a new action or condition;nehe=ancient times,old age,distance;te=crack,emit a sharp explosive sound)、「(ある)行為が・永い昔を・隔てて(予て)」(「ネヘ」のH音が脱落して「ネ」となった)

の転訛と解します。

699かばね(姓)

 古代豪族がその氏の名に付けて家柄を示した称号。元来は氏人が氏上を呼ぶ尊称で、姓の間に上下の区別がなかったが、各氏の政治的地位と職掌の世襲化が進み、大和政権が姓の与奪を通して豪族の統制を強めるようになつて上下の区別がついた。この「かばね」については、雑楽篇(その一)の335姓(かばね)の項を参照してください。

 この「かばね」は、

   「カパ・ネイ」、KAPA-NEI(kapa=rank,row,stand in a row or rank;nei=to denote proximity to or connection with the speaker)、「人々(を並べる場合)の・序列(または階級)」(「カパ」が「カバ」と、「ネイ」が「ネ」となった)

の転訛と解します。

700かばやき(蒲焼き)

 ウナギ、ドジョウ、アナゴ、ハモなどを背開きにして骨を取り、蒸してたれをつけて焼いた料理。もと、ウナギなどを丸のまま串刺しにして焼いたが、その形、色が蒲の穂に似ていたことからの名といわれる。

 この「かばやき」は、

  「カ・パイ・アキ」、KA-PAI-AKI(ka=take fire,be lighted,burn;pai=good,excellent,suitable,pleasant;aki=dash,beat,abut on)、「綺麗に・(串に刺して)並べて・(火にかけて)焼いたもの(蒲焼き)」(「パイ・アキ」が「パイイアキ」から「バヤキ」となった)

の転訛と解します。

701かばん(鞄)

 (ふみばさみの意の中国語「夾板」の日本読み「きゃばん」、「きゃまん」から出たとする説がある。明治10年台以降使用されたという。)皮またはズックで作り、中に物をいれる携帯用具。

 この「かばん」は、

  「カ・パネパネ」、KA-PANEPANEI(ka=to denote the commencement of a new action or condition;panepane=close,compact)、「(書類、筆記具などを)コンパクトに・まとめて持ち運ぶもの(鞄)」(「パネパネ」の反覆語尾が脱落して「パネ」から「バン」となった)

の転訛と解します。

702かぶ(株)

 @植物の根もと。木を伐つた後に残った幹または切り株。

 A他に対して締める地位、身分。近世、官許された業者仲間の組合員、御家人、名主、家主などが世襲する地位、身分。その人の持ち前の得意なわざ。

 この「かぶ」は、

  @「カ・プ」、KA-PU(ka=to denote the commencement of a new action or condition,when,as soon as,should;pu=originate,source,root of a tree or plant,base)、「切られた・(植物の)根(株)」(「プ」が「ブ」となった)

  A「カ・アプ」、KA-APU(ka=to denote the commencement of a new action or condition,when,as soon as,should;apu=move or be in flock or crowd,company of labourers,gather into the hands,heap upon)、「単独でまたは集合して・活動する者たち(の地位、身分)(株)」(「カ」のA音と「アプ」の語頭のA音が連結して「カプ」から「カブ」となった)

の転訛と解します。

703かぶき(歌舞伎)

 (動詞「かぶく(傾く)」の連用形の名詞化とする説がある)並外れて華美な風態をしたり、異様な言動や色めいた振る舞いをすること。近世初期に発生、発達した、日本固有の演劇。

 この「かぶき」は、

  「カ・プフキ」、KA-PUHUKI(ka=to denote the commencement of a new action or condition;puhuki=blunt,dull)、「(劇中の見せ場での)所作が・ゆっくりとしている(歌舞伎)」(「プフキ」のH音が脱落して「プキ」から「ブキ」となった)

  または「カプ・キ」、KAPU-KI(kapu=hollow of the hand,the object invested by the tohunga(skilled person) with the powers rendering a rahui(a mark to warn people against trespassing) effective;ki=full,very)、「たくさんの・(先人たちから引き継がれてきた)禁忌や伝統の積み重ねがある(歌舞伎)」(「カプ」が「カブ」となった)

の転訛と解します。

704かぶと(兜)

 頭部を防御する武具。舞楽の楽人や舞人がかぶる鳳凰の頭にかたどつた冠。

 この「かぶと」は、

  「カプ・タウ」、KAPU-TAU(kapu=hollow of the hand,close the hand;tau=string of a garment etc.,bundle(tatau=tie with a cord),ridge of a hill)、「両手を合わせたような形の・(頭に載せて)紐で縛るもの(兜)」(「カプ」が「カブ」と、「タウ」のAU音がO音に変化して「ト」となった)

の転訛と解します。

705かぶれる

 漆、向こう焼くなどの成分に冒されて一種の皮膚病になる。あるものの影響や刺激を受けて、すっかりその風に染まる。

 この「かぶれる」は、

  「カ・プレイ・ル」、KA-PUREI-RU(ka=to denote the commencement of a new action or condition;purei=isolated rock,cluster,isolated group or patch of anything;ru=shake,agitate,scatter)、「(何かの)影響を受けて・(皮膚の)ある小さな独立した部分が・(奮う)腫れ上がる(かぶれる)」または「(何ものかの)影響を受けて・(人の)小さな独立した集団が・(奮う)すっかり興奮の極に達する(かぶれる)」(「プレイ」が「ブレ」となつた)

の転訛と解します。

706かぶろ(禿)

 頭に毛がないこと。また、そのさま。山に樹木がないこと。また、動物の頭に角がないこと。子供の髪型(髪の末を切りそろえ、結ばないで垂らしておくもの)。上級り遊女に使われる少女。

 この「かぶろ」は、

  「カ・プ・ロア」、KA-PU-ROA(ka=to denote the commencement of a new action or condition;pu=tribe,bunch,heap,lie in a heap;roa=long,long(of time),delayed)、「頭の上の・発毛が・遅れている(禿)」(「プ」が「ブ」と、「ロア」の語尾のA音が脱落して「ロ」となった)

の転訛と解します。

707かべ(壁)

 建物の周囲、または内部を仕切る仕切り。豆腐をいう女房詞。この「かべ(壁)」については、雑楽篇(その二)の1026壁(かべ)の項を参照してください。

 この「かべ」は、

  「カハ・アパイ」、KAHA-APAI(kaha=strong,strength,persistency;apai=front wall of a house)、「(家の)正面の壁が・(周囲に)延長したもの(家の壁)」(「カハ」のH音が脱落して「カ」となり、その語尾のA音と「アパイ」の語頭のA音が連結し、AI音がE音に変化して「カペ」から「カベ」となった)

の転訛と解します。

708かま(鎌)

 (「カリバ(刈刃)」の転または「マガリバ(曲刃)」の転とする説がある)草、柴などを刈るのに用いる道具。この「かま(鎌)」については、雑楽篇(その二)の1040釜(かま)の項の「鎌」を参照してください。

 この「かま」は、

  「カ・アマ」、KA-AMA((Hawaii)ka=root cutting;ama=the curved posts supporting the gable of a house)、「(植物の)根を切る・(家の庇の支柱のような)曲がった棒(鎌)」(「カ」のA音と「アマ」の語頭のA音が連結して「カマ」となった)

の転訛と解します。

709かま(釜)

 飯を炊いたり湯を沸かしたりする金属製の用具。鍋よりも深く造る。湯釜と茶釜の総称。尻または肛門の異称。転じて、男色。この「かま(釜)」については、雑楽篇(その二)の1040釜(かま)の項を参照してください。

 この「かま」は、

  「カ・マハ」、KA-MAHA(ka=take fire,be lighted,burn;maha=many,abundance)、「大量(の食料や水)を・(火にかけて)加熱する(調理器具。釜)」(「マハ」のH音が脱落して「マ」となった)

の転訛と解します。

710がまぐち(蝦蟇口)

 口金のついた袋形の銭入れ。

 この「がまぐち」は、

  「(ン)ガ・マ・クチ」、NGA-MA-KUTI(nga=the,satisfied,breath;ma=for,in the sense of to be possessed by,by means of,by way of;kuti=draw tightly together,contract,pinch)、「例の(大きな口を開く)・(お金を入れて)しっかりと口を締めるもの(蝦蟇口)」(「(ン)ガ」のNG音がG音に変化して「ガ」と、「クチ」が「グチ」となった)

の転訛と解します。

711かまくら

 雪国、主に秋田県に伝わる小正月(正月十五日)前後の子供の行事。雪で作った室(むろ)の前で火を焚いて鳥追いの歌を歌う。幾日も前から子供たちは室の中で遊び、十五日前夜には餅や甘酒などを供えて神を祭る。この「かまくら」については、国語篇(その十一)の(7)鎌倉(かまくら)郡の項を参照してください。

 この「かまくら」は、

  「カ・マクラ」、KA-MAKURA(ka=take fire,place of abode;makura=light red)、「(雪室が)赤く照らされている・居住ができる場所(かまくら)」

の転訛と解します。

712かます(叺)

 (古く「蒲(かま)」の葉で編み作ったところから「蒲簀(かます)」の意という説がある)わらむしろを二つに折り、左右両端を縄で綴った袋。穀物、菜、粉などをいれるのに用いる。

 この「かます」は、

  「カマ・ツ」、KAMA-TU(kama=eager(kakama=quick,nimble);tu=stand,be erect,settle,be placid,be turned up of the nose,be set)、「簡単に(むしろを二つ折りにした)・作った(間に合わせの容器。叺)」(「ツ」が「ス」となった)

の転訛と解します。

713かまち(框)

 物の外枠の木。多く、戸、障子などの建具の枠木をいい、転じて、一般的に物の枠についてもいう。玄関の上がり口、床の間、縁側など、床の面の端を隠すための化粧横木。

 この「かまち」は、

  「カ・マチ」、KA-MATI(ka=to denote the commencement of a new action or condition;mati=surfeited)、「手間を・十分にかけた(成果の。框)」

の転訛と解します。

714かまど(竈)

 上に鍋、釜などをかけ、したから火を燃して、物を煮炊きするようにしたもの。くど。へっつい。この「かまど」については、雑楽篇(その二)の1039竈(かまど)の項を参照してください。

 この「かまど」は、

  「カマ・ト」、KAMA-TO(kama=eager;to=drag,stove,cooker(toanga=place etc. of dragging))、「勢いよく・(火を引き込んで釜や鍋を)熱する装置(竈)」(「ト」が「ド」となった)

の転訛と解します。

715かまとと

 (「かまぼこは魚(とと)からできているのか」と尋ねたところからという)分かりきっていることなのに知らないようなふりをすること。また、その人。特に、女性がうぶなふりをして甘えたりすること。また、その女性。近世末に髪型の遊里で使い始めた語。

 この「かまとと」は、

  「カ・ママ・トトア」、KA-MAMA-TOTOA(ka=to denote the commencement of a new action or condition;mama=light,not heavy,unencumbered,so quick;totoa=disrespectful,wasteful,lavish)、「言行が・軽率で・軽蔑される(かまとと)」(「ママ」の反覆語尾が脱落して「マ」と、「トトア」の語尾のA音が脱落して「トト」となった)

の転訛と解します。

716かまぼこ(蒲鉾)

 (「蒲(がま)」の花穂が「鉾(ほこ)」に似ているところからいうとの説がある)白身の魚をすり身にし、調味料や片栗粉などを加えて練り、それを板につけ、または簀巻きにしたり、種々の形に成形して、蒸し、ゆで、またはあぶり焼きにした食品。

 この「かまぼこ」は、

  「カマ・ポコ」、KAMA-POKO(kama=eager;poko=go out as fire,be extinguished,beaten,defeated)、「(魚を)熱心に・(打ち砕く)磨り潰して作ったもの」蒲鉾(「ポコ」が「ボコ」となった)

の転訛と解します。

717がまん(我慢)

 @仏語。七慢の一つ。我(が)をよりどころとしてこころが高慢であること。自分自身に固執して他人をあなどること。(転じて)我意を張ること。強情なこと。

 Aじっと耐え忍ぶこと。辛抱すること。

 この「がまん」は、

  @「(ン)ガ・マナ」、NGA-MANA(nga=the,satisfied;mana=authority,influence,prestige,power,psychic force,having influence or power,vested with effective authority,be effectual,take effect)、「自分自身の(権威)人格、能力に・(満足して)固執すること(我慢)」(「(ン)ガ」のNG音がG音に変化して「ガ」と、「マナ」が「マン」となった)

  A「(ン)ガ・マ(ン)ギ」、NGA-MANGI(nga=the,satisfied;mangi=floating,unnerved,unsettled,distressed,by grief,hunger,etc.,fleet)、「苦難や苦痛を・(満足して)耐え忍ぶこと(我慢)」(「(ン)ガ」のNG音がG音に変化して「ガ」と、「マ(ン)ギ」のNG音がN音に変化して「マニ」から「マン」となった)

の転訛と解します。

718かみ(神)

 宗教的、民俗的信仰の対象。世に禍福を下し、人に加護や罰を与えるという霊威。古代人が、天地万物に宿り、それを支配していると考えた存在。神話上の人格神。天皇、またはその祖先。人為を越えて、人間に危害を及ぼす恐ろしいもの。神社。また、神社に祀られた霊や死者の霊魂など。この「かみ」については、国語篇(その三)の第二の第一章日本語はこうして韓国語から生まれたの「神(かみ)」の項を参照してください。

 この「かみ」は、

  「カミ」、KAMI(eat)、「(すべてを呑み込む)征服・圧倒するもの(神)」

  または「カ・ミヒ」、KA-MIHI(ka=to denote the commencement of a new action or condition;mihi=sigh for,greet,admire,express discomfort)、「尊崇・すべきもの(神)」(「ミヒ」のH音が脱落して「ミ」となった)

の転訛と解します。

719かみ(髪)

 頭に生える毛。髪の毛。頭髪。結った髪の毛。髪形。この「かみ」については、雑楽篇(その二)の1044剃刀(かみそり)の項を参照してください。

 この「かみ」は、

  「カカ・アミ」、KAKA-AMI(kaka=fibre,single hair,stalk,line;ami=gather,collect)、「(一本の)髪の毛が・集まったもの(髪)」(「カカ」の反復語尾が脱落して「カ」となったその語尾のA音と「アミ」の語頭のA音が連結して「カミ」となった)

  または「カカ・ミイ」、KAKA-MII(kaka=fibre,single hair,atalk,line;(Hawaii)mii=good-looking)、「美しい・髪の毛(髪。結った髪)」(「カカ」の反復語尾が脱落して「カ」と、「ミイ」が「ミ」となった)

の転訛と解します。

720かみ(紙)

 植物繊維を水中で絡み合わせ、薄く漉き上げて乾燥したもの。この「かみ」については、雑楽篇(その二)の1051筆(ふで)の項の「紙(かみ)」を参照してください。

 この「かみ」は、

  「カカ・アミ」、KAKA-AMI(kaka=fibre,single hair,stalk,line;ami=gather,collect)、「繊維(や植物の稈)を・集めた(漉いたもの。紙)」(「カカ」の反復語尾が脱落して「カ」となったその語尾のA音と「アミ」の語頭のA音が連結して「カミ」となった)

の転訛と解します。

721かみなり(雷)

 (「神鳴り」の意とする説がある)電気を帯びた雲と雲の間、または雲と地表との間に起こる放電現象。また、それに伴って起こる大音響の雷鳴。いかずち。雷様。なるかみ。この「かみなり」については、雑楽篇(その一)の237かみなり(雷)の項を参照してください。

 この「かみなり」は、

  「カミ・(ン)ガリ」、KAMI-NGARI(kami=eat;ngari=annoyance,greatness,power)、「(一噛みにする)破壊する・強い力(を持つもの。雷)」(「(ン)ガリ」のNG音がN音に変化して「ナリ」となった)

の転訛と解します。

722かむ(噛む)

 上下の歯をあてて、ものをはさみ砕く。咀嚼する。上下の歯を強く合わせる。歯を食いしばる。物の間で挟む。など。この「かむ」については、国語篇(その九)の007の「かむ(噛む)」の項を参照してください。

 この「かむ」は、

  「カム」、kamu(eat,munch)、「噛む」「カム」、kamu(eat,munch)、「噛む」

の転訛と解します。

723がむしゃら(我武者羅)

 (「がむさぼり(我貪)」の変化(「武者」は宛字)かとする説がある)血気にはやること。向こう見ずで乱暴なこと。また、その人。程度が甚だしいさま。

 この「がむしゃら」は、

  「(ン)ガ・アム・チア・ラ」、NGA-AMU-TIA-RA(nga=the,satisfied;amu=grumble,begrudge,complain;tia=stick in,drive in pegs etc.,adorn by sticking in feathers,take a vigorous stroke in paddling;ra=wed)、「(自分の考えに満足して)固執して・不平不満を言う・とともに・乱暴に動き回る(我武者羅)」(「(ン)ガ」のNG音がG音に変化して「ガ」となったその語尾のA音と「アム」の語頭のA音が連結して「ガム」と、「チア」が「シャ」となった」)

の転訛と解します。

724かめ(甕)

 底を深く、内を広く作った土製・陶磁製または金属製の器。この「かめ」については、雑楽篇(その二)の1041壺(つぼ)の項の「かめ(甕)」を参照してください。

 この「かめ」は、

  「カハ・メ」、KAHA-ME(kaha=strong,strength;me=as if,like,as it were)、「(壺よりも大きくて)強い・ような(容器。甕)」(「カハ」のH音が脱落して「カ」となった)

  または「カハ・マイ」、KAHA-MAI(kaha=strong,strength;mai=fermented,food slightly fermented)、「(壺よりも大きくて)強い・発酵した食品(漬け物、酒など)を入れる(容器。甕)」(「カハ」のH音が脱落して「カ」と、「マイ」のAI音がE音に変化して「メ」となった)

の転訛と解します。

725がめつい

 利益に対して抜け目がない。欲が深い。けちでそつなく稼ぐ。

 この「がめつい」は、

  「カメ・ツヒ」、KAME-TUHI(kame=eat,food,property;tuhi=conjure,invoke with proper ceremonies)、「(財産)利益が・(魔法をかけたように)不思議に集まる(がめつい)」(「カメ」が濁音化して「ガメ」と、「ツヒ」のH音が脱落して「ツイ」となった)

の転訛と解します。

726かもい(鴨居)

 建築物の開口部の上部にあって、引戸、障子、襖などをはめる溝を付けた横材。

 この「かもい」は、

  「カ・モヒ」、KA-MOHI(ka=to denote the commencement of a new action or condition;mohi,mohimohi=smooth,sleek,tend,nurse)、「(戸や障子などが)滑らかに・開閉するようにするもの(鴨居)」(「モヒ」のH音が脱落して「モイ」となった)

の転訛と解します。

727かもす(醸す)

 穀類などを麹にして水を混ぜ発酵させて、酒、醤油、酢などを作る。醸造する。ある気分や、雰囲気ね状態などを除々に作り出す。ある物事を起こす。もたらす。

 この「かもす」は、

  「カモ・ツ」、KAMO-TU(kamo=eye,wink,bubble up;tu=fight with,energetic)、「懸命に・(泡を出させる)発酵させる(醸す)」(「ツ」が「ス」となった)

の転訛と解します。

728かや(蚊帳)

 蚊を防ぐために、四隅を吊って寝床を覆う具。麻、絽、木綿などで作る。

 この「かや」は、

  「カハ・イア」、KAHA-IA(kaha=strong,able,strength,a general term for several charms used when fishing or snaring birds etc.)、「実に・蚊を防ぐことができるもの(蚊帳)」(「カハ」のH音が脱落して「カ」と、「イア」が「ヤ」となった)

の転訛と解します。

729かやく(加薬)

 漢方薬で、主要薬の効果を増すため、または飲みやすくするため、少量の補助薬を加えること。また、その薬。料理の香辛料、薬味、山椒、胡麻、生姜、葱などの類。主として関西で、めん類、茶碗蒸し、飯などに加え、または混ぜる諸種の具(ぐ)をいう。この「ぐ(具)」については、後出838ぐ(具)の項を参照してください。

 この「かやく」は、

  「カイ・アク」、KAI-AKU(kai=consume,eat,food;aku=delay,take time over anything,scrape out)、「食物に・後から加えるもの(加薬)」(「カイ」の語尾のI音と「アク」の語頭のA音が連結して「カヤク」となった)

の転訛と解します。

730から(空)

 内部に本来ならあるべきものが、ないこと。中が充実していないこと。何も持っていないこと。

 この「から」は、

  「カ・ラハ」、KA-RAHA(ka=to denote the commencement of a new action or condition;raha=open,extended)、「(開いている)何もない・状態の(空)」(「ラハ」のH音が脱落して「ラ」となった)

の転訛と解します。

731〜から・〜まで

 動作の起点(〜から)、終点(〜まで)を示す語。

 この「から」、「まで」は、

  「カ・アラ」、KA-ARA(ka=to denote the commencement of a new action or condition;ara=rise,awake,raise)、「(ここから)行為が・始まる(〜から)」(「カ」のA音と「アラ」の語頭のA音が連結して「カラ」となった)

  「マテ」、MATE(dead,extinguished,sick,completed)、「(ここで)終了する(〜まで)」(「マテ」が「マデ」となった)

の転訛と解します。

732からうす(唐臼)

 臼を地面に埋め、梃子を応用して足で杵の柄を踏んで杵を上下させ、米などの穀類を搗くもの。踏み臼。稲などの籾殻を落とす農具。籾摺り臼。

 なお、万葉集(16-3817)に従来「軽碓(かるうす)」(契沖による改訓)と訓まれ、「唐臼なり」(賀茂真淵)と解されてきた句がありますが、誤解です。国語篇(その五)の221-2かるはすは(かるうすは)の項を参照してください。

 この「からうす」は、

  「カ・アラ・ウ・ツ」、KA-ARA-U-TU(ka=to denote the commencement of a new action or condition;ara=rise,awake,raise;u=bite,gnaw;tu=fight with,energetic)、「(足で踏むことによって)杵が・持ち上がって搗く(仕掛けの)・しっかりと・(米や餅などを)搗くもの(唐臼)」(「カ」のA音と「アラ」の語頭のA音が連結して「カラ」と、「ツ」が「ス」となった)

の転訛と解します。

733からかさ(唐傘)

 竹の細い骨に紙を張って油を引き、轆轤で開閉できるようにした、雨、雪または炎天の時に差す具。さしがさ。手傘。

 この「からかさ」は、

  「カ・アラ・カハ・タ」、KA-ARA-KAHA-TA(ka=to denote the commencement of a new action or condition;ara=rise,awake,raise;kaha=strong,able,strength;ta=dash,beat,lay)、「(傘の中心のろくろを)持ち上げる・ことによって・(人の頭上を)覆う・ことができるもの(唐傘)」(「カ」のA音と「アラ」の語頭のA音が連結して「カラ」と、「カ」のA音と「アタ」の語頭のA音が連結して「カタ」から「カサ」となった)

の転訛と解します。

734からきし

 まるっきり。てんで。全然。

 この「からきし」は、

  「カ・ラキ・チ」、KA-RAKI-TI(ka=to denote the commencement of a new action or condition;raki=dry,dried up;ti=throw,cast,overcome)、「乾燥しきった・状態に・置かれている(全く成長しない。からきし)」(「チ」が「シ」となった)

の転訛と解します。

735がらくた

 (「がら」は物の触れ合う音、「くた」は「朽ち」の転、または「芥(あくた)」の略とする説がある)価値、用途のない雑多な品物。半端物。つまらない人間。

 この「がらくた」は、

  「(ン)ガラ・クタ」、NGARA-KUTA(ngara=snarl;kuta=Scirpus lacustris,a rush)、「文句をいう(役に立たない)・雑草のようなもの(がらくた)」(「(ン)ガラ」のNG音がG音に変化して「ガラ」となった)

の転訛と解します。

736からくり(機関)

 糸などで操って動かすこと。また、糸などの仕掛けで動くもの。あやつり。あやつりじかけ。仕掛け。仕組み。構造。工夫をこらして物事を仕組むこと。細工。計略。たくらみ。機関人形。からくりのぞき。

 この「からくり」は、

  「カ・アラ・クリ」、KA-ARA-KURI(ka=to denote the commencement of a new action or condition;ara=rise,awake,raise;kuri=dog,any quadruped)、「(何かを)すると・犬(または四足獣)のように・動き出すもの(機関)」(「カ」のA音と「アラ」の語頭のA音が連結して「カラ」となった)

の転訛と解します。

737からすみ(唐墨)

 中国製の書道用の墨。ボラの卵巣を塩漬けにした後、干し固めた食品。形が唐墨に似るからという。

 この「からすみ」は、

  「カ・ラハ・アツ・ミイ」、KA-RAHA-ATU-MII(ka=take fire,be lighted,burn;raha=open,extended;atu=to indicate a direction or motion onward,to form a cpmparative or superlative;(Hawaii)mii=attractive,fine-appearance,good-looking)、「日の光の下で・乾燥し・綺麗な形に・成形したもの(からすみ)」(「ラハ」のH音が脱落した「ラ」のA音と「アツ」の語頭のA音が連結して「ラツ」から「ラス」と、「ミイ」が「ミ」となった)

の転訛と解します。

738からと(唐櫃)

 米櫃をいう。

 この「からと」は、

  「カ・ラト」、KA-RATO(ka=to denote the commencement of a new action or condition;rato=be served or provided,be distributed)、「(食事のために)準備して・おくためのもの(唐櫃)」

の転訛と解します。

739からめて(搦め手)

 城の裏門。敵の裏面。城の裏門または背面を攻める軍勢。相手の正面以外の手薄なところや注意をはらっていない面。

 この「からめて」は、

  「カラ・マイタイ」、KARA-MAITAI(kara=secret plan,conspiracy,a request for asistance in war either verbal or material;maitai=good,beautiful,agreeable,iron)、「助勢(応援)の軍勢や物資を受け入れるのに・好適な(出入口。搦め手)」(「マイタイ」のAI音がE音に変化して「メテ」となった)

の転訛と解します。

740かりそめ(仮初め)

 永久でないこと。ほんの一時のさま。まにあわせ。その場かぎり。実意なくおろそかなこと。なおざりなこと。いい加減なさま。形だけのこと。些細なこと。

 この「かりそめ」は、

  「カ・アリ・ト・マイ」、KA-ARI-TO-MAI(ka=to denote the commencement of a new action or condition;ari=clear,visible,white,appearance,guise,excuse;to=moisten,wet,anoint;mai=become quiet,to indicate direction or motion towards(tomairangi,tomaiwhenua=dew,moisture))、「外観(見かけ)が・(すぐに消える)一時的に降りる・(朝)露の・ように見える(仮初め)」(「カ」のA音と「アリ」の語頭のA音が連結して「カリ」と、「ト」が「ソ」と、「マイ」のAI音がE音に変化して「メ」となった)

の転訛と解します。

741かりほ(仮廬)

 仮庵(かりいほ。かりいお)の変化した語とされる。

 この「かりほ」は、

  「カ・リオ」、KA-RIO(ka=to denote the commencement of a new action or condition;rio=withered,dried up,wrinkled,be diminished)、「ほんとうに小さな・状態である(仮廬)」

の転訛と解します。

742かるさん(軽衫)

 (ポルトガル語「calcao」からとする説がある)裾幅が狭く、筒状の裾継ぎを付けた袴の一種。近世初期には身分を問わず広く用いられ、江戸時代には武士が旅装として着用し、江戸中期以降次第に廃れ、現在では中部地方の農山村や寒い地方の男女の野良着として残っている。たっつけ。もんぺ。

 この「かるさん」は、

  「カル・タ(ン)ガタ(ン)ガ」、KARU-TANGATANGA(karu=spongy matter(karukaru=rags),(Hawaii)kalua=double-standard;tangatanga-loose,not tight,easy,comfortable,free from pain)、「略式の・(きつくなくて)着易い(袴。軽衫)」(「タ(ン)ガタ(ン)ガ」の反覆語尾が脱落し、NG音がN音に変化して「タナ」から「サン」となった)

の転訛と解します。

743かるた(歌留多)

 (ポルトガル語「カリタcarta」(「カルテ」「カード」と同源)からとする説がある)遊びまたは博奕に使う、絵や文字を書いた長方形の札。絵や歌に合わせてこの札を取り、取った数によって勝負を決める。

 この「かるた」は、

  「カ・ルイ・タ」、KA-RUI-TA(ka=to denote the commencement of a new action or condition;rui=shake,brandish,scatter,cast away;ta=dash,beat,lay)、「(歌の読み上げ)遊びの進行に伴って・(札に)飛びつき・(札を)はね飛ばす(遊び。歌留多)」(「ルイ」が「ル」となった)

  または「カ・ルタ」、KA-RUTA(ka=to denote the commencement of a new action or condition;ruta=rage,bluster)、「遊びの進行に伴って・感情が暴発する(遊び。歌留多)」

の転訛と解します。

744かろうじて(辛うじて)

 実現困難なことを実現したそのしかたに余裕がほとんどないさま。どうやらこうやら。やっとのことてせ。ようやく。

 この「かろうじて」は、

  「カ・ロウ・チテ(ン)ギ」、KA-ROU-TITENGI(ka=to denote the commencement of a new action or condition;rou=a long stick used to reach anything,etc.;titengi=unsettled,insecure)、「成功するかどうか極めて難しい・部類の作業を・行う(辛うじて)」(「チテ(ン)ギ」の語尾のNGI音が脱落して「チテ」から「ジテ」となった)

の転訛と解します。

745かわ(川、河)

 地表に集まった水が、傾斜した陸地のくぼんだ所を流れるもの。

 この「かわ」は、

  「カワ」、kawa(channel,passage between rocks or shaoals)、「水路である(川)」

  または「カハ」、kaha(rope)、「縄のような(川)」 (「カハ」が「カワ」となつた)

の転訛と解します。

746かわいい(可哀い。可愛い)

 @あわれで、人の同情を誘うようなさまである。可哀相だ。ふびんだ。この「かわいい」については、国語篇(その十四)の059かわいそう(可哀相)の項を参照してください。

 A心が惹かれ、放っておけない、大切にしたいという気持ちである。深く愛し、大事にしたいさまである。いとしい。この「かわいい」については、国語篇(その十四)の058かわいい(可愛い)の項を参照してください。

 この「かわいい」は、

  @「カ・ワイ・イ」、KA-WAI-I(ka=to denote the commencement of a new action or condition;wai=water;i=be stirred of the feelings)、「(人が)水に・落ちた(溺れる)・(ことを哀れだと)思う感情が湧く(可哀相)」(「ワイ・イ」が「ワイー」となった)

  A「カ・ワイ・イ」、KA-WHAI-I(ka=take fire,be lighted,burn;whai=possessing,becoming,acquiring the shape or character of;i=be stirred of the feelings)、「(容貌・性格などが)輝くようで・好ましいと・思う感情が湧く(可愛い)」

の転訛と解します。

747かわきり(皮切り)

 最初に据えた灸。物事のし始め。手始め。

 この「かわきり」は、

  「カワ・キキリ」、KAWA-KIKIRI(kawa=a class of karakia(charm) or ceremonies in connection with a new house or canoe or birth of a child or a battle etc.,perform the kawa ceremony,ope a new house etc.;kikiri=begin to grow as a child in the womb)、「(家の新築、カヌーの新造、出産、戦闘の開始など)物事を・始める(皮切り)」(「キキリ」の反覆語頭が脱落して「キリ」となった)

の転訛と解します。

748かわざんよう(皮算用)

 (「捕らぬ狸の皮算用」の略)物事がまだ実現しない前に、あれこれとあてにして計算すること。

 この「かわざんよう」は、

  「カワ・タ(ン)ギ・アウ」、KAWA-TANGI-AU(kawa=a class of karakia(charm) or ceremonies in connection with a new house or canoe or birth of a child or a battle etc.,perform the kawa ceremony,ope a new house etc.;tangi=sound,cry,weep;au=firm,intense)、「(事前に行った)成功を祈る(呪術)お祓いが・実に・泣き出す(皮算用)」(「タ(ン)ギ」のNG音がN音に変化して「タニ」と、「アウ」のAU音がOU音に変化して「オウ」となり、「タニ・オウ」が「タンヨウ」から「ザンヨウ」となった)

の転訛と解します。

749かわせ(為替)

 取り交わすこと。引き換え。交換。離れた地域に現金を輸送する危険や不便などを避けて、手形、小切手などの信用手段により、債権、債務を決済する方法。

 この「かわせ」は、

  「カ・ワテア」、KA-WATEA(ka=to denote the commencement of a new action or condition;watea=unoccupied,clea,free,open,cautious(atea=clear,out of the way))、「(現金を)動かさずに・決済するもの(為替)」(「ワテア」の語尾のA音が脱落して「ワテ」から「ワセ」となった)

の転訛と解します。

750かわたれどき(彼誰時)

 夜明け、または夕暮れどきの薄暗い時分。夕方を「たそがれどき」として、「かわたれどき」を特に明け方に言うことが多い。

 この「かわたれどき」は、

  「カ・ワタ(ン)ガ・レイ・トキ」、KA-WATANGA-REI-TOKI(ka=to denote the commencement of a new action or condition;watanga=object of desire;rei=leap,rush,run;toki=fetch,altogether,without exception)、「走り・去るものを・捉まえる・状況(成功することが非常に難しい、その時刻)(彼誰時)」(「ワタ(ン)ガ」の名詞形語尾のNGA音が脱落して「ワタ」と、「レイ」が「レ」と、「トキ」が「ドキ」となった)

の転訛と解します。

751かわや(厠)

 大小便を排泄する所。便所。後架。雪隠。はばかり。手水場。東司。

 この「かわや」は、

  「カ・ワイア」、KA-WAIA(ka=to denote the commencement of a new action or condition;waia=wet,watery,watetred,accustomed,practised,familiarised)、「(大小便を)水とともに・流し去る(場所。厠)」(「ワイア」が「ワヤ」となった)

の転訛と解します。

752かわら(瓦)

 粘土を一定の形に固め、窯で焼いたもの。寺院建築とともに中国から伝来。主として屋根を葺くのに用いる。この「かわら」については、雑楽篇(その二)の1023かわら(かわら)の項を参照してください。

 この「かわら」は、

  「カウワラ(ン)ギ」、KAUWHARANGI(porched,dry)、「(火で)焼いた(屋根材。瓦)」(WH音がW音またはH音に変化し、語尾のNGI音が脱落して「カウワラ」または「カウハラ」から「カワラ(カハラ)」となった)

の転訛と解します。

753かわらけ(土器)

 釉(うわぐすり)をかけないで焼いた陶器。素焼きの陶器。

 この「かわらけ」は、

  「カカワ・ラケ」、KAKAWA-RAKE(kakawa=harsh,perspiration;rake=bald,bare,barren,make bare)、「粗野で・むき出しの(ごつごつした、素焼きのもの。土器)」(「カカワ」の反覆語頭が脱落して「カワ」となった)

の転訛と解します。

754かん(燗)

 (燗は爛(らん)の俗字、「かん」は倭訓。「火」と「間」の合字かとされる)酒、水、茶などを適度に暖めること。また、その暖め加減。現在では、専ら酒にいう。

 この「かん」は、

  「カ・アナ」、KA-ANA(ka=take fire,be lighted,burn;ana=denoting continuance of action or state)、「(火にかける)熱して・暖める(燗)」(「カ」のA音と「アナ」の語頭のA音が連結して「カナ」から「カン」となった)

の転訛と解します。

755かんがえる(考える)

 いくつかの物事を引き比べて調べる。勘案する。罪を問いただす。吟味して処罪する。易によって吉凶を判断する。物事を筋道を立てて思いはかる。学ぶ。様子を窺う。

 この「かんがえる」は、

  「カ・ア(ン)ガ・ヘル」、KA-ANGA-HERU(ka=to denote the commencement of a new action or condition;anga=face or move in a certain didection,turn to,set about,doing anything,aspect,shell,skelton,stone of fruit;heru=begin to flow,glide as anything floating in the water)、「(物事の)本質について・あれこれと・考えを巡らす(考える)」(「カ」のA音と「ア(ン)ガ」の語頭のA音が連結して「カ(ン)ガ」から「カンガ」と、「ヘル」のH音が脱落して「エル」となった)

の転訛と解します。

756かんがみる(鑑みる)

 鏡や水などに映してみる。手本、先例などと引き比べて考える。神仏などを明らかにみる。

 この「かんがみる」は、

  「カ・ア(ン)ガ・ミヒ・ル」、KA-ANGA-MIHI-RU(ka=to denote the commencement of a new action or condition;anga=face or move in a certain didection,turn to,set about,doing anything,aspect,shell,skelton,stone of fruit;mihi=sigh for,greet,admire,acknowledge an obligation,be expressed of affection etc.;ru=shake,agitate,scatter)、「(物事の)本質について・判断の基準となるもの(法令、法則、先例、手本など)と引き合わせて・奮って・考える(鑑みる)」(「カ」のA音と「ア(ン)ガ」の語頭のA音が連結して「カ(ン)ガ」から「カンガ」と、「ミヒ」のH音が脱落して「ミ」となった)

の転訛と解します。

757がんくび(雁首)

 煙管のタバコを詰める部分。縦樋の落とし口などに用いる煙管の雁首の形に似た土管。俗に、人の頭、首。

 この「がんくび」は、

  「(ン)ガ(ン)ガナ・クフ・ピ」、NGANGANA-KUHU-PI(ngangana=red,glow,bluster;kuhu=thrust in,insert,conceal;pi=eye)、「眼球が・挿入されているもの(首)の部分が・赤くなるもの(雁首)」(「(ン)ガ(ン)ガナ」の反覆語頭が脱落し、NG音がG音に変化して「ガナ」から「ガン」と、「クフ」のH音が脱落して「ク」と、「ピ」が「ビ」となった)

の転訛と解します。

758かんざし(簪)

 女性の頭髪に挿す装飾品。この「かんざし」については、雑楽篇(その二)の1045櫛(くし)の項の「簪(かんざし)」を参照してください。

 この「かんざし」は、

   「カネ・タハ・チ」、KANE-TAHA-TI(kane=head;taha=side,edge;ti=throw,cast)、「頭の・脇に・挿すもの(装身具。簪)」(「カネ」が「カン」と、「タハ」のH音が脱落して「タ」から「ザ」と、「チ」が「シ」となつた)

の転訛と解します。

759がんじがらめ(雁字搦め)

 糸、紐、縄などを縦横に何回も巻き付けること。転じて、全く身動きのとれない状態。

 この「がんじがらめ」は、

  「(ン)ガ・ナチ・(ン)ガラ・メ」、NGA-NATI-NGARA-ME(nga=the;nati=pinch or contract;ngara=snarl;me=if,as if,like)、「例の・(縄などで)ぐるぐる巻かれて・唸っている・ような(雁字搦め)」(「(ン)ガ」のNG音がG音に変化して「ガ」と、「ナチ」が「ンジ」と、「(ン)ガラ」のNG音がG音に変化して「ガラ」となった)

の転訛と解します。

760かんじき

 雪国で深雪中に足を踏み込まないように、靴、わら靴などの足につける道具。この「かんじき」については、国語篇(その十八)の052アメカワ・カンジキの項を参照してください。

 この「かんじき」は、

  「カハ・ナチ・キ」、KAHA-NATI-KI(kaha=strong,able,strength(kahanga=evidence of strength);nati=pinch or contract,fasten raupo thatch on the roof of a house;ki=full,very)、「(雪を踏みしめて)歩くことができる(道具を)・しっかりと・(足に)結びつけるもの(カンジキ)」(「カハ」のH音が脱落して「カ」と、「ナチ」が「ンチ」から「ンジ」となった)

の転訛と解します。

761かんしゃく(癇癪)

 ちょつとしたことにでも激怒しやすい性質。怒りやすい性質。また、その発作。

 この「かんしゃく」は、

  「カ(ン)ガ・チ・アク」、KANGA-TI-AKU(kanga=curse,abuse,execrate;ti=throw,cast;aku=delay,take time over anything,scrape out,cleanse)、「長時間にわたって・悪態を・つく(癇癪)」(「カ(ン)ガ」のNG音がN音に変化して「カナ」から「カン」と、「チ・アク」が「シャク」となった)

の転訛と解します。

762かんじん(肝心)

 肝臓と、心臓または腎臓。転じて、心を比喩的にいう。(肝臓と心臓、また、肝臓と腎臓は、五臓のうち人体に欠くことのできないものであるところから)とり分けて大切な箇所。なかでも大事な部分や事柄。こころに深く感じること。

 この「かんじん」は、

  「カネ・チノ」、KANE-TINO(kane=head;tino=essentiality,self,reality)、「最も(不可欠な)重要な(部分)ものである・頭(肝心)」(「カネ」が「カン」と、「チノ」が「ジン」となった)

の転訛と解します。

763かんだちめ(上達部)

 摂政、関白、太政大臣、左大臣、右大臣、内大臣、大納言、中納言、参議(四位であるが三位に準ずるものとされた)および三位以上の人の総称。公卿。雲上人。

 この「かんだちめ」は、

  「カネ・タ・アチ・メ」、KANE-TA-ATI-ME(kane=head;ta=dash,beat,lay;ati=offspring,descendant,clan;me=if,as if,like,as it were)、「正に・(政権の)頭の・部分にあたる・類の(人々。上達部)」(「カネ」が「カン」と、「タ」のA音と「アチ」の語頭のA音が連結して「タチ」から「ダチ」となった)

の転訛と解します。

764かんてき(七厘)

 上方で、七厘または焜炉をいう語。癇癪、また癇癪を起こしやすい人。この「かんてき」については、雑楽篇(その二)の1038炉(ろ)の項の「かんてき」を参照してください。

 この「かんてき」は、

  「カ(ン)ガ・テキ」、KANGA-TEKI(kanga=ka=take fire,be lighted,burn;teki=cartridge cases)、「燃える火を・容れる容器(焜炉)」(「カ(ン)ガ」のNG音がN音に変化して「カナ」から「カン」となつた)

の転訛と解します。

765かんてら

 (ラテン語candela(ろうそく、燭台)またはオランダ語kandelaar(燭台)からとする説がある)灯火具の一種。

 この「かんてら」は、

  「カ(ン)ガ・テラ」、KANGA-TERA(kanga=ka=take fire,be lighted,burn;tera=definitive pronoun used epithetically or absolutely,that,yonder,that other,the other)、「燃える火を・容れるあの容器(灯火具)」(「カ(ン)ガ」のNG音がN音に変化して「カナ」から「カン」となつた)

の転訛と解します。

766かんてん(寒天)

 テングサを煮て固め、凍らせてさらに乾燥したもの。

 この「かんてん」は、

  「カ(ン)ガ・テ(ン)ガ」、KANGA-TENGA(kanga=ka=take fire,be lighted,burn;tenga=Adam's apple,distended,strained)、「(海藻を加熱し)煮て・膨らましたもの(寒天)」(「カ(ン)ガ」のNG音がN音に変化して「カナ」から「カン」と、「テ(ン)ガ」のNG音がN音に変化して「テナ」から「テン」となった)

  または「カヌ・テ(ン)ガ」、KANU-TENGA(kanu=ragged,torn,distracted,rags;tenga=Adam's apple,distended,strained)、「ぼろのようなもの(海藻を)・膨らましたもの(寒天)」(「カヌ」が「カン」と、「テ(ン)ガ」のNG音がN音に変化して「テナ」から「テン」となった)

の転訛と解します。

767かんどう(勘当)

 勘(かんが)え当てること、調査し決定すること。罪を調べ刑を当てること。譴責すること。勘気をこうむること。お叱りを受けること。江戸時代、親子関係を絶つこと。親、師匠などが子、弟子に対し縁を切ること。仲間から外すこと。

 この「かんどう」は、

  「カ(ン)ガ・トウトウ」、KANGA-TOUTOU(kanga=curse,abuse,execrate;toutou=put articles into a receptacle,dip frequently into liquid,offer and withdraw)、「(人の)行為を責めて・(その人の所属する地位、環境から)引き離す(勘当)」(「カ(ン)ガ」のNG音がN音に変化して「カナ」から「カン」と、「トウトウ」の反覆語尾が脱落して「ドウ」となった)

の転訛と解します。

768かんな(鉋)

 材木の面を削って平らに、また滑らかにするための工具。この「かんな」については、雑楽篇(その二)の1047鋸(のこぎり)の項の「鉋(かんな)」を参照してください。

 この「かんな」は、

  「カハ(ン)ガ・(ン)ガオ」、KAHANGA-NGAO(kahanga=evidence of strength;ngao=dress timber with an adze)、「明らかに長く・木材の表面を滑らかに削るもの(道具。鉋)」(「カハ(ン)ガ」のH音が脱落し、NG音がN音に変化して「カナ」から「カン」と、「(ン)ガオ」のNG音がN音に変化し、語尾のO音が脱落して「ナ」となった)

の転訛と解します。

769かんなぎ(巫)

 神に仕え、神楽を奏して神意をなぐさめたり、神おろしをしたりする人。この「かんなぎ」については、雑楽篇(その一)の314かんなぎ(巫。覡)の項を参照してください。

 この「かんなぎ」は、

  「カム・ア(ン)ギ」、KAMU-ANGI(kamu=eat,move the mouth as if eating,close the hands;angi=free without hindrance,move freely,something connected with the descent to the subterranean spirit world)、「手を合わせて(または口の中で呪文を唱えて)・(神意を求めて心が霊界を)さまよう(人)」(「ア(ン)ギ」のNG音がG音に変化して「アギ」となった)

の転訛と解します。

770かんぬき(閂)

 (貫木(かんのき)の転とする説がある)門の扉を差し固めるための横木。

 この「かんぬき」は、

  「カネ・(ン)グ・ウキ」、KANE-NGU-UKI(kane=choke;ngu=silent,greedy;uki=distant times,past or future)、「(門を窒息させる)閉めて・ずっと・そのままにするもの(閂)」(「カネ」が「カン」と、「(ン)グ」のNG音がN音に変化して「ヌ」となったそのU音と「ウキ」の語頭のU音が連結して「ヌキ」となった)

の転訛と解します。

771かんぬし(神主)

 臨時に神を祭るときに主となって事を行う人。祭主。神社に使える神人の頂。禰宜。祝部などの上に立って、神事に関することを司る人。(広く一般に)神に仕える人。神官。

 この「かんぬし」は、

  「カ(ン)ガ・ヌイ・チ」、KANGA-NUI-TI(kanga=curse,abuse,execrate;nui=large,many;ti=throw,cast,overcome)、「(呪文を唱えて)神を祭って・多くの人々を・従(したが)える(神主)」(「カ(ン)ガ」のNG音がN音に変化して「カナ」から「カン」と、「ヌイ」が「ヌ」と、「チ」が「シ」となった)

  または「カム・ヌイ・チ」、KAMU-NUI-TI(kamu=eat,move the mouth as if eating,close the hands;nui=large,many;ti=throw,cast,overcome)、「手を合わせて(または口の中で呪文を唱えて)・多くの人々を・従(したが)える(神主)」(「カム」が「カン」と、「ヌイ」が「ヌ」と、「チ」が「シ」となった)

の転訛と解します。

772かんのむし(疳の虫)

 小児の疳の病を引き起こすといわれる虫。また、その病。癇癪を起こさせるといわれる虫。また、その癇癪。

 この「かんのむし」は、

  「カ(ン)ガ・ノ・ムイ・チ」、KANGA-NO-MUI-TI(kanga=ka=take fire,be lighted,burn;no=of;mui=swarm round,molest;ti=throw,cast)、「(小児が突然燃えるように)興奮して手が付けられなくなる(性癖)・の(原因である)・悩みを・撒き散らすもの(虫。疳の虫)」(「カ(ン)ガ」のNG音がN音に変化して「カナ」から「カン」と、「ムイ」が「ム」と、「チ」が「シ」となった)

の転訛と解します。

773かんばせ(顔)

 顔つき。顔。容貌。体面。名誉。

 この「かんばせ」は、

  「カナ・パテア」、KANA-PATEA(kana=stare wildly,bewitch;patea=unencumbered,freed from burdens)、「自然に・(物を)見る(顔。かんばせ)」(「カナ」が「カン」と、「パテア」の語尾のA音が脱落して「バセ」となった)

の転訛と解します。

774がんばる(頑張る)

 目を大きく見開いて物を見据える。頑強に座を占める。難に屈せず、努力し続ける。忍耐してやり通す。自説を頑強に主張する。頑固に意地を張る。この「がんばる」については、国語篇(その十四)の063がんばる(頑張る)の項を参照してください。

 この「がんばる」は、

  「(ン)ガ(ン)ガ・パル」、NGANGA-PARU(nganga=breathe heavily or with difficulty;paru=sultry,hot)、「息を切らし・汗だくになって奮闘する(頑張る)」(「(ン)ガ(ン)ガ」の最初のNG音がG音に、次のNG音がN音に変化して「ガナ」から「ガン」と、「パル」が「バル」となった)

の転訛と解します。

775かんばん(看板)

 商家などで家号、職業、商品などを表して店頭や人目に付きやすいところに掲げたもの。

 この「かんばん」は、

  「カナ・パ(ン)ガ」、、KANA-PANGA(kana=stare wildly,bewitch;panga=pa=block up,stockade,screen,blockade)、「(人が)じっと見入る・衝立(看板)」(「カナ」が「カン」と、「パ(ン)ガ」のNG音がN音に変化して「パナ」から「バン」となった)

の転訛と解します。

776かんむり(冠)

 頭にかぶるもの。特に束帯、衣冠などの時、頭にかぶるもの。直衣でも晴れの時に用いる。黒の羅(うすもの)で作る。能装束の一つ。凡ての上に位するすぐれたもの。

 この「かんむり」は、

  「カネ・ムリ」、KANE-MURI(kane=head;muri=breeze,sigh,grieve)、「(哀悼)謹慎の(意を表す)ために・頭(にかぶるもの。冠)」(「カネ」が「カン」となった)

  または「カネ・ム・ウリ」、KANE-MU-URI(kane=head;mu=silent;uri=dark,deep colour)、「頭に・静かに載せる(かぶる)・暗色の(もの。冠)」(「カネ」が「カン」と、「ム」のU音と「ウリ」の語頭のU音が連結して「ムリ」となった)

の転訛と解します。

「キ」

777きく(聞く)

 音、声、言葉などを耳に感じ取る。音や言葉を耳にして、その内容を知る。人の言葉に従う。(答えを耳に入れようと)人に尋ねる。この「きく」については、国語篇(その九)の038きく(聞く)の項を参照してください。

 この「きく」は、

  「キ・クフ」、KI-KUHU(ki=saying,charm,incantation;kuhu=insert)、「(人の)言うことが・(頭の)中に入る(聞く)」(「クフ」のH音が脱落して「ク」となった)

の転訛と解します。

778きく(効く)

 その能力、はたらきが十分発揮される。効能やはたらきが現れる。ききめがある。物事に通じている。することが可能である。

 この「きく」は、

  「キ・クフ」、KI-KUHU(ki=saying,charm,incantation;kuhu=insert)、「(人に向けられた)呪文の言葉が・(人の)中に入る(呪文の効果が現れる。効く)」(「クフ」のH音が脱落して「ク」となった)

の転訛と解します。

779ぎごちない

 まだ十分に慣れていないために、また、感情などがその場にそぐわないために、動作や表現がたどたどしく、不自然である。体にうまく合わなくて、ぐあいが悪い。

 この「ぎごちない」は、

  「(ン)ギア・コチ・ナイ」、NGIA-KOTI-NAI(ngia=seem,appear to be;koti=cut in two,divide,interrupt,cut off;nai=nei,neinei=stretched forward,reaching out,wagging,vacillating)、「(動作がばらばらに切れている)滑らかでなく・ぐらついている・ように見える(ぎごちない)」(「(ン)ギア」のNG音がG音に変化し、語尾のA音が脱落して「ギ」と、「コチ」が「ゴチ」となった)

  または「(ン)ギ(ン)ゴ(ン)ギ(ン)ゴ・チネイ」、NGINGONGINGO-TINEI(ngingongingo=malignant devouring spirits;tinei,tineinei=unsettled,ready to move,confused,disordered)、「人を破滅させる悪霊が(取り憑いて)・ふらふらと正気とは思われない行動をさせる(ぎごちない)」(「(ン)ギ(ン)ゴ(ン)ギ(ン)ゴ」の反覆語尾が脱落し、NG音がG音に変化して「ギゴ」と、「チネイ」が「チナイ」となった)

の転訛と解します。

780きこり(木樵)

 山林の木を伐ること。また、それを職業とする人。

 この「きこり」は、

  「キヒ・カウリ」、KIHI-KAURI(kihi=cut off,destroy completely;kauri=a forest tree(Agathis australis))、「(カウリ松のような大きな)木を・切り倒す(人。木樵)」(「キヒ」のH音が脱落して「キ」と、「カウリ」のAU音がO音に変化して「コリ」となった)

の転訛と解します。

781きさ(象)

 象(ぞう)の古名。

 この「きさ」は、

  「キ・タ」、KI-TA(ki=full,very;ta=dash,beat,lay)、「ものすごく大きな・存在である(動物。象)」(「タ」が「サ」となつた)

の転訛と解します。

782きざ(気障)

 気にかかること。心配なこと。不快な感じを起こさせること。また、そのものやそのさま。服装、態度、言葉などが気取っていていやみなこと。また、そのさま。

 この「きざ」は、

  「キ・タハタハ」、KI-TAHATAHA(ki=full,very;tahataha=impudent,presumptuous)、「たいへん・厚かましい(または失礼で不快な感じを与える)こと(気障)」(「タハタハ」の反覆語尾およびH音が脱落して「タ」から「ザ」となった)

の転訛と解します。

783きさいちべ(私部。私市部)

 皇后のために置かれた后部。敏達紀6年2月条に詔して日祀部・私部を置くとあり、后妃個人個人のための名代の部の代わりに后妃全員のために置いたものと解されている。(「キサイ」は「キサキ」の音便、「ちべ」の「チ」は「ツ」の転で「の」の意とする説がある。また、「私」は漢書に后妃を所管する官を「私官」とあることによったとされる。)

 この「きさいちべ」は、

  「キ・タイ・チパエ」、KI-TAI-TIPAE(ki=full,very;tai=the other side;tipae=lie to one side,,lie accross,a small basket for food)、「実に・(高貴な方の)他方(皇后方。皇后)の・(食料を供給する)ために置かれた部民(私部。私市部)」(「タイ」が「サイ」と、「チパエ」のAE音がE音に変化して「チベ」となった)

の転訛と解します。

784きさき(后)

 天皇の正妻。皇后。中宮。また、太皇太后、皇太后をもいい、女御、更衣などをさす場合もある。王侯貴族の妻。

 この「きさき」は、

  「キ・タキ」、KI-TAKI(ki=full,very;taki=track,lead,bring along)、「(後宮の中で)極めて(数多の女官を)・統率する者(后)」(「タキ」ガ「サキ」となった)

  または「キタ・キ」、KITA-KI(kita=tightly,intensely,brightly;ki=full,very)、「(後宮の中で)極めて・照り輝く者(后)」(「キタ」が「キサ」となった)

の転訛と解します。

785きさく

 性質や人柄がさっぱりしてこだわらないさま。気のおけないさま>

 この「きさく」は、

  「キ・タハ・アク」、KI-TAHA-AKU(ki=full,very;taha=side,edge,spasmodic twitching of the muscles,portion,go by;aku=delay,scrape out,cleanse)、「たいへん・(物事を)さっと処理して・何も残さない風の(きさく)」(「タハ」のH音が脱落して「タ」から「サ」となり、その語尾のA音と「アク」の語頭のA音が連結して「サク」となった)

の転訛と解します。

786きざし(兆し)

 草木の芽が今にも出そうになること。物事の起ころうとするしるし。兆候。

 この「きざし」は、

  「キ・タハ・アチ」、KI-TAHA-ATI(ki=full,very;taha=side,edge,spasmodic twitching of the muscles(regarded,as an omen,good or bad according as it was on the right or left side),portion,go by;ati=beginning)、「実に・(物事が)始まる・(前に)通り過ぎるその(物事の)一部分(兆し)」または「実に・(物事が)始まる・予感が体をびくっと震わせる(兆し)」(「タハ」のH音が脱落して「タ」から「ザ」となり、その語尾のA音と「アチ」の語頭のA音が連結して「ザチ」から「ザシ」となった)

の転訛と解します。

787きざはし(階)

登り降りするために作った段。階段。物事の順序。段階。

 この「きざはし」は、

  「キ・タハ・チ」、KI-TAHA-TI(ki=full,very;taha=side,edge,spasmodic twitching of the muscles(regarded,as an omen,good or bad according as it was on the right or left side),portion,go by;ti=throw,cast,overcome)、「しっかりと・縁(へり)に・(階段を)刻んだもの(階)」(「タハ」が「ザハ」と、「チ」が「シ」となった)

の転訛と解します。

788きさま(貴様)

 対称。もと尊称の代名詞。のち口頭語として一般化し、江戸後期以後は同等またはそれ以下の者に対して用いる。

 この「きさま」は、

  「キ・タマ」、KI-TAMA(ki=to(of a person),on to,against;tama=son,child,man)、「(男)貴方・よ(貴様)」(「タマ」が「サマ」となった)

の転訛と解します。

789きさらぎ(如月)

 陰暦二月の称。

 この「きさらぎ」は、

  「キタ・ラ(ン)ギ」、KITA-RANGI(kita=tightly,intensely,brightly;rangi=sky,heaven,weather,day,air)、「厳しい(体を締め付けるような寒気の)・気候(季節。如月)」(「キタ」が「キサ」と、「ラ(ン)ギ」のNG音がG音に変化して「ラギ」となった)

の転訛と解します。

790きしめん(棊子麺)

 @小麦粉を水で練って薄くのばしたものを、竹筒で碁石の形に押し切り、ゆでて黄粉をかけた食べ物。平打ちのうどん。

 A名古屋地方のひもかわうどん。

 この「きしめん」は、

  @「キヒ・チ・メネ」、KIHI-TI-MENE(kihi=cut off,destroy completely;ti=throw,cast,overcome;mene=be assembled,show wrinkles,contort the face)、「(碁石の形に)切り抜いて・放り出した(ものを)・集めた食品(棊子麺)」(「キヒ」のH音が脱落して「キ」と、「メネ」が「メン」となった)

  A「キ・チア・メネ」、KI-TIA-MENE(ki=full,very;tia=peg,stake;mene=be assembled,show wrinkles,contort the face)、「たくさんの・(棒のような)太い紐を・束ねたような(食品。きしめん)」(「チア」の語尾のA音が脱落して「チ」から「シ」と、「メネ」が「メン」となった)

の転訛と解します。

791きずな(絆)

 馬、犬、鷹などの動物を繋ぎ止める綱。人と人とを離れ難くしているもの。絶つことのできない結びつき。

 この「きずな」は、

  「キ・ツツ(ン)ガ」、KI-TUTUNGA(ki=full,very;tutunga=circumstance etc. of tutu(tutu=move with vigour,summon,assemble))、「しっかりと・(動物と人、人と人を結ぶたくさんの強い縄が)結合したもの(絆)」(NG音がN音に変化して「ツツナ」から「ツナ」となった)

の転訛と解します。

792きせる(煙管)

 管の一端に刻みタバコを詰めて火を付け、他端の吸い口からその煙を吸う道具。

 この「きせる」は、

  「キ・テ・ル」、KI-TE-RU(ki=full,very,to,into,on to,towards,against,at,with;te,whakate=squeeze fluid out of anything;ru=shake,agitate,scatter)、「(タバコの煙を雁首から)吸い出して・(吸い口へ)送る(ことを)・(奮って)行う道具(煙管)」(「テ」が「セ」となった)

の転訛と解します。

793きた(北)

 方角の名。日の出る方向に向かって左の方向。

 この「きた」は、

  「キ・タハ」、KI-TAHA(ki=full,very;taha=side,spasmodic twitching of the muscles)、「(その方向へ行くと寒さで)震えが・来る(方向。北)」(「タハ」のH音が脱落して「タ」となった)

の転訛と解します。

794きたない(汚い)

 人、物、場所などが、見た目に汚れているさま。また、見たり聞いたりして、品が無いと感じるさま。この「きたない」については、国語篇(その九)の115きたない(汚い)の項を参照してください。

 この「きたない」は、

  「キ・タ(ン)ガイ」、KI-TANGAI(ki=full,very;tangai=bark,peel)、「木の皮が・あたりに充満している(汚い)」(「タ(ン)ガイ」のNG音がN音に変化して「タナイ」となった)

の転訛と解します。

795きたる(来る)

 @人や物事がやってくる。

 A使い物にならなくなる。

 B異性にすっかり惚れ込む。

 この「きたる」は、

  @「キ・タハ・ル」、KI-TAHA-RU(ki=full,very,to,into,on to,towards,against,at,with;taha=pass on one side,go by;ru=shake,agitate,scatter)、「実に・奮って・(人や物事が通り過ぎる)やってくる(来る)」(「タハ」のH音が脱落して「タ」となった)

  A「キヒ・タル」、KIHI-TARU(kihi=cut off,destroy completely;taru=thing,sometimes with an idea of disparagement or unpleasantness involved,otherness)、「物が・完全に(破壊された)駄目になった(きたる)」(「キヒ」のH音が脱落して「キ」となった)

  B「キタ・アル」、KITA-ARU(kita=tightly,fast,intensely,tightly clenched;aru=follow,pursue)、「(異性に)しっかりとしがみついて・後を追いかけ回す(きたる)」(「キタ」の語尾のA音と「アル」の語頭のA音が連結して「キタル」となった)

の転訛と解します。

796きちょうめん(几帳面)

 (もと几帳の柱に多く用いたところからとする説がある)器具のふち、柱の角などを、刻み目を一筋入れて、半円形に削ったもの。型にあっていて、厳格で折り目正しいこと。いいかげんでないさま。

 この「きちょうめん」は、

  「キ・チオホ・メネ」、KI-TIOHO-MENE(ki=full,very;tioho=apprehensive;mene=be assembled,show wrinkles,contort the face)、「たいへん・(仕事に手落ちや間違いがないか)心配を・重ねて行うこと(几帳面)」(「チオホ」のH音が脱落して「チオオ」から「チョウ」と、「メネ」が「メン」となった)

の転訛と解します。

797きっさき(切っ先)

 (「きりさき(切先)」の転とする説がある)刀の刃の最先端。刃物の先端。尖った物の先。転じて、相手を責める鋭い言葉をいう。

 この「きっさき」は、

  「キヒ・ツ・タキ」、KIHI-TU-TAKI(kihi=cut off,destroy completely;tu=stand,settle,fight with,energetic;taki= track,lead,bring along,begin or continue a speech)、「力強く・切り裂き・先頭に立つもの(切っ先)」(「キヒ」のH音が脱落して「キ」と、「ツ」が「ッ」と、「タキ」が「サキ」となった)

の転訛と解します。

798ぎっちょ

左利き。依怙贔屓。

 この「ぎっちょ」は、

  「(ン)ギア・イツ・チオホ」、NGIA-ITU-TIOHO(ngia=seem,appear to be;itu=side;tioho=apprehensive)、「(どちらか)一方に・心配がある・ように見えるもの(ぎっちょ)」(「(ン)ギア」のNG音がG音に変化し、語尾のA音が脱落して「ギ」となり、その語尾のI音と「イツ」の語頭のI音が連結して「ギツ」から「ギッ」と、「チオホ」のH音が脱落して「チオオ」から「チョ」となった)

の転訛と解します。

799きっと(屹度)

 瞬間的に集中して行われるさま。さっと。確固としてゆるみがないさま。厳しく。厳重に。きっぱり。きちんと。特に心身を緊張させたさま。しっかと。じっと。意思、決意などの決定的なさま。是が非でも。或る動作が行われることが確実なさま。必ず。ある事柄について時分の推測が確実と信ずるときにいう。相手に必ずこうしてほしいと要望する気持ちを表す。必ず。

 この「きっと」は、

  「キ・ツトフ」、KI-TUTOHU(ki=full,very,to,into,on to,towards,against,at,with;tutohu=receive a proposal favourably,give consent to,point out,indicate,direct,sign,indication)、「必ず・(あることがうまくゆくようにとの強い願いが)人の様子に現れているさま(きっと)」(「ツトフ」のH音が脱落して「ツト」から「ット」となった)

  または「キ・ツタウマハ」、KI-TUTAUMAHA(ki=full,very,to,into,on to,towards,against,at,with;tutaumaha=a kind of charm or incantation,affect by means of such an incantation)、「必ず・あることが成就するようにとの強い願いを込めた呪いをする(きっと)」(「ツタウマハ」のAU音がO音に変化し、語尾の「マハ」が脱落して「ツト」から「ット」となった)

の転訛と解します。

800きっぷ(切符)

 乗車船の際や劇場などに入場する際に、料金支払い済みを示す紙片。商品を買うことのできる証券。また、特定の品物の受け渡し、配給のしるしに使う券。納税の通知書。交通違反の通知書など。 この「きっぷ」については、国語篇(その三)の第6章中「切符」の項を参照してください。

 この「きっぷ」は、

  「キヒ・ツプ」、KIHI-TUPU(kihi=cut off,destroy completely,strip of branches etc.;tupu=grow,spring,issue,begin,be firmly fixed)、「分割して・(それぞれを券として)発行したもの(切符)」(「キヒ」のH音が脱落して「キ」と、「ツプ」が「ップ」となった)

の転訛と解します。

801きっぷ(気風)

 その人の言動より感じられる気性。性質。

 この「きっぷ」は、

  「キ・ツプ」、KI-TUPU(ki=saying,tell,think,imagine;tupu=grow,spring,issue,begin,be firmly fixed)、「(その人の中で)すでに固まっている・(言動、ものの考え方)気性(気風)」(「ツプ」が「ップ」となった)

の転訛と解します。

802きなこ(黄粉)

