国語篇(その二十二)


国語篇(その二十二)

<慣用語概観(その三)>「タ」から「ノ」まで

(平成25-7-15書込み。27-4-1修正)(テキスト約150頁)


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[おことわり]

 この篇は、現代もなお一般的に使われる慣用語(慣用句を含む)の主要なものの中に残る語源不詳または意味不詳の縄文語の意味を解明しようとするシリーズの一です。

 

 この部類に属する書籍または辞典は、枚挙にいとまがありませんが、ここでは『語源大辞典』堀井令以知編、東京堂出版、1988年に拠り、アート、アーメンなどの外来語、阿吽、阿闍梨などの仏教用語、漢語由来であることが明らかな語、他の篇で対象となっている動植物名、枕詞およびいわゆる女房言葉は除外し、『日本語「語源」辞典』学研編集部編、学研、2004年に所収の語で重要なものを追加して解釈することとしました。

 この慣用語概観では、「ア」から「オ」までを「その一」、「カ」から「ソ」までを「その二」、「タ」から「ノ」までを「その三」、「ハ」から「ワ」までを「その四」に分割して掲載します。また、すでに他の国語篇や地名篇、古典篇、雑楽篇の各篇において取り上げたものは、その旨注記しました。

 縄文語のポリネシア語による解釈は、他の諸篇と同様、原則として、その起源となったと推定される原ポリネシア語から変化したマオリ語(すでに失われた語彙でハワイ語に残るものについてはハワイ語とし、その旨を注記しました)とその意味を英語および日本語によって表記しました。主として使用したマオリ語・ハワイ語の辞典は次の通りです。
 (1)H.W.Williams M.A,Dictionary of the Maori Language,seventh edition,1997,GP Publications.
 (2)P.M.Ryan,The Reed Dictionary of Modern Maori,1995,TVNZ.
 (3)Mary Kawena Pukui and Samuel H.Elbert,Hawaiian Dictionary, revised and enlarged edition,1986,University of Hawaii Press.  

<慣用語概観(その三)>

「タ」から「ノ」まで

目 次 

「タ」

1505だいく(大工)・おほきたくみ(大匠)1506たいこもち(太鼓持ち)1507だいじょうぶ(大丈夫)1508だいじん(大尽)1509たいせつ(大切)1510だいそれた(大それた)

1511だいだらぼっち(大太法師)1512だいどころ(台所)1513だいばた(台畑)1514だいはちぐるま(大八車)・べかぐるま(板車)1515たいふう(台風)1516たいまい(大枚)1517たいまつ(松明)1518たいら(平ら)1519たおやめ(手弱女)1520たがいに(互いに)

1521たがえる(違える)1522たかがしれる(高が知れる)1523たかびしゃ(高飛車)1524たがやす(耕す)1525たき(滝)1526たきぎ(薪)1527たくあん(沢庵)1528たぐい(類)1529たくさん(沢山)1530たくらた

1531たけ(丈)1532たけなわ(酣)1533たこ(凧)・いか(凧)1534たこつる(蛸釣る)1535だし(出汁)・だし(口実)・だし(出し風)・だし(山車)1536たしか(確か)1537たじろぐ1538たすき(襷)1539たずき(方便。活計)1540たすける(助ける)

1541たずさえる(携える)1542たそがれ(黄昏)1543だだ(駄々)1544ただいま(只今)1545たたかう(戦う)1546たたき(叩き)1547たたずむ(佇む)1548たたみ(畳)1549ただよう(漂う)1550たたり(祟り)

1551ただれる(爛れる)1552たち(太刀)1553だちかん(駄目)1554たちどころに(立ち所に)1555たちまち(忽ち)1556だちん(駄賃)1557たつ(立つ)1558たづくり(田作)1559たって(達て)1560だって

1561たづな(手綱)1562たっぺ(氷。霜柱)1563たつまき(竜巻)1564たて(楯)1565たて(館)・たち(館) 1566だて(伊達)1567たてまつる(奉る)1568たとうがみ(畳紙)1569たとえ(例え)1570たどたどしい(辿々しい)

1571たどん(炭団)1572たなうら(掌)1573たなおろし(棚卸し)1574たなごころ(掌)1575たなばた(七夕)1576たなびく(棚引く)1577たに(谷)1578たのしい(楽しい)1579たのむ(頼む)1580たば(束)

1581たばこ(煙草)1582たび(旅)1583たび(足袋)1584たび(度)1585たびたび(度々)1586たぶさ(髻)1587たぶん(多分)1588たべる(食べる)1589たまき(環)1590たまぐし(玉串)

1591たまげる(魂消る)1592たましい(魂)1593だます(欺す)1594たまずさ(玉梓。玉章)1595たまたま1596たまほこ(玉鉾)1597たみ(民)1598たむけ(手向け)1599たむろ(屯)1600だめ(駄目)

1601ためらう(躊躇う)1602たもと(袂)1603たらい(盥)1604たらいまわし(盥回し)1605だらしない1606だらにすけ(陀羅尼助)1607たらちね(垂乳根)1608たらふく(鱈腹)1609たるひ(垂氷。氷柱)1610だるま(達磨)

1611たるみ(垂水。滝)1612たれる(垂れる)1613だれる1614たわけ1615たわし(束子)1616たわやめ(手弱女)1617たん(痰)1618たんか(啖呵)1619だんご(団子)1620だんじり(山車)

1621たんす(箪笥)1622たんぜん(丹前)1623だんだん1624たんと1625だんどり(段取り)1626だんな(旦那)1627だんない 1628たんのう(堪能)1629だんぶくろ(段袋)1630だんべい

1631たんぼ(田圃)1632たんま1633だんまつま(断末魔)

「チ」

1634ち(血)1635ちかう(誓う)1636ちから(力)1637ちぎる(契る)1638ちくしょう(畜生)・こんちくしょう(こん畜生)1639ちくでん(逐電)1640ちくわ(竹輪)

1641ちそう(馳走)1642ちち(父)・かぞ(父)・てて(父)1643ちち(乳)1644ちちくる(乳繰る)1645ちちり(松毬)・まつかさ(松毬)・まつぼっくり(松毬)1646ちちんぷいぷい1647ちっとも1648ちなみに(因みに)1649ちのり(千入。千箭)1650ちび

1651ちまき(粽)1652ちまた(巷)1653ちゃかす(茶化す)1654ちゃきちゃき1656ちゃばん(茶番)1657ちゃぶだい(卓袱台)1658ちゃり(茶利)1658ちゃりんこ(子供の掏摸。自転車)1659ちゃるめら(南蛮笛)1660ちゃわん(茶碗)

1661ちゃん(父)1662ちゃんこなべ(ちゃんこ鍋)1663ちゃんちゃらおかしい1664ちゃんぽん1665ちゅうちゅうたこかいな1666ちゆうもん(注文)1667ちょうけし(帳消し)1668ちょうし(調子)1669ちょうじゃ(長者)1670ちょうず(手水)

1671ちょうだい(頂戴)1672ちょうちちょうちあわわ1673ちょうちん(提灯)1674ちょうど(丁度) 1675ちょうな(手斧)1676ちょうはん(丁半)1677ちょうもく(鳥目) 1678ちよがみ(千代紙)1679ちょきぶね(猪牙船)1680ちょこ(猪口)

1681ちょこざい(猪口才)1682ちょちちょち1683ちょぼ(点)1684ちょんぼ(失敗)1685ちり(塵)1686ちりめん(縮緬)1687ちん(狆)1688ちんけ1689ちんじ(珍事。椿事)1690ちんぴら

1691ちんぷんかんぷん(珍文漢文)

「ツ」

1692つい1693ついじ(築地)1694ついたち(朔日)1695ついで(次で。序で)1696ついに(遂に)1697ついばむ(啄む)1698ついり(梅雨入り)1699つえ(杖)1700つか(塚)

1701つかう(使う)1702つがう(番う)1703つかさ(司)1704つかぬこと(つかぬ事)1705つかのま(束の間)1706つかまつる(仕る)1707つかれる(疲れる)1708つき(月)・つく(上代東国方言「月」)1709つき(杯)1710つきなみ(月並み)

1711つきよみ(月夜見、月読み)1712つくえ(机)1713つくだ(佃)1714つくづく1715つくね(捏)1716つぐのう(償う)1717つくばう(蹲う)1718つくろう(繕う)1719つけ(勘定書)1720つけつけ

1721つけめ(付け目)1722つけやきば(付け焼き刃)1723つごう(都合)1724つごもり(晦日)1725つじ(辻)1726つじうら(辻占)1727つじつま(辻褄)1728つたう(伝う)1729つつうらうら(津津浦浦)1730つつがない(恙ない)

1731つっけんどん(突っ慳貪)1732つつしむ(慎む)1733つつましい(慎ましい)1734つつみ(包み。堤)1734-2つづみ(鼓)1735つつむ(包む)1736つつもたせ(美人局)1737つづら(葛籠)1738つづらおり(葛折り)1739つづる(綴る)1740つて(伝)

1741つと(苞)1742つどう(集う)1743つとめる(勤める)1744つな(綱)1745つなぐ(繋ぐ)1746つなみ(津波)1747つば(6唾)1748つば(鍔)1749つばさ(翼)1750つばぜりあい(鍔迫り合い)

1751つぶさ(具)1752つぶて(飛礫)1753つぶやく(呟く)1754つぶれる(潰れる)1755つぼ(坪)1756つぼ(壺)1757つぼね(局)1758つぼみ(蕾)1759つまずく(躓く)1760つまど(妻戸)

1761つまはじき(爪弾き)1762つまびらか(詳らか)1763つまむ(抓む)1764つまらない(詰まらない)1765つまり(詰まり)1766つみ(罪)1767つみれ(摘入れ)1768つむ(積む)1769つむ(紡錘)1770つむじ(旋毛)

1771つむり(頭)1772つめ(爪)1773つめたい(冷たい)1774つもり(積り)1775つや(艶)1775-2つや(通夜)1776つゆ(梅雨)1777つゆ(露)1778つゆはらい(露払い)1779つらなる(連なる)1780つらぬく(貫く)

1781つらら(氷柱)1782つり(釣り)1783つりがき(釣書)1784つるべ(釣瓶)1785つれづれ(徒然)1786つれない1787つわり(つはり。悪阻)1788つんざく(劈く)

「テ」

1789でい(出居)1790ていたらく(為体)

1791ていねい(丁寧)1792でかい(大きい)1793てかけ(妾)1794でかした1795てがみ(手紙)1796でかんしょぶし(デカンショ節)1797てきや(的屋)1798てぐすね(手ぐすね)1799てくだ(手管)・てれん(手練)1800でくのぼう(木偶の坊)・でくるぼう(木偶の坊)

1801てこずる(手こずる)1802てこな(手児名)1803でこぼこ(凸凹)1804てし(手師)1805でし(弟子)1806てしお(手塩)1807てずから(手ずから)1808てすり(手摺)1809てだ(太陽)1810てだい(手代)

1811でたらめ(出鱈目)1812てだれ(手練れ)1813てっか(鉄火)1814てつだう(手伝う)1815でっち(丁稚)1815-2てっちり(河豚ちり)1816てっぺん(天辺)1817てづま(手妻)1818てておや(父親)1819てぬぐい(手拭い)1820でば(出刃)

1821てまえみそ(手前味噌)1822てら(寺)1823てらう(衒う)1824てりやき(照り焼き)1825でんがく(田楽)1826てんから・はなから1827てんぐ(天狗)1828てんご1829てんじく(天竺)1830てんでに

1831てんてこまい(天手古舞い)1832てんでんばらばら1833でんち(殿中)1834てんとうさま(天道様)1835てんぷら(天麩羅)1836てんもく(天目)1837てんやわんや

「ト」

1838とい(樋)1839といや(問屋)1840とう(薹)

1841どうぐ(道具)1842とうげ(峠)1843どうけ(道化)1844とうざいとうざい(東西東西)1845とうさん(嬢さん)・とうさん(父様)1846とうじ(杜氏)1847どうし(同志。同士)1848とうしろう(藤四郎)1849とうてい(到底) 1850とうとう(到頭)

1851どうどうめぐり(堂々巡り)1852とうどり(頭取)1853とうに(疾うに)1854とうふ(豆腐)・ごじる(呉汁)・にがり(苦汁)1855どうぶるい(胴震い)1856とうへんぼく(唐変木)1857どうまごえ(胴間声)1858どうも1859どうらく(道楽)1860とうりょう(頭領。棟梁)

1861どうれ1862とかく(兎角)1863とがめる(咎める)1864とき(時)1865とき(斎)1866とき(鬨)1867とぎ(伽)1868ときじく(非時)1869ときめく(時めく)1870ときわぎ(常磐木)

1871とぐら(鳥座)1872とくり(徳利)1873とぐろ(蜷局)1874とげ(刺)1875とこ(床)1876とこしえ(永久)1877とこや(床屋)1878ところてん(心太)1879とさか(鶏冠)1880どさくさ

1881とざす(閉ざす)1882どさまわり(ドサ回り)1883とし(年。歳)1884とじ(刀自)1885どじ1886としだま(年玉)1887としま(年増)1888としみ(落忌)1888-2としより(年寄)1889どす(短刀)1890どす

1891どす1892とそ(屠蘇)1893どだい(土台)1894とたん(途端)1895とたん(トタン)1896どたんば(土壇場)1897とちめんぼう(栃麺棒)1898とつおいつ1899とつぐ(嫁ぐ)1900どっこい(どっこいしょ)

1901どっこいどっこい1902とっさ(咄嗟)1903どっち(何方)1904とって(取って。取っ手)0905とっとのめ(鳥の目)・かいぐり1906とっぴょうし(突拍子)1907とてつもない(途轍もない)1908とても1909どてら(褞袍)1910どどいつ(都々逸)

1911とどこおる(滞る)1912とどのつまり(トドの詰まり)1913とどめ(止め)1914とどろく(轟く)1915となり(隣)1916どなる(怒鳴る)1917とにかくに(兎に角に)1918とねり(舎人)1919どの(殿)1920とのい(宿直)

1921とばっちり(迸り)1922とばり(帳)1923とびきり(飛び切り)1924とびしょく(鳶職)1925とびら(扉)1926どぶ(溝)1927どぶろく(濁酒)1928とぼける(惚ける)1929とぼしい(乏しい)1930とぼそ(枢)

1931とまどい(戸惑い)1932とみに(頓に)1933とも(友)1934とも(艫)・とも(鞆)1935ともえ(巴)1936どよめき(響動)1937とりい(鳥居)1938とりこ(虜)1939とりで(砦)1940とりのこ(鳥の子)

1941とりもち(鳥もち)1942とりもの(採物)1943どれ(何)1944とろ(トロ)1945とろび(トロ火)1946どろぼう(泥棒)1947とろろ(薯蕷)1948どろん1949どんたく1950とんちき

1951どんちゃんさわぎ(ドンチャン騒ぎ)1952とんちんかん(頓珍漢)1953とんでもない1954どんでんがえし(ドンデン返し)1955とんど1956どんぶり(丼)1957どんより

「ナ」

1958ない(地震)・ないふる(地震)1959ないがしろ(蔑ろ)1960ないしょう(内証)

1961ないまぜ(綯い交ぜ)1962なおざり(等閑)1963なおす(直す)1964なおらい(直会)1965なか(中)1966ながめ(眺め)1967なかんずく(就中)1968なぎ(凪)1969なぎさ(渚)1970なぎなた(長刀。薙刀)