 大豆を煎って粉にしたもの。砂糖を加え、餅、団子などにまぶして食べる。

 この「きなこ」は、

  「キヒ・ナコナコ」、KIHI-NAKONAKO(kihi=cut off,destroy completely,strip of branches etc.;nakonako=adorn,ornament(whakanako=adorn with fine markings))、「(大豆を)粉にして・(餅、団子などを飾る)まぶすもの(黄粉)」(「キヒ」のH音が脱落して「キ」と、「ナコナコ」の反覆語尾が脱落して「ナコ」となった)

の転訛と解します。

803きぬ(衣。絹)

 @衣服。着物。動植物の肉を覆っているもの。外皮。

 A蚕の繭からとった繊維。絹糸で織った織物。絹織物。この「きぬ」については、雑楽篇(その一)の361きぬ(絹)の項を参照してください。

 この「きぬ」は、

  「キ・ヌア」、KI-NUA(ki=full,very;(Hawaii)nua=thick,piled one top of the other(nuanua=soft,fleshy))、@「たくさん・(重ね着して)着膨れるもの(衣)」またはA「非常に・(肌触りが)柔らかい(糸。布)」(「ヌア」の語尾のA音が脱落して「ヌ」となった)

の転訛と解します。

804きぬかつぎ(衣かつぎ)

 里芋。もと女房詞。里芋の子を皮のままゆでたものをいう。

 この「きぬかつぎ」は、

  「キ・ヌア・カハ・ツ・(ン)ギア」、KI-NUA-KAHA-TU-NGIA(ki=full,very;(Hawaii)nua=thick,piled one top of the other(nuanua=soft,fleshy);kaha=strong,strength;tu=stand,settle;ngia=seem,appear to be)、「実に・厚いもの(衣。ここでは里芋の外皮)が・(強く)堅く・覆っている・ように見えるもの(衣かつぎ)」(「ヌア」の語尾のA音が脱落して「ヌ」と、「カハ」のH音が脱落して「カ」と、「(ン)ギア」のNG音がG音に変化し、語尾のA音が脱落して「ギ」となった)

の転訛と解します。

805きぬぎぬ(衣衣。後朝)

 共寝した男女が、翌朝各自の着物を着て別れること。また、その朝。

 この「きぬぎぬ」は、

  「キ・ヌ・キ・ヌ」、KI-NU-KI-NU(ki=full,very;(Hawaii)nu=to roar,groaning,deep sighing,moaning)、「たいへん深い・悲しみが・続けて・やってくる(きぬぎぬ)」(後の「キ」が「ギ」となった)

の転訛と解します。

806きぬた(砧)

 槌(つち)で布を打って柔らかくし、つやを出すために用いる木、または石の台。また、それを打つことやその音。

 この「きぬた」は、

  「キ・ヌア・タ」、KI-NUA-TA(ki=full,very;(Hawaii)nua=thick,piled one top of the other(nuanua=soft,fleshy);ta=dash,beat,lay)、「たくさん・重ね着するもの(衣)を・打つことまたはそのために用いる木または石の台」(「ヌア」の語尾のA音が脱落して「ヌ」となった)

の転訛と解します。

807きのう(昨日)

 今日より一日前の日。極めて近くに思われる過去。

 この「きのう」は、

  「キ・ナウ」、KI-NAU(ki=full,very,to,towards,at,with,in consequence of;nau=come,go)、「(一日が)過ぎ去った・結果の(昨日)」(「ナウ」のAU音がOU音に変化して「ノウ」となった)

の転訛と解します。

808きのこ(茸)

 大形の菌類の俗称。傘状をなすものが多く、山野の樹の陰や朽ち木などに生じる。食用と有毒なものとがある。この「きのこ」については、国語篇(その十四)の066きのこ(茸)の項を参照してください。

 この「きのこ」は、

  「キヒ・ノホ・コ」、KIHI-NOHO-KO(kihi=cut off,destroy completely,strip of branches,etc.;noho=sit,stay,settle;ko=descend,cause to descend)、「(枝状の)群れをなして・生える・(遺伝的)性質がある(植物。茸)」(「キヒ」のH音が脱落して「キ」と、「ノホ」のH音が脱落して「ノ」となった)または「キヒ・(ン)ガウ・コ」、KIHI-NGAU-KO(kihi=cut off,destroy completely,strip of branches,etc.;ngau=bite,hurt,attack;ko=descend,cause to descend)、「(枝状の)群れをなす・(人に)有害な・(遺伝的)性質がある(植物。茸)」(「キヒ」のH音が脱落して「キ」と、「(ン)ガウ」のNG音がN音に、AU音がO音に変化して「ノ」となった)

の転訛と解します。

809きね(杵)

 臼の中に入れた穀物を搗いて、殻を除いたり、餅をついたりするのに用いる木製の道具。

 この「きね」は、

  「キヒ・ネイ」、KIHI-NEI(kihi=cut off,destroy completely,strip of branches,etc.;nei,neinei=stretched forward,reaching out)、「振り下ろして・(穀物を)搗くもの(杵)」(「キヒ」のH音が脱落して「キ」と、「ネイ」が「ネ」となった)

の転訛と解します。

810きのどく(気の毒)

 自分の心に苦痛や困惑を感じること。また、そのさま。他人の不幸、苦痛、難儀などに同情して心を痛めるさま。迷惑を掛けたり、労力を使わせたりして申し訳ないと思うこと。この「きのどく」については、国語篇(その十四)の059かわいそう(可哀相)の項の「きのどくだ」を参照してください。

 この「きのどく」は、

  「キノ・ト・クフ」、KINO-TO-KUHU(kino=evil,bad,badly behaved,ill will,hate;to=drag;kuhu=insert,conceal,introdyce oneself into)、「悪いできごとが゛・(自分または他人に)向かって・(入る)降りかかる(気の毒)」(「ト」が「ド」と、「クフ」のH音が脱落して「ク」となった)

の転訛と解します。

811きば(牙)

 ほ乳動物の歯の一部が特に大きく鋭く発達したもの。

 この「きば」は、

  「キヒ・パハ」、KIHI-PAHA(kihi=cut off,destroy completely,strip of branches,etc.;paha=arrive suddenly,attack )、「(対象に)突然襲いかかって・切り裂きまた殺傷するもの(牙)」(「キヒ」のH音が脱落して「キ」と、「パハ」のH音が脱落して「パ」から「バ」となった)

の転訛と解します。

812きびしょ(急須)・きゅうす(急須)

 きびしょ(急須)(「急焼」の唐宋音「きゅうしゃ」の変化した語とする説がある) @取っ手のついた小型の土瓶。きびす。きゅうす。A夫婦が連れて歩く男児。

 きゅうす(急須)もと中国で、酒の燗をする小さい鍋をいつた。

 この「きびしょ」、「きゅうす」は、

  「キヒ・ピチ・アウ」、KIHI-PITI-AU(kihi=cut off,destroy completely,strip of branches,etc.;piti=put side by side,add;au=firm,intense)、「(枝条)取っ手が・付いた・小さなもの(急須)」または「(枝条・取っ手にたとえて)夫婦が・連れている・小さな子(男児)」(「キヒ」のH音が脱落して「キ」と、「ピチ」が「ビシ」と、「アウ」のAU音がO音に変化して「オ」なり、「ビシ・オ」が「ビショ」となった)

  「キ・ウツ」、KI-UTU(ki=full,very;utu=return for anything:satisfaction,reward,price,reply,make response)、「十分に・(酒の燗や茶をいれる)役割を果たすもの(急須)」(「キ・ウツ」が「キュウス」となった)

の転訛と解します。

813きびす(踵)

 かかと。くびす。きひひす。この「きびす」については、国語篇(その十四)の040かかと(踵)の項の「きびす」を参照してください。

 この「きびす」は、

  「キ・ピ・ツ」、KI-PI-TU(ki=to(of place),on to,at;pi=flow,source,origin;tu=stand,be erect,be established)、「(体が)立つ・始まりの・場所(かかと)」(「ピ」が「ビ」と、「ツ」が「ス」となつた)

の転訛と解します。

814きまりがわるい(きまりが悪い)

 物事に対する態度がきちんとしていない。また、秩序が乱れる。しまりがつかない。他に対して面目が立たない。また、恥ずかしい。照れくさい。

 この「きまりがわるい」は、

  「キ・マリエ・(ン)ガ・ワ・ルイ」、KI-MARIE-NGA-WA-RUI(ki=full,very;marie=quiet,appeased,peaceful,of good omen,fortunate;nga=satisfied;wa=so-and-so;rui=shake,cause to fall drops,scatter,cast away,sow)、「満足できる・十分な・申し訳が・何というかその・(散らばる)無くなってしまった(きまりが悪い)」(「マリエ」の語尾のE音が脱落して「マリ」と、「(ン)ガ」のNG音がG音に変化して「ガ」となった)

の転訛と解します。

815きみ(君)

 一国の君主。天皇。天子。自分の仕える人。主人。主君。主。貴人を敬っていう。目上の人に対する敬称。敬愛する人をさしていう。(中世・近世語)遊女。遊君。上代の姓(かばね)の名。対称(敬愛の意をもって相手をさす。上代では女性が男性に対し用いた場合が多い。中古以後は男女ともに用いた。現代語では、同等または目下の相手をさす男性語)。

 この「きみ」は、

  「キ・ミヒ」、KI-MIHI(ki=full,very;mihi=greet,admire,respect)、「大いに・尊敬すべき(人。君)」(「ミヒ」のH音が脱落して「ミ」となった)

の転訛と解します。

916きみ(気味)

 物のにおいと味。おもむき。気配。風味。心身に感じること。また、その心持(多く「良い」「悪い」を伴う)。いくらかその傾向にあること。また、その傾向。きび。

 この「きみ」は、

  「キミ」、KIMI(seek,look for)、「(味、おもむき、気配などを)感じ求めたもの(気味)」

  「キ・ミイ」、KI-MII(ki=full,very;(Hawaii)mii=attractive,fine-appearing,good-looking)、「(特に)たいへん・良い(風味、傾向など。気味)」(「ミイ」が「ミ」となった)

の転訛と解します。

817きもいり(肝煎)

 あれこれ世話をすること。斡旋をすること。また、その人。町や村の長。名主。庄屋など。

 この「きもいり」は、

  「キ・モ・イリ」、KI-MO-IRI(ki=full,very;mo=for,for the benefit of,for the use of;iri=be elevated on something,rest upon,be suspended)、「たいへん・(人の利益を計って)行動する・(集団の)高い地位にある(人。肝煎)」

の転訛と解します。

818きゃたつ(脚立)

 (「脚榻子」の唐宋音読みからとする説がある)短い梯子を八の字に合わせ、上に板をとりつけた踏み台。

 この「きゃたつ」は、

  「キア・タツ」、KIA-TATU(kia=to introduce a proposition,to denote wish or purpose or effect;tatu=strike one foot against the other,stumble(tatutatu=tottering,unsteady))、「(不安定な)足場を・安定させるもの(脚立)」(「キア」が「キャ」となった)

の転訛と解します。

818-2ぎゃふん・ぐうのね

 言い込められて一言も返せないさま。圧倒されてぐうの音(ね)も出ないさまを表す語。また、この場合の「ぐう」の音は、他から詰問されたり、非を指摘された時などに一言も反論が出ないことをいう。(「ぐう」の他の意味については、842-2ぐうの項を参照してください。

 この「ぎゃふん」、「ぐうのね」は、

  「(ン)ギア・フナ」、NGIA-HUNA(ngia=seem,appear to be;huna=conceal,destroy,devastate,lay waste)、「(一言も言い返せないほど)圧倒された(打ちのめされた)・ように見える」(「(ン)ギア」が「ギャ」と、「フナ」が「フン」となった)

  「(ン)グ・ノ・ネイ」、NGU-NO-NEI(ngu=ghost,silent,dumb,speechless,greedy,moan,groan;no=of;nei=to denote proximity to or connection with the speaker,the force apparently being to indicate continuance of action or sometimes merely sequence of events)、「(一言も)言葉がない・という・状態が続く(こと)」(「(ン)グ」が「グウ」と、「ネイ」が「ネ」となった)

の転訛と解します。

819きょう(今日)

 話手が、今身を置いている、その日。また、別の年、月の同じ日付けの日。本日。

 この「きょう」は、

  「キ・オフ」、KI-OHU(ki=to,into,onto,toward,at,with;ohu=stoop)、「その(時)日が・(うずくまる)動かずにいる(今日)」(「オフ」のH音が脱落して「オウ」となり、「キ・オウ」が「キョウ」となった)

の転訛と解します。

820ぎょうさん(仰山)

 程度、数量のはなはだしいさま。行為や言葉などの大げさなさま。はなはだしく。甚だ多く。

 この「ぎょうさん」は、

  「(ン)ギア・オホ・タ(ン)ガ」、NGIA-OHO-TANGA(ngia=seem,appear to be;oho=spring up,wake up,arise;tanga=be assembled)、「びっくりするほど・たくさん集まっている・ように見える(仰山)」(「(ン)ギア」のNG音がG音に変化し、語尾のA音が脱落して「ギ」と、「オホ」のH音が脱落して「オオ」となり、「ギ・オオ」から「ギョウ」と、「タ(ン)ガ」のNG音がN音に変化して「タナ」から「サン」となった)

の転訛と解します。

821ぎょうせん(地黄煎)

 水飴。漢方の地黄を煎じたのに水飴を混ぜて飲みやすくしたのが元で、のちにただの水飴や竹の皮に引き延ばした飴の名称となつた。

 この「ぎょうせん」は、

  「(ン)ギア・オホ・テナ」、NGIA-OHO-TENA(ngia=seem,appear to be;oho=spring up,wake up,arise;tena=encourage,urge forward,inviting co-operation or giving encouragement)、「びっくりするほど・飲みやすくなった・ように見える(地黄煎)」(「(ン)ギア」のNG音がG音に変化し、語尾のA音が脱落して「ギ」と、「オホ」のH音が脱落して「オオ」となり、「ギ・オオ」から「ギョウ」と、「テネ」が「セン」となった)

の転訛と解します。

822ぎょうてん(仰天)

 天を仰いで嘆息すること。また、天を仰いで大いに笑うこと。非常に驚くこと。たまげること。あきれかえること。

 この「ぎょうてん」は、

  「(ン)ギア・オホ・テ(ン)ガ」、NGIA-OHO-TENGA(ngia=seem,appear to be;oho=spring up,wake up,arise;tenga=Adam's apple,goitre,distended,strained)、「びっくりするほど・(膨らます)誇大である・ように見える(仰天)」(「(ン)ギア」のNG音がG音に変化し、語尾のA音が脱落して「ギ」と、「オホ」のH音が脱落して「オオ」となり、「ギ・オオ」から「ギョウ」と、「テ(ン)ガ」のNG音がN音に変化して「テナ」から「テン」となった)

の転訛と解します。

823きょうとい

 (古く「けうとし」と発音された語が近世初期以降変化した語とされる)人気(ひとけ)がなくて淋しい。気味が悪い。恐ろしい。興ざめである。いやである。驚いている様子である。あきれている。不思議である。変だ。顔つきが当惑している様子である。はなはだしい。結構である。

 この「きょうとい」は、

  「キ・オフ・トイ」、KI-OHU-TOI(ki=to,into,onto,toward,at,with;ohu=stoop;toi=tip,point,summit)、「最高の場(場所、環境、状況など)・において・(うずくまる)動かずにいる(きょうとい)」(「オフ」のH音が脱落して「オウ」となり、「キ・オウ」が「キョウ」となった)

の転訛と解します。

824きらず(雪花菜)

 豆腐の絞りかす。おから。卯の花。

 この「きらず」は、

  「キラ・ツ」、KIRA-TU(kira=rough,with sharp points;tu=stand,settle)、「粗い(凸凹の)・外観のもの(雪月菜)」(「ツ」が「ズ」となった)

の転訛と解します。

825きらめく(煌めく)

 きらきらと輝いている。美しく光り輝く。はでな振る舞いをする。盛んにもてなしてはなやかさが現れる。

 この「きらめく」は、

  「キ・ラマ・アイ・ク」、KI-RAMA-AI-KU(ki=full,very;rama=torch or other artificial light(ramarama=gleam);ai=expressing the reason for which anything is done;ku=silent)、「たくさんの・灯りが・静かに・光る(煌めく)」(「ラマ」の語尾のA音と「アイ」の語頭のA音が連結して「ラマイ」となり、そのAI音がE音に変化して「ラメ」となった)

の転訛と解します。

826きらら(雲母)

 雲母をいう。

 この「きらら」は、

  「キ・ララ」、KI-RARA(kifull,very;rara=be scattered,stampede,effect,repercussion)、「たくさん・光りを反射する(鉱物。雲母)」

の転訛と解します。

827きり(霧)

 空気中の水蒸気が凝結して細かい水滴となり、地表近くの大気中に煙のようになっている自然現象。この「きり」については、雑楽篇(その一)の231きり(霧)の項を参照してください。

 この「きり」は、

   「キヒ・イリ」、KIHI-IRI(kihi=indistinct of sound,barely audible,cut off,destroy completely;iri=be elevated on something,hang,be suspended)、「(その存在がおぼろげに見える)細かい(水滴が)・(空中に)漂っているもの(霧)」(「キヒ」のH音が脱落して「キ」となり、そのI音と「イリ」の語頭のI音が連結して「キリ」となった)

の転訛と解します。

828きり(錐)

 小穴をあけるのに用いる工具。この「きり」については、雑楽篇(その二)の1047鋸(のこぎり)の項の「錐(きり)」を参照してください。

 この「きり」は、

   「キ・イリ」、KI-IRI(ki=full,very;iri=be empty)、「完全に・(中を空にする)孔を開けるもの(道具。錐)」(「キ」のI音と「イリ」の語頭のI音が連結して「キリ」となった)

の転訛と解します。

829きり・ぴん

 @「きり」は、段落をつけること。ひとくぎり。限られた一定の居住空間。限度。際限。(以上の二は、「きり」が無いの形で用いることが多い)契約の期限。演劇、芸能などの最後に上演される幕。最後または終わり(「ピンからキリまで」の形で用いられることが多い)「…限り」。「…だけ全部」。など。

 A「ぴん」は、カルタ・賽の目などの一の数。第一番、また最上のもの。最初または始め(「ピンからキリまで」の形で用いられることが多い)代金の一部(一割をくすねること。「ピン」をはねるといった)

 この「きり」、「ぴん」は、

  @「キ・リ」、KI-RI(ki=full,very;ri=screen,protect,shut out with a screen)、「(十分離れた)大きな(範囲の)・境界(をはみ出させない)で閉め出す(転じて最大の(限度)、最後、終わりなどとなった)」

  A「ピネピネ」、PINEPINE(little(pine=close together))、「ほんの少し(転じて、一、最初、始めなどとなつた)(ぴん)」(「ピネピネ」の反覆語尾が脱落して「ピン」となった)

の転訛と解します。

830きりづま(切妻)

 屋根の端を切った切妻屋根の両端の山形になつた部分。

 この「きりづま」は、

  「キヒ・リ・ツマ」、KIHI-RI-TUMA(kihi=cut off,destroy completely,strip of branches,etc.;ri=screen,protect,bind;tuma=challenge(whakatuma=defiance))、「大胆に・(雨風への防壁)屋根を・切り落とした部分(切妻)」(「キヒ」のH音が脱落して「キ」となった)

の転訛と解します。

831きりふだ(切札)

 トランプで、他のマークの組よりも特別強い力を持つときめたマークの札。転じて、他のすべてを押さえることができる手段。とっておきの手段。

 この「きりふだ」は、

  「キヒ・リ・プタ」、KIHI-RI-PUTA(kihi=cut off,destroy completely,strip of branches,etc.;ri=screen,protect,bind;puta=survivor,escape,survive)、「(相手の)防壁を・切り崩して・生き残ること(切札)」(「キヒ」のH音が脱落して「キ」と、「プタ」のP音がF音を経てH音に変化して「フタ」から「フダ」となった)

の転訛と解します。

832きりむぎ(切麦)

 小麦粉を練り、うどんよりも細く切った食品。夏季にゆでて水に冷やして食べる。冷や麦。

 この「きりむぎ」は、

  「キヒ・リム・(ン)ギア」、KIHI-RIMU-NGIA(kihi=cut off,destroy completely,strip of branches,etc.;rimu=seaweed,moss;ngia=seem,appear to be)、「(細く)切り裂いた・海藻・のように見えるもの(冷や麦)」(「キヒ」のH音が脱落して「キ」と、「(ン)ギア」のNG音がG音に変化し、語尾のA音が脱落して「ギ」となった)

の転訛と解します。

833きわまる(極まる)

 極限に達する。限度に至る。果てまで来る。終わりとなる。尽きる。動きのとれない状態になる。決定する。

 この「きわまる」は、

  「キ・ワママオ・ル」、KI-WHAMAMAO-RU(ki=full,very;whamamao=be far away,be distant;ru=shake,agitate,scatter)、「たいへん・遠くの果てに・(放り出された)やって来た(極まる)」(「ワママオ」の語尾のMAO音が脱落して「ワマ」となった)

  または「キワ・マルマル」、KIWA-MARUMARU(kiwa=shut the eyes,dark,sad,anxious;marumaru=shaded,sheltered,loom large)、「とんでもない巨大なものがのしかかってきて・恐ろしく不安である(極まる)」(「マルマル」の反覆語尾が脱落して「マル」となった)

の転訛と解します。

834きわもの(際物)

 必要な季節のまぎわになつて売り出される一時限りのしなもの。一時的に人々の興味を惹くようなもの。一時かぎりのもの。実際にあった事件や流行を直ちに取り入れて脚色した戯曲、小説、演芸、映画など。

 この「きわもの」は、

  「キワ・モノア」、KIWA-MONOA(kiwa=shut the eyes,wink,sad,anxious(kikiwa=black,scintillate);monoa=admire,desire)、「(ウインクをする)一瞬の短い間・(人々が)欲しがるもの(際物)」(「モノア」の語尾のA音が脱落して「モノ」となった)

の転訛と解します。

835きんだち(公達)

 親王、諸王など皇族の人々。親王、摂家、清華など上流貴族の子弟、子息、女子についていうこともある。公卿の家の者。一般に身分の高いモノの子女。

 この「きんだち」は、

  「キ・(ン)ガタ・アチ」、KI-NGATA-ATI(ki=full,very;ngata=man;ati=offspring,descendant,clan)、「特別(高貴)な・一族の・男子たち(公達)」(「(ン)ガタ」のNG音がN音に変化して「ナタ」から「ンダ」となり、その語尾のA音と「アチ」の語頭のA音が連結して「ンダチ」となった)

の転訛と解します。

836きんとん(金団)

 料理の一つ。栗、隠元豆などを甘く煮たものに、長芋や薩摩芋を煮て裏ごしにし砂糖を加えた餡を混ぜたもの。菓子の一つ。米や栗の粉で小さな団子のように造り、中に砂糖を入れたものなど。

 この「きんとん」は、

  「キニ・トヌ」、KINI-TONU(kini=nip,pinch,pinch off;tonu=denoting continuance,quite,just,simply,immediately)、「(栗や隠元豆などに餡や粉などを)ただ・なすりつけた(またはまぶした)もの(金団)」(「キニ」が「キン」と、「トヌ」が「トン」となった)

の転訛と解します。

837きんぴらごぼう(金平牛蒡)

 料理の一種。牛蒡を細く刻んで油で炒め、砂糖、醤油、酒などを加えて炒りつけ、唐辛子で辛味をきかしたもの。この「きんぴらごぼう」については、雑楽篇(その二)の569ごぼう(牛蒡)の項の「ごぼう」および「きんぴら」を参照してください。

 この「きんぴらごぼう」は、

   「キノ・ピララ・(ン)ゴ(ン)ゴ・ポウ」、KINO-PIRARA-NGONGO-POU(kino=evil,bad,dislike;pirara=separated,scattered;ngongo=sad,low-born,sick person;pou=pole,stake)、「(唐辛子の)刺激臭を・放つ・卑しい生まれの・棒(のような野菜。ごぼう)の料理(きんぴら)」(「キノ」が「キン」と、「ピララ」の反復語尾が脱落して「ピラ」と、「(ン)ゴ(ン)ゴ」のNG音がG音に変化し、反復語尾が脱落して「ゴ」と、「ポウ」が「ボウ」となった)

の転訛と解します。

「ク」

838ぐ(具)

 伴われている人。つき添っている人(妻、配偶者、守り役、従者など)。特定の者が着用する衣料。手に取り、または身近において使用するもの(道具、工具、文房具、武具、家具など)。他に利用される材料や手段になること。料理で、飯や主材料に混ぜたり、付け合わせたりする副材料。かやく。など。この「かやく(加薬)」については、前出729かやく(加薬)の項を参照してください。

 この「ぐ」は、

  「(ン)グ(ン)グ」、NGUNGU(eat greedy,gnaw,glance off,turn aside,lead astray)、「(道に迷った人を)導く人(つき添う人。具)」または「(手許に置いて、またはいつも見ている)寵愛するもの(道具など。具)」または「(貪欲に)好んで食べあさるもの(具)」など(「(ン)グ(ン)グ」のNG音がG音に変化し、反覆語尾が脱落して「グ」となった)

の転訛と解します。

839ぐあい(具合)

 物事の状況や機能、進行の調子。また、とくに健康の調子。他との適合の状況(都合。体面など)。やり方。あれこれよく考えること。

 この「ぐあい」は、

  「(ン)グ(ン)グ・アイ」、NGUNGU-AI(ngungu=eat greedy,gnaw,glance off,turn aside,lead astray(whakangungu=fend,ward off,parry,defend,protect);ai=procreate,beget)、「(仕事の心労、疲労などの)消耗が・もたらすもの(仕事の状況。体調。具合)」または「(暴飲、暴食などの)消耗が・もたらすもの(体調。具合)」または「(手許に置いて、またはいつも見ている)寵愛するもの(道具など)が・もたらすもの(道具などの調子。具合)」など(「(ン)グ(ン)グ」のNG音がG音に変化し、反覆語尾が脱落して「グ」となった)

の転訛と解します。

840くい(杭)

 地中に打ち込み、または埋め立てて、目印や支柱などにする木、鉄、コンクリートなどの棒。

 この「くい」は、

  「クヒ」、KUHI(insert)、「(地中に挿入する)打ち込むもの(杭)」(「クヒ」のH音が脱落して「クイ」となった)

の転訛と解します。

841ぐいち(五一)

 @双六や賭博でいう語。賽の目が五と一とでること。また、その賽の目。

 A(賽の目は上面下面の和が七であるのに五と一では)食い違つていること。互い違いになっていること。この「ぐいち(ちぐはぐだ)」については、国語篇(その十七)の329まわり(したく)の項の「ぐいち」を参照してください。

 この「ぐいち」は、

  @「(ン)グ・イチ」、NGU-ITI(ngu=a person unable to swim,ghost,silent,dumb,greedy,moan;iti=small,unimportant,diminutive or unimportant thing)、「(静かな)声も出ない・(五と一の目では)およそ何の価値もない目(五一)」(「(ン)グ」のNG音がG音に変化して「グ」となった)

  A「(ン)グ(ン)グ・イチ」、NGUNGU-ITI(ngungu=eat greedy,gnaw;iti=small,unimportant,diminutive or unimportant thing)、「(片方(の五)は)食いちぎられて・小さい(食い違っている。ちぐはぐだ。五一)」(「(ン)グ(ン)グ」のNG音がG音に変化し、反覆語尾が脱落して「グ」となった)

の転訛と解します。

842くう(食う)

 唇や歯で軽くはさんで支える。くわえる。歯を立ててかむ。かみつく。食いつく。これと思ったものにしっかりと取りつく。噛んだり飲んだりして口の中に入れる。食べる。生活する。など。

 この「くう」は、

  「クフ」、KUHU(thrust in,insert,conceal)、「(口の中に)入れる(食う)」(「クフ」のH音が脱落して「クウ」となった)

の転訛と解します。

842-2ぐう

 @呼吸がつまったり、物が喉につかえたりした苦しい時に発する声や、苦しい状況に追い込まれて発する声を表す語。  A空腹の時に腹の鳴る音などを表す語。  B水などを一息に飲むさまなどを表す語。  C「ぐうの音も出ない」などの表現をする場合の「ぐう」は、他から詰問されたり、非を指摘された時などに一言も反論が出ないことをいう。この「ぐうのね」については、818-2ぎゃふん・ぐうのねの項の「ぐうのね」を参照してください。

 この「ぐう」は、

  @「(ン)グ」、NGU(moan,groan)、「(苦痛、悲嘆などの)うなり声やうめき声を発する」(「(ン)グ」が「グウ」となった)

  A、B「(ン)グ」、NGU(greedy)、「(腹が)食べ物を欲しがっている(音)」又は「(水や食物を)がつがつと飲み食いする(さま)」(「(ン)グ」が「グウ」となった)

の転訛と解します。

843ぐうたら

 ぐずぐずして気力のないさま。また、その人。ぐず。

 この「ぐうたら」は、

  「(ン)グ・タラ」、NGU-TARA(ngu=a person unable to swim,ghost,silent,dumb,greedy,moan;tara=loosen,separate)、「ただ黙っていて・(しまりがない)だらっとしている(ぐうたら)」(「(ン)グ」のNG音がG音に変化して「グ」から「グー」、「グウ」となった)

の転訛と解します。

844くが(陸)・くぬが(陸)

 海、川、湖、沼などに対して、陸の部分。陸地。海路などに対して、陸上を行く道。陸路。なお、古くは、「くぬが」と訓じた(欽明紀6年11月条に「陸海(くぬがうみ)にたしなみ」と、崇神紀10年9月条に「大彦命をもって北陸(くぬがみち)に遺はす」とある)。

 この「くが」、「くぬが」は、

  「ク・ウ(ン)ガ」、KU-UNGA(ku=silent,wearied,firm,stiff;unga=act or circumstance etc. of becoming firm,place of arrival)、「静かな・固まりつつある土地(陸)」(「ク」のU音と「ウ(ン)ガ」の語頭のU音が連結し、NG音がG音に変化して「クガ」となった)

  「ク・ヌヌ・ウ(ン)ガ」、KU-NUNU-UNGA(ku=silent,wearied,firm,stiff;nunu=greed,to covet,extort;unga=act or circumstance etc. of becoming firm,place of arrival)、「静かな・(大和朝廷が)欲しくてたまらない・固まりつつある土地(陸)」(「ヌヌ」の反覆語尾が脱落した「ヌ」のU音と「ウ(ン)ガ」の語頭のU音が連結し、NG音がG音に変化して「ヌガ」となった)

の転訛と解します。

845くがい(公界。苦界)

 私の世界に対する、共同の世界。世間。表向きの場。世間一般で行われていること。人と交わること。転じて、遊女の客勤め。後に「遊女の辛い境遇」の意にかけて「苦界」の語が生じた。

 この「くがい」は、

  「ク・(ン)ガイ」、KU-NGAI(ku=silent,wearied,exhausted;ngai=tribe or clan)、「心身ともに消耗しきっている・種類の人々(苦界)」(「(ン)ガイ」のNG音がG音に変化して「ガイ」となった)

の転訛と解します。

846くくだち(茎立。蔬菜)

 (「くく」は「くき(茎)」に同じと解する説がある)スズナやアブラナなどの野菜。また、それらの薹(とう)。くくたちな。くきたち。

 この「くくだち」は、

  「クク・タハチチ」、KUKU-TAHATITI(kuku=nip,draw together,close,double up;tahatiti=peg,wedge)、「(野菜の)脚の部分から・切り取るもの(蔬菜)」(「タハチチ」のH音および反覆語尾が脱落して「タチ」、「ダチ」となった)

の転訛と解します。

847くくる(括る)

 ばらばらのものを縄や紐などで一つに束ねる。まとめて結ぶ。物のまわりを紐などで縛る。ゆわえる。自由を束縛する。物事にある区切りやまとまりを付ける。纏める。物事のありさまを予想する。「高をくくる」。首をくくる。など。

 この「くくる」は、

  「クク・ル」、KUKU-RU(kuku=nip,draw together,close,double up;ru=shake,agitate,scatter)、「奮って・(密着させる)まとめあげる(括る)」

の転訛と解します。

848くさい(臭い)

 鼻に不快なにおいを感ずる。いやなにおいがする。疑わしい様子に見える。あやしい。演劇などで演技が大げさでわざとらしい。

 この「くさい」は、

  「クタイタイ」、KUTAITAI(of a disagreeable taste)、「不快なにおい(または味)の(臭い)」(「クタイタイ」の反覆語尾が脱落して「クタイ」から「クサイ」となった)

の転訛と解します。

849くさす(腐す)

 (悪意をもって)わるく言う。けなす。腐らす。

 この「くさす」は、

  「クハ・タツ」、KUHA-TATU(kuha=ragged,tattered;tatu=reach the bottom,be content)、「(他人の人格またはその行為、作品などを)最低の・ぼろきれ扱いにする(腐す)」(「クハ」のH音が脱落して「ク」と、「タツ」が「サス」となった)

の転訛と解します。

850くさぞうし(草双紙)

 (草仮名で書かれた草紙の意とも、また、薄手の浅草紙を用いたので一種の悪臭があったところからの名ともいう)江戸時代の絵入り短編小説の一様式。広義には、赤本、青本、黄表紙、合巻の総称。狭義には合巻のみを指す。

 この「くさぞうし」は、

  「クタ(ン)ガ・トウ・チ」、KUTANGA-TOU-TI(kutanga=handfull;tou=tonu=denoting continuance,quite,simply,immediately;ti=throw,cast)、「(手の中におさまる大きさの)小さな・(絵入りの)単純な内容の・出版物(草双紙)」(「クタ(ン)ガ」の名詞形語尾のNGA音が脱落して「クタ」から「クサ」と、「トウ」が「ゾウ」と、「チ」が「シ」となった)

の転訛と解します。

851くさび(楔)

 堅い木、または石や鉄でV字形に作り、物を割ったり、広げたりするために、または臍(ほぞ)穴に差し込んだ部材が抜けないようにするために打ち込むもの。物と物とをつなぎ合わせる役目のもの。この「くさび(楔)」については、雑楽篇(その二)の1048楔(くさび)の項を参照してください。

 この「くさび」は、

  「クフ・タピ」、KUHU-TAPI(kuhu=insert,thrust in;tapi=apply as dressings to a wound,patch,repair,find fault with,chide)、「(木片を)中に差し込むことで・(木材の接合箇所を)補強するもの(楔)」または「(金属片を石の)中に打ち込むことで・(石の弱い所を咎めて)割る(道具。楔)」(「クフ」のH音が脱落して「ク」と、「タピ」が「サビ」となった)

の転訛と解します。

852くさむら(草むら)

 草がむらがり生えている所。草藪。草深い田舎。

 この「くさむら」は、

  「クタ・ムフ・ラ」、KUTA-MUHU-RA(kuta=Scripus lucustris,a rush;muhu=grope,push one's way through bushes,overgrown with vegetation;ra=there,yonder)、「草が・群生している・(彼の)場所(草むら)」(「クタ」が「クサ」と、「ムフ」のH音が脱落して「ム」となった)

の転訛と解します。

853くさり(鎖)

 金属製の輪を次ぎから次ぎえとつなぎ合わせて作った紐、または綱。物と物とをつなぐこと。また、そのもの。きずな。語り物、謡い物などの一段落。くぎり。など。

 この「くさり」は、

  「ク・タハ・リ」、KU-TAHA-RI(ku=silent;taha=strong,strength;ri=screen,protect,bind)、「静かに・強力に・(二つのものを)結合するもの(鎖)」(「タハ」のH音が脱落して「タ」から「サ」となった)

の転訛と解します。

854くさる(腐る)

 食べ物が、微生物の作用によつて、悪臭あるものに変化し、食べられない状態になる。腐敗する。微生物の作用で動物の死体の組織が崩れる。また、からだの一部がうみただれる。腐敗によって悪臭が生ずる。布、木、石などが外気にさらされたりして、砕け、崩れる。腐朽する。金属が外気や薬品などのために、さびてぼろぼろになる。腐食する。こころが堕落する。活気を失う。など。

 この「くさる」は、

  「ク・タル」、KU-TARU(ku=silent,wearied,exhausted;taru=shake,overcome)、「静かに・(圧倒されて)変質して食べられなくなる(腐敗する。腐る)」または「静かに・(圧倒されて)崩れる(腐敗する。腐朽する。腐食する。腐る)」(「タル」が「サル」となった)

の転訛と解します。

855くされえん(腐れ縁)

 長く続いて離れようとしても離れられない悪縁。好ましくない関係を批判的、自嘲的にいう語。

 この「くされえん」は、

  「ク・タレ・エナ」、KU-TARE-ENA(ku=silent,wearied,exhausted;tare=hang,gasp for breath,be drawn towards,be intent upon;ena=those near or connected with the person spoken to)、「(関係を続けることに)疲れているが・(絶とうとしても)絶てない(別れられない)・二人の密接な関係(腐れ縁)」(「タレ」が「サレ」と、「エナ」が「エン」となった)

の転訛と解します。

856くさわけ(草分け)

 草深いところを分けながら行くこと。土地を開拓して、一村一町の基礎を築くこと。また、その人。初めて物事を創始すること。また、その人。

 この「くさわけ」は、

  「クタ・ワケア」、KUTA-WAKEA(kuta=Scripus lucustris,a rush;(Hawaii)wakea=the mythical ancestor of all Hawaians((Maori)wakewake=hurry,hasten))、「草深いところを分け入って・最初に土地を開拓した人(草分け)」(「クタ」が「クサ」と、「ワケア」の語尾のA音が脱落して「ワケ」となった)

の転訛と解します。

857くし(櫛)

 髪の毛を梳いたり、整えたり、また頭髪に挿して飾りにしたりする道具。この「櫛(くし)」については、雑楽篇(その二)の1045櫛(くし)の項を参照してください。

 この「くし」は、

  「クフ・チチ」、KUHU-TITI(kuhu=insert,thrust in;titi=peg,comb for sticking in the hair)、「(髪の)中に入れて・梳くもの(道具。櫛」(「クフ」のH音が脱落して「ク」と、「チチ」の反復語尾が脱落して「チ」から「シ」となつた)

の転訛と解します。

858くし(串)

 竹または鉄などで、箸のように細長く先を尖らせて作ったもの。魚肉、獣肉、野菜などを貫き通して、あぶったり乾したりするのに用いる。この「くし(串)」については、雑楽篇(その二)の1045櫛(くし)の項の「串(くし)」を参照してください。

 この「くし」は、

  「クフ・チチ」、KUHU-TITI(kuhu=insert,thrust in;titi=peg,comb for sticking in the hair)、「(魚や肉、野菜などの)中に(刺し)入れる・棒(串)」(「クフ」のH音が脱落して「ク」と、「チチ」の反復語尾が脱落して「チ」から「シ」となつた)

の転訛と解します。

859くしげ(櫛笥)

 櫛や化粧の道具を入れておく箱。くしばこ。

 この「くしげ」は、

  「クフ・チチ・カイ(ン)ガ」、KUHU-TITI-KAINGA(kuhu=insert,thrust in;titi=peg,comb for sticking in the hair;kainga=field of operation,scope of work)、「(髪の)中に入れて・梳くもの(道具。櫛)を・整理しておくもの(箱。櫛笥)」(「クフ」のH音が脱落して「ク」と、「チチ」の反復語尾が脱落して「チ」から「シ」と、「カイ(ン)ガ」の名詞形語尾のNGA音が脱落し、AI音がE音に変化して「ケ」から「ゲ」となった)

の転訛と解します。

860くしゃみ(嚔)

 痙攣気味に息を吸ったのち、反射的に口や鼻からはげしく息を吐き出す生理現象。主に鼻粘膜の刺激により起こる。

 この「くしゃみ」は、

  「クチ・アミ」、KUTI-AMI(kuti=draw tightly together,contract,pinch;ami=gather,collect)、「(息を)まとめて・圧縮して(吐き出すもの。くしゃみ)」(「クチ・アミ」が「クチャミ」から「クシャミ」となった)

の転訛と解します。

861くしろ(釧)

 上代の装身具。手首や肘につける輪状の飾り。貝、石、玉、金属などで作り、鈴をつけたものもある。

 この「くしろ」は、

  「クフ・チチ・ロ」、KUHU-TITI-RO(kuhu=insert,thrust in;titi=peg,comb for sticking in the hair;ro=roto=inside)、「(腕の)中に・挿し・入れるもの(腕輪。釧)」(「クフ」のH音が脱落して「ク」と、「チチ」の反復語尾が脱落して「チ」から「シ」となつた)

の転訛と解します。

862ぐずつく(愚図つく)

 鈍い態度、動作などをする。ぐずぐずする。天候が、雨がふったり曇ったりしてはっきりしない。

 この「ぐずつく」は、

   「(ン)グ・ツ・ツク」、NGU-TU-TUKU(ngu=silent,dumb,speechless;tu=stand,settle;tuku=let go,lrave,set to,settle down)、「ただ黙って・突っ立って・動こうとしない(愚図つく)」(「(ン)グ」のNG音がG音に変化して「グ」と、「ツ」が「ズ」となった)

の転訛と解します。

863くすり(薬)

 人の肉体や健康、生命などについて霊妙な働きをするもの。不可思議な作用を発揮する物質。神薬、霊薬、仙薬の類。病気や傷を治療したり、健康や生命の保持、増進に役立てたりするために、服用、注射または塗布するもの。医薬品以外の察知有罪、農薬など。

 この「くすり」は、

  「ク・ツリ」、KU-TURI(ku=silent;deaf,obstinate(whakaturi=love token,keepsake,propitiate))、「穏やかに・(宥める)症状を緩和するもの(薬)」(「ツリ」が「スリ」となった)

の転訛と解します。

864くせもの(曲者)

 普通とはどこか違ったところのある人や物。一癖ある者。変人。また、すぐれて巧みな人。妙手。怪しい者。悪者。怪物など。

 この「くせもの」は、

  「クタイタイ・モノ」、KUTAITAI-MONO(kutaitai=of a disagreement taste;mono,whakamono=sniff,smell)、「不快な匂いが・する(人。曲者)()」(「クタイタイ」の反覆語尾が脱落し、AI音がE音に変化して「クテ」から「クセ」となった)

の転訛と解します。

865くそみそ(糞味噌)

 物事を善悪、美醜などの区別を付けないで扱うこと。また、そのさま。全くつまらない、取るに足りないこと。そのようなこととしてけなすこと。また、そのさま。

 この「くそみそ」は、

  「クフ・トウ・ミイ・タウ」、KUHU-TOU-、MII-TAU(kuhu=thrust in,conceal;tou=anus,posteriors;(Hawaii)mii=attractive,good-looking;tau=come to rest,settle down,be suitable)、「お尻(肛門の中)に・隠れているもの(糞)も・(魅力的な)美味な・(寝かして作ったもの)味噌も(区別しない。糞味噌)」(「クフ」のH音が脱落して「ク」と、「トウ」が「ト」から「ソ」と、「ミイ」が「ミ」と、「タウ」のAU音がO音に変化して「ト」から「ソ」となった)

の転訛と解します。

866ください(下さい)

 「くださる」の口語の命令・要求表現。

 この「ください」は、

  「クフ・タタイ」、KUHU-TATAI(kuhu=thrust in,conceal;tatai=measure,arange,set in order,adorn)、「(私の物として)しまい込むように・(整理する)処置する(ことを求める。下さい)」(「クフ」のH音が脱落して「ク」と、「タタイ」が「ダサイ」となった)

の転訛と解します。

867くたびれる(草臥れる)

 体や頭を使いすぎて疲れる。疲労する。ある動作を長時間に亘って行って、その結果疲れていやになる。人が年老いたり、物などが長く使われたりして、古びて見窄らしくなる。

 この「くたびれる」は、

  「ク・タピ・レレ・ル」、KU-TAPI-RERE-RU(ku=silent,wearied,exhausted;tapi=apply as dressing to a wound,patch,mend,repair;rere=flow,fly,rush,run;ru=shake,agitate,scatter)、「疲れて・その手当をしているのに・(さらに)奮って・走る(草臥れる)」(「タピ」が「タビ」と、「レレ」の反覆語尾が脱落して「レ」となった)

の転訛と解します。

868くだもの(果物)

 木や草に成る食用の果実。水菓子。女房詞で特に柑子や蜜柑をいう。菓子。間食用の食物。酒のさかな。

 この「くだもの」は、

  「クク・タハ(ン)ガ・モノア」、KUKU-TAHANGA-MONOA(kuku=firm,stiff,thickened,not fluid or watery,thick liquid;tahanga=naked,moderately;monoa=admire,desire)、「水気が多く・(裸の)堅い外皮がなく・(人々が求める)好むもの(果物)」(「クク」の反覆語尾が脱落して「ク」と、「タハ(ン)ガ」のH音および名詞形語尾のNGA音が脱落して「タ」から「ダ」と、「モノア」の語尾のA音が脱落して「モノ」となった)

の転訛と解します。

869くだらない(下らない)

 訳が分からない。意味が分からない。くだらぬ。内容に乏しくて、取り上げる価値がない。ばからしい。

 この「くだらない」は、

  「クハ・タラ・ナイ」、KUHA-TARA-NAI(kuha=ragged,tattered;tara=loosen,separate,brisk;nai=nei,neinei=stretched forward,reaching out)、「ぼろが・散乱した・ままになっているような(下らない)」(「クハ」のH音が脱落して「ク」と、「タラ」が「ダラ」となった)

の転訛と解します。

870くだをまく(管を巻く)

 とりとめのないこと、また、不平などをくどくど言う。

 この「くだをまく」は、

  「ク・タオイ・マク」、KU-TAOI-MAKU(ku=silent,wearied,exhausted;taoi=restless,eager;maku=dress timber in a particular way with the adze)、「休みなしに・手斧で材木を削り続けて・疲れ切ったような(管を巻く)」(「タオイ」の語尾のI音が脱落して「ダヲ」となった)

の転訛と解します。

871くだん(件)

 前に述べた事柄を、読者や聞き手がすでに承知しているものとして、指し示す語、前述の。さっきの。例の。その行動、状態などが人々によく知られているものとして、その事柄を指し示す語。例の。いつもの。あの。なにかさしさわりがあって、はっきり言葉で表すのを避けるときに用いる語。あれ。例のもの。

 この「くだん」は、

  「クフ・タナ」、KUHU-TANA(kuhu=thrust in,insert,conceal;tana=his,her,its)、「(あの)例の・(隠した)表にでていないこと(件)」(「クフ」のH音が脱落して「ク」と、「タナ」が「ダン」となった)

の転訛と解します。

872くち(口)

 人や動物の頭の下部にあり、飲食物を摂り、声を発するための器官。物や人の出入りする所。この「くち(口)」については、国語篇(その二)の055くちの項を参照してください。

 この「くち」は、

  「クチ」、KUTI(draw tightly together,contract,plnch)、「閉じるもの(口)」

の転訛と解します。

873ぐち(愚痴)

 仏語。愚かで思い迷い、ものの理非のわからないこと。また、そのさま。言っても仕方のないことをくどくどと嘆くこと。泣き言。

 この「ぐち」は、

  「(ン)グ・チ」、NGU-TI(ngu=silent,dumb,speechless,greedy,moan,groan;ti=throw,cast)、「(不平不満をいう)愚痴を・こぼす(愚痴)」(「(ン)グ」のNG音がG音に変化して「グ」となった)

の転訛と解します。

874くちうら(口裏)

 (ーを合わせる)あらかじめ相談して、二人の話を一致させる。

 この「くちうら」は、

  「クチ・フラ」、KUTI-HURA(kuti=draw tightly together,contract,plnch;hura=remove covering,expose,discover,bare)、「(口で)話すことを・(予め互いに)明らかにする(口裏)」(「フラ」のH音が脱落して「ウラ」となった)

の転訛と解します。

875くちおしい(口惜しい)

 思うことができなかったり、思うようにいかなかったり、または、大切なものを失ったりして、失望、落胆した気持ちを表す。がっかりだ。残念だ。いまいましい。対象が期待はずれ、不十分で、まんぞくできないさまである。

 この「くちおしい」は、

  「クチ・アウ・チヒ」、KUTI-AU-TIHI(kuti=draw tightly together,contract,plnch;au=firm,intense;tihi=summit,top,lie in a heap)、「(心が)最高に・堅く・締め付けられるようだ(口惜しい)」(「アウ」のAU音がO音に変化して「オ」と、「チヒ」のH音が脱落して「チイ」から「シイ」となった)

の転訛と解します。

876くちぐるま(口車)

 口先だけでたくみに言いまわして、人をだまし誘うこと。

 この「くちぐるま」は、

   「クチ・(ン)グル・ウマ(ン)ガ」、KUTI-NGURU-UMANGA(kuti=draw tightly together,contract,plnch;nguru=utter a suppressed groan or sigh or grunt,murmur,rumble,an incantation in connection with marriage;umanga=pursuit,occupation,business,accustomed,habituated)、「(閉じるもの)口で・押し殺した低い声で(または場合により結婚をほのめかす呪文を唱えて)説得する・ことを日常茶飯事としていること(口車)」(「(ン)グル」のNG音がG音に変化して「グル」となり、その語尾のU音と「ウマ(ン)ガ」の名詞形語尾のNGA音が脱落して「ウマ」となったその語頭のU音が連結して「グルマ」となった)

の転訛と解します。

877くちばし(嘴)

 鳥類の上下のあごの骨が突き出て角質の鞘で覆われた部分。

 この「くちばし」は、

  「クチ・パハ・アチ」、KUTI-PAHA-ATI(kuti=draw tightly together,contract,plnch;paha=arrive suddenly,attack;ati=offspring,descendant,clan)、「(閉じるもの)口で・(他を攻撃する)つつく・部類に属するもの(嘴)」(「パハ」のH音が脱落して「パ」から「バ」となり、その語尾のA音と「アチ」の語頭のA音が連結して「バチ」から「バシ」となった)

の転訛と解します。

878くちび(口火)

 火縄銃の火蓋に用いる火。また、爆薬を爆発させるためのもととなる火。ガス器具を点火するもととなる小さな火。(比喩的に)物事の起こるきっかけや原因。

 この「くちび」は、

  「ク・チピ」、KU-TIPI(ku=silent;tipi=affect by incantations,glide,go quickly or smoothly)、「静かに・敏捷に動く(口火)」(「チピ」が「チビ」となつた)

の転訛と解します。

879くちびる(唇)

 口腔の入り口にあり、口の縁となる上下の弁膜状の柔らかい部分。口唇。この「くちびる(唇)」については、国語篇(その九)の147くちびるの項を参照してください。

 この「くちびる」は、

  「クチ・ピヒ・ル」、KUTI-PIHI-RU(kuti=contract,pinch;pihi=cut,split;ru=shake,agitate)、「(狭くなった場所の)口の・割れ目の・動くところ(唇)」(「ピヒ」のP音がF音を経てH音に変化し、語尾のH音が脱落して「ヒ」となった。または「ピヒ」のP音がB音に変化し、語尾のH音が脱落して「ビ」となった)

の転訛と解します。

880くつ(靴)

 履き物の一種。皮革、藁、糸、麻などを用いて足下全体を覆うように作った履き物。下駄や足駄、草履のこと。特に僧侶が法会に履くものは、木製漆塗りのものは鼻高、帛を張ったものを草鞋という。

 この「くつ」は、

  「クフ・ツツ」、KUHU-TUTU(kuhu=thrust in,insert,conceal;tutu=move with vigour,violent,vigorous)、「(足を挿入する)履いて・元気よく動くもの(靴)」(「クフ」のH音が脱落して「ク」と、「ツツ」の反覆語尾が脱落して「ツ」となった)

の転訛と解します。

881くっつく

 歯でかみつく。食いつく。ある物が他の物に離れないように付着する。密着する。付き従う。従って味方する。人と人が一緒になる。行動を共にする。

 この「くっつく」は、

  「クツ・ツク」、KUTU-TUKU(kutu=louse,vermin of any kind infesting human beings;tuku=let go,leave,send,present,settle down)、「(害虫など)いやな物が・(体に)付着する(くっつく)」(「クツ」が「クッ」となった)

の転訛と解します。

882くつろぐ(寛ぐ)

 かたくしまっているものや、きっちりはまっているものなどが、ゆるむ。ゆるくなる。くずれる。余地ができる。余裕がある。よったりした気分や状態になる。心が安まる。体を楽にする。休息する。うちとけて人に接する。など。

 この「くつろぐ」は、

  「ク・ツ・ロ・ホ(ン)ゴイ」、KU-TU-RO-HONGOI(ku=silent,wearied,exhausted;tu=stand,settle;ro=roto=inside;hongoi,hongoingoi=crouch as on account of cold,remain inactive in a place)、「静かに(または疲れ切って)・(家の)中に・座って・何もしないでじっとしている(寛ぐ)」(「ロ」のO音と「ホ(ン)ゴイ」のH音が脱落し、NG音がG音に、OI音がU音に変化して「オグ」となったその語頭のO音が連結して「ログ」となった)

の転訛と解します。

883くつわ(轡)

 馬の口にはませる金具。その金具につけて馬を操る手綱。

 この「くつわ」は、

  「クフ・ツ・ワハ」、KUHU-TU-WAHA(kuhu=thrust in,insert,conceal;tu=fight with,energetic,serve,send(tutu=summon,assemble);waha=mouth,voice)、「(馬の)口に・挿入して・(役に立たせる)操るもの(轡)」(「クフ」のH音が脱落して「ク」と、「ワハ」のH音が脱落して「ワ」となった)

の転訛と解します。

884くど(竈)

 竈(かまど)の後方につけた煙出しの穴。かまど。へっつい。いろり。炉。こんろ。七輪。炉の上に設置された穀物などの乾燥用の棚。この「くど(竈)」については、前出714かまど(かまど)の項および雑楽篇(その二)の1039竈(かまど)の項を参照してください。

 この「くど」は、

  「クフ・ト」、KUHU-TO(kuhu=insert,conceal,cooking shed;to=drag,stove,cooker(toanga=place etc. of dragging))、「(火を引き込む)竈を・その中に隠している(小屋。台所。転じてその中心にある竈)」(「クフ」のH音が脱落して「ク」となった)

の転訛と解します。

885くどく(口説く)

 くどくどと繰り返して言う。嘆きの言葉を繰り返する。祈り訴える。謡曲で、悲嘆、恋慕、述懐などの情を低く吟詠する。男女の間で、相手を自分の意に従わせようとして、しきりに説得や懇願をする。求愛する。話して、納得させる。

 この「くどく」は、

  「ク・ト・クフ」、KU-TO-KUHU(ku=make a low inarticulate sound;to=be pregnant,drag,open or shut a door or window;kuhu=insert,conceal,cooking shed)、「低い押し潰した声で・しつこく繰り返して言って・(相手を自分の方へ)引きずり込む(口説く)」(「ト」が「ド」と、「クフ」のH音が脱落して「ク」となった)

の転訛と解します。

886くねくね

 まがりくねっているさまを表す語。

 この「くねくね」は、

  「ク(ン)ゲ(ン)ゲ・ク(ン)ゲ(ン)ゲ」、KUNGENGE-KUNGENGE(kungenge=wrinkled,puckerd)、「(皺が寄る)曲がりくねっている(くねくね)」(「ク(ン)ゲ(ン)ゲ」のNG音がN音に変化し、反覆語尾が脱落して「クネ」となった)

の転訛と解します。

887くはしめ(麗女)

 容姿の美しい女性。「くはし(くわし)」は、優れて美しい、繊細でうるわしいの意。

 この「くはしめ」は、

  「クハ・チヒ・マイ」、KUHA-TIHI-MAI(kuha=gasp;tihi=summit,top,lie in a heap;mai,maimai=a dance or haka to welcome guest at a ball)、「驚いて息を呑むほどの・最高に(美しい)・(客人をもてなす宴会で)踊りを踊る女性(麗女)」(「クハ」のH音が脱落して「ク」と、「チヒ」のH音が脱落して「「チ」から「シ」と、「マイ」のAI音がE音に変化して「メ」となった)

の転訛と解します。

888くばる(配る)

 割り当てて渡す。分けて与える。配分する。配慮、注意などを広く行き渡らせる。(相応の人をみつけてあちこちに)めあわせる。結婚させる。必要に応じて適当なところに置く。配置する。

 この「くばる」は、

  「クフ・パ(ン)ガ・ル」、KUHU-PANGA-RU(kuhu=thrust in,conceal,introduce oneself into,join a company;panga=throw,lay,place;ru=shake,agitate,scatter)、「(グループに)加入して・奮って・(その証をグループの者に)提供する(配る)」(「クフ」のH音が脱落して「ク」と、「パ(ン)ガ」の名詞形語尾のNGA音が脱落して「パ」から「バ」となった)

の転訛と解します。

889くふう(工夫)

 いろいろ思案して、よい方法を考えだすこと。あれこれと思い巡らすこと。また、その方法。手段。

 この「くふう」は、

  「ク・フフ」、KU-HUHU(ku=silent,wearied,exhausted;huhu=strip off an outer covering,free from tapu)、「(疲れ果てるほど)努力して・(外皮)障害を除去する(または禁忌に触れないように行動する)こと(工夫)」(「フフ」の語尾のH音が脱落して「フウ」となった)

の転訛と解します。

890くべる

 燃やしたり、焼いたりするために火の中に入れる。焚く。

 この「くべる」は、

  「クフ・ペ・ル」、KUHU-PE-RU(kuhu=thrust in,insert,conceal;pe=crushed,mashed,soft;ru=shake,agitate,scatter)、「(火の)中に入れて・(粉砕する)灰にして・しまう(くべる)」(「クフ」のH音が脱落して「ク」と、「ペ」が「ベ」となった)

の転訛と解します。

891くまで(熊手)

 熊の手を連想させる鉄の爪を棒の先につけた長柄の道具。物をひっかけるのに用いる。船の備品や武器としても利用された。現在では土地の開墾やどぶさらい、また、ごみなどをかきよせるのに用いられる。竹のセンタ名をかぎ形に曲げ、櫛の歯のように並べたものに長柄をつけたもの。落ち葉や穀物をかき集めるのに用いる。

 この「くまで」は、

   「クハ・マハ・テ」、KUHA-MAHA-TE(kuha=ragged,fragment,scrap;maha=many,abundance;te,whakate=squeeze fluid out of anything,whakatete=exert oneself)、「(落ち葉などの)ごみや不要品を・大量に・かき集めて処理するもの(道具。熊手)」(「クハ」のH音が脱落して「ク」と、「マハ」のH音が脱落して「マ」と、「テ」が「デ」となった)

の転訛と解します。

892くまどり(隈取り)

 陰影や濃淡などで境をつけること。また、そのもの。くま。東洋画の技法の一つ。遠近や高低などを表すために、墨や色の濃淡をぼかしてかくことるまた、その部分。歌舞伎で行われる舞台化粧の一つで、荒事を演じる俳優が、その人物の性格や表情を誇張して見せるため、顔に赤、青、茶などの絵の具で線状の模様をえがくこと。

 この「くまどり」は、

  「クフ・マトマト・オリ」、KUHU-MATOMATO-ORI(kuhu=thrust in,insert,conceal;matomato=deep,green,growing vigorously,of pleasing appearance;ori=cause to wave to and fro,sway,move about)、「(絵の)中に入って・見栄えが良くなるように・あちこちと(線を)引き回すこと(隈取り)」(「クフ」のH音が脱落して「ク」と、「マトマト」の反覆語尾が脱落して「マト」から「マド」となり、その語尾のO音と「オリ」の語頭のO音が連結して「マドリ」となった)

  または「クフ・マタウ・オリ」、KUHU-MATAU-ORI(kuhu=thrust in,insert,conceal;matau=hook,a curve in tattooing on the face;ori=cause to wave to and fro,sway,move about)、「(顔の)中に入って・(顔に付ける)刺青の曲線を・あちこちと引き回す(隈取り)」(「クフ」のH音が脱落して「ク」と、「マタウ」のAU音がO音に変化して「マト」から「マド」となり、その語尾のO音と「オリ」の語頭のO音が連結して「マドリ」となった)

の転訛と解します。

893くも(雲)

 大気中の水蒸気が冷却、凝結し、微細な水滴や氷片の大集団となって空中に浮遊しているもの。この「くも(雲)」については、国語篇(その九)の013くも(雲)の項を参照してください。

 この「くも」は、

  「クク・モフ」、KUKU-MOHU(kuku=firm,thickened;mohu=smoulder)、「厚い・(くすぶる)煙のようなもの(雲)」(「クク」の反復語尾が脱落して「ク」と、「モフ」のH音が脱落して「モ」となった)

の転訛と解します。

894くもすけ(雲助)

 江戸時代、住所不定の道中人足。下品なものや、相手を脅して暴利を貪る者などを罵って言う。

 この「くもすけ」は、

  「クモウ・ツ・ケ」、KUMOU-TU-KE(kumou=komou=cover a fire with ashes or earth to keep it smouldering;tu=stand,settle;ke=different,strange,extraordinary)、「(火を灰で覆ったくすぶる埋め火が・ある)胡散臭い悪心を胸に・秘めた・変な奴(雲助)」(「クモウ」が「クモ」と、「ツ」が「ス」となった)

の転訛と解します。

895くやしい(悔しい)

 自分の行為について後悔する心情。勝負に負けたり、相手にはずかしめられたり、外部の状況が期待に反したりして、後悔したり腹立たしく思ったりする気持ち。しゃくだ。いまいましい。

 この「くやしい」は、

  「クイ・イア・チヒ」、KUI-IA-TIHI(kui=cold,weak,cowardly,stunted;ia=indeed;tihi=summit,top,lie in a heap)、「実に・最高に・(後悔したり腹立たしく思ったり)気持ちが弱く委縮すること(悔しい)」(「クイ」の語尾のI音と「イア」の語頭のI音が連結して「クイア」から「クヤ」と、「チヒ」のH音が脱落して「チイ」から「シイ」となった)

の転訛と解します。

896くら(蔵、倉)

 穀物、商品、財宝などを火災や盗難などから守って安全に保管しておくために造った建物。倉庫。鎌倉時代から室町時代にかけて、金融業を言う語。土倉。金銭を手にいれる。手づる。金づる。歌舞伎などで興行の不成立をいう語。計画していた物事をとりやめにすること。おくら。など。

 この「くら」は、

  「クラ」、KURA(red,ornmented with feathers,precious,treasure,valued possession)、「財宝(を保管する倉庫)(蔵。倉)」

の転訛と解します。

897くら(鞍)・くらぼね(鞍橋)

 馬具の総称。馬に乗る装置の皆具。馬、牛などの背に人を乗せ、または荷物を負わせるに用いる装置。狭義には鞍橋(くらぼね)をいう。

 この「くら」、「くらぼね」は、

  「ク・ウラ(ン)ガ」、KU-URANGA(ku=silent,wearied,exhausted;uranga=act or circumstance etc. of becoming firm)、「これに人または荷物を載せる(と疲れる)・人または荷物を固定する装置(鞍)」(「ク」のU音と「ウラ(ン)ガ」の名詞形語尾のNGA音が脱落した「ウラ」の語頭のU音が連結して「クラ」となった)

  「ク・ウラ(ン)ガ・ポネ」、KU-URANGA-PONE(ku=silent,wearied,exhausted;uranga=act or circumstance etc. of becoming firm;pone=in dificulties,troubled)、「これに人または荷物を載せる(と疲れる)・人または荷物を固定する装置で・(馬や牛にとって)難儀なもの(鞍)」(「ク」のU音と「ウラ(ン)ガ」の名詞形語尾のNGA音が脱落した「ウラ」の語頭のU音が連結して「クラ」と、「ポネ」が「ボネ」となった)

の転訛と解します。

898くらい(位)

 (天皇の玉座の意から)天皇の地位。皇位。また、天皇の地位にあること。在位。朝廷の席次。位階。特定の社会集団での地位、身分の上下関係。階級。格式。(令制下の)官職の地位。身分。特定の分野での、力量の程度や到達した境地。人、または作品の品位。風格。貫禄。など。

 この「くらい」は、

  「ク・ウラ(ン)ガ・アイ」、KU-URANGA-AI(ku=silent;uranga=act or circumstance etc. of becoming firm;ai=expressing the reason for which anything is done or the object in view in doing it)、「平穏に・何かの仕事を成し遂げることによって・定まるもの(位)」(「ク」のU音と「ウラ(ン)ガ」の名詞形語尾のNGA音が脱落した「ウラ」の語頭のU音が連結して「クラ」となり、さらにその語尾のA音と「アイ」の語頭のA音が連結して「クライ」となった)

の転訛と解します。

899くらい(暗い)

光りが少なくて、物がよく見えない。または、まったく見えない。物事をよく理解し、判断する知力がない。文化がまだ発達していない。世の中が開けていない。物事の事情をよく知らない。など。この「くらい(暗い)」については、国語篇(その九)の112くらい(暗い)の項を参照してください。

 この「くらい」は、

  「クフ・ラヒ」、KUHU-RAHI(kuhu=insert,conceal;rahi=great,abundant,numerous)、「たいへん・奥深くに入っている(暗い)」(「クフ・ラヒ」のH音が脱落して「クウ・ライ」から「クライ」となった)

の転訛と解します。

900くらがえ(鞍替え)

 馬の鞍につけて予備に持って行くもの。遊女や芸者などが他の遊女屋または遊里に勤めの場所を変えること。主家をかえること。場所を移すこと。職業などを変えること。

 この「くらがえ」は、

  「ク・ウラ(ン)ガ・カエア」、KU-URANGA-KAEA(ku=silent,wearied,exhausted;uranga=act or circumstance etc. of becoming firm;kaea=wander)、「これに人を載せる(と疲れる)・人を固定する装置(鞍)・とともに流浪する(鞍替え)」(「ク」のU音と「ウラ(ン)ガ」の名詞形語尾のNGA音が脱落した「ウラ」の語頭のU音が連結して「クラ」と、「カエア」の語尾のA音が脱落して「カエ」から「ガエ」となった)

の転訛と解します。

901くらす(暮らす)