1971なきべそ(泣きべそ)1972なく(泣く)1973なげく(嘆く)1974なけなし1975なこうど(仲人)1976なごし(夏越)1977なごやか(和やか)1978なごり(名残。余波)1979なさけ(情け)1980なじむ(馴染む)

1981なじょう(何じょう)・なんじょう(何じょう)1982なじる(詰る)1983なぞ(謎)1984なた(鉈)1985なだ(灘)1986なだい(名代)1987なだめる(宥める)1988なだれ(雪崩)1989なつ(夏)1990なつかしい(懐かしい)

1991なっとう(納豆)1992など(何。等)1993ななこ(七子)1994ななさん(母様)1995なにがし(某)1996なびく(靡く)1997なぶる(嬲る)1998なべ(鍋)1999なべて(並べて)2000なまいき(生意気)

2001なまぐさい(生臭い)2002なまけもの(怠け者)2003なまじい(なま強い)2004なまじっか2005なます(膾)2006なまはげ(生剥)2007なまぶし(生節)2008なまめかしい(艶めかしい)2009なまめく(艶めく)2010なまり(生。鉛)

2011なまり(訛り)2012なみする(無みする)2013なみだ(涙)2014なめる(嘗める)2015なや(納屋)2016なやむ(悩む)2017ならい2018ならう(習う)2019ならずもの(破落戸)2020ならびに(並びに)

2021なりわい(生業)2022なる(鳴る)2023なる(生る。成る)2024なるほど(成る程)2025なれずし(熟れ鮨)2026なれる(馴れる)2027なわしろ(苗代)2028なわて(縄手)2029なわばり(縄張り)2030なん(何)

2031なんじ(汝)2032なんど(納戸)2033なんの(何の)・なんのかんの(何の彼の)2034なんぼ(何程)

「ニ」

2035にいなめ(新嘗)2036にえ(贄)2037におう(匂う)2038にがて(苦手)2039にがる(苦る)2040にかわ(膠)

2041にきび(面胞)2042にく(肉)2043にこごり(煮凝り)2044にし(西)2045にじ(虹)2046にしき(錦)2047にしめ(煮染め)2048にせ(偽)2049にっこり2050にっちもさっちも(二進も三進も)

2051になう(担う)2052にのあし(二の足)2053にのくがつげぬ(二の句が継げぬ)2054にのまい(二の舞)2055にべない2056にやける(若気る)2057にょうご(女御)2058にょうぼう(女房)2059にわ(庭)2060にわたずみ(潦)

「ヌ」

2061ぬう(縫う)2062ぬか(糠)2063ぬかずく(額ずく)2064ぬかよろこび(糠喜び)2065ぬけがけ(抜け駆け)2066ぬさ(幣)2067ぬし(主)2068ぬし(塗師)2069ぬすびと(盗人)2070ぬの(布)

2071ぬれぎぬ(濡れ衣)2072ぬれてであわ(濡れ手で粟)

「ネ」

2073ね(根)2074ねがう(願う)2075ねぎ(禰宜)2076ねぎらう(労う)2077ねぐら(塒)2078ねこそぎ(根刮ぎ)2079ねこばば(猫糞)2080ねこもしゃくしも(猫も杓子も)

2081ねじ(螺子)2082ねたむ(妬む)2083ねっから(根っから)2084ねぶた2085ねほりはほり(根掘り葉掘り)2086ねま(寝間)2087ねまる(座る)2088ねまわし(根回し)2089ねや(閨)2090ねる(寝る)

2091ねる(練る)2092ねんぐ(年貢)2093ねんごろ(懇ろ)2094ねんねこ

「ノ」

2095の(野)2096のき(軒)2097のく(退く)2098のこぎり(鋸)2099のこる(残る)2100のさばる

2101のし(熨斗)2102のずち(野槌)2103のぞく(覗く)2104のぞく(除く)2105のぞむ(望む)2106のたまう(宣う)2107のっけ2108のっぴき(退引)2109のど(喉)2110のどか(長閑)

2111ののさま(神仏)2112ののしる(罵る)2113のぶとい(野太い)2114のべつまくなし(延べつ幕なし)2115のべる(述べる)2116のほほん 2117のぼり(幟)2118のみ(〜のみ)2119のみ(蚤。呑。鑿)2120のらいぬ(野良犬)

2121のり(法)2122のり(糊)2123のり(海苔)2124のりと(祝詞)2125のれん(暖簾)2126のろ(祝女)2127のろう(呪う)2128のろし(狼煙)2129のろま(鈍間)2130のわき(野分)

2131のんき(呑気)2132のんだくれ(飲んだくれ)2133のんべんだらり()

<修正経緯>

<慣用語概観(その三)>「タ」から「ノ」まで
 

「タ」

1505だいく(大工)・おほきたくみ(大匠)

 令制下での下級官人の一。木工寮・修理職・太宰府・造宮司・造寺司などで土木、建築、造船などに従事する技術官人。おほきたくみ。おおたくみ。大匠。平安時代から室町時代、国衙や大社寺に所属し、家屋・船舶・細工物などを建造・製作する技術者集団の長。戦国時代以降、木造家屋を建てたり修理したりする職人。木工。この「おほきたくみ」については、地名篇(その十七)の岐阜県の飛騨国の項の「たくみ(工)」を参照してください。

 この「だいく」、「おほきたくみ」は、

  「タ・イクイク」、TA-IKUIKU(ta=the...of,dash,beat,lay;ikuiku=hikuhiku=eaves of a house)、「例の・破風の突端に居(て建築の指揮をす)る人(大工)」(「タ」が「ダ」と、「イクイク」の反覆語尾が脱落して「イク」となった)

  「オホ・キ・タ・ハク・ミ」、OHO-KI-TA-HAKU-MI(oho=start from fear,wake up,arise of feelings;ki=full,very;ta=the...of;haku=complain of,find fault with;mi=urine,to void urine)、「たいへん・卓越した(技倆を持ち)・(仕事についての)不満を・空(から)にした(非の打ち所がない。完璧な仕事をする)・工人(大工)」(「オホ」のH音が脱落して「オオ」と、「タ」のA音と、「ハク」のH音が脱落した後の語頭のA音が連結して「タク」となった)

の転訛と解します。

1506たいこもち(太鼓持ち)

 太鼓を持つこと。また、その人。遊客に従って、その機嫌を取り、酒興を助ける男。また、それを職業とする男。太鼓衆。男芸者。ほうかん。人に追従してその歓心を買うもの。太鼓叩き。

 この「たいこもち」は、

  「タイ・コ・モチ」、TAI-KO-MOTI(tai=prefix.sometimes with a qualifying force,tide,wave,anger,violent;ko=sing,resound,shout;moti=consumed,scarce,surfeited)、「あまりにも・喋ったり歌ったりが過ぎて・うんざりさせられる男(太鼓持ち)」

の転訛と解します。

1507だいじょうぶ(大丈夫)

 立派な男子。ますらを。極めて丈夫であるさま。ひじょうにしっかりしているさま。ひじょうに気強いさま。危なげのないさま。まちがいないさま。

 この「だいじょうぶ」は、

  「タイ・チオホ・プ」、TAI-TIOHO-PU(tai=prefix.sometimes with a qualifying force,tide,wave,anger,violent;tioho=apprehensive;pu=tribe,heap,skilled person,wise one)、「たいへん・(物事の)本質を良く理解している・賢明でしっかりした男子(大丈夫)」(「タイ」が「ダイ」と、「チオホ」のH音が脱落して「チオオ」から「ジョウ」と、「プ」が「ブ」となった)

の転訛と解します。

1508だいじん(大尽)

 財産を多く持っている人。大金持。資産家。富豪。

 この「だいじん」は、

  「タイ・チニ」、TAI-TINI(tai=prefix.sometimes with a qualifying force,tide,wave,anger,violent;tini=very many,host,myrial)、「たいへん・多くの財産を持つ人(大尽)」(「タイ」が「ダイ」と、「チニ」が「ジン」となった)

の転訛と解します。

1509たいせつ(大切)

 緊急を要すること。危険や災難などが差し迫っていること。捨てておけない状態にあること。また、そのさま。一番必要で、重んずべきものであること。貴重であること。肝要であること。また、そのさま。優れていること。立派であること。また、そのさま。心を配って丁寧に取り扱うこと。大事にすること。かけがえのないものとして心から愛すること。また、そのさま。

 この「たいせつ」は、

  「タイタイ・ツ」、TAITAI-TU(taitai=dash,strike,knock,perform certain ceremonies to remove tapu etc.first ffruits of birds or fish etc.;tu=stand,settle,fight with,energetic)、「初物(または初穂)が・存在する(またはそれを必死に珍重する)こと(大切)」(「タイタイ」の二番目のAI音がE音に変化して「タイセ」となった)

の転訛と解します。

1510だいそれた(大それた)

 (標準や、あるべき状態から大きく外れた意)とんでもない。ふとどきな。度はずれた。

 この「だいそれた」は、

  「タイ・トレトレ・タ」、TAI-TORETORE-TA(tai=prefix.sometimes with a qualifying force,tide,wave,anger,violent;toretore=inflammation of the eyes,rough,bad,unpleasant,carping,fault-finding;ta=dash,beat,lay)、「たいへん・不愉快な・感情にさせられる(大それた)」(「タイ」が「ダイ」と、「トレトレ」の反覆語尾が脱落して「ソレ」となった)

の転訛と解します。

1511だいだらぼっち(大太法師)

 日本各地に流布している伝説上の巨人。怪力を持ち、富士山を一夜でつくりあげたとか、榛名山に腰をかけ、利根川で足を洗ったとか、その足跡が池になったとかさまざまな伝承がある。この「だいだらぼっち」については、地名篇(その十)の東京都区部の世田谷の項の代田(だいた)を参照してください。

 この「だいだらぼっち」は、

  「タヒ・タラ・ポチ」、TAHI-TARA-POTI(tahi=one,single,unique,sweep;tara=point,peak of a mountain,rays of the sun;poti=angle,basket for cooked food,be the subject of gossip or disparagement)、「(これまで)唯一の・(山のように)背が高い(巨大な)・噂話で名高い(巨人)」(「タヒ」のH音が脱落して「タイ」から「ダイ」と、「タラ」が「ダラ」と、「ポチ」が「ボッチ」となった)

の転訛と解します。

1512だいどころ(台所)

 (台盤所の略)家の中の一部で、煮炊きなど食物の調理や配膳に使用する部屋。炊事場。勝手(かって)。くりや。厨房。転じて、金銭のやりくり。家計の切り盛り。

 この「だいどころ」は、

  「タヰト・コロ」、TAWHITO-KORO(tawhito=old,experienced person;koro=desire,intend(whakakoro=endeavour))、「経験を積んだ者(料理人)が・腕を振るう場所(台所)」(「タヰト」のWH音が脱落して「ダイド」となった)

の転訛と解します。

1513だいばた(台畑)

 関東平野で段丘に開いた畑。この地方の段丘帯の、水にやや遠い一望平板な地形をいう。(「ダイ」はアイヌ語の「タイ(高地の谷・沢と対立する部分をさす)」からとする説がある(『綜合日本民俗語彙』)。しかし、知里真志保『地名アイヌ語小辞典』は、「tay タィ、林、森、川のそばの木原」とする。)

 この「だいばた」は、

  「タヒ・パタ」、TAHI-PATA(tahi=one,single,throughout,altogether;pata=prepare food)、「ずっと続く・(食料を生産する)畑(台畑)」(「タヒ」のH音が脱落して「タイ」から「ダイ」と、「パタ」のP音がF音を経てH音に変化して「ハタ」から「バタ」となった)

の転訛と解します。

1514だいはちぐるま(大八車)・べかぐるま(板車)

 江戸前期から主に関東地方で使用された荷物運搬用の大きな二輪車。京都、大坂では板製の車輪をつけた幅の狭い小型の「べか車(板車)」を使用した。この「べかぐるま(板車)の「べか」については、雑楽篇(その二)の1010べかぶね(べか舟)」の項を参照してください。

 この「だいはちぐるま」、「べかぐるま」は、

  「タイ・パチ(ン)ガ・ク・ウル・マ」、TAI-PATINGA-KU-URU-MA(tai=prefix.sometimes with a qualifying force,tide,wave,anger,violent;patinga=flowing of the tide;ku=silent;uru=enter,associate oneself with,arrive(whakauru=join,assist,hurry);ma=go,come)、「たいへん・流れるように動く・(静かに・行き来するのを・助けるもの)車(大八車)」(「タイ」が「ダイ」と、「パチ(ン)ガ)」のP音がF音を経てH音に変化し、名詞形語尾のNGA音が脱落して「ハチ」と、「ク」のU音と「ウル」の語頭のU音が連結して「クル」から「グル」となった)

  「ペカ・ク・ウル・マ」、PEKA-KU-URU-MA(peka=branch of a tree or river etc.,firewood,turn aside(heka=mouldy);ku=silent;uru=enter,associate oneself with,arrive(whakauru=join,assist,hurry);ma=go,come)、「小回りが効く(小型の)・(静かに・行き来するのを・助けるもの)車(べかぐるま)」(「ペカ」が「ベカ」と、「ク」のU音と「ウル」の語頭のU音が連結して「クル」から「グル」となった)

の転訛と解します。

1515たいふう(台風)

 北太平洋西部、北緯5〜20度付近に発生する熱帯低気圧で最大風速毎秒7.2メートル以上に発達したものをいう。特に夏から秋にかけては暴風雨を伴って大陸沿岸・フィリピン・日本などに襲来し、大規模な風水害をもたらすことが少なくない。

 この「たいふう」は、

  「タイ・フフ」、TAI-HUHU(tai=prefix.sometimes with a qualifying force,tide,wave,anger,violent;huhu=strip off an outer covering,deprive off outer covering,cast off a rope etc.)、「荒々しく・(建物の)外壁をも吹き飛ばす風(台風)」(「フフ」のH音が脱落して「フウ」となった)

の転訛と解します。

1516たいまい(大枚)

 形の大きいこと。金額の大きいこと。また、たくさんのお金。裕福なこと。

 この「たいまい」は、

  「タイ・マヒ」、TAI-MAI(tai=prefix.sometimes with a qualifying force,tide,wave,anger,violent;mahi=work,make,be occupied with,procure,abundance)、「たいへん・たくさんな(大枚)」(「マヒ」のH音が脱落し「マイ」となった)

の転訛と解します。

1517たいまつ(松明)

 松の脂が多い部分、または竹や葦などを束ね、火を点じて照明に用いたもの。この「たいまつ(松明)」については、国語篇(その十九)の446タイマツの項を参照してください。

 この「たいまつ」は、

  「タイ・マツ」、TAI-MATU(tai=tide,wave,anger,violence;matu=fat,richness of food)、「(潮流のように)荒々しく燃える・樹脂の多い(木片の束。松明)」

の転訛と解します。

1518たいら(平ら)

 高低・凹凸のないさま。傾斜や起伏のないさま。ひらたいさま。平均であるさま。性格が落ち着いているさま。膝や足などの構えを崩して、楽な座り方をするさま。

 この「たいら」は、

  「タヒ・ラ」、TAHI-RA(tahi=sweep,trim or dress or smooth timber with an axe,a wooden implement for cultivating;ra=there,yonder)、「ずっと先まで・(均されている)平らだ(平ら)」(「タヒ」のH音が脱落して「タイ」となった)