 日が暮れて暗くなるまで時間を過ごす。ある期間を終わりまで過ごす。生計を立てていく。生活する。(他の動詞に接続して)その行為を一日中続ける。

 この「くらす」は、

  「ク・ウラ(ン)ガ・ツ」、KU-URANGA-TU(ku=silent;uranga=act or circumstance etc. of becoming firm;tu=stand,settle)、「平穏に・(その場所に)住んで・定着した生活を営む(暮らす)」(「ク」のU音と「ウラ(ン)ガ」の名詞形語尾のNGA音が脱落した「ウラ」の語頭のU音が連結して「クラ」と、「ツ」が「ス」となった)

の転訛と解します。

902くらたに(谷)

 深く切り立った谷。

 この「くらたに」は、

  「クフ・ラハ・タ・アニ」、KUHU-RAHA-TA-ANI(kuhu=insert,conceal;raha=open,extended;ta=the...of;ani=resounding,echoing)、「たいへん・奥深くに入っている・例の・(両側が切り立った壁の谷であることから)音が反響する場所(くら谷)」(「クフ」のH音が脱落して「ク」と、「ラハ」のH音が脱落して「ラ」と、「タ」のA音と「アニ」の語頭のA音が連結して「タニ」となった)

の転訛と解します。

903くらべる(比べる)

 二つ以上のものの異同や優劣を見極める。照らし合わせる。比較する。二つ以上のものの優劣や勝敗をきそう。競走する。心を通わせ合う。

 この「くらべる」は、

  「ク・ウラ(ン)ガ・パエ・ル」、KU-URANGA-PAE-RU(ku=silent;uranga=act or circumstance etc. of becoming firm;pae=horizen,direction,lie across,be laid to the charge of anyone;ru=shake,agitate,scatter)、「静かに・(横に)並べて・(それらの異同や優劣が)定まって・しまう(比べる)」(「ク」のU音と「ウラ(ン)ガ」の名詞形語尾のNGA音が脱落した「ウラ」の語頭のU音が連結して「クラ」と、「パエ」のAE音がE音に変化して「ペ」から「ベ」となった)

の転訛と解します。

904くり(庫裏)

 (仏語)本尊への供物や住僧の食事の調理などをする建物。古くは食堂(じきどう)といわれた。寺で住職や家族などの住む所。仏殿、本堂に対する僧房、厨房の総称。真宗で僧の妻の呼び名(おくりさま)。

 この「くり」は、

  「ク・フリ」、KU-HURI(ku=silent,wearied,exhausted;huri=turn round,turn to,set about)、「走り回って・疲れ果てる(場所または人。庫裏)」(「ク」のU音と「フリ」のH音が脱落して「ウリ」となったその語頭のU音が連結して「クリ」となった)

の転訛と解します。

905くりあわせる(繰り合わせる)

 糸などをたぐって物に巻き取る。金銭、時間などのやりくりをする。都合をつける。差し繰る。

 この「くりあわせる」は、

  「ク・フリ・アウワハ・タイ・ル」、KU-HURI-AUWAHA-TAI-RU(ku=silent,wearied,exhausted;huri=turn round,turn to,set about;auwaha=meddle,interfare;tai,taitai=dash,strike,knock;ru=shake,agitate,scatter)、「走り回って・疲れるほど・いろいろと調整を・奮って・実行する(繰り合わせる)」(「ク」のU音と「フリ」のH音が脱落して「ウリ」となったその語頭のU音が連結して「クリ」となった)

の転訛と解します。

906くりや(厨)

 飲食物を調理する所。台所。もてなすこと。饗応。

 この「くりや」は、

  「ク・フリ・イア」、KU-HURI-IA(ku=silent,wearied,exhausted;huri=turn round,turn to,set about;ia=indeed)、「実に・走り回って・疲れ果てる(場所。厨)」(「ク」のU音と「フリ」のH音が脱落して「ウリ」となったその語頭のU音が連結して「クリ」と、「イア」が「ヤ」となった)

の転訛と解します。

907くれない(紅)

 (「呉藍(くれのあい)」の変化した語とする説がある)植物紅花の異名。赤く鮮明な色。臙脂色。江戸時代、京都で染めた紅絹。香木の名。この「くれない(紅)」については、国語篇(その九)の033くれなゐの(紅の)の項を参照してください。

 この「くれない」は、

  「クラエ・ナヱ」、KURAE-NAWE(kurae=project,be prominent;nawe=be set on fire,be kindled or excited,scar)、「顕著な・傷口(出血で真っ赤に染まっているような色)」(「クラエ」のAE音がE音に変化して「クレ」と、「ナヱ」のE音がI音に変化して「ナヰ」「ナイ」となった)

の転訛と解します。

908くれはとり(呉織)

 呉の国から渡ってきた織工。織り物の技術者。また、その織工の名。呉の国から伝来した手法による織り物。織り模様のある絹織物。

 この「くれはとり」は、

  「クラエ・ハ・タウ・オリ」、KURAE-HA-TAU-ORI(kurae=project,be prominent;ha=what!;tau=turn away,come to rest,float,be suitable,be comely,befit;ori=cause to wave to and fro,sway,move about)、「特に傑出している・なんと・素晴らしい・(縦糸の間を横糸を入れた杼が左右に走って織り物を)織り上げる(人達またはその織物。呉織)」(「クラエ」のAE音がE音に変化して「クレ」と、「タウ」のAU音がO音に変化して「ト」となり、そのO音と「オリ」の語頭のO音が連結して「トリ」となった)

の転訛と解します。

909ぐる

 示し合わせてたくらみをなす仲間。共謀者。一味。帯(おび)の異称。ぐるぐる髷。

 この「ぐる」は、

  「(ン)グ・ウル」、NGU-URU(ngu=silent,dumb,speechless,greedy,moan,groan;uru=enter,associate oneself with,participate in,arrive(whakauru=join,assist,hurry))、「低い押し殺した声で・共謀する(ぐる)」(「(ン)グ」のNG音がG音に変化して「グ」となり、その語尾のU音と「ウル」の語頭のU音が連結して「グル」となった)

の転訛と解します。

910くるう(狂う)

 神霊や物の怪がとりつく。神がかりする。また、そのために精神や動作が正常でなくなる。精神状態が正常でなくなる。常軌を逸して激しく動く。我を忘れて、あることに熱中する。ふざける。物事が正常な状態でなくなる。

 この「くるう」は、

  「ク・ウル・ウフ」、KU-URU-UHU(ku=silent,wearied,exhausted;uru=head,chief,top;uhu=cramp,stiffness,benumbed)、「(精神が)消耗して・頭が・(しびれたように)正常に働かない(狂う)」(「ク」のU音と「ウル」の語頭のU音が連結して「クル」と、「ウフ」のH音が脱落して「ウ」となった)

の転訛と解します。

911くるま(車)

 心棒を中心にして、そのまわりを回るようになっているもの。輪。車輪。車輪を回して、動かしたり進めたりするようになっている乗り物や運搬具。輪を回して動かすようになっている機械や仕掛け。車が回るさま。など。

 この「くるま」は、

  「ク・ウル・マ」、KU-URU-MA(ku=silent;uru=enter,associate oneself with,participate in,arrive(whakauru=join,assist,hurry);ma=go,come)、「静かに・行き来するのを・助けるもの(車)」(「ク」のU音と「ウル」の語頭のU音が連結して「クル」となった)

の転訛と解します。

912くるわ(曲輪。郭)

 一定の地域を限り、その周囲と区別するために設けた囲い。城や砦のまわりに築いた土や石の囲いなど。周囲を囲われ多くの遊女屋が集まっている一定の区域。遊里。遊郭。

 この「くるわ」は、

  「クア・ウル・ワ」、KUA-URU-WA(kua=a verbal particle denoting that an action is completed or a condition established;uru=enter,associate oneself with,participate in,arrive(whakauru=join,assist,hurry);wa=definite space,area)、「(防御または遊郭などの)施設の集合が・完了している・地域(曲輪。郭)」(「クア」の語尾のA音が脱落して「ク」となり、そのU音と「ウル」の語頭のU音が連結して「クル」となった)

の転訛と解します。

913ぐれる

 予期した事が食い違う。見込みが外れる。常軌を逸する。調子がはずれる。生活態度が不良化する。逃げる。悪事が発覚する(てきや、盗人の隠語)。

 この「ぐれる」は、

  「(ン)グ・レレ・ル」、NGU-RERE-RU(ngu=silent,dumb,speechless,greedy,moan,groan;rere=flow,fly,rush,escape,leap,run out,be different;ru=shake,agitate,scatter)、「黙って・奮って・(進むべき)道から外れる(ぐれる)」(「(ン)グ」のNG音がG音に変化して「グ」と、「レレ」の反覆語尾が脱落して「レ」となった)

の転訛と解します。

914くろ(黒)

 色の名。木炭や墨のような色。白に対する。黒毛の馬。碁の黒石。など。この「くろ(黒)」については、国語篇(その九)の008くろい(黒い)の項を参照してください。

 この「くろ」は、

  「ク・ロ」、KU-RO(ku=firm,stiff,thickened;ro=roto=inside)、「深い・(ものの)中のような(闇の中。黒)」

の転訛と解します。

915くろ(畦)

 田と田の間の土を盛り上げたところ。田の境。あぜ。小高くなつたところ。また、物を小山のように積み上げたもの。

 この「くろ」は、

  「ク・ラウ」、KU-RAU(ku=firm,stiff,thickened;rau=project,extend)、「堅く・突出して伸びているもの(畦)」(「ラウ」のAU音がO音に変化して「ロ」となった)

の転訛と解します。

916くろうと(玄人)

 技芸などに深く熟達した人。あるいは、一つのことを職業、専門としている人。専門家。娼婦など商売女。

 この「くろうと」は、

  「クフ・ロウ・ト」、KUHU-ROU-TO(kuhu=thrust in,insert,conceal;rou=a long stick used to reach anything,reach or procure;to=drag,haul)、「長い棒を・(差し込む)巧みに操って・引き寄せる(人。玄人)」(「クフ」のH音が脱落して「ク」となった)

の転訛と解します。

917くろがね(鐵)

 鉄の古称。極めて堅固なもののたとえ。兵器。武器。

 この「くろがね」は、

  「ク・ロ・カネヘ」、KU-RO-KANEHE(ku=firm,stiff,thickened;ro=roto=inside;kanehe=trifle,anything small,desire,affection,regretful,yearning,fond)、「深い・(ものの)中のような(闇の中。黒色の)・(人々が)切に欲しがるもの(鐵)」(「カネヘ」のH音が脱落して「カネ」から「ガネ」となった)

の転訛と解します。

918くろまく(黒幕)

 黒色の幕。特に、歌舞伎で場面の転換や闇を表示する場合に用いる黒色の幕。陰に居て、はかりごとをめぐらしたり、指図したりする者。

 この「くろまく」は、

  「ク・ロ・マ・アク」、KU-RO-MA-AKU(ku=firm,stiff,thickened;ro=roto=inside;ma=go,come;aku=delay,scrape out,cleanse)、「深い・(ものの)中のような(闇の中。黒色の)・(場面の端から端へ)動き覆って・(場面を)一新するもの(黒色の幕)」(「マ」のA音と「アク」の語頭のA音が連結して「マク」となった)

の転訛と解します。

919くわだてる(企てる)

 もくろむ。毛スン句する。物事を実行する。また、実行しようとする。

 この「くわだてる」は、

  「クワタ・タイ・ル」、KUWATA-TAI-RU(kuwata=long for,yearn,love,desire;tai,taitai=dash,strike,knock,perform certain ceremonies to remove tapu etc.;ru=shake,agitate,scatter)、「(何かを)実現するために・奮って・(それを阻害する禁忌を除去する儀式などの)準備を行う(企てる)」(「クワタ」が「クワダ」となった)

の転訛と解します。

920くわばらくわばら(桑原桑原)

 桑の木を植えた広い畑。落雷を防ぐという呪文(多くは桑原桑原と重ねて言う)。いやなことを避けようとする時に唱える呪文。

 この「くわばらくわばら」は、

  「クワワ・パラパラ・クワワ・パラパラ」、KUWAWA-PARAPARA-KUWAWA-PARAPARA(kuwawa=scattered,disorganised;parapara=excrement,a place where certain rites were performed)、「(ここは)災難除けのおまじない(の札)を・した(ばら撒いた)場所(桑原桑原)」(「クワワ」の反覆語尾が脱落して「クワ」と、「パラパラ」の反覆語尾が脱落して「バラ」となった)

の転訛と解します。

921ぐんぱい(軍配)

 軍隊の指揮をとること。また、その人。転じて、機をみて進退すること。(軍配団扇の略)戦国以来、武将の間で用いた指揮用の団扇。相撲の行司が用いる勝負を裁くための団扇。

 この「ぐんぱい」は、

  「(ン)グ(ン)グ・パイ」、NGUNGU-PAI(ngungu=lead astray,glance off,turn aside;pai=good,excellent,suitable,satisfactory,pleasant)、「適切な・(軍隊の)進退の指揮を行う(またはそのための道具。軍配)」(「(ン)グ(ン)グ」の最初のNG音がG音に、次ぎのNG音がN音に変化して「グヌ」から「グン」となった)

の転訛と解します。

「ケ」

922け(食)

 食事。飲食物。たべもの。

 この「け」は、

  「カイ」、KAI(consume,eat,food)、「飲食物(食)」(「カイ」のAI音がE音に変化して「ケ」となった)

の転訛と解します。

923け(日)

 何日にもわたる期間。二日以上の日。日数。(「朝にけに」の形で)日ごと。毎日。

 この「け」は、

  「ケ」、KE(different,strange,otherwise,at a different time)、「(それぞれ)異なる日(日)」

の転訛と解します。

924け(気)

 ある物の発する熱気や、ある物のもっている勢い。気分。心地。気力。人や物の状態から受ける感じ。気配。気候。天気。いろいろな要素、成分など。

 この「け」は、

  「ケ」、KE(different,strange,otherwise,contrariwise,in a different character or appearance)、「(何かしら)変わっている要素、成分、性格、ありようなど(気)」

の転訛と解します。

925け(褻)

 (神の祭や公の政など儀式や祝い事を晴(はれ)といい、日常的な私事を褻(け)という)正式でないこと。よそゆきでないこと。ふだん。常(つね)。この「け(褻)」については、雑楽篇(その一)の171はれ(晴れ)の項の「け(褻)」を参照してください。

 この「け」は、

  「ケケ」、KEKE(obstinate,stubborn)、「(通常の慣習に)固執する(のにふさわしい場面、行動、生活様式など)」(「ケケ」の反復語尾が脱落して「ケ」となった)

の転訛と解します。

926けいあん(桂庵)

 (江戸時代、承応(1652〜55)の頃、江戸京橋にすむ医者大和桂庵が、縁談などを巧みに取りまとめたところから)縁談や訴訟などの仲立ちをする人。また、雇人や奉公人の口入れを業とする人。また、その家。口入屋。承宿。言葉巧みにお世辞や追従を言うこと。また、その人。

 この「けいあん」は、

  「ケイ・アナ」、KEI-ANA(kei=at,on,with,in the act of,to denote present state or character or quality etc.;ana=yes)、「(なんでも)そうだという(異を唱えず追従をいう)・特性をもつ人(桂庵)」(「アナ」が「アン」となった)

の転訛と解します。

927けいき(景気)

 物事の様子。有様。気配。また、景色。眺望。物事の勢い。活動の具合。元気のあること。威勢のよいさま。商売や取引の状況。また、社会全体の経済活動の状態。とくに、好景気をさす場合もある。

 この「けいき」は、

  「ケイ・キ」、KEI-KI(kei=at,on,with,in the act of,to denote present state or character or quality etc.;ki=full,very)、「(いろいろな)場面や状況で・(元気が)いっぱいであること(景気)」

の転訛と解します。

928けいこ(稽古)

 古事を考えて、物事のかつてあったあり方とこれから在るべき姿とを正確に知ること。書を読んで学問すること。また、学んだところを復習すること。(とくに武術、芸能について)修行。練習。

 この「けいこ」は、

  「カイ・カウ」、KAI-KAU(kai=fulfil its proper function,have full play,quantity,number,anything produced in profusion;kau=alone,only)、「ただただ(一つ一つの技を)・徹底的に(数多く)練習する(稽古)」(「カイ」のAI音がEI音に変化して「ケイ」と、「カウ」のAU音がO音に変化して「コ」となった)

  または「ケ・ヒコ」、KE-HIKO(ke=different,strange,extraordinary;hiko=move at random or irregularly)、「変わった(練習で)・(どんな状況にも対応できるように)行き当たりばったりに不規則な行動をする(稽古)」(「ヒコ」のH音が脱落して「イコ」となった)

の転訛と解します。

929けいざい(経済)

 (「経国済民」または「経世済民」の略)国を治め、民を救済すること。人間の共同生活を維持、発展させるために必要な物質的財貨の生産、分配、消費などの活動。それらに関する施策。また、それらを通じて形成される社会関係。金銭のやりくりをすること。費用や手間のかからないこと。費用や手間をかけないこと。また、そのさま。など。

 この「けいざい」は、

  「カイ・タ・アイ」、KAI-TA-AI(kai=fulfil its proper function,have full play,quantity,number,anything produced in profusion;ta=the...of,dash,beat,lay;ai=beget,procreate)、「例の・(財貨の)生産を・(十分に合理的に)実行すること(経済)」(「カイ」のAI音がEI音に変化して「ケイ」と、「タ」のA音と「アイ」の語頭のA音が連結して「タイ」から「ザイ」となった)

の転訛と解します。

930けが(怪我)

 過ちをしでかすこと。そそうをすること。また、その事柄。あやまち。過失。思いがけず傷つくこと。過失によって負傷すること。また、そのきず。思いがけない事態。不足の結果。偶然。(江戸時代の法律用語)前期には無意犯全部、すなわち過失犯と偶然の出来事の両者を含む広義にもちいられたが、後期には過失犯だけをさす狭義に用いられた。取引相場での損失。

 この「けが」は、

  「ケハ・エ(ン)ガ」、KEHA-ENGA(keha=pale,dim,reel,stagger;enga=anxiety)、「(一瞬)蒼白となって・心配する(ケガ)」(「ケ」のE音と「エ(ン)ガ」の語頭のE音と連結し、NG音がG音に変化して「ケガ」となった)

の転訛と解します。

931けげん(怪訝)

 訳が分からなくて納得がいかない様子。また、不思議に思うこと。また、そのようなさま。

 この「けげん」は、

  「ケ・(ン)ゲネ」、KE-NGENE(ke=different,strange,extraordinary;ngene=wrinkled,fold,Scrofulous wen)、「奇妙に思って・(額に)皺を寄せる(怪訝)」(「(ン)ゲネ」のNG音がG音に変化して「ゲネ」から「ゲン」となった)

の転訛と解します。

932げこ(下戸)

 令制で、戸の等級の一つ。構成員の少ない戸。成人男子の少ない世帯。下層階級。貧民。酒の飲めない人。酒を好まない人。

 この「げこ」は、

  「(ン)ガイ・コ」、NGAI-KO(ngai=tribe or clan;ko=girl,also addressing males)、「(酒が飲めない)娘と・同類の(人。下戸)」(「(ン)ガイ」のNG音がG音に、AI音がE音に変化して「ゲ」となった)

の転訛と解します。

933けさ(今朝)

 今日の朝。

 この「けさ」は、

  「ケハ・アタ」、KEHA-ATA(keha=pale,dim,reel,stagger;ata=form,shape,semblance,shadow,early morning)、「(ほの暗い)かすかに明るくなった・(早い時間の)朝(今朝)」(「ケハ」の語尾のA音と「アタ」の語頭のA音が連結して「ケハタ」となり、さらにH音が脱落して「ケタ」から「ケサ」となった)

の転訛と解します。

934けざやか

 はっきりしているさま。際立っているさま。目に立つさま。

 この「けざやか」は、

  「ケ・アタ・イア・アカ」、KE-ATA-IA-AKA(ke=different,strange,extraordinary;ata=form,shape,shadow,semblance,early morning;ia=indeed;aka=clean off,scrape away)、「異様な程に・物の形が・実に・洗い清められたように(はっきりとしている。けざやか)」(「ケ・アタ」のEA音がE音に変化して「ケタ」から「ケザ」と、「イア」のA音と「アカ」の語頭のA音が連結して「イアカ」から「ヤカ」となった)

の転訛と解します。

935けしかける(嗾ける)

 犬などに声をかけて勢いづけさせ、相手に向かわせる。相手を煽てたり、唆したりして、自分に都合のよいように行動させる。扇動する。

 古くは、「犬をはげますのにシキシキといったことが俚言集覧にあるが、もとはシキシキやシケシケは「行け行け」の意か」(堀井令以知編『語源大辞典』)とありますが、この「シキ」は後出937けしきばむの「チキ」で「吠えろ」、「噛みつけ」、「やれやれ」の意と解します。

 この「けしかける」は、

  「ケア・チカ・ケ・ル」、KEA-TIKA-KE-RU(kea=false,lie;tika=straight,direct,keeping a direct course,just,right;ke=produce a sharp abrupt sound,crack,scream;ru=shake,agitate,scatter)、「誤った(行為を)・そのまま続けるように・奮って・攻撃を促す声をかける(嗾ける)」(「ケア」のEA音がE音に変化して「ケ」と、「チカ」が「シカ」となった)

の転訛と解します。

936けしからん(怪しからん)

 不都合である。非難すべきさまである。ひどく。たいそう。

 この「けしからん」は、

  「ケア・チカ・ラ(ン)ガイ」、KEA-TIKA-RANGAI(kea=false,lie;tika=straight,direct,keeping a direct course,just,right;rangai=raised,elevated)、「誤った(行為を)・そのまま続けるような(行為が)・起きている(怪しからん)」(「ケア」のEA音がE音に変化して「ケ」と、「チカ」が「シカ」と、「ラ(ン)ガイ」のNG音がN音に変化して「ラナイ」となり、さらにそのAI音がE音に変化して「ラネ」から「ラン」となった)

の転訛と解します。

937けしきばむ(気色ばむ)

 自然界の事物が生動のけはい帯びる。発現のきざしがみえる。懐妊、出産の兆候を帯びる。心持ちが外に現れる。心の内をほのめかす。意中がそぶりに現れる。気取る。改まった様子をする。むっとして怒った表情になる。憤慨する。色をなす。興奮する。

 この「けしきばむ」は、

  「ケア・チキ・パハ・アム」、KEA-TIKI-PAHA-AMU(kea=false,lie;tiki=fetch,proceed to do anything,go for a purpose;paha=arrive suddenly,attack;amu=grumble,begrudge,complain)、「誤った・何らかの行動を(察知して)・急に・不満を言い始める(気色ばむ)」(「ケア」のEA音がE音に変化して「ケ」と、「チキ」が「シキ」と、「パハ」のH音が脱落して「パ」から「バ」となり、そのA音と「アム」の語頭のA音が連結して「パム」となった)

の転訛と解します。

938けじめ

 (ーを付ける)護るべき規範や道徳などに従って、行動や態度を明確にする。物事のけりをつける。(ーを取る)機先を制して、優劣、強弱の差をはっきりとつける。動きのとれないように念を押す。だめを押してきめつける。

 この「けじめ」は、

  「ケア・アチチ・マイ」、KEA-ATITI-MAI(kea=false,lie;atiti=turn aside,wander;mai=indicate direction or motion towards)、「誤った(他人に対する行動は)・自分に・はね返る(罰を受けたり、代償を払うこととなる。けじめ)」(「ケア」の語尾のA音と「アチチ」の反覆語尾が脱落した「アチ」の語頭のA音が連結して「ケアチ」のEA音がE音に変化して「ケチ」から「ケジ」と、「マイ」のAI音がE音に変化して「メ」となった)

の転訛と解します。

939げす(下種)

 身分や素性の卑しい人。下賤の人。品性が下劣であること。下品であること。また、その人。そのようなさま。

 この「げす」は、

  「(ン)ガエ・ツ」、NGAE-TU(ngae=swamp;tu=stand,settle,fight with,energetic)、「(悪臭がする汚い)沼地に・(どっぷりと)漬かって(平気で)いる奴(下種)」(「(ン)ガエ」のNG音がG音に、AE音がE音に変化して「ゲ」と、「ツ」が「ス」となった)

  または「(ン)ゲヘ・ツ」、NGEHE-TU(ngehe=soft,yielding,lazy,calm;tu=stand,settle,fight with,energetic)、「怠惰で・積極性がない奴(下種)」(「(ン)ゲヘ」のNG音がG音に変化し、H音が脱落して「ゲ」と、「ツ」が「ス」となった)

の転訛と解します。

940げすい(下水)

 台所や風呂場などから流れる水や、汚れた雨水。また、工場などの排水。これらを流すように造った溝。または、暗渠。下水道。

 この「げすい」は、

  「(ン)ガエ・ツイ」、NGAE-TUI(ngae,ngaengae=swamp;tui=pierce,thread on a string,hurt)、「沼地のよどみ水のような汚水で・(人の)気分を害するもの(下水)」(「(ン)ガエ」のNG音がG音に、AE音がE音に変化して「ゲ」と、「ツイ」が「スイ」となった)

の転訛と解します。

941げそ(烏賊の足)

 烏賊の足。(また、942げそく(下足)の略として用いられることがある。)この「げそ(烏賊の足)」については、雑楽篇(その二)の702いか(烏賊)の項の「げそ(烏賊の足)」を参照してください。

 この「げそ」は、

   「(ン)ガイ・タウ」、NGAI-TAU(ngai=tribe,clan;tau=turn away,look in another direction,attack,strange)、「(十本の足がそれぞれ)別々に動く(奇妙な動きをする)・種類のもの(烏賊の足)」(「(ン)ガイ」のNG音がG音に、AI音がE音に変化して「ゲ」と、「タウ」のAU音がO音に変化して「ト」から「ソ」となった)

の転訛と解します。

942げそく(下足)

 足を下に下ろすこと。脱いだ履き物。また、下足番の略。この「げそく(下足)」については、雑楽篇(その二)の702いか(烏賊)の項の「げそ(烏賊の足)」の注の「げそく(下足)」を参照してください。

 この「げそく」は、

  「(ン)ガイ・タウ・クフ」、NGAI-TAU-KUHU(ngai=tribe,clan;tau=turn away,look in another direction,attack,strange;kuhu=insert,conceal)、「(脱ぎ捨てられて)ばらばらに置かれた(履き物が)・(下足箱に)入れられた・種類のもの(下足)」(「(ン)ガイ」のNG音がG音に、AI音がE音に変化して「ゲ」と、「タウ」のAU音がO音に変化して「ト」から「ソ」と、「クフ」のH音が脱落して「ク」となった)

の転訛と解します。

943けた(桁)

 家や橋などの柱の上に渡してその上に載せる梁(はり)を受けさせる材木。桁貫。かたわら。そば。算盤の珠を貫く串。一、十、百、千などの数の位。

 この「けた」は、

  「ケイ・タ」、KEI-TA(kei=at,on,in,with,in the act of;ta=dash,beat,lay)、「(柱の)上に・載せる材木(桁)」(「ケイ」が「ケ」となった)

の転訛と解します。

944げた(下駄)

 木製の履き物。長四角の木片の上側を平らに、地に当たる面に歯をくりぬき、先端の中央と左右の脇に足を支えるひも(鼻緒)を通したもの。この「げた(下駄)」については、雑楽篇(その二)の1054げた(下駄)の項を参照してください。

 この「げた」は、

  「(ン)ガイ・イ・タハ」、NGAI-I-TAHA(ngai=tribe or clan;i=past tense,from,beside,with,by,at,upon;taha=side,margin,edge)、「(平たい面をもつもの)板の・上に(足が)載る・部類の履き物(下駄)」(「(ン)ガイ」の語尾のI音と「イ」のI音が連結し、NG音がG音に、AI音がE音に変化して「ゲ」と、「タハ」のH音が脱落して「タ」となった)

の転訛と解します。

945けたちがい(桁違い)

 数の位取りを間違えること。ある物事の価値、等級、程度などが他と非常にかけ離れていること。また、そのさま。段違い。けたはずれ。

 この「けたちがい」は、

  「ケイ・タ・チ・(ン)ガヰ」、KEI-TA-TI-NGAWHI(kei=at,on,in,with,in the act of;ta=dash,beat,lay;ti=throw,cast;ngawhi=suffer penalty,be punished)、「(算盤の珠を)中に・貫く串(桁を)・(間違って)示すことによって・罰を受ける行為(桁違い)」(「ケイ」が「ケ」と、「(ン)ガヰ」のNG音がG音に変化して「ガヰ」から「ガイ」となった)

の転訛と解します。

946けだもの(獣)

 全身に毛の生えた、四足をもつ哺乳動物。けもの。獣類。特に、家畜をいう。(人間の持っている信義、情け、理性などがない生き物の意)人間的な情味のない人をののしり、あざけっていう。また、遊女や高利貸しなどを卑しめたり、一般的に他人をあざけり卑しめていう。人でなし。この「けだもの(獣)」については、国語篇(その九)の102けだもの(獣)の項を参照してください。

 この「けだもの」は、

  「ケ・タ・モノ」、KE-TA-MONO(ke=strange,different;ta=dash,beat,lay;mono=disable by means of incantations,an incantation to disable an army)、「変わった・(まじないをかけるように)人を威圧して・襲ってくるもの(けだもの)」(「タ」が「ダ」となった)

の転訛と解します。

947けち(吝嗇。不吉な前兆)

 @金銭や品物などを惜しがって出さないこと。みみっちいさま。また、その人。この「けち(吝嗇)」については、国語篇(その十四)の069けち(吝嗇)の項を参照してください。

 A(「けちがつく」など)縁起が悪いこと。不吉なことの前兆。景気が悪いこと。粗末なこと。劣っていてつまらないこと。など。

 この「けち」は、

  @「ケ・エチ」、KE-ETI(ke=different,strange;eti=shrink,recoil(etieti=disgusting))、「異常に・(出費・行動に)尻込みする(さま。吝嗇)」(「ケ」のE音と「エチ」の語頭のE音が連結して「ケチ」となった)

  A「クア・エチ」、KUA-ETI(kua=denoting that an action is completed,or a condition established;eti=shrink,recoil(etieti=disgusting))、「物事が成就する(またはうまく行く)ことに関して・(尻込みする)ためらう(ことが起こる。不吉な前兆(景気が悪くなるなどいろいろ不調になる))」(「クア」の語尾のA音が脱落し、「ク・エチ」が「ケチ」となった)

の転訛と解します。

948げち(下知)

 上から下へ指図すること。命令。

 この「げち」は、

  「(ン)ゲ・チ」、NGE-TI(nge=noise,screech;ti=throw,cast)、「甲高い声で・下されるもの(下知)」(「(ン)ゲ」のNG音がG音に変化して「ゲ」となった)

の転訛と解します。

949けつ(尻)

 しり。うしろ。また、器物などの底部をいう俗語。一番最後をいう俗語。この「けつ(尻)」については、国語篇(その十五)の103しり(尻)の項の「けつ(尻)」を参照してください。

 この「けつ」は、

  「カイ(ン)ガ・ツ」、KAINGA-TU(kainga=place of abode or lodging or quaeters or encampment or bovouac,unfortified place of residence;tu=stand,settle)、「(人の体の)腰を下ろす(場所に)・あるもの(尻)」(「カイ(ン)ガ」のAI音がE音に変化し、名詞形語尾のNGA音が脱落して「ケ」となった)

  または「ケ・ツア」、KE-TUA(ke=different,strange,produce a sharp abrupt sound;tua=back,on the farther side)、「突然音を出す(屁を出す)・体の後部(尻)」(「ツア」の語尾のA音が脱落して「ツ」となった)

の転訛と解します。

950けっこう(結構)

 物を造り出すこと。多くの場合、善美を尽くしてつくること。心の中である考えをつくりかまえること。物事の準備をととのえること。実現すること。贅沢すること。すぐれているさま。立派なさま。ねんごろなさま。心がけのよいさま。お人好し。十分なさま。それ以上必要としないさま(丁寧に断る場合に用いる)。十分満足と言うほどではないが、一応良いと言えるさま。

 この「けっこう」は、

  「カイ(ン)ガ・ツ・コウ」、KAINGA-TU-KOU(kainga=place of abode or lodging or quaeters or encampment or bivouac,unfortified place of residence;tu=stand,settle;kou=good)、「生活の場の・経営が・良好である(結構)」(「カイ(ン)ガ」のAI音がE音に変化し、名詞形語尾のNGA音が脱落して「ケ」と、「ツ」が「ッ」となった)

の転訛と解します。

951けったい(怪態)

 奇妙なさま。不思議なさま。

 この「けったい」は、

  「ケ・ツタイ」、KE-TUTAI(ke=different,strange;tutai=watch,spy,sentry,scout)、「よく見ると・非常に奇妙だ(怪態)」(「ツタイ」が「ッタイ」となった)

の転訛と解します。

952げてもの(下手物)

 人工をあまり加えない安価で素朴なしなもの。粗雑な安物。一般から邪道、風変わりとみられているもの。いかもの。

 この「げてもの」は、

  「ケ・タイマウ・ナウ」、KE-TAIMAU-NAU(ke=different,strange;taimau=constant,enduring;nau,whakanau=refuse)、「変わっていて・(常に)いつも・(一般から)拒否されるもの(下手物)」(「ケ」が「ゲ」と、「タイマウ」のAI音がE音に、AU音がO音に変化して「テモ」と、「ナウ」のAU音がO音に変化して「ノ」となった)

の転訛と解します。

953げどう(外道)

 (仏語)仏教者が仏教以外の教えをいう語。真理に背く説。また、その人。邪説。災厄をもたらすもの。悪魔。(俗語)釣りで、目的の魚以外に釣れる別の魚。この「げどう(外道)」については、地名篇(その二)の岩手県の(16) 夏油(げとう)温泉の項の「げどう(外道)」を参照してください。

 この「げどう」は、

   「ケ・トウ」、KE-TOU(ke=different,strange;tou=dip into a liquid,wet)、「水で濡れている・(ねらった魚と)別の変わった魚(外道)」(「ケ」が「ゲ」と、「トウ」が「ドウ」となった)

の転訛と解します。

954けないど

 饗応を要する不意の来客。または、居候。かかりゅうど。

 この「けないど」は、

  「ケ・ナ・イト」、KE-NA-ITO(ke=different,strange,otherwise than one expected;na=by,belonging to;ito=object of revenge,enemy)、「予期していなかった(不意の)・(報復してやりたい)嫌な奴・の部類に属するもの(けないど)」(「イト」が「イド」となった)

の転訛と解します。

955けなげ(健気)

 (「ケナリ」または「ケナリゲ」の転とする説がある。東北地方で猟犬が獲物をくわえてきたとき、また、馬をいたわるときに「ケナリ」といい、秋田では、猫が鼠を捕ってきたとき、「ケナリケナリ」と褒めるという。)勇ましいさま。心がけがしっかりしているさま。殊勝であるさま。健康であるさま。

 この「けなげ」は、

  「カイ・(ン)ガ(ン)ゲ」、KAI-NGANGE(kai=fulfil its proper function,have full play;ngange,ngangengange=pierced,perforated)、「(為すべきことを)実行することを・最後まで貫徹する(健気)」(「カイ」のAI音がE音に変化して「ケ」と、「(ン)ガ(ン)ゲ」の最初のNG音がN音に、次ぎのNG音がG音に変化して「ナゲ」となった)

の転訛と解します。

956けなるい(羨い)

 (「ケナリ」に同じとする説がある)うらやましい。

 この「けなるい」は、

  「カイ・(ン)ガ・ルイ」、KAI-NGA-RUI(kai=fulfil its proper function,have full play;nga=satisfied;rui=shake,scatter)、「(為すべきことを)実行して・満足(していること)を・周囲に(ばらまく)見せつける(羨ましい)」(「カイ」のAI音がE音に変化して「ケ」と、「(ン)ガ」のNG音がN音に変化して「ナ」となった)

の転訛と解します。

957げに(実に)

 予告や評判どおりの事態に接したときの、思い当たった気持ちを表す。なるほど。聞いていたとおり。他人の意見・態度を肯定するときの、納得した気持ちを表す。いかにも。おっしゃるとおり。自分の感情・判断が誇張や嘘のものでないことを示すときの、いつわらない気持ちを表す。本当に。言葉どおり。

 この「げに」は、

  「(ン)ガイ・(ン)ギア」、NGAI-NGIA(ngai=tribe or clan;ngia=seem,appear to be)、「同類の・ように見える(実に)」(「(ン)ガイ」のNG音がG音に、AI音がE音に変化して「ゲ」と、「(ン)ギア」のNG音がN音に変化し、語尾のA音が脱落して「「ニ」となった)

の転訛と解します。

958けはい(気配)

 漠然と感覚によってとらえられる物事の様子。そぶり。市場の景気や相場の状態。また、推定される取引の水準。

 この「けはい」は、

  「ケ・ワイ」、KE-WHAI(ke=different,strange,otherwise,contrariwise,in a different character or appearance;whai=possessing,equipped with,becoming,acquiring the shape or character of,settled,constantly resident)、「(何かしら)変わっている要素、成分、性格、ありようなどが・変化し生成してゆくもの(気配)」(「ワイ」のWH音がH音に変化して「ハイ」となった)

の転訛と解します。

959げびる(下卑る)

 いやしく下品に見える。下品である。

 この「げびる」は、

  「(ン)ガエ・ピピ・ル」、NGAE-PIPI-RU(ngae=swamp;pipi=bathe with water,smear with oil etc.;ru=shake,agitate,scatter)、「奮って・(悪臭がする汚い)沼地の・水で風呂に漬かる(下卑る)」(「(ン)ガエ」のNG音がG音に、AE音がE音に変化して「ゲ」と、「ピピ」の反覆語尾が脱落して「ビ」となった)

の転訛と解します。

960けみする(閲する)

 見る。改める。検閲する。調べ読む。閲覧する。経る。経過する。

 この「けみする」は、

  「ケイ・ミヒ・ツル」、KEI-MIHI-TURU(kei=at,on,in,with,in the act of;mihi=sigh for,greet,admire(whakamihi=commend,compliment,praise,acknowledge,thank);turu=pole,build(fixed) an eel weir,fly a kite,kneel,leak)、「調べ・確認して・確定する(閲する)」(「ケイ」が「ケ」と、「ミヒ」のH音が脱落して「ミ」と、「ツル」が「スル」となった)

の転訛と解します。

961けむり(煙)

 物が燃えるときに立ちのぼる、微粒子の交じった、色のついた気体。思い焦がれる心の苦しみ。竈から立ちのぼるもの。炊煙。暮らし。たばこの煙。この「けむり(煙)」については、国語篇(その九)の078けむり(煙)の項を参照してください。

 この「けむり」は、

  「ケ・ムリ」、ke-muri(ke=strange,different;muri=breeze,sigh)、「変わった・微風(煙)」

の転訛と解します。

962げら

 (英語galleyからとする説がある)印刷所で組み終わった活字の版を入れておく底の浅い木製の盆。ゲラ刷りの略。

 この「げら」は、

  「(ン)ガエ・ラ」、NGAE-RA(ngae=heel;ra=wed)、「(活字の)踵を接するように・密着して組み上げられた版(またはその版で刷られた仮の印刷物。げら)」(「(ン)ガエ」のNG音がG音に、AE音がE音に変化して「ゲ」となった)

の転訛と解します。

963けらい(家来)

 封建制度の下の武士社会で、主君に仕えること。また、その者。家臣。江戸時代、庄屋、地主の従者、小作人、家抱、また、商家での雇い人の称。(転じて、一般に)服従する者。従者。手下。

 この「けらい」は、

  「カイ・ラヒ」、KAI-RAHI(kai=fulfil its proper function,have full play;rahi=great,plentiful,multitude,slave)、「(最善を尽くして)任務を遂行する・奴隷のような者(家来)」(「カイ」のAI音がE音に変化して「ケ」と、「ラヒ」のH音が脱落して「ライ」となった)

の転訛と解します。

964けりがつく

 (和歌、俳句など、助動詞「けり」で終わるものが多いところから)物事の終わり。結末。結着がつく。終了する。

 この「けりがつく」は、

  「ケリ・(ン)ガ・ツク」、KERI-NGA-TUKU(keri=dig,rush along,violently(keria=the cry of the torea(bird),a sign of peace);nga=satisfied;tuku=let go,give up,leave,allow,present,set to,settle down)、「(争いが終わったから耕作をしよう)結着し・満足して・さあ(仕事に)行こう(けりがつく)」(「(ン)ガ」のNG音がG音に変化して「ガ」となった)

の転訛と解します。

965けれんみ(外連味)

 俗受けすることを狙ったやり方。はったりやごまかし。また、その程度。

 この「けれんみ」は、

  「ケレ・(ン)ガミ」、KERE-NGAMI(kere=quite(kerekere=dark);ngami,whakangami=swallow up)、「(膨れ上がつた)程度が進んだ・(暗黒の)悪だくみ(外連味)」(「(ン)ガミ」のNG音がN音に変化して「ナミ」から「ンミ」となった)

の転訛と解します。

966げろ

 食べたものを胃から吐き出すこと。また、その吐き出したもの。嘔吐物。(盗人仲間の隠語)自白。

 この「げろ」は、

  「(ン)ガエ・ロ」、NGAE-RO(ngae=heel;ro=roto=inside)、「(胃の)中のものを・(踵を接するように)続けて吐き出す(げろ)」(「(ン)ガエ」のNG音がG音に、AE音がE音に変化して「ゲ」となった)

の転訛と解します。

967けわしい(険しい)

 山や坂などの傾斜が急で、登るのに困難である。道が急峻である。克服するのが困難である。自然の現象や風景が人を受け付けないさま。荒々しい。はげしい。人が他を受け入れないさま。つけいる余地がないさま。余裕のないさま。この「けわしい(険しい)」については、国語篇(その十四)の072けわしい(険しい)の項を参照してください。

 この「けわしい」は、

  「ケイ・ワ・チヒ」、KEI-WA-TIHI(kei=stern of a canoe:wa=definite space,area,be far advanced;tihi=summit,top,peak,lie in a heap)、「(船の)艫の・一番高い・場所のような(険しい)」(「ケイ」が「ケ」と、「チヒ」のH音が脱落して「チイ」から「シイ」となった)

の転訛と解します。

968けん

 料理の付け合わせ。刺身、膾などのつま。

 この「けん」は、

  「ケネ」、KENE(mud,mire)、「(ぬかるみ、泥まみれのものから転じて)つまらないもの(けん)」(「ケネ」が「ケン」となった)

の転訛と解します。

969けんか(喧嘩)

 騒がしいこと。喧しいこと。言い争ったり、腕力を用いて争ったりすること。いさかい。

 この「けんか」は、

  「カイ(ン)ガ・カ」、KAINGA-KA(kainga=field of operation,scope of work;ka=take fire,be lighted,burn)、「(燃えるように)熱くなって・(仕事の一環のように)争うもの(喧嘩)」(「カイ(ン)ガ」のAI音がE音に、NG音がN音に変化して「ケナ」から「ケン」となった)

の転訛と解します。

970けんがみね(剣が峰)

 @火山の噴火口の周辺。主として富士山頂にいう。A相撲の土俵の円周をなす俵の最も高い部分。少しの余裕もない絶対絶命の状態。

 この「けんがみね」は、

  @「カイ(ン)ガ・ミネ」、KAINGA-MINE(kainga=(deriv.from ka)place where fire has burnt;mine=be assembled)、「(昔は)火を噴いていた(場所の)・尖ったところが連なっている場所(噴火口の周囲。剣が峰)」(「カイ(ン)ガ」のAI音がE音に、NG音がN音およびG音に変化して「ケンガ」となった)

  A「カイ(ン)ガ・ミネ」、KAINGA-MINE(kainga=(deriv.from kai)field of operation,scope of work;mine=be assembled)、「相撲をとる場所(土俵)の・(円周をなす)俵が連なっているところ(境俵の上。剣が峰)」(「カイ(ン)ガ」のAI音がE音に、NG音がN音およびG音に変化して「ケンガ」となった)

の転訛と解します。

971げんき(元気)

 天地間に広がり、万物が生まれ育つ根本となる精気。活動の源となる気力。心身の活動力。また、国家や組織が存続する上で必要な活力。体の調子がよくて健康なこと。気力、勢力が盛んなこと。また、そのさま。

 この「げんき」は、

  「(ン)ガエヘ・ネキ」、NGAEHE-NEKI(ngaehe=rustle,murmur,tide;neki=nei,neinei=stretched forward,reaching out,wagging)、「盛んに活動する力が・頂点に達しているもの(元気)」(「(ン)ガエヘ」のNG音がG音に、AE音がE音に変化し、H音が脱落して「ゲ」と、「ネキ」が「ンキ」となった)

の転訛と解します。

972けんけん(片足跳び)

 片足で跳びあるくこと。その遊び。この「けんけん(片足跳び)」については、国語篇(その十四)の045かたあしとび(片足跳び)の項を参照してください。

 この「けんけん」は、

  「カイ(ン)ガ・カイ(ン)ガ」、KAINGA-KAINGA(kainga=(deriv.from ka)place where fire has burnt(ka=take fire,be lighted,burn))、「(足下に)火がついた・火がついた(ように飛び跳ねる。片足跳び)」(「カイ(ン)ガ」のAI音がE音に、NG音がN音に変化して「ケナ」から「ケン」となった)

の転訛と解します。

973げんじな(源氏名)

 『源氏物語』五十四帖の題名に基づいて、宮中の女官に賜った称号。のち、大名や高家の奥女中にもこの風習が伝わった。遊女や娼妓などが本名のほかに付けた呼び名。また、バーやクラブなどの飲食店につとめる女性の呼び名にもいう。

 この「げんじな」は、

  「(ン)ゲ(ン)ゲチ」、NGENGETI(Pupa of tatarakihi(cicada)and cast-off skin of the same)、「(蝉およびその抜け殻)「空蝉」のような呼び名(源氏名)」(「(ン)ゲ(ン)ゲチ」の最初のNG音がG音に、次ぎのNG音がN音に変化して「ゲネチ」から「ゲンジ」となった)

の転訛と解します。

974けんずい(間水)

 昔の二食時代、朝食と夕食の間に食べる官職。現在の昼食にあたる。三食の他に飲食する飯、酒、餅など。酒の異名。この「けんずい(間水)」については、国語篇(その十四)の061かんしょく(間食)の項の「けんずい」を参照してください。

 この「けんずい」は、

  「カイ(ン)ガ・ツイ」、KAINGA-TU-UI(kainga=refuse of a meal as cockle shells etc.;tui=pirece,thread on a string,sew)、「食物の屑を・集めた(粗末な食事。間食)」(「カイ(ン)ガ」のAI音がE音に、NG音がN音に変化して「ケナ」から「ケン」と、「ツイ」が「ズイ」となった)

の転訛と解します。

975けんぞく(眷属)

 血のつながっているもの。親族。一族。うから。従者。家来。家の子郎党。

 この「けんぞく」は、

  「カイ(ン)ガ・トフ・ウク」、KAINGA-TOHU-UKU(kainga=(deriv.from ka)place of abode or lodging,unfortified place of residence,country;tohu=mark,company or division of any army;uku=ally,suporting tribe)、「同じ地域に住む・連合または協力関係にある・(軍隊の)一族(眷属)」(「カイ(ン)ガ」のAI音がE音に、NG音がN音に変化して「ケナ」から「ケン」と、「トフ」のH音が脱落した「トウ」の語尾のU音と「ウク」の語頭のU音が連結して「トウク」から「ゾク」となった)

の転訛と解します。

976けんちんじる(巻繊汁)

 けんちんの材料で作った、実だくさんのしょうゆ仕立ての汁もの。この「けんちんじる(巻繊汁)」については、雑楽篇(その一)の282けんちんじる(けんちんじる)の項を参照してください。

 この「けんちんじる」は、

  「カイ(ン)ガ・チニ・チ・ル」、KAINGA-TINI-TI-LU(kainga=refuse of a meal,as cockle shells,etc.;tini=very many,host;ti=throw,cast,overcome;(Hawaii)lu=to scatter,to drip as water)、「(野菜の屑など)あり合わせの材料を・たっぷり入れた・(水のように)滴り・落ちるもの(汁物料理)」(「カイ(ン)ガ」のAI音がE音に、NG音がN音に変化して「ケナ」から「ケン」と、「チニ」が「チン」と、「チ」が「ジ」なった)

の転訛と解します。

977げんなり

 落胆して、気力をそがれるさま。がっかり。疲れなどで弱ってしまったさま。がっくり。十分すぎていやになるさま。うんざり。

 この「げんなり」は、

  「(ン)ゲ(ン)ゲ・(ン)ガリ」、NGENGE-NGARI(ngenge=weary,tired,weariness,exhaustion,fat;ngari=annoyance,disturbance,greatness,power)、「たいへん強く・疲れて(消耗して)しまった(または十分すぎてしまった)(げんなり)」(「(ン)ゲ(ン)ゲ」の最初のNG音がG音に、次ぎのNG音がN音に変化して「ゲネ」から「ゲン」と、「(ン)ガリ」のNG音がN音に変化して「ナリ」となった)

の転訛と解します。

978げんのう(玄翁)

 玄翁和尚がこれで下野国那須野原の殺生石を砕いたという伝説に由来する鉄製の槌。石工用と大工用がある。この「げんのう(玄翁)」については、雑楽篇(その二)の1047鋸(のこぎり)の項の「玄翁(げんのう)」を参照してください。

 この「げんのう」は、

  「(ン)ゲ(ン)ゲ・(ン)ゴフ(ン)ゴフ」、NGENGE-NGOHUNGOHU(ngenge=weary,weariness;ngohungohu=feeble,flabby,shrubs)、「(重くて)疲れる・(柄が)しなる(木を使つている槌。道具。玄翁)」(「(ン)ゲ(ン)ゲ」の最初のNG音がG音に、次のNG音がN音に変化して「ゲネ」から「ゲン」と、「(ン)ゴフ(ン)ゴフ」の反復語尾が脱落し、NG音がN音に変化し、H音が脱落して「ノウ」となった)

の転訛と解します。

979けんのん(剣呑)

 危険だと思うさま。また、どうなることかと不安であるさま。危険。

 この「けんのん」は、

  「ケノケノ・ノノホ」、KENOKENO-NONOHO(kenokeno=stinking,offensive;nonoho=remain)、「(嫌な感じ)攻撃されそうな感じが・残っている(危険。剣呑)」(「ケノケノ」の反覆語尾が脱落して「ケノ」から「ケン」と、「ノノホ」のH音が脱落して「ノノ」から「ノン」となった)

の転訛と解します。

980けんまく(剣幕)

 (「険悪(けんあく)」の連声「けんまく」からとする説がある)怒ったすさまじい顔つきやふるまい。激しい態度。

 この「けんまく」は、

  「ケノケノ・マク」、KENOKENO-MAKU(kenokeno=stinking,offensive;maku=for me)、「私に対する・攻撃的な態度(剣幕)」(「ケノケノ」の反覆語尾が脱落して「ケノ」から「ケン」となった)

の転訛と解します。

981けんもほろろ

 (「けん」も「ほろろ」も雉の声、また「ほろろ」は雉の羽音とする説がある)無愛想に人の頼みや相談事を拒絶して、取り憑くしまもないさま。つっけんどんなさま。冷然としたさま。

 この「けんもほろろ」は、

  「ケノケノ・マウ・ホロホロ」、KENOKENO-MAU-HOROHORO(kenokeno=stinking,offensive;mau=carry,bring,fixed,established;horohoro=remove ceremonial restrictions etc. from an article,be shattered)、「攻撃的で・遂に・(人の心を)ずたずたにした(けんもほろろ)」(「ケノケノ」の反覆語尾が脱落して「ケノ」から「ケン」と、「マウ」のAU音がO音に変化して「モ」と、「ホロホロ」の二番目のH音が脱落して「ホロロ」となった)

の転訛と解します。

「コ」

982ご(枯松葉)

 松の枯れた落ち葉。かき集めて燃料とするときに多くいう。

 この「ご」は、

  「(ン)ガウ」、NGAU(bite,gnaw,hurt,attack)、「(一本づつ枯れて)離れて落ちるもの(枯松葉)」(「(ン)ガウ」のNG音がG音に、AU音がO音に変化して「ゴ」となった)

の転訛と解します。

983こい(恋)

 人、土地、植物、季節などを思い慕うこと。めでいつくしむこと。異性に特別の感情を感じて思い慕うこと。恋愛。恋慕。和歌、連歌、俳諧などで恋愛を題材にした作品。また、その部立。愛人。情婦。

 この「こい」は、

  「コヒ」、KOHI(collect,gather,collect the thoughts,plunder)、「いろいろな思い(特に異性に対する特別な感情)が集中してこみ上げてくるもの(恋)」(「コヒ」のH音が脱落して「コイ」となった)

の転訛と解します。

984こい(濃い)

 色が深い。色の感じが強い。特に染色で、紫または紅の色の深いさまをいう。中に溶けているものの割合が高い。濃度が高い。味、匂いなどが強い。生え方、塗り方などが厚く密である。関係が密接である。疑いや可能性などの程度が大きい。

 この「コイ」は、

  「コイ」、KOI(almost,not)、「(殆ど。そのまま。薄められていない)濃い(濃い)」

の転訛と解します。

985こいぐち(鯉口)

 刀剣の鞘の口。刃を呑み入れる所。(鯉の口を開いた形状に似るからという)

 この「こいぐち」は、

  「コイ・クチ」、KOI-KUTI(koi=move about,good,suitable(kokoi=rub in dye);kuti=draw tightly together,contract,pinch)、「(悠々と)泳ぎ回る(魚。鯉)の・いつもは閉まっている口のような(鯉口)」または「染料で染めた(色の付いた魚。鯉の)・いつもは閉まっている口のような(鯉口)」(「クチ」が「グチ」となった)

の転訛と解します。

986こう(恋う)

 人、土地、植物、季節などを思い慕う。めでいつくしむ。異性に特別の感情を感じて思い慕う。恋する。恋慕する。

 この「こう」は、

  「コフ」、KOHU(=kohukohu=chickweed,a kind of moss,curse)、「(或る種の草や苔を燃やしながら唱える呪文によって自分の望むことを実現しょうとする)思い慕う(恋う)」(「コフ」のH音が脱落して「コウ」となった)

の転訛と解します。

987こうがい(笄)

 髪をかき上げるのに用いる細長い道具。男女ともに用いた。後世、女性用髪飾りの一つ。刀の鞘の付属品の一つ。この「こうがい(笄)」については、雑楽篇(その二)の1045櫛(くし)の項の「笄(こうがい)」を参照してください。

 この「こうがい」は、

  「コウ・(ン)ガイ」、KOU-NGAI(kou=knob,stump,protuberance;ngai=tribe,clan)、「(髪の毛を掻き上げて)高くする・のに用いる種類のもの(道具。装身具。笄)」(「(ン)ガイ」のNG音がG音に変化して「ガイ」となった)

の転訛と解します。

988こうごうしい(神々しい)

 神聖である。けだかい。尊く、おごそかである。あやしく、いかめしい。怪異だ。

 この「こうごうしい」は、

  「コウコウ・チヒ」、KOUKOU-TIHI(koukou=anoint,sprinkle;tihi=summit,top,lie in a heap)、「(水を振りかけて)汚れを祓った・最高の(神聖な。神々しい)」(「コウコウ」が「コウゴウ」と、「チヒ」のH音が脱落して「シイ」となった)

の転訛と解します。

989こうじ(麹)

 蒸した米、麦、大豆、ぬかなどに麹かびをつけて繁殖させたもの。酒、甘酒、醤油、味噌などの醸造の主要原料とされる。この「こうじ(麹)」については、雑楽篇(その二)の1011酒(さけ)の項の「糀(こうじ)」を参照してください。

 この「こうじ」は、

   「カウ・チ」、KAU-TI(kau=ancestor;ti=throw,cast,overcome)、「(酒の先祖となる)もとが・混ぜられたもの(麹)」(「カウ」のAU音がOU音に変化して「コウ」と、「チ」が「ジ」となった)

の転訛と解します。

990こうじ(小路)

 狭く細い道。狭い通り。

 この「こうじ」は、

  「コプ・チ」、KOPU-TI(kopu=round sennit,plaited cord;ti=throw,cast)、「(麦わら帽を作る真田紐のような)細くて真っ直ぐでない(道が)・(放り出されて)ある(小路)」(「コプ」のP音がF音を経てH音に変化し、さらに脱落して「コウ」と、「チ」が「ジ」となった)

の転訛と解します。

991こうとうのないし(勾当内侍)

 掌待(ないしのじょう)4人の内首位にある人。主として天皇への奏請、また、勅旨の伝達を司る。太平記中の人物。後醍醐天皇に勾当内侍として仕え、のち、天皇が新田義貞に賜ったという女性。

 この「こうとうのないし」は、

  「コウ・トウトウ・ノ・ナイ・チ」、KOU-TOUTOU-NO-NAI-TI(kou=good;toutou=put articles into a receptacle,offer and withdraw,sprinkle with water;no=of,from,belonging to;nai=nei,neinei=stretched forward,reaching out;ti=throw,cast)、「(朝廷の女官の)先頭に・置かれた・(女官の)一つで・たいへん良好に・業務を処理する者(勾当内侍)」(「トウトウ」の反覆語尾が脱落して「トウ」と、「チ」が「シ」となった)

の転訛と解します。

992こうのもの(香の物)

 古くは味噌漬、後には糠、塩、粕などに漬けた野菜類をいう。漬け物。おこうこ。特に大根漬。たくあん。

 この「こうのもの」は、

  「カウ・ノ・モノ」、KAU-NO-MONO(kau=alone,bare,only,without hindrance;no=of,from,belonging to;mono=plug,caulk,disable by means of incantations(monomono=odorous,odour))、「ただ(漬けただけの(特別な加工処理をしていない))・良い香りが・するもの(香の物)」(「カウ」のAU音がOU音に変化して「コウ」となった)

の転訛と解します。

993こうぶり(冠)

 衣冠束帯装束のとき、頭にかぶるもの。かんむり。男子が成年に達して、初めて冠をつけるその冠。古くは冠の色で位をあらわしたところから、位。位階。など。

 この「こうぶり」は、

  「コウ・プリ」、KOU-PURI(kou=knob,end,protuberance,knob of hair when dressed on the top of the head;puri,pupuri=hold in the hand,keep,detain,sacred)、「(頭の上に)載せる・突出したもの(冠)」(「プリ」が「ブリ」となった)

の転訛と解します。

994こうべ(首、頭)

 くびから上の部分の総称。とくに頭部をいう。あたま。かしら。

 この「こうべ」は、

  「コウ・パエ」、KOU-PAE(kou=knob,end,protuberance;pae=horizen,lie on one side)、「(胴体の)上に前方を向いて・突出しているもの(首。頭)」(「パエ」のAE音がE音に変化して「ペ」から「ベ」となった)

の転訛と解します。

995こうむる(被る、蒙る)

 頭から衣服、帽子などをかぶる。身体や頭を覆う。神仏や目上の人から、ある行為や恩恵などを受ける。傷、災禍、罪など好ましくないものを身に受ける。また、負担を背負い込む。

 この「こうむる」は、

  「コウ・ムル」、KOU-MURU(kou,koukou=kaukau=anoint,sprinkle;muru=wipe,rub,smear,pluck off)、「(神聖な)水を振りかけるように・身体にかける(受ける。蒙る)」

の転訛と解します。

996こうり(行李)

 旅行に携える荷物。転じて、旅。竹または柳などで編んだ物入れ。小型のものは弁当箱にもした。後には、普通衣類を収納するものをいう。この「こうり(行李)」については、雑楽篇(その二)の524やなぎ(柳)の項の「こりやなぎ(杞柳)」を参照してください。

 この「こうり」は、

  「コフリ」、KOHURI(sapling)、「(杞柳の)若木(の枝)で編んだ容器(行李)」(「コフリ」のH音が脱落して「コウリ」となつた)

の転訛と解します。

997こおり(氷)

 水が氷点下の温度で固体化したもの。この「こおり(氷)」については、雑楽篇(その一)の242こおり(氷)の項を参照してください。

 この「こおり」は、

  「カウ・ハウ・リ」、KAU-HAU-RI(kau=alone,only(whakakau=come gradually into view or appear,rise of heavenly bodies);(Hawaii)hau=cool,ice,frost;ri=screen,protect,bind)、「次第に姿を見せる・板(衝立)のような・氷(氷)」(「カウ・ハウ」のAU音がO音に変化して「コ・ホ」となった)

の転訛と解します。

998こおり(郡)

 国の下に属する行政区画の称。町、村、里、郷などを包括する。大宝令以後は「郡」、それ以前は「評」の表記を用いた。

 この「こおり」は、

  「カウハウ・リ」、KAUHAU-RI(kauhau=recite,proclaim,declare aloud;ri=screen,protect,bind)、「(命令を)声高らかに宣言する・砦(役所。その管轄する区域)」(「カウハウ」のAU音がO音に変化して「コホ」となった)

の転訛と解します。

999こおる(凍る)

 水などの液体が低温のため凝結して固体となる。しみる。いてつく。雪や霜などが凝結して氷になる。手足などか寒さや恐怖などで堅くなり、動きが鈍くなったり、動かなくなったりする。この「こおる(凍る)」については、国語篇(その九)の130こほる(凍る)の項を参照してください。

 この「こおる」は、

  「カウ・ハウ・ル」、kau-hau-ru(kau=alone,only(whakakau=come gradually into view or appear);(Hawaii)hau=cool,ice,frost;ru=shake,agitate)、「徐々に・氷に・なってゆく(凍る)」(「カウ・ハウ」のAU音がO音に変化して「コ・ホ」となった。後にその「ホ」のH音が脱落して「オ」となった)

の転訛と解します。

1000ごかし

 名詞や動詞の連用形について、そのこと、またはその物のようなふりをして、他人をだます意を表す。「おためごかし」、「親切ごかし」など。

 この「ごかし」は、

  「(ン)ガウ・カチ」、NGAU-KATI(ngau=bite,hurt,act upon,attack;kati=bite,nip,trap for rats)、「(何かの)ふりをしてまたは口実を設けて(脅し)・(人に)損害を与える(ごかし)」(「(ン)ガウ」のNG音がG音に、AU音がO音に変化して「ゴ」と、「カチ」が「カシ」となった)

の転訛と解します。

1001こがね(黄金)

 きん。黄金。金の貨幣の総称。

 この「こがね」は、

  「コア・(ン)ガ(ン)ゲ」、KOA-NGANGE(koa=indeed,in fact,however,in entreaty,glad,joyful;ngange,ngangengange=pierced,perforated)、「(誰もが切望する)本当の・(通常穴が開けられていることが多い)金属(黄金)」(「コア」の語尾のA音が脱落して「コ」と、「(ン)ガ(ン)ゲ」の最初のNG音がG音に、次のNG音がN音に変化して「ガネ」となった)

の転訛と解します。

1002こがらし(木枯らし)

 秋の末から冬の初めにかけて吹く、強く冷たい風。この「こがらし(木枯らし)」については、雑楽篇(その一)の216こがらし(木枯らし)の項を参照してください。

 この「こがらし」は、

   「カウ・(ン)ガラ・チ」、KAU-NGARA-TI(kau=swim,wade;ngara=snarl;ti=throw,cast,overcome)、「海を渡ってくる・うなり声をあげて・吹き荒れる(風)」(「カウ」のAU音がO音に変化して「コ」と、「(ン)ガラ」のNG音がG音に変化して「ガラ」と、「チ」が「シ」となった)

の転訛と解します。

1003ごき(御器)

 (漢語の「合器」からとする説がある)食物を盛るための蓋付きの器。特に、椀。特に、修行僧や乞食が食物を乞うために持っている椀。

 この「ごき」は、

  「(ン)ゴキ」、NGOKI(creep)、「身をかがめて卑屈に行動する(食物を乞うためのもの)(御器)」(「(ン)ゴキ」のNG音がG音に変化して「ゴキ」となった)

の転訛と解します。

1004ごきげんよう(ご機嫌よう)

 ひさしぶりに出会った時、または別れる時などにいう挨拶の言葉。相手の健康を祝ったり、または、それを祈る気持ちを意味する。

 この「ごきげんよう」は、

  「(ン)ゴ・キ・(ン)ゲ(ン)ゲ・イオ」、NGO-KI-NGENGE-IO(ngo=cry,grunt;ki=full,very,say;ngenge=weary,tired,weariness,exhaustion;io=sinew,muscle,tough,hard,obstinate)、「(驚きの)声を上げて・(言う)聞く・(筋肉)身体は・(疲れていないか)調子は良いかと(ご機嫌よう)」(「(ン)ゴ」のNG音がG音に変化して「ゴ」と、「(ン)ゲ(ン)ゲ」の最初のNG音がG音に、次のNG音がN音に変化して「ゲネ」から「ゲン」と、「イオ」が「ヨ」から「ヨウ」となった)

の転訛と解します。

1005こく

 酒などの、深みのある濃厚なうまみ。また、比喩的に、文章や話などの深みのある趣。

 この「こく」は、

  「コクフ」、KOKUHU(insert,introduce,intrude into a series or company)、「(何かひと味違うものを)添加挿入したもの(こく)」(「コクフ」のH音が脱落して「コク」となった)

の転訛と解します。

1006こく(扱く)

 細長い本体に付いているものを、手でこすったりして無理に離し落とす。また、草木を根の付いたまま引き抜くこともいう。力や技を奮う。打つ。叩く。

 この「こく」は、

  「カウ・クク」、KAU-KUKU(kau=alone,bare,empty,only;kuku=nip,draw together,anything used as pincers or tweezers)、「ただ・挟み付けて引っ張る(扱く)」(「カウ」のAU音がO音に変化して「コ」と、「クク」の反覆語尾が脱落して「ク」となった)

の転訛と解します。

1007こけ(苔)

 コケ植物に属する蘚類(せんるい)、苔類、地衣類およびそれらに似たシダ植物の総称。体表についた垢。など。この「こけ(苔)」については、雑楽篇(その二)の599-13こけ(苔)の項を参照してください。

 この「こけ」は、

   「コケ」、KOKE(move forwards,glide,spread)、「(いつのまにか)広がっていく(植物。こけ)」

の転訛と解します。

1008こけ(虚仮)