  または「タイ・ラハ」、TAI-RAHA(tai=prefix.sometimes with a qualifying force,tide,wave,anger,violent;raha=open,extended)、「たいへん・(水平に)長々と伸ばしている(平ら)」(「ラハ」のH音が脱落して「ラ」となった)

の転訛と解します。

1519たおやめ(手弱女)

 か弱い女。やさしい女。なよなよと美しい女。たわやめ。うかれめ。あそびめ。遊女。なお、この「たわやめ」については、1616たわやめ(手弱女)の項を参照してください。

 この「たおやめ」は、

  「タオ・イア・マイ」、TAO-IA-MAI(tao,tatao=second person slain in a fight,support,second in a duel,younger brother or sister of a first-born child;ia=indeed;mai,maimai=a dance to welcome guests at a lamentation)、「実に・若い・(踊りを踊る)女性(手弱女)」(「イア」が「ヤ」と、「マイ」のAI音がE音に変化して「メ」となった)

の転訛と解します。

1520たがいに(互いに)

 二人以上あるいは二つ以上のものが、同一の対象に対して同じような事をするさま。また、同じ状態にあるさま。双方とも。それぞれ。たがえに。両者が代わり合ってするさま。かわるがわる。交互に。

 この「たがいに」は、

  「タ(ン)ガ・アイ・ニヒ」、TANGA-AI-NIHI(tanga=circumstance or time or place of dashing or striking etc.,be assembled,row;ai=procreate,beget;nihi=move stealthly,surprise)、「そっとやって来て(相手を)びっくりさせる・ような事が起こる・ことが続けて(または交互に)起こる(互いに)」(「タ(ン)ガ」のNG音がG音に変化して「タガ」となり、その語尾のA音と「アイ」の語頭のA音が連結して「タガイ」と、「ニヒ」のH音が脱落して「ニ」となった)

の転訛と解します。

1521たがえる(違える)

 二つ以上の物がかみあわないようにする。会わないようにやりすごす。よける。避ける。食い違わせる。外す。違える。背いて裏切る。約束や言いつけを破る。正常でない状態にする。方違えをする。

 この「たがえる」は、

  「タ・(ン)ガエ・ル」、TA-NGAE-RU(ta=the...of,dash,beat,lay;ngae=wheeze(ngaengae=fail,of breath);ru=shake,agitate,scatter)、「例の・(失敗)間違いを・しでかす(違える)」(「(ン)ガエ」のNG音がG音に変化して「ガエ」となった)

の転訛と解します。

1522たかがしれる(高が知れる)

 程度や限度がわかる。せいぜい頑張ったところでいきつくところは知れている。極限といってもたいしたことではない。

 この「たかがしれる」は、

  「タ・カ(ン)ガ・チレウレウ」、TA-KANGA-TIREUREU(ta=the...of,dash,beat,lay;kanga=(place where fire has burnt)place of abode,lodging,quarters or encampment,home;tireureu=uneven,out of rank(reu=outer palisade of a pa))、「例の・住んでいる場所は・(評価の)格外の土地だ(高が知れる)」(「カ(ン)ガ」のNG音がG音に変化して「カガ」と、゜「チレウレウ」が「シレル」となった)

の転訛と解します。

1523たかびしゃ(高飛車)

 将棋で浮き飛車のこと。相手に対して高圧的なさま。

 この「たかびしゃ」は、

  「タカ・ピ・チア」、TAKA-PI-TIA(taka=heap,lie in a heap;pi=young of birds,chick;tia=slave,servant,catch and kill vermin)、「高い場所から・(若い)弱い相手を・虫けらをひねりつぶすように(高飛車)」(「ピ」が「ビ」と、「チア」が「シャ」となった)

の転訛と解します。

1524たがやす(耕す)

 作物を植え付けるため、田畑をすき返して土を軟らかにする。

 この「たがやす」は、

  「タ(ン)ガ・イア・ツ」、TANGA-IA-TU(tanga,tangatanga=loose,not tight,easy,comfortable;ia=indeed;tu=fight with,energetic)、「実に・懸命に・(土塊を)細かくばらばらにする(耕す)」(「タ(ン)ガ」のNG音がG音に変化して「タガ」と、「イア」が「ヤ」と、「ツ」が「ス」となった)

の転訛と解します。

1525たき(滝)

 急な斜面を激しい勢いで下つている水の流れ。急流。奔流。懸崖から激しく流れ落ちている水。また、その現象。

 この「たき」は、

  「タ・アキ」、TA-AKI(ta=the...of;aki=dash,beat,abute on)、「例の・水が勢い良く流れ下り、または水を勢い良く放り出しているもの(滝)」(「タ」のA音と「アキ」の語頭のA音が連結して「タキ」となった)

の転訛と解します。

1526たきぎ(薪)

 かまど、炉などに燃料として焚く細い枝や割木。たきもの。まき。薪能の略。この「たきぎ(薪)」については、雑楽篇(その二)の1052すみの項の「たきぎ(薪)」を参照してください。

 この「たきぎ」は、

  「タキキ」、TAKIKI(stripped bare,cropped short)、「(皮をはいだ枝条や千切れた短い枝条など)半端なもの(薪)」(「タキキ」が「タキギ」となった)

の転訛と解します。

1527たくあん(沢庵)

 江戸初期の臨済宗の高僧の名。沢庵漬の略。この「たくあん(沢庵)」については、雑楽篇(その二)の562だいこん(大根)の項の「たくあんづけ(沢庵漬)」を参照してください。

 この「たくあん」は、

  「タク・ワナ」、TAKU-WHANA(taku=slow;whana=recoil,rush,charge,impel)、「ゆっくりと(時間をかけて)・(漬物石で)押す(大根の漬物)」(「ワナ」が「ワン」、「アン」となった)

の転訛と解します。

1528たぐい(類)

 一緒にいる者。仲間。一緒に対(つい)になっている者。配偶。漠然と複数の人々を指す。連中。性質、種類などが同じような物事。同類。同例。

 この「たぐい」は、

  「タ(ン)ガ・ウイ」、TANGA-UI(tanga=be assembled,row,tier,division or company of persons;ui=disentangle,ask,enquire)、「一緒にいて・(どういう関係かと尋ねられる)性質・種類などを同じくするもの(類)」(「タ(ン)ガ」のNG音がG音に変化し、語尾のA音が「ウイ」のUI音に置換して「タグイ」となった)

の転訛と解します。

1529たくさん(沢山)

 数量的に多いこと。また、そのさま。多数。多量。十分なこと。また、十分でそれ以上はいらないさま。必要以上に多すぎること。転じて、大事にしないこと。粗略。ぞんざい。

 この「たくさん」は、

  「タタク・タ(ン)ガ」、TATAKU-TANGA(tataku=utter slowly or deliberately,saying,any deliberate utterance;tanga=be assembled,row,tier,division or company of persons)、「(よくもたくさん)集まったものだと・(しみじみと)言う(沢山)」(「タタク」の反覆語頭が脱落して「タク」と、「タ(ン)ガ」のNG音がN音に変化して「タナ」から「サン」となった)

の転訛と解します。

1530たくらた

 愚かなこと。また、その人。まぬけ。

 この「たくらた」は、

  「タ・アク・ラタ」、TA-AKU-RATA(ta=the...of;aku=delay,take time over anything,scrape out;rata=tame,quiet,familiar)、「例の・反応が遅い・(温和しい)生彩がない(たくらた)」(「タ」のA音と「アク」の語頭のA音が連結して「タク」となった)

の転訛と解します。

1531たけ(丈)

 物の高さ。人の身長。また、物の長さ。人の身長をもとにした長さの単位。特に、和服の肩山から裾までの長さ。馬の蹄から肩までの高さ。あるかぎり。ありったけ。前部。壮大な風格。など。

 この「たけ」は、

  「タ・アケ」、TA-AKE(ta=the...of;ake=indicating continuation in time,intensifying the force,correlative of iho(from below,upwards))、「例の・(下から上まで)物または人の高さ(丈)」(「タ」のA音と「アケ」の語頭のA音が連結して「タケ」となった)

の転訛と解します。

1532たけなわ(酣)

 ある行為・催事・季節などが最も盛んにおこなわれている時。また、それらしくなっている状態。やや盛りを過ぎて、衰えかけているさまにもいう。最中。もなか。まっさかり。

 この「たけなわ」は、

  「タ・アケ・ナハナハ」、TA-AKE-NAHANAHA(ta=the...of;ake=indicating continuation in time,intensifying the force,correlative of iho(from below,upwards);nahanaha=well arranged,in good order)、「例の・物事が盛んに行われている・(正に)その時(酣)」(「タ」のA音と「アケ」の語頭のA音が連結して「タケ」と、「ナハナハ」の反覆語尾が脱落して「ナハ」から「ナワ」となった)

の転訛と解します。

1533たこ(凧)・いか(凧)

 細く削った竹や木を骨組みにして紙や布などを張ったもので、糸を引きながら風を利用して空中に高く揚げるおもちゃ。近世、凧を関東では「たこ」、関西では「いか」といった。この「たこ(凧)」および「いか(凧)」については、国語篇(その十五)の122たこの項を参照してください。

 この「たこ」、「いか」は、

  「タ・カウ」、TA-KAU(ta=the...of,dash,beat,lay;kau=swim,wade)、「例の・(空中を)泳ぐもの(凧)」(「カウ」のAU音がO音に変化して「コ」となった)

  「ヒ・カハ」、HI-KAHA(hi=raise,rise;kaha=rope)、「縄(を引いて)・揚げるもの(凧)」(「ヒ」のH音が脱落して「イ」と、「カハ」のH音が脱落して「カ」となった)

の転訛と解します。

1534たこつる(蛸釣る)

 @制裁を加え、ひどい目に合わせる。叱られたものが湯で蛸をつるしたように赤くなることからいうか。(堀井令以知編『語源大辞典』)監督者其他ノ者ニ叱責ヲ受クルノ意。〔第四類 言語動作〕(隠語大辞典)

 A岩手県沿岸地方の方言で、靴が濡れることをいう。(「アナウンサーの方言ファイル」http://www.nhk.or.jp/kininaru-blog/71895.html)北海道(道北)の方言で、水にハマって靴ごとぬれることをいう。(「ファクトリー工房KI」http://blogs.yahoo.co.jp/spitfire5jp/18972222.html)

 この「たこつる」は、

  「タ・カウ・ツル」、TA-KAU-TURU(ta=the...of;kau=alone,only,swim,wade;turu=kneel)、@「例の・ただただ・膝をついている」から転じて「例の・ただただ・(目上の者の前で膝をついて)叱責をうける(蛸釣る)」またはA「例の・膝まで漬かって・水の中を歩く」から転じて「例の・靴ごと濡れながら・水の中を歩く(蛸釣る)」(「カウ」のAU音がO音に変化して「コ」となった)

の転訛と解します。

1535だし(出汁)・だし(口実)・だし(出し風)・だし(山車)

 @煮出した汁。鰹節、昆布、椎茸などを煮出した汁で、汁物や煮物などに用いる。だしじる。

 A自分の利益や都合のために利用する事や物事。方便。口実。

 B陸から海へ向かって吹き、船出に便利な「出し風」の意とされる。日本海側では東または南風、東海地方では北風を指す。この「だし(出し風)」については、雑楽篇(その一)の218だし(出し風)の項を参照してください。

 C祭礼のとき、人形や花など種々の飾り物をつけて、曳いたり担いだりする屋台。(花などを入れた竹籠の編み残しの部分を大きく垂れ下げて出してあったところからとする説がある)

 この「だし」は、

  @、A「タ・チ」、TA-TI(ta=dash,beat,lay;ti=throw,cast,overcome)、@「煮て・(うま味を)抽出したもの(出汁)」またはA「(何らかの物事や考えを借りて、自分の行為や考えが正当なものであるとの)強い主張を・(相手に)つきつける(口実)」(「タ」が「ダ」と、「チ」が「シ」となった)

  B「タ・アチ」、TA-ATI(ta=dash,beat,lay;ati=descendant,clan)、「(急に)襲いかかってくる・部類の(風)」(「タ」のA音と「アチ」の語頭のA音が連結して「タチ」から「ダシ」となった)

  C「タハ・チヒ」、TAHA-TIHI(taha=side,edge,part,pass on one side,go by;tihi=summit,top,topknot of hair,lie in a heap)、「上部を飾り立てて・巡行するもの(山車)」(「タハ」のH音が脱落して「タ」から「ダ」と、「チヒ」のH音が脱落して「チ」から「シ」となった)

の転訛と解します。

1536たしか(確か)

 真実があってしっかりしているさま。心にすきがなく動揺しないさま。実があって信用できるさま。あぶなげなく安心できるさま。ことの実現に間違いのないさま。まちがいなく正確なさま。

 この「たしか」は、

  「タ・チカ」、TA-TIKA(ta=the...of,lay;tika=straight,just,right,correct)、「真実が・あるさま(確か)」(「チカ」が「シカ」となった)

の転訛と解します。

1537たじろぐ

 ある水準から後退したり、衰えたりする。衰微してだめになる。衰えて傾いたり、よろめいたりする。前から押されたり、みずから動揺したりして、後退したり、よろめいたりする。また、困難や予期しないことにぶつかって困惑する。ひるむ。

 この「たじろぐ」は、

  「タハ・チ・ロク」、TAHA-TI-ROKU(taha=side,spasmodic twitching of the muscles,regarded as an omen good or bad,go by;ti=throw,cast;roku=bend,be weighed down,grow weak,decline of a person dying)、「震えが・来て・衰えたりよろめいたりする(たじろぐ)」(「タハ」のH音が脱落して「タ」と、「チ」が「ジ」と、「ロク」が「ログ」となった)

の転訛と解します。

1538たすき(襷)

 古代、神事奉仕の物忌みのしるしとして、肩にかける清浄な植物繊維の紐。幼児の着物の袖を背にかけて結び合わせる紐。和服の袖をたくしあげて活動しやすくするために、両肩から両脇にへ斜め十文字形になるようにかけて結ぶ紐。紐・線などを斜めに交差させること。また、その模様。

 この「たすき」は、

  「タ・ツキ」、TA-TUKI(ta=the...of,lay;tuki=pound,attack,pestle or pounder for fern root or flax etc.,give the time to paddlers in a canoe,piece attached to the body of a canoe to lengthen it)、「例の・(労働を仕易くする)労働を助けるためのもの(襷)」(「ツキ」が「スキ」となった)

の転訛と解します。

1539たずき(方便。活計)

 手がかり。よるべき手段。方法。様子・状態を知る手段。見当。生活の手段。生計。活計。

 この「たずき」は、

  「タ(ン)ガ・ツキ」、TANGA-TUKI(tanga=circumstance or time or place of dashing or striking etc.;tuki=pound,attack,pestle or pounder for fern root or flax etc.,give the time to paddlers in a canoe,piece attached to the body of a canoe to lengthen it)、「(種々の)労働の状況などを・(接近する)知って対応する(方便)」または「(羊歯の根を搗いて澱粉を採取し、植物繊維を加工する)生活に必須の労働を・行うことによって生計を立てる(活計)」(「タ(ン)ガ」の名詞形語尾のNGA音が脱落して「タ」と、「ツキ」が「ズキ」となった)

の転訛と解します。

1540たすける(助ける)

 上位の者が保護する。庇護する。倒されたり傾いたりしないようにする。支える。傷や病気の手当をするる介抱する。また、苦境などから救い出す。死の危険や、苦しみから救う。従たるたちばで、主たるものを補佐する。協力する。ある物事やその状態についてさらに助長する。促進する。など。

 この「たすける」は、

  「タツ・カイ・ル」、TATU-KAI-RU(tatu=reach the bottom,be at ease,be content,consent,agree;kai=fulfil its proper function,have full play;ru=shake,agitate,scatter)、「奮って・全力を注いでなすべきことを行って・満足する(助ける)」(「タツ」が「タス」と、「カイ」のAI音がE音に変化して「ケ」となった)

の転訛と解します。

1541たずさえる(携える)

 (どこへ行く際にも)身近に持つ。伴って行く。連れだって行く。結び連ねる。互いに関係を持ち合う。

 この「たずさえる」は、

  「タツア・タエ・ル」、TATUA-TAE-RU(tatua=girdle,put on as a girdle;tae=arrive,come,go,reach,extend to,proceed to,;ru=shake,agitate,scatter)、「奮って・(帯のように)身に付けて・行く(携える)」(「タツア」の語尾のA音が脱落して「タツ」から「タズ」と、「タエ」が「サエ」となった)

の転訛と解します。

1542たそがれ(黄昏)

(古くは「たそかれ」「誰(た)そ彼(かれ)」と、人のさまの見分けがたい時の意とする説がある)夕方の薄暗い時。夕暮れ。暮れ方。また、比喩的に用いて、盛りの時期が過ぎて衰えの見えだしたころをもいう。

 この「たそがれ」は、

  「タ・ト(ン)ガ・レイ」、TA-TONGA-REI(ta=the...of;tonga=verbal noun of to(set as the sun,dive);rei=leap,rush,run)、「例の・(太陽が)走るように・沈んで行く時(黄昏)」(「ト(ン)ガ」のNG音がG音に変化して「トガ」と、「レイ」が「レ」となった)

の転訛と解します。

1543だだ(駄々)

 (「じだたら」(地踏鞴)が「じだだ」「じだんだ」となり、さらに変化した語とする説がある)幼児などが親などの親しい人に甘えて、わがままにふるまうおうとすること。むずかったり、拗ねたりして言うことを聞かないこと。

 この「だだ」は、

  「タタ」、TATA(dash down,strike repeatedly,oppose)、「散々に暴れる(駄々)」(「タタ」が「ダダ」となった)

  または「タタハ」、TATAHA(swerve)、「横道にそれる(駄々)」(「タタハ」のH音が脱落して「タタ」から「ダダ」となった)

の転訛と解します。

1544ただいま(只今)

 過去と未来との境になる時。現在。目下。近い過去の時。過ぎ去ったばかりの時や物事をさしていう。たった今。つい今。ごく近い未来の時。距離的に近いさま。すぐそこ。(「ただいま帰りました」の略)出先から帰ったときなどの挨拶。呼ばれたり、頼まれたりしたときなどに、いますぐ実行するという意でいう挨拶。

 この「ただいま」は、

  「タタ・イ・マ」、TATA-I-MA(tata=near of place or time,suddenly;i=past tense;ma=go,come)、「今しがた・帰り(または過ぎ去り)・ました(只今)」(「タタ」が「タダ」となった)

の転訛と解します。

1545たたかう(戦う)

 叩き続ける。乱打する。互いに叩きあう。打ち合って勝ちを争う。互いに兵を出して攻めあう。合戦する。戦争をする。互いに技、力、知恵などをふるって優劣を争う。障害や困難などに立ち向かってこれを乗り越えようとする。

 この「たたかう」は、

  「タタ・カウ」、TATA-KAU(tata=dash down,strike repeatedly,oppose;kau=alone,only)、「ひたすら・(相手に)打撃を加える(戦う)」

の転訛と解します。

1546たたき(叩き)

 @江戸時代の刑罰の一種。在任の肩、背、尻を鞭で打つもの。料理で、魚(鰺などのたたきをいい、鰹などのたたきを除く)・鳥肉を包丁で細かく叩くこと。また、その料理。「たたきの与次郎」のこと。また、その歌。その拍子を取り入れた浄瑠璃のふし。(叩き土の略。三和土)赤土、石灰、砂利などににがりを混ぜ、水で練って突き固めた土間。(叩き大工の略)強盗(隠語)。など。

 A(鰹などのたたき)四枚におろした鰹を串に刺し、藁火または炭火にかけて表面をさっとあぶり、火から下ろして刺身に作ったもの。腰に下げて携帯するもの。印籠など。この「たたき」については、古典篇(その八)の216A大鷦鷯(オホサザキ)尊の項の「たたき」を参照してください。

 この「たたき」は、

  @「タタ・キ」、TATA-KI(tata=dash down,strike repeatedly,oppose;ki=full,very)、「何回も(多数)・叩く(叩き。三和土)」

  A「タタキ」、TATAKI(=taki=take to one side,take out of the way,take food from the fire)、「(頃合いをみて鰹などを)火から下ろして調理するもの(鰹のたたき)」または「(必要な時に)腰から外して使用するもの(印籠など)」

の転訛と解します。

1547たたずむ(佇む)

 その所を離れずにいる。そのあたりにしばらく止まる。そこにじっと立っている。そのあたりを行きつ戻りつする。その辺をうろうろする。徘徊する。身を落ち着ける。生活の基盤を置く。

 この「たたずむ」は、

  「タ・タハ・ツ・ム」、TA-TAHA-TU-MU(ta=dash,beat,lay;taha=side,edge,part,pass on one side,go by;tu=stand,settle;mu=silent)、「その傍らに・いて・じっと(静かに)・立っている(佇む)」(「タハ」のH音が脱落して「タ」と、「ツ」が「ズ」となった)

の転訛と解します。

1548たたみ(畳)

 積み重なっているもの。重ねられたもの。むしろ、ござ、こも、皮畳、絹畳などの敷物の総称。この「たたみ(畳)」については、雑楽篇(その二)の1034畳(たたみ)の項を参照してください。

 この「たたみ」は、

  「タタミ」、TATAMI(press down,suppress,smother,completed in weaving)、「(藁などを)圧縮して(または織り上げて)作つたもの(畳)」

の転訛と解します。

1549ただよう(漂う)

 空中、水面などに浮かんでゆらゆらと動いている。ゆれ動いて一つ所に定まらない。迷い歩く。ふらふらと彷徨う。うろうろする。たよりなく生きる。安定しないでふわふわしている。よろめく。ひるむ。表情や雰囲気に現れる。

 この「ただよう」は、

  「タタ・イ・オフ」、TATA-I-OHU(tata=wag,nod;i=past tense,from,beside,with,by,at;ohu=stoop)、「(足を)すくませ・て・ふらふらしている(漂う)」(「タタ」が「タダ」と、「イ・オフ」が「ヨフ」となり、H音が脱落して「ヨウ」となった)

の転訛と解します。

1550たたり(祟り)

 神仏や怨霊によってこうむる災い。行為の報いとして受ける災難。

 この「たたり」は、

  「タ・タリ」、TA-TARI(ta=the...of,dash,strike;tari=whakatari=incite,provoke a quarrel,expose to chastisment)、「例の・(神仏や怨霊によって、または禁止された行為の報いとして)下される罰(祟り)」

の転訛と解します。

1551ただれる(爛れる)

 皮膚や肉が破れ崩れる。腐って崩れる。腐乱する。比喩的に、精神などが健全さを失うことにもいう。

 この「ただれる」は、

  「タ・タレタレ・ル」、TA-TARETARE-RU(ta=the...of,lay;taretare=ragged,tattered,pant;ru=shake,agitate,scatter)、「例の・(皮膚や肉が)ぼろぼろになって・崩れる(爛れる)」(「タレタレ」の反覆語尾が脱落して「タレ」から「ダレ」となった)

の転訛と解します。

1552たち(太刀)

 長大な刀の総称。短小の「かたな」(国語篇(その二十一)の674かたな)に対して、対(つい)になるものとしていう。刃を下に向けて腰につり下げる長大な刀の称。儀仗の太刀。兵杖の太刀。この「かたな(刀)」については、国語篇(その二十一)の674かたな(刀)の項を参照してください。

 この「たち」は、

  「タ・チ」、TA-TI(ta=the...of,dash,beat,lay;ti=throw,cast,overcome)、「例の(打撃を加えて相手を)・打ち負かすもの(太刀)」

の転訛と解します。

1553だちかん(駄目)

 (「埒(らち)明(あ)かん」からとする説がある)だめだ。いけない。この「だちかん(駄目)」については、国語篇(その十五)の126だめ(駄目)の項の「ダシカン」を参照してください。

 この「だちかん」は、

   「タ・チ・カナ」、TA-TI-KANA(ta=the...of,dash,beat,lay;ti=throw,cast;kana=stare wildly,bewitch)、「例の・(気に入らない気持ちを)投げ掛けて・睨み据える(駄目)」(「タ」が「ダ」と、「カナ」が「カン」となった)

の転訛と解します。

1554たちどころに(立ち所に)

 すぐその場で。時をおかずに、すぐさま。すぐに。即座に。

 この「たちどころに」は、

  「タハチチ・トコロア・ニヒ」、TAHATITI-TOKOROA-NIHI(tahatiti=peg or wedge used to tighten anything;tokoroa=thin,lean;nihi=move stealthly,come stealthly upon,surprise)、「(ある行為とそれに続く行為の)その間の隙間が・実に(薄い)わずかで・驚く程だ(立ち所に)」(「タハチチ」のH音および反覆語尾が脱落して「タチ」と、「トコロア」の語尾のA音が脱落して「ドコロ」と、「ニヒ」のH音が脱落して「ニ」となった)

の転訛と解します。

1555たちまち(忽ち)

 動作が極めて短い時間に行われるさまを示す。またたく間に。すぐ。ある動作や状態が、予期しないで突然起こるさまを示す。にわかに。きゅうに。現実の様子を指し示す。実際に。現に。

 この「たちまち」は、

  「タハチチ・マチア」、TAHATITI-MATIA(tahatiti=peg or wedge used to tighten anything;matia=spear,wedge for tightening)、「(ある行為とそれに続く行為の)その間の隙間が・(締め上げられて)密着している(忽ち)」(「タハチチ」のH音および反覆語尾が脱落して「タチ」と、「マチア」の語尾のA音が脱落して「マチ」となった)

の転訛と解します。

1556だちん(駄賃)

 貨客を駄馬に乗せて運ぶのに対して支払われる運賃。また、品物を運送したり、送り届けたりしたときの賃銭。駄賃馬の略。人に簡単な仕事を頼んで支払う賃金。特に子供の使い走りや手伝いなどの例として与える金銭や菓子。

 この「だちん」は、

  「タハ・チナ」、TAHA-TINA(taha=side,pass on one side,go by;tina=fixed,firm,satisfied,content,exhausted)、「(運送などの)仕事で行き来して・(満足するもの)得る報酬(駄賃)」(「タハ」のH音が脱落して「ダ」と、「チナ」が「チン」となった)

の転訛と解します。

1557たつ(立つ)

 雲、霧、煙などが現れ出る。風、波などが起こり、動く。月、虹などが高く現れる。横になったり、座わったりしている人が身を起こす。また、席から去る。出発する。鳥、虫などが飛び上がる。勢い良くある行動を起こす。音や声が高くひびく。人に知れ渡る。目にみえるようにはっきり示される。新しい時節が来る。建造物が造られる。催される。など。

 この「たつ」は、

  「タハ・ツ」、TAHA-TU(taha=side,edge,pass on one side;tu=stand,be errect,settle)、「(傍らに)ある場所に・立ち上がる(立つ)」(「タハ」のH音が脱落して「タ」となった)

の転訛と解します。

1558たづくり(田作)

 ごまめ。小さい片口いわしを干した干物を炒って甘辛い密を絡めたもの。

 この「たづくり」は、

  「タ・ツク・フリ」、TA-TUKU-HURI(ta=the...of,dash,beat,lay;tuku=let go,leave,allow,send,steep in dye etc.;huri=turn round,overturn,overflow)、「例の(火にかけて)・(鍋の中で)ひっくり返して・(密を)絡めたもの(田作り)」(「ツク」が「ヅク」となり、その語尾のU音と、「フリ」のH音が脱落して「ウリ」となったその語頭のU音が連結して「ヅクリ」となった)

の転訛と解します。

1559たって(達て)

 無理を押してもしゃにむに物事をするさま。強いて。是非とも。無理に。「たっての」の形で、下にくる行為が切実であることを強調する。強い。激しい。

 この「たって」は、

  「タ・ツテ」、TA-TUTE(ta=the...of,dash,beat,lay;tute=shove,push,nudge,a charm to ward off malign influences)、「例の・強いて強行する(達て)」(「ツテ」が「ッテ」となった)

の転訛と解します。

1560だって

 …でも。相手のいう事柄などについて、不承知で反論する場合に用いる。そうはいっても。でも。先行する事柄について、その理由や言い訳を補足する場合に用いる。なぜかというと。

 この「だって」は、

  「タハ・ツテ」、TAHA-TUTE(taha=side,edge,pass on one side,go by;tute=shove,push,nudge,a charm to ward off malign influences)、「(そのことは)横に置く・ことを強いる(だって)」(「タハ」のH音が脱落して「ダ」と、「ツテ」が「ッテ」となった)

の転訛と解します。

1561たづな(手綱)

 馬具の一つ。馬の轡の左右にむすびつけ、騎乗者が手にとって馬を操縦する綱。転じて、勝手な行動をしないように注意して見張る気持ちを例えていう。

 この「たづな」は、

  「タ・ツツ(ン)ガ」、TA-TUTUNGA(ta=dash,beat,overcome,lay;tutunga=circumstance etc. of tutu(tutu=move with vigour,summon,assemble))、「(馬を支配する)操縦する・(たくさんの縄が)集合したもの(手綱)」(「ツツ(ン)ガ」のNG音がN音に変化して「ツツナ」から「ヅナ」となつた)

の転訛と解します。

1562たっぺ(氷。霜柱)

 氷。また、東北地方、関東地方の一部では、霜柱をいう。この「たっぺ(氷)」については、国語篇(その十四)の073こおり(氷)の項の「タッペ」を参照してください。

 この「たっぺ」は、

  「タ・パエ」、TA-PAE(ta=dash,beat,lay;pae=horizen,region,lie across)、「(水または地面の)表面に・張るもの(氷。霜柱)」(「タ」が「タッ」と、「パエ」のAE音がE音に変化して「ペ」となった)

の転訛と解します。

1563たつまき(竜巻)

 積乱雲の底から漏斗状に垂れ下がり、地上または海面に達する、雲を伴った激しい空気の渦巻き。この「たつまき(竜巻)」については、国語篇(その十五)の138つむじかぜ(旋風)の項の「タツマキ」を参照してください。

 この「たつまき」は、

  「タ・ツ・マキ」、TA-TU-MAKI(ta=dash,beat,lay;tu=fight with,energetic;(Hawaii)maki=to roll,fold)、「猛烈な勢いで・襲いかかる・渦を巻く(暴風。竜巻)」

の転訛と解します。

1564たて(楯)

 軍陣の防御具。手に持つ手楯、地上に立てる掻楯、櫓や船端にかける小楯、大儀の際の儀干、神宝の威儀の類がある。防ぎ守ること。また、そのもの。優勝した個人や団体をたたえて贈る楯に模したもの。