 真実ではないこと。また、外面と内心とに相違があること。また、そのさま。思慮、内容などが浅いこと。深みのないこと。また、そのさま。愚かなこと。また、その人やそのさま。この「こけ(虚仮)」については、国語篇(その十一)の033遠島甚句(としまじんく)の項の「こけ」を参照してください。

 この「こけ」は、

   「カウ・ケ」、KAU-KE(kau=alone,bare,empty,only;ke=different,strange,contrariwise)、「ただただ・変わっている(さま。その人間。虚仮。馬鹿)」(「カウ」のAU音がO音に変化して「コ」となった)

の転訛と解します。

1009ごけ(後家)

 夫に死別した女性。また、夫の死後その家を護っている寡婦。未亡人。

 この「ごけ」は、

  「(ン)ガウ・ケ」、NGAU-KE(ngau=wander,go about;ke=different,strange,contrariwise)、「(配偶者を失った、または配偶者を持っていないという、女性として通常の生き方と)変わっている・気ままに生きている人(後家)」(「(ン)ガウ」のNG音がG音に、AU音がO音に変化して「ゴ」となった)

  または「(ン)ガウ・カイ」、NGAU-KAI(ngau=bite,hurt,act upon,attack;kai=fulfil its proper function,have full play)、「(配偶者を失った、または配偶者を持っていないために女性として)本来の生き方が・阻害されている人(後家)」(「(ン)ガウ」のNG音がG音に、AU音がO音に変化して「ゴ」と、「カイ」のAI音がE音に変化して「ケ」となった)

の転訛と解します。

1010こけし(小芥子)

 東北地方の郷土玩具。また、その様式を真似たもの。ろくろびきの木製人形で、円い頭と円筒形の胴からなり、手足はなく女児の姿をかたどる。発生は江戸末期といわれ、木地師によって作られる。この「こけし」については、地名篇(その八)の133こけしの項および雑楽篇(その一)の255こけし(人形)の項を参照してください。

 この「こけし」は、

  「コカイ・チ」、KOKAI-TI(kokai=rear,back;ti=throw,cast)、「(主たる商品である木椀の)後に・置くもの(副業で作った玩具。こけし)」(「コカイ」のAI音がE音に変化して「コケ」と、「チ」が「シ」となった)

の転訛と解します。

1011こけらおとし(柿落とし)

 新築または改築された劇場で行われる初めての興行。新築落成を祝う最初の興行。この「こけら(柿)」については、雑楽篇(その一)の251柿(こけら)葺の項を参照してください。

 この「こけらおとし」は、

   「コケ・ラ・オタ・ウチ」、KOKE-RA-OTA-UTI(koke=move forwards,glide,spread;ra=wed;ota=unripe,refuse,gregs;uti=bite)、「(木片を少しづつ)ずらして・結合させる(屋根葺材の)・滓を・(新築または改築完了の時に、払い除ける)清掃する(のにあわせて行う興行。柿落とし)」(「オタ」と「ウチ」が連結した「オタウチ」のAU音がO音に変化して「オトシ」となった)

の転訛と解します。

1012こけん(沽券)

 売買契約を交わした際に、売主から買主に与える証文。売券。売値。転じて、品位。体面。品格。

 この「こけん」は、

  「コハウ・カイ(ン)ガ」、KOHAU-KAINGA(kohau=speak frequently of what one intends or expects,yearn,regret,be wishful;kainga=field of operation,scope of work)、「日頃(自分がいかに仕事ができるか)大言壮語している(人の)・仕事の能力の(本当の大きさ)範囲または程度(沽券)」(「コハウ」のAU音がO音に変化して「コホ」となり、さらにH音が脱落して「コ」と、「カイ(ン)ガ」のAI音がE音に、NG音がN音に変化して「ケナ」から「ケン」となった)

の転訛と解します。

1013ここのつ(九)

 一の九倍の数。八の次の数。この「ここのつ(九)」については、国語篇(その九)の09ここのつの項を参照してください。

 この「ここのつ」は、

  「コカウ・(ン)ガウ・ツ」、KOKAU-NGAU-TU(kokau=unfinished,not filled out;ngau=bite,hurt,attack;tu=stand,settle)、「終わり(の十)でない・(一つ)欠けている・場所にある(数。九つ)」(「コカウ」のAU音がO音に変化して「ココ」と、「(ン)ガウ」のNG音がN音に、AU音がO音に変化して「ノ」となった)

の転訛と解します。

1014こころ(心)

 人間の理知的、情意的な精神機能を司る器官。また、その働き。「からだ」や「もの」と対立する概念として用いられ、また、比喩的に、いろいろな事物の、人間の心に相当するものにも用いられる。人間の精神活動を総合していう。表面からは分からない本当の気持ち、精神のありのままの状態。本心。先天的、または習慣的に備わっている精神活動の傾向、性格。性分。気立て。など。この「こころ(心)」については、国語篇(その九)の039こころの項を参照してください。

 この「こころ」は、

  「コ・コロ」、KO-KORO(ko=to give emphasis;koro=desire,intend)、「真の・意志(心)」

の転訛と解します。

1015こころざす(志す)

 心の中で、行動の目標、目的などを思い決める。行為、謝意などの気持ちを表すために物などを贈る。死者の霊を弔う。

 この「こころざす」は、

  「コ・コロ・タツ」、KO-KORO-TATU(ko=to give emphasis;koro=desire,intend;tatu=reach the bottom,be at ease,be content,consent,agree)、「真の・意志(心)に・同意(して行動)する(志す)」(「タツ」が「サス」から「ザス」となった)

の転訛と解します。

1016こころみる(試みる)

 試しに行う。また、効果などを実地に試験してみる。特に、治療などをしてみる。試飲、試食する。

 この「こころみる」は、

  「ココ・ロミ・ル」、KOKO-ROMI-RU(koko=soar,fly(whakakoko=soar,move stealthly);romi=squeeze,seize,engulf;ru=shake,agitate,scatter)、「(勇気を)奮って・(びくびくしながら)そっと行動して・その結果どうなるかを(獲得する)確認する(試みる)」

の転訛と解します。

1017こころもとない(心許ない)

 思うことを叶えることができないで心が落ち着かない。気持ちがあせって落ち着かない。確信が持てないで不安である。気がかりだ。頼りにならない。はっきりそれと決めかねるような状態である。はっきりしない。おぼつかない。

 この「こころもとない」は、

  「コ・コロ・モト・ナイ」、KO-KORO-MOTO-NAI(ko=to give emphasis;koro=desire,intend;moto=strike with the fist,box;nai=nei,neinei=stretched forward,reaching out,wagging)、「真の・意志(心)が・殴られ・続けているようだ(気持ちが全く定まらない。心許ない)」

の転訛と解します。

1018ござ(茣蓙)

 藺草の茎で織った敷物。ござむしろ。

 この「ござ」は、

  「(ン)ゴ(ン)ゴ・タ」、NGONGO-TA(ngongo=waste away,sail close to the wind,suck;ta=dash,beat,lay)、「風を受けて・(船を)走らすもの(古くは帆布として茣蓙が使用去れた。茣蓙)」(「(ン)ゴ(ン)ゴ」の反覆語尾が脱落し、NG音がG音に変化して「ゴ」と、「タ」が「サ」から「ザ」となった)

の転訛と解します。

1019ございます

 「ある」の丁寧語。(「ござります」の変化した語とされる)

 この「ございます」は、

  「(ン)ゴ・タイ・マツ」、NGO-TAI-MATU(ngo=cry,grunt;tai=a term of address to males or females,(=taitai)dash,strike,knock,perforn certain ceremonies to remove tapu etc.;matu=ma atu=go,come)、「(叫ぶ)尊敬して申し上げる(ことには)・貴方様が・お出でになりました(ございます)」または「(叫ぶ)尊敬して申し上げる(ことには)・(禁忌)汚れを祓うおまじないを・行いました(ございます)」(「(ン)ゴ」のNG音がG音に変化して「ゴ」と、「タイ」が「サイ」から「ザイ」と、「マツ」が「マス」となった)

の転訛と解します。

1020ござる(御座る)

 @「ある」「いる」の尊敬語。「行く」「来る」の尊敬語。「ある」「いる」の丁寧語。(「ござった」の形で)A普通の状態でなくなる。腐る。だめになる。空腹になる。B恋して夢中になる。

 この「ござる」は、

  @「(ン)ゴ・タ・ル」、NGO-TA-RU(ngo=cry,grunt;ta=dash,beat,lay;ru=shake,agitate,scatter)、「(叫ぶ)尊敬して申し上げる(ことには)・奮って・来られている(御座る)」(「(ン)ゴ」のNG音がG音に変化して「ゴ」と、「タ」が「サ」から「ザ」となった)

  A「(ン)ゴ・タル」、NGO-TARU(ngo=cry,grunt;taru=shake,overcome,painful,acute)、「(叫ぶ)申す(ことには)・(震える)普通の状態でなくなる(御座る)」または「(叫ぶ)申す(ことには)・(圧倒される)腐る、だめになる(御座る)」または「(叫ぶ)申す(ことには)・(痛む)空腹になるなど(御座る)」(「(ン)ゴ」のNG音がG音に変化して「ゴ」と、「タル」が「サル」から「ザル」となった)

  B「(ン)ゴ・タ・アル」、NGO-TA-ARU(ngo=cry,grunt;ta=dash,beat,lay;aru=follow,pursue)、「(叫ぶ)申す(ことには)・(恋する人を)夢中で・追いかける(御座る)」(「(ン)ゴ」のNG音がG音に変化して「ゴ」と、「タ」のA音と「アル」の語頭のA音が連結して「タル」から「ザル」となった)

の転訛と解します。

1021こし(腰)

 人体で、背骨の下部、脊椎と骨盤の連絡する部分。袴や裳などの腰にあたる部分。壁、障子、乗り物、書物などの中程より少し下の部分。また、器物等の中程の部分。山の麓に近い所。など。

 この「こし」は、

  「コ・オホ・チ」、KO-OHO-TI(ko=to,at;oho=spring up,wake up,arise;ti=throw,cast)、「その(腰の)場所の上に・(上体が)上を向いて・置かれている場所(腰)」(「コ」のO音と「オホ」の語頭のO音が連結して「コホ」となり、さらにH音が脱落して「コ」と、「チ」が「シ」となった)

の転訛と解します。

1022こしき(甑)

 昔、米や豆などを蒸すのに用いた器。この「こしき(甑)」については、雑楽篇(その二)の1040釜(かま)の項の「甑(こしき)」を参照してください。

 この「こしき」は、

  「コチ・キ」、KOTI-KI(koti=spurt out,flow;ki=full,very)、「(蒸気を)十分に・噴出する(調理器具。蒸し器)」(「コチ」が「コシ」となった)

の転訛と解します。

1023こじき(乞食)

 他人から金銭や食物などを恵んでもらうこと。また、そのようにして生活すること。また、その人。

 この「こじき」は、

  「コ・チキ」、KO-TIKI(ko=in addressing girl and males;tiki=unsuccessful,unsuccessful person)、「不幸な・人(乞食)」(「チキ」が「ジキ」となった)

の転訛と解します。

1024こじつける

 無理に理由を付けたり、つじつまを合わせたりして押しつける。無理に理由を付けて、筋の通ったようにする。無理矢理に女性とつきあいを持つ。

 この「こじつける」は、

  「コチ・ツ・カイルア」、KOTI-TUKE-RU(koti=spurt out,flow,come into bloom of plants;tu=fight with,energetic;kairua=eat one's word)、「噴出するように・躍起になって・(前言を取り消す)別の理由を強弁する(こじつける)」(「コチ」が「コジ」と、「カイルア」のAI音がE音に変化し、語尾のA音が脱落して「ケル」となった)

の転訛と解します。

1025こしゃく(小癪)

 こざかしいこと。生意気なこと。また、そのさま。ませていること。こましゃくれていること。年頃であること。

 この「こしゃく」は、

  「コチ・アク」、KOTI-AKU(koti=spurt out,flow,come into bloom of plants;aku=delay,take time over anything,scrape out)、「(時が)遅れて・(才能が)開花したような(小癪)」(「コチ・アク」が「コシャク」となった)

の転訛と解します。

1026こしょうがつ(小正月)

 陰暦で、一月一日の大正月に対し、一月一四日から一六日までをいう。この日、繭玉を飾ったり、どんど焼きを行ったりする。

 この「こしようがつ」は、

  「コチ・アウ・(ン)ガ・アツ」、KOTI-AU-NGA-ATU(koti=spurt out,flow,come into bloom of plants;au=firm,intense,certainly;nga=satisfied,breathe,the;atu=to indicate a direction or motion onwards,to indicate reciprocated action(atua=first))、「しっかりと・(噴出する)始まりの・例の(一年の)・(往復運動をする)繰り返す月(正月。小正月)」(「コチ」が「コシ」と、「アウ」のAU音がOU音に変化して「オウ」となり、「こし・オウ」が「コショウ」と、「(ン)ガ」のNG音がG音に変化し、その語尾のA音と「アツ」の語頭のA音が連結して「ガツ」となった)

の転訛と解します。

1027ごしょう(後生)

 (仏語。前生、今生と対応して用いる)死後の生存のこと。死後に住む世界。または、死後生まれ変わること。来世。極楽に生まれること。極楽に生まれて安楽を得ること。極楽往生を祈願してこの世で徳行を積むこと。人に折り入って事を頼むときに用いる語。哀願すること。

 この「ごしょう」は、

  「(ン)ガウ・チオホ」、NGAU-TIOHO(ngau=wander,go about,raise a cry,make a disturbance;tioho=apprehensive)、「(死後のことなどが)心配で・(眠れずに動き回る)しようがない(から、願いを聞いてほしい。後生)」(「(ン)ガウ」のNG音がG音に、AU音がO音に変化して「ゴ」と、「チオホ」のH音が脱落して「チオオ」から「ショウ」となった)

の転訛と解します。

1028こしらえる(拵える)

 なだめすかす。話して納得させる。方便をもって誘う。うまいことをいってその気にさせる。意図するところを満足させるために、方法、技術、工夫などの手段を尽くして完成させる。友人、愛人などを得る。>

 この「こしらえる」は、

  「コチラ・ヘル」、KOTIRA-HERU(kotira=tilt up,come above ground,sprout;heru=comb for the hair,dress with a comb,begin to flow,glide as anything floating in the water)、「()()」(「コチラ」が「コシラ」と、「ヘル」のH音が脱落して「エル」となった)

の転訛と解します。

1029こす(漉す)

 (水、酒、餡、味噌などを)布、砂、髪などの細かい隙間を通して不純な成分を取り除く。濾過する。

 この「こす」は、

  「コフフ・ウツ」、KOHUHU-UTU(kohuhu=peel off,slip;utu=return for anything,satisfaction,reward,reply,make response)、「(泥しょう)固体と液体の混合物から・分離する(漉す)」(「コフフ」の反覆語尾が脱落し、H音が脱落して「コウ」となり、その語尾のU音と「ウツ」の語頭のU音が連結して「コウツ」から「コス」となった)

の転訛と解します。

1030ごす(呉須)

 陶磁器の下絵顔料にする、コバルト化合物を含んだ鉱物。呉須土。

 この「ごす」は、

  「(ン)ゴウ(ン)ゴウ・ツヒ」、NGOUNGOU-TUHI(ngoungou=throughly ripe,well cooked;tuhi=delineate,draw,write,adorn with painting)、「丁寧に調合された・(陶磁器に)絵を描く顔料(呉須)」(「(ン)ゴウ(ン)ゴウ」の反覆語尾が脱落し、NG音がG音に変化して「ゴウ」から「ゴ」と、「ツヒ」のH音が脱落して「ツ」から「ス」となった)

の転訛と解します。

1031こずえ(梢)

 枝の末。幹の先。

 この「こずえ」は、

  「コウ・ツアイ」、KOU-TUAI(kou=knob,end,stump,ptotuberance;tuai=thin,lean)、「枝(または幹)の末端の・細い箇所(梢)」(゜コウ」が「コ」と、「ツアイ」のAI音がE音に変化して「ツエ」から「ズエ」となった)

の転訛と解します。

1032こずむ

 @馬がつまづいて転びかける。馬が倒れる。A一箇所に偏って集まる。ぎっしりつまる。筋肉が凝る。B心が重くなる。気が沈む。

 この「こずむ」は、

  @「コフ・ツム」、KOHU-TUMU(kohu=hollow,concave;tumu=halt suddenly,twitch,start,go against the wind)、「凹みに(足を取られて)・(動きが止まる)つまずく(こずむ)」(「コフ」のH音が脱落して「コ」と、「「ツム」が「ズム」となった)

  A「コフフ・ツ・ムア」、KOHUHU-TU-MUA(kohuhu=spring,well up(of water);tu=stand,settle;mua=of place,the front,the fore part)、「身体の一部(前部、または上部、または一部の筋肉)に・何かが湧いて来て・そこに止まる(凝る)(こずむ)」(「コフフ」のH音が脱落して「コ」と、「「ツ」が「ズ」と、「ムア」の語尾のA音が脱落して「ム」となった)

  B「カウツツ・ム」、KAUTUTU-MU(kaututu=draw in,contract(netting);mu=silent)、「沈黙を・引き寄せる(黙り勝ちになる。心が重くなる)(こずむ)」(「カウツツ」のAU音がO音に変化し、反覆語尾が脱落して「コツ」から「コズ」となった)

の転訛と解します。

1033こする(擦る)

 物と物を押し当てたまま何度も動かす。他の事にかこつけていやみや皮肉をいう。使ってなくす。費やす。

 この「こする」は、

  「コウ・ツ・ル」、KOU-TU-RU(kou,koukou=anoint,sprinkle;tu=fight with,energetic;ru=shake,agitate,scatter)、「奮って・懸命に・(物に聖油を塗るように)なでる(擦る)」(「コウ」が「コ」と、「ツ」が「ス」となった)

の転訛と解します。

1034ごぜ(瞽女)

 盲目の女。鼓を打ったり、唄をうたい、門付けをする盲目の女芸人。

 この「ごぜ」は、

  「(ン)ガウ・タイ」、NGAU-TAI(ngau=wander,go about;tai,taitai=dash,strike,knock,perform certain ceremonies to remove tapu etc.)、「遍歴して・除災のまじないや門付けをする(女。瞽女)」(「(ン)ガウ」のNG音がG音に、AU音がO音に変化して「ゴ」と、「タイ」のAI音がE音に変化して「テ」から「ゼ」となった)

の転訛と解します。

1035こせこせ

 場所が狭くてゆとりのないさま。心にゆとりがなく、態度がおうようでないさま。些末なことにこだわるさま。この「こせこせ」については、国語篇(その一)の046コセコセの項を参照してください。

 この「こせこせ」は、

  「コテ・コテ」、KOTE-KOTE(kote=squeeze out,crush)、「(場所や心などが圧縮された、または絞り取られたなど)心などにゆとりがなく、態度がおうようでない」(「コテ」が「コセ」となった)

の転訛と解します。

1036こぞ(去年)

 @昨年。去年。A昨夜。ゆうべ。(一説に、今夜)。

 この「こぞ」は、

  @「カウハウ・ト」、KAUHAU-TO(kauhau=kauwhau=recite old legends or genealogies,stage or frame for fishes etc.;to=set as the sun,dive)、「たくさんの昔話が語られた・太陽が沈んだ(後(の夜)が多く過ぎたとき)(昨年)」(「カウハウ」のAU音がO音に変化して「コホ」となり、さらにH音が脱落して「コ」と、「ト」が「ゾ」となった)

  A「カウ・ト」、KAU-TO(kau=alone,bare,only;to=set as the sun,dive)、「実に・太陽が沈んだ(その夜(今夜)またはその翌日から見て昨夜)(昨夜または今夜)」(「カウ」のAU音がO音に変化して「コ」と、「ト」が「ゾ」となった)

の転訛と解します。

1037こそこそ

 静かに音のするさま。人に隠れてこっそりと事を行うさま。くすぐるさま。動きの小刻みで素早いさま。この「こそこそ」については、国語篇(その一)の047コソコソの項を参照してください。

 この「こそこそ」は、

  「コト・コト」、KOTO-KOTO(koto=sob,make a low sound)、「すすり泣くように・低い音を立てる」(「コト」が「コソ」となった)

の転訛と解します。

1038こそばい・こそばゆい

 くすぐられるなどして、むずむずした感じが耐え難い。くすぐったい。相応以上の賞賛やもてなしなどをうけたりして恥ずかしい。また、気がもめて落ち着かない。

 この「こそばい」、「こそばゆい」は、

  「カウト・パイ」、KAUTO-PAI(kauto=rub,press,knead;pai=good,excellent,suitable,pleasant)、「(撫でる)くすぐられて・気持ちがいい(こそばい)」(「カウト」のAU音がO音に変化して「コト」から「コソ」と、「パイ」が「バイ」となった)

  「カウト・パイ・フイ」、KAUTO-PAI-HUI(kauto=rub,press,knead;pai=good,excellent,suitable,pleasant;hui=put or add together,come together,double up,assembly)、「(撫でる)くすぐられて・気持ちよさが・二倍である(こそばゆい)()()」(「カウト」のAU音がO音に変化して「コト」から「コソ」と、「パイ」が「バイ」と、「フイ」のH音が脱落して「ウイ」となり、「バイ・ウイ」が「バユイ」となった)

の転訛と解します。

1039こたえる(答える)

 言葉をかけられたのに対してこちらからも言う。返事する。質問に対して意見や答えを言う。問題を解いて結論を出す。ひびく。他からの作用に対し感応する。挨拶する。断る。訴える。

 この「こたえる」は、

  「コ・タヘ・ル」、KO-TAHE-RU(ko=to give emphasis;tahe=abortion,exude(whakatahe=cause to abort,clear of obstructions,lead off water etc. as into a drain);ru=shake,agitate,scatter)、「(問いかけに応じて)実に・奮つて・(自分の考えや意思を)さらけ出す(答える)」(「タヘ」のH音が脱落して「タエ」となった)

  または「コハウ・タヘ・ル」、KOHAU-TAHE-RU(kohau=speak frequently of what one intends or expects,yearn,regret,be wistful;tahe=abortion,exude(whakatahe=cause to abort,clear of obstructions,lead off water etc. as into a drain);ru=shake,agitate,scatter)、「奮って・(自分の)目的や期待を饒舌に述べ・考えていることをさらけ出す(答える)」(「コハウ」のAU音がO音に変化して「コホ」となり、さらにH音が脱落して「コ」と、「タヘ」のH音が脱落して「タエ」となった)

の転訛と解します。

1040ごたごた

 物事が秩序なく混乱しているさま。物事が混乱し、もつれているさま。もめごと。紛糾。この「ごたごた」については、国語篇(その一)の048ゴタゴタの項を参照してください。

 この「ごたごた」は、

  「(ン)ゴ・タ・(ン)ゴ・タ」、NGO-TA-NGO-TA(ngo=cry,grunt;ta=dash,beat,lay)、「(叫び声が・起こる。もめごとが・起こっている)混乱して・いる」(「(ン)ゴ」のNG音がG音に変化して「ゴ」となった)

の転訛と解します。

1041ごたく(御託)

 神仏のお告げ。ご託宣。自分勝手な言い分をさもえらそうに盛んに言いたてること。くどくどとものを言うこと。また、その言葉。

 この「ごたく」は、

  「(ン)ゴ・タク」、NGO-TAKU(ngo=cry,grunt;taku=slow)、「ゆっくりと・(唸る)低い声でえらそうに話す(御託)」(「(ン)ゴ」のNG音がG音に変化して「ゴ」となった)

の転訛と解します。

1042こたつ(炬燵)

 床に炉を設け、上にやぐらを置き、ふとんをかけて暖をとるもの。また、簡便にやぐらの底に居たを張ってこれに火入れを置く置ごたつや、電気ごたつなどもある。古くは「やぐら」を指した。

 この「こたつ」は、

  「カウ・タハツ」、KAU-TAHATU(kau=alone,bare,empty,only;tahatu=upper edge of a seine or of a canoe sail,horizen)、「(引き網や舟の帆布のような)ふとんを水平に掛けて・(中を)空洞にするもの(やぐら。炬燵)」(「カウ」のAU音がO音に変化して「コ」と、「タハツ」のH音が脱落して「タツ」となった)

の転訛と解します。

1043こだま(木霊、木魂、谺)

 @樹木に宿る精霊。山の神。A声や音が山などに反響してかえってくること。また、その声や音。山びこ。

 この「こだま」は、

  @「コ・タマ」、KO-TAMA(ko=to give emphasios;tama=son,man,emotion,strong feeling,in a mystic sense of atua(god))、「実に・(樹木や山の)精霊や神(木霊。木魂)」(「タマ」が「ダマ」となった)

  A「カウ・タハ・マ」、KAU-TAHA-MA(kau=alone,bare,empty,only,as soon as;taha=side,edge,pass on one side,go by;ma=white,clear(mama=light,not heavy,so quick))、「(声や音を出すと)すぐに(その音が帰ってきて)・速やかに・通り過ぎてゆくもの(谺)」(「カウ」のAU音がO音に変化して「コ」と、「タハ」のH音が脱落して「タ」から「ダ」となった)

の転訛と解します。

1044こち(東風)

 東の方から吹いてくる風。特に、春に吹く東の風をいう。この「こち」については、雑楽篇(その一)の217こち(東風)の項を参照してください。

 この「こち」は、

   「コチ」、KOTI(spurt out,flow,come into bloom of plants)、「(草木の)花を咲かせる(風)」

の転訛と解します。

1045ごちそうさま(御馳走様)

 馳走になった者が礼としていう言葉。多くは食事の後の挨拶にいう。男女の仲むつまじい様子を見せつけられたとき、その男女に対して、からかって言う言葉。この「ごちそうさま」については、国語篇(その十四)の075ごちそうさま(ご馳走さま)の項を参照してください。

 この「ごちそうさま」は、

  「(ン)ゴ・チ・タウ・タ・マ」、NGO-TI-TAU-TA-MA(ngo=cry,grunt;ti=throw,cast;tau=come to rest,be suitable,be comely;ta=dash,beat,lay;ma=white,clean)、「(良かった)美味しかったと・感嘆の声を・上げる・清らかに・座す方よ(様。相手への敬称)(ご馳走様)」(「(ン)ゴ」のNG音がG音に変化して「ゴ」と、「タウ」のAU音がOU音に変化して「トウ」から「ソウ」と、「タ」が「サ」となった)

の転訛と解します。

1046こっけい(滑稽)

 言葉が滑らかで、知恵がよくまわること。機知に富んだ言動をすること。転じて、ばかばかしく可笑しい言葉や言い方。おどけ。ざれごと。更に転じて、俳諧のこと。また、滑稽を種とする戯作。いかにもばかばかしいこと。くだらなくみっともない感じを与えるさま。

 この「こっけい」は、

  「カウハウ・ツ・ケヒ」、KAUHAU-TU-KEHI(kauhau=kauwhau=recite old legends or genealogies,stage or frame for fish etc.;tu=fight with,energetic;kehi=defame,speak ill of)、「懸命に・昔話を語ることを・(時代に合わない、時代遅れだ、ばかげているなどと)けなすこと(滑稽)」(「カウハウ」のAU音がO音に変化して「コホ」となり、さらにH音が脱落して「コ」と、「ケヒ」のH音が脱落して「ケイ」となった)

の転訛と解します。

1047ごっさん(御所様)

 「御所様」の変化した語とする説がある。色茶屋の女あるじ。または、亭主。他人の妻をいう。中流の家の主婦とも。

 この「ごっさん」は、

  「(ン)ゴ・ツ・タナ」、NGO-TU-TANA(ngo=cry,grunt;tu=fight with,energetic;tana=his,her,its)、「叫び声をあげて・忙しく立ち回る・彼女(または彼)(御所様)」(「(ン)ゴ」のNG音がG音に変化して「ゴ」と、「ツ」が「ッ」と、「タナ」が「サン」となった)

の転訛と解します。

1048こと(琴)

 日本の弦楽器の総称。古く、琴(きん)、箏(そう)、大和琴(やまとごと)、和琴(わごん)、七弦琴、新羅琴、百済琴などのすべてをいった。また、箏(そう)の通称。

 この「こと」は、

  「コト」、KOTO(sob,make a low sound)、「低い音を奏でるもの(琴)」

の転訛と解します。

1049こと(事)

 人のするわざ、行為。多くの人々のなす行為、世の中に起こる現象など。明確に言えるものを不明確な事態であるかのようにぼかしてさしていうのに用いる。など。

 この「こと」は、

  「コ・ト」、KO-TO(ko=descend,cause to descend;to=drag,haul)、「(人が)引き起こし・また(その結果として)生ずる事態(事)」

の転訛と解します。

1050こと(言)

 話したり、語ったりすること。表現された内容。言語。特に、噂、評判、便り、詩歌、記録など。

 この「こと」は、

  「コト」、KOTO(sob,make a low sound)、「低い声で(一語ずつしっかりと)話されるもの(言)」

の転訛と解します。

1051ごとく(五徳)

 中国古来の学説による万物組成の五元素(木火土金水)をいう。儒教でいう五の徳目(温良恭謙譲)をいう。孫子にみえる兵家・武将の重んずべき五の徳目(智信仁勇厳)。仏語にいう五の徳。など。火鉢や炉の中に釜や鉄瓶、薬罐などをかける道具。三脚または四脚の鉄、陶器聖の輪。この「ごとく(五徳)」については、雑楽篇(その二)の1038炉(ろ)の項の「五徳(ごとく)」を参照してください。

 この「ごとく」は、

   「(ン)ゴト・クフ」、NGOTO-KUHU(ngoto=be deep,be intense,penetrate,firmly;kuhu=insert,conceal,cooking shed)、「(炉、囲炉裏の灰の中に)しっかりと・据えるもの(五徳)」(「(ン)ゴト」のNG音がG音に変化して「ゴト」と、「クフ」のH音が脱落して「ク」となった)

の転訛と解します。

1052ことごとく(悉く)

 多くの事物が例外なく一致するさま。すべて。残らず。非常に。たいそう。

 この「ことごとく」は、

  「コトコト・ク」、KOTOKOTO-KU(kotokoto=the pole along the after edge of a sail of a canoe;ku,kuku=firm,stiff,thickend)、「(カヌーの帆の)下辺の横木は・しっかりと(帆柱に)固定する(悉く)」(「コトコト」が「コトゴト」となった)

の転訛と解します。

1053ことさら(殊更)

 意図的に或る動作をすること。わざとすること。格別であること。

 この「ことさら」は、

  「コト・タラ」、KOTO-TARA(koto=loathing,averse;tara=wane of the moon,disturb,ruffle,affect by incantation)、「(人を)嫌って・妨害する(殊更)」(「タラ」が「サラ」となった)

の転訛と解します。

1054ことじ(琴柱)

 琴や和琴の胴の上に立てて弦を支え、その位置を変えて音調の高低を調節し、また発する音を共鳴胴に伝えるための具。

 この「ことじ」は、

  「コト・チ」、KOTO-TI(koto=sob,make a low sound;ti=throw,cast)、「低い音を奏でるもの(琴)の・(上に弦を支えるために)置かれるもの(琴柱)」(「チ」が「ジ」となった)

の転訛と解します。

1055ことば(言葉)

 話したり語ったり、また、(文字を有する社会においては)書いたりする表現行為。ものの言い方。話しぶり。例えて言ったこと。表現された内容。種類としての言語。国語。語彙。など。

 この「ことば」は、

  「コト・ハ」、KOTO-HA(koto=sob,make a low sound;ha=breath,sound tone of voice,tenor of a speech)、「低い声で(一語ずつしっかりと)話されるものを・(調子や意味などを)包括した全体(言葉)」(「ハ」が「バ」となった)

の転訛と解します。

1056ことぶき(寿)

 慶事をことばで祝うこと。また、そのことば。ことほぎ。いのち。よわい。また、いのちの長いこと。めでたいこと。祝い。祝いの品。

 この「ことぶき」は、

  「コ・トプ・キ」、KO-TOPU-KI(ko=to give emphasis;topu=pair,couple,assembled in a body(totopu=through,unsparing,of good size,undiminished);ki=full,very)、「実に・たいへん・長期間に亘って夫婦の関係を全うしたこと(寿)」(「トプ」が「トブ」となった)

の転訛と解します。

1057ことわざ(諺)

 昔から世間に広く言いならわされてきた言葉で、教訓や風刺などを含んだ短句。

 この「ことわざ」は、

  「コト・ワタ(ン)ガ」、KOTO-WATANGA(koto=sob,make a low sound;watanga=object of desire)、「低い声で(一語ずつしっかりと)話される・(その中に希望)教訓があるもの(諺)」(「ワタ(ン)ガ」の名詞形語尾のNGA音が脱落して「ワタ」から「ワザ」となった)

の転訛と解します。

1058ことわる(断る)

 事の是非、優劣などを言いわける。判断する。理非を判断して述べる。道理を説く。事の内容を理解する。理由、事情を説明する。弁明する。詫びる。相手の申し出などを辞退したり、拒否したりする。関係を絶つ。解雇する。

 この「ことわる」は、

  「コト・ワル」、KOTO-WARU(koto=sob,make a low sound;waru=scrape,pare,shave,cut the hair)、「低い声で(一語ずつしっかりと)話す・(こすってはがす、綺麗にする)理非曲直などを明らかにし、または懸案を白紙に戻す(拒否するなど)(断る)」

の転訛と解します。

1059こな(粉)

 砕けて細かくなったもの。砕いて細かくしたもの。米や麦、特に小麦をひいて細かくしたもの。この「こな(粉)」については、雑楽篇(その二)の543むぎ(麦)の項の「こな(粉)」を参照してください。

 この「こな」は、

  「コ(ン)ガコ(ン)ガ」、KONGAKONGA(crumbled into fragment,fragment)、「(穀粒を砕いた)粉末(粉)」(NG音がN音に変化し、反復語尾が脱落して「コナ」となった)

の転訛と解します。

1060こなから(小半、二合半)

 半分の半分。四分の一。特に、一升の四分の一。二合半。

 この「こなから」は、

  「カウ(ン)ガ・カ・アラ」、KAUNGA-KA-ARA(kaunga=hermit crab,half-burnt stick,faggot;ka=take fire,be lighted,burn;ara=and then)、「半分燃えた木棒が・さらに・(また半分)燃えたような(小半。二合半)」(「カウ(ン)ガ」のAU音がO音に、NG音がN音に変化して「コナ」と、「カ」のA音と「アラ」の語頭のA音が連結して「カラ」となった)

の転訛と解します。

1061こなす

 @細かくする。粉砕する。土を掘り起こして砕き細かくする。土などを耕しならす。稲、麦、豆などを穂から落として粒にする。脱穀する。食物を消化する。

 A思いのままに自由に扱う。与えられた仕事、問題をうまく処理する。思うままに処分する。見下す。軽蔑する。いじめる。苦しめる。

 この「こなす」は、

  @「コ(ン)ガコ(ン)ガ・ツ」、KONGAKONGA-TU(kongakonga=crumbled into fragment,fragment;tu=fight with,energetic)、「懸命に・(穀粒を砕いて)粉末にする(こなす)」(「コ(ン)ガコ(ン)ガ」のNG音がN音に変化し、反復語尾が脱落して「コナ」と、「ツ」が「ス」となった)

  A「コ・ナツ」、KO-NATU(ko=to give emphasis;natu=scratch,stir up,mix,tear out,show ill feelings,angry)、「実に・(表面をひっかく程度で)そつなく処理する(こなす)」(「ツ」が「ス」となった)

の転訛と解します。

1062こねり(木練)

 木に生ったまま熟して甘くなった柿。木練柿の略。

 この「こねり」は、

  「コ(ン)ゲ(ン)ゲ・リ」、KONGENGE-RI(kongenge=sinking,exhausted;ri=screen,protect,bind)、「木に付着したまま・(衰えた)熟したもの(木練)」(「コ(ン)ゲ(ン)ゲ」のNG音がN音に変化し、反覆語尾が脱落して「コネ」となった)

の転訛と解します。

1063こねる(捏ねる)

 手ゃ棒状の道具を使って粉や土などをかきまぜる。あるいはそれに水を加えるなどして練り混ぜて均質にする。いろいろと試みてみる。念をいれてあれこれしたり、考えや言葉などをひねりまわしたりする。無理なことをいって人を困らせる。

 この「こねる」は、

  「コ(ン)ゲヘ・ル」、KONGEHE-RU(kongehe=feeble,without strength;ru=shake,agitate,scatter)、「(震わせる)揺すり混ぜて・柔軟なものにする(捏ねる)」(「コ(ン)ゲヘ」のNG音がN音に変化し、H音が脱落して「コネ」となった)

の転訛と解します。

1064ごねる

 死ぬ。不平を言う。すねる。また相手の要請などに対し、なかなか承服せず、あれこれ注文を出してねばる。

 この「ごねる」は、

  「(ン)ゴ・ネイ・ル」、NGO-NEI-RU(ngo=cry,grunt;nei,neinei=stretched forward,reaching out,wagging,vacillating,bobbing up and down;ru=shake,agitate,scatter)、「頂点に達するほど・不平をいう(または(死を)嘆く)(ごねる)」(「(ン)ゴ」のNG音がG音に変化して「ゴ」と、「ネイ」が「ネ」となった)

の転訛と解します。

1065このかみ(長男。氏の長者)

 第一子。長男。総領。兄弟姉妹のうち兄または姉。年上。年長者。氏の長者。うじのかみ。かしら。首魁。兄同様の人。義理の兄。

 この「このかみ」は、

  「コナウ・カミ」、KONAU-KAMI(konau=yearn for,desire;kami=eat)、「人を(食べる)支配する・(権力を)保持したいと常に考えている者(長男。氏の長者)」(「コナウ」のAU音がO音に変化して「コノ」となった)

の転訛と解します。

1066このむ(好む)

 他とくらべて特にそれを好きになる。趣味的なものをたしなむ。風流が現れるように趣向を凝らす。得意とする。特にそれを選び望む。

 この「このむ」は、

  「コナウ・ム」、KONAU-MU(konau=yearn for,desire;mu=murmur at,silent)、「静かに・(あるものを)切望する(好む)」(「コナウ」のAU音がO音に変化して「コノ」となった)

の転訛と解します。

1067このわた(海鼠腸)

 なまこの腸の塩辛。この「このわた(海鼠腸)」については、雑楽篇(その二)の744なまこ(海鼠)の項の「コノワタ」を参照してください。

 この「このわた」は、

  「コナウ・ワタ」、KONAU-WHATA(konau=yearn for,desire;whata=elevate,hang,be laid,stand out)、「(美味として)特に珍重される・(外へ)引き出されたもの(腸。その加工品)」(「コナウ」のAU音がO音に変化して「コノ」となった)

の転訛と解します。

1068こはるびより(小春日和)

 冬の初めごろの、暖かく穏やかな気候。陰暦十月ごろの春のような天気。

 この「こはるびより」は、

  「コ・パルヒ・オリ」、KO-PARUHI-ORI(ko=to give emphasis;paruhi=beautiful,fine,calm,as weather,perfect;ori=cause to wave to and fro,sway,move about)、「たいへん・素晴らしく良い・気候(小春日和)」(「パルヒ」のP音がF音を経てH音に変化して「ハルヒ」から「ハルビ」と、「ハルビ・オリ」が「ハルビヨリ」となった)

の転訛と解します。

1069こびる(媚びる)

 他人に気に入られるような態度をとる。へつらう。特に、女性が男性の気を惹こうとして艶めかしく振るまうこと。

 この「こびる」は、

  「コピ・ル」、KOPI-RU(kopi=weak,flaccid,timid,immature;ru=shake,agitate,scatter)、「奮って・(弱い、なよなよとした、臆病ななどの)女性らしい振る舞いをする(媚びる)」(「コピ」が「コビ」となった)

の転訛と解します。

1070こぶ(瘤)

 病気のため、筋肉がこり固まって皮膚の一部がうず高くなったもの。打撲によつて頭などにできる皮膚の隆起の俗称。樹木や物などの表面にうず高く固まったもの。ひも、縄などの結び目。邪魔になるもの。身についた厄介なもの。特に養育しなければならない子供なと。

 この「こぶ」は、

  「コプ」、KOPU(full,filled up,blistered,bent,warped)、「(中が詰まつて)膨らんでいるもの(瘤)」(「コプ」が「コブ」となった)

の転訛と解します。

1071ごへいかつぎ(御幣担ぎ)

 御幣を担ぎ持って行く人。(御幣をかついで不吉なものを祓う意から)縁起や迷信を極度に気にすること。また、その人。この「御幣(ごへい)」については、雑楽篇(その一)の122御幣(ごへい)の項を参照してください。

 この「ごへいかつぎ」は、

  「(ン)ガウ・ヘイ・カハ・ツ(ン)ギ」、NGAU-HEI-KAHA-TUNGI(ngau=bite,act upon,affect,raise a cry;hei=tie round the neck;kaha=strong,strength,persistency;tungi=set a light to,kindle,burn)、「(紙垂を棒の)先に結びつけて・呪文を唱えるもの(呪力を籠めるもの。御幣)に・長時間・灯明をあげる(無事息災を祈る)(御幣担ぎ)」(「(ン)ガウ」のNG音がG音に、AU音がO音に変化して「ゴ」と、「カハ」のH音が脱落して「カ」と、「ツ(ン)ギ」のNG音がG音に変化して「ツギ」となった)

の転訛と解します。

1072こぼつ(毀つ)

 とりこわす。破壊する。そりとる。削りとる。

 この「こぼつ」は、

  「カウ・パウ・ツ」、KAU-PAU-TU(kau=alone,bare,empty,only,as soon as;pau=consumed,exhausted,denoting the complete or exhaustive character of any action;tu=fight with,energetic)、「懸命に・(何もかも)空(から)にするまで・破壊する(毀つ)」(「カウ」のAU音がO音に変化して「コ」と、「パウ」のAU音がO音に変化して「ポ」から「ボ」と、「ツ」が「ス」となった)

の転訛と解します。

1073こま(独楽)

 子供の玩具の一つ。木や鉄などで円形に作り、中心にある軸を指で捻ったり、紐を巻き付けたりして投げ回してあそぶもの。

 この「こま」は、

  「カウ・マ」、KAU-MA(kau=alone,bare,empty,only,as soon as,to no purpose;ma,mama=light,not heavy,unencumbered,so quick)、「ひたすら・軽やかに回転するもの(独楽)」(「カウ」のAU音がO音に変化して「コ」となった)

の転訛と解します。

1074こま(駒)

 子馬。小さい馬。牡馬を指すこともある。転じて、馬の総称。弦楽器の弦と胴の間にはさむもの。物の間に挟み入れる小型の木片。将棋で盤上にならべて動かす五角形の木片。転じて、自分が自由自在に動かせる人やもの。など。

 この「こま」は、前出1073こま(独楽)と同語源で、

  「カウ・マ」、KAU-MA(kau=alone,bare,empty,only,as soon as,to no purpose;ma,mama=light,not heavy,unencumbered,so quick)、「ひたすら・軽やかに動き回るもの(子馬。小さい馬。弦楽器の駒。将棋の駒。など)」(「カウ」のAU音がO音に変化して「コ」となった)

の転訛と解します。

1075こまいぬ(狛犬)

 昔、高麗から伝来したといわれる獅子に似た獣の像。木、石、金属などでつくり、玉座の御帳、神社の社頭や社殿の前などに向かい合わせに阿吽の一対を置き、威厳を添え、また魔除けとした。もとは宮中の門扉、几帳、屏風などの動揺するのを止めるための鎮子(ちんす)としてもちいたもの。また、いつも二人連れで行動するひと。高麗楽の曲の名。

 この「こまいぬ」は、

   「コ・マ・イ・ヌイ」、KO-MA-I-NUI(ko=to give emphasis;ma=white,clean,freed from tapu;i=ferment,be stirred;nui=large,many)、「実に・(禁忌を受けない)神域内を自由に活動して災難や汚穢を防除する・たくさんの(子犬が)・湧いて出る(ように産まれる動物。犬)(狛犬)」(「ヌイ」の語尾のI音が脱落して「ヌ」となった)

の転訛と解します。

1076こまかい(細かい)

 大きさ、量などが非常に小さい。また、線などがたいへん細い。微細である。微小である。繊細で美しい。きめ細やかである。(金額が)小さい。小額である。けちである。みみっちい。物事の価値が小さい。綿密である。ねんごろである。以後で対局している両者の地の目数が近接している。

 この「こまかい」は、

  「コ・マハケ(マハカイ)」、KO-MAHAKE(ko=to give emphasis;mahakai→mahake=small)、「非常に・小さい(細かい)」(「マハケ」はもと「マハカイ」でH音が脱落して「マカイ」となり、H音を残してAI音がE音に変化して「マハケ」となった)

の転訛と解します。

1077ごまかす(誤魔化す)

 だまして、目先や表面を取り繕う。欺き偽る。人目を欺いて不正を行う。人を欺して金品を盗み取る。

 この「ごまかす」は、

  「(ン)ガウ・マカカ・ツ」、NGAU-MAKAKA-TU(ngau=bite,hurt,act upon,attack;makaka=crooked,bent;tu=fight with,energetic)、「懸命に・(曲がった)間違ったことを・しでかす(誤魔化す)」(「(ン)ガウ」のNG音がG音に、AU音がO音に変化して「ゴ」と、「マカカ」の反覆語尾が脱落して「マカ」と、「ツ」が「ス」となった)

の転訛と解します。

1078ごますり(胡麻擂り)

 その時の都合で、どちらにも誰にでも迎合すること。また、その人。告げ口をすること。また、その人。この「ごますり」については、国語篇(その十四)の037おべっかの項の「ゴマスリ」を参照してください。

 この「ごますり」は、

  「(ン)ガウ・マハ・ツリ」、NGAU-MAHA-TURI(ngau=bite,hurt,act upon,attack;maha=many,abundant;turi=deaf,obstinate(whakaturi=love token,keepsake,propitiate))、「(人の)機嫌をとることを・何回となく・行う(胡麻擂り)」(「(ン)ガウ」のNG音がG音に、AU音がO音に変化して「ゴ」と、「マハ」のH音が脱落して「マ」と、「ツリ」が「スリ」となった)

の転訛と解します。

1079こまたがきれあがる(小股が切れ上がる)

 主として女性の、すらりとして粋なさま。きりりとして小粋な婦人の容姿の形容。

 この「こまたがきれあがる」は、

  「コ・マタ・(ン)ガキ・レア・(ン)ガル」、KO-MATA-NGAKI-REA-NGARU(ko=to give emphasis;mata=face,eye;ngaki=clear off weeds or brushwood,cultivate;rea=spring up,grow,multiply;ngaru=wave of the sea,corrugation)、「あの・顔の・肌は剥いたように綺麗で・若々しく・彫りが深い(または胸がほどよく膨らんでいる)(小股が切れ上がる)」(「(ン)ガキ」のNG音がG音に変化して「ガキ」と、「(ン)ガル」のNG音がG音に変化して「ガル」となった)

の転訛と解します。

1080こまねく(拱く)

 (「こまぬく(拱く)」の転とされる)腕を組む。腕組みをす。何もしないで見ている。手出しせずに傍観する。

 この「こまねく」は、

  「コマエ・ネクネク」、KOMAE-NEKUNEKU(komae=shrunk,blighted,withered;nekuneku=decline,as the sun)、「(気力が)衰えて・萎縮する(傍観する)」(「コマエ」の語尾のE音が脱落して「コマ」と、「ネクネク」の反覆語尾が脱落して「ネク」となった)

の転訛と解します。

1081ごまのはい(胡麻の灰)

 密教で、護摩を修する時に焚く護摩木などの灰。(高野聖の扮装をして、弘法大師の修した護摩の灰と称して押し売りを行った者の呼び名からという)江戸時代、人を欺して金品を取る坊主。転じて、旅人を装い、旅客の道連れとなつて盗みを働いた者。胡麻の蝿とも。

 この「ごまのはい」は、

  「(ン)ガウ・マノ・パイ」、NGAU-MANO-PAI(ngau=bite,hurt,act upon,attack;mano=thousand,indefinitely large number;pai=good,excellent,be willing,assent)、「数え切れないほど・(人に損害を与える)金品を盗むことを・意図している者(胡麻の灰)」(「(ン)ガウ」のNG音がG音に、AU音がO音に変化して「ゴ」と、「パイ」のP音がF音を経てH音に変化して「ハイ」となった)

の転訛と解します。

1082こまもの(小間物)

 細かいもの。ごく小さなもの。紅や白粉、髪飾りなど婦人の化粧用品や楊枝、歯ブラシなど日用の細々した品物。

 この「こまもの」は、

  「コママ・モノア」、KOMAMA-MONOA(komama=soft,light i weight;monoa=admire,desire)、「(小さくて)軽い・(人が)欲しがる物(小間物)」(「コママ」の反覆語尾が脱落して「コマ」と、「モノア」の語尾のA音が脱落して「モノ」となった)

の転訛と解します。

1083こまやか(細やか)

 こまごまとしているさま。思い遣りや感情を込めたさま。こまごまと詳しいさま。緻密なさま。細かなところまでよく手が届いて優れているさま。精巧なさま。繊細で上品なさま。色の濃いさま。濃密なさま。草木や毛髪が密生しているさま。土壌がよく肥えているさま。

 この「こまやか」は、

  「コマイ・アカ」、KOMAI-AKA(komai=rejoice;aka=yearning,affection)、「(人を)喜ばせようと・気持ちを込める(細やか)」(「コマイ・アカ」が「コマヤカ」となった)

の転訛と解します。

1084こまる(困る)

 どうしてよいか分からなくて苦しむ。物がなくて苦しむ。被害を受ける。手に負えない状態になる。

 この「こまる」は、

  「コマ・アル」、KOMA-ARU(koma=pale,whitish;aru=follow,pursue)、「顔面が蒼白となる・(状況に)追われる(困る)」(「コマ」の語尾のA音と「アル」の語頭のA音が連結して「コマル」となった)

の転訛と解します。

1085ごみ(塵)

 @水の中に浮遊したり、沈殿したりしている泥。A泥や土埃。その場所を汚している、役に立たない、汚いもの。ちり。あくた。かす。くず。役に立たず、価値のない、または取るに足りない人や物を比喩的にいう。

 この「ごみ」は、

  @「(ン)ガウ・ミミ」、NGAU-MIMI(ngau=wander,go about;mimi=make water,urine,stream)、「(大地が放つ尿である川)水の(中に)・浮遊するもの(泥。塵)」(「(ン)ガウ」のNG音がG音に、AU音がO音に変化して「ゴ」と、「ミミ」の反覆語尾が脱落して「ミ」となった)

  A「(ン)ゴ(ン)ゴ・ミヒ」、NGONGO-MIHI(ngongo=waste away,become thin,pine;mihi=sigh for,greet,acknowledge an obligation,express discomfort)、「不要として捨てられた・(人から)嫌われるもの(塵)」(「(ン)ゴ(ン)ゴ」のNG音がG音に変化し、反覆語尾が脱落して「ゴ」と、「ミヒ」のH音が脱落して「ミ」となった)

の転訛と解します。

1086こむそう(虚無僧)

 禅宗の一派の普化宗の僧。尺八を吹き喜捨を請いながら諸国を行脚修行した有髪の僧。

 この「こむそう」は、

  「コムフ・トウ」、KOMUHU-TOU(komuhu=whisper,murmur;tou=anus,posteriors,lower end of anything)、「尺八を吹きながら行脚する・最下層の僧(虚無僧)」(「コムフ」のH音が脱落して「コム」と、「トウ」が「ソウ」となった)

の転訛と解します。

1087こむらがえり(腓返り)

 激しい痛みを伴う局所性の痙攣。もっとも多く見られるのがふくらはぎの腓腹筋の痙攣で、一般にはこれを指す。冷たい水に急に入った時などに起こすことが多く、軽く摩擦するか、筋肉を温めて治療する方法がとられる。

 この「こむらがえり」は、

  「コムルア・(ン)ガエレ」、KOMURUA-NGAERE(komurua=komuru,komuri=rub off,make supple by rubbing(komuri=backwards);ngaere=quake,oscillateroll as the sea)、「(筋肉の)痙攣を・摩擦することで治療するもの(腓返り)」(「コムル」の語尾にA音が付加して動名詞化した「コムルア」が「コムラ」と、「(ン)ガエレ」のNG音がG音に、語尾のE音がI音に変化して「ガエリ」となった)

  または「コムラ・(ン)ガエレ」、KOMURA-NGAERE(komura=burn dry leaves over mussels etc. in order to open them;ngaere=quake,oscillateroll as the sea)、「(筋肉の)痙攣を・(筋肉の上で枯葉を燃やすなどして)暖めて治療するもの(腓返り)」(「(ン)ガエレ」のNG音がG音に、語尾のE音がI音に変化して「ガエリ」となった)

の転訛と解します。

1088こめかみ

 (「米噛み」の意とされる)耳の上、髪の生え際の部分で、物を噛むと動くところ。

 この「こめかみ」は、

  「コメ・カミ」、KOME-KAMI(kome=move the jaw as in eating,close the mouth or lips,take food;kami=eat)、「(食物を)食べると・顎が動くところ(こめかみ)」

の転訛と解します。

1089ごめん(ご免)

 @免許することをその動作主を敬っていう。容赦、赦免することをその動作主を敬っていう。A免官、免職することをその動作主を敬っていう。拒否する気持ちを表す語。B他家を訪問したとき、また、辞去するときにいう挨拶の語。この他家を訪問したときの「ごめん(ご免)」については、国語篇(その十四)の077ごめんください(ご免下さい)の項を参照してください。C謝罪、ことわりなどをいうときに発する語。

 この「ごめん」は、

  @、C「(ン)ゴ・マイ(ン)ゴ」、NGO-MAINGO(ngo=cry,grunt;maingo=yearning(koingo=yearn,fret,sorrow,grieve))、「(あることを)望む(容認する、容赦する、または非を悔いる)ことを・低い声であらたまって言う(ご免)」(「(ン)ゴ」のNG音がG音に変化して「ゴ」と、「マイ(ン)ゴ」のAI音がE音に、NG音がN音に変化して「メノ」から「ネン」となった)

  A「(ン)ゴ・メネ」、NGO-MENE(ngo=cry,grunt;mene=show wrinkled,comtort the face)、「顔をしかめて・嘆声を上げる」(「(ン)ゴ」のNG音がG音に変化して「ゴ」と、「メネ」が「メン」となった)

  B「(ン)ゴ・メネ」、NGO-MENE(ngo=cry,grunt;mene=be assembled,be completely recited(whakamene=assemble,call together))、「(叫ぶ)相手の名を呼び・(自分が誰であるかー自分の親(または子)の名を)付け加えて述べる(ご免)」(「(ン)ゴ」のNG音がG音に変化して「ゴ」と、「メネ」が「メン」となった)

の転訛と解します。

1090こもる(籠もる)

 中に入って出ないでいる。家や部屋などに閉じこもる。人目につかないように入って隠れる。神社、寺院などに泊まって祈念する。参籠する。籠城する。物野中に含まれて、ある。期待などが、中にいっぱい満ちる。など。

 この「こもる」は、

  「コモ・ル」、KOMO-RU(komo=thrust in,put in,insert;ru=shake,agitate,scatter)、「奮って・中に入る(籠もる)」

の転訛と解します。

1091こやし(肥料)

 肥料。身体に与える栄養分。あるものの成長の糧となるもの。

 この「こやし」は、

  「コイコイ・アチ」、KOIKOI-ATI(koikoi=somewhat sharp,pricky(whakakoikoi=incite,inflame);ati=offspring,descendant,clan)、「(草木の生育を)刺激して盛んにする・部類のもの(肥料)」(「コイコイ」の反覆語尾が脱落した「コイ」の語尾のI音と「アチ」の語頭のA音が連結して「コヤチ」から「コヤシ」となった)

の転訛と解します。

1092こよい(今宵)

 今夜。今晩。夜が明けたのち、昨夜のことをいう。昨晩。

 この「こよい」は、

  「コイ・オイ」、KOI-OI(koi=whilst,lest;oi=shudder,move continuously,agitate)、「(今この)時間が過ぎて行く・その時の間(今宵)」(「コイ」の語尾のI音と「オイ」の語頭のO音が連結して「コヨイ」となった)

の転訛と解します。

1093こよなし

 他とくらべて違いが甚だしい。格段の差がある。

 この「こよなし」は、

  「コイオ・ナチ」、KOIO-NATI(koio=weary,stiff,with over-exertion;nati=pinch or contract,as by means of a ligature etc.,restrain,stifle)、「支障があって・(過労で疲れ果てた)思うような成果が上がらなかった(こよなし)」(「コイオ」が「コヨ」と、「ナチ」が「ナシ」となった)

の転訛と解します。

1094こよみ(暦)

 時の流れを、一日を単位として年・月・週などによって区切り、数えるようにした体系。また、それを記載したもの。

 この「こよみ」は、

  「コ・イオ・ミヒ」、KO-IO-MIHI(ko=to give emphasis;io=line,column;mihi-sigh for,greet,admire,respect)、「実に・驚嘆する・列表(暦)」(「イオ」が「ヨ」と、「ミヒ」のH音が脱落して「ミ」となった)

の転訛と解します。

1095こより(紙縒)

 (中古から中世にかけては「かみひねり」、中世後期には「かみより」と呼ばれ、これが音便化して「かうより」から「こより」となったとする説がある)細く切った和紙をよって、糸や紐のようにしたもの。

 この「こより」は、

  「コイヒ・オリ」、KOIHI-ORI(koihi=split;ori=cause to wave to and fro,sway,move,quiver)、「縦に裂いた(和紙を)・(傾けて動かす)縒ったもの(紙縒り)」(「コイヒ」のH音が脱落して「コイ」となり、「コイ・オリ」が「コヨリ」となった)

の転訛と解します。

1096こり(垢離)

 神仏に祈願するとき、冷水を浴びて身体の汚れを除き、身心を清浄にすること。

 この「こり」は、

  「カウ・オリ」、KAU-ORI(kau=alone,bare,empty,only,as soon as,to no purpose;ori=cause to wave to and fro,sway,move,quiver)、「ひたすら・(身体を震わせて)清浄にする行為(垢離)」(「カウ」のAU音がO音に変化して「コ」となったそのO音が「オリ」の語頭のO音と連結して「コリ」となった)

の転訛と解します。

1097ごりおし(ごり押し)

 無理矢理に事を行うこと。物事を強引に推し進めること。無理押し。

 この「ごりおし」は、

  「(ン)ガウ・オリ・オチ」、NGAU-ORI-OTI(ngau=bite,hurt,act upon,attack;ori=cause to wave to and fro,sway,move,quiver;oti=finished)、「力で襲い・動かして・(事柄を)終わらせる行為(ごり押し)」(「ガウ」のNG音がG音に、AU音がO音に変化して「ゴ」となったそのO音が「オリ」の語頭のO音と連結して「ゴリ」と、「オチ」が「オシ」となった)

の転訛と解します。

1098ごりょんさん(御寮人様)

 御寮人様の変化した語。他人の妻または娘の尊敬語。この「ごりょんさん」については、国語篇(その十六)の216よめ(嫁)の項の「ゴリョンサン」を参照してください。

 この「ごりょんさん」は、

  「(ン)ゴリ・オ(ン)ガ・タナ」、NGORI-ONGA-TANA(ngori=weak,listless;onga=decoy,lure birds;tana=his,her,its)、「(弱々しい)たおやかで・(人を)強く惹きつける・人(御寮人様)」(「(ン)ゴリ」のNG音がG音に変化して「ゴリ」と、「オ(ン)ガ」のNG音がN音に変化して「オナ」となり、「ゴリ・オナ」が「ゴリョン」と、「タナ」が「サン」となった)

の転訛と解します。

1099ごろ

 野球で地面を転がってゆく打球。この「ごろ」については、国語篇(その十八)の297ゴロの項を参照してください。

 この「ごろ」は、

  「(ン)ガウ・ラウ」、NGAU-RAU(ngau=wander,go about;rau=catch as in a net,gather into a basket etc.,embarrassed)、「転がってゆく・(網)ミットで捕るべき打球(ごろ)」(「(ン)ガウ」のNG音がG音に、AU音がO音に変化して「ゴ」と、「ラウ」のAU音がO音に変化して「ロ」となった)

の転訛と解します。

1100ころがき(枯露柿)

 干し柿の小さく円いもの。小さい渋柿の皮を剥き、縄に下げて天日で干し、表面に白い粉をふき出させたもの。この「ころがき(柿)」については、国語篇(その十八)の575かき(柿)の項の「ころ」、「かき(柿)」を参照してください。

 この「ころがき」は、

  「コロ・カ・ハキ」、KORO-KA-KI(koro=old man,desire,intend;ka=take fire,be lighted,burn;haki=expressing disgust,reviling)、「(老人の頭髪のように)白い(粉をふいた)・(真っ赤に燃える火のように)赤い色をした・(食べると渋くて)嫌になる(果実。柿。その加工品)」(「カ」のA音と、「ハキ」のH音が脱落した語頭のA音が連結して「カキ」となった) ()」(「カ」が「ガ」となった)

の転訛と解します。

1101ごろつき(無頼漢)

 ごろごろと音を立てること。転じて、雷の異称。一定の住所も職業もなく、あちらこちらをうろついたりして、脅しを働くならずもの。無頼漢。

 この「ごろつき」は、

  「(ン)ゴロ・ツキ」、NGORO-TUKI(ngoro=snore,utter exclamations of surprise or admiration;tuki=pound,butt,attack)、「(それに対して)驚怖の叫びを上げる・(こちらを)襲ってくるもの(雷。無頼漢)」(「(ン)ゴロ」のNG音がG音に変化して「ゴロ」となった)

の転訛と解します。

1102こわい(怖い)

 強い相手や危害を加えられそうなみの、正体の分からないもの、危険な場所などに対して、身を退けたくなる感じである。身に危険が感じられ、不気味である。恐ろしい。思いもよらない不思議な力がある。この「こわい(怖い)」については、国語篇(その十四)の030おそろしい(恐ろしい)の項の「こわい」を参照してください。

 この「こわい」は、

  「カウア・アイ」、KAUA-AI(kaua=do not;ai=expressing the reason for which anything is done,marking the time or place of an action or event)、「(それにかかわることは)してはならない・もの(こと。恐ろしい)」(「カウア」のAUA音がOWA音に変化し、その語尾のA音と「アイ」の語頭のA音が連結して「コワイ」となった)

の転訛と解します。

1104こんきい(息苦しい)

 激しい動作の後での息苦しい気持ち。

 この「こんきい」は、

  「コネコネ・キヒ」、KONEKONE-KIHI(konekone=weariness,repugnance;kihi=indistinct(of sound),barely audible,murmur of the sea)、「疲労(の挙げ句)の・息も絶え絶えの状況(こんきい)」(「コネコネ」の反覆語尾が脱落して「コネ」から「コン」と、「キヒ」のH音が脱落して「キイ」となった)

の転訛と解します。

1105ごんす

 「来る」の尊敬語。来られる。いらっしゃる。「居る」の尊敬語。いられる。いらっしゃる。「ある」の丁寧語。ござります。あります。

 この「ごんす」は、

  「(ン)ゴ(ン)ゴ・ツ」、NGONGO-TU(ngongo=sad,silent,reserved;tu=stand,settle)、「静かに・いらっしゃる(ごんす)」(「(ン)ゴ(ン)ゴ」の最初のNG音がG音に、次のNG音がN音に変化して「ゴノ」から「ゴン」と、「ツ」が「ス」となった)

の転訛と解します。

1106ごんたくれ(ごろつき)

 ごろつき。ならず者。わんぱく。

 この「ごんたくれ」は、

  「(ン)ゴ(ン)ゴ・タ・クレクレ」、NGONGO-TA-KURE(ngongo=waste away,become thin;ta=dash,beat,lay;kurekure=pleased,glad)、「喜んで・(人を)打ち据えて・放り出す者(ごろつき)」(「(ン)ゴ(ン)ゴ」の最初のNG音がG音に、次のNG音がN音に変化して「ゴノ」から「ゴン」と、「クレクレ」の反覆語尾が脱落して「クレ」となった)

の転訛と解します。

1107こんちきしょう(こん畜生)

 人を指して、その人を罵っていう語。また、感動詞的に用いてねひどく腹がたつたときや激昂したときに発する語。

 この「こんちきしょう」は、

  「コナ・チキ・チオ」、KONA-TIKI-TIO(kona=that place,that time,that circumstance;tiki=fetch,proceed to do anything,go for a purpose,a post to mark a place which was tapu,unsuccessful;tio=cry,call)、「(お前は)こんなことを・しでかして(怪しからん)と・叫ぶ(こん畜生)」または「此所に・こんな禁忌があったのかと・叫ぶ(こん畜生)」または「こんな・不幸に見舞われるとはと・叫ぶ(こん畜生)」(゜コナ」が「コン」と、「チオ」が「ショウ」となった)

の転訛と解します。

1108こんにちわ(今日は)

 昼間、他家を訪問したとき、また、人と会ったときなどにいう簡単な挨拶語。この「こんにちわ(今日は)」については、国語篇(その十四)の077ごめんください(ご免下さい)の項の「こんにちわ」を参照してください。

 この「こんにちわ」は、

  「コナ・ヌイ・チワ」、KONA-NUI-TIWHA(kona=that place,that time,that circumstance;nui=large,many;tiwha=conspicuous,adorn with rings of shell)、「たいへん・(目立つ)良い(装飾の)・お宅ですね(今日は)」(「コナ」が「コン」と、「ヌイ」が「ニ」となった)

の転訛と解します。

1109こんぴら(金比羅)

 (天竺の霊鷲山(りょうじゅせん)にいるという鬼神。香川県琴平に祭る海神。サンスクリットの「kumbhira(鰐)」からとする説がある。)仏語。薬師十二神将の一つ。また、仏法主語の夜叉神王の上首。海神として信仰され、香川県の象頭山の金刀比羅宮に祀られている。この「こんぴら(金比羅)」については、地名篇(その十四)の香川県の(9)那珂郡のb丸亀市の項の「金比羅(こんぴら)大権現」を参照してください。