 この「たて」は、

  「タテ」、TATE(=tatetate=loose or slack of lashing etc.)、「(風雨のみならず刀、矢や銃弾の)攻撃を緩和し身を守るもの(楯)」

の転訛と解します。

1565たて(館)・たち(館)

 @防御設備を備えた豪族の邸宅。多く関西で「たち(館)」というのに対し、奥羽地方でいう。

 A貴人、官吏などの宿泊する官舎。官邸。貴人の邸宅。やかた。外敵を防ぐのに適当な地形などを利用して造った小規模の砦(とりで)や住居。

 この「たて」、「たち」は、

  「タタイ」、TATAI(arrange,adorn,apply as ornament,plan)、「(外敵を防ぐ)設備を備えた(邸宅。館)」(「タタイ」のAI音がE音に変化して「タテ」となった)

  「タ・アチアチ」、TA-ATIATI(ta=the...of,dash,beat,lay;atiati=drive away)、「例の・外敵を追い払う機能を備えた(邸宅。館)」(「タ」のA音と「アチアチ」の反覆語尾が脱落した「アチ」の語頭のA音が連結して「タチ」となった)

の転訛と解します。

1566だて(伊達)

 人目を惹くような派手な振る舞いをすること。また、意気、侠気をことさらに示めそうとするさま。好みが粋であること。また、気持ちがさばけているさま。外見を飾ること。見栄を張ること。

 この「だて」は、

  「タハ・テイ」、TAHA-TEI(taha=side,edge,pass on one side,go by;tei,teitei=high,tall,summit,top)、「最高に(派手な恰好や振る舞いをして)・行き来する(伊達)」(「タハ」のH音が脱落して「ダ」と、「テイ」が「テ」となった)

の転訛と解します。

1567たてまつる(奉る)

 下位者から上位者へ物などを差し上げる。献上する。人を参上させる。使いを差し上げる。便宜上ある地位に据えておく。経緯を表する。祭り上げる。貴人が身に受け入れたりつけたりする動作を、傍らの人がしてさしあげるものとしていう語。

 この「たてまつる」は、

  「タタイ・マツ・ル」、TATAI-MATU-RU(tatai=arrange,adorn,apply as ornament,plan;matu=ma atu=go,come;ru=shake,agitate,scatter)、「(手はずや様式などを)整えて・(貴人の下へ行き来する)行為を・奮って行う(奉る)」(「タタイ」のAI音がE音に変化して「タテ」となった)

の転訛と解します。

1568たとうがみ(畳紙)

 檀紙。鳥の子紙などの紙を折りたたんだもの。懐中して鼻紙または歌の詠草にも用いる。懐紙。厚い和紙に渋や漆を塗った丈夫な包み紙。和服・小切れ・女の結髪の道具などを包むもの。たとう。

 この「たとうがみ」は、

  「タタウ・カカ・アミ」、TATAU-KAKA-AMI(tatau=tie with a cord,count,repeat one by one,settle down upon;kaka=fibre,stalk;ami=gather,collect)、「物を包むための・(樹皮や布や藁の)繊維を・集め(て漉い)たもの(紙。畳紙)」(「タタウ」のAU音がOU音に変化して「タトウ」と、「カカ」の反復語尾が脱落した「カ」のA音と「アミ」の語頭のA音が連結して「カミ」から「ガミ」となった)

の転訛と解します。

1569たとえ(例え)

 異質の物事の類似点としてとらえ、連想させること。また、分かり易く引き合いに出した語句。引用の例。

 この「たとえ」は、

  「タ・トトヘ」、TA-TOTOHE(ta=the...of,dash,beat,lay;totohe=contend one with another)、「例の・類似()()」(「トトヘ」の反覆語頭およびH音が脱落して「トエ」となった)

の転訛と解します。

1570たどたどしい(辿々しい)

 学問・技芸などに十分に習熟していない。その道に精通していない。未熟である。不安定である。未熟なために信仰などが滑らかにいかない。のろのろしてはかどらない。機能などを十分に発揮していない。おぼつかない。不確かである。土地、、場所の様子がよく分からない。直接に、はっきりそれと知ることが出来ない状態になっている。うすぐらくてはっきりとは見えない。

 この「たどたどしい」は、

  「タタウ・タタウ・チヒ」、TATAU-TATAU-TIHI(tatau=tie with a cord,count,repeat one by one,settle down upon;tihi=summit,top,lie in a heap)、「一つ、また一つと・勘定を繰り返して・最高に時間がかかる(たどたどしい)」(「タタウ」のAU音がO音に変化して「タド」と、「チヒ」のH音が脱落して「シイ」となった)

の転訛と解します。

1571たどん(炭団)

 木炭粉や石炭粉を布海苔、角又などで球状に固め、乾燥させた黒い燃料。

 この「たどん」は、

  「タ・ト(ン)ガ」、TA-TONGA(ta=the...of,dash,beat,lay;tonga=restrained,suppressed,secret)、「例の・(木炭粉または石炭粉に圧力を掛けた)押し固めたもの(炭団)」(「ト(ン)ガ」のNG音がN音に変化して「トナ」から「ドン」となった)

の転訛と解します。

1572たなうら(掌)

 てのひら。たなごころ。また、足の裏にもいう。

 この「たなうら」は、

  「タナ・フラ」、TANA-HURA(tana=his,her,its;hura=remove a covering,uncover,discover,bare)、「あの・(上になっているものを返すと見えてくるもの)裏にあるもの(掌)」(「フラ」のH音が脱落して「ウラ」となった)

の転訛と解します。

1573たなおろし(棚卸し)

 期末決算、月次損益計算または資産評価のため、在庫原材料、製品、商品などの残存料、種類、品質などを調査し、その価額を評価すること。(比喩的に)人の現況や過去の行動などをすっかりしらべること。人や物の欠点を一つ一つ数え上げて指摘すること。旧悪を一つ一つ取り上げて咎めること。

 この「たなおろし」は、

  「タ(ン)ガ・オロ・チ」、TANGA-ORO-TI(tanga=be assembled,row,division of persons(tanga,tatanga=alert,prompt,complaint);oro=sharpen on a grind,defame;ti=throw,cast)、「(物や人の)欠陥を・調べ集めて・提示する(棚卸し)」または「(人や物の)欠陥を・調べ集めて・非難する(棚卸し)」(「タ(ン)ガ」のNG音がN音に変化して「タナ」と、「チ」が「シ」となった)

の転訛と解します。

1574たなごころ(掌)

 手の内側。物を受け支え、握りこむところ。手のひら。たなうら。たなそこ。「掌の中」の略。

 この「たなごころ」は、

  「タナ・(ン)ガウ・コロ」、TANA-NGAU-KORO(tana=his,her,its;ngau=bite,hurt,act upon,attack;koro=desire,intend)、「あの・(物を受け支え、握るなど)望む(ところに従って)・作用するもの(掌)」(「(ン)ガウ」のNG音がG音に、AU音がO音に変化して「ゴ」となった)

の転訛と解します。

1575たなばた(七夕)

 旧暦7月7日に織女星と牽牛星を祭ること。また、その行事や織女・牽牛の両星。五節句の一つ。この「たなばた(七夕)」については、雑楽篇(その一)の172たなばた(七夕)の項を参照してください。

 この「たなばた」は、

  「タ(ン)ガ・パタパタ」、TANGA-PATAPATA(tanga=be assembled;patapata=drop,parallel lines in the detail of carving)、「平行線(を辿る牽牛・織女の二星)が・出会う(のに合わせて願い事をする。行事)」または「(滴る)水に・縁がある(行事)」(「タ(ン)ガ」のNG音がN音に変化して「タナ」と、「パタパタ」の反復語尾が脱落して「バタ」となった)

の転訛と解します。

1576たなびく(棚引く)

 雲や霞などが薄く層をなして横に長く引く。とのびく。長く集め連ねる。なびかせる。

 この「たなびく」は、

  「タ(ン)ガ・ピ・ク」、TANGA-PI-KU(tanga=be assembled,row,division of persons;pi=flow of the tide,source or headwaters of a stream;ku=silent,showery unsettled weather(hiku=tail of a fish,headwaters of a river,eaves of a house))、「(雲や霞などが)流れるように・(静かに)長く・列をなしている(棚引く)」(「タ(ン)ガ」のNG音がN音に変化して「タナ」と、「ピ」が「ビ」となった)

の転訛と解します。

1577たに(谷)

 地表に見られる細長い窪地。成因により河谷・氷食谷などの浸食谷と断層谷・向斜谷・背斜谷などの構造谷に分ける。波形のくぼんだところ。また、二つの屋根の斜面が流れて合するところなどをいう。同じ世界に住む仲間。

 この「たに」は、

  「タ・アニ」、TA-ANI(ta=the...of;ani=resounding,echoing)、「谺がかえって来るところ(谷)」(「タ」のA音と「アニ」の語頭のA音が連結して「タニ」となった)

  または「タ(ン)ギ」、TANGI(sound,cry,weep,resound,mourn,lamentation)、「(転落した人の)悲痛な叫びが聞こえるところ(谷)」(「タ(ン)ギ」のNG音がN音に変化して「タニ」となった)

の転訛と解します。

1578たのしい(楽しい)

 精神的・身体的に満ち足りて快適である。愉快である。物質的に満たされて豊かであるさま。裕福である。作物などが豊富である。

 この「たのしい」は、

  「タ(ン)ゴ・チヒ」、TANGO-TIHI(tango=take up,take possession of,take away;tihi=summit,top,lie in a heap)、「最高に・(所有している)満ち足りている(楽しい)」(「タ(ン)ゴ」のNG音がN音に変化して「タノ」と、「チヒ」のH音が脱落して「シイ」となった)

の転訛と解します。

1579たのむ(頼む)

 頼りにする。あてにする。また、信頼する。信仰する。帰依する。頼るものとして、身をゆだねる。他にゆだねる。依頼する。委託する。特に懇願する。よその家を訪問したとき、案内を請う。

 この「たのむ」は、

  「タ・(ン)ガウ・ムア」、TA-NGAU-MUA(ta=the...of,dash,beat,lay;ngau=bite,hurt,act upon,attack;mua=the front,the former time,the time to come)、「行動を起こして・これから・(何かを行うよう)働きかける(頼む)」(「(ン)ガウ」のNG音がN音に、AU音がO音に変化して「ノ」と、「ムア」の語尾のA音が脱落して「ム」となった)

の転訛と解します。

1580たば(束)

 いくつかの物を一纏めにしてくくったもの。たばね。たばり。この「たば(束)」については、国語篇(その三)の(2)法則その二(a濁音は語頭では清音 b語中では濁音)の項を参照してください。

 この「たば」は、

  「タ・アパ」、TA-APA(ta=the...of,stalk or stem of a plant;(Hawaii)apa=roll or ream as of paper,bolt as of cloth)、「(植物の)茎を・束ねて巻いたもの(束)」(「タ」のA音と「アパ」の語頭のA音が連結して「タパ」から「タバ」となった)

の転訛と解します。

1581たばこ(煙草)

 南米原産のナス科の多年草で、温帯で栽培すると一年草となる。葉を乾燥して刻み、火を付けて喫煙に用いる。刻み煙草、葉巻、紙巻煙草、嗅ぎ煙草、噛み煙草等がある。

 この「たばこ」は、

  「タ・パコパコ」、TA-PAKOPAKO(ta=the...of,dash,beat,lay;pakopako=gleanings,scraps of food)、「例の(タバコの葉を刻んだ)・(屑のような)粉のようなもの(刻み煙草)」(「パコパコ」の反覆語尾が脱落して「バコ」となった)

  または「タ・アパ・コ」、TA-APA-KO(ta=the...of,stalk or stem of a plant;(Hawaii)apa=roll or ream as of paper,bolt as of cloth;ko=descend,cause to descend)、「例の・(タバコの葉を)巻いたものの・(子孫の)小さいもの(葉巻・紙巻煙草)」(「タ」のA音と「アパ」の語頭のA音が連結して「タパ」から「タバ」となった)

の転訛と解します。

1582たび(旅)

 住む土地を離れて、一時、他の離れた土地にいること。また、住居から離れた土地に移動すること。自宅以外の所に、臨時にいること。よその土地。他郷。祭礼で、御輿が本宮から渡御して一時止まる所。この「たび(旅)」については、国語篇(その十九)の467タビマタギの項を参照してください。

 この「たび」は、

   「タ・アピアピ」、TA-APIAPI(ta=the...of,dash,beat,lay;apiapi=crowded,confined,constricted)、「あらゆる障害の・克服(の作業の連続。旅)」(「タ」のA音と「アピアピ」の反覆語尾が脱落した「アピ」の語頭のA音が連結して「タピ」から「タビ」となった)

の転訛と解します。

1583たび(足袋)

 防寒・礼装などのために、主として和服のとき、足にはく袋形のもの。

 この「たび」は、

  「タ・アピアピ」、TA-APIAPI(ta=the...of,dash,beat,lay;apiapi=crowded,confined,constricted)、「例の・(足を)締め付けるもの(足袋)」(「タ」のA音と「アピアピ」の反覆語尾が脱落した「アピ」の語頭のA音が連結して「タピ」から「タビ」となった)

の転訛と解します。

1584たび(度)

 ある動作の行われる、またはある状態にある、その時。おり。回数。度数。その時ごと。その時はいつも。

 この「たび」は、

  「タ・ピ」、TA-PI(ta=the...of,dash,beat,lay;pi=flow of the tide,source or headwatwer of a stream,origin)、「例の・(川の水源の)水の滴りのような(水が滴るその時。またはその回数。またはそのとき毎。度)」(「ピ」が「ビ」となった)

の転訛と解します。

1585たびたび(度々)

 物事が何度も繰り返される様子。しばしば。物事が行われるたびごと。

 この「たびたび」は、

  「タ・ピ・タ・ピ」、TA-PI-TA-PI(ta=the...of,dash,beat,lay;pi=flow of the tide,source or headwatwer of a stream,origin)、「例の・(川の水源の)水の滴りが・何度も・繰り返されるような(水が何度となく滴るその時。またはその回数。またはそのとき毎。度々)」(「ピ」が「ビ」となった)

の転訛と解します。

1586たぶさ(髻)

 髪の毛を頭上に集めて束ねたところ。もとどり。

 この「たぶさ」は、

  「タプア・タ」、TAPUA-TA(tapua=stand out,be prominent;ta=dash,beat,lay)、「(頭の上に)載っている・目立つ(髪。髻)」(「タプア」の語尾のA音が脱落して「タブ」と、「タ」が「サ」となった)

  または「タプ・タ」、TAPU-TA(tapu=under religious or superstitious restriction,beyond one's power,sacred);ta=dash,beat,lay)、「(その中に人の活力が籠もるが故に大切にしなければならないなどの)迷信的な禁忌が・ある(髪。髻)」(「タプ」が「タブ」と、「タ」が「サ」となった)

の転訛と解します。

1587たぶん(多分)

 @数の多いこと。量のおおいこと。かなりの程度であること。ある集団の中の多くの部分。大多数。大部分。

 A可能性が強いことを判断していう。おおかた。多くは。たいてい。不確かな事柄についてこうだろうと推測していう。おそらく。

 この「たぶん」は、

  @「タ・プナ」、TA-PUNA(ta=the...of,dash,beat,lay;puna=spring of water,well up,flow)、「例の・(どんどん水が)湧き出すような(大量な。多分)」(「プナ」が「ブン」となった)