 この「こんぴら」は、

  「コナ・ピララ」、KONA-PIRARA(kona=that place,that time,that circumstance,to diffuse,spread abroad;pirara=separated,wide apart,branching)、「(神威を)広く放散している・(大麻山から)長く延びた(尾根の象頭山に祀られる海神)(金比羅)」または「(神威を)広く放散している・(象頭山から)分岐した(各地に祀られる海神)(金比羅)」(「コナ」が「コン」と、「ピララ」の反覆語尾が脱落して「ピラ」となった)

  または「コネコネ・ピララ」、KONEKONWE-PIRARA(konekone=weariness,repugnance;;pirara=separated,wide apart,branching)、「(高いところにあって登るのにたいへん)疲れる・(大麻山から)長く延びた(尾根の象頭山に祀られる海神)(金比羅)」(「コネコネ」の反覆語尾が脱落して「コネ」から「コン」と、「ピララ」の反覆語尾が脱落して「ピラ」となった)

の転訛と解します。

1110こんぺいとう(金平糖)

 (ポルトガル語の「confeito」からとする説がある)南蛮菓子の一つ。飴の小核を芯にして、まわりに糖蜜をまぶし、加熱しながら撹拌してつくる、周囲に角(つの)状の突起が多数ある小粒の菓子。

 この「こんぺいとう」は、

  「コイ(ン)ガ・ペイペイ・トフ」、KOINGA-PEIPEI-TOHU(koing=point,edge(koikoi=somewhat sharp,pricky);peipei=lump of earth,clod;tohu=mark,point out,show)、「(角状の)突起が多くて・目立つている・塊状の(菓子。金平糖)」(「コイ(ン)ガ」のNG音がN音に変化して「コイナ」から「コイン」、「コン」と、「ペイペイ」の反覆語尾が脱落して「ペイ」と、「トフ」のH音が脱落して「トウ」となった)

の転訛と解します。

1111こんりんざい(金輪際)

 仏語。仏教の世界観で、金輪の層の領域。また、その最下層で水輪と接するところ。物事の極限。物事の極まるところ。底の底まで。どこまでも。絶対に。断じて。

 この「こんりんざい」は、

  「コネヘ・リ(ン)ガ・タイ」、KONEHE-RINGA-TAI(konehe=benumbed;ringa=hand,arm,weapon;tai=the sea,tide,wave,anger,rage,violence)、「痺れたために(決して)・手が・暴れる(ことができない)(金輪際)」(「コネヘ」のH音が脱落して「コネ」から「コン」と、「リ(ン)ガ」のNG音がN音に変化して「リナ」から「リン」と、「タイ」が「ザイ」となった)

の転訛と解します。

1112こんろ(焜炉)

 鉄や土で作った移動のできる小さな炉。炊事などに用いる。この「こんろ(焜炉)」については、雑楽篇(その二)の1038炉(ろ)の項の「焜炉(こんろ)」を参照してください。

 この「こんろ」は、

  「コ(ン)ガ・ラウ」、KONGA-RAU(konga=live coal or charcoal;rau=catch as in a net,gather into a basket etc.receptacle)、「燃える炭を・集めて容れる(容器。焜炉)」(「コ(ン)ガ」のNG音がN音に変化して「コナ」から「コン」と、「ラウ」のAU音がO音に変化して「ロ」となつた)

の転訛と解します。

「サ」

1113さいころ(賽子)

 双六、博奕などに用いる道具。小型の立方体の六面に1から6までの目を刻んだもの。

 この「さいころ」は、

  「タイ・コロ」、TAI-KORO(tai=the other side;koro=desire,intend)、「(しばしば)望む(面と)・違った面が出るもの(賽子)」(゜タイ」が「サイ」となった)

の転訛と解します。

1114さいせん(賽銭)

 祈願成就して、その礼参りの印に神仏に奉る金銭。転じて、神仏に参詣して奉る金銭。

 この「さいせん」は、

  「タイ・テナ」、TAI-TENA(tai,taitai=dash,strike,knock,perform certain ceremonies to remove tapu;tena=encourage,urge forward)、「(神を叩き)起こして・(願いを)成就させるもの(賽銭)」(「タイ」が「サイ」と・「テナ」が「セン」となった)

の転訛と解します。

1115さいなむ(苛む)

 他人の失策、欠点、法に背いた行為などを叱る。いじめる。苦しめ悩ます。

 この「さいなむ」は、

  「タイ・ナナム」、TAI-NANAMU(tai,taitai=dash,strike,knock,perform certain ceremonies to remove tapu;nanamu=smart,tingle,flash,sting,irritate)、「打撃を加えて・苦しめ悩ます(苛む)()」(「タイ」が「サイ」と、「ナナム」の反覆語頭が脱落して「ナム」となった)

の転訛と解します。

1116さいのかみ(塞の神)

 境にあって外部から村落に襲来する疫神や悪霊などを防ぎ止めたり、追い払ったりする神、また、行路の神。旅の神。生殖の神ともされる。道祖神。この「さいのかみ(塞の神)」については、雑楽篇(その一)の125左義長(さぎちょう)の項の「さいのかみ(塞の神)」を、「さえのかみ(塞の神)」については後出1123さえのかみ(塞の神)の項を参照してください。

 この「さいのかみ」は、

  「タイ・(ン)ガウ・カミ」、TAI-NGAU-KAMI(tai=the sea,the coast,tide;ngau=bite,hurt,act upon,attack;kami=eat)、「(水際の)境で・(疫神や悪霊などを)排除する・(すべてを支配する)神(塞の神)」(「タイ」が「サイ」と、「(ン)ガウ」のNG音がN音に、AU音がO音に変化して「ノ」となった)

の転訛と解します。

1117さいのかわら(賽の河原)

 子供が死んでから行くと言われている、冥土にある河原子供の亡者は恋しい父母のために小石を積んで塔を作ろうとするが、何度作っても鬼が来て崩してしまう。そこへ地蔵菩薩が現れて子供を救うとされる。

 この「さいのかわら」は、

  「タイ・(ン)ガウ・カワ・アラ」、TAI-NGAU-KAWA-ARA(tai=the sea,the coast,tide;ngau=bite,hurt,act upon,attack;kawa=heap,reef of rocks,channel,passage between rocks or shoals:ara=way,path,rise,raise)、「(あの世とこの世の境の)水際で・(鬼が)崩す・川の・(縁で子供の亡者が)積み上げる小石の塔(またはその塔が積まれる川の縁の通路(河原))(塞の河原)」(「タイ」が「サイ」と、「(ン)ガウ」のNG音がN音に、AU音がO音に変化して「ノ」と、「カワ」の語尾のA音と「アラ」の語頭のA音が連結して「カワラ」となった)

の転訛と解します。

1118さいばら(催馬楽)

 中古以後に行われた歌謡の一種。主に上代の歌詞をとって、外来楽である雅楽の曲調に当てはめたもので、律と呂に別れる。平安時代に宮廷、貴族の宴遊や寺院の法会などで歌われ、全盛わきわめた。

 この「さいばら」は、

  「タイパラ」、TAIPARA(fire a volley at)、「数種の楽器を一斉に演奏しながら歌われる曲(催馬楽)」(「タイパラ」が「サイバラ」となった)

の転訛と解します。

1119さいわい(幸い)

 しあわせ。幸福。幸運。

 この「さいわい」は、

  「タイワ・アイ」、TAIWA-AI(taiwa=taewa=foreigner;ai=procreate,beget)、「(突然海の彼方から現れた)異国人が・(生んだ)与えてくれたもの(幸い)」(「タイワ」のT音がS音に変化した「サイワ」の語尾のA音と、「アイ」の語頭のA音が連結して「サイワイ」となった)(古代の日本列島に住む人々の間には、海からやってきた「まれびと」が幸いをもたらすという信仰が広く存在したと民族学者は説いている。)

の転訛と解します。

1120さえ(才)

 持って生まれた素質、能力。才能。漢詩文を読んだり、作ったりする能力。なた、漢籍や仏典に関する学識。転じて学問、教養。書、唄、音楽などの芸事についての技術や能力。

 この「さえ」は、

  「タエ」、TAE(arrive,come,go,reach,extend to,proceed to)、「進歩する(技術、能力)(才)」(「タエ」が「サエ」となった)

の転訛と解します。

1121さえぎる(遮る)

 邪魔し、妨げる。隔てて塞ぐ。

 この「さえぎる」は、

  「タヘ(ン)ギヘ(ン)ギ・ル」、TAHENGIHENGI-RU(tahengihengi=calm of wind;ru=shake,agitate,scatter)、「風が凪ぐ(舟が進まない状況に)・置かれる(遮る)」(「タヘ(ン)ギヘ(ン)ギ」のH音および反覆語尾が脱落して「タエギ」から「サエギ」となった)

の転訛と解します。

1122さえずる(囀る)

 小鳥がしきりに鳴く。口数多く早口で喋る。外国人や地方の人、身分の卑しい者などが聞き分けにくい言葉で喋る。べちゃくちゃととめどもなく話すのを蔑んでいう。

 この「さえずる」は、

  「タエ・ツ・ル」、TAE-TU-RU(tae=arrive,come,go,reach,extend to,proceed to;tu=fight with,energetic;ru=shake,agitate,scatter)、「奮って・懸命に・どんどんと(話を)進める(囀る)」(「タエ」が「サエ」と、「ツ」が「ズ」となった)

の転訛と解します。

1123さえのかみ(塞の神)

 1116さいのかみに同じ。

 この「さえのかみ」は、

  「タエ・ノ・カミ」、TAE-NO-KAMI(tae=arrive,come,go,reach,extend to,proceed to;no=of;kami=eat)、「行き来する人・の(を保護する)・(すべてを支配する)神(塞の神)」(「タエ」が「サエ」となった)

の転訛と解します。

1124さお(竿)

 竹や木の枝葉を取り去った細長い幹。水底を突いて船を前進させる細長い棒。竹で作った衣紋掛け。検地で土地を測量するのに用いる定規の棒。三味線の胴から上の弦を張る長い柄の部分。など。

 この「さお」は、

  「タオ」、TAO(spear,about 6 ft.long)、「(六尺ほどの槍のような)細長い棒(竿)」(「タオ」が「サオ」となった)

の転訛と解します。

1125さおとめ(早乙女)

 田植えをする少女。田植え女。おとめ。少女。花田植え、大田植えなどの田植え行事や格地の神社の田植え行事で、それに奉仕するおとめ。田の神に仕える聖なる女性としての印象を留める。この「おとめ(乙女)」については、国語篇(その二十)の534おとめ(乙女)の項を参照してください。

 この「さおとめ」は、

  「タ・アウト・マイ」、TA-AUTO-MAI(ta=the...of;auto=trailing behind,slow;mai,maimai=a dance to welcome guest at a tangi)、「例の(田植えをする)・(同年配の人の意見、嗜好に)追従する(温和しい)・舞を舞う(女性。乙女。早乙女)」(「タ」が「サ」と、「アウト」のAU音がO音に変化して「オト」と、「マイ」のAI音がE音に変化して「メ」となった)

の転訛と解します。

1126さか(坂)

 一方は高く、一方は低く傾斜して勾配のあるところ。登り降りする道。また、その傾斜。

 この「さか」は、

  「タカ」、TAKA(fall off,fall away)、「下降する(地面の場所。坂)」(「タカ」が「サカ」となった)

の転訛と解します。

1127さが(性、根)

 生まれつきの性質。もちまえ。持って生まれた運命。宿命。ならわし。習慣。くせ。良いところと悪いところ。人間の善悪。特に、欠点。端緒。悪癖。

 この「さが」は、

  「タ(ン)ガ 」、TANGA(be assembled,row,division of persons)、「(生まれつき)身に備わっているもの(性。根)」(「タ(ン)ガ」のNG音がG音に変化して「タガ」から「サガ」となった)

の転訛と解します。

1128さかい(境)

 土地トト地との区切り。国と国、領地と領地などの相接するところ。境界。境界の内側。地域。時間や物事の区切り。境目。境遇。境地。

 この「さかい」は、

  「タ・カイ」、TA-KAI(ta=the...of,lay;kai=reach,arrive at)、「例の・(その果てのところまで)到達した(場所。境界の地)」 (「タ」が「サ」となった)

の転訛と解します。

1129さかえる(栄える)

 草木が繁茂する。転じて、勢いが盛んになる。繁栄する。話に活気が出る。

 この「さかえる」は、

  「タカ・ヘル」、TAKA-HERU(taka=heap,lie in a heap,heap up;heru=begin to flow,glide as anything floating in the water)、「(高み)繁栄に・向かって動き出す(栄える)」(「タカ」が「サカ」と、「ヘル」のH音が脱落して「エル」となった)

の転訛と解します。

1130さかしら(賢しら)

 利口そうに振る舞うさま。物知りぶるさま。自ら進んですること。また、そのさま。でしゃばること。また、そのさま。差し出口をきくこと。讒言すること。

 この「さかしら」は、

  「タカ・チラハ」、TAKA-TIRAHA(taka=heap,lie in a heap,heap up;tiraha=slow,face upwards,exposed,out of perpendicular)、「高いところから(人を見下して)・顔を上に向けて(偉そうに話す)(賢しら)」(「タカ」が「サカ」と、「チラハ」のH音が脱落して「チラ」から「シラ」となった)

の転訛と解します。

1131さかずき(杯)

 酒を入れて飲むのに用いる小さな器。この「さかずき(杯)」については、雑楽篇(その二)の1041壺(つぼ)の項の「杯(さかずき)」を参照してください。

 この「さかずき」は、

   「タカ・ツツキ」、TAKA-TUTUKI(taka=revolve,go or pass round;tutuki=reach the farthest limit,extend)、「(一座の中を)隅まで・巡るもの(飲み回すもの。杯)」(「タカ」が「サカ」と、「ツツキ」の反覆語頭が脱落して「ツキ」から「ズキ」となった)

の転訛と解します。

1132さかな(肴)

 酒を飲むときに添えて食べるもの。飲酒のときの魚、肉、果実、野菜など。酒席に興を添えるような行為や事柄。歌や踊り、隠し芸、話題など。魚類の総称。主食に対して副食物、おかず。

 この「さかな」は、

  「タ・カハ(ン)ガ」、TA-KAHANGA(ta=the...of;kahanga=evidence of strength)、「例の・(酒の)強さの証明となるもの(酒肴によってどれだけ長く酒を飲み続けられるかが決まる)(肴)」(「タ」が「サ」と、「カハ(ン)ガ」のH音が脱落し、NG音がN音に変化して「カナ」となった)

の転訛と解します。

1133さかなみ(逆波。酒波)

 @流れの方向に逆らって打ち寄せる波。逆巻く波。

 A大嘗祭に、斎場で酒を醸す造酒児(さかつこ)に従って下働きをする女性。

 この「さかなみ」は、

  @「タカ・(ン)ガミ」、TAKA-NGAMI(taka=turn on a pivot,revolve,undergo change in direction,go or pass round;ngami=swallow up)、「(流れに)逆らって打ち寄せ・(膨れ上がる)湧き上がる(波。逆波)」(「タカ」が「サカ」と、「(ン)ガミ」のNG音がN音に変化して「ナミ」となった)

  A「タカ・ナ・アミ」、TAKA-NA-AMI(taka=turn on a pivot,revolve,undergo change in direction,go or pass round;na=by,belonging to;ami=gather,collect)、「(斎場の)付近を走り回る・(この仕事のために)集められた・部類の(女性。酒波)」(「タカ」が「サカ」と、「ナ」のA音と「アミ」の語頭のA音が連結して「ナミ」となった)

の転訛と解します。

1134さかやき(月代)

 中古以来、成人の男子が日常冠または烏帽子をかぶったためにすれて抜け上がった前額部の部分の名称。また、室町期、武士が兜をつけるときに剃った前額部の称。つきしろ。近世、露頭が日常の風となった成人男子が、額から頭上にかけて髪を剃ること。また、その部分の称。

 この「さかやき」は、

  「タカイ・アキ」、TAKAI-AKI(takai=wrap up,wrap round,wind round;aki=dash,beat)、「(髪の額の部分を)包むようにして・剃り上げるもの(月代)」(「タカイ」が「サカイ」と、「サカイ・アキ」が「サカヤキ」となった)

の転訛と解します。

1135さかん(左官)

 (宮中の修理のため、仮に木工寮の属(さかん)として出入を許したところんらとする説がある)壁を塗る職人。ちなみに、官職の「さかん(属。主典)」については、雑楽篇(その一)の356つかさ(司)の項の「さかん(主典)」を参照してください。

 この「さかん」は、

  「タ・カニ」、TA-KANI(ta=the...of,dash,beat,lay;kani=rub backwards and forwards)、「例の・鏝を上下左右に動かして壁を塗る(職人。左官)」(「タ」が「サ」と、「カニ」が「カン」となった)

の転訛と解します。

1136さぎちょう(左義長)

 正月に行われる火祭の行事。宮中では正月十五日および十八日に、清涼殿の南庭で、青竹を立て、扇などを結び付けたものに、古書を添えて焼いた。民間では、多くは十五日に長い竹数本を立て、正月の門松、注連縄、書き初めなどを持ち寄って役。その火で餅などを焼いてたべるとその年は病気にかからないとされている。どんど焼き。木や竹を三叉に組んだもの。この「さぎちょう(左義長)」については、雑楽篇(その一)の125左義長(さぎちょう)の項を参照してください。

 この「さぎちょう」は、

  「タ(ン)ギ・チオ」、TANGI-TIO(tangi=sound,weep,cry,mourn;tio=rock-oyster(tiotio=having sharp projection))、「尖った角(のように積み上げた稲藁など)が・(焼かれて)泣き叫ぶ(行事)」(「タ(ン)ギ」のNG音がG音に変化して「タギ」から「サギ」と、「チオ」が「チョウ」となった)

の転訛と解します。

1137さきもり(防人)

 奈良・平安時代に辺境防備に当たった兵士。特に、筑紫、壱岐、対馬など北九州を防衛した兵士で、諸国より徴発されたが、天平二(七三〇)年以降は東国の兵士をこれに当てた。この「さきもり(防人)」については、雑楽篇(その一)の337郡司(こほりのみやつこ)の項の「防人(さきもり)」を参照してください。

 この「さきもり」は、

  「タキ・モリ」、TAKI-MORI(taki,takitaki=fence,screen;mori=low,mean,person of no account,fondle,caress)、「垣根の(垣根となって国を防衛する)・身分の低い人々(防人)」(「タキ」が「サキ」となった)

の転訛と解します。

1138さく(咲く)

 花のつぼみが開く。

 この「さく」は、

  「タハ・ク」、TAHA-KU(taha=spasmodic twitching of the muscles etc.;ku=silent)、「静かに・間欠的に(開化する。咲く)」(「タハ」のH音が脱落して「タ」から「サ」となった)

の転訛と解します。

1139さく(裂く)

 一つにまとまったものを、手などで二つに離す。引き破る。割る。刃物などで切り割る。切り裂く。人と人との仲を隔てる。一部を分けて他にあてる。

 この「さく」は、

  「タハ・アク」、TAHA-AKU(taha=side,edge;aku=scrape out,cleanse)、「端から・剥ぎ取る(裂く)」(「タハ」のH音が脱落したその語尾のA音と「アク」の語頭のA音が連結して「タアク」から「タク」、「サク」となつた)

の転訛と解します。

1140さく(柵)

 角材または丸太をまばらに立て、貫をわたした囲い。垣根。また、敵の侵入を防ぐために、杭などを立ててつくった防塞。木を並べて造った小規模の城。砦。

 この「さく」は、

  「タク」、TAKU(edge,border,gunwale,hollow)、「(集落の)境界となるもの(柵)」(「タク」が「サク」となった)

の転訛と解します。

1141さけ(酒)

 米を発酵させて製するアルコールを含有する飲料。日本酒。一般にアルコールを含有する飲料。この「さけ(酒)」については、雑楽篇(その二)の1011酒(さけ)の項を参照してください。

 この「さけ」は、

  「タ・ケ」、TA-KE(ta=dash,beat,lay;ke=strange,different)、「(それを飲むと)奇妙(な気分)に・襲われる(酩酊する。飲料)」(「タ」が「サ」となった)

の転訛と解します。

1142さげすむ(蔑む)

 他を自分より価値の低いものと見て、軽蔑する。見下げる。

 この「さげすむ」は、

  「タ(ン)ガエ(ン)ガエ・ツム」、TANGAENGAE-TUMU(tangaengae=prostration,exhaustion;tumu=stump,foundation,high of the tide(whakatumutumu=heaped up,standing up))、「(他より)高い地位に立って・(人を平伏させる)軽蔑する(蔑む)」(「タ(ン)ガエ(ン)ガエ」のNG音がG音に、AE音がE音に変化し、反覆語尾が脱落して「タゲ」から「サゲ」と、「ツム」が「スム」となった)

の転訛と解します。

1143さける(避ける)

 (望ましくないものに)触れないようにその所から離れた位置に身を置く。遠ざかる。自分に都合の悪いことをしないようにする。特に、ある物事や他人にかかわりあったり、近付いたりしないようにする。

 この「さける」は、

  「タ・ケ・ル」、TA-KE-RU(ta=dash,beat,lay;ke=different,strange,in or to a different place,in a different direction;ru=shake,agitate,scatter)、「奮つて・(あるものと)違った場所または方向に・身を置く(避ける)」(「タ」が「サ」となった)

の転訛と解します。

1144さざなみ(細波)

 風が吹いて来て立つ細かく小さな波。

 この「さざなみ」は、

  「タタ・ナ・ミ」、TATA-NA-MI(tata=dash down,break in pieces by dashing on the ground,strike repeatedly,hew out;na=belonging to,satisfied;mi=stream,river)、「細かくなった・流れ(のような)・(水)波(細波)」(「タタ」が「サザ」となった)

の転訛と解します。

1145ささめき(私語)

 ささめくこと。また、そのことば。特に、男女間のむつごと。

 この「ささめき」は、

  「タタ・メア・キ」、TATA-MEA-KI(tata=dash down,break in pieces by dashing on the ground,strike repeatedly,hew out;mea=thing,reason,fact,so-and-so,do,make,say,wish;ki=full,very)、「細切れになった・たくさんの・(会話の)言葉(私語)」(「タタ」が「ササ」と、「メア」の語尾のA音が脱落して「メ」となった)

の転訛と解します。

1146ささやく(囁く)

 ひそひそと話す。声を忍ばせる。こそこそと噂する。

 この「ささやく」は、

  「タタ・イア・ク」、TATA-IA-KU(tata=dash down,break in pieces by dashing on the ground,strike repeatedly,hew out;ia=indeed;ku=make a low inarticulate sound,silent,wearied,exhausted)、「実に・低い声で・細切れになった(話をする)(囁く)」(「タタ」が「ササ」と、「イア」が「ヤ」となった)

の転訛と解します。

1147ささら

 民俗芸能の楽器の一種で、竹の先を細かく割って束ねたもの。これを「ささらこ」に摺り合わせて音を出す。民俗芸能の打楽器の一つで、短冊形の薄い板を数十枚合わて、その上端を紐で綴り合わせたもの。竹を細かく割り束ねたもので、ブラシ、束子などの用をなすもの。この「ささら(簓)」については、国語篇(その十一)の154コキリコ節の項の「ササラ」国語篇(その十三)の017自然居士の項の「ささら(簓)」および国語篇(その十三)の019東岸居士の項の「ささら」を参照してください。

 この「ささら」は、

  「タタラ」、TATARA(loose,untied,quick,active)、「(竹の先が)ばらばらになったもの(ささら)」(「タタラ」が「ササラ」となった)

  または「タタラ」、TATARA(rattling,buzing,making an indistinct sound)、「サラサラという音を出す(こと。その楽器)」 (「タタラ」が「ササラ」となった)

の転訛と解します。

1148さざれいし(細石)

 小さな石。小石。この「さざれいし」については、国語篇(その三)の3の(4)法則その四(j音はS音に変化する)の項の「サザレ」を参照してください。

 この「さざれいし」は、

  「タタレ・イチ」、TATARE-ITI(tatare=tare=hang,gasp for breathe,be drawn towards,be intent upon;iti=small,unimportant)、「(その上に次々に積み重なって)癒合する・小さな(石。さざれ石)」(「タタレ」が「サザレ」と、「イチ」が「イシ」となった)

の転訛と解します。

1149さじ(匙)

 液体や粉末などを掬い取る道具。皿状のものに柄が付いた形をする。

 この「さじ」は、

  「タ・チ」、TA-TI(ta=dash,beat,dash water out of the canoe,cut,lay;ti=throw,cast)、「(食物の一部分を)掬い取って・(口の中に放り)入れるもの(匙)」(「タ」が「サ」と、「チ」が「ジ」となった)

の転訛と解します。

1150さしがね(差金)

 @鋼または真鍮で造った直角に折れ曲がった形の物差し。大工が木材を加工するのに用いる。A操り人形で、人形の腕にしかけた長い棒。人形の腕を動かし、また、その棒につけた麻糸を引いて人形の手首・指をうごかす。B転じて、背後で人を指図してうごかすこと。陰で人を操ること。C歌舞伎小道具の一つで、作り物の蝶、小鳥、鬼火などを尖端につけた黒塗りの細い竿で、針金で結わえて作り物が弾むようにし、黒子の後見が差し出して動かすもの。D代金の一部として、または手付け金として前もって支払う金。

 この「さしがね」は、

  @〜C「タハチチ・(ン)ガネヘネヘ」、TAHATITI-NGANEHENEHE(tahatiti=peg or wedge used to tighten anything;nganehenehe=querulous,peevish)、「気むずかしくあれこれと指図する・(物事をきちんと実行する)棒(または物差し。差金)」または「気むずかしくあれこれと指図する・(物事をきちんと実行する)棒のよう(に陰で人を操ること。差金)」(「タハチチ」のH音および反覆語尾が脱落して「タチ」から「サシ」と、「(ン)ガネヘネヘ」のNG音がG音に変化し、H音および反覆語尾が脱落して「ガネ」となった)

  D「タハチチ・カネヘ」、TAHATITI-KANEHE(tahatiti=peg or wedge used to tighten anything;kanehe=trifle,desire,affection,regretful,yearning,fond)、「(約定が実行されることを)強く願って(差し入れる)・(約定を)強固なものとするための楔のようなもの(金。差金)」(「タハチチ」のH音および反覆語尾が脱落して「タチ」から「サシ」と、「カネヘ」のH音が脱落した「カネ」が濁音化して「ガネ」となった)

の転訛と解します。

1151さじき(桟敷)

 祭礼などを見物するために、地面より一段高く造られた観覧席。祭礼の行路の両側などに仮設されるもの。また、常設のものもあった。演能場、劇場、相撲小屋などで、大衆席の土間よりも一段高く造られた上級の観覧席。

 この「さじき」は、

  「タハ・チ・ヒキ」、TAHA-TI-HIKI(taha=side,edge,part;ti=throw,cast;hiki=lift up,raise,carry in the arms,convey)、「(祭礼の行路や大衆席の土間の)傍らに・一段高く・造られたもの(桟敷)」(「タハ」のH音が脱落して「タ」から「サ」と、「チ」のI音と「ヒキ」のH音が脱落した「イキ」の語頭のI音が連結して「チキ」から「シキ」となり、濁音化して「ジキ」となった)

の転訛と解します。

1152ざしき(座敷)

 とどまる場所。座る場所。多くの人が集まってくつろぐ場所。会合の場所。宴席。能楽で、見物席の古い呼称。畳を敷き詰めた部屋。客間。

 この「ざしき」は、

  「タ・チヒ・キ」、TA-TIHI-KI(ta=the...of,dash,beat,lay;tihi=summit,top,lie in a heap;ki=full,very)、「最高の(座具。畳を)・(たくさん)全面に・敷き詰めた(部屋。座敷)」(「タ」が「ザ」と、「チヒ」のH音が脱落して「シ」となった)

の転訛と解します。

1153さしこ(指子。差袴)

 (1155-2指貫(さしぬき)の小袴の意とする説がある)指貫の裾を短くして、括りを入れない袴。近世の公家が指貫の代わりに用いた。

 この「さしこ」は、

  「タ・チココ」、TA-TIKOKO(ta=the...of;tikoko=shrunk,wasted)、「例の・(裾を)短くした(袴。指子。差袴)」(「タ」が「サ」と、「チココ」の反覆語尾が脱落して「チコ」から「シコ」となった)

の転訛と解します。

1154さしこ(刺子)

 厚手の綿布を重ね合わせて、一面に細かく刺し縫いを下者。消防服や柔道、剣道の稽古着などに用いる。

 この「さしこ」は、

  「タ・チコ」、TA-TIKO(ta=the...of,dash,beat,lay;tiko=settled upon as by frost)、「表面(一面)に・刺し縫いを施したもの(刺子)」(「タ」が「サ」と、「チコ」が「シコ」となった)

の転訛と解します。

1155さしずめ(差し詰め)

 差し詰まったこと。また、そのさま。究極のところ。のっぴきならない状態。どんづまり。直接に迫ること。また、そのさま。あてはまるものをあれこれ考えてみて、おちつくところは。つまるところ。結局。さしあたって。とりあえず。当面。

 この「さしづめ」は、

  「タ・チヒ・ツ・メア」、TA-TIHI-TU-MEA(ta=the...of,dash,beat,lay;tihi=summit,top,lie in a heap;tu=fight with,energetic;mea=thing,reason,cause,fact,so-and-so,intend,think)、「例の・最高に・懸命になって・あれこれと考えて見た(結果は)(差し詰め)」(「タ」が「サ」と、「チヒ」のH音が脱落して「チ」から「シ」と、「ツ」が「ズ」と、「メア」の語尾のA音が脱落して「メ」となった)

の転訛と解します。

1155-2さしぬき(指貫)

 袴の一種。八幅(やの)のゆるやかで長大な袴で、裾口に紐を指し貫いて着用の際に裾を括って足首に結ぶもの。

 この「さしぬき」は、

  「タ・チ(ン)ゴウ(ン)ゴウ・キ」、TA-TINGOUNGOU-KI(ta=the...of;tingoungou=tingoingoi=protuberance,knob;ki=full,very)、「例の・大きく・膨らんでいる(袴。指貫)」(「タ」が「サ」と、「チ(ン)ゴウ(ン)ゴウ」のNG音がN音に変化し、反覆語尾が脱落して「チノウ」から「チノイ」、「シヌ」となった)

の転訛と解します。

1156さしみ(刺身)

 料理の一種。新鮮な生の魚肉などを薄く小さく切って、醤油、酢などにつけて食べるもの。この「さしみ(刺身)」については、国語篇(その十五)の083さしみ(刺身)の項を参照してください。

 この「さしみ」は、

  「タ・チ・ミイ」、TA-TI-MII(ta=the...of;ti=throw,cast;(Hawaii)mii=attractive,fine-appearing,good-looking)、「例の・素晴らしい(新鮮で美味そうな)外観を・見せつけるもの(刺身)」(「タ」が「サ」と、「チ」が「シ」と、「ミイ」の語尾のI音が脱落して「ミ」となった)

の転訛と解します。

1157さす(砂洲)

 海岸や湖岸のやや沖合に、砂や小石が岸と並行に細長く堆積して水面上に現れた地形。砂嘴が成長して対岸や島に繋がり、潟を抱き込むようになったもの。

 この「さす」は、

  「タ・アツ」、TA-ATU(ta=the...of,dash,beat,lay;atu=to indicate a direction or motion onwards)、「ずっと前方へ向かって・伸びている(土地。砂洲)」(「タ」が「サ」となったその語尾のA音と「アツ」の語頭のA音が連結して「サツ」から「サス」となった)

の転訛と解します。

1158さす(担棒)

 物を担うのに用いる棒。おうご。てんびん棒。

 この「さす」は、

  「タハツ」、TAHATU(upper edge of a seine or a canoe sail,horizen)、「(両端に荷物を付けて)水平に(担う棒。担棒)」(「タハツ」のH音が脱落して「タツ」から「サス」となった)

の転訛と解します。

1159さすが(流石)

 そうはいうものの。そういってもやはり。そうはいってもやはり何々だ。やはりそうもいかない。なんといっても。いかにもやはり。なんといっても何々だけのことはある。やはりみごとだ。やっぱり。

 この「さすが」は、

  「タツ・ウ(ン)ガ」、TATU-UNGA(tatu=reach the bottom,be at ease,be content,consent,agree;unga=send,cause to come forth,expell,seek)、「最終的に・結着するところは(何々だ)(流石)」または「最終的には・満足する結果となる(流石)」(「タツ」の語尾のU音と「ウ(ン)ガ」の語頭のU音が連結し、NG音がG音に変化して「タツガ」から「サスガ」となった)

の転訛と解します。

1160さすが(刺刀)

 腰にさす小さな刀。鞘巻。また、懐中にいれる護身用の短刀。腰刀の鞘の差裏にさす小刀。細工に用いる小刀。

 この「さすが」は、

  「タツア・ア(ン)ガ」、TATUA-ANGA(tatua=girdle,put on as a girdle;anga=driving force,thing driven etc.)、「(帯に)腰につける・(攻撃するもの)短刀(刺刀)」(「タツア」の語尾のA音と「ア(ン)ガ」の語頭のA音が連結し、NG音がG音に変化して「タツアガ」からA音が脱落して「タツガ」となり、「サスガ」となった)

の転訛と解します。

1161さた(沙汰)

 水中でゆすって砂の中から砂金やコメなどを選り分けること。転じて、物、人物の精粗を選り分けること。物事の是非を選び分けて正しく処理すること。物事の是非や善悪などを取りさばくこと。情報を与えること。

 この「さた」は、

  「タ・アタ」、TA-ATA(ta=the...of,dash,beat,lay;ata=gently,slowly,clearly,openly,deliverately,cautiously,quite)、「例の・慎重に正しく物事を処理すること(沙汰)」(「タ」のA音と「アタ」の語頭のA音が連結して「タタ」から「サタ」となった)

の転訛と解します。

1162さだまる(定まる)

 決定する。安定する。落ち着く。慣例として定着する。その位置に就く。配偶者となる。心身が安定する。寝静まる。産まれる前から決まっている。

 この「さだまる」は、

  「タタ・マルル」、TATA-MARURU(tata=wag,nod;maruru=numerous,plentiful,abounding)、「何回も何回も・頷く(定まる)」(「タタ」が「サダ」と、「マルル」の反覆語尾が脱落して「マル」となった)

の転訛と解します。

1163さち(幸)

 獲物をとるための道具。また、その道具のもつ霊力。漁や狩りの獲物の多いこと。また、その獲物。都合のよいこと。幸いであること。また、そのさま。

 この「さち」は、

  「タ・チヒ」、TA-TIHI(ta=the...of,dash,beat,lay;tihi=summit,top,lie in a heap)、「例の(獲物をとることに関するものが)・最高である(獲物が多いこと、幸いであることなど。幸)」(「タ」が「サ」と、「チヒ」のH音が脱落して「チ」となった)

の転訛と解します。

1164さと(里)

 人家の集まっている所。人里。村落。古代の地方行政区画の一つ(大宝令施行から霊亀元年までの国郡里制では五十戸を一里、霊亀元年以降は里は郷(さと)と改称された(霊亀元年から天平十二年までは里(こざと)が置かれた)。距離の里の訓読。宮廷わ「内(うち)」というのに対して、それ以外の場所をいう。自分の住んでいる場所。故郷。都に対して、田舎。など。

 この「さと」は、

  「タタウ」、TATAU(settled down upon)、「(その場所に)定住する(里)」(「タタウ」のAU音がO音に変化して「タト」から「サト」となった)

の転訛と解します。

1165ざとう(座頭)

 座席の近辺。一座の長。中世には、商業、手工業、芸能などの諸座の長をいう。中世以降結成された盲人琵琶法師の当道座に設けられた四官(検校・別当・勾当・座頭)の最下位。(名の下に「一」、あるいは上に「城」の字を用いることが許された。勾当以上は一般の旅芸人と同席して演奏することは許されないが、座頭はでき、その場合は必ず上座につくこととなっていた。)盲人で剃髪して僧体となり、琵琶などの楽器を弾いて歌を歌い、語り物を語り、また、あんま、はり、金貸しなどを業とした者の総称。盲人。座頭鯨の略(この「ざとうくじら(座頭鯨)」については、雑楽篇(その二)の734くじら(鯨)の項の「ざとうくじら(座頭鯨)」を参照してください。)。

 この「ざとう」は、

  「タ・トフ(ン)ガ」、TA-TOHUNGA(ta=the...of;tohunga=skilled person,wizard,priest)、「例の・芸能の才能または按摩、鍼灸などの才能に秀でた者(座頭)」(「タ」が「ザ」と、「トフ(ン)ガ」のH音および名詞形語尾のNGA音が脱落して「トウ」となった)

の転訛と解します。

1166さとる(悟る)

 物事の道理をつまびらかに知る。明らかに理解する。隠れているものを推し量って知る。察知する。(仏語)迷いを去つて真理を体得する。生死の世界を超越した境界に達する。

 この「さとる」は、

  「タ・トフ・ル」、TA-TOHU-RU(ta=the...of,dash,beat,lay;tohu=think;ru=shake,agitate,scatter)、「(真理を)理解して・衝撃を受けて・(身体を)震わせる(悟る)」(「タ」が「サ」と、「トフ」のH音が脱落して「ト」となった)

の転訛と解します。

1167さなぎ(蛹)

完全変態を行う昆虫類の幼虫が成虫になる前の発育段階で、食物をとらずほぼ静止の状態になったもの。幼虫の体の組織が成虫の組織へと変わる時期で、羽化すると成虫になる。多くは堅い皮膚で覆われているが、チョウ・ガなどの中には繭をつくり、その中でこれに成るものもある。

 この「さなぎ」は、

  「タハ(ン)ガ・ア(ン)ギ」、TAHANGA-ANGI(tahanga=naked,empty;angi=free,without hindrance,float)、「(虫が殻を)脱ぎ捨てて・(自由になる)外へ出てくるもの(蛹)」(「タハ(ン)ガ」のH音が脱落し、NG音がN音に変化して「タナ」から「サナ」となり、その語尾のA音と「ア(ン)ギ」の語頭のA音が連結し、NG音がG音に変化して「サナギ」となった)

の転訛と解します。

1168さなきだに

 そうでなくてさえ。ただでさえ。(用例:金刀比羅本平治(1220頃か)中・義朝奥波賀に落ち着く事「さなきだに冬はさだめなき世のけしきなるに、比は十二月二十八日、空かき曇り雪ふりて」。謡曲・紅葉狩「さなきだに人心、乱るる節は竹の葉の、露ばかりだに受けじとは」。御伽草子・物くさ太郎「あらあさましや、あの者をうち殺さんも恐ろしや、さなきだに、女は五障三従に罪深きにとて、涙を流し給いける」。)

 この「さなきだに」は、

  「タ・ナキ・タ(ン)ギ」、TA-NAKI-TANGI(ta=the...of;naki=glide,move with an even motion;tangi=sound,cry,weep,mourn)、「例の・(滑らかに)静かに・嘆く(天候、人心などの形容。さなきだに)」(「タ」が「サ」と、「タ(ン)ギ」のNG音がN音に変化して「タニ」から「ダニ」となった)

  または「タ・ナキ・タハ(ン)ゴイ」、TA-NAKI-TAHANGOI(ta=the...of;naki=glide,move with an even motion;tahangoi=hesitating,awkward,unaccustomed)、「例の・(おずおずと)躊躇いながら・(滑らかに)静かに動く(天候、人心などの形容。さなきだに)」(「タ」が「サ」と、「タハ(ン)ゴイ」のH音が脱落し、NG音がN音に変化して「タノイ」から「ダニ」となった)

の転訛と解します。

1169さなぶり(早苗饗)

 田植え始めに神を迎える行事。転じて、そのときの飲食行事。田植え終わりの祝い。この「さなぶり」については、雑楽篇(その一)の129さなぶりの項を参照してください。)。

 この「さなぶり」は、

  「タ(ン)ガ・プリ」、TANGA-PURI(tanga=be assembled,row,company of persons;puri=sacred,hold in the hand,keep,detain)、「(田植え作業に)参加した人々を・(翌年も)確保する(ための供応行事)」(「タ(ン)ガ」のNG音がN音に変化して「タナ」から「サナ」となった)

の転訛と解します。

1170さね(実、核)

 物事の中心、本質となるもの。根本。核。真実。物をつくり上げる材料。もととなるもの。ものざね。果実の中心部にある殻に入ったもの。種子。人や動物の骨組み。骨。など。

 この「さね」は、

  「タネ」、TANE(male,showing manly qualities,husband,eructate after food)、「(男らしさを示すもののように、その)本質を示すもの(実。核)」(「タネ」が「サネ」となった)

の転訛と解します。

1171さばく(捌く。裁く)

 @物や道具、材料などを上手に扱いこなす。また、うまく手で解き分ける。割る。裂く。特に料理の材料を包丁でばらばらに切り分ける。複雑に入り組んだ事柄や、面倒なことを整理する。うまく処理する。事理を説明する。

 A理非を明らかにする。正邪善悪を判定する。裁判する。

 この「さばく」は、

  「タパ・ハク」、TAPA-HAKU(tapa=margin,edge,cut,split;haku=complain of,find fault with)、@「(一方または双方の)不満を・(切り捨てる)無くすように整理する(捌く)」もしくは「(事柄の)不備や問題を発見して・許容される限界まで調整する(捌く)」、またはA「(どちらか一方の)不満を・(切り捨てる)却下する(裁く)」もしくは「(当事者の)過失を発見して・折り合う余地を探る(裁く)」(「タパ」の語尾のA音と「ハク」のH音が脱落した「アク」の語頭のA音が連結して「タパク」から「サバク」となった)

の転訛と解します。

1172さばをよむ(鯖を読む)

 物を数えるとき、実際よりごまかすことをいう。

 この「さばをよむ」は、

  「タパワ・イホ・ムフ」、TAPAWHA-IHO-MUHU(tapawha=four-sided(tapa=margin,edge;wha=four);iho=heart,inside,kernel;muhu=grope,feel after)、「物の四面を・心で・(手探りする)理解する(意図を持って数える。鯖を読む)」(「タパワ」が「サバワ」から「サバヲ」に、「イホ」のH音が脱落して「イオ」から「ヨ」と、「ムフ」のH音が脱落して「ム」となった)

の転訛と解します。

1173さび(錆)

 化学変化によって金属の表面に生じた酸化物の皮膜。

 この「さび」は、

  「タハ・ピヒ」、TAHA-PIHI(taha=side,margin,edge;pihi=spring up,begin to grow)、「(水に接する)縁に・生じて成長するもの(錆)」(「タハ」のH音が脱落して「タ」から「サ」と、「ピヒ」のH音が脱落して「ピ」から「ビ」となった)

の転訛と解します。

1174さび(寂)

 蕉風俳諧の用語で、発句・付句の句中における閑寂の色合いを主調とする、深く幽かな美的情趣をいう。古びて枯れた味わいのあること。閑寂な趣のあること。謡物、語物などの声の質で、噪音的なものが含まれる渋みのあるもの。一般に低く太い声。人を威圧するようなすごみのある声。

 この「さび」は、

  「タ・アピアピ」、TA-APIAPI(ta=the...of,dash,beat,lay;apiapi=crowded,dense,confined,constricted)、「例の(閑寂な趣のある、または人を威圧する)・(濃い)重みがあるまたは趣がある(寂)」(「タ」のA音と「アピアピ」の反覆語尾が脱落した「アピ」の語頭のA音が連結して「タピ」から「サビ」となった)

の転訛と解します。

1175さびしい(淋しい、寂しい)

 本来あるべき状態になく、また、本来備わっているはずのものが欠けていて、満たされない気持ちを表す。物足りない、憂鬱、物悲しさなどを表す。人の気配がなく、心細い。ひっそりしている。さみしい。

 この「さびしい」は、

  「タ・アピアピ・チヒ」、TA-APIAPI-TIHI(ta=the...of,dash,beat,lay;apiapi=crowded,dense,confined,constricted;tihi=summit,top,lie in a heap)、「例の・(最高に)たいへん・(辺境に監禁されたような)淋しい(淋しい)」または「例の・(最高に)たいへん・(濃い)閑寂な趣がある(寂しい)」(「タ」のA音と「アピアピ」の反覆語尾が脱落した「アピ」の語頭のA音が連結して「タピ」から「サビ」と、「チヒ」のH音が脱落して「チイ」から「シイ」となった)

の転訛と解します。

1176さぶらう(候う、侍う)

 (上代の「さもらう」が変化して、主として中古から中世にかけて用いられた語とする説がある)貴人や敬うべき人のおそばに控える。また、宮中など敬うべき場所にいる。品物などが貴人や敬うべき人のもとにある。対話や消息文で、聞き手を敬って用いる丁寧語。「ある」「いる」の意を鄭重にいう。

 この「さぶらう」は、

  「タプアプア・ラウ」、TAPUAPUA-RAU(tapuapua=lying in pools;rau=catch as in a net,entangle,engage,embarrassed)、「控えの場所で・(ひたすら)待機する(候う、侍う)」(「タプアプア」の反覆語尾および語尾のA音が脱落して「タプ」から「サブ」となった)

の転訛と解します。

1177さま(様)

 人の姿や形、また、顔つきや身なり。物事やあたりのありさま。様子。趣。品格。方法。理由。事情。対称。他称。人の居所、身分、氏名に添えて敬意を表す語。

 この「さま」は、

  「タ・マハ」、TA-MAHA(ta=the...of;maha=gratified,satisfied,contented by the attainment of a desired object)、「例の・満足すべき品格を持つ(人。様)」(「タ」が「サ」と、「マハ」のH音が脱落して「マ」となった)

の転訛と解します。

1178さみだれ(五月雨)

 陰暦五月頃に降り続く長雨。また、その時期。梅雨。継続して繰り返す行動などについていう。この「さみだれ(五月雨)」については、雑楽篇(その一)の234さみだれ(五月雨)の項を参照してください。

 この「さみだれ」は、

  「タ・ミ・タレ」、TA-MI-TARE(ta=the...of,dash,beat,lay;mi=stream,river;tare=hang,gasp for breath,be drawn towards,be intent upon)、「ひっきりなしに・水(滴)が・(大地を)叩くような(雨)」 (「タ」が「サ」と、「タレ」が「ダレ」となった)

の転訛と解します。

1179さむらい(侍)

 (「さぶらひ」が後世「さむらい」(動詞「1176さぶらう」の連用形の名詞化)に変化したとする説がある)目上の人の側近く仕えること。また、その人。平安時代以後、親王・摂関・公卿家・寺家・社家・院家に仕えて家務を司った家人。また、武器をもって貴人の警護に当たった宮中の滝口、院の北面、東宮の帯刀などの武士をもいう。侍所の略。中世、近世、武家に仕える者。特に鎌倉・室町時代には上級武士、江戸時代の幕府では旗本、諸藩では中小姓以上の称。武士。さむらい。寺院の門跡、院家で庶務にあたる下級僧侶。

 この「さむらい」は、

  「タ・ムム・ラヒ」、TA-MUMU-RAHI(ta=the...of,dash,beat,lay;mumu=silence,morosense,silent,morose person;rahi=great,plentiful,numerous,slave)、「例の(いざというときに敵に襲いかかる)・無口で気むずかしい顔をした・偉大な(者。侍)」(「タ」が「サ」と、「ムム」の反覆語尾が脱落して「ム」と、「ラヒ」のH音が脱落して「ライ」となった)

の転訛と解します。

1180さや(鞘)

 刀剣類の刀の部分を納めておく筒。筆や鉛筆などの尖端にかぶせて保護するもの。など。

 この「さや」は、

  「タイア」、TAIA(neap of the tide,outer palisade of a stockade)、「(砦の内郭の外側の柵列のような)中味を保護する外側の部分(鞘)」(「タイア」が「サヤ」となった)

の転訛と解します。

1181さやか(清か)

 はっきりとしているさま。明るく清らかであるさま。音声が高く澄んでいるさま。さわやかなさま。

 この「さやか」は、

  「タ・イア・アカ」、TA-IA-AKA(ta=the...of;ia=indeed;aka=clean off,scrape away)、「例の・実に・清らかな(さま。清か)」(「タ」が「サ」と、「イア」のA音と「アカ」の語頭のA音が連結して「イアカ」から「ヤカ」となった)

の転訛と解します。

1182さゆ(白湯)

 沸かしただけで、何も混ぜないで飲む湯。

 この「さゆ」は、

  「タ・イ・ウ」、TA-I-U(ta=the...of;i=ferment,turn sour;u=bite,gnaw,be firm,be fixed,reach its limit)、「例の・泡とともに湧き出すのが・頂点に達している(沸騰する。湯)」(「タ」が「サ」と、「イ」と「ウ」が連結して「ユ」となった)

の転訛と解します。

1183さようなら(左様なら)

 (「さようならば」の変化した語)それならば。しからば。別れの挨拶に用いる語。別れの意わ表す語。この「さようなら(左様なら)」については、国語篇(その十五)の086さようならの項を参照してください。

 この「さようなら」は、

  「タイ・アウ・ナ・アラ」、TAI-AU-NA-ARA(tai=a term of address to males or females;au=firm,intense;na=satisfied,content;ara=way,path)、「貴方が・十分・満足して・道を辿りますように(道中ご無事でありますように。さようなら)」(「タイ」が「サイ」と、「アウ」のAU音がO音に変化して「オ」となり、「サイ・オ」が「サヨ」から「サヨウ」と、「ナ」のA音と「アラ」の語頭のA音が連結して「ナラ」となった)

の転訛と解します。

1184さよみ(貲布)

 奈良時代、科木(しなのき)の皮の繊維で細かく織った布、または細い麻糸で織った布。古代、調布として貢物とされ、中世まで民間でも用いられた。後世は、広く麻布をさしていう。この「さよみ(貲布)」については、雑楽篇(その二)の537-2ちょま(苧麻)の項の「さよみ(貲布)」を参照してください。

 この「さよみ」は、

  「タ・イオ・オミ」、TA-IO-OMI(ta=the...of;io=strand of a rope,warp(vertical threads in weaving);(Hawaii)omi=to wither,droop)、「(布の)縦糸が・(弱くなつた)数が少ない・種類の布(貲布)」(「イオ」のO音と「オミ」の語頭のO音が連結して「ヨミ」となった)

の転訛と解します。

1185さら(皿)

 平たく浅い器。食物を盛るのに用いる。皿に盛って饗膳などに出す肴。仏具の一つで、読経の際に打ち鳴らす盆のようなもの。物を盛るもの。など。この「さら(皿)」については、雑楽篇(その二)の1041壺(つぼ)の項の「皿(さら)」を参照してください。

 この「さら」は、

  「タラ」、TARA(loosen,separate)、「(食物を)個々に分配する(容器。皿)」(「タラ」が「サラ」となった)

の転訛と解します。

1186さらう(掠う。浚う)

 人の油断をみて奪い去る。そっくり持ち去る。剃る。川・池・井戸などの底に溜まっている土砂などを掘り上げて取り去る。

 この「さらう」は、

  「タラウ」、TARAU(dredge,grapnel)、「(浚渫するように)奪い去る(掠う)」または「浚渫する(浚う)」(「タラウ」が「サラウ」となった)

の転訛と解します。

1187ざらざら

 粗いものが擦れ合って立てる音、粒状のものがたくさんいっしょに落ちる時の音などを表す語。手ざわりが粗く、滑らかでないさま。物事がささくれて荒々しい感じ、ぞっと鳥肌が立つような感じを表す語。

 この「ざらざら」は、

  「タラ・タラタラ」、TARA-TARATARA(tara=point,peak;taratara=spine,spike,prickly,rough)、「(凹凸が多く・手触りが粗い)物事がささくれて・荒々しい(または粗いものが擦れあって立てる音。ざらざら)」(「タラ」が「サラ」から「ザラ」と、「タラタラ」の反覆語尾が脱落して「タラ」から「サラ」、「ザラ」となった)

の転訛と解します。

1188さらば

 @それならば。しからば。Aしかし。だからといって。B別れの挨拶に用いる語。さようなら。この「さらば(別れの言葉)」については、雑楽篇(その二)の第10章 「さらば百済よ」・・・・・・歴史を生きる言葉の「さらば」を参照してください。

 この「さらば」は、

  @「タラ・パ」、TARA-PA(tara=loosen,separate,brisk;pa=touch,reach,be connected with)、「(先行の事柄と別れる)終わっても・引き続いて(それならば。さらば)」(「タラ」が「サラ」と、「パ」が「バ」となった)

  A「タラ・パ」、TARA-PA(tara=loosen,separate,brisk;pa=block up,prevent,obstructed)、「(先行の事柄と別れる)終わったが・(それを)妨害する(事柄があって。さらば)」(「タラ」が「サラ」と、「パ」が「バ」となった)

  B「タラ・パハ」、TARA-PAHA(tara=loosen,separate,brisk;paha=arrive suddenly,foam,attack)、「泡のように・(別れる)消えよう(別れの言葉)」または「別れても・(またいつか突然来て)逢おう(別れの言葉)」(「タラ」が「サラ」と、「パハ」のH音が脱落して「パア」から「バ」となった)

の転訛と解します。

1189さる(去る)

 (移動する意で、古くは近付く場合にも遠ざかる場合にもいう)(季節や時を表す語の後につけて。「夕されば」など)その時、季節になる。ある場所、ある人から離れて行く。身を置いているある状態から退き離れる。時が経過する。時間や距離などが隔たる。薄くなったり、消えたりする。(世を去る)死ぬ。すっかり...する。ある場所から遠ざける。手放す。離縁する。取り除く。距離を置く。

 この「さる」は、

  「タ・アル」、TA-ARU(ta=the...of,dash,beat,lay;aru=follow,pursue)、「例の・(人を追うように)歩く(去る)」(「タ」のA音と「アル」の語頭のA音が連結して「タル」から「サル」となった)

の転訛と解します。

1190ざる(笊)

 薄く細く削った竹で編んだ、目の粗い円形の入れ物。水切りに用いることから、おおざっぱで抜けた所の多いものの意。「ざるそば」(落語)の略。「ざる碁」の略。

 この「ざる」は、

  「タルル」、TARURU(close together,fleet of canoes,crowd)、「(細い竹で)密に編んだ入れ物(笊)」(「タルル」の反覆語尾が脱落して「タル」から「ザル」となった)

の転訛と解します。

1191さるがく(猿楽)

 中古から中世にかけて、即興の滑稽な物まねや言葉芸のこと。日本古来の滑稽なわざに唐から伝わった散楽が加味されてできたもので、散楽(さんがく)が転化して猿楽となったとする説がある。相撲の節会や内侍所御神楽の夜などの余興として臨時に工夫して演じられたりした。これが民間に移り中古から中世にかけて寺社に所属する職業芸能人が、祭礼の際などに滑稽なわざや曲芸などを演ずる芸能となり、中世に入って、次第に演劇化し、能と狂言に分化した。

 この「さるがく」は、

  「タルル・(ン)ガク」、TARURU-NGAKU(taruru=beguile,entice,shake or rub together;ngaku=strip,shred)、「人を楽しませる・寸劇(猿楽)」(「タルル」の反覆語尾が脱落して「タル」から「サル」と、「(ン)ガク」のNG音がG音に変化して「ガク」となった)

の転訛と解します。

1192さるぐつわ(猿轡)

 声を立てさせないために、口の中に押し込んだり、噛ませて後頭部にくくりつけたりしておくもの。

 この「さるぐつわ」は、

  「タルル・(ン)グツ・ワワ」、TARURU-NGUTU-WAWA(taruru=close together,fleet of canoes,crowd;ngutu=lip,beak,mouth;wawa=make a loud rumbling,roaring,or other indistinct noise)、「唸り声を出す・口を・密閉しておくもの(猿轡)()」(「タルル」の反覆語尾が脱落して「タル」から「サル」と、「(ン)グツ」のNG音がG音に変化して「グツ」と、「ワワ」の反覆語尾が脱落して「ワ」となった)

の転訛と解します。

1193さるまた(猿股)

 男子が用いる短い股引。腰から腿の上部を覆う、半ズボン型の短い下着。

 この「さるまた」は、

  「タルル・マハ(ン)ガ・タ」、TARURU-MAHANGA-TA(taruru=close together,fleet of canoes,crowd;;mahanga=twins;ta=dash,beat,lay)、「二本の足が・分れるところ(股)に・密着して穿くもの(猿股)」(「タルル」の反覆語尾が脱落して「タル」から「サル」と、「マハ(ン)ガ」のH音およひ名詞形語尾のNGA音が脱落して「マ」となった)

の転訛と解します。

1194されこうべ(髑髏)

 風雨にさらされて白っぽくなった頭骨。しゃれこうべ。どくろ。のざらし。

 この「されこうべ」は、

  「タレタレ・コウ・ペ」、TARETARE-KOU-PE(taretare=ragged,tattered,pant(tare=hang,gasp for breath,be drawn towards);kou=knob,end,stump;pae=horizon,lie across,be cast ashore,wrecked,stranded,be thrown down,demolished(pe=crushed,mashed,soft))、「(ぼろぼろの)白骨化した・野ざらしの・頭骨(髑髏)」(「タレタレ」の反覆語尾が脱落して「タレ」から「サレ」と、「ペ」が「ベ」となった)

の転訛と解します。

1195さわぐ(騒ぐ)

 やかましい声や音を立てる。忙しく動き回る。多くの人々が不平不満などを訴えて騒動が起きる。やかましく苦情をいう。驚き恐れて混乱する。心が動揺する。ある事柄や人のことを多くの人々があれこれと噂する。酒宴などで、にぎやかに遊ぶ。

 この「さわぐ」は、

  「タワ・(ン)グ(ン)グ」、TAWHA-NGUNGU(tawha=burst open,crack;ngungu=eat greedy,gnaw)、「爆発するような(大きな声や音を出して)・人を悩ます(騒ぐ)」(「タワ」が「サワ」と、「(ン)グ(ン)グ」の反覆語尾が脱落し、NG音がG音に変化して「グ」となった)

の転訛と解します。

1196ざわめき

 声や音が騒がしく聞こえること。どことなく、ざわざわすること。また、その声や音。

 この「ざわめき」は、

  「タワ・メア・キ」、TAWHA-MEA-KI(tawha=burst open,crack;mea=thing,reason,cause,fact,event,do,say;ki=full,very)、「「爆発するような・大きな・声や音がすること(ざわめき)」(「タワ」が「サワ」から「ザワ」と、「メア」の語尾のA音が脱落して「メ」となった)

の転訛と解します。

1197さわり(触り)

 @触れること。人に接したときの感じ。

 A義太夫一曲中で、一番の聞かせどころ。また、聞きどころとされている部分。人形浄瑠璃で、義太夫以外の他流の曲節をすこし取り入れた部分。

 Bその場だけの一時のたわむれ。座興。

 この「さわり」は、

  @、B「タハ・リ」、TAHA-RI(taha=side,margin,edge,pass on one side,go by;ri=screen,protect,bind)、「(人の)側に・(結合)触れること(触り)」(「タハ」が「サハ」から「サワ」となった)

  A「タワ・アリ」、TAWHA-ARI(tawha=burst open,crack;ari=clear,visible,white,appearance,fence)、「明白に・(声を張り上げる)強調するもの(部分。触り)」(「タワ」の語尾のA音と「アリ」の語頭のA音が連結して「タワリ」から「サワリ」となった)

の転訛と解します。

1198ざんぎり(散切り)

 月代を剃らないで、頭髪を後ろへ撫でつけて結ばず、切り下げたままにした髪型。

 この「ざんぎり」は、

  「タ(ン)ガタ(ン)ガ・(ン)ギア・リヒ」、TANGATANGA-NGIA-RIHI(tangatanga=loose,not tight,easy,comfortable;ngia=seem,appear to be;rihi=flat)、「ばらばらで(結ばないで)・(髷が無く)平らに・見える(髪型。散切り)」(「タ(ン)ガタ(ン)ガ」の反覆語尾が脱落し、NG音がN音に変化して「タナ」から「サン」、「ザン」と、「(ン)ギア」のNG音がG音に変化し、語尾のA音が脱落して「ギ」と、「リヒ」のH音が脱落して「リ」となった)

の転訛と解します。

1199さんさしぐれ(さんさ時雨)

 仙台地方の民謡。「ションガイナ」という囃子詞を付けて唄う。この「さんさ」については、国語篇(その十一)の035さんさ時雨の項を、「しぐれ(時雨)」については、雑楽篇(その一)の233むらさめ(村雨)の項の「しぐれ(時雨)」を参照してください。

 この「さんさ・しぐれ」は、

  「タ(ン)ガタ(ン)ガ」、TANGATANGA(loose not tight,easy,comfortable,free from pain)、「心地よい(静かに降る。時雨)」(最初のNG音がN音に変化し、語尾のNGA音が脱落して「タナタ」から「サンサ」となった)

  「チヒ・(ン)グ・レイ」、TIHI-NGU-REI(tihi=sough or moan of the wind(tihitihi=make a gentle rustling sound,trifling,idling;ngu=silent,greedy,moan;rei=leap,rush,run)、「静かに・(急に)降り出す・しとしとと降る(雨)」(「チヒ」のH音が脱落して「チ」から「シ」と、「(ン)グ」のNG音がG音に変化して「グ」と、「レイ」が「レ」となった)

の転訛と解します。

1200さんした(三下)

 博徒仲間で下っ端の者。また、取るに足りないさま。

 この「さんした」は、

  「タ(ン)ガ・チ・タハ」、TANGA-TI-TAHA(tanga=be assembled,row,division or company of persons;ti=throw,cast;taha=side,margin,edge,pass on one side,go by)、「集団の・端に・置かれている(者。三下)」(「タ(ン)ガ」のNG音がN音に変化して「タナ」から「サン」と、「チ」がシ」と、「タハ」のH音が脱落して「タ」となった)

の転訛と解します。

1201さんすけ(三助)・おさん(お三)

 江戸時代、下男・小者など奉公人の通称。また、下女の通称「おさん」とともに用いて飯炊き男をいう。特に、銭湯で雇われて湯を沸かしたり、客の体を洗ったりする男の通称。

 この「さんすけ」、「おさん」は、

  「タノア・ツケケ」、TANOA-TUKEKE(tanoa=belittle,make of no account;tukeke=lazy)、「取るに足りない・怠け者(三助)」(「タノア」の語尾のA音が脱落して「タノ」から「サン」と、「ツケケ」の反覆語尾が脱落して「ツケ」から「スケ」となった)

  「オ・タノア」、O-TANOA(o=of,belonging to;tanoa=belittle,make of no account)、「取るに足りない・部類の(下女。お三)」(「タノア」の語尾のA音が脱落して「タノ」から「サン」となった)

の転訛と解します。

1202さんばそう(三番叟)

 能楽の祝言曲、式三番で三番目に舞う翁の意。物事の最初にすること。序幕。この「さんばそう(三番叟)」については、国語篇(その十三)の001翁の項の「さんばそう(三番三)」を参照してください。

 この「さんばそう」は、

  「タネ・パトウ」、TANE-PATOU(tane=man,showing manly qualities;patou=entice,provoke)、「(翁・面箱持の)誘いに応じて・男らしさを見せた(舞った者。三番叟)」(「タネ」が「タン」から「サン」と、「パトウ」が「バソウ」となった)

の転訛と解します。

1203さんぴん(三一)

 さいころなどで三の目と一の目がでること。(「さんぴんざむらい(三一侍)」または「さんぴんやっこ(三一奴)」の略)一年の扶持が三両一分であったところから、江戸時代、身分の低い侍や若党を卑しんでいう語。

 この「さんぴん」は、

  「タノア・ピネピネ」、TANOA-PINEPINE(tanoa=belittle,make of no account;pinepine=little(pine=close together))、「取るに足りない・ちっぽけな(侍。奴。三一)」(「タノア」の語尾のA音が脱落して「タノ」から「サン」と、「ピネピネ」の反覆語尾が脱落して「ピネ」から「ピン」となった)

の転訛と解します。

「シ」

1204しあさって(明明後日)

 あさっての次の日。今日を1日目として未来へ4日目。この「あさって(明後日)」については、国語篇(その二十)の044あさっての項を参照してください。

 この「しあさって」は、

  「チア・アタ・ツ・テ」、TIA-ATA-TU-TE(tia=abdomen,navel,mother,parent;ata=early morning;tu=stand.settle;te,tete=young shoot etc.)、「若芽(の位置。今日を成木とすれば、明日は双葉、明後日は若芽の状態と比喩)に・ある・(朝に始まる)日(明後日が)・親に当たる日(明後日の子供の日である明明後日)」(「チア」のA音と「アタ」の語頭のA音が連結して「チアサ」から「シアサ」と、「ツ」が「ッ」となった)

の転訛と解します。

1205しお(塩)

 塩辛い味をもった物質。海水または岩塩から製し、精製したものは白い結晶で食生活上なくてはならない調味料。また、日本ではいろいろな場で「清め」の材料として用いられる。また、塩化ナトリウムをしゅせいぶんとし、工業用にも重要な物質である。この「しお(塩)」については、国語篇(その九)の162しほ(しお)の項を参照してください。

 この「しお」は、

  「チ・ホ」、TI-HO(ti=throw,cast,overcome;ho=put out the lips,shout)、「嘗めると・口をしかめるもの(塩)」(「チ」が「シ」と、「ホ」のH音が脱落して「オ」となった)

  または「チ・ハウ」、TI-HAU(ti=throw,cast;hau=food used in the ceremonies of removing tapu)、「穢れを祓う儀式の際に・ばらまく食物(塩)」(「チ」が「シ」と、「ハウ」のAU音がO音に変化して「ホ」となり、さらにH音が脱落して「オ」となった)

の転訛と解します。

1206しおから(塩辛)