  A「タ・プ(ン)ガ」、TA-PUNGA(ta=the...of,dash,beat,lay;punga=anchor,fix with an anchor,sink)、「例の・(だいたいこの辺という場所に)錨を降ろして固定するような(おおかた。多分)」(「プ(ン)ガ」のNG音がN音に変化して「プナ」から「ブン」となった)

の転訛と解します。

1588たべる(食べる)

 (「飲む」「食う」の謙譲語、丁寧語)上位者または神仏などから飲食物をいただく場合と、自己または自己側の者が飲食するのを聞き手に対してへりくだつたり、丁寧にいう。主として、丁寧、上品な言い方として用いられる。生計を立てる、生活する意の「食う」に代えて用いる。人の言うことをうかつに信じてだまされる意の「食う」に代えて用いる。好ましくないことを身に受ける意の「食う」に代えて用いる。気をゆるせる意の「食う」に代えて用いる。この「たべる(食べる)」については、国語篇(その九)の022たべるの項を参照してください。

 この「たべる」は、

  「タパエ・ルイ」、TAPAE-RUI(tapae=lay one on another,place before a person;rui=shake down,cause to fall in drops)、「(食物を)次から次に積み上げて・(口の中に)落とし込む(食べる)」(「タパエ」のAE音がE音に変化して「タペ」から「タベ」と、「ルイ」の語尾のI音が脱落して「ル」となった)

の転訛と解します。

1589たまき(環)

 上代の装身具。玉・貝・鈴などを紐で貫き、臂のあたりに巻いて装飾としたもの。釧(くしろ)。弓を射る便宜から手を覆う筒形の籠手の袋。手覆。輪の形をして中に円い穴のある玉。指輪。

 この「たまき」は、

  「タ・マキキ」、TA-MAKIKI(ta=the...of,dash,beat,lay;makiki=stiff,standing straight out,obstinate)、「しっかりと・(手に)付着しているもの(環)」(「マキキ」の反覆語尾が脱落して「マキ」となった)

の転訛と解します。

1590たまぐし(玉串)

 神道の行事作法として用いられる献供物の一種で、榊の枝などに絹、麻、紙などを付けて神前に供えるもの。転じて、榊。または榊の異称。

 この「たまぐし」は、

  「タ・マ(ン)グ(ン)グ・チ」、TA-MANGUNGU-TI(ta=the...of,dash,beat,lay;mangungu=closely knitted or woven,broken,chipped,crushed,uncooked;ti=throw,cast)、「例の・(榊の)生の(枝を)・切り分けたもの(玉串)」(「マ(ン)グ(ン)グ」の反覆語尾が脱落し、NG音がG音に変化して「マグ」と、「チ」が「シ」となった)

の転訛と解します。

1591たまげる(魂消る)

 肝を潰す。驚く。びっくりする。仰天する。たまぎる。たまがる。

 この「たまげる」は、

  「タ・マ(ン)ガイ・ル」、TA-MANGAI-RU(ta=the...of,dash,beat,lay;mangai,mangaingai=slow,moving heavily;ru=shake,agitate,scatter)、「例の・(驚きのあまり)身が重くのろのろと・動く(魂消る)」(「マ(ン)ガイ」のNG音がG音に、AI音がE音に変化して「マゲ」となった)

の転訛と解します。

1592たましい(魂)

 人間、さらには広く動物、植物などに宿り、心の働きを司り、生命を与えている原理そのものと考えられているもの。身体を離れて存在し、身体が滅びた後も存在すると考えられることが多い。人魂。死者の霊魂が夜など光りながら空を飛ぶといわれるもの。心の働き。精神。思慮分別。才覚。心の傾向、状態をいう。心の持ち方む。根性。しょうね。(武士の魂というところから)刀。

 この「たましい」は、

  「タマ・チヒ」、TAMA-TIHI(tama=son,man,deep affection;tihi=summit,top,lie in a heap)、「最高に優れた・根源的な心の働き(魂)」(「チヒ」のH音が脱落して「シイ」となった)

  または「タ・マチ・ヒ」、TA-MATI-HI(ta=the...of,dash,beat,lay;mati,matimati=deep affection;hi=raise,rise)、「例の・高い境地にある・根源的な心の働き(魂)」(「マチ」が「マシ」と、「ヒ」のH音が脱落して「イ」となった)

の転訛と解します。

1593だます(欺す)

 悪意に基づいて嘘を言ったり、偽物を使ったりして、本当でないことを本当だと思わせる。偽る。あざむく。すかしなぐさめる。宥める。きげんをとる。(だましだましの形で)手加減しながら、少しづつ事をする。

 この「だます」は、

  「タ・マハ・アツア」、TA-MAHA-ATUA(ta=the...of,dash,beat,lay;maha=many,abundant;atua=god,demon,ghost,anything malign,disagreeable,strange)、「(悪魔のような)悪意に基づいて・大きな・打撃を加える(欺す)」(「タ」が「ダ」と、「マハ」のH音が脱落して「マ」となり、その語尾のA音と「アツア」の語頭のA音が連結し、さらに語尾のA音が脱落して「マツ」から「マス」となった)

の転訛と解します。

1594たまずさ(玉梓。玉章)

 便りを運ぶ使者の持つ梓の杖。転じて、その杖を持つ者、使者。転じて、手紙。書簡。便り。文章。手紙の真ん中を捻り結んだもの。多くは、恋文にいう。この「たまずさ(玉梓)」については、国語篇(その四)の077たまづさの(玉梓の)の項を参照してください。

 この「たまずさ」は、

  「タ・マツ・ウタ」、TA-MATU-UTA(ta=the...of,dash,beat,lay;matu=ma atu=go,come;uta=put persons or goods on board a canoe etc.)、「例の・行き来する・(手紙を運ぶ)使者(玉梓)」または「例の・行き来する・(使者に託された)手紙(玉梓)」(「マツ」の語尾のU音と「ウタ」の語頭のU音が連結して「マツタ」から「マズサ」となった)

の転訛と解します。

1595たまたま

 その場合や機会が、まれではあるが何度かあるさま。時折。ときたま。その場合や機会が、偶然であるさま。偶然に。ごく稀ではあるが、ひょっとしてそうなるとか、そうなるかも知れないとかいう気持ちを表す。ひょっとして。もしかして。予期したことが実現するとか、じつげんしてよかったという気持ちを表す。折良く。運良く。

 この「たまたま」は、

  「タハ・マ・タハ・マ」、TAHA-MA-TAHA-MA(taha=side,edge,pass on one side,go by;ma=used to emphasis the subject of a verb in the future,by means of,in consequence of,used to introduce a conditional sentence)、「偶然に・通りかかる・ということが・重なる(たまたま)」(「タハ」のH音が脱落して「タ」となった)

の転訛と解します。

1596たまほこ(玉鉾)

 玉で飾った鉾。また、立派な鉾。道、または道中。足、または歩み。この「たまほこ(玉鉾)」については、国語篇(その四)の080たまほこの(玉鉾の)の項を参照してください。

 この「たまほこ」は、

  「タ・マホ・カウ」、TA-MAHO-KAU(ta=the...of,dash,beat,lay;maho=quiet,undisturbed;kau=alone,only,swim,wade)、「そこにある・静かな・緩やかに曲がっている(道。玉鉾)」(「カウ」のAU音がO音に変化して「コ」となった)

の転訛と解します。

1597たみ(民)

 君主・帝王に統治されるすべての人々。臣民。貴族、また、武士階級を除いた庶民。百姓。下名代では、広く国家社会を構成する人。国民。

 この「たみ」は、

  「タ・アミ」、TA-AMI(ta=the...of,dash,beat,lay;ami=gather,collect)、「例の・(その地域または国に)集まった人々(民)」(「タ」のA音と「アミ」の語頭のA音が連結して「タミ」となった)

の転訛と解します。

1598たむけ(手向け)

 神仏に幣(ぬさ)など供え物をすること。また、その供え物。多く旅人などが道の神に対し供える場合にいう。旅立つ人へのはなむけ。餞別。道の神に旅中の安全を祈るところ。とうげ。手向けの神の略。供え物をして死者の冥福を祈ること。この「たむけ(手向け)」については、国語篇(その六)の395ゆふたたみ(木綿畳)の項の「たむけ」を参照してください。

 この「たむけ」は、

  「タモエ・カイ」、TAMOE-KAI(tamoe=press flat,smother,overpower by occult means,a charm to destroy an enemy;kai=food,product)、「(行路を妨害する神を)宥める・(食物などの)供物を供える(手向け)」(「タモエ」のOE音がU音に変化して「タム」と、「カイ」のAI音がE音に変化して「ケ」となった)

  または「タ・アム・カイ」、TA-AMU-KAI(ta=the...of,dash,beat,lay;amu=grumble,begrudge,cpmplain;kai=food,product)、「例の・(通行に)苦情を唱える・(神を宥めるために食物などの)供物を供える(手向け)」(「タ」のA音と「アム」の語頭のA音が連結して「タム」と、「カイ」のAI音がE音に変化して「ケ」となった)

の転訛と解します。

1599たむろ(屯)

 軍兵の群れ。集合した兵士。軍隊。部隊。また、それがいる場所。陣営。仲間やある職業の者の集団。また、ある職業の者がいつも集まる場所。特に、明治時代、巡査がいつも詰めていた所。警察署。駐在所。

 この「たむろ」は、

  「タムイムイ・ロ」、TAMUIMUI-RO(tamuimui=throng,crowd around;ro=stick-insevts,praying mantis)、「虫がたかるように・(軍兵が)密集する(屯)」(「タムイムイ」の反覆語尾および語尾のI音が脱落して「タム」となった)

の転訛と解します。

1600だめ(駄目)

 囲碁で石の周囲または相手の地との境界にあって、双方の地に属さない空点。だめ押しの略。演劇で、脚本、演出、演技などの悪い点についての注意。行っても効果のないこと。役にたたないこと。また、そのさま。無駄。不可能なこと。また、そのさま。よくない状態であること。価値が低いこと。どうしょうもないこと。また、そのさま。してはいけないこと。また、そのさま。この「だめ(駄目)」については、国語篇(その十五)の126だめの項を参照してください。

 この「だめ」は、

  「タ・マイ」、TA-MAI(ta=the ...of,dash,beat,lay;mai=become quiet)、「例の(気に入らない気持ちを表す)・黙りこくる(駄目)」(「タ」が濁音化して「ダ」と、「マイ」のAI音がE音に変化して「メ」となった)

の転訛と解します。

1601ためらう(躊躇う)

 高ぶりや悲しみなどで乱れた気持ちをおさえる。気を静める。病気などの苦しい気分を落ち着ける。病勢を静める。落ち着いて考える。様子を窺う。しようかしまいかと思い迷う。気持ちがまとまらなくて迷う。ぐずぐずする。この「ためらう(躊躇う)」については、国語篇(その十七)の321はんちくたいの項の「ためらう(逡巡する)」を参照してください。

 この「ためらう」は、

  「タハ・メ・ラウ」、TAHA-ME-RAU(taha=side,edge,pass on one side(tataha=swerve);me=if,ad if;rau=project,extend(whakarau=take captive,confuse))、「脇道に外れる・かどうか・困惑する(躊躇う)」(「タハ」のH音が脱落して「タ」となった)

の転訛と解します。

1602たもと(袂)

 手の臂から肩までの部分。着物の袖口の下の袋のようになった部分。袖。傍ら。そば。

 この「たもと」は、

  「タモ・ト」、TAMO-TO(tamo=be ababsent;to=drag,haul)、「(中味が)空の(布を)・垂らしているもの(袂)」

の転訛と解します。

1603たらい(盥)

 水や湯を入れ、顔や手足を洗うのに用いる平たい容器。現在はね請託ようの大形のものをいう。馬を洗うのに用いる大盥。宗教的な清めのため水を入れておく容器。この「たらい(盥)」については、雑楽篇(その二)の1042漏斗(じょうご)の項の「盥(たらい)」を参照してください。

 この「たらい」は、

  「タ・ラヒ」、TA-RAHI(ta=the...of,dash,beat,lay;rahi=great,abundant)、「大量の(水・湯などを)・容れるもの(容器。盥)」(「ラヒ」のH音が脱落して「ライ」となった)

の転訛と解します。

1604たらいまわし(盥回し)

 @足で盥を回す曲芸。A一つの物事を順送りに移し回すこと。あるいは二人以上の者が、なれ合いで順々に出てくること。また、それらの人。取引市場で数人の者が共謀して、一つの株を順々に買い、値段をつり上げること。

 この「たらいまわし」は、

  「タ・ラヒ・マ・ワチ」、TA-RAHI-MA-WHATI(ta=the...of,dash,beat,lay;rahi=great,abundant;ma,mama=light,not heavy,unencumbered,so quick;whati=be broken off short,be bent at an angle,turn and go away,run)、@「大量の(水・湯などを)・容れるもの(容器。盥を)・敏速に・回転させること(曲芸。盥回し)」またはA「例の・(物事を)何回も・敏速に・移し回すこと(盥回し)」(「ラヒ」のH音が脱落して「ライ」と、「ワチ」が「ワシ」となった)

の転訛と解します。

1605だらしない

 物事のけじめがつかない。きちんとしていない。秩序がない。節度がない。ぐうたらだ。体力が弱すぎる。また、勝負を争う物事に弱すぎる。この「だらしない」については、国語篇(その十五)の127だらしないの項を参照してください。

 この「だらしない」は、

  「タラ・チ・ナイ」、TARA-TI-NAI(tara=loosen,separate,brisk;ti=throw,cast;nai=nei=stretched forward,reaching out)、「締まりがなく・投げやりの・ままである(だらしない)」(「タラ」が「ダラ」と、「チ」が「シ」となった)

の転訛と解します。

1606だらにすけ(陀羅尼助)

 (僧侶が陀羅尼を読誦するときに口に含み、その苦みで睡魔を防いだところからとする説がある。)キハダの生皮やセンブリの根などを煮詰めて作った乾燥エキス剤。黒色固形で独特の苦みがある腹痛・健胃整腸剤。

 この「だらにすけ」は、

  「タラ・ニヒ・ツ・カイ」、TARA-NIHI-TU-KAI(tara=loosen,separate,brisk;nihi=move stealthly,dizziness,timidity;tu=fight with,energetic;kai=consume,eat,drink any liquid other than water,food)、「ゆっくりと・休み無く・(消耗する)煮詰めて・(薬の成分を木の皮から分離する)抽出したもの(陀羅尼助)」(「タラ」が「ダラ」と、「ニヒ」のH音が脱落して「ニ」と、「ツ」が「ス」と、「カイ」のAI音がE音に変化して「ケ」となった)

の転訛と解します。

1607たらちね(垂乳根)

 母。親。この「たらちね(垂乳根)」については、国語篇(その四)の082たらちねの(垂乳根の)の項を参照してください。

 この「たらちね」は、

  「タラチ・ネイ」、TARATI-NEI(tarati,taratiti=pin,fasten with a spike;nei=to denote proximity,the connection with the speaker is not obvious or the force apparently being to indicate continuance of action)、「大釘を打ちつけたように・(母と子、または親と子の)関係が堅く離れ難いもの(垂乳根)」(「ネイ」のEI音がE音に変化して「ネ」となった)

の転訛と解します。

1608たらふく(鱈腹)

 腹一杯。飽き足りるほど。たんのうするほど。

 この「たらふく」は、

  「タ・アラ・プク」、TA-ARA-PUKU(ta=the ...of,dash,beat,lay;ara=expressing surprise etc.;puku=swelling,abdomen,affections,appetite,desire)、「例の・何と・食欲が満たされたことよ(鱈腹)」(「タ」のA音と「アラ」の語頭のA音が連結して「タラ」と、「プク」のP音がF音を経てH音に変化して「フク」となった)

の転訛と解します。

1609たるひ(垂氷。氷柱)

 目、行きなどの水滴が、軒先または岩角などから滴りながら凍って垂れ下がったもの。また、それができること。つらら。この「つらら」については、#1781つららの項を参照してください。

 この「たるひ」は、

   「タルア・チ」、TARUA-TI(tarua=by and by;ti=throw,cast)、「だんだんと・垂れ下がったもの(氷柱)」(「タルア」の語尾のA音が脱落して「タル」と、「チ」が「シ」から「ヒ」となった)(このtiは、PPN(原ポリネシア語)ではsiiであったのが、ハワイ語ではhiと、マオリ語ではtiとなったものです。)

の転訛と解します。

1610だるま(達磨)

(梵dharmakの音訳。「法」と意訳)規範・真理・法則などの意。中国禅宗の始祖の名。達磨の座像を真似て作った張り子、商売繁盛・開運出世の縁起物。(すぐ転ぶところから)売春婦。僧侶。菓子の一種。雪達磨の略。殺人(盗人、テキ屋などの隠語)など。

 この「だるま」は、

  「タル・ウマ(ン)ガ」、TARU-UMANGA(taru=shake,overcome,painful,acute;umanga=pursuit,occupation,business,food,accustumed,habituated)、「(震動する)転んではすぐ起き上がる・ことを習いとするもの(張り子。達磨)」または「(圧倒する)人を殺す・ことを習いとするもの(殺人。達磨)」(「タル」が「ダル」となり、その語尾のU音と、「ウマ(ン)ガ」の語頭のU音が連結し、名詞形語尾のNGA音が脱落して「ダルマ」となった)

の転訛と解します。

1611たるみ(垂水。滝)

 垂れ落ちる水。滝。瀑布。兵庫県神戸市の区名。

 この「たるみ」は、

  「タ・アル・ミ」、TA-ARU-MI(ta=the...of,dash,beat,lay;aru=follow,chase;mi,mimi=stream)、「例の・水が・競争する(流れ落ちる)もの(垂水。滝)」(「タ」のA音と「アル」の語頭のA音が連結して「タル」となった)

  または「タル・ミ」、TARU-MI(taru=shake,overcome,painful,acute;mi,mimi=stream)、「震動して(流れ落ちる)・水(垂水。滝)」

の転訛と解します。

1612たれる(垂れる)

 @ものの一端を支えて、他端が下に下がるようにする。ぶら下げる。雲などが低く覆うように広がる。ぶら下がる。A液体を流し落とす。滴らす。上位の者が下位の者に何かを与えたり教えたりする。後の時代まで残し伝える。大小便や屁を体外に出す。液体が流れ落ちる。B「述べる」「言う」をけなしていった語。欲しがる。「剃る」を忌み嫌っていう語。また、刃物が良く切れる意。性質・状態を示す体言につけて嫌悪の気持ちを表す(あまったれるなど)。

 この「たれる」は、

  「タレ・ル」、TARE-RU(tare=hang,be drawn towards,be intent upon;ru=shake,agitate,scatter)、@「ぶら下げて・放つ(垂れる)」またはA「(何かを)引っ張って・放つ(垂れる)」またはB「(何かの)意図をもって・行動する(垂れる)」

の転訛と解します。

1613だれる

 物事の状態や調子にしまりがなくなる。また、気持ちが緩む。物事に対し緊張を欠く。だらける。興味が薄らいで退屈する。飽きを催す。特に芝居や寄席などで客が倦怠を感じる。張り合いがなくなる。手持ち無沙汰になる。生気、鮮度などが低下する。相場の伸びが鈍り、下落気味になる。市場に活気がなくなる。女に夢中になる。

 この「だれる」は、

  「タ・アライ・ル」、TA-ARAI-RU(ta=the...of,dash,beat,lay;arai=screen,ward off,block up,obstruct,hinder,veil;ru=shake,agitate,scatter)、「例の・(物事の)活気(緊張感)がある進行が妨害・される(だれる)」(「タ」のA音と「アライ」の語頭のA音が連結し、AI音がE音に変化して「ダレ」となった)

の転訛と解します。

1614たわけ

 正常でない、また常識に外れた行為をすること。特に、みだらな行為、許されない性的な振る舞いをすること。ふざけること。ばかなことをすること。浮かれて騒ぐこと。ばか。愚か者。あほう。この「たわけ」については、国語篇(その十六)の164ばか(馬鹿)の項の「たわけ」を参照してください。

 この「たわけ」は、

   「タウア・ケ」、TAUA-KE(taua,tautaua=inactivity,coward;ke=different,strange,extraordinary)、「異常に・怠惰だ(馬鹿)」(「タウア」が「タワ」となった)

の転訛と解します。

1615たわし(束子)

 藁や棕櫚の毛などを束ねて作り、器物を擦って洗い磨く道具。この「たわし」については、雑楽篇(その二)の535へちま(糸瓜)の項の「たわし(束子)」を参照してください。

 この「たわし」は、

   「タワチ」、TAWHATI(ebb,die(poetical),valley(tawha=calabash;ti=throw,overcome))、「(ヘチマやヒョウタンの果実が)腐って残ったもの」(「タワチ」が「タワシ」となった)

の転訛と解します。

1616たわやめ(手弱女)

 なよなよとした女。たおやかな女。たおやめ。なお、この「たおやめ」については、#1519たおやめ(手弱女)の項を参照してください。

 この「たわやめ」は、

  「タウア・イア・マイ」、TAUA-IA-MAI(taua,tautaua=inactivity,coward;ia=indeed;mai,maimai=a dance to welcome guests at a lamentation)、「実に・気の弱い・(踊りを踊る)女性(手弱女)」(「タウア」が「タワ」と、「イア」が「ヤ」と、「マイ」のAI音がE音に変化して「メ」となった)

の転訛と解します。

1617たん(痰)

 咳や咳払いをしたときに、気管から吐き出される分泌物。漢方医学で、正常でない病的な体液をいう。(痰を切るから)偉そうな口をきくこと。威勢よく物を言うこと。また、その言葉。

 この「たん」は、

  「タネ」、TANE(eructate after food(tanea=be choked))、「(喉から)吐き出すもの(痰)」(「タネ」が「タン」となった)

の転訛と解します。

1618たんか(啖呵)

 @咳を伴って激しく出る痰。また、痰の出る病気。A鋭く歯切れのよい口調で言う威勢の良い言葉。露天で人を集めて品物を売ろうとするときの口上(てきや仲間の隠語)。

 この「たんか」は、

  @「タネ・カハ」、TANE=kaha(tane=eructate after food(tanea=be choked);kaha=strong,strength)、「激しく・(喉から)吐き出すもの(啖呵)」(「タネ」が「タン」と、「カハ」のH音が脱落して「カ」となった)

  A「タネカハ」、TANEKAHA(an implement for tightening the lashings of a canoe by twisting,taut,tight of a cord)、「ピンと張り詰めた(威勢の良い言葉または口上。啖呵)」(「タネカハ」のH音が脱落して「タンカ」となった)

の転訛と解します。

1619だんご(団子)

 @穀物の粉を水でこねて小さく丸め、蒸しまたはゆでたもの。醤油の付け焼きにしたり、餡、黄粉などをつけたりして食べる。A(円いところから転じて)人の言行が角張らないこと。うまくその場をおさめること。うまく丸め込むこと。くちゃくちゃとひとところに重なっていること、固まっていること。また、そのさま。弾丸。囲碁で、一方の石が一箇所に凝集させられて、働きのない形。

 この「だんご」は、

  @「タ・ナコナコ」、TA-NAKONAKO(ta=the...of,dash,beat,lay;nakonako=adorn,ornament(whakanako=adorn with fine markings))、「例の・(餡、黄粉など)特徴があるものを載せた食品(団子)」(「タ」が「ダ」と、「ナコナコ」の反覆語尾が脱落して「ナコ」から「ンゴ」となった)

  A「タ(ン)ガ・コ」、TANGA-KAU(tanga=be assembled,row,tier,division or company of persons;kau=alone,bare,only)、「ただただ・一つに(集合する)まとまること(団子)」(「タ(ン)ガ」のNG音がN音に変化して「タナ」から「ダン」と、「カウ」のAU音がO音に変化して「コ」から「ゴ」となった)

の転訛と解します。

1620だんじり(山車)

 祭礼の際に神輿のほかに曳いたり担いだりする屋台の「だし(山車)」の一種で、大阪府および兵庫県などで用いられる太鼓を載せて曳いたり、担ぐもの。この「だし(山車)」については1535だし(出汁)のC「だし(山車)」を、また、「だんじり」については、雑楽篇(その一)の135巻藁(まきわら)船の項の「車楽(だんじり)船」を参照してください。

 この「だんじり」は、

  「タ(ン)ギ・チリ」、TANGI-TIRI(tangi=sound,cry;tiri=throw or placeone by one,scatter,offering to a god)、「叫び声を・次から次へと上げる(または「声を上げて・神に願い事をする」から転じて「神事として神に奉納する芸能を演じる(天王祭では芸能を演じる代わりに能人形を飾る)」)(山車・川船)」(「タ(ン)ギ」のNG音がN音に変化して「タニ」から「ダン」と、「チリ」が「ジリ」となった)

の転訛と解します。

1621たんす(箪笥)

 引き出しや開き戸があって、衣類・書物・茶器などを整理して入れておく木製の箱状の家具。

 この「たんす」は、

  「タ(ン)ガ・ツ」、TANGA-TU(tanga=be assembled,row,tier,division or company of persons;tu=stand,settle)、「(大事な物品を)集めて・収蔵するもの(箪笥)」(「タ(ン)ガ」のNG音がN音に変化して「タナ」から「タン」と、「ツ」が「ス」となった)

の転訛と解します。

1622たんぜん(丹前)

 江戸時代、丹前風呂へ通った町奴。また、その風俗や伊達姿。また、その衣類。

 この「たんぜん」は、

  「タネ・テ(ン)ガ」、TANE-TENGA(tane=male,showing manly qualities;tenga=Adam's apple,goitre,distended,strained)、「男らしく見える・(綿入れ)膨らんでいる(衣類。またはそれを着た姿。丹前)」(「タネ」が「タン」と、「テ(ン)ガ」のNG音がN音に変化して「テナ」から「ゼン」となった)

の転訛と解します。

1623だんだん

 山陰地方で「有難う」の意の方言。この「だんだん」については、国語篇(その十四)の009ありがとうの項の「だんだん」を参照してください。

 この「だんだん」は、

  「タ(ン)ガタ(ン)ガ」、TANGATANGA(loose,easy,comfortable,free from pain)、「(お陰様で)大変快適だ(感謝する)」(NG音がN音に変化して「タナタナ」から「ダンダン」となった)

の転訛と解します。

1624たんと

 数量が多いさま。たくさん。多量に。程度が甚だしいさま。大変に。非常に。

 この「たんと」は、

  「タ(ン)ガ・タウ」、TANGA-TAU(tanga=be assembled,row,tier,division or company of persons;tau=come to rest,settle down,be suitable,be comely,be able)、「程よく・(集まっている)多量である(たんと)」(「タ(ン)ガ」のNG音がN音に変化して「タナ」から「タン」と、「タウ」のAU音がO音に変化して「ト」となった)

の転訛と解します。

1625だんどり(段取り)

 芝居・小説などで、筋の運びや按配。もとは歌舞伎の楽屋通言。一般に物事を進めて行く手順。また、そのための用意、工夫。

 この「だんどり」は、

  「タ(ン)ガ・ト・オリ」、TANGA-TO-ORI(tanga=be assembled,row,tier,division or company of persons;to=drag,haul;ori=cause to wave to and fro,sway,move about)、「(物事が)列となって・あちこちと寄り道しながら・動いて行くこと(手順。段取り)」(「タ(ン)ガ」のNG音がN音に変化して「タナ」から「ダン」と、「ト」のO音と「オリ」の語頭のO音が連結して「ドリ」となった)

の転訛と解します。

1626だんな(旦那)

 (仏語)六波羅蜜の一つ。施し。布施。檀越。施主。檀家。中世、社寺の参詣宿泊者。家人や使用人などが、その主人を敬っていう語。商人などが自分の店の客を、また、役者・芸人などが自分のひいき筋を敬っていう語。妻が自分の夫を敬っていう語。など。

 この「だんな」は、

  「タネ・ナ」、TANE-NA(tane=male,showing manly qualities;na=satisfied,content)、「(満足している)何不足のない・立派な男子(旦那)」(「タネ」が「タン」から「ダン」となった)

の転訛と解します。

1627だんない

 かまわない。差し支えない。何ともない。苦しくない。大した事はない。この「だんない」については、国語篇(その十七)の317〜まっしの項の「だんない」を参照してください。

 この「だんない」は、

  「タノア・ナイ」、TANOA-NAI(tanoa=belittle,make of no account;nai=nei,neinei=stretch forward)、「(軽視)無視し・続ける(かまわない)」(「タノア」の語尾のA音が脱落して「タノ」から「ダン」となった)

の転訛と解します。

1628たんのう(堪能)

 満足すること。十分に飽き足りること。気分を晴らすこと。気の済むこと。また、慰めること。納得させること。才能に優れ、その道に深く通じていること。また、その人。古くは(仏語)「かんのう(堪能)」。この「たんのう(堪能)」については、国語篇(その十七)の328〜しとーの項の「たんのうする(堪能する)」を参照してください

 この「たんのう」は、

  「タ(ン)ガ(ン)ガオ」、TANGANGAO(subside)、「(感情が静まる)十分満足する(堪能)」(「タ(ン)ガ(ン)ガオ」のNG音がN音に、AO音がOU音に変化して「タナノウ」から「タンノウ」となった)

の転訛と解します。

1629だんぶくろ(段袋)

 @物を入れて運ぶのに用いる布製の大きな袋。荷物袋。番袋。A幕末から明治初期にかけて用いられた武士の用いた和式洋装のズボン。B熊本県の方言で、ねんねこ。この「ねんねこ」の意の「だんぶくろ」については、国語篇(その十六)の161ねんねこの項の「だんぶくろ」を参照してください。

 この「だんぶくろ」は、

  @、B「タ(ン)ガ・プク・ロ」、TANGA-PUKU-RO(tanga=be assembled;puku=swelling,entrails;ro=roto=inside)、@「(いろいろな物を)まとめて入れて・中が・膨れるもの(段袋)」またはA「中味(負ぶう人と子供)が・合わさって・(外観が太って)大きく見せるもの(ねんねこ)」(「タ(ン)ガ」のNG音がN音に変化して「タナ」から「ダン」と、「プク」が「ブク」となった)

  A「タネア・プク・ロ」、TANEA-PUKU-RO(tanea=be choked;puku=swelling,entrails;ro=roto=inside)、「中(に和服の裾を詰め込み)・膨れて・(足が)窒息するもの(段袋)」(「タネア」の語尾のA音が脱落して「タネ」から「ダン」と、「プク」が「ブク」となった)

の転訛と解します。

1630だんべい

 「だろう」の意の関東方言。(「であるべし」が変化したとの説がある)