 魚介類、烏賊などの肉、腸(わた)、卵などを塩漬けにして発酵させた食品。

 この「しおから」は、

  「チ・ホ・カラ」、TI-HO-KARA(ti=throw,cast,overcome;ho=put out the lips,shout;kara,kakara=scent,flavour,savoury,odoriferous)、「嘗めると・口をしかめるもの(塩)で漬けた・風味の良いもの(塩辛)」(「チ」が「シ」と、「ホ」のH音が脱落して「オ」となった)

の転訛と解します。

1207しおさい(潮騒)

 潮の満ちてくる時に、波が音を立てて騒ぎ立つこと、また、その音。

 この「しおさい」は、

  「チオ・タイ」、TIO-TAI(tio=cry,call;tai=the sea,the coast,tide,wave,anger,rage)、「潮が・立てる音(潮騒)」(「チオ」が「シオ」と、「タイ」が「サイ」となった)

の転訛と解します。

1208しおどき(潮時)

 潮水が満ちる時、また、引く時。物事を行ったりやめたりするのに適する時。好機。時期。時間。特に出産や死亡の時についていう。潮が変化し、肴がよく餌を食う様になった時をいう。

 この「しおどき」は、

  「チオイ・トキ」、TIOI-TOKI(tioi=shake,sway from side to side;toki=fetch,altogether,without exception)、「物事の状態がある状態から他の状態に変わる(潮の満ち引き、行動の適不適、出産の適不適など)のを・捉える(判断する、行動するなど。潮時)」(「チオイ」の語尾のI音が脱落して「チオ」から「シオ」と、「トキ」が「ドキ」となった)

の転訛と解します。

1209しおり(枝折り。栞)

 @山道などで、目印のために木の枝を折って道しるべとすること。また、草を結び、紙を結び付けるなどして道しるべとすること。書物で読みかけのところ、あるいは後で読み返したいところなどに夾んでしるしとするもの。不案内の人のために分かり易く説明した手引き書、案内書。A城郭の出入り口。B枝折り戸の略。枝折り垣の略。

 この「しおり」は、

  「チオリ」、TIORI(hold up to view,wave to and fro,conspicuous)、@「目立つもの(枝折り、道しるべ。栞)」、「(出入りを)注視させないもの(城郭の出入り口)」または「不規則に折れ曲がっているもの(枝折り戸。枝折り垣)」(「チオリ」が「シオリ」となった)

の転訛と解します。

1210しかつめらしい(鹿爪らしい)

 もっともらしい。堅苦しくまじめくさった感じがする。形式ばつている。

 この「しかつめらしい」は、

  「チカ・ツ・メラメラ・チヒ」、TIKA-TU-MERAMERA-TIHI(tika=straight,direct,keeping a direct course,just,right,correct;tu=stand,settle,fight with,energetic;meramera=prepared by steeping in water,as certain foods were;tihi=summit,top,lie in a heap)、「規則に・忠実で・万全の・準備をしている(しかつめらしい)」(「チカ」が「シカ」と、「メラメラ」の反覆語尾が脱落して「メラ」と、「チヒ」のH音が脱落して「シイ」となった)

の転訛と解します。

1211しかと(確と)

 はっきりしているさま。分明に。たしかであるさま。確実なさま。いいかげんでないさま。十分に。完全に。すきまのないさま。自分の望みどおりにするさま。

 この「しかと」は、

  「チカ・ト」、TIKA-TO(tika=straight,direct,keeping a direct course,just,right,correct;to=haul,drag)、「確実に・遂行するさま(確と)」(「チカ」が「シカ」となった)

  または「チカ・タウ」、TIKA-TAU(tika=straight,direct,keeping a direct course,just,right,correct;tau=come to rest,be suitable,be comely,befit,be possible,be able)、「確実に・遂行するさま(確と)」(「チカ」が「シカ」と、「タウ」のAU音がO音に変化して「ト」となった)

の転訛と解します。

1212しがない

 頼りにできない惨めなさまである。転じて、取るに足りない。つまらない。貧しい。乏しい。貧乏たらしい。

 この「しがない」は、

  「チ・(ン)ガ(ン)ガ・アイ」、TI-NGANGA-AI(ti=throw,cast,overcome;nganga=breathe heavily or with difficulty,make a hoarse or harsh noise,stone of fruit,dregs,refuse,soot;ai=expressing the reason for which anything is done)、「(ごみのような)ぼろを着た姿を・人目に晒して・いる(しがない)」(「チ」が「シ」と、「(ン)ガ(ン)ガ」の最初のNG音がG音に、次のNG音がN音に変化して「ガナ」となり、その語尾のA音と「アイ」の語頭のA音が連結して「ガナイ」となった)

の転訛と解します。

1213しかめっつら(しかめっ面)

 眉のあたりに皺を寄せた、不機嫌そうな顔。渋面。

 この「しかめっつら」は、

  「チカ・メ・ツラハ」、TIKA-ME-TURAHA(tika=straight,direct,keeping a direct course,just,right,correct;me=if,as if,like;turaha=startled,frightened)、「直截に・びっくりした・ような(顔をして。しかめっつら)」(「チカ」が「シカ」と、「メ」が「メッ」と、「ツラハ」のH音が脱落して「ツラ」となった)

の転訛と解します。

1214しがらみ(柵)

 水流を堰き止めるために、川の中に杭を打ち並べ、その両側から柴や竹などをからみつけたもの。物事をせき止めるもの。まとわりついて身を束縛するもの。

 この「しがらみ」は、

  「チ(ン)ガ・ラミ」、TINGA-RAMI(tinga=likely;rami=squeeze)、「抱きついて離そうとしない・ように見えるもの(しがらみ)」(「チ(ン)ガ」のNG音がG音に変化して「シガ」となった)

の転訛と解します。

1215しきい(敷居)

 地上や床に敷いてその上に座るもの。ござ、むしろの類。門戸の内と外を区別するために敷いた横木。また、部屋の境の戸や障子あるいはふすまの下に、それを開け閉てするためにつけられた溝のついた横木。しきみ。かもい。古くからの民俗では、敷居は踏んではならない、枕にして寝てはならないなどの禁忌がある。

 この「しきい」は、

  「チキ・ヒ」、TIKI-HI(tiki=a post to mark a place which was tapu;hi=raise,rise)、「(地面から一段)高くなつた・禁忌があることを表示する横木(敷居)」(「チキ」が「シキ」と、「ヒ」のH音が脱落して「イ」となった)

  きたは「チキ・ヰヰ」、TIKI-WIWI(tiki=a post to mark a place which was tapu;wiwi=rushes,flinch,make a ripple sound)、「(その前で人がひるむ)一端立ち止まる・禁忌があることを表示する横木(敷居)」(「チキ」が「シキ」と、「ヰヰ」の反覆語尾が脱落して「ヰ」から「イ」となった)

の転訛と解します。

1216しきり(仕切り)

 仕切ること。隔てをもうけること。また、そのもの。区切られたまとまり。商家などで取引または帳簿のしめくくりをすること。決算。仕切金の略。仕切状の略。など。

 この「しきり」は、

  「チキ・リ」、TIKI-RI(tiki=a post to mark a place which was tapu;ri=screen,protect,bind)、「(そこを)越えて入ってはならないという禁忌を表示する・(場所を)隔てるもの(仕切り)」(「チキ」が「シキ」となった)

の転訛と解します。

1217しく(如く。及く。若く)

 先行しているものに追いつく。程度の上のものに匹敵する。肩を並べる。

 この「しく」は、

  「チ・ヒク」、TI-HIKU(ti=throw,cast,overcome;hiku=tail of a fish or reptile,rear of an army on march or of a company of travellers)、「(先行しているものの)後尾を・圧倒する(追いつく。如く)」(「チ」のI音と「ヒク」のH音が脱落した「イク」の語頭のI音が連結して「チク」から「シク」となった)

の転訛と解します。

1218しぐさ(仕草)

 ある物事をする時の態度ややり方。舞台上の俳優の動作、表情、所作。転じて、一般的に、動作、表情。

 この「しぐさ」は、

  「チ・(ン)グ(ン)グ・タ(ン)ガ」、TI-NGUNGU-TANGA(ti=throw,cast;ngungu=glance off,turn aside,lead astray;tanga=circumstance or time or place of dashing or striking etc.)、「(俳優が)動いたり・止まったりして・顔や体、手足を動かすこと(仕草)」(「チ」が「シ」と、「(ン)グ(ン)グ」のNG音がG音に変化し、反覆語尾が脱落して「グ」と、「タ(ン)ガ」の名詞形語尾のNGA音が脱落して「タ」から「サ」となった)

の転訛と解します。

1219しくじる(失敗する)

 物事をしそこなう。やりそこなう。失敗する。過失などがあって店(たな。勤務先)の出入りを止められたり解雇されたりする。勤めを失敗する。機嫌をそこねる。気分をこわす。

 この「しくじる」は、

  「チヒ・クチ・ル」、TIHI-KUTI-RU(tihi=sough,moan,of the wind;kuti=draw tightly together,contract,pinch;ru=shake,agitate,scatter)、「嘆いて・(身を)小さくして・震える(しくじる)」(「チヒ」のH音が脱落して「チ」から「シ」と、「クチ」が「クジ」となった)

の転訛と解します。

1220じぐち(地口)

 普通世間に行われている成語に語呂を合わせた言葉のしゃれ。道路面に沿った敷地の長さ、また、家屋の間口をいう。

 この「じぐち」は、

  「チア・クチ」、TIA-KUTI(tia=etia=as it were,as if;kuti=draw tightly together,contract,pinch)、「(閉めるもの)口にする言葉と・まるで同じもの(語呂合わせ。地口)」(「チア」の語尾のA音が脱落して「チ」から「ジ」と、「クチ」が「グチ」となった)

の転訛と解します。

1221しぐれ(時雨)

 主として晩秋から初冬にかけての、降ったり止んだりする小雨。また、そのような曇りがちの空模様。この「しぐれ(時雨)」については、雑楽篇(その一)の233むらさめ(村雨)の項の「しぐれ(時雨)」を参照してください。

 この「しぐれ」は、

  「チヒ・(ン)グ・レイ」、TIHI-NGU-REI(tihi=sough or moan of the wind(tihitihi=make a gentle rustling sound,trifling,idling;ngu=silent,greedy,moan;rei=leap,rush,run)、「静かに・(急に)降り出す・しとしとと降る(雨)」(「チヒ」のH音が脱落して「チ」から「シ」と、「(ン)グ」のNG音がG音に変化して「グ」と、「レイ」が「レ」となった)

の転訛と解します。

1222しける(時化る)

 空が曇る。風雨がひどくて、海が荒れる。金回りが悪く、不景気になる。生気や活気がなくなる。しょげる。失敗する。湿気を帯びる。

 この「しける」は、

  「チカイ・ル」、TIKAI-RU(tikai=insult,domineer over,presumption,disrespect;ru=shake,agitate,scatter)、「暴威を振るって・震動する(時化る)」(「チカイ」のAI音がE音に変化して「チケ」から「シケ」となった)

の転訛と解します。

1223しこ(四股)

 力士が土俵上で両足を開いて構え、足を左右かわるがわる高くあげ、力をこめて地を踏む動作。

 この「しこ」は、

  「チコ」、TIKO(settled upon,as by frost,stand out,protrude)、「(力を)誇示すること(四股)」(「チコ」が「シコ」となった)

の転訛と解します。

1224しごき(扱き)

 手などで握りしめて引くこと。厳しく鍛えること。厳しい訓練。しごき帯の略。

 この「しごき」は、

  「チ・(ン)ガウ・キ」、TI-NGAU-KI(ti=throw,cast,overcome;ngau=bite,hurt,act upon,attack;ki=full,very)、「(たくさんの)厳しい・鍛錬を・科する(しごき)」(「チ」が「シ」と、「(ン)ガウ」のNG音がG音に、AU音がO音に変化して「ゴ」となった)

の転訛と解します。

1225しこな(四股名。醜名)

 諱(いみな)。本名。実名。自分の名をへりくだっていう語。あだな。異名。相撲の力士の呼び名。

 この「しこな」は、

  「チコ・ナ」、TIKO-NA(tiko=settled upon,as by frost,stand out,protrude;na=of these,belonging to,indicating paretage or descent)、「(自らを)誇示する・(血統を表す)名(しこ名)」(「チコ」が「シコ」となった)

の転訛と解します。

1226しこり(凝り)

 筋肉などが凝ってかたまること。固まって塊状になること。また、その塊。物事を解決した後でもまだ残っているすっきりしない気分。 感情のわだかまり。

 この「しこり」は、

  「チコ・リ」、TIKO-RI(tiko=settled upon,as by frost,stand out,protrude;ri=screen,protect,bind)、「突出して・堅くなっているもの(しこり)」(「チコ」が「シコ」となった)

の転訛と解します。

1227しし(宍。獣。猪。鹿)

 食用とする猪や鹿などの肉をいう。

 この「しし」は、

  「チチ」、titi(go astray)、「(山野を)うろつく(動物。その肉)」 (「チチ」が「シシ」となった)

の転訛と解します。

1228しじま(静寂)

 口を閉じて黙りこくっていること。物音一つしないで森閑としていること。静まりかえっていること。

 この「しじま」は、

  「チチ・マ」、TITI-MA(titi=go astray;ma=white,pale,faded,clean,freed from tapu)、「(音が)消えて行く(中を)・あてどなくさまよっているような(静寂)」(「チチ」が「シジ」となった)

の転訛と解します。

1229ししまい(獅子舞)

 獅子頭を被って行う舞。また、それを舞う人。伎楽、舞楽で用いられたが、後大神楽などで行われる。五穀豊穣の祈祷や、悪魔を祓い清めるものとして、今日でも各地の祭礼行列に行われる。特に、新年の祝い事の一つとして、獅子頭をかぶり、笛・太鼓・鉦などで囃して家々を舞い歩き、米や銭などを請うもの。能楽の囃子による舞事の一つ。

 この「ししまい」は、

  「チチ・マイ」、TITI-MAI(titi=go astray;mai,maimai=a dance or haka,to welcome guests at a tangi)、「(山野をうろつく獣)獅子の仮装をして・舞うもの(獅子舞)」(「チチ」が「シシ」となった)

の転訛と解します。

1230しずく(滴)

 液体のしたたり落ちる粒状のもの。点滴。

 この「しずく」は、

  「チ・ツク」、TI-TUKU(ti=throw,cast;tuku=let go,leave,send)、「(液体が)放り出されて・落ちてゆくもの(滴)」(「チ」が「シ」と、「ツク」が「ズク」となった)

の転訛と解します。

1231したう(慕う)

 @後を追う。恋しく思って後を追う。逃げる者を追跡する。A恋しくおもう。会いたいと思う。B徳や優れたおこないを範としてむ、それに習おうとする。範とすべき物事について手本とする。C物が離れなくなる。付着する。D欲しいと思う。

 この「したう」は、

  @、B、C「チ・タウ」、TI-TAU(ti=throw,cast,overcome,particularly of the emotions;tau=squeeze,express,come to rest,settle down,be suitable,be comely,be possible)、「(対象者を)把握する(またはそれを範として立派になる)ことを・断行する(慕う)」(「チ」が「シ」となった)

  A、D「チ・タフ」、TI-TAHU(ti=throw,cast,overcome,particularly of the emotions;tahu=husband,lover,darling,any other near relative)、「恋する(人への)思いが・(圧倒される)いっぱいになる(慕う)」(「チ」が「シ」と、「タフ」のH音が脱落して「タウ」となった)

の転訛と解します。

1232したがう(従う)

 @後について行く。随行する。相手の勢いに負けて降参する。服従する。逆らわないで言うなりになる。自然の力、欲望などに動かされるままに任せる。道、川などに沿って進む。きまりや習慣などのままに行動する。

 A物事の程度や時、場所、状態などに順応する。ある物事が他の物事の変化に対応する。ある事に従事する。

 この「したがう」は、

  @「チ・タ(ン)ガ・アウ」、TI-TANGA-AU(ti=throw,cast,overcome;tanga=be assembled,row,tier,division or company of persons;au=firm,intense)、「しっかりと・(あるものと)一体に・(身を投げ出す)なる(随行する、服従する、自然の力などに任せる、規則・習慣などのままに行動するなど。従う)」(「チ」が「シ」と、「タ(ン)ガ」のNG音がG音に変化して「タガ」となり、その語尾のA音と「アウ」の語頭のA音が連結して「タガウ」となった)

  A「チ・タ(ン)ガ・アフ」、TI-TANGA-AHU(ti=throw,cast,overcome;tanga,tatanga=alert,prompt,ready,ready to hand;ahu=tend,foster,treat with)、「状況に応じて・機敏に対応するように・(身を投げ出す)する(従う)」(「チ」が「シ」と、「タ(ン)ガ」のNG音がG音に変化して「タガ」となり、その語尾のA音と「アフ」のH音が脱落した「アウ」の語頭のA音が連結して「タガウ」となった)

の転訛と解します。

1233したく(支度)

 計算すること。見積もること。あらかじめ計画を立てること。心づもり。計画に従って準備すること。服装を整えること。身支度。食事をすること。嫁入り道具、また、支度金。

 この「したく」は、

  「チ・タ(ン)ガ・ク」、TI-TANGA-KU(ti=throw,cast;tanga,tatanga=alert,prompt,ready,ready to hand;ku=silent,wearied)、「静かに・準備を・整える(支度)」(「チ」が「シ」と、「タ(ン)ガ」の名詞形語尾のNGA音が脱落して「タ」となった)

の転訛と解します。

1234したしむ(親しむ)

 ある人と親しくする。むつまじくする。懇意にする。ある物事に何度も接して、身近に感じる。

 この「したしむ」は、

  「チタハ・チム」、TITAHA-TIMU(titaha=lean to one side,slant,decline;timu=shoulder,end,tail)、「肩に・寄りかかる(親しむ)」(「チタハ」のH音が脱落して「シタ」と、「チム」が「シム」となった)

の転訛と解します。

1235したたか(強か)

 しっかりしているさま。確かなさま。分量が多いさま。おびただしいさま。程度がはなはだしいさま。大層なさま。非常に強いさま。勇猛であるさま。みかけはそうは見えないが、相当の能力をもち、簡単にはこちらの思うようにならない人のさま。一筋縄ではいかないさま。

 この「したたか」は、

  「チヒ・タタカ」、TIHI-TATAKA(tihi=summit,top,lie in a heap;tataka=turn or roll from side to side)、「最高に(たいへん)・(こちらからあちらへと回転する)的確・迅速に対応して翻弄する(強か)」(「チヒ」のH音が脱落して「シ」となった)

の転訛と解します。

1236したたる(滴る)

 水などがしずくとなって、下に垂れ落ちる。みずみずしい鮮やかさが現れる。また、感情などが溢れるばかりである。下に垂れ下がる。

 この「したたる」は、

  「チタハ・タ・アル」、TITAHA-TA-ARU(titaha=lean to one side,slant,decline;ta=dash,beat,lay;aru=follow,pursue)、「(水などが)傾いて・後を追って・落ちる(滴る)」(「チタハ」のH音が脱落して「シタ」と、「タ」のA音と「アル」の語頭のA音が連結して「タル」となった)

の転訛と解します。

1237したりがお(したり顔)

 うまくやったというような顔つき。得意そうなさま。

 この「したりがお」は、

  「チタリ・カホ」、TITARI-KAHO(titari=scatter about,disperse,distribute;kaho=anything light-coloured,or perhaps reddish or yellowish)、「(食料や金銭などを部族の人々に気前よく分配したときのような)得意そうな・顔つき(したり顔)」(「チタリ」が「シタリ」と、「カホ」のH音が脱落し、濁音化して「ガオ」となった)

の転訛と解します。

1238しだれる(垂れる)

 長く垂れ下がる。下に垂れる。

 この「しだれる」は、

  「チ・タレ・ル」、TI-TARE-RU(ti=throw,cast;tare=hang,be drawn towards;ru=shake,agitate,scatter)、「放り出されたように・垂れ・下がる(垂れる)」(「チ」が「シ」と、「タレ」が「ダレ」となった)

の転訛と解します。

1239じたんだ(地団駄)

 地を何回も激しく踏みつけること。怒ったり、悔しがったりする時の動作。

 この「じだんだ」は、

  「チタ(ン)ガ・タ」、TITANGA-TA(titanga=loose(tangatanga=loose,easy,comfortable,free from pain,alert);ta=dash,beat,lay)、「(何回も)地を踏みつけて・(怒りや悔恨を)静める(地団駄)」(「チタ(ン)ガ」のNG音がN音に変化して「チタナ」から「ジダン」と、「タ」が「ダ」となった)

の転訛と解します。

1240しちりん(七厘)

 (物を煮るのに価が七厘ほどの炭で足りる意からとする説がある)焜炉のうち、特に土製のもの。かんてき。この「しちりん(七輪)」およひせ「かんてき」については、雑楽篇(その二)の1038炉(ろ)の項の「しちりん(七輪)」および「かんてき」を参照してください。

 この「しちりん」は、

  「チチ・リ(ン)ガ」、TITI-RINGA(titi=go astray;ringa=hand,arm)、「手に持って・持ち運べるもの(七輪)」(「チチ」が「シチ」と、「リ(ン)ガ」」のNG音がN音に変化して「リナ」から「リン」となった)

の転訛と解します。

1241しっかいや(悉皆屋)

 (「悉皆」=「一切」。一切を引き受けることを看板に掲げたところからとされる)江戸時代、大坂で染物・染替・洗張りなどの注文をとって、京都へ送るのを業とした者。転じて染物や洗張りなどを業とする者。また、その店。

 この「しっかいや」は、

  「チヒ・ツカヰカヰ・イア」、TIHI-TUKAWIKAWI-IA(tihi=summit,top,lie in a heap;tukawikawi=eager,quick,nimble;ia=indeed)、「実に・(最高に)一番・敏速に(仕事をする店。悉皆屋)」(「チヒ」のH音が脱落して「シ」と、「ツカヰカヰ」の反覆語尾が脱落して「ツカヰ」から「ッカイ」と、「イア」が「ヤ」となった)

の転訛と解します。

1242しっくい(漆喰)

 (「石灰」の唐音。「漆喰」は宛字とする説がある)消石灰なたは牡蠣などの貝灰にふのりや角又(つのまた)などを練り合わせたもので、壁や天井などの塗料、あるいは石や煉瓦の接合の材料として用いる。また、漆喰土として、土間や流し場などに用いるものもいう。

 この「しっくい」は、

  「チヒ・ツ・クイ」、TIHI-TU-KUI(tihi=summit,top,lie in a heap;tu=fight with,be ignited,energetic;(Hawaii)kui=to join,stitch,splice,seam)、「最高に・強力に・接着するもの(漆喰)」(「チヒ」のH音が脱落して「シ」と、「ツ」が「ッ」となった)

の転訛と解します。

1243しつけ(仕付。躾)

 作りつけること。設けて置くこと。習わしとすること。習慣。礼儀作法を身につけさせること。また、身に付いた礼儀作法。処罰すること。制裁を加えること。奉公させること。また、嫁に行かせること。着物などの縫い目が整うように、また、仕立てが狂わないように、仮に糸で縁を粗く縫っておくこと。また、その糸。

 この「しつけ」は、

  「チ・ツ・カイ」、TI-TU-KAI(ti=throw,cast;tu=fight with,be ignited,energetic,stand,settle;kai=fulfil its proper function,have full play)、「なすべきことをきちんと行うことを・懸命に行う・ようにさせる(仕付。躾)」(「チ」が「シ」と、「カイ」のAI音がE音に変化して「ケ」となった)

の転訛と解します。

1244しつこい

 色彩、味、香りなどが濃厚である。くどい。つきまとってうるさい。煩わしい。執拗である。

 この「しつこい」は、

  「チヒ・ツ・コイ」、TIHI-TU-KOI((tihi=summit,top,lie in a heap;tu=fight with,be ignited,energetic;koi=move about,in poetry=ki=full,very)、「最高に・(懸命に)執拗に・(行動する)働きかける(しつこい)」(「チヒ」のH音が脱落して「シ」となった)

の転訛と解します。

1245しっぺいがえし(竹篦返し)

 (竹篦で打たれたのを)すぐに打ち返すこと。また、ある仕打ちをうけ、同じ程度、方法で仕返しをすること。

 この「しっぺいがえし」は、

  「チ・ツ・ペヒペヒ・カヘカヘ・チ」、TI-TU-PEHIPEHI-KAHEKAHE-TI(ti=throw,cast;tu=fight with,be ignited,energetic,stand,settle;pehipehi=waylay,ambuscade,return for a present;kahekahe=pant)、「てひどい・待ち伏せを・受けた・(その仕返しをしたいと)熱望して・(それを)行う(竹篦返し)」(「チ」が「シ」と、「ツ」が「ッ」と、「ペヒペヒ」の反覆語尾およびH音が脱落して「ペイ」と、「カヘカヘ」の反覆語尾およびH音が脱落して「カエ」と、「チ」が「シ」となった」)

の転訛と解します。

1246しっぽ(尻尾)

 獣などの尾。魚の尾びれ。細長いもののはし。順位の末の方。隠し事、ごまかしなどが表面に現れるいとぐち。

 この「しっぽ」は、

  「チ・ツポウ」、TI-TUPOU(ti=throw,cast;tupou=bow the head,stoop down)、「(体から)でている・垂れているもの(尾)」(「チ」が「シ」と、「ツポウ」の語尾のU音が脱落して「ツポ」から「ッポ」となった)

の転訛と解します。

1247しっぽう(七宝)

 七宝焼きの略。普通には銅または金、銀などを下地にして、面に凹みをつくり、そこに金属の酸化物を着色剤として用いた透明または不透明のガラス質の釉薬を埋め、焼き付けて花鳥、人物など種々の模様を表したもの。

 この「しっぽう」は、

  「チ・ツ・ポウ」、TI-TU-POU(ti=throw,cast;tu=fight with,be ignited,energetic,stand,settle;pou=pole,stiCk in,fix,render immovable,fasten to a stake)、「(塗料を台に)塗って・強く・固定したもの(七宝)」(「チ」が「シ」と、「ツ」が「ッ」となった)

の転訛と解します。

1248しっぽく(卓袱)

 (「卓袱」の唐音からとする説がある)中国風の食卓を覆う布。転じて、四本脚の食卓。卓袱料理の略。そば、またはうどんに、かまぼこ、きのこ、野菜などの具をのせて、かけ汁をかけたもの。

 この「しっぽく」は、

  「チ・ツ・パウク」、TI-TU-PAUKU(ti=throw,cast;tu=stand,settle;pauku=a thick closely woven cloak of flax,a cape with ornamented border)、「(食卓に)掛けて・固定する・(マントのような)布(卓袱)」(「チ」が「シ」と、「ツ」が「ッ」と、「パウク」のAU音がO音に変化して「ポク」となった)

の転訛と解します。

1249して(仕手)

 ある特定の動作・作業をする人。特定の分野の技術・芸能などの専門家。あるいはそれに優れた人。能楽・狂言などの主人公の役。また、その演者。芝居、踊りなどの演者。市場で定期売買をする人。一般には、大口の売り手、買い手をいう。

 この「して」は、

  「チ・テイ」、TI-TEI(ti=throw,cast;tei,teitei=high,tall,summit,top)、「高い地位に・置かれている者(仕手)」(「チ」が「シ」と、「テイ」が「テ」となった)

の転訛と解します。

1250しで(四手)

 注連縄、または玉串などにつけて垂らす紙。古くは木綿(ゆう)を用いた。ヤクの尾を束ねて下げる小さな払子のようなもの。槍の柄につけて槍印とする。など。

 この「しで」は、

  「チ・テイ」、TI-TEI(ti=throw,cast;tei,teitei=high,tall,summit,top)、「高いところから・垂れ下げるもの(四手)」(「チ」が「シ」と、「テイ」が「テ」となった)

の転訛と解します。

1251しとうず(下沓)

 束帯の時などに、沓の下に用いる布帛製の履き物。

 この「しとうず」は、

  「チ・トウ・ツ」、TI-TOU-TU(ti=throw,cast;tou=anus,lower end of anything;tu=stand,settle)、「(沓の)下に・置いて・履くもの(下沓)」(「チ」が「シ」と、「ツ」が「ズ」となった)

の転訛と解します。

1252しとぎ(粢)

 粢は、古く神饌として作られた餅で、米(粳・糯)を水ですりつぶしたものを蒸して作り、後に米粉を蒸して作った。この「しとぎ(粢)」については、雑楽篇(その二)の542いね(稲)の項の「しとぎ(粢)」を参照してください。

 この「しとぎ」は、

  「チト(ン)ギ」、TITONGI(peck at,nibble(titoki=chop))、「(米を細かく食い切る)摺り下ろす(しとぎ)」(「チト(ン)ギ」のNG音がG音に変化して「チトギ」から「シトギ」となった)

の転訛と解します。

1253しどけない

 規律がなく雑然としている。いいかげんでしまりがない。だらしない。うちとけた親しみがある。幼く、しっかりしていない。なよなよとして頼りない。この「しどけない」については、国語篇(その十五)の127だらしないの項の「シドゲネ」を参照してください。

 この「しどけない」は、

   「チ・タウケ・ナイ」、TI-TAUKE-NAI(ti=throw,cast;tauke=apart,separate;nai=nei=stretched forward,reaching out)、「投げやりで・バラバラの(締まりがない)・ままである(だらしない)」(「チ」が「シ」と、「タウケ」のAU音がO音に変化して「トケ」から「ドケ」となった)

の転訛と解します。

1254しとね(褥)

 座ったり寝たりする時、下に敷く敷物。使途により方形または長方形で、多くは布帛製真綿包みとする。

 この「しとね」は、

  「チト・ネイ」、TITO-NEI(tito=shaggy;nei,neinei=stretched forward,reaching out)、「絡み合ってもつれた(真綿でくるんだ木綿を)・(方形または長方形に)伸ばしたもの(褥)」(「チト」が「シト」と、「ネイ」が「ネ」となった)

の転訛と解します。

1255しどろもどろ

 言動に秩序がなく、たいそう乱れているさま。また、足下の定まらないさま。

 この「しどろもどろ」は、

  「チトロ・モトロ」、TITORO-MOTORO(titoro=dreamily,as in a dream;motoro=woo,pay addresses to(motorotoro=proceed stealthily and secretly))、「夢を見ているように(言動が定まらず)・足を忍ばせてそっと歩くような(しどろもどろ)」(「チトロ」が「シドロ」と、「モトロ」が「モドロ」となった)

の転訛と解します。

1256〜しな

 動詞の連用形に付いて、「その時」、「ついで」の意を表す。「寝しな」、「帰りしな」など。

 この「〜しな」は、

  「チ・ナ」、TI-NA(ti=throw,cast;na=by,made by,possessed by,by reason of,by way of)、「(〜するその時に、または〜するのに併せて)何かの行動をする・機会を与える(〜しな)」(「チ」が「シ」となった)

の転訛と解します。

1257しない(竹刀)

 (「撓い竹」の意とする説がある)剣道の稽古に用いられる、割竹を束ねて造った刀に模したもの。

 この「しない」は、

  「チネイ」、TINEI(put out,quench,extinguish,destroy)、「(勢いを)弱めるもの(竹刀)」(「チネイ」かせ「シナイ」となった)

の転訛と解します。

1258しなをつくる(科をつくる)

 上品そうな様子をする。体裁ぶる。上品ぶる。艶めかしい様子、動作などをする。あだっぽく振る舞う。態度をとる。そういうふりをする。

 この「しなをつくる」は、

  「チ・ナハナハ・ワホ・ツク・ル」、TI-NAHANAHA-WAHO-TUKU-RU(ti=throw,cast;nahanaha=well arranged,in good order;waho=the outside,the open sea,the coast;tuku=let go,leave,allow,send,presentsettle down;ru=shake,agitate,scatter)、「上品そうな(または艶めかしい(良く整えられた)表情あるいは動作を)・外面に・出して・懸命に・振る舞う(しなをつくる)」(「チ」が「シ」と、「ナハナハ」の反覆語尾およびH音が脱落して、「ナ」と、「ワホ」のH音が脱落した「ワオ」のAO音がO音に変化して「ヲ」となった)  

の転訛と解します。

1259しにせ(老舗)

 @父祖の家業を守り継ぐこと。商売・経営をして信用を得ること。伝統、格式、信用があり、繁盛している店。A守り続けている方針や主義。

 この「しにせ」は、

  「チニ・テイ」、TINI-TEI(tini=very many,host,myrial;tei,teitei=high,tall,summit,top)、@「たいへん多数の(店の中でも)・高い地位にあるもの(老舗)」またはA「店主の・(高く捧持する)守り続ける方針(または主義)(老舗)」(゜チニ」が「シニ」と、「テイ」が「セ」となった)

の転訛と解します。

1260しのぎ(凌ぎ。鎬)

 @困難なことや苦しみなどを我慢して切り抜けること。また、その方法や手段。囲碁で責められた場合、最強の抵抗をするか、うまくかわして脱出すること。

 A刃物の刃と峰(背)の境界に稜を立てて高くしたところ。建築部材の上端の中央を刀の背峰形に高くした形。

 この「しのぎ」は、

  @「チノ・(ン)ギア」、TINO-NGIA(tino=essentiality,self,reality,exact,veritable,quite,very;ngia=seem,appear to be)、「自己の真髄(を発揮した)・ように見えること(凌ぎ)」(「チノ」が「シノ」と、「(ン)ギア」のNG音がG音に変化し、語尾のA音が脱落して「ギ」となった)

  A「チ(ン)ゴウ(ン)ゴウ・(ン)ギア」、TINGOUNGOU-NGIA(tingoungou=protuberance,knob;ngia=seem,appear to be)、「高くなっている・ように見える部分(鎬)」(「チ(ン)ゴウ(ン)ゴウ」のNG音がN音に、OU音がO音に変化し、反覆語尾が脱落して「チノ」から「シノ」と、「(ン)ギア」のNG音がG音に変化し、語尾のA音が脱落して「ギ」となった)

の転訛と解します。

1261しののめ(東雲)

 東の空に明るさがわずかに動くころ。転じて、あけがた。夜明け。明け方に東の空にたなびく雲。(〜する)明け方の光りを受けること。暁光を受けて彩られること。香木の名。

 この「しののめ」は、

  「チノ・ナウ・マイ」、TINO-NAU-MAI(tino=essentiality,self,reality,exact,veritable,quite,very;nau=go,come;mai=become quiet,hither,to indicate direction or motion towards;nau mai=welcome!,come!;naumai=guest)、「(あの現実の)暁の光が・やって・来た(東雲)」(「チノ」が「シノ」と、「ナウ」のAU音がO音に変化して「ノ」と、「マイ」のAI音がE音に変化して「メ」となった)

の転訛と解します。

1262しばい(芝居)

 (〜する)芝生に座って居ること。芝生に席などをこしらえて座ること。また、その場所。猿楽、曲舞、田楽などで、舞台と貴人の席との間の芝生にこしらえた庶民の見物席。演劇などの興行物。歌舞伎などを興行する建物。また、その見物席。特に、桟敷に対して大衆の見物席をいう。また、そこにいる人々。(〜する)役者などが演技をすること。また、その演技。転じて、計画的に人をだまそうとして、物事をしたり入ったりすること。また、そういう言動。

 この「しばい」は、

  「チパ・ヰ」、TIPA-WI(tipa=broad,large,extended;wi=tussock grass,a game)、「(草むらをつくる)草が生えている・広い場所(観客席または大衆席。芝居)」または「興行を行う場所(または建物)の・広い場所(観客席または大衆席。芝居)」または「興行が・発展したもの(役者の演技または計画的なだまし。芝居)」(「チパ」が「シバ」と、「ヰ」が「イ」となった)

の転訛と解します。

1263しばく(叩く)

 鞭や細い棒などで強く叩く。細い棒やひもなどを強く打ち振る。

 この「しばく」は、

  「チ・パク」、TI-PAKU(ti=throw,cast;paku=make a sudden sound or report,extend,beat,knock)、「打撃を・食らわす(叩く)」(「チ」が「シ」と、「パク」が「バク」となった)

の転訛と解します。

1264しばしば(屡々)

 たびたび。しきりに。幾度も。何回となく。

 この「しばしば」は、

  「チパチパ」、TIPATIPA(go astray)、「(道に迷う)何回となく道を踏み外す(屡々)」(「チパチパ」が「シバシバ」となった)

の転訛と解します。

1265しばらく(暫く)

 少しの間。一時。ちょっと。仮に。一応。当分の間。久しく。少し長い間。ひとまず。当分。当面。

 この「しばらく」は、

  「チパ・ラ・アク」、TIPA-RA-AKU(tipa=turn aside,escape,ambush;ra=there,yonder,then,but;aku=delay,take time over anything)、「脇に寄って・そこで・(少しの)時間をかける(暫く)」(「チパ」が「シバ」と、「ラ」のA音と「アク」の語頭のA音が連結して「ラク」となった)

の転訛と解します。

1266しぶき(飛沫)

雨風が烈しく吹き付けること。また、その雨。液体または液体状のものが細かく飛び散ること。また、その水滴。

 この「しぶき」は、

  「チ・フキ」、TI-HUKI(ti=throw,cast,overcome;huki=transfix or split a bird etc. on a stick,stick in as feathers in the hair,avenge death etc.,flash,glance suddenly)、「(雨風や水滴が)刺すように吹き・付ける(または飛び散る)(飛沫)」(「チ」が「シ」と、「フキ」が濁音化とて「ブキ」となつた)

の転訛と解します。

1267しぶる(渋る)

 事物がつかえ勝ちになったり、滑らかに進行しなくなったりする。すらすらと動かなくなる。気が進まなくなる。ためらう。渋り腹になる。体の機能が不調になり、十分働かなくなる。しびれる。

 この「しぶる」は、

  「チ・フル」、TI-HURU(ti=throw,cast,overcome;huru=dislike,refuse)、「(物事を)したくなくなる(拒む。渋る)」(「チ」が「シ」と、「フル」が濁音化して「ブル」となった)

の転訛と解します。

1268じべた(地面)

 土地の表面。地面。

 この「じべた」は、

  「チ・ペタペタ」、TI-PETAPETA(ti=throw,cast;petapeta=worn out,rags,all at once)、「使い古されて・放り投げられたようなもの(地面)」(「チ」が「ジ」と、「ペタペタ」の反覆語尾が脱落して「ベタ」となった)

の転訛と解します。

1269しま(島)

 @周囲を水で囲まれた陸地。水流に臨んでいる島のようなところ。泉水、築山などのある庭園。島台の略。

 A集落、村落の意。ある一区画をなした土地。一般社会と区別して限られた地帯。特に、遊郭や貧民街、やくざの縄張りなどの地帯をいう。

 この「しま」は、

  @「チマ」、TIMA(a wooden implement for cultivating the soil,work the soil with a tima)、「(その周囲を鍬で)掘り裂いたような地形の場所(島)」(「チマ」が「シマ」となつた)

  A「チマ(ン)ガ」、TIMANGA(elevated stage on which food is kept)、「(食料倉庫がある地域)人が住む場所または飯の種がある場所(島)」(「チマ(ン)ガ」の名詞形語尾のNGA音が脱落して「チマ」から「シマ」となった)

の転訛と解します。

1270しみ(衣魚、紙魚)

 (体形を魚に見立てて多く「魚」の字をあてる)総尾目シミ科に属する昆虫の総称。体長8〜10ミリメートル、家屋の暗所を好み、本、衣類の糊などを食べる。書物ばかりを読みふけって、実社会のことにうとい者をあざけりいう語。

 この「しみ」は、

  「チヒチヒ・ミヒ」、TIHITIHI-MIHI(tihitihi=make a gentle rustling sound,trifling,idling;mihi=sigh for,greet,express discomfort,show itself or be expressed of affection etc.)、「小さな・(人を)不愉快にさせる奴(衣魚。紙魚)」(「チヒチヒ」の反覆語尾およびH音が脱落して「チ」から「シ」と、「ミヒ」のH音が脱落して「ミ」となった)

の転訛と解します。

1271しみじみ(染み染み)

 心に深く感じいるさまを表す語。しんみり。お互いの心にしみいり、打ち解けて物静かなさまを表す語。心からそのように思うさまを表す語。つくづく。よくよく。本当に。寒さなどが身にしみとおるさまを表す語。じっと相手を見つめるさまを表す語。心からいやで辛いさま、こりごりであるさまを表す語。

 この「しみじみ」は、

  「チヒ・ミヒ・チヒ・ミヒ」、TIHI-MIHI-TIHI-MIHI(tihi=summit,top,lie in a heap;mihi=sigh for,greet,express discomfort,show itself or be expressed of affection etc.)、「(最高に)非常に・心が深く感じている・(最高に)非常に・心が深く感じている(しみじみ)」(「最初の「チヒ」のH音が脱落して「シ」と、「ミヒ」のH音が脱落して「ミ」と、次の「チヒ」のH音が脱落して「シ」から「ジ」となった)

の転訛と解します。

1272じみち(地道)

 静かに歩くこと。普通の速度で歩くこと。特に、馬術で馬を普通の速度で進ませること。手堅く堅実なこと。かけひきなく堅実なこと。地下につくった道。

 この「じみち」は、

  「チ・ミチ」、TI-MITI(ti=throw,cast;miti=lick,lick up,undertow of surf,backwash)、「(目立つ動きをする表面波ではなく)逆流波が・(静かに堅実に)流れるように(地道)」(「チ」が「ジ」となった)

の転訛と解します。

1273しみる(浸みる、染みる)

 液体が物に濡れ通る。しみこむ。深く心に感じる。刺激が体にこたえる。また、気体や液体などの刺激で苦痛を覚える。馴染みになる。物事が佳境に入る。影響を受けてその傾向に染まる。

 この「しみる」は、

  「チ・ミミ・ル」、TI-MIMI-RU(ti=throw,cast,overcome;mimi=make water,urine,stream,creek;ru=shake,agitate,scatter)、「奮って・投げかけられた(ものが)・(水となって)入り込む(浸みる。染みる)」(「チ」が「シ」と、「ミミ」の反覆語尾が脱落して「ミ」となった)

の転訛と解します。

1274しめなわ(注連縄)

 地域を区切るための目印、または出入禁止のしるしとして張り巡らす縄。特に、神前や神事の場に巡らして、神聖な場所と不浄な外界とを区別するのに用いる。また、新年に門口に張って災いの神が内に入らないようにとの意を示すもの。

 この「しめなわ」は、

  「チ・マイ・ナハ」、TI-MAI-NAHA(ti=throw,cast,overcome;mai=become quiet;naha=noose for snaring ducks)、「(神域を示して)静寂に・させる・(鳥の罠縄)縄(注連縄)」(「チ」が「シ」と、「マイ」のAI音がE音に変化して「メ」と、「ナハ」が「ナワ」となった)

の転訛と解します。

1275しもうたや(仕舞屋)

 以前は商家であったが、その商売をやめた人。また、その建物。表向きは商売をしないで、家作、地代、金利などでせいかつしている富裕な家。しもたや。資産を無くして家業をたたんだ家。(商家に対して)一般の住宅。

 この「しもうたや」は、

  「チ・モウ・ウタ・イア」、TI-MOU-UTA-IA(ti=throw,cast;mou=fixed,firm(moumou=wasted,etc.);uta=put persons or goods on board a canoe etc.,load or man a canoe;ia=indeed)、「(人や物資を船に載せ(て運送す)る仕事)商売を・実に・(放り投げる)止めて・しまった(人または建物など)(仕舞屋)」(「チ」が「シ」と、「モウ」の語尾のU音と「ウタ」の語頭のU音が連結して「モウタ」と、「イア」が「ヤ」となった)

の転訛と解します。

1276じもく(除目)

 平安時代以降、京官、外官の諸官を任命すること。また、その儀式。また、任官者を列記した帳簿。大尽を任命すること。

 この「じもく」は、

  「チ・モク」、TI-MOKU(ti=throw,cast;moku=few,little)、「(希望に対して)僅かしか・与えられないもの(官職への叙任。除目)」(「チ」が「ジ」となった)

の転訛と解します。

1277しゃくし(杓子)

 汁や飯などをすくうのに用いる具。この「しゃくし(杓子)」については、雑楽篇(その二)の1042漏斗(じょうご)の項の「杓子(しゃくし。しゃもじ)」を参照してください。

 この「しゃくし」は、

  「チ・アク・ウチ」、TI-AKU-UTI(ti=stick,rod;aku=scrape out,cleanse;uti=bite)、「突き立て(食い込ませて)・掻き取る・棒(杓子)」(「チ」と「アク」が連結して「チャク」となり、その語尾のU音と「ウチ」の語頭のU音が連結して「チャクチ」から「シャクシ」となった)

の転訛と解します。

1278しゃくにさわる(癪に障る)

 胸または腹に急激な傷みが起こりそうになる。物事が気にいらなくて、腹が立つ。気に障る。癇に障る。

 この「しゃくにさわる」は、

  「チア・ク(ン)ギア・タウアル」、TIA-KUNGIA-TAUARU(tia=abdomen,stomach;kungia=kuku=nip,draw together,close,double up,hold the breath;tauaru=follow)、「腹の・締め付けられるような痛みが・続けてやってくる(腹が立つ。癪に障る)」(「チア」が「シャ」と、「ク(ン)ギア」のNG音がN音に変化し、語尾のA音が脱落して「クニ」と、「タウアル」が「サワル」となった)

の転訛と解します。

1279しゃくはち(尺八)

 中国、日本の縦吹き管楽器。中国唐代初期に現れた雅楽器で奈良時代に日本に伝わった古代尺八、雅楽尺八、正倉院尺八は黄鐘律の長さ九寸(唐尺)の二倍の一尺八寸を基本としたといい、今日普通に尺八と称される普化宗の法器として用いられる普化尺八、虚無僧尺八は曲尺の一尺八寸を基本とする。

 この「しゃくはち」は、

  「チア・クハ・チ」、TIA-KUHA-TI(tia=abdomen,stomach;kuha=gasp(kuhakuha=pant);ti=throw,cast)、「腹から・あえぐような音を・出す(楽器。尺八)」(「チア」が「シャ」となった)

の転訛と解します。

1280じゃじゃうま(じゃじゃ馬)

 人に慣れない暴れ馬。荒馬。(比喩的に)性質が激しくて他人の言うことを聞かずに暴れまわる者。暴れ者。特に、夫や目上の者などの言うことを聞かないお転婆な女。

 この「じゃじゃうま」は、

  「チアチア・ウマ(ン)ガ」、TIATIA-UMANGA(tia,tiatia=stick in pegs etc.,take a vigorous stroke in paddling;umanga=pursuit,occupation,business,custom,accustomed,habituated)、「元気いっぱいに・活動する(者。じゃじゃ馬)」(「チアチア」が「ジャジャ」と、「ウマ(ン)ガ」の名詞形語尾のNGA音が脱落して「ウマ」となった)

の転訛と解します。

1281しゃちこばる(鯱強張)

 いかめしく構える。威厳をつくる。威張ってみせる。緊張して堅くなる。体を強張らせる。物が堅くなる。

 この「しゃちこばる」は、

  「チア・チコ・パルル」、TIA-TIKO-PARURU(tia=stick in pegs etc.,adorn by sticking in feathers;tiko=stand out,protrude;paruru=close together,compact)、「(頭に注ェ飾りを付けるなど)偉そうに(身を)飾り立て・胸を張って・(体を)堅くする(しゃちこばる)」(「チア」が「シャ」と、「パルル」の反覆語尾が脱落して「バル」となった)

の転訛と解します。

1282しゃっくり

 横隔膜が痙攣性の収縮を起こし、声門が突然開いて音を出す現象。普通、繰り返して起こる。

 この「しゃっくり」は、

  「チア・ツク・ウリ」、TIA-TUKU-URI(tia=stick in pegs etc.,take a vigorous stroke in paddling;tuku=let go,leave,send,present;uri=descendant,relative,race)、「一定の間隔で勢い良く・息を吐き出すのに・似た(親戚の)現象(しゃっくり)」(「チア」が「シャ」と、「ツク」の語尾のU音と「ウリ」の語頭のU音が連結して「ックリ」となった)

の転訛と解します。

1283しゃべる(喋る)

 口に出して話す。また、さかんに話す。巧みに話す。うまく言う。

 この「しゃべる」は、

  「チア・ペル」、TIA-PERU(tia=stick in pegs etc.,take a vigorous stroke in paddling;peru=fullness about the eyes and lips,snore,snort)、「元気で勢い良く・口を開いて話す(喋る)」(「チア」ガ「シャ」と、「ペル」が「ベル」となった)

の転訛と解します。

1284じゃま(邪魔)

 (仏語)仏法に害を与える悪魔。求道心を妨げる魔物。(〜する)妨げること。さまたげとなること。また、そのさま。支障。

 この「じゃま」は、

  「チ・アマ」、TI-AMA(ti=throw,cast;ama=the carved posts supporting the facing boards on the gable of a house)、「(家の出入り口の前に)立っている・切妻屋根の飾り側面板を支える彫刻柱のようなもの(邪魔)」(「チ・アマ」が「ジャマ」となった)

の転訛と解します。

1284-2しゃみせん(三味線)・じゃびせん(蛇皮線)・さんしん(三線)

 三味線は、和楽器の一つ。日本の代表的弦楽器。三弦で、普通撥(ばち)で奏する。胴には、猫または犬のなめし皮を用いる。永禄年間(1558〜70)に琉球の蛇皮線が大阪に輸入され、琵琶法師によって改造されたという。

 蛇皮線は、沖縄の代表的な弦楽器で、俗に三線(さんしん)ともいう。胴に蛇の皮を張る。形は、三味線に似てやや小さく、中国の三弦子(さんげんす)が14世紀末につたわり、後日本本土に渡って三味線となったという。

 この「しゃみせん」、「じゃびせん」、「さんしん」は、

  「チア・ミヒ・テ(ン)ギ」、TIA-MIHI-TENGI(tia=stick in,drive in pegs etc.,take a vigorous stroke in paddling;mihi=sigh for,greet,show itself,be expressed of affection etc.;tengi=three)、「(撥(ばち)で)弾いて・(人の)感情を奏でる・三本の糸の楽器(三味線)」(「チア」が「シャ」と、「ミヒ」のH音が脱落して「ミ」と、「テ(ン)ギ」のNG音がN音に変化して「テニ」から「セン」となった)

  「チア・ピヒ・テ(ン)ギ」、TIA-PIHI-TENGI(tia=stick in,drive in pegs etc.,take a vigorous stroke in paddling;pihi=spring up,begin to grow;tengi=three)、「(撥(ばち)で)弾いて・(人の感情を)湧き起こす・三本の糸の楽器(三味線)」(「チア」が「シャ」と、「ミヒ」のH音が脱落して「ミ」と、「テ(ン)ギ」のNG音がN音に変化して「テニ」から「セン」となった)

  「タ(ン)ギ・チナ」、TANGI-TINA(tangi=sound,cry,of things animate or inanimate,weep;tina=satisfied,contented)、「(すべてを)音で表現する・満足する楽器(三線)」(「タ(ン)ギ」のNG音がN音に変化して「タニ」から「サン」と、「チナ」が「シン」となった)

の転訛と解します。

1285しゃも(軍鶏)

 にわとりの品種の一。江戸初期にシャム(タイ)から輸入され、日本で改良されたという。昔から闘鶏に用いられ、現在では愛玩用・肉用に飼育されている。この「しゃも(軍鶏)」については、雑楽篇(その二)の636にわとり(鶏)の項の「しゃも(軍鶏)」を参照してください。

 この「しゃも」は、

  「チア・モモウ」、TIA-MOMOU(tia=slave,servant;momou=struggle,wrestle)、「闘争をする・奴隷の(鶏)」(「チア」が「シャ」と、「モモウ」の反復語尾が脱落して「モ」となった)

の転訛と解します。

1286しゃもじ(杓文字)

 汁や飯などをすくう具。めしじゃくし。この「しゃもじ(杓文字)」については、雑楽篇(その二)の1042漏斗(じょうご)の項の「杓子(しゃくし。しゃもじ)」を参照してください。

 この「しゃもじ」は、

  「チア・マウ・ウチ」、TIA-MAU-UTI(tia=peg,stake;mau=food product;uti=bite)、「食べ物に・突き立てる(食い込ませる)・棒(杓子)」(「チア」が「シャ」と、「マウ」の語尾のU音と「ウチ」の語頭のU音が連結し、AU音がO音に変化して「モチ」から「モジ」となった)

の転訛と解します。

1287しゃらくさい(洒落臭い)

 しゃれた真似をする。また、生意気である。こしゃくである。

 この「しゃらくさい」は、

  「チ・アラ・クタイタイ」、TI-ARA-KUTAITAI(ti=throw,cast;ara=rise,rise up,raise;kutaitai=of a disagreeable taste)、「(人に)不愉快な感じを・起こ・させる(洒落臭い)」(「チ・アラ」が「シャラ」と、「クタイタイ」の反覆語尾が脱落して「クサイ」となった)

の転訛と解します。

1288しゃり(舎利)

 @(仏語)遺骨。聖者の遺骨。とくに仏陀の遺骨わいう。火葬の残りの骨で、くだけたり腐ったりしないでいつまでも残っているもの。

 A(形が@に似ているところから)米粒。米または白飯。病気で白くなって死んだ蚕。僧侶が産ませた子。

 この「しゃり」は、

  @「チア・アリ」、TIA-ARI(tia=persistency;ari=clear,visible,white,appearance)、「永遠に・清浄なるもの(舎利)」(「チア」の語尾のA音と「アリ」の語頭のA音が連結して「チアリ」から「シャリ」となった)

  A「チヒ・アリ」、TIHI-ARI(tihi=summit,top,lie in a heap;ari=clear,visible,white,appearance)、「最高に・白いもの(舎利)」(「チヒ」のH音が脱落して「チ」となり、「チアリ」から「シャリ」となった)

の転訛と解します。

1289じゃり(砂利)

 細かい石。また、小石の集まったもの。あるいは、小石に砂が混じったもの。(白い砂や小石が一面に敷き詰めてあるところから)江戸時代、奉行所などの法廷の一部で、町人、町医師、足軽、浪人などの座る席をいった。白州。古く、子供の見物人。(劇場、寄席、香具師などの隠語)

 この「じゃり」は、

  「チア・リリ」、TIA-RIRI(tia=etia=as it were,as if;riri=be angry,quarrel,chide)、「(怒っているような)うるさい・音を立てるもの(砂利)」(「チア」が「ジャ」と、「リリ」の反覆語尾が脱落して「リ」となった)

の転訛と解します。

1290しゃれ(洒落)

 当世風で粋なこと。気のきいていること。さっぱりしてものにこだわらないこと。洒脱。はなやかに装うこと。また、派手な服装。粋なみなり。その場に興を添えるためにいう滑稽な文句、ある文句をもじって言う地口。だじゃれ。警句。冗談。たわむれでする事。冗談事。遊里などでの遊び。など。

 この「しやれ」は、

  「チア・レヘ」、TIA-REHE(tia=etia=as it were,as if;rehe=expert,neat-handed,deft person)、「(その場に応じて)品よくまたは手際よく・行動する(洒落)」(「チア」が「シャ」と、「レヘ」のH音が脱落して「レ」となった)

の転訛と解します。

1291じゃんけん

 拳の一種。片手で、石、はさみ、紙などの形を互いに出し合って勝負を決めること。また、その遊び。この「じゃんけん」については、国語篇(その十五)の099じゃんけんの項を参照してください。

 この「じゃんけん」は、

   「チア(ン)ゴ・カイ(ン)ガ」、TIANGO-KAINGA(tiango=shrunk,contracted;kainga=field of operation,scope of work)、「握りしめた(拳を)・視野に入れる(どう変化するかを注視しながら行う遊び。じゃんけん)」(「チア(ン)ゴ」のNG音がN音に変化して「チアノ」から「ジャン」と、「カイ(ン)ガ」のAI音がE音に、NGG音がN音に変化して「ケナ」から「ケン」となった)

の転訛と解します。

1292しゅうとめ(姑)

 配偶者の母。夫の母。

 この「しゅうとめ」は、

  「チ・ウトウト・マイ」、TI-UTOUTO-MAI(ti=throw,cast;utouto=use vindictively(uto=revenge,sworn enemy);mai,maimai=a dance or haka to welcome at a ball)、「執念深く・(小言を)言う・(舞を舞う)女性(姑)」(「チ」と「ウトウト」の反覆語尾が脱落した「ウト」が連結して「チウト」から「シュウト」と、「マイ」のAI音がE音に変化して「メ」ととなった)

の転訛と解します。

1293じゅうのう(十能)

 熟練を要する十種の技芸。炭火を盛って運ぶ器。金属製の容器に木の柄をつけたもの。

 この「じゅうのう」は、

  「チウ・ノホ」、TIU-NOHO(tiu=soar,wander,swing,sway to and fro;noho=sit,stay,settle,lie)、「(炭火をあちこちと)持ち運んで・(火鉢などに)据え付けるもの(十能)」(「チウ」が「ジュウ」と、「ノホ」のH音が脱落して「ノオ」から「ノウ」となった)

の転訛と解します。

1294しゅく(宿)

 宿屋。旅籠屋。宿場。うまや。中世、主として東国地方などの町場を刺す語。近世、江戸品川宿の略。特にその花街を指す。星宿。星座。

 この「しゅく」は、

  「チウ・ウク」、TIU-UKU(tiu=soar,wander,swing,sway to and fro;uku=ally,supporting tribe)、「旅人の・味方をするもの(宿)」(「チウ」の語尾のU音と「ウク」の語頭のU音が連結して「チウク」から「シュク」となった)

の転訛と解します。

1295しゅす(繻子)・しゅちん(繻珍)

 @しゅす(繻子)は、絹織物の一種。織り物の表面に経(たていと)だけか、緯(よこいと)だけを浮かせたもので、表面は滑らかで艶がある。この「しゅす(繻子)」については、雑楽篇(その一)の362あや(綾)の項の「しゅす(繻子)」を参照してください。

 Aしゅちん(繻珍)は、繻子地に絵緯(えぬき)で紋様を浮織りした布地。主に帯地とし、袋物、袈裟、表層などに用いる。

 この「しゅす」、「しゅちん」は、

  @「チウ・ツ」、TIU-TU(tiu=swing,sway to and fro,swift;tu=stand,fight with,energetic)、「(五本以上の経(たて)糸に対し緯(よこ)糸が)飛び飛びに織られて・いる(ため光沢がある織物。繻子)」(「チウ」が「チュ」から「シュ」となった)

  A「チウ・チノ」、TIU-TINO(tiu=swing,sway to and fro,swift;tino=essentiality,reality,exact,quite,to give vividness and force to the narrative)、「(五本以上の経(たて)糸に対し緯(よこ)糸が)飛び飛びに織られて・(本質を示す)紋様が浮き出ている(織物。繻珍)」(「チウ」が「シュ」と、「チノ」が「チン」となった)

の転訛と解します。

1296じゆばん(襦袢)

 (ポルトガル語 jubao,gibao からとする説がある。)外側に着る胴衣(チョッキ)の一種。和服の肌着。

 この「じゅばん」は、

  「チウ・パ(ン)ガ」TIU-PANGA(tiu=soar,wander,swing,sway to and fro,prompt;panga=throw,lay,place)、、「(体の)上にふわりと・着るもの(襦袢)」(「チウ」が「ジュ」と、「パ(ン)ガ」のNG音がN音に変化して「パナ」から「バン」となった)

の転訛と解します。

1297しゅらば(修羅場)

 (仏語)阿修羅が帝釈天と争う場所。転じて唐宋、戦乱の烈しい場所。人形浄瑠璃、歌舞伎または講談などで、烈しい戦いの場面を扱った部分。荒れ場。

 この「しゅらば」は、

  「チウ・ラパ」、TIU-RAPA(tiu=soar,wander,swing,sway to and fro,prompt;rapa=stick,adhere,be entangled,matted,tangled,twisted,the custom of wearing the hair unkempt as a sign of tapu)、「(一進一退の)情勢が目まぐるしく変化する・紛糾して解決困難な状況(修羅場)」(「チウ」が「シュ」と、「ラパ」が「ラバ」となった)

の転訛と解します。

1298しゅん(旬)

 (「しゅん」は「旬」の漢音(常用音訓・呉音は「じゅん」))「旬」は、中古、朝廷で行われた年中行事の一つ。毎月一日、十一日、十六日、二十一日に天皇が臣下から政務をきく儀式。初めは毎月行われたが、のち、四月一日(孟夏の旬)、十月一日(孟冬の旬)の二回だけとなった。草木などの盛りの時期。また、魚介・果物・野菜など季節の食物が出盛りの時。物がよく熟し、最も味がよい季節。転じて、物事を行うのに最も適した時期。最も盛んな時期。時候。季節。

 この「しゅん」、「じゅん」は、

  「チヒ・ウ(ン)ガ」、TIHI-UNGA(tihi=summit,top,lie in a heap;unga=act or circumstance etc. of becoming firm,place etc. of arrival)、「(最高の地位にある)天皇が・政務を執る儀式(旬)」または「(草木などや魚介・果物・野菜など季節の食物の)生育、生産または品質等が・最高の状態にある(時期。旬)」(「チヒ」のH音が脱落して「チ」と、「ウ(ン)ガ」のNG音がN音に変化して「ウナ」となり、「チウナ」から「シュン」、「ジュン」となった)

の転訛と解します。

1299しょうぎだおし(将棋倒し)

 将棋の駒や積み木の板などを少しずつ間隔を置いて一線になるように立て並べ、一端を軽く押し倒して、次々に端まで斃す遊び。次々と倒れることや折り重なって倒れること。また、一端の崩れが全体に及ぶことなどの例え。

 この「しょうぎだおし」は、

  「チオフ・(ン)ギア・タオ・チ」、TIOHU-NGIA-TAO-TI(tiohu=stoop;ngia=seem,appear to be;tao=weigh down;ti=throw,cast,overcome)、「身をかがめて考え込んでいる・ように見える遊び(将棋。将棋の駒を)・押し・倒す(将棋倒し)」(「チオフ」のH音が脱落して「チオウ」から「ショウ」と、「(ン)ギア」のNG音がG音に変化し、語尾のA音が脱落して「ギ」と、「チ」が「シ」となった)

の転訛と解します。

1300じょうご(漏斗)

 上が広く、下が細くすぼまって穴のある金属または木・竹製の器。口の狭い器に水や酒など液体状のものを注ぎ入れるのに用いる。。転じて四方を屋棟で囲み中央に漏斗のような屋根が中庭に向かつて落ち込む造りの家屋。その建築様式。この「じょうご(漏斗)」については、雑楽篇(その二)の1042漏斗(じょうご)の項を参照してください。

 この「じょうご」は、

  「チ・ホウ・(ン)ゴ」、TI-HOU-NGO(ti=throw,cast;hou=enter,force downwards or under;ngo,ngongo=suck,suck out)、「注ぎ入れた(液体を)・下方に向かって・吸い出す(道具。漏斗)」(「ホウ」のH音が脱落して「オウ」となり、「チ・オウ」が「チョウ」から「ジョウ」と、「(ン)ゴ」のNG音がG音に変化して「ゴ」となった)

の転訛と解します。

1301じょうご(上戸)

 酒を好む人。また、酒が好きでたくさん飲める人。酒飲み。酒を飲んだときに出る癖の状態を言う語。(笑い上戸、泣き上戸など)

 この「じょうご」は、

  「チオ・ウ・(ン)ゴ」、TIO-U-NGO(tio=cry,call;u=be firm,be fixed,reach the land,reach its limit;ngo,ngongo=suck,suck out)、「(酒を)飲み・尽くすと・(大声で酒を持ってこいと)叫ぶ人(上戸)」(「チ・オウ」が「ジョウ」と、「(ン)ゴ」のNG音がG音に変化して「ゴ」となった)

の転訛と解します。

1302しょうし(笑止)

 (勝事。古くは、「しょうし」)人の耳目を惹くようなすばらしいこと。世に珍しい、優れたこと。異常なできごと。奇っ怪なこと。不吉なこと。(笑止)困ったこと。困惑するような出来事。また、そのさま。気の毒にかんじられること。同情すべきこと。また、そのようなさま。ばかばかしくて笑うべきこと。おかしなこと。また、そのさま。恥ずかしくおもうこと。また、そのさま。

 この「しょうし」は、

  「チオ・ウチウチ」、TIO-UTIUTI(tio=cry,call;utiuti=annoy,worry,fuss,ado)、「大変なことだと・騒ぎ立てること(笑止)」または「ばかげたことだと・笑い飛ばすこと(笑止)」(「ウチウチ」の反覆語尾が脱落して「ウチ」となり、「チオウチ」が「ショウシ」となった)

の転訛と解します。

1303しょうじ(障子)

 部屋の内外を仕切る障屏具の一種。取り外しのできる貼付け壁、絹布を張った襖障子、唐紙を貼った唐紙障子、台脚がつい手居て室内を移動できる衝立障子、簾屏風のように作った通障子、格子に組んだ骨組みに白い紙を貼った明かり障子などがある。この「しょうじ(障子)」については、雑楽篇(その二)の1030障子(しょうじ)の項を参照してください。

 この「しょうじ」は、

  「チハオ・チ」、TIHAO-TI(tihao=surround;ti=throw,cast)、「(人の居所、寝所を)囲むように・置くもの(障子)」(「チハオ」のH音が脱落し、AO音がOU音に変化して「チョウ」から「ショウ」と、「チ」が「ジ」となった)

  または「チホ・オチ」、TIHO-OTI(tiho=flaccid,soft;oti=finished,gone or come for good)、「(重くて固い襖に対して)軽くて柔らかに・仕上がった(建具。明障子)」(「チホ」のH音が脱落して「チオ」となり、「チオオチ」から「ショウジ」となつた)

の転訛と解します。

1304しょうじん(精進)

 (仏語)ひたすら仏道修行に励むこと。また、その心の働き。転じて、一定期間、言語・行為・飲食を制限し、身を清めて、不浄をさけること。物忌みすること。潔斎すること。一般に、魚や肉類を食べないで菜食すること。また、その料理。一所懸命に努力すること。品行を良くすること。女色を慎むこと。

 この「しょうじん」は、

  「チオフ・チナ」、TIOHU-TINA(tiohu=stoop;tina=fixed,fast,firm,satisfied,exhausted)、「(ひたすら)心身を引き締めて・謹慎すること(精進)」(「チオフ」のH音が脱落して「チオウ」から「ショウ」と、「チナ」が「ジン」となった)

の転訛と解します。

1305じょうだん(冗談)

 余計な事を言うこと。また、そのさま。無駄口。ふざけて言う話。たわむれの話。ふざけたこと。たわむれること。いたずら。無駄話をして時間を潰すこと。

 この「じょうだん」は、

  「チハウ・タ(ン)ガ」、TIHAU-TANGA(tihau=twitter,make any inarticulate sound with a voice,confused sound of voices,a some what deep-toned inarticulate call;tanga,tangatanga=loose,not tight,easy,comfortable,free from pain,alert)、「軽くて・とりとめのない無駄な話をする(冗談)」(「チハウ」のH音が脱落し、AU音がOU音に変化して「チオウ」から「ジョウ」と、「タ(ン)ガ」のNG音がN音に変化して「タナ」から「ダン」となった)

の転訛と解します。

1306しょうもない(仕様もない)

 なすすべがない。手に負えない。たわいもない。くだらない。役に立たない。

 この「しょうもない」は、

  「チハウ・マウ・ナイ」、TIHAU-MAU-NAI(tihau=twitter,make any inarticulate sound with a voice,confused sound of voices,a some what deep-toned inarticulate call;mau=fixed,continuing,caught,entangled;nai=nei,neinei=stretched forward,reaching out,wagging,vacillating)、「とりとめのない無駄話を・際限なく・続ける(仕様もない)」(「チハウ」のH音が脱落し、AU音がOU音に変化して「チオウ」から「ショウ」と、「マウ」のAU音がO音に変化して「モ」となった)

の転訛と解します。

1307じょうろ(如雨露)

 (ポルトガル語 jorro 「水の噴出」からとする説がある)植木などに水を注ぎかけるための道具。

 この「じょうろ」は、

  「チ・ホウ・ロ」、TI-HOU-RO(ti=throw,cast;hou=enter,force downwards or under;ro=roto=inside)、「(水を)上から・(地面の)中へ・注ぎ入れるもの(如雨露)」(「ホウ」のH音が脱落して「オウ」となり、「チ・オウ」が「チョウ」から「ジョウ」となった)

の転訛と解します。

1308じょさいない(如才ない)

 人や物事に対して手抜かりがない。手落ちがない。なおざりにしない。気が利く。抜け目がない。気が利いて調子がいい。愛想がいい。

 この「じょさいない」は、

  「チホ・タイ・ナイ」、TIHO-TAI-NAI(tiho=flaccid,soft;tai=used only as a term of address to males or females;nai=nei,neinei=stretched forward,reaching out,wagging,vacillating)、「他人に話しかけるのが・たいへん・(柔らかい)愛想がいい(如才ない)」(「チホ」のH音が脱落して「チオ」から「ジョ」と、「タイ」が「サイ」となった)

の転訛と解します。

1309しょたい(所帯)

 (身に帯びている物の意)所持している物やついている地位などをいう。所領。知行。官職。財産。一家を構えて独立した生計をいとなむこと。また、その生活。暮らし向き。住居および生計を同じくしている者の集団。世帯。

 この「しょたい」は、

  「チハオ・タイ」、TIHAO-TAI(tihao=surround;tai,taitai=dash,knock,perform certain ceremonies to remove tapu etc.)、「(一家を構えて独立した生計を営むに当たって)穢れを祓うお祈りをした・その環境(所帯)」(「チハオ」のH音が脱落し、AO音がO音に変化して「チオ」から「ショ」となった)

の転訛と解します。

1310しょっちゅう

 始終。いつも。常に。絶えず。

 この「しょっちゅう」は、

  「チハオ・ツ・チウ」、TIHAO-TU-TIU(tihao=surround;tu=stand,settle,fight with,energetic;tiu=soar,wander,swing,swift)、「(常に)精力的に・動き回っているような・その状況(しょっちゅう)」(「チハオ」のH音が脱落し、AO音がO音に変化して「チオ」から「ショ」と、「ツ」が「ッ」と、「チウ」が「チュウ」となった)

の転訛と解します。

1311しょっぱい(塩辛い)

 塩気が強い。塩辛い。勘定高い。しみったれている。けちだ。困惑・嫌悪などの滋養で顔をしかめようとするようなさま。人情が薄い。声がしわがれている。この「しょっぱい(塩辛い)」については、国語篇(その十五)の089しおからいの項の「ショッパイ」を参照してください。

 この「しょっぱい」は、

  「チ・ホ・パイ」、TI-HO-PAI(ti=throw,cast,overcome;ho=put out the lips,shout;pai=good,suitable,agreeable,approve)、「(嘗めると)口を・しかめる味(塩気)が・しっかりと(相当に)する(塩辛い)」(「チ」が「シ」と、「ホ」のH音が脱落して「オ」となり、「シ・オ」が「ショ」から「ショッ」となった)

の転訛と解します。

1312じょっぱり(情張り)

 (青森県、岩手県などの方言)強情を張ること、意地を張るさま、また、そのような人をいう。

 この「じょっぱり」は、

  「チオホ・パリ」、TIOHO-PARI(tioho=apprehensive;pari=bark as a dog)、「心配して・犬のように吠え続ける(しつこく意見を主張する。頑固。強情)」(「チオホ」のH音が脱落して「チオオ」から「ジョッ」となった)

の転訛と解します。

1313じょろう(女郎)

 @若い女。女子。また広く、女性。A貴族や大名の奥向に勤める女性。B遊女。娼妓。

 この「じょろう」は、

  @「チホ・ロウ」、TIHO-ROU(tiho=flaccid,soft;rou=reach or procure by means of a pole,stretched out,reach out,intoxicated as with tutu juice)、「(人を)魅了する・柔らかい(生き物。女郎)」(「チホ」のH音が脱落して「チオ」から「ジョ」となった)

  A「チオ・ロウ」、TIO-ROU(tio=sharp,piecing of cold,ice;rou=reach or procure by means of a pole,stretched out,reach out,intoxicated as with tutu juice)、「あくまでも・(氷のように)冷静な(女性。女郎)」(「チオ」が「ジョ」となった)

  B「チホ・ラウ」、TIHO-RAU(tiho=flaccid,soft;rau=catch as in a net,entangle,embarrassed,confused)、「(人を)惑わせ虜(とりこ)にする・柔らかい(生き物。女郎)」(「チホ」のH音が脱落して「チオ」から「ジョ」と、「ラウ」のAU音がOU音に変化して「ロウ」となった)

の転訛と解します。

1314しらげうた(しらげ歌)

 古代の歌謡の一種で、「後(しり)挙(あげ)歌」の転で、歌の後半の音調を上げて唄うものかとする説がある。

 この「しらげうた」は、

  「チラ・(ン)ゲ・ウ・タハ」、TIRA-NGE-U-TAHA(tira=file of men,row,company of travellers;nge=noise,screech;u=representing an inarticulate sound;taha=side,spasmodic twitching of the muscles etc.,go by)、「多数の人々の・合唱で・不明瞭な声で・声を震わせて(歌うもの。歌)」(「チラ」が「シラ」と、「(ン)ゲ」のNG音がG音に変化して「ゲ」と、「タハ」のH音が脱落して「タ」となった)

の転訛と解します。

1315しらける(白ける)

 白くなる。また、色が褪せる。明らかになる。包み隠していたことが露見する。盛り上がっていた気持ちや雰囲気がしぼんでなくなる。興がさめる。気まずくなる。ぐあいが悪くなる。きまりが悪くなる。知っていながら知らないふりをする。しらばっくれる。

 この「しらける」は、

  「チラハ・ケ・ル」、TIRAHA-KE-RU(tiraha=bundle,slow,face upwards,lying open,exposed,out of perpendicular;ke=different,strange,extraordinary,otherwise;ru=shake,agitate,scatter)、「(真実と)異なる事実が・(世に)明らかに・される(白ける)」(「チラハ」のH音が脱落して「シラ」となった)

  または「チ・ラケ・ル」、TI-RAKE-RU(ti=throw,cast;rake=bald,bare,barren,make bare,barren land;ru=shake,agitate,scatter)、「(物事を包み隠さず)裸に・して・しまう(白ける)」もしくは「(人を)荒野に・放り・出すような(白ける)」(「チ」が「シ」となった)

の転訛と解します。

1316しらたき(白滝)

 @白い布をかけたように流れ落ちる滝。Aこんにゃくを小さい穴から押し出して作ったもの。

 この「しらたき」は、

  「チ・ラハ・タ・ハキ」、TI-RAHA-TA-HAKI(ti=throw,cast;raha=open,extended;ta=dash,beat,lay;haki=meek,of no account,cast away)、@「(水を平らに)伸ばして・放り投げたような(白い布をかけたように流れ落ちる)・(水が)突進して・流れ落ちる(滝)」またはA「(こんにゃくを糸状に)伸ばして・押し出した・(水が)突進して・流れ落ちる(滝のようになったもの。しらたき)」(「チ」が「シ」と、「ラハ」のH音が脱落して「ラ」と、「ハキ」のH音が脱落して「キ」となった)

の転訛と解します。

1317しらばくれる(知らばくれる)

 知っていながら知らないふりをする。そらとぼける。しらをきる。

 この「しらばくれる」は、

  「チ・ラパ・クレ・ル」、TI-RAPA-KURE-RU(ti=throw,cast;rapa,ra pa,ra pea=indeed;kure=cry like a seagull;ru=shake agitate,scatter)、「実に・(鴎のように)一方的に一つのことだけを声高に言い・放って・やまない(しらばくれる)」(「チ」が「シ」と、「ラパ」が「ラバ」となった)

の転訛と解します。

1318しらふ(素面)

 酒を飲んでいない平常の状態。また、その顔つき。

 この「しらふ」は、

  「ヒラ(ン)ガ・アフア」、HIRANGA-AHUA(hiranga=superiority,excellence(hira=numerous,great,multitude,widespread);ahua=form,appearance,character)、「(その人の)最も優れた(極めて真剣な)・顔つき(素面)」(「ヒラ(ン)ガ」の名詞形語尾のNGA音が脱落した「ヒラ」のH音はもとS音で「シラ」となり、その語尾のA音と「アフア」の語頭のA音が連結し、語尾のA音が脱落して「シラフ」となった)

の転訛と解します。

1319しらべる(調べる)

 楽器の音律を合わせ整える。楽器で音楽を演奏する。調子に乗る。調子づく。必要な知識を得ようとして調査する。研究する。不都合な点がないか見て回る。点検する。検査する。理非曲直をはっきりさせるためにあれこれと問いただす。詮議する。味わう。賞味する。

 この「しらぺる」は、

  「ヒラ(ン)ガ・パイ・ル」、HIRANGA-PAI-RU(hiranga=superiority,excellence(hira=numerous,great,multitude,widespread);pai=good,excellent,suitable,pleasant,handsome;ru=shake agitate,scatter)、「(物事に)卓越していることが・(本当に)その通りであることを・(世に)示す(調べる)」(「ヒラ(ン)ガ」の名詞形語尾のNGA音が脱落した「ヒラ」のH音はもとS音で「シラ」と、「パイ」のAI音がE音に変化して「ペ」から「ベ」となった)

の転訛と解します。

1320しらをきる(しらを切る)

 わざと知らないふりをする。何食わぬ顔をする。しらばくれる。

 この「しらをきる」は、

  「ヒラ(ン)ガ・ワオ・キヒ・ル」、HIRANGA-WAO-KIHI-RU(hiranga=superiority,excellence(hira=numerous,great,multitude,widespread);wao,wawao=part combatants,distract one's attention,defend,ward off;kihi=cut off,destroy completely,strip of branches etc.;ru=shake agitate,scatter)、「卓越している(何も傷がない)ことを・(傷があるとする)攻撃に対して・奮って・防護した(しらをきる)」(「ヒラ(ン)ガ」の名詞形語尾のNGA音が脱落した「ヒラ」のH音はもとS音で「シラ」と、「ワオ」のAO音がO音に変化して「ヲ」と、「キヒ」のH音が脱落して「キ」となった)

の転訛と解します。

1321しり(尻)

 動物の胴体の後部で、肛門のあるあたり。物、言葉、時間、序列、行列などの後尾の部分。衣服、太刀、道などの下または末の部分。器物、果実などの底部。など。この「しり(尻)」については、国語篇(その十五)の103しり(尻)の項を参照してください。

 この「しり」は、

  「チ・イリ」、TI-IRI(ti=throw,cast;iri=be elevated on something,rest upon)、「(それを)投げ出して・休息するもの(尻)」(「チ」のI音と「イリ」の語頭のI音が連結して「チリ」から「シリ」となった)

の転訛と解します。

1322しりぞく(退く)

 後へ引く。引き下がる。後ろへのく。その場を離れて出て行く。退出する。引退する。へりくだる。など。

 この「しりぞく」は、

  「チリ・ト・ク」、TIRI-TO-KU(tiri=remove tapu from anything,an incantation to drivr out an atua;to=drag,haul;ku=silent,wearied,exhausted)、「穢れた場所から立ち退くように・静かに・(その場を)引き払う(退く)」(「チリ」が「シリ」と、「ト」が「ゾ」となった)

の転訛と解します。

1323しる(汁)

 物体からしみ出る、または絞り取った液。汁物。特に、飯の菜としてすするもの。つゆ。この「しる(汁)」については、雑楽篇(その一)の281けのしる(けの汁)の項の「しる(汁)」を参照してください。

 この「しる」は、

  「チ・ル」、TI-RU(ti=throw,cast,overcome;(Hawaii)lu=to scatter,to drip as water)、「(水のように)滴り・落ちるもの(料理。汁)」(「チ」が「シ」となつた)

の転訛と解します。

1324しる(知る)

 物事の性質、なりゆき、対処すべき方法などがわかる。この「しる(知る)」については、国語篇(その九)の044しる(知る)の項を参照してください。

 この「しる」は、

  「チチ・ル」、TITI-RU(titi=peg,fasten with pegs or nails;ru=shake,scatter)、「散乱するもの(失われる記憶・知識)を・しっかりと留める(記憶に残す。知る)」(「チチ」の反復語尾が脱落して「チ」から「シ」となった)

の転訛と解します。

1325しるい

 液となってねばっこい。また、汁気が多い。雨降りや水まきの後で、道がぬかっている。泥が深い。

 この「しるい」は、

  「チ・ルヒ」、TI-RUHI(throw,cast;ruhi=weak,languid,exhausted)、「(雨が)降って・(地面が弱っている)ぬかっている(しるい)」(「チ」が「シ」と、「ルヒ」のH音が脱落して「ルイ」となった)

の転訛と解します。

1326しるこ(汁粉)

 小豆餡を水でのばして砂糖を加えて煮、中に餅または白玉団子などを入れた食べ物。

 この「しるこ」は、

  「チ・ル・コア」、TI-RU-KOA(ti=throw,cast,overcome;(Hawaii)lu=to scatter,to drip as water;koa=glad,joyful,rejoice over)、「(水のように)滴り・落ちる・(特に女性を)喜ばせるもの(汁粉)」(「チ」が「シ」と、「コア」の語尾のA音が脱落して「コ」となつた)

の転訛と解します。

1327しるべ(標)

 行く道の案内をすること。また、その人やそのもの。知識や行動などについて、うまくいくように導くこと。また、その人やそのもの。結論を導く根拠ないし手がかり。それとわかるしるしゃかたち。ゆかり。また、ゆかりある人。知人。

 この「しるべ」は、

  「ヒル・パイ」、HILU-PAI((Hawaii)hilu=quiet,well-behaved,decorous,easy-going;pai=good,excellent,suitable,pleasant,handsome)、「容易に目的(の場所、知識、結論など)に辿り着くのに・好適なもの(または人など。標)」(「ヒル」のH音はもとS音で「シル」と、「パイ」のAI音がE音に変化して「ペ」から「ベ」となった)

の転訛と解します。

1328じれったい

 思い通りにならないのでいらいらする気持ちである。また、事がうまくゆかないのであせるような気持ちである。はがゆいるもどかしい。

 この「じれったい」は、

  「チレヘ・ツタイ」、TIREHE-TUTAI(tirehe=sink,faint;tutai=watch,spy,sentry,spy,scout)、「(物事の推移を)見ていて・(思うようにいかないことに)落胆する(じれったい)」(「チレヘ」のH音が脱落して「ジレ」と、「ツタイ」が「ッタイ」となった)

の転訛と解します。

1329しれもの(痴れ者)

 愚か者。馬鹿者。狼藉者。乱暴者。怪しい者。その道に打ち込んだ巧者。その道の曲者。したたか者。

 この「しれもの」は、

  「チレレ・マウヌ」、TIRERE-MAUNU(tirere=careless;maunu=taunu=jeer)、「(注意が足りない)愚かで・(あざけられる)者(痴れ者)」(「チレレ」の反覆語尾が脱落して「シレ」と、「マウヌ」のAU音がO音に変化して「モヌ」から「モノ」となった)

  または「チレヘ・モノ」、TIREHE-MONO(tirehe=sink,faint;mono=disable by means of incantations,an incantation to disable an army,plug,caulk)、「(呪文によって)力を失ったような・気落ちした者(なにやら様子の怪しい者。痴れ者)」(「チレヘ」のH音が脱落して「シレ」となった)

の転訛と解します。

1330しろ(白)

色の名。雪、塩などの色。明るく特別の色がないと感じられる色。黒に対する「白」。白い碁石。何も書き入れてないこと。しろがね(銀)の略。など。

 この「しろ」は、

  「チ・ロイ」、TI-ROI(ti=throw,cast;roi=fern root)、「(土から)掘り出された・(羊歯の)根のような(白い色。白)」(「ロイ」の語尾のI音が脱落して「ロ」となった)

の転訛と解します。

1331しろ(城)

 敵の来襲を防ぐための軍事的施設。古代では朝鮮半島からの来寇に備えて九州北部に造られた大野城などは、山の斜面や尾根に土塁、柵などを巡らしたもので、東北の蝦夷に対する多賀城や払田柵は、地方官庁的性格を合わせ持っていた。中世では、山上に掘、土塁、柵を巡らして築き、山下に居館を置いた。室町時代以後、戦乱が長引くと領地の中心の丘陵を利用した平山城となり、天主を中心に掘、石垣、土塀、櫓を巡らす堅固なものとなった。比喩的に、他人の入り込むことを許さない自分だけの世界、場所。

 この「しろ」は、

  「チヒ・ロイ」、TIHI-ROI(tihi=summit,top,raised fortification or citadel within a stockade;roi=secured,tied,knot,bond)、「高地に柵を引き回した砦で・安全な場所(城)」(「チヒ」のH音が脱落して「チ」から「シ」と、「ロイ」の語尾のI音が脱落して「ロ」となった)

  または「チヒ・ロア」、TIHI-ROA(tihi=summit,top,raised fortification or citadel within a stockade;roa=long,tall,length)、「長い・柵を高地に引き回した砦(城)」(「チヒ」のH音が脱落して「チ」から「シ」と、「ロア」の語尾のA音が脱落して「ロ」となった)

の転訛と解します。

1332しろ(代)

 @代わりとなるもの。代用。代わりとして支払う、または受け取る金銭や物品。代金。代価。抵当。その用となる、もとの物。材料。

 A田、田地、水田として開かれた湿地。田植えの前に田に水を引き、鍬、牛馬、耕耘機などで土塊を砕きながらどろどろにすること。

 この「しろ」は、

  @「チ・ラウ」、TI-RAU(ti=throw,cast,overcome;rau=hundred,multitude,another)、「(別のものを)代わりに(代品、代金などとして)・提供する(代)」または「(あるものが形を変えて、またはあるものを材料として作られたものが)別のもの(として)を・提供する(代)」(「チ」が「シ」と、「ラウ」のAU音がO音に変化して「ロ」となった)

  A「チ・ロ」、TI-RO(ti=throw,cast,overcome;ro=roto=lake,bog,swamp)、「(支配下にある)耕地として利用している・湿地(代)」または「湿地を・(支配する)苗代として、または水田として利用するために徹底的に耕耘する(代)」(「チ」が「シ」となった)

の転訛と解します。

1333じろ(地炉)

 地上または床に設けた炉。

 この「じろ」は、

  「チ・ラウ」、TI-RAU(ti=throw,cast,overcome;rau=catch as in a net,entangle,gather into a basket etc.,embarrassed,receptacle)、「(地上または床に)設置した・(火のついた薪などを)集めて燃やす施設(地炉)」(「チ」が「ジ」と、「ラウ」のAU音がO音に変化して「ロ」となった)

の転訛と解します。

1334しろうと(素人)

 ある物事に経験の浅い人。技芸などに熟達していない人。あるいはそのことを職業・専門としていない人。芸妓・娼婦などの商売女に対して、普通の女性をいう。江戸時代、京や大坂で私娼の異称。

 この「しろうと」は、

  「チロ・フトイ」、TIRO-HUTOI(tiro=look;hutoi=stunted,growing weakly,dishevelled)、「(物事に熟達した人のすることを)萎縮して・見ている(だけの人。素人)」(「チロ」が「シロ」と、「フトイ」のH音および語尾のI音が脱落して「ウト」となった)

の転訛と解します。

1335しわ(皺)

 皮膚、紙、布などの表面がたるんで、細かく縮み、筋目ができたもの。水面にできる波紋。さざなみ。

 この「しわ」は、

  「チワイワイ」、TIWAIWAI(wave to and fro(tiwai=turn from side to side))、「(あちこちに波が立つように)筋目ができたもの(皺)」(「チワイワイ」の反覆語尾およびその語尾のI音が脱落して「シワ」となった)

の転訛と解します。

1336しわがれる(嗄れる)

 声が滑らかでなく、かすれたようになる。声がかれる。

 この「しわがれる」は、

  「チワハ・(ン)ガレ・ル」、TIWAHA-NGARE-RU(tiwaha=shout after,bawl out for;ngare=send,urge;ru=shake,agitate,scatter)、「(奮って)努力して・やっと絞り出すように・声を出す(嗄れる)」(「チワハ」のH音が脱落して「シワ」と、「(ン)ガレ」のNG音がG音に変化して「ガレ」となった)

の転訛と解します。

1337しわす(師走)

 陰暦十二月の異称。極月。

 この「しわす」は、

  「チワイ・ツ」、TIWAI-TU(tiwai=turn from side to side(tiwaiwai=wave to and fro);tu=stand,settle)、「(年末から年始へと)変わる時点に・位置する月(師走)」(「チワイ」の語尾のI音が脱落して「シワ」と、「ツ」が「ス」となった)

の転訛と解します。

1338しんがり(殿)

 軍が退却するとき、軍列の最後にあって敵の追撃にそなえること。また、その軍隊。隊列、序列、順番などの最後につくこと。また、そのもの。

 この「しんがり」は、

  「チナ・(ン)ガリ」、TINA-NGARI(tina=fixed,firm,satisfied,exhausted(whakatina=fasten,confine,oppress,be in severe labour);ngari=annoyance,disturbance,greatness,power)、「非常に苦しい戦いを強いられる・軍勢(しんがり)」(「チナ」が「シン」と、「(ン)ガリ」のNG音がG音に変化して「ガリ」となった)

の転訛と解します。

1339しんき(辛気)

 こころ。こころもち。気持ち。気分。心がくさくさして、気が重くなること。心の病にかかること。また、気がもめること。苦しくて辛いこと。また、そのさま。

 この「しんき」は、

  「チナ・キ」、TINA-KI(tina=fixed,firm,satisfied,exhausted(whakatina=fasten,confine,oppress,be in severe labour);ki=full,very)、「非常に・(心が)苦しい状況になること(辛気)」(「チナ」が「シン」となった)

の転訛と解します。

1340じんく(甚句)

 民謡の一種。主に、七・七・七・五の四句形式で旋律は地方によって違う。江戸時代の末ごろから流行した。秋田甚句、越後甚句、米山甚句、両津甚句、相撲甚句など。のほか、酒盛歌、盆踊歌に広く用いられている。

 この「じんく」は、

  「チナク」、TINAKU(tubers for planting,cultivated ground,germinate,conceive,delay(whakatinaku=loiter))、「感情の赴くままに歌い継ぐもの(甚句)」(「チナク」が「ジンク」となった)

の転訛と解します。

1341しんこ(米粉)

 精白したうるち米を乾燥してひいた粉。しんこもちの略。

 この「しんこ」は、

  「チノ・コ」、TINO-KO(tino=essentiality,reality,exact,quite;ko=descend,cause to descend)、「米そのものの・(子孫。米から作った)粉(米粉)」(「チノ」が「シン」となった)

の転訛と解します。

1342しんこ(新香)

 新しい香の物。新しい漬け物。また、一般に、漬け物をさしていう。

 この「しんこ」は、

  「チナ・カウ」、TINA-KAU(tina=fixed,firm,satisfied,exhausted;kau=stalk)、「良く漬かった・(植物の)茎(新香)」(「チナ」が「シン」と、「カウ」のAU音がO音に変化して「コ」となった)

の転訛と解します。

1343しんしゃく(斟酌)

 (水、飲料などを汲み分ける意から)酒などを酌み交わすこと。あれこれと照らし合わせて取捨すること。参酌。戦法の事情、心情を良くくみ取ること。推察すること。忖度。ほどよく取りはからうこと。気をつかうこと。手加減すること。控えめにすること。遠慮。

 この「しんしゃく」は、

  「チナ・チ・アク」、TINA-TI-AKU(tina=fixed,firm,satisfied,exhausted;ti=throw,cast;aku=delay,take time over anything,scrape out,cleanse)、「時間をかけて・いろいろと考慮した上で・(最終的に)決定する(斟酌)」(「チナ」が「シン」と、「チ・チク」が「シャク」となった)

の転訛と解します。

1344じんじょう(尋常)

 (「尋」は八尺、「常」は一丈六尺)わずかな長さ。わずかな距離。特別でない、普通のこと。また、そのさま。通常。見苦しくないこと。すぐれていること。また、そのさま。

 この「じんじょう」は、

  「チノ・チホ・ウ」、TINO-TIHO-U(tino=essentiality,reality,exact,quite;tiho=flaccid,soft;u=be dirm,be fixed,reach its limit)、「極めて・穏やかな・その本質を備えているもの(尋常)」(「チノ」ガ「ジン」と、「チホ」のH音が脱落して「チオ」から「ジョ」となった)

の転訛と解します。

1345しんぞう(新造)

 武家の妻女を指していう語。町家の、富貴な家の妻をいう。また、後には他人の妻女、新妻や若い女房をいい、転じて未婚の若い女性にも用いた。

 この「しんぞう」は、

  「チナ・トウ」、TINA-TOU(tina=fixed,firm,satisfied,exhausted;tou=kindle,set on fire)、「(火を燃やす。食事を作る)家事を行うことに・熟達している者(新造)」(「チナ」が「シン」と、「トウ」が「ゾウ」となった)

の転訛と解します。

1346しんだい(身代)

 個人または一家が有する、すべての財産。その身が持摘む土地・家屋・財宝その他の試算前部。全財産。身上。財産を有している状態。個人または一家の財産状態。生計。身上。財産・俸禄などを所有する立場。身分。地位。

 この「しんだい」は、

  「チナナ・タヒ」、TINANA-TAHI(tinana=body,the main part of anything,self,person,real,actually;tahi=one,single,unique,together,throughout)、「すべてひっくるめた・(個人または一家の胴体のような)財産(身代)」(「チナナ」の反覆語尾が脱落して「チナ」から「シン」と、「タヒ」のH音が脱落して「ダイ」となった)

の転訛と解します。

1347しんどい()

 (「心労(しんろう)」から「しんどう」に変化し、さらに「しんどい」に転じたとする説がある)辛い。苦しい。大儀だ。難儀だ。

 この「しんどい」は、

  「チ(ン)ガ・トイ」、TINGA-TOI(tinga=likely;toi=tingle as the ears,be galled,be irritated)、「苦しみまたはつらい・ことのような(しんどい)」(「チ(ン)ガ」のNG音がN音に変化して「チナ」から「シン」と、「トイ」が「ドイ」となった)

の転訛と解します。

1348しんぼう(辛抱)

 (「心のはたらき」の意の「心法(しんぽう)」が仏教の広まりに伴って一般化し、「耐え忍ぶ」意となったとする説がある)つらいことをじっと堪え忍ぶこと。がまんすること。また、そのさま。

 この「しんぼう」は、

  「チナ・パウ」、TINA-PAU(tina=fixed,firm,satisfied,exhausted;pau=consumed,exhausted,denoting the complete or exhausteive character of any action)、「(つらく苦しいことを)耐え忍んで・疲れ果てる(辛抱)」(「チナ」が「シン」と、「パウ」のAU音がOU音に変化して「ポウ」から「ボウ」となった)

の転訛と解します。

1349じんろく(甚六)

 総領息子。長男。すこしぼんやりなのを嘲っていう語。多く「総領の甚六」の形で用いる。お人好し。ぼんやり。愚か者。

 この「じんろく」は、

  「チノ・ロクロク」、TINO-ROKUROKU(tino=essentiality,self,reality,exact,quite;rokuroku=dim(roku=bend,be weighed down,grow weak,decline of a person dying,a fire going out etc.))、「(人の)本性が・(ほの暗い)ぼんやりしている(甚六)」(「チノ」が「ジン」と、「ロクロク」の反覆語尾が脱落して「コク」となった)

の転訛と解します。

「ス」

1350す(巣)

 鳥獣や魚類、昆虫などがこもりすむ所。また、産卵したり、子を育てる所。住む所。住む家。すみか。活動の本拠地。根城となる所。など。

 この「す」は、

  「ツ」、TU(stand,settle,take place)、「住む場所(巣)」(「ツ」が「ス」となった)

の転訛と解します。

1351す(素)

 他の要素が付け加わらない、ありのままのさまをいう。そのままであること。(他の語と複合して「素手」、「素肌」、「素足」、「素顔」、「素焼」などと用いる。)邦楽用語で、本式の演出に対する略式の演出。(「素語り」、「素謡」、「素唄」など。)日本舞踊で、特別な扮装をせず、黒の紋付に袴、または着流しでおどること。素踊り。多く人を表す語に付いて、平凡である、みすぼらしいなど軽蔑の意または強調の意を添える。(「素町人」、「素浪人」、「素寒貧」、「素頓狂」など)

 この「す」は、

  「ツ」、TU(fight with,engage,be,ignited,energetic,persistent,continuous)、「(ひたすら専念する)ありのままである(素)」または「(永続する)ずっとそのままである(素)」など(「ツ」が「ス」となった)

の転訛と解します。

1352すい(粋)

 混じりけのないこと。また、そのもの。純粋。多数、多様の中で特に優れているもの。選りすぐつたもの。世態や人情の表裏によく通じ、物わかりの良いこと。特に、遊里の事情によく通じていて、言動や姿があかぬけていること。また、そのさま。いき。通。

 この「すい」は、

  「ツヒ」、TUHI(write,adorn with painting,point at,indicate by pointing,redden,glow,gleam)、「(輝く)特に優れている(粋)」(「ツヒ」のH音が脱落して「ツイ」から「スイ」となった)

の転訛と解します。

1353すいかん(水干)

 水張りにして干した布。その布で作った狩衣の一種。平安時代以降に、下級官人や都市の庶民、武士などが用いた衣服のなかで格式の最も低いとされたもの。盤領(まるえり)の懸け合わせをボタンでなく、結紐(ゆいひも)と呼んで紐で結び合わせるのを特色とし、縫い合わせたところがほころびないように組紐で結んで菊綴じとし、裾を袴に着込めるのを例とした。

 この「すいかん」は、

  「ツイ・カニヒ」、TUI-KANIHI(tui=pierce,thread on a string,lace,sew;kanihi=patch a garment)、「布をつぎはぎした上衣で・紐で結んで着るもの(水干)」(「ツイ」が「スイ」と、「カニヒ」のH音が脱落して「カニ」から「カン」となった)

の転訛と解します。

1354すう(吸う)

 気体、液体を口、または鼻から体内に入れる。しみこませて取る。吸収する。引き寄せる。引き込む。金銭や利益などを他から集め取る。タバコをのむ。接吻する。

 この「すう」は、

  「ツ・ウ」、TU-U(tu=fight with,energetic;u=breast of a female,udder,teat)、「懸命に・(乳房を吸うように)吸う(吸う)」(「ツ」が「ス」となった)

の転訛と解します。

1355ずうたい(図体)

 (「胴体」の字音の変化とする説がある)人や動物のからだ。なり。姿。体格。ふつう、「大きなからだ」の意味を込めて用いる。

 この「ずうたい」は、

  「ツフ(ン)ガ・タイ」、TUHUNGA-TAI(tuhunga=perch for birds to light on,placed in a convenient position for killing them;tai=used only as a term of address to males or females)、「(男または女)人の・(鳥を捕獲する仕掛けの止まり木のような)大きなからだ(図体)」(「ツフ(ン)ガ」のH音および名詞形語尾のNGA音が脱落して「ツウ」から「ズウ」となった)

の転訛と解します。

1356すえき(須恵器)

 主に青灰色あるいは灰褐色の堅く焼いた無釉の土器で、土師器と並ぶ古墳時代の窯器。

 この「すえき」は、

   「ツアイ・キ」、TUAI-KI(tuai=thin,lean;ki=say,tell,call,speak,saying)、「(肉が)薄くて・(叩くと金属的な)高い音がする(土器。須恵器)」(「ツアイ」のAI音がE音に変化して「ツエ」から「スエ」となった)

の転訛と解します。

1357すか(スカ)

 期待が裏切られること。あてはずれ。無駄。うそをつくこと。でたらめ。また、見当はずれ。とんちんかん。籤などのはずれ。

 この「すか」は、

  「ツカウ(ン)ガ」、TUKAUNGA(bereft)、「(期待や見当が)失われた(はずれた。スカ)」(「ツカウ(ン)ガ」の名詞形語尾のNGA音が脱落して「ツカウ」となり、さらに語尾のU音が脱落して「スカ」となった)

の転訛と解します。

1358すかさず(透かさず)

 隙間を与えないさま。間髪を入れず。時機を外さず。ぬかりなく。すぐさま。

 この「すかさず」は、

  「ツカツカ・タツ」、TUKATUKA-TATU(tukatuka=start up,proceed forward;tatu=strike one foot against the other,stumble)、「片方の足を他の足にぶつけるほど・直ちに動き出す(透かさず)」(「ツカツカ」の反覆語尾が脱落して「ツカ」から「スカ」と、「タツ」が「サズ」となった)

の転訛と解します。

1359すがた(姿)

 人のからだつきやみなり、態度などのようす。風采。また、姿態、容姿。からだ(姿の入れ物)。美しい顔かたちの人。美人。物のかたち。物のさま。物の様相。ありさま。質物。

 この「すがた」は、

  「ツ(ン)ガ・タハ」、TUNGA-TAHA(tunga=send(tungatunga=beckon,make signs);taha=side,margin,edge,part,portion)、「外から見える・(人や物の)かたちやありさま(姿)」(「ツ(ン)ガ」のNG音がG音に変化して「ツガ」から「スガ」と、「タハ」のH音が脱落して「タ」となった)

の転訛と解します。

1360すかたん(スカタン)

 あてが外れること。だまされること。また、見当違いなことをした人を罵っていう語。とんちんかん。まぬけ。

 この「すかたん」は、

  「ツカウ(ン)ガ・タナ」、TUKAUNGA-TANA(tukaunga=bereft;tana=his,her,its)、「(期待や見当が)失われた(はずれた)・奴(スカタン)」(「ツカウ(ン)ガ」の名詞形語尾のNGA音が脱落して「ツカウ」となり、さらに語尾のU音が脱落して「スカ」と、「タナ」が「タン」となった)

の転訛と解します。

1361すき(鋤)

 農具の一つ。手と足の力で土地を掘り起こすときに用いるもの。また、牛や馬、あるいはトラクターに曳かせて土地を掘り起こすときにツカウもの。

 この「すき」は、

  「ツ・キヒ」、TU-KIHI(tu=fight with,energetic;kihi=cut off,destroy completely)、「懸命に・(土を)完全に掘り起こして砕くもの(鋤)」(「ツ」が「ス」と、「キヒ」のH音が脱落して「キ」となった)

の転訛と解します。

1362すき(主基)

 (古事記・万葉集に「手次」を「たすき」と訓ずる例があることから、「すき」を「次(つぎ)」の意と解する説がある)天皇の即位後はじめて行う大嘗祭に神事に用いる新穀、酒料を献ずるため、諸国のうち二つの国郡を卜定した。その第二にあたる国郡またはその斎場。(第一は斎基(ゆき))

 この「すき」は、

  「ツ・ウキ」、TU-UKI(tu=fight with,energetic;uki=distant times past or future(ukiuki=old,continuous,undisturbed,peaceful))、「(これから精一杯努力しなければならない)未来の・(治世の)永続(を象徴する。国郡。斎田。そこで穫れた新穀)」(「ツ」のU音と「ウキ」の語頭のU音が連結して「ツキ」から「スキ」となった)

の転訛と解します。

1363ずく(尽)

 根気。根性。元気。働くこと。(形容詞など状態的な語句に付けて用いる。「面白づく」など)もっぱらその状態に満ちている。(名詞などに付けて用いる。「相談づく」など)何人かが共にある行為をする関係にあることを示す。(「銭づく」など)その物、事にまかせる。そのものを頼りに、強引に事を運ぶ。

 この「ずく」は、

  「ツク(ン)ガ」、TUKUNGA(place into which one may be received,person to receive guest)、「(自ら積極的に行動することなく)すべて受け身でする行動または物事の成り行きにまかせてする行動」(「ツク(ン)ガ」の名詞形語尾のNGA音が脱落して「ツク」から「ズク」となった)

の転訛と解します。

1364ずく(銑)

 銑鉄(ずくてつ)の略。銑銭(ずくせん)の略。

 この「ずく」は、

  「ツク」、TUKU(let go)、「(溶鉱炉から)流れ出る(鉄。銑鉄)」または「(銅が流れて)文様が不鮮明である(品質不良の銭。銑銭)」(「ツク」が「ズク」となった)

の転訛と解します。

1365ずくなし(臆病者。怠け者。無精者)

 役に立たない人。臆病な人。また、怠け者を罵っていう語。

 この「ずくなし」は、

  「ツク(ン)ガ・ナチ」、TUKUNGA-NATI(tukunga=place into which one may be received,person to receive guest;nati=pinch or contract)、「(自ら積極的に行動することなく)すべて受け身であることに・固執する人(臆病者。怠け者。無精者)」または「お客を歓待することに・執着している人(他に何もしょうとしない人。怠け者)」(「ツク(ン)ガ」の名詞形語尾のNGA音が脱落して「ツク」から「ズク」と、「ナチ」が「ナシ」となった)

の転訛と解します。

1366すげない(素気ない)

 愛想がない。つれない。そっけない。おもいやりがない。薄情である。冷淡である。

 この「すげない」は、

  「ツケケ・ナイ」、TUKEKE-NAI(tukeke=lazy(tuke=elbow,angle,nudge,jerk,rough);nai=nei,neinei=stretched forward,reaching out,wagging)、「(何事にも)怠惰な(対応を)・続けている(素気ない)」(「ツケケ」の反覆語尾が脱落して「ツケ」から「スゲ」となった)

の転訛と解します。

1367すけべえ(助平)

 好色なこと。また、そのようなさまやそのような人。すきもの。いろごのみ。

 この「すけべえ」は、

  「ツ・カイパヱ」、TU-KAIPAWE(tu=manner,sort;kaipawe=vagrant,tramp,loafer)、「(浮浪者)女を渡り歩く(好色な)・性格の者(助平)」(「ツ」が「ス」と、「カイパヱ」のAI音がE音に、W音が脱落してAE音がE音に変化して「ケペ」から「ケベエ」となった)

の転訛と解します。

1368すこい

 (「こすい」の「こ」と「す」を逆にした語)ずるい。悪賢い。

 この「すこい(こすい)」は、

  「コ・ツフ(ン)ガ・ウイ」、KO-TUHUNGA-UI(ko=to give emphasis,to denote the predocate;tuhunga=perch for birds to light on,placed in a convenient position for killing them:ui=relax or loosen a noose)、「鳥の止まり木(に仕掛けた罠)から・輪縄にかかった鳥を取り出す・という行為(狡い)」(「ツフ(ン)ガ」のH音および名詞形語尾のNGA音が脱落して「ツウ」から「ス」となり、その語尾のU音と「ウイ」の語頭のU音が連結して「スイ」となった)

の転訛と解します。

1369すごい(凄い)

 ぞっとするほど恐ろしい。気味が悪い。鬼気迫るようである。ぞっとするほど淋しい。荒涼とした感じで背筋が寒くなるほどである。ぞっとするほど美しい。戦慄を感じさせるような素晴らしい風情である。あまりにその程度が甚だしくて、人に舌を巻かせるほどである。たいへん。たいそう。

 この「すごい」は、

  「ツ(ン)ゴ(ン)ゴ・オイ」、TUNGONGO-OI(tungongo=cause to shrink;oi=shudder,agitate,disturb)、「(ぞっとして)縮み上がって・震える(凄い)」(「ツ(ン)ゴ(ン)ゴ」のNG音がG音に変化し、反復語尾が脱落して「ツゴ」から「スゴ」となり、その語尾のO音と「オイ」の語頭のO音が連結して「スゴイ」となった)

の転訛と解します。

1370すこし(少し)

 数量、程度が小であるさま。わずかに。

 この「すこし」は、

  「ツ・コチ」、TU-KOTI(tu=manner,sort;koti=cut in two,divide,interrupt)、「(少量)切り落とした・程度の(少し)」(「ツ」が「ス」と、「コチ」が「コシ」となった)

の転訛と解します。

1371すこぶる(頗る)

 多くはなく、やや。すこしく。いささか。ちょっと。かなりの程度であるさま。たいそう。はなはだ。

 この「すこぶる」は、

  「ツ・コプル」、TU-KOPURU(tu=manner,sort;kopuru=stuffed up)、「(ぎっしりと)詰まって膨らんだ・程度の(頗る)」(「ツ」が「ス」と、「コプル」が「コブル」となった)

の転訛と解します。

1372すこやか(健やか)

 病気がなく丈夫なさま。健康で達者なさま。心身ともに正常であるさま。

 この「すこやか」は、

  「ツ・コイ・アカ」、TU-KOI-AKA(tu=manner,sort;koi=good,suitable;aka=anga=face or move in a certain direction,turn to or set about doing anything,aspect)、「(心身が)良い状態で・活動している・状況(健やか)」(「ツ」が「ス」と、「コイ・アカ」が「コヤカ」となった)

の転訛と解します。

1373すごろく(双六)

 盤遊戯の一つ。二人が相対して二個の賽子を交互に振り、出た目によって駒を進め、早く自分駒を相手の地内に入れ終わった者を勝ちとする。また、絵双六は、多数人が純に賽子を振って駒を進め、先に上がりに到達した者を勝ちとする。

 この「すごろく」は、

  「ツ・(ン)ゴロ(ン)ゴロ・クフ」、TU-NGORONGORO-KUHU(tu=manner,sort;ngorongoro=snore,utter exclamation of surprise or admiration;kuhu=thrust in,insert,conceal)、「(賽子を振る毎に局面が変化して)驚きや感嘆の声が・(夾まれる)洩れるという・たぐいの遊戯(双六)」(「ツ」が「ス」と、「(ン)ゴロ(ン)ゴロ」のNG音がG音に変化し、反覆語尾が脱落して「ゴロ」と、「クフ」のH音が脱落して「ク」となった)

の転訛と解します。

1374すさまじい(凄まじい)

 風などが寒い。身が寒くなるほどである。冷たさが感じられるほど色が白い。荒涼とした感じである。情趣がない。恐怖を感じさせるほどだ。恐ろしい。ものすごい。冷淡だ。生活などが苦しい。程度が甚だしい。あきれかえるほどである。

 この「すさまじい」は、

  「ツ・タマタマ・チヒ」、TU-TAMATAMA-TIHI(tu=manner,sort;tamatama=treat with marks of disgust;tihi=summit,top,lie in a heap)、「最高に・(人に)吐き気を催させる・たぐいの状況だ(凄まじい)」(「ツ」が「ス」と、「タマタマ」の反覆語尾が脱落して「タマ」から「サマ」と、「チヒ」のH音が脱落して「チイ」から「ジイ」となった)

の転訛と解します。

1375すし(寿司)

 食品、料理の名。魚介類を塩蔵して自然発酵させたもの。また、酢飯に魚介類などの具を配したもの。

 この「すし」は、

   「ツイ・チ」、TUI-TI(tui=pierce,thread on a string;ti=throw,cast,overcome)、「(人の舌を突き刺すような)酸っぱい・味がする料理(寿司)」(「ツイ」の語尾のI音が脱落して「ツ」から「ス」と、「チ」が「シ」となった)

の転訛と解します。

1376ずし(図子。辻子。途子)

 中世・近世の都市の大路と大路を連絡する小路をいう。こみち。また、その道を中心とする地域、町。都市において、十字の街頭をいう辻のこと。近世都市において人家の密集する一画をいう町のこと。

 この「ずし」は、

  「ツイ・チ」、TUI-TI(tui=pierce,thread on a string,lace,sew;ti=throw,cast)、「(大路と大路を)連結する道が・敷設されている場所(図子)」(「ツイ」の語尾のI音が脱落して「ズ」と、「チ」が「シ」となった)

の転訛と解します。

1377すず(鈴)

 世界的にみられる体鳴楽器の一つ。主に金属製の、裂目のある球形の空洞の中に、銅の球などを入れたもの。降って鳴らす。駅使がそのしるしとして賜った鈴、駅鈴。(ふつう鐸と書く)釣鐘形で、中に舌を吊した鳴り物。風鈴などの類。西洋音楽の打楽器の一つ。この「すず(鈴)」については、雑楽篇(その一)の359さなきの項の「すず(鈴)」を参照してください。

 この「すず」は、

  「ツツ」、TUTU(move with vigour,vigorous,summon,summoner)、「けたたましい(音を出すもの。鈴)」または「人を呼び集めるもの(鈴)」(「ツツ」が「スズ」となった)

の転訛と解します。

1378すずり(硯)

 石や瓦などで作り、墨を水で摺り下ろすのに用いる道具。硯箱(すずりばこ)の略。この「すずり(硯)」については、雑楽篇(その二)の1051ふで(筆)の項の「すずり(硯)」を参照してください。

 この「すずり」は、

  「ツツリ」、TUTURI(be moist,drip)、「(墨を摺って)墨汁を滴らせるもの(硯)」(「ツツリ」が「スズリ」となった)

の転訛と解します。

1379すそ(裾)

 衣服の下の縁。山の麓。裾野。山のようになっているものの下端の部分。川下。物の端。下端や末の部分。髪の毛の末端。からだの足。など。

 この「すそ」は、

  「ツ・トウ」、TU-TOU(tu=stand,settle;tou=anus,lower end of anything,tail of a bird)、「(ものの)下端に・位置するもの(裾)」(「ツ」が「ス」と、「トウ」の語尾のU音が脱落して「ソ」となった)

の転訛と解します。

1380ずだぶくろ(頭陀袋)

 頭陀修行をする僧が経巻、僧具、布施物などを入れて首にかける袋。死人を葬るとき、その首にかける袋。だぶだぶしてなんでも入るような袋。

 この「ずだぶくろ」は、

  「ツタ・プク・ロ」、TUTA-PUKU-RO(tuta=back of the neck;puku=swelling,abdomen,swell;ro=roro=inside)、「首に懸ける・(いろいろなものを)中に・入れて膨れるもの(袋。頭陀袋)」(「ツタ」が「ズダ」と、「フク」が「ブク」となった)

の転訛と解します。

1381すだれ(簾)

 細く削った竹や葦などを緯(よこいと)とし、間隔を置いて糸で編み連ねたもの。風を通しつつ、室の内外を隔てたり、日光を遮ったりするのに用いる。牛車や輿などの出入り口の障具。死者が出た家の表に「忌中」と書いた紙を貼って垂らすちいさな簀。蒸籠の底に敷く簀。

 この「すだれは、

  「ツ・タレ」、TU-TARE(tu=stand,settle;tare=hang,be drawn towards)、「懸けて・置くもの(簾)」(「ツ」が「ス」と、「タレ」が「ダレ」となった)

の転訛と解します。

1382すったもんだ

 互いに意見などが合わなくてもめるさま、ごたつくさまを表す語。すったかもんだか。

 この「すったもんだ」は、

  「ツ・タ・モノ・タ」、TU-TA-MONO-TA(tu=fight with,energetic;ta=dash,beat,lay;mono=plug,caulk,disable by means of incantations)、「懸命に・言い立てたり・(言葉に)詰まりながら・言い立てる(すったもんだ)」(「ツ」が「スッ」と、「モノ」が「モン」と、後の「タ」が「ダ」となった)

の転訛と解します。

1383ずつない(術無)

 工夫したり、対処したりする方法がない。どうしたらよいか分からなくて困る。また、苦しみや悩み事があってせつない。どうにもやりきれない。

 この「ずつない」は、

  「ツツ・ナイ」、TUTU-NAI(tutu=set on fire,be raised as dust disturbance etc.,violent;nai=nei,neinei=stretched forward,reaching out,wagging)、「無数の難問が湧き上がって・極限に達する(術無)」(「ツツ」が「ズツ」となった)

の転訛と解します。

1384すっぱぬく(素っ破抜く)

 刃物を不意に抜き放つ。人の隠し事や秘密を不意に暴いて明るみへ出す。人の意表に出る。出し抜く。

 この「すっぱぬく」は、

  「ツパ・ヌク」、TUPA-NUKU(tupa=spring of a trap,start,turn sharply aside,escape;nuku=move,put on one side)、「(罠の)仕掛けのバネを・動かす(急に罠に掛ける。素っ破抜く)」(「ツパ」が「スッパ」となった)

の転訛と解します。

1385すてき(素敵)

 程度が甚だしいさま。度はずれたさま。滅法。非常に優れているさま。すばらしい。転じて、素晴らしい美人。

 この「すてき」は、

  「ツテ・キ」、TUTE-KI(tute=shove,push,nudge,a charm to ward off malign influences,a quarrelsome cock pigeon;ki=full,very)、「たいへん・(うるさいキジバトのように噂する)褒めそやすこと(素敵)」(「ツテ」が「ステ」となった)

の転訛と解します。

1386すててこ(ステテコ)

 宴席などで座興に踊るこっけいな踊りの調子をとる囃子言葉。すててこ踊りの略。男子用の下着の一種。(明治期にすててこ踊りを始めた三遊亭円遊が穿いたところからという。)

 この「すててこ」は、

  「ツテ・テコ」、TUTE-TEKO(tute=shove,push,nudge,a charm to ward off malign influences,a quarrelsome cock pigeon;teko=rock,isolated,standing out)、「突出して・(うるさいキジバトのように)騒ぐ踊り(ステテコ)」(「ツテ」が「ステ」となった)

の転訛と解します。

1387すなわち(即ち)

 ある動作の終わったその時。途端。過去のある時。その時。当時。前の事柄を受け、その結果として後の事柄が起こることを示す。そこで。そうなると。それゆえ。前の事柄を受け、その結果として後の事柄を言い出すときに軽く添える。さて。ここに。そして。前の事柄に対し、後の事柄で説明や言い換えをすることを示す。つまり。いいかえると。ということは。即座に。すぐに。その所。まさに。

 この「すなわち」は、

  「ツ(ン)ガ・ワチ」、TUNGA-WHATI(tunga=circumstance,time,etc. of standing,site,foundation;whati=be broken off short,be interrupted,turn and go away,come quickly)、「(その時から)短い時が経過した・その時(即ち)」(「ツ(ン)ガ」のNG音がN音に変化して「ツナ」から「スナ」となった)

の転訛と解します。

1388ずにのる(図に乗る)

 自分の思うように事が運ぶ。勢いよく事が運ぶ。また、そういう状態なのでいい気になってつけあがる。調子に乗る。

 この「ずにのる」は、

  「ツヌイ・(ン)ガウ・ル」、TUNUI-NGAU-RU(tunui=used of a comet or meteor regarded as the visible presentment of a god;ngau=bite,hurt,act upon,attack,wander,go about,raise a cry;ru=shake,agitate,scatter)、「神様が出現したかのように・(奮って)どんどん・事が進む(図に乗る)」(「ツヌイ」が「ズニ」と、「(ン)ガウ」のNG音がN音に、AU音がO音に変化して「ノ」となった)

の転訛と解します。

1389すばらしい(素晴らしい)

 物事の程度の甚だしいさまさまをいう。

 この「すばらしい」は、

  「ツ・パラ・チヒ」、TU-PARA-TIHI(tu=stand,settle,manner,sort;para=clear,shine clearly,come out from the clouds;tihi=summit,top,lie in a heap)、「最高に・清らかに輝いている・部類の(素晴らしい)」(「ツ」が「ス」と、「パラ」が「バラ」と、「チヒ」のH音が脱落して「シイ」となった)

の転訛と解します。

1390すばる(昴)

 牡牛座にある散開星団プレアデスの和名。青白く輝く肉眼で見える星は六個で、六連星(むつらぼし)ともいう。統べる星の意とする説がある。農耕の星として尊ばれた。

 この「すばる」は、

  「ツ・パル」、TU-PARU(tu=fight with,energetic;paru=sultry,hot,dull)、「懸命に・(灼熱して)青白く輝く星(昴)」(「ツ」が「ス」と、「パル」が「バル」となった)

の転訛と解します。

1391すびつ(炭櫃)

 床を切って作った炉。いろり。また、一説には、角火鉢ともいう。炭櫃桶。

 この「すびつ」は、

  「ツ・ピヒ・ツ」、TU-PIHI-TU(tu=stand,settle;pihi=cut,split;tu=fight with,be ignited,energetic)、「(小さく)切断した(木炭を)・燃やして・置く場所(炭櫃。いろり)」(「ツ」が「ス」と、「ピヒ」のH音が脱落シテ「ビ」となった)

の転訛と解します。

1392すべからく(須く)

 当然なすべきこととして。本来ならば。

 この「すべからく」は、

  「ツ・ペカ・ラク」、TU-PEKA-RAKU(tu=fight with,be ignited,energetic;peka=branch of a tree or river etc.turn aside;raku=scratch,scrape)、「枝葉末節のことは・捨てて・(本来なすべきこと、当然なすべきことを)懸命に行う(須く)」(「ツ」が「ス」と、「ペカ」が「ベカ」となった)

の転訛と解します。

1393ずべこう(ズベ公)

 不良少女。

 この「ずべこう」は、

  「ツペ・コ」、TUPE-KO(tupe,whakatupe=frighten by shouting at(tupeha=angry talk,wrangling);ko=girl,used only in addressing)、「烈しい物言いをして人を驚かせる・少女(不良少女。ズベ公)」(「ツペ」が「ズベ」と、「コ」が「コー」から「コウ」となった)

の転訛と解します。

1394すべた

 (ポルトガル語 espada カルタ用語で「剣」の意とする説がある)めくりカルタで点にならないつまらない札。とりえのないつまらない者。賤しい者。顔かたちの醜い女。また、女、特に娼婦を卑しめていう語。

 この「すべた」は、

  「ツ・ペタペタ」、TU-PETAPETA(tu=manner,sort;petapeta=worn out,rags,all at once)、「ぼろきれの・たぐいの者(すべた)」(「ツ」が゜ス」と、「ペタペタ」の反覆語尾が脱落して「ベタ」となった)

の転訛と解します。

1395すべて(凡て)

 前部とりまとめて。万事なにもかも。残らずみんな。ことごとく。総じて。おしなべて。だいたい。全く。決して。モノの前部。また、事柄のてんまつ一切。

 この「すべて」は、

  「ツペ・テ」、TUPE-TE(tupe=a charm for depriving one's enemies of power,affect by the tupe charm,depriove of power;te=to make an emphatic statement)、「実に・(相手の)力をすべて奪い取る(相手のすべてを自分の支配下に置く。すべて)」(「ツペ」が「スベ」となった)

の転訛と解します。

1396ずぼし(図星)

 的の中心の黒点。見込んだところ。目当てのところ。思う壺。急所。指摘されたとおりであること。

 この「ずぼし」は、

  「ツ・ポチ」、TU-POTI(tu=stand,settle,manner,sort;poti=angle,corner,be the subject of gossip or disparagement)、「ある場所に・存在するもの(的の中心の黒点、または見込んだところ、目当てのところなど。図星)」または「噂(の内容、事実)が・(確かに)存在すること(図星)」(「ツ」が「ズ」と、「ポチ」が「ボシ」となった)

の転訛と解します。

1397ずぼら

 行うべきことや守るべきことをしなかったり、おろそかにして、だらしないこと。大坂堂島の米相場で、相場がずるずると下がること。この「ずぼら」については、国語篇(その十六)の182ぶしょうの項の「ずぼら」を参照してください。

 この「ずぼら」は、

  「ツ・ポラ」、TU-POLA(tu=stand,settle;(Hawaii)pola=platform of high seat between the canoes of a double canoe)、「ダブルカヌーの特等席に・乗っているような(何もしないで過ごす。無精。ずぼら)」(「ツ」が「ズ」と、「ポラ」が「ボラ」となった)

の転訛と解します。

1398すみか(住処)

 住むところ。すまい。住居。

 この「すみか」は、

  「ツ・ミカ」、TU-MIKA(tu=stand,settle;(Hawaii)mika=to press,crush)、「(圧縮した)小さい・住むところ(住処)」(「ツ」が「ス」となった)

の転訛と解します。

1399すみません(済みません)

 気持ちの上で満足しない。納得しない。申し訳ありません。ありがとうございます。人に謝るとき、礼をいうとき。以来するときなどに使う。この「すみません」については、国語篇(その十五)の112すみませんの項を参照してください。

 この「すみません」は、

  「ツ・ミヒ・マテ(ン)ガテ(ン)ガ」、TU-MIHI-MATENGATENGA(tu=stand,settle;mihi=sigh for,greet,acknowledge an obligation,express discomfort,be expressed of affection;matengatenga=benumbed,aching,disgusted,causing pain)、「(貴方に)苦痛を与えたことに・悲しみを・感じている(済みません)」(「ツ」が「ス」と、「ミヒ」のH音が脱落して「ミ」と、「マテ(ン)ガテ(ン)ガ」の反復語尾が脱落し、NG音がN音に変化して「マテナ」から「マセン」となった)

の転訛と解します。

1400すむ(住む)

 生活の居所と決めて、その場所に止まる。そこに居着いて暮らす。鳥獣虫魚などが巣をつくって、そこにいる。暮らしを立てるための仕事にありつく。

 この「すむ」は、

  「ツ・ム」、TU-MU(tu=stand,settle;mu=silent)、「静かに・定住する(住む)」(「ツ」が「ス」となった)

の転訛と解します。

1401すめろき(天皇)・すめらぎ(天皇)

 地方を治める首長。地方豪族の主。皇祖である天皇。時の天皇。なお、「すめらみこと(天皇)」については、雑楽篇(その一)の310すめらみこと(天皇)の項を参照してください。

 この「すめろき」、「すめらぎ」は、

  「ツメ・ロキ」、TUME-ROKI(tume=slow,dilatory;roki=make calm,calm)、「ゆっくりと動作する・自ずと(周囲に)静寂をもたらす(者。天皇)」(「ツメ」が「スメ」となった)

  「ツメ・ラ(ン)ギ」、TUME-RANGI(tume=slow,dilatory;rangi=sky,heaven,weather,air,head,chief)、「ゆっくりと動作する・(天におわすような)高貴極まりない首長(天皇)」(「ツメ」が「スメ」と、「ラ(ン)ギ」のNG音がG音に変化して「ラギ」となった)

の転訛と解します。

1402すもう(相撲)

 二人の力士が土俵の中で素手で相手を土俵の外へ出すか、倒すかして勝敗を争う競技。この「すもう(相撲)」については、古典篇(その七)の211H3當摩蹶速(タギマノクエハヤ)の項のすもう(相撲)を参照してください。

 この「すもう」は、

  「ツ・モウ」、TU-MOU(tu=fight with,energetic;mou=we two,fixed(momou=struggle,wrestle))、「二人で行う・戦い」(「ツ」が「ス」となった)

の転訛と解します。

1403ずらかる(逃る)

 他人の目をごまかして、逃走する。逃げる。高飛びする。(盗人、テキヤ仲間の隠語)

 この「ずらかる」は、

  「ツラカハ・ル」、TURAKAHA-RU(turakaha=overburdened,bothered;ru=shake,agitate,scatter)、「あまりの重荷に(耐えかねて)・思い切る(逃る)」(「ツラカハ」の語尾のH音が脱落して「ズラカ」となった)

の転訛と解します。

1404すり(掏摸)

 盗人。特に往来、車中などで、人混みに紛れて、すれ違いざまに他人の財布、貴重品などを気付かれないように掏摸取ったり、切り取ったりすること。巾着切り。

 この「すり」は、

  「ツ・フリ」、TU-HURI(tu=fight with,energetic;huri=turn round,overturn,revolve,set about)、「懸命に・(手を回転させる)掏り取る(掏摸)」(「ツ」ガ「ス」となり、その語尾のU音と「フリ」のH音が脱落した「ウリ」の語頭のU音が連結して「スリ」となった)

の転訛と解します。

1405すりこぎ(擂り粉木)

 擂り鉢に入れた穀類などを、押しつぶしこすつて粉状にするのに使用する先の円い棒。すりぎ。あたりぎ。(味噌をすってつくるところから)味噌汁。(頭を丸めた形が似ているところから)僧を軽蔑し、ののしっていう語。すりこぎ坊主。味噌すり坊主。など。

 この「すりこぎ」は、

  「ツリ・コキ」、TURI-KOKI(turi=knee,deaf,obstinate,water;koki=angle,corner,turn)、「膝で(すり鉢を固定して)・回転させるもの(棒。擂り粉木)」(「ツリ」が「スリ」と、「コキ」が「コギ」となった)

  または「ツ・フリ・カウ・キ」、TU-HURI-KAU-KI(tu=fight with,energetic;huri=turn round,overturn,revolve,set about;kau=alone,only;ki=full,very)、「懸命に・回すことに・専ら・専念するもの(擂り粉木)」(「ツ」ガ「ス」となり、その語尾のU音と「フリ」のH音が脱落した「ウリ」の語頭のU音が連結して「スリ」と、「カウ」のAU音がO音に変化して「コ」と、「キ」が「ギ」となった)

の転訛と解します。

1406するどい(鋭い)

 勇ましくて強い。精鋭である。非常である。冷淡である。とげとげしい。勢いが激しい。とげとげしい。きびしい。速い。物事が支障なく速やかに行われる。尖っている。鋭利である。感覚が鋭敏である。この「するどい」については、国語篇(その九)の166の項の(3)するどいを参照してください。

 この「するどい」は、

  「ツ・ル・トイ」、TU-RU-TOI(tu=fight with,energetic;ru=shake,agitate,scatter;toi=tip,point,move quickly)、「(人や物が)力強く・動き・速く走る(鋭い)」(「ツ」が「ス」と、「トイ」が「ドイ」となった)

の転訛と解します。

1407するめ(鯣)

 するめいか。烏賊の内臓を取り去り、開いて干した食品。この「するめ(鯣)」については、雑楽篇(その二)の702いか(烏賊)の項の「するめ(鯣)」を参照してください。

 この「するめ」は、

  「ツル・マエ」、TURU-MAE(turuturu=make firm or permanent;mae=languid,listless)、「堅くなった・ぐにゃぐにゃであったもの(いかの乾物。鯣)」(「ツル」が「スル」と、「マエ」のAE音がE音に変化して「メ」となった)

の転訛と解します。

1408すわる(座る)

膝を折り曲げて席につく。席に腰掛ける。じっくりと腰を落ち着ける。(心、肝、性根などが)何事にも動ずることなく落ち着く。(目や喉などが)機能を十分に果たせなくなって動きが鈍る。ある場所に定まって動きがなくなる。位置、場所などを占める。(印判などが)押捺される。(文字などが)しっかりと書かれる。など。 この「すわる」については、国語篇(その九)の074の項の「(2),(3)すわる」および国語篇(その十五)の114すわる(座る)の項を参照してください。

 この「すわる」は、

  「ツ・ワル」、TU-WHARU(tu=stand,settle;wharu=concave,depressed)、「凹み(のあるもの。椅子、座布団など)の・上に腰を下ろす(座る)」(「ツ」が「ス」となった)

  または「ツ・ワル」、TU-WARU(tu=stand,settle;waru=scrape,pare,shave)、「(地面を)平らにして・腰を下ろす(座る)」(「ツ」が「ス」となった) (「ツ」が「ス」となった)

の転訛と解します。

1409ずんぎり(寸切り)

 真っ直ぐに断ち切ること。真っ直ぐ横に切ること。輪切り。ずんどぎり。筒切り。頭部を真っ直ぐに切った形をした茶入れのこと。また、花器にもいう。筒形わした茶碗。大木をなかばから切って、茶室の庭などに植えて飾りとすること。

 この「ずんぎり」は、

  「ツ(ン)ガ・キヒ・イリ」、TUNGA-KIHI-IRI(tunga=wound,circumstance or etc. of being wounded;kihi=cut off,destroy completely;iri=be elevated on something,rest upon,hang,be published,heard,be empty)、「(真横に)切り落として・置いた・切り口を見せている状態のもの(寸切り)」(「ツ(ン)ガ」のNG音がN音に変化して「ツナ」から「スン」、「ズン」と、「キヒ」のH音が脱落したその語尾のI音と「イリ」の語頭のI音が連結して「キリ」から「ギリ」となった)

の転訛と解します。

1410ずんぐり(ズングリ)

 背が低くて肉付きよく肥っているさま。また、物が太くて短いさまを表す語。低く野太い声を表す語。

 この「ずんぐり」は、

  「ツ・(ン)グ(ン)グ・ウリウリ」、TU-NGUNGU-URIURI(tu=fight with,energetic,manner,sort;ngungu=eat greedy,gnaw;uriuri=short in time or distance)、「しっかりと・食いちぎって・短くなっている(ズングリ)」(「ツ」が「ズ」と、「(ン)グ(ン)グ」の最初のNG音がN音に、次のNG音がG音に変化して「ヌグ」から「ング」となり、その語尾のU音と「ウリウリ」の反覆語尾が脱落した「ウリ」の語頭のU音が連結して「ングリ」となった)

の転訛と解します。

1411すんでのこと(すんでの事)

 もう少しのところで。ほとんど。もはや。

 この「すんでのこと」は、

  「ツヌ・タイ(ン)ゴ・コト」、TUNU-TAINGO-KOTO(tunu=roast,inspire with fear;taingo=spotted,mottled;koto=loathing,averse)、「(もう少しのところで)嫌な・汚れがつきそうになって・ひどく心配した(すんでのこと)」(「ツヌ」が「スン」と、「タイ(ン)ゴ」のAI音がE音に、NG音がN音に変化シテ「テノ」から「デノ」となった)

の転訛と解します。

1411-2ずんどう(寸胴)

 腹から腰にかけての太さが同じで、ウエストがくびれていないこと。また、上から下までが同じ太さであること。また、そのさま。

 この「ずんどう」は、

  「ツナ・トウ」、TUNA-TOU(tuna=the long-finned and the short-finned fresh-water eels and their varieties;tou=posteriors,lower end of anything,tail of birds)、「(上から)下の端(まで)が・(ウナギの胴体のように)同じ太さであること(そのさま)」(「ツナ」が「スン」、「ズン」と、「トウ」が「ドウ」となった)

の転訛と解します。

1412ずんべらぼう

 態度やおこないなどにしまりがないこと。なげやりなこと。また、その人。でこぼこや出っ張りの部分がなく、のっぺりとしていること。また、そのものやその人。のっぺらぼう。ずべらぼう。ずんぼろぼう。

 この「ずんべらぼう」は、

  「ツナ・ペラ・ポウ」、TUNA-PERA-POU(tuna=the long-finned and the short-finned fresh-water eels and their varieties;pera=like that,treat or do in that way,act or behave in that way;pou=post,pole,stake)、「ウナギ・のように(まっすぐで掴みどころがない)本質または性格の・棒のようなものまたは人(ずんべらぼう)」(「ツナ」が「スン」、「ズン」と、「ペラ」が「ベラ」と、「ポウ」が「ボウ」となった)

の転訛と解します。

1413すんま(角前)

 (「すみまえがみ(角前髪)」の下略「すみま」の変化した語という)江戸時代、京都・大坂地方で角前髪をいう。

 この「すんま」は、

  「ツ(ン)ガ・ママ」、TUNGA-MAMA(tunga=circumstance or time etc. of standing,site,foundation;mama=light,not heavy,unencumbered)、「簡略に仕上げた・性質の(髪型。角前)」(「ツ(ン)ガ」のNG音がN音に変化して「ツナ」から「スン」と、「ママ」の反覆語尾が脱落して「マ」となった)

の転訛と解します。

「セ」

1414せい(所為)

 (「所為」の字音「しょい」の変化した語とする説がある)上の言葉を受けて、それが原因・理由であることを表す。ため。せえ。

 この「せい」は、

  「タエ・イ」、TAE-I(tae=arrive,come,reach,extend to,proceed to,be effected;i=past tense)、「(ある行為や現象などの後にあることが)起こっ・た(所為)」(「タエ」のAE音がE音に変化して「テ」から「セ」となった)

の転訛と解します。

1415せい(背)

 からだの大きさ。体格。特に、頭頂から足先までの高さ。身長。みのたけ。せたけ。

 この「せい」は、

  「テイ」、TEI(=teitei=high,tall,lofty,summit)、「(身長の)高いこと(背)」(「テイ」が「セイ」となった)

の転訛と解します。

1416せいぞろい(勢揃い)

 軍勢を集め揃えること。また、軍勢が揃うこと。ある範囲内の人や物事が一同に揃うこと。また、それらを一同に揃えること。

 この「せいぞろい」は、

  「タイ・トロイ」、TAI-TOROI(tai=tide,wave,anger,rage,violence;toroi=ferment)、「(荒れ狂う集団)軍勢が・(湧き出るように)集合すること(勢揃い)」(「タイ」のAI音がEI音に変化して「セイ」と、「トロイ」が「ソロイ」となった)

の転訛と解します。

1417せいろう(蒸籠)

 釜の上にはめて、糯米、団子、饅頭などを蒸す容器。蒸し菓子、側などを入れて運ぶのに用いる器。この「せいろう(蒸籠)」については、雑楽篇(その二)の1040釜(かま)の項の「蒸籠(せいろう)」を参照してください。

 この「せいろう」は、

  「タイヒ・ロ」、TAIHI-RO(taihi=be split;ro=roto=inside)、「(湯を入れる鍋と蒸す物を入れる)中身の器が・分離している(調理器具。蒸し器)」(「タイヒ」のAI音がE音に変化し、H音が脱落して「テイ」から「セイ」と、「ロ」が「ロウ」となった)

の転訛と解します。

1418ぜえろく(贅六)

 (「さいろく(才六)」の変化した語とする説がある)人をののしる言葉。多く、関東の人が関西の人をあざけっていう。

 この「ぜえろく」は、

  「テヘ・ロク」、TEHE-ROKU(tehe=penis;roku=bend,be weighed down,wane of the moon,grow weak)、「(弱々しい)ヘナチョコの・金玉野郎(贅六)」(「テヘ」のH音が脱落して「テエ」から「ゼエ」となった)

の転訛と解します。

1419せかせか

 せせこましいさま。こせこせしているさま。あわただしく、動作などの落ち着かないさま。せきたてられるようで気持ちの落ち着かないさま。

 この「せかせか」は、

  「テカテカ」、TEKATEKA(confounded(teka=false,lying))、「(嘘を吐かれて)混乱している(せかせか)」(「テカテカ」が「セカセカ」となった)

の転訛と解します。

1420せがれ(倅)

 自分の息子をさしてへりくだっていう語。古くは男子、女子ともに用いた。子供や年齢の若い者をさして卑しめていう語。男子をさすことが多いが、女子をさすこともある。陰茎の異称。

 この「せがれ」は、

  「テ・(ン)ガレ」、TE-NGARE(te=the;ngare=family,number of people connected by blood,elder heads of branches of a family,multitude,body of men)、「例の・(自分の)家族(の一員。倅)」(「テ」が「セ」と、「(ン)ガレ」のNG音がG音に変化して「ガレ」となった)

の転訛と解します。

1421せき(咳)

 喉頭や気管支の壁に分布した迷走神経が刺激されて起こる、はげしい呼気運動。しわぶき。この「せき(咳)」については、国語篇(その十五)の115せき(咳)の項を参照してください。

 この「せき」は、

  「テ・キ」、TE-KI(te=crack,emit a sharp explosive sound(tete=squeak);ki=full,very)、「何回も・(爆発するような)呼吸をする(咳)」(「テ」が「セ」となった)

  または「チヘ・キ」、TIHE-KI(tihe=sneeze;ki=full,very)、「何回も・くしゃみをする(咳)」(「チヘ」のH音が脱落し、IE音がE音に変化して「テ」から「セ」となった。また「キ」が濁音化して「ギ」となった。また「チヘ」のH音が脱落して「チエ」から「シェ」となった)

の転訛と解します。

1422せき(関)

 物事をささえとめること。また、そのもの。せき(堰)。国境や要所にあって、通行者を検問する所。関所。せきせん(関銭)の略。獣を入れておく檻。かこい。相撲取りの最上位の者。関取。大関。(「関の山」の形で)物事の限度。など。

 この「せき」は、

  「テキ」、TEKI(outer fence of a pa(=stockade,fortified place))、「(柵を巡らした砦の)最も外側の柵(関)」(「てき」が「セキ」となった)

の転訛と解します。

1423せきぞろ(節季候)

 江戸時代、歳末の門付けの一種。十二月のはじめから二十七、八日ごろまで、羊歯の葉をつけた笠をかぶり、赤い布で顔を覆って目だけを出し、割竹を叩きながら、二、三人で組になって町家をまわり、「ああ節季候節季候、めでたいめでたい」と唱えて囃して歩き、米銭をもらつて回つたもの。

 この「せきぞろ」は、

  「テキ・トロ」、TEKI-TORO(teki=outer fence of a pa(=stockade,fortified place);toro=extend,survey,visit,explore)、「(砦の最外郭のような)一年の最後の時期の・(幸いを寿ぐ)訪問(節季候)」(「「テキ」が「セキ」と、「トロ」が「ゾロ」となった)

の転訛と解します。

1424せけん(世間)

 (仏語)生きものと生きものをすまわせている山河大地、あるいはこれらを構成する要素としての宇宙の総称。世俗。出世間に対して聖者の位に達しない凡夫など。人が生活し、構成する現世社会。この世。人の住む空間の広がり。天と地の間。人々とのとの交わり。世間づきあい。また、世間に対する体面。転じて、そのための経費など。この世の生活。暮らし向き。生計。身代。財産。

 この「せけん」は、

  「テ・カイ(ン)ガ」、TE-KAINGA(te=the;kainga=field of operation,scope of work)、「例の・(人が)生活を営む場所(世間)」(「テ」が「セ」と、「カイ(ン)ガ」のAI音がE音に、NG音がN音に変化して「ケナ」から「ケン」となった)

の転訛と解します。

1425ぜげん(女衒)

 江戸時代、女を遊女屋、旅籠屋などに売ることを業としたもの。関東での俗称。

 この「ぜげん」は、

  「テ・(ン)ゲネ」、TE-NGENE(te=the;ngene=Scrofulous wen,wrinkle,fold,fat)、「例の・(皺が多い)裏で悪業を重ねている(商売。女衒)」(「テ」が「ゼ」と、「(ン)ゲネ」のNG音がG音に変化して「ゲネ」から「ゲン」となった)

の転訛と解します。

1426せこ(勢子)

 狩猟の場で、鳥獣を駆り立てたり、他へ逃げ去ることを防ぎ止めたりする人夫。狩子(かりこ)。この「せこ(勢子)」については、国語篇(その十八)の431セタの項の「セコ」を参照してください。

 この「せこ」は、

  「テ・コ」、TE-KO(te=the...of;ko=sing,resound,shout)、「例の・(獲物を追い立てるために)叫び声をあげる(人々。勢子)」(「テ」が「セ」となった)

  または「タイ・コ」、TAI-KO(tai=tide,wave,anger,rage,violent;ko=sing,resound,shout)、「荒々しく・(獲物を追い立てるために)叫び声をあげる(人々。勢子)」(「タイ」のAI音がE音に変化して「テ」から「セ」となった)

の転訛と解します。

1427せこい

 悪い。醜い。下手である。また、少ない。無い。ずるい。素早い。考えかたや、やり方がけちくさい。みみっちい。

 この「せこい」は、

  「テコテコ・オイ」、TEKOTEKO-OI(tekoteko=figurehead of a canoe(whakatekoteko=make grimaces);oi=shudder,move continuously,as the sea)、「(他人の顔をしかめさせる)人の顰蹙を買うような(不快を感じさせる。悪い。醜い。ずるい。みみっちい。などの)行動を・(堂々と)継続して行う(せこい)」(「テコテコ」の反覆語尾が脱落しT音がS音に変化して「セコ」となり、その語尾のO音と「オイ」の語頭のO音が連結して「セコイ」となつた)

の転訛と解します。

1428せちがらい(世知辛い)

 小賢しい。計算高い。抜け目がない。世渡りが難しい。暮らしにくい。

 この「せちがらい」は、

  「タエ・エチ・(ン)ガラ・イ」、TAE-ETI-NGARA-I(tae=arrive,come,touch of feelings,proceed to,be affected;eti=shrink(etieti=disgusting);ngara=snarl;i=past tense)、「(何と小賢しいことかと、または何と世渡りが難しいことかと)不快感を・感じて・唸り声を・上げた(世知辛い)」(「タエ」のAE音がE音に変化して「テ」から「セ」となり、その語尾のE音と「エチ」の語頭のE音が連結して「セチ」と、「(ン)ガラ」のNG音がG音に変化して「ガラ」となった)

の転訛と解します。

1429せっかい(節介)

 必要もないことに口出ししたり、世話焼きしたりすること。また、その人。そのさま。

 この「せっかい」は、

  「テ・ツ・カイ」、TE-TU-KAI(te=the;tu=fight with,energetic;kai=fulfil its proper function,have full play)、「例の・懸命に・(他人の)世話をねんごろにすること(節介)」(「テ」が「セ」と、「ツ」が「ッ」となった)

の転訛と解します。

1430せっかく(折角)

 角(つの)を折ること。物のかどを折ること。プリズムなどで光の角度を変えること。(前漢の朱雲が五鹿の人充宗と易を論じて勝ち、「朱雲の強力鹿の角を折る」と評された故事から)高慢の鼻をへし折る。力を尽くすこと。困難に遭遇するさま。大事なこと。(後漢の郭泰が外出して雨に遭い頭巾のかどが折れたが、郭泰を慕う人々がわざわざ々真似をしたという故事から)努力して動作をするさま。その動作の結果生じた状態を逃すのは惜しいという話者の気持ちを表す語。それが十分な効果を発揮しなくては惜しいという気持ちを表す語。十分に気を付けるよう臨む気持を表す語。

 この「せっかく」は、

  「テ・ツ・カク」、TE-TU-KAKU(te=the;tu=fight with,energetic;kaku=scrape up,scoop up,bruise,pieces stripped off in the process of dressing flax)、「例の・懸命に・土を掘り上げるなど努力をすること(折角)」(「テ」が「セ」と、「ツ」が「ッ」となった)

の転訛と解します。

1431せっかち(性勝ち)

 先を急いで落ち着かないこと。また、そのさま。気短か。性急。

 この「せっかち」は、

  「テ・ツ・カチ」、TE-TU-KATI(te=the;tu=fight with,energetic;kati=bite,nip(kakati=intense,keen))、「例の・懸命に・噛むような(烈しく急いで行動する)(性勝ち)」(「テ」が「セ」と、「ツ」が「ッ」となった)

の転訛と解します。

1432せっかん(折檻)

 (前漢の朱雲が成帝に強く諫言して怒りを受け、朝廷から引きずり出されようとした際に、檻(てすり)につかまったためその檻が折れたという故事から)厳しく意見すること。厳しく叱ること。転じて、責めさいなむこと。こらしめの体刑をくわえること。

 この「せっかん」は、

  「テ・ツ・カ(ン)ガ」、TE-TU-KANGA(te=the;tu=fight with,energetic;kanga=abuse,curse,execrate)、「例の・懸命に・(人を)虐待する(折檻)」(「テ」が「セ」と、「ツ」が「ッ」と、「カ(ン)ガ」のNG音がN音に変化して「カナ」から「カン」となった)

の転訛と解します。

1433せっき(節季)

 季節の終わり。また、時節。年の暮れ。年末。掛売買の決算期(江戸では、盆前と年末の二期。上方では五節季、のち六節季)。

 この「せっき」は、

  「テ・ツツキ」、TE-TUTUKI(te=the;tutuki=reach the farthest limit,extend)、「例の・(掛け売りの)決済を延期する最長の期限(節季)」(「テ」が「セ」と、「ツツキ」の反覆語頭が脱落して「ツキ」から「ッキ」となった)

の転訛と解します。

1434せった(雪駄)・せきだ(席駄)

 竹皮草履の裏に革をはった草履。江戸時代、元禄以降、かかとに尻鉄(しりかね)を打つことが流行し、以後尻鉄のないものは雪駄といわなくなった。また、席駄(せきだ)ともいった。この「せった(雪駄)」については、雑楽篇(その二)の1054げた(下駄)の項の「せった(雪駄)」を参照してください。

 この「せった」、「せきだ」は、

  「タイツ・タハ」、TAITU-TAHA(taitu=taken up,lift;taha=side,margin,edge)、「(地面に接する裏)面に・(革を)裏打ちして高くした(履き物。雪駄)」(「タイツ」のAI音がE音に変化して「テツ」から「セッ」と、「タハ」のH音が脱落して「タ」となった)

  「テ・キタ」、TE-KITA(te=the;kita=chirp,sing,stridulate as the cicada,tightly,fast,intensely)、「例の・(裏に革を貼り踵に尻鉄を打った、堅くて)うるさい音がする(履き物。雪駄。席駄)」(「テ」が「セ」と、「キタ」が「キダ」となった)

の転訛と解します。

1435せつない(切ない)

 非常に親切である。大切に思っている。悲しさ・寂しさ・恋しさなどで、胸がしめつけられるような気持ちである。心がくるしい。やるせない。呼吸が苦しい。息苦しい。体が苦しい。追い詰められ、どうにもならない状態である。切羽詰まった状態である。生活が苦しい。この「せつない(切ない)」については、国語篇(その十四)の011いきぐるしい(息苦しい)の項の「セズネ」を参照してください。

 この「せつない」は、

  「テ(ン)ガ・ツ・ナイ」、TENGA-TU-NAI(tenga=Adam's apple,goitre;tu=be hit,be wounded,be served;nai=nei,neinei=stretched forward,reaching out,wagging)、「極限に達するまで・喉(のど)が・痛む(息が苦しい。切ない)」(「テ(ン)ガ」の名詞形語尾のNGA音が脱落して「テ」から「セ」となった)

の転訛と解します。

1436せっぱつまる(切羽詰まる)

 物事がさし迫って、どうにもならなくなる。最後の土壇場になる。抜き差しならなくなる。

 この「せっぱつまる」は、

  「タイツ・パツ・マル」、TAITU-PATU-MARU(taitu=be hindered,be intermitted,slow;patu=strike,pound,kill;maru=shelter,retinue,sheltered)、「逃げ場が・(破壊されて)なくなって・追い詰められている(切羽詰まる)」(「タイツ」のAI音がE音に変化して「テツ」から「セッ」となった)

の転訛と解します。

1437せど(背戸)

 裏門。裏口。勝手口。家の後方。家の背面。家の後ろにある庭や広場。

 この「せど」は、

  「タイ・ト」、TAI-TO(tai=the other side;to=drag,open or shut a door or window)、「(正面でなく)裏口の・戸(背戸)」(「タイ」のAI音がE音に変化して「テ」から「セ」と、「ト」が「ド」となった)

の転訛と解します。

1438せどうか(旋頭歌)

 和歌の歌体の一つ。五・七・七・五・七・七の六句からなる。本来は民謡の場で五・七・七の片歌が二人によって唱和されていたものが、後に一人によつて歌われるようになつたもの。

 この「せどうか」は、

  「タイトア・カハ」、TAITOA-KAHA(taitoa=brave,manly;kaha=rope,noose,line of ancestry)、「(男らしく)元気に・(縄のように)入れ替わり立ち替わりして歌われる歌(旋頭歌)」(「タイトア」のAI音がE音に変化し、語尾のA音が脱落して「テト」から「セドウ」と、「カハ」のH音が脱落して「カ」となった)

の転訛と解します。

1439せとぎわ(瀬戸際)

 瀬戸と海との境。小さな海峡と海との境目の部分。成功か失敗かの分かれ目。安危・生命など、運命が決まる重大な分岐点。

 この「せとぎわ」は、

  「テ・ト・キワ」、TE-TO-KIWA(te=the,crack;to=drag,open or shut a door or a window;kiwa=shut the eyes,dark,sad,anxious)、「例の・心配でたまらない・(潮の干満で潮流の方向が変わるように)成功か失敗かなどの運命の分かれ目(の場所、そのときまたはその状況。瀬戸際)」(「テ」が「セ」と、「キワ」が「ギワ」となった)

の転訛と解します。

1440ぜに(銭)

 金、銀、銅などの金属でつくられた貨幣。江戸時代、銅、鉄でつくられた貨幣。金(大判、小判)、銀(丁銀、豆板など)に対する語。貨幣の俗称。かね。金銭。

 この「ぜに」は、

  「テ・ヌイ」、TE-NUI(te,tete=exert oneself;nui=large,great,many)、「大きな・力を発揮するもの(銭)」(「テ」が「ゼ」と、「ヌイ」が「ニ」となった)

の転訛と解します。

1441ぜひ(是非)

 是と非。道理があることと道理がないこと。よいことと悪いこと。善悪。正邪。是と非を判断すること。物事の善悪を判断すること。批評すること。事情がどうあろうとも、あることを実現しょう、実現したいという強い意志や要望を表す語。是が非でも。きっと。相手に軽くまたは儀礼的に行為を求めるさまを表す語。なにとぞ。どうぞ。ある条件の下では、必ずそういう結果になると断定する意を表す語。きまって。かならず。

 この「ぜひ」は、

  「テ・エヒア」、TE-EHIA(te=the;ehia=e(to denote future action or condition,to give emphasis)-hia(desire,wish))、「例の・かならずこうして欲しいまたはかならずこうあって欲しい(という願望。是非)」(「テ」のE音と「エヒア」の語頭のE音が連結し、語尾のA音が脱落して「テヒ」から「ゼヒ」となった)

の転訛と解します。

1442せむし

 背骨が後方に盛り上がり、弓状に湾曲する病気をいった語。また、その病気にかかった人。

 この「せむし」は、

  「タイ・ム・チ」、TAI-MU-TI(tai=the other side;mu=insects;ti=squeak,tingle)、「(体の正面の反対側)背に・巣くった虫が・(悩ます)引き起こす病気(またはその病人。せむし)」(「タイ」のAI音がE音に変化して「テ」から「セ」と、「チ」が「シ」となった)

の転訛と解します。

1443せめて

 (他に迫り他を責める意から)強いて。無理に。たって。(自分に迫り自分を責める意から)切実に。しきりに。熱心に。非常にひどく。たまらなく。甚だしく。無理にがまんすれば。強いて言えば。最小限これだけは実現して欲しい、または欲しかった。すくなくとも。

 この「せめて」は、

  「テテ・マイタイ」、TETE-MAITAI(tete=lie,be in a position(whakatete=molest,annoy,quarrel,disagreement,perverse,obstinate);maitai=good,beautiful,agreeable)、「満足できるほど・しつこく(要求する。せめて)」または「同意するところまで・しつこく(要求する。せめて)」(「テテ」の反覆語尾が脱落して「テ」から「セ」と、「マイタイ」のAI音がE音に変化して「メテ」となった)

の転訛と解します。

1444せめる(攻める)

 追いかける。追い詰める。襲いかかる。攻撃する。ぴったりと身につける。ぎゅっとしめる。

 この「せめる」は、

  「テテ・マイ・ル」、TETE-MAI-RU(tete=lie,be in a position(whakatete=molest,annoy,quarrel,disagreement,perverse,obstinate);mai=to indicate direction or motion towards;ru=shake,agitate,scatter)、「奮って・人に対して・悩ませ襲う(攻める)」(「テテ」の反覆語尾が脱落して「テ」から「セ」と、「マイ」のAI音がE音に変化して「メ」となった)

の転訛と解します。

1445せりふ(台詞)

 役者が劇中で言う言葉。常日頃からの言いぐさ。決まり文句。儀礼的な慣用句。言葉。会話。苦情。文句を言うこと。

 この「せりふ」は、

  「テ・リ・フア」、TE-RI-HUA(te=the;ri=bond,bind,(Hawaii)li=lace as of shoes,to lace or tie;hua=call by name,think(whakahua=pronounce,recite))、「例の・(編み上げられた)緊密に構成された・(朗々と述べられるべき)言葉(台詞)」(「テ」が「セ」と、「フア」の語尾のA音が脱落して「フ」となった)

の転訛と解します。

1446せわ(世話)

 @世間の人がする話。世間の慣用の言葉。現実的、日常的、または庶民的なこと。通俗。世話物の略。

 A面倒を見ること。手数をかけて苦労すること。人のために尽力すること。また、それによるやっかい。手数。間に立って斡旋すること。手数がかかって苦労なさま。やっかいなさま。面倒なさま。

 この「せわ」は、

  @「テ・ワ」、TE-WA(te=the;wa=definite space or area,indefinite or unenclosed country)、「例の・世間一般のもろもろのこと(世話)」(「テ」が「セ」となった)

  A「タエワ」、TAEWA(=taewha,taiawa,taiwa,taiwha=foreigner,catarrh,cold,potato)、「(外国人や、急病の人や、(急に襲う)寒さや、(重要な食料である)馬鈴薯栽培(で急激な気象変化に対応する)などの)面倒をみること(世話)」(「タエワ」のAE音がE音に変化して「テワ」から「セワ」となった)

の転訛と解します。

1447せわしい(忙しい)

 速度や調子などが速く、つぎからつぎへと間断なく続いている。ゆったりしていない。せわしない。しなければならないことなどが多く重なったりして暇がない。忙しい。とげとげしく厳しい。小さなことにこだわり、ゆとりがない。経済的に切迫している。苦しい。せかれることがあって落ち着きがない。気ぜわしい。

 この「せわしい」は、

  「タエワ・チヒ」、TAEWA-TIHI(taewa=taewha,taiawa,taiwa,taiwha=foreigner,catarrh,cold,potato;tihi=summit,top,lie in a heap)、「(外国人や、急病の人や、(急に襲う)寒さや、(重要な食料である)馬鈴薯栽培(で急激な気象変化に対応する)などの)面倒をみることに・最高に(忙しい)(忙しい)」(「タエワ」のAE音がE音に変化して「テワ」から「セワ」となった)

の転訛と解します。

1448せんかた(詮方)

 なすべき方法。しかた。手段。せんすべ。

 この「せんかた」は、

  「テナカ・タ」、TENAKA-TA(tenaka=tena=encourage,urge forward,inviting co-operation;ta=dash,beat,lay)、「物事を・推し進めること(詮方)」(「テナカ」が「センカ」となった)

の転訛と解します。

1449ぜんざい(善哉)

 褒め称える語。よきかな。よいかな。よいと感じるさま。喜び祝うさま。

 この「ぜんざい」は、

  「テナ・タイ」、TENA-TAI(tena=that,this,there,here;tai,taitai=dash,knock,perform certain ceremonies to remove tapu etc.)、「これは・(穢れを祓うなどのよいことがあった)めでたいことだ(善哉)」(「テナ」が「ゼン」と、「タイ」が「ザイ」となった)

の転訛と解します。

1450ぜんざい(善哉)

 関東では甘味の濃い小豆のつぶし餡か漉し餡に焼いた餅をいれたものを、関西ではつぶし餡の汁のおおい関東でいう田舎汁粉をいう。

 この「ぜんざい」は、

  「テネ・タイ」、TENE-TAI(tene=be importunate;tai,taitai=dash,knock,perform certain ceremonies to remove tapu etc.)、「(甘味が)しつこい・(穢れを祓うなどの行事の後に振る舞われる)めでたい食品(善哉)」(「テネ」が「ゼン」と、「タイ」が「ザイ」となった)

の転訛と解します。

1451せんしゅうらく(千秋楽)

 雅楽の曲名。謡曲「高砂」の終わりにある文句で、天下太平を祝う言葉。能楽、芝居、相撲などの興行期間の最後の日。らく。転じて、物事がいよいよ最後になること。結構な楽しみ、千歳楽。

 この「せんしゅうらく」は、

  「テナ・チウ・ラク」、TENA-TIU-RAKU(tena=that,this,there,here(tanei=this,here,now);tiu=soar,wander,swing,restless;raku=scratch,scrape)、「只今(または本日)をもって・(能楽、芝居、相撲などに携わる人々が舞台や土俵などで休みなしに動き回ってきた)興行は・(きれいに片付ける)終了した(千秋楽)」(「テナ」が「セン」と、「チウ」が「シュウ」となった)

の転訛と解します。

1452せんすべなし(詮すべ無し)

 なすべきてだてがない。どうしようもない。しかたがない。

 この「せんすべなし」は、

  「テナ・ツペ・ナチ」、TENA-TUPE-NATI(tena=encourage,urge forward,inviting co-operation;tupe=a charm for depriving one's enemies of power and arresting their weapons,affect by the tupe charm,deprive of power;nati=pinch or contract,restrain,stifle)、「(呪文を唱えて敵を)無力化することを・敢えて行なうことが・できなくなっている(詮すべ無し)」(「テナ」が「セン」と、「ツペ」が「スベ」と、「ナチ」が「ナシ」となった)

の転訛と解します。

1453せんべい(煎餅)

 菓子の一つ。古くは唐菓子として伝わった、水でこねた小麦粉を油で炒ったものをいうが、現在では干菓子の中の焼種のものをいう。米粉を主原料として醤油で調味した塩煎餅系のものと、小麦粉、砂糖、卵などを混ぜて型に流して焼いた瓦煎餅系のものに大別できる。煎餅蒲団の略。

 この「せんべい」は、

  「テ(ン)ガ・ペヒ」、TENGA-PEHI(tenga=Adam's apple,goitre,distended,strained;pehi=press,oppress,repress)、「(米粉を押す)こねて延ばして・(焼いて)膨らませたもの(煎餅)」(「テ(ン)ガ」のNG音がN音に変化して「テナ」から「セン」と、「ペヒ」のH音が脱落して「ベイ」となった)

の転訛と解します。

1454せんま

 江戸時代、大坂の天神祭などで、巫女に扮装して、鼓を打ち滑稽な仕草をした者。人、特に子供を罵っていう語。

 この「せんま」は、

  「テネ・マ」、TENE-MA(tene=invented,impromptu;ma=a particle used after names of persons,to indicate the inclusion of others whom it is not neccessary to specify)、「即興で芸をする・者(せんま)」(「テネ」が「セン」となった)

  「テ(ン)ガテ(ン)ガ・マ」、TENGATENGA-MA(tengatenga=tingle,be benumbed;ma=a particle used after names of persons,to indicate the inclusion of others whom it is not neccessary to specify)、「(鈍感な)薄のろ・め(せんま)」(「テ(ン)ガテ(ン)ガ」の反覆語尾が脱落し、NG音がN音に変化して「テナ」から「セン」となった)

の転訛と解します。

1455ぜんまい(発条)

 弾力性のある薄い帯状または線状の金属を渦巻形に巻いたもの。渦巻きバネ。この「ぜんまい(発条)」については、雑楽篇(その二)の557わらび(蕨)の項の「ぜんまい(薇)」を参照してください。

 この「ぜんまい」は、

  「テナ・マウイ」、TENA-MAUI(tena=encourage,urge forward;maui=left hand,a convolute scroll pattern)、「(上に)力強く伸びる・渦を巻いている(金属。ぜんまい)」(「テナ」が「ゼン」と、「マウイ」のUI音がI音に変化して「マイ」となった)

の転訛と解します。

1456せんりゅう(川柳)

 柄井川柳(からいせんりゅう)。川柳の点者。(川柳点の略)江戸中期に発生し、十七音を基準として機知的な表現によって、人事、風俗、世相などを鋭くとらえた短詩型文学。

 この「せんりゅう」は、

  「テナ・リウア」、TENA-RIUA(tena=encourage,urge forward,inviting co-operation;riua=borne,borne away,gone)、「(川柳文学の)創作活動を・推進する者(川柳)」(「テナ」が「セン」と、「リウア」の語尾のA音が脱落して「リュウ」となった)

の転訛と解します。

「ソ」

1457そうざい(総菜)・おばんざい(お番菜)

 家庭で調理した日常のおかず。飯の菜。京都では「おばんざい(お番菜)」という。

 この「そうざい」、「おばんざい」は、

  「トウ・タイ」、TOU-TAI(tou=tonu=denoting continuance,still,continually,quite,just,simply,only;tai=the other side)、「簡素な・(正面でない。裏の)日常の(菜。総菜)」(「トウ」が「ソウ」と、「タイ」が「ザイ」となった)

  「オ・パ(ン)グ・タイ」、O-PANGU-TAI(o=the...of;pangu=surfeited,wearied of,tired of;tai=the other side)、「例の・飽きてしまう・(正面でない。裏の)日常の(菜。お番菜)」(「パ(ン)グ」のNG音がN音に変化して「パヌ」から「バン」と、「タイ」が「ザイ」となった)

の転訛と解します。

1458そうし(草紙)

 (「册子(さくし)」の変化した語との説がある)(巻物、巻子本に対して)紙をとじ合わせて本の体裁にしたもの。書や歌や文章を書いてあってもなくても、冊子の形態をなしたものをいう。物語、日記、歌書など和文で記された書物の総称。書き散らした原稿、草案、また、心覚え。御伽草紙や草双紙などの絵本や挿絵入りの小説本の総称。また、広く小説を、戯作文学的な意をこめて呼ぶ時にも用いる。字などを習うための帳面。手習い草紙。

 この「そうし」は、

  「トウ・チ」、TOU-TI(tou=tonu=denoting continuance,still,continually,quite,just,simply,only;ti=throw,cast)、「簡素な(冊子本に仕立てて)・(世に広める)出版した(本。草紙)」(「トウ」が「ソウ」と、「チ」が「シ」となった)

  または「トウ・チア」、TOU-TIA(tou=tonu=denoting continuance,still,continually,quite,just,simply,only;tia=stick in,adorn by sticking in feathers)、「簡素な(冊子本に仕立てた)・(注ェで飾るように絵を入れて)装飾した(絵入り本。草紙)」(「トウ」が「ソウ」と、「チア」の語尾のA音が脱落して「シ」となった)

の転訛と解します。

1459そうず(添水)

 一方を削って水が溜まるようにした竹筒に、懸樋などで水を落とし、溜まった水の重みで支点の片側が下がり、水が流れ出すとはねかえって他の端が落ち、そこに設けた石や金属を打って音を出すようにした装置。谷や川など水辺に仕掛けて、田畑を荒らす鳥獣を追ったり、あるいは庭に設けてその音を楽しんだりする。ししおどし。

 この「そうず」は、

  「タウ・ツ」、TAU-TU(tau=turn away,look in another direction(tatau=turn about,vacillate);tu=fight with,energetic)、「(懸命に)休むことなく・はねかえって音を出すもの(添水)」(「タウ」のAU音がOU音に変化して「トウ」から「ソウ」と、「ツ」が「ズ」となった)

の転訛と解します。

1460ぞうすい(雑炊)・おじや

 米飯に野菜、魚貝、肉などを入れ、塩、醤油、味噌などで調味してさらりと煮たもの。おじや。

 この「ぞうすい」は、

  「トウ・ツ・ウイ」、TOU-TU-UI(tou=dip into a liquid,wet,kindle,set on fire;tu=fight with,energetic;ui=disentangle,disengage,unravel,relax or loosen a noose)、「懸命に・(十分な水で)煮込んで・くたくたにしたもの(雑炊)」(「トウ」が「ゾウ」と、「ツ」のU音と「ウイ」の語頭のU音が連結して「ツイ」から「スイ」となった)

  「オ・チ・イア」、O-TI-IA(o=the...of;ti=throw,cast,overcome;ia=indeed)、「例の・十分に・(くたくたになった)煮込んだもの(おじや)」(「チ」が「ジ」と、「イア」が「ヤ」となった)

の転訛と解します。

1461そうぞうしい(騒々しい)

 声や音が雑然としたり、高かったりして耳にうるさく感じられる。やかましい。騒がしい。また、世の中が不安で落ち着かない。

 この「そうぞうしい」は、

  「タウタウ・チヒ」、TAUTAU-TIHI(tautau=howl(tau=sing);tihi=summit,top,lie in a heap)、「(最高に)たいへん・うるさい(騒々しい)」(「タウタウ」のAU音がOU音に変化して「トウトウ」から「ソウゾウ」と、「チヒ」のH音が脱落して「シイ」となった)

の転訛と解します。

1462そうすかん(総すかん)

 全員から嫌われること。

 この「そすかん」は、

  「トウ・ツ・カ(ン)ガ」、TOU-TU-KANGA(tou=tonu=denoting continuance,still,continually,quite,just,simply,only;tu=fight with,be ignited,energetic;kanga=curse,abuse,excrate)、「(全く)すべて(の人)が・(火がついたように)激昂して・(ある人を呪(のろ)った)罵った(総すかん)」(「トウ」が「ソウ」と、「ツ」が「ス」と、「カ(ン)ガ」のNG音がN音に変化して「カナ」から「カン」となった)

の転訛と解します。

1463ぞうに(雑煮)

 餅を主にして野菜、魚貝類、肉類などを取り合わせた汁もの。関西では味噌仕立て、関東ではすまし仕立てが多く、しゅとして正月の祝いに用いる。この「ぞうに(雑煮)」の「ぞう(雑)」については、国語篇(その十)の501雑歌(ざふか)の項を参照してください。

 この「ぞうに」は、

  「タフア・ニヒ」、TAHUA-NIHI(tahua=heap,especially of food at a feast,fund;nihi,ninihi=steep,move stealthly,timidity)、「(祭りなどハレの)儀式・宴会のご馳走として出される・(ゆっくりと)煮た料理(雑煮)」(「タフア」のH音と語尾のA音が脱落して「タウ」から「ゾウ」と、「ニヒ」のH音が脱落して「ニ」となった)(「ニヒ」は、「煮る」、「ニヒ・イ・ル」、NIHI-I-RU(nihi,ninihi=steep,move stealthly,timidity;i=ferment,be stirred;ru=shake,agitate,scatter)、「ゆっくりと・(発酵する)泡を出すように・(奮起して)熱する(煮る)」(「ニヒ」のH音が脱落して「ニ」となり、そのI音と「イ」のI音が連結して「ニ」となった) の後略)

の転訛と解します。

1464そうめん(素麺)

 (「索麺(さくめん)」の変化した語とする説がある)小麦粉に水と塩を加えてこねた種に、植物油を塗って細く引き延ばして日に干したごく細いうどん状の麺。この「そうめん(素麺)」については、雑楽篇(その二)の543むぎ(麦)の項の「そうめん(素麺)」を参照してください。

 この「そうめん」は、

  「タウ・メ(ン)ゲ」、TAU-MENGE(tau=string of a garment etc.;menge=shrivelled,withered,wrinkled)、「糸のように細い・(しなびる)乾燥した(素麺)」(「タウ」のAU音がOU音に変化して「ソウ」と、「メ(ン)ゲ」のNG音がN音に変化して「メネ」から「メン」となった)

の転訛と解します。

1465ぞうやく(雑役)

 雑用。また、雑用をする者。種々の労役。また、特に、中世、荘園領主・在地領主が支配下の農民を使役したいろいろな夫役をもいう。こまごました仕事。雑役馬の略。

 この「ぞうやく」は、

  「トウ・イア・ク」、TOU-IA-KU(tou=tonu=denoting continuance,still,continually,quite,just,simply,only;ia=that,the said,each,every,indeed;ku=silent,wearied,exhausted)、「全く・ちょつとした・疲れる仕事(雑役)」(「トウ」が「ゾウ」と、「イア」が「ヤ」となった)

の転訛と解します。

1466そうら(束羅)

 (「ささら(束子)」の変化した語とする説がある。)たわし。藁などを束ねて物を洗うのに用いる。

 この「そうら」は、

  「タウ・ラ」、TAU-RARA(tau=string a garment,etc.,bundle(tatau=tie with a cord);ra,rara=twig,small branch)、「(小枝)藁などを・束ねたもの(束羅)」(「タウ」のAU音がOU音に変化して「ソウ」となった)

の転訛と解します。

 

1467ぞうり(草履)

 履き物の一種。藁、藺草、竹皮などで足に当たる部分を編み、鼻緒をすげたもの。藁で編んだ沓。この「ぞうり(ぞうり)」については、雑楽篇(その二)の1053ぞうり(草履)の項を参照してください。

 この「ぞうり」は、

  「トウ・リ」、TOU-RI(tou=anus,lower end of anything,tail of a bird;ri=screen,protect,bind)、「(体の下端)足を・保護するもの(履き物。草履)」(「トウ」が「ゾウ」となった)

  または「タウ・リ」、TAU-RI(tau=come to rest,settle down,be suitable;ri=screen,protect,bind)、「(足を)保護して・(履き心地が)快適なもの(履き物。草履)」(「タウ」のAU音がOU音に変化して「トウ」から「ゾウ」となった)

の転訛と解します。

1468そうろう(候)

 (「さぶらう」が変化した語とする説がある。歴史的かなづかいでは「さうらふ」)伺候する相手や、存在する場所の主を敬って用いる謙譲語。貴人や敬うべき人のおそばに控える。伺候する。対話や消息文において、話し方を鄭重にし、聞き手を敬ったり、儀礼的に自己の品位を保ったりするのに用いる丁寧語。あります。ございます。

 この「そうろう」は、

  「タウ・ラウ」、TAU-RAU(tau=come to rest,float,settle down,be suitable;rau=project,extend(whakarau=take captive,confuse,captive))、「(奴隷のように)従順に・控えている(候)」(「タウ」のAU音がOU音に変化して「トウ」から「ソウ」と、「ラウ」のAU音がO音に変化して「ロウ」となった)

の転訛と解します。

1469そおず(案山子)

 (「そおど(案山子)」の変化した語とする説がある)田畑を荒らす鳥獣を追うために田畑に置かれる人形。「622かかし(案山子)」ともいう。この「そおず(案山子)」・「そほど(案山子)」については、国語篇(その十三)の026三輪(みわ)の項の「そほづ(僧都・案山子)」を参照してください。

 この「そおず」は、

  「ト・ハウ・ツ」、TO-HAU-TU(to=the...of;hau=famous,be heard;tu=stand,settle)、「例の・有名な・(田の中に)立つている(案山子)」(「ト」が「ソ」と、「ハウ」のH音が脱落し、AU音がO音に変化して「オ」となつた)

の転訛と解します。

1470そがい(背向)

 後ろの方。背後。また、後ろ向きであること。

 この「そがい」は、

  「タウ・(ン)ガイ」、TAU-NGAI(tau=turn away,look in another direction;ngai=tribe or clan)、「後ろ向きの・部類であること(背向)」(「タウ」のAU音がO音に変化して「ト」から「ソ」と、「(ン)ガイ」のNG音がG音に変化して「ガイ」となった)

の転訛と解します。

1471そくい(続飯)

 飯粒をへらで押しつぶし、練って作った糊。また、その糊付け。

 この「そくい」は、

  「タウ・クヒ」、TAU-KUHI(tau=come to rest,settle down,be suitable,be possible,be able;kuhi=insert,introduce oneself into,join a company)、「(物を)接着する・ことができるもの(続飯)」(「タウ」のAU音がO音に変化して「ト」から「ソ」と、「クヒ」のH音が脱落して「クイ」となった)

の転訛と解します。

1472そくさい(息災)

 仏や神の力などで衆生の災いをなくすこと。達者であること。健康であること。また、そのさま。無事。

 この「そくさい」は、

  「タウ・ク・タイ」、TAU-KU-TAI(tau=come to rest,float,settle down,be suitable;ku=silent;tai,tatai=dash,knock,perform certain ceremonies to remove tapu etc.)、「(お祓いをして)穢れを清めて・無事に・何事ないこと(息災)」(「タウ」のAU音がO音に変化して「ト」から「ソ」と、「タイ」が「サイ」となった)

の転訛と解します。

1473そげ(削げ)

 竹や木のそげた小片。材木などの表面にあるささくれ。また、その一端が皮膚にささったもの。とげ。

 この「そげ」は、

  「タウ・(ン)ガイ」、TAU-NGAI(tau=come to rest,float,settle down,be suitable;ngai=tribe or clan)、「(竹や木の表面にある)遊離した・類のもの(削げ)」(「タウ」のAU音がO音に変化して「ト」から「ソ」と、「(ン)ガイ」のNG音がG音に、AI音がE音に変化して「ゲ」となった)

の転訛と解します。

1474そこ(底)

 海、池、川などくぼんだ地形の下の部分。また、器物などの下を構成する部分。その内側の面や下側の表面をいう。川や海などの下の方。水などが湛えられているとき、また、物がつみかさねられているとき、その下の方の部分。天に対して地をいう。また、地表より下の奥深い地中。極まるところ。限度。限界。奥深いところ。など。

 この「そこ」は、

  「トコ」、TOKO(pole,push or force to a distance)、「(遠くに押しやられた)下の場所。底(底)」(「トコ」が「ソコ」となった)

の転訛と解します。

1475そご(齟齬)

 食い違うこと。物事がうまくかみ合わないこと。食い違い。ゆきちがい。

 この「そご」は、

  「タウ・(ン)ガウ」、TAU-NGAU(tau=turn away,look in another direction(tatau=turn about,vacillate);ngau=bite,hurt,act upon,attack)、「噛むのが・ぐらぐら揺れる(うまくかみ合わない。齟齬)」(「タウ」のAU音がO音に変化して「ト」から「ソ」と、「(ン)ガウ」のNG音がG音に、AU音がO音に変化して「ゴ」となった)

の転訛と解します。

1476そこなう(損なう)

 完全であるものを不完全にする。心身を傷つける。傷める。病気になる。物事を悪い状態にさせる。ものをこわす。人の気分などをこわす。

 この「そこなう」は、

  「トコ・(ン)ガウ」、TOKO-NGAU(toko=begin to move,spring up in the mind,pole,push or force to a distance;ngau=bite,hurt,act upon,attack)、「(物や心身を)傷つけて・(完全または健康な状態から)ほど遠い不完全または不健康な状態へ押しやる(損なう)」(「トコ」が「ソコ」と、「(ン)ガウ」のNG音がN音に変化して「ナウ」となった)

の転訛と解します。

1477そこはかと

 (「そこ」は代名詞、「はか」は目当ての意とする説がある)@場所や輪郭などを、どことはっきり指示・識別するさまを表す。どこがどうとはっきり。格別に。確かに。(下に打ち消しの表現が来ることが多い。)A原因、理由、けじめなどがはっきりしない状態を表す語。なんとなく。あれやこれやと。

 この「そこはかと」は、

  「トコ・ハカ・タウ」、TOKO-HAKA-TAU(toko=prefix used in place of the particle or with adjectives or with interrogatives etc.;haka=expressing surprise,complaint,admiration,etc.;tau=come to rest,float,settle down,be suitable,befit)、@「(場所や性質など)どれが・どうと・的確である(そこはかと)」またはA「(場所や性質など)どれが・どうと・(浮動している)定まらない(そこはかと)」(「トコ」が「ソコ」と、「タウ」のAU音がO音に変化して「ト」となった)

の転訛と解します。

1478そこばく(若干)

 @数量などを明らかにしないで、おおよそのところをいう語。いくらか。いくつか。A数量の多いさま、程度の甚だしいさまを言う語。多く。たくさん。はなはだ。

 この「そこばく」は、

  @「トコ・パク」、TOKO-PAKU(toko=prefix used in place of the particle or with adjectives or with interrogatives etc.;paku=dried,small,particle,anything small)、「(数量など)どれが・(小さい)あまり多くない程度(若干)」(「トコ」が「ソコ」と、「パク」が「バク」となった)

  A「トコ・パク」、TOKO-PAKU(toko=prefix used in place of the particle or with adjectives or with interrogatives etc.;paku=make a sudden sound or report,resound,extend)、「(数量など)どれが・(大きい)結構多い程度(若干)」(「トコ」が「ソコ」と、「パク」が「バク」となった)

の転訛と解します。

1479そそぐ(注ぐ)

 音を立てて水が流れる。雨、雪などが間断なく降る。液体がさかんに物の上に降りかかる。特に、涙がさかんに落ちる。水が流れ込む。視線などがあるものに集中する。

 この「そそぐ」は、

  「トト・(ン)グ」、TOTO-NGU(toto=ooze,trickle,gush forth,spring up,rise up;ngu=silent,greedy,moan)、「(水などが)静かにまたは間断なく・落ちる(注ぐ)」(「トト」が「ソソ」と、「(ン)グ」のNG音がG音に変化して「グ」となった)

の転訛と解します。

1480そそぐ(濯ぐ)

 水をかけて汚れを洗い流す。洗い清める。また、汚れた心や世の中などを清める。身に蒙った汚名や受けた恥を手柄や仕返しによつて消し、名誉を回復する。

 この「そそぐ」は、

  「タウ・タウ・(ン)グ」、TAU-TAU-NGU(tau=come to rest,float,lie steeping in water,be suitable;ngu=silent,greedy,moan)、「静かに・(洗浄のために)水に浸け・水に浸ける(濯ぐ)」(「タウ」のAU音がO音に変化して「ト」から「ソ」と、「(ン)グ」のNG音がG音に変化して「グ」となった)

の転訛と解します。

1481そそっかしい

 態度、行動に落ち着きがない。軽率で不注意である。かるはずみである。あわて者である。

 この「そそっかしい」は、

  「トト・ツカハ・チヒ」、TOTO-TUKAHA-TIHI(toto=drag a number of objects,blood,bleed;tukaha=strenuous,vigorous,headstrong,hasty;tihi=summit,top,lie in a heap)、「生まれつきが・せっかちなことは・最高である(そそっかしい)」(「トト」が「ソソ」と、「ツカハ」のH音が脱落して「ッカ」と、「チヒ」のH音が脱落して「シイ」となった)

の転訛と解します。

1482そそのかす(唆す)

 その気になるように仕向ける。そうするように勧める。相手に強く催促する。せきたてる。煽てて悪い方へ誘う。教唆する。誘惑する。

 この「そそのかす」は、

  「トトノ・カハ・ツ」、TOTONO-KAHA-TU(tono,totono=bid,command,send,demand;kaha=strong,strength,persistency;tu=fight with,energetic)、「懸命に・強く・要求する(唆す)」(「トトノ」が「ソソノ」と、「カハ」のH音が脱落して「カ」と、「ツ」が「ス」となった)

の転訛と解します。

1483そだつ(育つ)

 生き物が時間とともに成長する。大きくなる。能力などが伸びる。養う。育てる。

 この「そだつ」は、

  「ト・タツ」、TO-TATU(to=drag,haul;tatu=strike one foot against tne other,stumble)、「(後ろから)急き立てられるように・大きくなる(育つ)」(「ト」が「ソ」と、「タツ」が「ダツ」となった)

の転訛と解します。

1483-2そっくり

 全体をそのままの状態にしておくさまを表す語。余すところのないさまを表す語。極めてよく似ているさまを表す語。

 この「そっくり」は、

  「ト・ツク・ウリ」、TO-TUKU-URI(to=the...of,the one of;tuku=let,send,set to,settle down,descend;uri=offspring,descendant,relative,race)、「実に・(血族の)血が・受け継がれているような(そっくり)」(「ト」が「ソ」と、「ツク」の語尾のU音と「ウリ」の語頭のU音が連結して「ツクリ」から「ックリ」となった)

の転訛と解します。

1484そっけない(素っ気ない)

 言葉や態度に、相手に対する好意や思い遣りがない。愛想がない。冷淡だ。すげない。また、ものの様子や雰囲気などに飾り気やあたたかみがない。

 この「そっけない」は、

  「タウ・ツケ・ナイ」、TAU-TUKE-NAI(tau=come to rest,float,settle down,be suitable;tuke=elbow,bend,used to indicate any short distance,nudge,jerk;nai=nei,neinei=stretched forward,reaching out,wagging)、「(相手と)一定の距離を・常に保ち・続ける(素っ気ない)」(「タウ」」のAU音がO音に変化して「ト」から「ソ」と、「ツケ」が「ッケ」となった)

の転訛と解します。

1485ぞっこん

 @心の底。しんそこ。しんそこから。心から。全く。

 A惚れて全く心を奪われるさま。

 この「ぞっこん」は、

  @「トコ・ナ」、TOKO-NA(toko=pole,push or force to a distance;na=used after words and clauses to indicate position near or connection with the person addressed)、「(心の)正に・底(ぞっこん)」(「トコ」が「ゾッコ」と、「ナ」が「ン」となった)

  A「ト・ツ・コ(ン)ガ」、TO-TU-KONGA(to=drag,haul;tu=stand,settle,fight with,energetic;konga=live coal)、「燃える石炭のように・(心が)燃える状態に・引きずり込まれる(ぞっこん)」(「ト」が「ゾ」と、「ツ」が「ッ」と、「コ(ン)ガ」のNG音がN音に変化して「コナ」から「コン」となった)

の転訛と解します。

1486そっちのけ(そっち退け)

 かまわずに退けておくこと。相手にしないこと。また、そのさま。そこのけ。

 この「そっちのけ」は、

  「ト・ツ・チ・ノケ」、TO-TU-TI-NOKE(to=the...of,drag,haul;tu=stand,settle;ti=throw,cast;noke=small)、「例の・小さな(物や事は)・放って・置く(そっち退け)」(「ト」が「ゾ」と、「ツ」が「ッ」となった)

の転訛と解します。

1487そっぱ(反歯)

 前歯が前の方に突きだしたもの。また、そのような歯をした人。出っ歯。

 この「そっぱ」は、

  「ト・ツパ」、TO-TUPA(to=the...of,drag,haul;tupa=start,turn sharply aside,escape)、「例の・(前歯が)外へ逃げだそうとしている歯(反歯)」(「ト」が「ゾ」と、「ツパ」が「ッパ」となった)

の転訛と解します。

1488そっぽをむく(そっぽを向く)

 正面から向き合わず、横の方を向く。まともに取り合わないで無視する。

 この「そっぽをむく」は、

  「ト・ツポ・ワウ・ムク」、TO-TUPO-WAU-MUKU(to=the...of,drag,haul;tupo=ill omen,dank,gruesome;wau=I,me;muku=wipe,rub,smear)、「例の・(夢などの)悪い予感を・(私は)・消し去ろうとした(横を向いた。そっぽを向く)」(「ト」が「ソ」と、「ツポ」が「ッポ」と、「ワウ」のAU音がO音に変化して「ヲ」となった)

の転訛と解します。

1489そで(袖)

 衣服の身頃の左右にあって、腕を覆う部分。鎧の付属具。棉上に付けて手楯の代用とするもの。牛車の車の箱の出入り口の左右の張り出し部分。文書や書巻の初めの端の余白部分。建造物、工作物の両脇の部分。翼。鯨の子宮の両脇に張り出した部分。舞台の両脇の部分。袖看板の略。机の両脇または片湧きの引き出しや物入れなどを作り付けた部分。など。

 この「そで」は、

  「ト・テ」、TO-TE(to=the...of,drag,haul;te=crack)、「例の・(本体から)引き離されたもの(袖)」(「ト」が「ソ」と、「テ」が「デ」となった)

の転訛と解します。

1490そでにする(袖にする)

 その物事を重んじないで、粗略にする。また、人を冷淡にあしらい、邪魔者扱いにする。のけものにする。袖に入れる。携帯する。

 この「そでにする」は、

  「ト・テ・ニヒ・ツル」、TO-TE-NIHI-TURU(to=the...of,drag,haul;te=crack;nihi,ninihi=steep,move stealthly,steal away;turu=pole(tuturu=fixed,permanent))、「例の・(あるものから)引き離して・そっと・(引き離した)その状態のままにする(袖にする)」(「ト」が「ソ」と、「テ」が「デ」と、「ニヒ」のH音が脱落して「ニ」と、「ツル」が「スル」となった)

の転訛と解します。

1491そとも(背面。外面)

 山の日が当たる方向から見て背後に当たる方向。山の北側。また、北の方角。背中の方向。後ろの方向。また、家の裏手。転じて、物事の外側。

 この「そとも」は、

  「ト・タウ・マウ」、TO-TAU-MAU(to=the...of,drag,haul;tau=turn away,look in another direction(tatau=turn about,vacillate);mau=fixed,continuing,remaining in position)、「例の・振り返った・(先の)定まった方向(背面。外面)」(「ト」が「ソ」と、「タウ」のAU音がO音に変化して「ト」と、「マウ」のAU音がO音に変化して「モ」となった)

の転訛と解します。

1492そば(傍)

 @近くの所。かたわら。A側面。また、端。本筋からそれたところ。また、正面から外れているさま。脇。脇道。B(・・するそばから)その動作の直後からの意を表す。

 この「そば」は、

  @、B「ト・パ(ン)ガ」、TO-PANGA(to=drag,haul;panga=throw,lay,place,aim a blow at)、@「(引き寄せられた)近くの・(位置する)場所(傍)」またはB「例の・(打撃を加えた)動作をした時に・(引き寄せられた)近い時(傍)」(「ト」が「ソ」と、「パ(ン)ガ」の名詞形語尾のNGA音が脱落して「バ」となった)

  A「タウ・パ(ン)ガ」、TAU-PANGA(tau=turn away,look in another direction(tatau=turn about,vacillate);panga=throw,lay,place,aim a blow at)、「例の・振り返ったまたはよそ見をした・(先の)定まった方向(背面。側面)(傍)」(「タウ」のAU音がO音に変化して「ト」から「ソ」と、「パ(ン)ガ」の名詞形語尾のNGA音が脱落して「バ」となった)

の転訛と解します。

1493そびら(背)

 (「そ(背)・びら(平)」の意とする説がある)背中。背。(「そびら」は「そびらに」が正しいとする説があります。この「そびらに(曽毘良迩)」については、古典篇(その二)の(2) スサノオのアマテラス訪問の項を参照してください。)

 この「そびら」は、

  「タウ・ピララ」、TAU-PIRARA(tau=turn away,look in another direction(tatau=turn about,vacillate);pirara=separated,scattered,divided,wide apart,branching)、「振り返った(ところに)・広がっているもの(背)」(「タウ」のAU音がO音に変化して「ト」から「ソ」と、「ピララ」の反覆語尾が脱落して「ビラ」となった)

の転訛と解します。

1494そみんしょうらい(蘇民将来)

 『備後風土記逸文』にみえる説話の主人公の名。貧乏な兄と富裕な弟があり、みすぼらしい風体のしたので、神が宿を求めたところ、弟の巨旦将来は拒否し、兄の蘇民将来は歓待したので、その報いとして兄の子孫は疫病を免れ、弟の子孫は疫病で亡ぼされたという。疫病除けの護符。この「そみんしょうらい(蘇民将来)」については、雑楽篇(その一)の124蘇民将来(そみんしょうらい)の項を参照してください。

 この「そみんしょうらい」は、

  「タウ・ミネ・チオ・ラヒ」、TAU-MINE-TIO-RAHI(tau=loop;mine=be assembled;tio=cry;rahi=great,abundant,loud)、「(茅の)輪を・(身に)付けている(人で)・(災難に遭遇して)大声で・泣き叫ぶ(部族の一員)(蘇民将来)」(「タウ」のAU音がO音に変化して「ト」から「ソ」と、「ミネ」が「ミン」と、「チオ」が「ショウ」と、「ラヒ」のH音が脱落して「ライ」となった)

の転訛と解します。

1495そむく(背く)

 後ろ向きになる。背中を向ける。人や物から離れる。別れる。俗世間を離れる。出家する。人の思いや意見・命令などに反する。また、期待に反する結果となる。味方であった者、主人などに敵対する。手むかいする。謀反する。

 この「そむく」は、

  「タウ・ムク」、TAU-MUKU(tau=turn away,look in another direction(tatau=turn about,vacillate);muku=wipe,rub,smear)、「(振り返る)逆の方向に進んで・(これまでの関係を拭い去る)清算する(背く)」(「タウ」のAU音がO音に変化して「ト」から「ソ」となった)

の転訛と解します。

1496そめる(初める)

 その行為が始まる意、また、始められた行為や動作の結果が長く残る意を表す。

 この「そめる」は、

  「タウ・マイ・ル」、TAU-MAI-RU(tau=attack;mai=to indicate direction or motion towards;ru=shake,agitate,scatter)、「奮って・(ある行為に)挑戦しようと・する(初める)」(「タウ」のAU音がO音に変化して「ト」から「ソ」と、「マイ」のAI音がE音に変化して「メ」となった)

の転訛と解します。

1497そもそも

 改めて事柄を説き起こすことを示す。一体。さて。はじめ。おこり。

 この「そもそも」は、

  「トモ・トモ」、TOMO-TOMO(tomo=pass in,enter,begin,assault)、「(物事の)始めの・始め(そもそも)」(「トモ」が「ソモ」となった)

の転訛と解します。

1498そやさかいに

 それゆえに。それだから。

 この「そやさかいに」は、

  「タウ・イア・タカイ・ニヒ」、TAU-IA-TAKAI-NIHI(tau=come to rest,float,settle down,be suitable;ia=indeed;takai=wrap up,wrap round,covering;nihi=move stealthly)、「実に・(うまく事が運んでいる)そうだ・(だから事柄を一括して)そのままにして・(静かに動く)先に進もう(そやさかいに)」(「タウ」のAU音がO音に変化して「ト」から「ソ」と、「イア」が「ヤ」と、「タカイ」が「サカイ」と、「ニヒ」のH音が脱落して「ニ」となった)

の転訛と解します。

1499そり(橇)

 人力で、または牛馬や犬に曳かせて、雪や氷の上を滑らせて、人を載せたり、荷物などを運搬したりするのに用いる道具。

 この「そり」は、

  「ト・オリ」、TO-ORI(to=drag,haul;ori=cause to wave to and fro,sway,move,quiver)、「(牛馬、犬などが)曳いて・滑るもの(橇)」(「ト」が「ソ」となり、そのO音と「オリ」の語頭のO音が連結して「ソリ」となった)

の転訛と解します。

1500そりがあわぬ(反りが合わぬ)

 (刀の反りが鞘に合わない意から)気心が合わない。

 この「そりがあわぬ」は、

  「タウ・オリ・(ン)ガ・アウア・ヌイ」、TAU-ORI-NGA-AUA-NUI(tau=come to rest,float,settle down,be suitable;ori=cause to wave to and fro,sway,move,quiver;nga=satisfied;aua=far advanced,far on(in point of distance),at a great height or depth;nui=large,great,many)、「(刀の)適当な・曲り(の程度が)・(鞘が)満足するには・大変・(距離が)遠すぎる(反りが合わぬ)」(「タウ」のAU音がO音に変化して「ト」から「ソ」となり、そのO音と「オリ」の語頭のO音が連結して「ソリ」と、「(ン)ガ」のNG音がG音に変化して「ガ」と、「アウア」が「アワ」と、「ヌイ」の語尾のI音が脱落して「ヌ」となった)

の転訛と解します。

1501それがし(某)

 他称代名詞。名の不明な人・事物を漠然と指し示す。また、故意に名を伏せたり、名を明示する必要のない場合にも用いる。自称代名詞。他称から自称に転用されたもの。専ら男性が謙遜して用い、後には主として武士が威厳をもって用いた。

 この「それがし」は、

  「トレ・(ン)ガチ」、TORE-NGATI(tore=cut,split(whakatoretore=make grimace);ngati=tribal prefix)、「難しい顔をした・(部族)類の人(某)」(「トレ」が「ソレ」と、「(ン)ガチ」のNG音がG音に変化して「ガシ」となった)

の転訛と解します。

1502そろえる(揃える)

 形や程度、状態などを等しくする。同一にする。一致させる。一列に連ねる。整然と並べる。前もって用意する。調える。備える。集めて、ある形や組を形成させる。「切る」ことをいう女房詞。

 この「そろえる」は、

  「トロ・ヘル」、TORO-HERU(toro=stretch forth,thrust or impel endways,arrange the food in a hangi,smooth timber with an adze;heru=comb for the hair,dress with a comb)、「(髪に)櫛をいれるように・(物を)整然とさせる(揃える)」(「トロ」が「ソロ」と、「ヘル」のH音が脱落して「エル」となった)

の転訛と解します。

1503そろばん(算盤)

 計算器具の一つ。横長の枠の中に珠を並べ、一定の決まりに従って動かして計算するもの。

 この「そろばん」は、

  「トロ・パネ」、TORO-PANE(toro=stretch forth,thrust or impel endways,arrange the food in a hangi,smooth timber with an adze;pane=head,keep heads in line in making an attack)、「初めに(頭=珠を)一列に整列させ・整然と動かすもの(算盤)」(「トロ」が「ソロ」と、「パネ」が「バン」となった)

の転訛と解します。

1504そんじょそこら(近所そこら)

 本来「そこら」を漠然と指し示した言い方であるが、現代ではむしろ強調した言い方として用いられる。

 この「そんじょそこら」は、

  「トヌ・チオフ・タウ・コラ」、TONU-TIOHU-TAU-KORA(tonu=still,continually,quite,just,simply;tiohu=stoop;tau=come to rest,settle dowm;kora=yonder)、「実に・しゃがみこんでいるような・彼方に・存在する場所(近所そこら)」(「トヌ」が「ソン」と、「チオフ」のH音が脱落して「ジョ」と、「タウ」のAU音がO音に変化して「ト」から「ソ」となった)

の転訛と解します。

トップページ 国語篇一覧 この篇のトップ 語 句 索 引

<修正経緯>

1 平成25年4月1日

 683-2かっての項を追加し、911くるまの解釈を一部修正しました。

2 平成26年4月1日

 818-2ぎゃふん・ぐうのねの項、842-2ぐうの項および1411-2ずんどう(寸胴)の項を追加し、1412ずんべらぼうの解釈を修正しました。

3 平成26年8月1日

 684がってんおよび1087こむらがえりの解釈を修正し、1483-2そっくりの項を追加しました。

4 平成26年12月1日

 1284-2しゃみせん(三味線)・じゃびせん(蛇皮線)・さんしん(三線)の項を追加しました。

5 平成27年4月1日

 681-2がちぎょうじ(月行事)の項を追加しました。

6 平成27年8月5日

 1119さいわいの解釈を修正しました。

7 平成28年9月1日

 1427せこいの解釈を修正しました。

国語篇(その二十一)終り


U R L:  http://www.iris.dti.ne.jp/~muken/
タイトル:  夢間草廬(むけんのこや)
       ポリネシア語で解く日本の地名・日本の古典・日本語の語源
作  者:  井上政行(夢間)
Eメール:  muken@iris.dti.ne.jp
ご 注 意:  本ホームページの内容を論文等に引用される場合は、出典を明記して ください。
(記載例  出典:ポリネシア語で解く日本の地名・日本の古典・日本語の語源
http://www.iris.dti.ne.jp/~muken/timei05.htm,date of access:05/08/01 など)
 このHPの内容をそのまま、または編集してファイル、電子出版または出版物として
許可なく販売することを禁じます。
Copyright(c)2014 Masayuki Inoue All right reserved