 この「だんべい」は、

  「タナ・パイ」、TANA-PAI(tana=his,her,its;pai=good,excellent,suitable,pleasant)、「それは・(適切)いい(だんべい)」(「タナ」が「ダン」と、「パイ」のAI音がEI音に変化して「ベイ」となった)

の転訛と解します。

1631たんぼ(田圃)

 田になっている土地。水田。どぶ。下水。

 この「たんぼ」は、

  「タ(ン)ガ・パウ」、TANGA-PAU(tanga=be assembled,row,tier,division or company of persons;pau=consumed,exhausted,denoting the complete or exhaustive character of any action)、「(稲作のための整地・耕耘・均平・注水などの)骨の折れる作業を繰り返して・集中してきた土地(田圃)」(「タ(ン)ガ」のNG音がN音に変化して「タナ」から「タン」と、「パウ」のAU音がO音に変化して「ポ」から「ボ」となった)

の転訛と解します。

1632たんま

 子供の遊びで、一時中止を要求、または宣言する言葉。(「待った」の「ま」と「た」を逆にしたものかとの説がある)

 この「たんま」は、

  「タ(ン)ガ・マ」、TANGA-MA(tanga,tatanga=alert,prompt,ready to hand,complaint;ma=used to emphasise the subject of a verb in the future)、「(遊びを続けることは)実に・不満だ(待った。たんま)」(「タ(ン)ガ」のNG音がN音に変化して「タナ」から「タン」となった)

の転訛と解します。

1633だんまつま(断末魔)

 (仏語)死に際。また、死に際の苦しみ。(「末魔」「末摩」は梵語marmanの音訳で身中の箇所の名で、これに触れると死ぬという。死節、死穴と訳す。)

 この「だんまつま」は、

  「タネア・マツア・マハ」、TANEA-MATUA-MAHA(tanea=be choked;matua=first,almost,on the point of,important,large;maha=many,abundance)、「(窒息する)死ぬ・その瞬間の・大きなもの(苦しみ)(断末魔)」(「タネア」の語尾のA音が脱落して「タネ」から「タン」と、「マツア」の語尾のA音が脱落して「マツ」と、「マハ」のH音が脱落して「マ」となった)

の転訛と解します。

「チ」

1634ち(血)

 動物の血管内を循環する体液。血液。同一の先祖につながる関係。血族の関係。血統。血縁。など。この「ち(血)」については、国語篇(その九)の009bloodの項を参照してください。

 この「ち」は、

  「チ・イ」、ti-i(ti=throw,cast,overcome;i=ferment,be stirred)、「征服されると・噴き出すもの(血)」(「チ」のI音と「イ」のI音が連結して「チ」となつた)

の転訛と解します。

1635ちかう(誓う)

 神仏に対して、ある事を堅く約束する。神仏が国家の守護または衆生済度を誓願する。他人に対し、ある事の実行を約束する。盟約する。契る。

 この「ちかう」は、

  「チヒ・カフ」、TIHI-KAHU(tihi=top,summit,lie in a heap;kahu=surface,garment,grow)、「(ある事を)至上の(責務として)・(表面に置く)すべてのことに優先するものとする(誓う)」(「チヒ」のH音が脱落して「チ」と、「カフ」のH音が脱落して「カウ」となった)

の転訛と解します。

1636ちから(力)

 他に作用する筋肉などの働き。人や生物が持っている物理的なエネルギーの作用をいう。人の精神的な働きをさしていう。気力。精神力。物事に作用するはたらきかけや、その結果をさしていう。そなわっているさまざまな能力を具体的にさしていう。総合的な能力。事に当たっての勢い。身に付けた学力。学識。身につけた地位や立場による威力。身に付けた蓄財による勢力など。

 この「ちから」は、

  「チ・カハ・ラハ」、TI-KAHA-RAHA(ti=throw,cast,overcome;kaha=strong,strength,persistency;raha=open,extended)、「(その)強いことを・明らかに・見せつけるもの(力)」(「カハ」のH音が脱落して「カ」と、「ラハ」のH音が脱落して「ラ」となった)

  または「チ・カラ」、TI-KARA(ti=throw,cast,overcome;kara=secret plan,a request for assistance in war)、「援助を・(申し出る)与える(力)」または「(秘策)知恵を・(提示する)つける(力)」

の転訛と解します。

1637ちぎる(契る)

 堅く約束する。男女が将来の変わらぬ愛情を誓う。夫婦の約束をする。男女が肉体関係を結ぶ。夫婦の交わりをする。

 この「ちぎる」は、

  「チ(ン)ギア・ル」、TINGIA-RU(tingia=ti=throw,cast,overcome;ru=shake,agitate,scatter)、「奮って・(男性が女性を)征服する(契る)」(「チ(ン)ギア」のNG音がG音に変化し、語尾のA音が脱落して「チギ」となった)

の転訛と解します。

1638ちくしょう(畜生)・こんちくしょう(こん畜生)

 (人に飼養されて生きているものの意から)禽獣、虫魚などの総称。他人を罵っていう語。人でなし。強く憎んだり羨んだりした時にいう語。こんちくしょう。

 この「ちくしょう」、「こんちくしょう」は、

  「チヒ・ク・チオフ」、TIHI-KU-TIOHU(tihi=summit,top,lie in a heap;ku=silentwearied,exhausted;tiohu=stoop)、「(最高に)たいへん・(消耗して)うちしおれて・(身をかがめる)卑屈になっている奴(畜生)」(「チヒ」のH音が脱落して「チ」と、「チオフ」のH音が脱落して「チオウ」から「ショウ」となった)

  「コネネ・チヒ・ク・チオフ」、KONENE-TIHI-KU-TIOHU(konene=stranger,wanderer,person belonging to a tribe whi has been broken up and scattered;tihi=summit,top,lie in a heap;ku=silentwearied,exhausted;tiohu=stoop)、「変わった・(最高に)たいへん・(消耗して)うちしおれて・(身をかがめる)卑屈になっている奴(畜生)」(「コネネ」の反覆語尾が脱落して「コネ」から「コン」と、「チヒ」のH音が脱落して「チ」と、「チオフ」のH音が脱落して「チオウ」から「ショウ」となった)

の転訛と解します。

1639ちくでん(逐電)

 非常に敏速に行動すること。急ぐこと。逃げ去って行方をくらますこと。出奔。逃走。失踪。かみなり。

 この「ちくでん」は、

  「チヒ・ク・タイタイ・ナホ」、TIHI-KU-TAITAI-NAHO(tihi=summit,top,lie in a heap;ku=silent;tai,taitai=dash,strike,perform certain ceremonies to remove tapu etc.;naho=hasty,quick in speech or action)、「(最高に)ごくごく・静かに・敏速に・突進して(去る)(逐電)」(「チヒ」のH音が脱落して「チ」と、「タイタイ」の反覆語尾が脱落し、AI音がE音に変化して「テ」から「デ」と、「ナホ」のH音が脱落して「ナ」から「ン」となった)

の転訛と解します。

1640ちくわ(竹輪)

 擂り潰した魚肉を細竹に練り付けてゆでるか焼くかして作った練り製品。切り口が竹の輪に似ているところからいうとされる。

 この「ちくわ」は、

  「チ・クク・ワワ」、TI-KUKU-WHAWHA(ti=throw,cast,overcome;kuku=firm,stiff,thickened not fluid or watery;whawha=sheathing petiole,take in the hand,lay hold of)、「(液体でなく)密度の濃い・抜き出した・鞘のようなもの(竹輪)」(「クク」の反覆語尾が脱落して「ク」と、「ワワ」の反覆語尾が脱落して「ワ」となった)

の転訛と解します。

1641ちそう(馳走)

 駆け走ること。走り回ること。馬を駆って走らせること。(世話をするために駆け回る意から)世話をすること。面倒を見ること。(用意のために駆け回る意から)心を込めたもてなし。特に食事のもてなしをすること。また、そのための美味しい食物。ごちそう。

 この「ちそう」は、

  「チ・トフ」、TI-TOHU(ti=throw,cast,overcome;tohu=mark,sign,point out,show,look towards,preserve)、「(もてなしの内容を)見せつけるために・披露すること(馳走)」(「トフ」のH音が脱落して「トウ」から「ソウ」となった)

の転訛と解します。

1642ちち(父)・かぞ(父)・てて(父)

 両親のうち男親。実父・継父・養父の総称。ち。かぞ。てて。キリスト教で、神。新しいものの開祖。先駆者。この「ちち(父)」については、国語篇(その九)の120fatherの項を参照してください。

 この「ちち」、「かぞ」、「てて」は、

  「チヒ・チ」、tihi-ti(tihi=summit,top;ti=throw,overcome)、「(家庭内で)最高の地位に・いる者(父)」(「チヒ」のH音が脱落して「チ」となつた)

  または「チチ」、titi(peg,adorn by sticking feathers into the hair)、「(頭に)羽根飾りをしている者(父)」

  「カ・トイ」、KA-TOI(ka=kanga,kainga=place of abode,lodging,unfortified place of residence,home;toi=tip,summit,finger)、「(家庭の)長(父)」(「トイ」の語尾のI音が脱落して「ト」から「ゾ」となった)

  「テテ」、TETE(young shoot,chief,figurehead of a canoe)、「(家)長(父)」

の転訛と解します。

1643ちち(乳)

 哺乳動物が分娩後に、子を育てるために乳房の乳腺からぶんぴする乳白色不透明の液体。乳汁。乳房。植物の茎や葉に傷をつけたときに出る白色の液汁。銀杏の気根の俗称。茶壺の肩部に着けられた耳。

 この「ちち」は、

  「チ・チ」、TI-TI(ti=throw,cast)、「(乳汁を)迸り・出るもの(乳汁。乳)」または「(乳汁を)迸らせ・出すもの(乳房。乳)」

の転訛と解します。

1644ちちくる(乳繰る)

 男女が忍び逢って情を交わす。男女が人目を忍んで睦み戯れる。ちぇちぇくる。

 この「ちちくる」は、

  「チ・チ・クル」、TI-TI-KURU(ti=throw,cast;kuru=strike with the fist,pound,pelt)、「(乳汁を)迸らせ・出すもの(乳房)を・叩き揉む(乳繰る)」

の転訛と解します。

1645ちちり(松毬)・まつかさ(松毬)・まつぼっくり(松毬)

 松かさ。松ぼっくり。ちちりん。

 この「ちちり」、「まつかさ」、「まつぼっくり」は、

  「チ・チリ」、TI-TIRI(ti=throw,cast;tiri=throw or place one by one,plant root crops,scatter seed)、「(松の木から)落ちて・(種子を)放出するもの(松毬)」

  「マツ・カタ」、MATU-KATA(matu=fat,richness of food,gist;kata=laugh,opening of shellfish)、「(油分が多い)松の・(鱗片が笑うように)開くもの(松毬)」(「カタ」が「カサ」となった)

  「マツ・ポクル」、MATU-POKURU(matu=fat,richness of food,gist;pokuru=?throw)、「(油分が多い)松の・(種子を)撒き散らすもの(松毬)」(「ポクル」が「ボックリ」となった)

の転訛と解します。

1646ちちんぷいぷい

 「ちちんぷいぷい御世(ごよ)の御宝(おたから)」の略。幼児が転んだりぶつけたりして体を痛めたときに、痛む所をさすりながらすかしなだめること。また、そのときに唱える言葉。この「ちちんぷいぷい」については、雑楽篇(その一)の179ちちんぷいぷいの項を参照してください。

 この「ちちんぷいぷい」は、

  「チ・チ(ン)ガ・プイヒ・プイヒ」、TI-TINGA-PUIHI-PUIHI(ti=tingle;tinga=likely;puihi=flee,fly)、「(ひりひりと、またはずきずきとする)痛み・に似たもの(不快感)は・飛んで行け・飛んで無くなれ」(「チ(ン)ガ」のNG音がN音に変化して「チナ」から「チン」と、「プイヒ」のH音が脱落して「プイイ」から「プイ」となった)

の転訛と解します。

1647ちっとも

 「ちと(些)」を強めた言い方。少しでも。いささかでも。しばらくでも。(打ち消し表現を伴って)少しも(…しない)。全く(…しない)。

 この「ちっとも」は、

  「チト・マウ」、TITO-MAU(tito=compose,do anything without previous practice(whakatito=deny,disbelieve);mau,maumau=waste,to no purpose)、「何の意味もないものとして・否定する(少しも・…しない)(ちっとも)」(「チト」が「チット」と、「マウ」のAU音がO音に変化して「モ」となった)

の転訛と解します。

1648ちなみに(因みに)

 前の事柄に関連して、説明や補足を付け加えることを示す。それにつけて。それに関連して。ついでに。

 この「ちなみに」は、

  「チナナ・ミネ」、TINANA-MINE(tinana=body,trunk,self,reality,actually;mine=be assembled)、「(本体)それに・付加して(因みに)」(「チナナ」の反覆語尾が脱落して「チナ」と、「ミネ」が「ミニ」となった)

  または「チナナ・ミ(ン)ギ」、TINANA-MINGI(tinana=body,trunk,self,reality,actually;mingi=curly,twisted of grain timber or hair)、「(本体)それに・(木の木目や髪の毛の縮れのような)細かい変化(を付加して)(因みに)」(「チナナ」の反覆語尾が脱落して「チナ」と、「ミ(ン)ギ」のNG音がN音に変化して「ミニ」となった)

の転訛と解します。

1649ちのり(千入。千箭)

 (「のり」は「篦入(のいり)」の変化した語とする説がある)千本の矢が納められていること。また、矢が数多く差し入れてあること。また、そのもの。

 この「ちのり」は、

  「チノ・リ」、TINO-RI(tino=essentiality,self,reality,exact,quite,very;ri=screen,protect,bind)、「本質的に・(背中を)防護するためのもの(千入。千箭)」

の転訛と解します。

1650ちび

 @小さいもの。小さい体のもの。年の幼い者。子供。背丈の低い人。A(他の語の上に付けて)すり切れてへったもの。ちびたもの。

 この「ちび」は、

  @「チヒ・ピピ」、TIHI-PIPI(tihi=summit,top,lie in a heap;pipi=half-grown,not matured,yielding,the young fighting men of an army)、「非常に・(幼い)小さいもの(ちび)」(「チヒ」のH音が脱落して「チ」と、「ピピ」の反覆語尾が脱落して「ピ」から「ビ」となった)

  A「チピ」、TIPI(pare,slice,dress the surface of timber with an adze,go quickly or smoothly)、「(剥ぎ取る)すり減らす(ちび)」(「チピ」が「チビ」となった)

の転訛と解します。

1651ちまき(粽)

 @笹や真菰の葉で、もち米・うるち米の粉を巻き、長円錐形に固め、藺草で巻いて蒸した餅。A柱の上部、あるいは上下が丸みをもつてすぼまった部分。唐様建築の手法。

 この「ちまき」は、

  @「チ・マキキ」、TI-MAKIKI(ti=throw,cast,overcome;makiki=stiff,standing straight out,obstinate)、「(ササやマコモの葉で)しっかりと包み・(圧倒する)蒸し上げたもの(粽)」(「マキキ」の反覆語尾が脱落して「マキ」となった)

  A「チ・マキ」、TI-MAKI(ti=throw,cast,overcome;maki=invalid,sick person,sore)、「(病人のような)弱々しい・感じを与える(建築手法。粽(形))」

の転訛と解します。

1652ちまた(巷)

 @道がいくつかに分かれるところ。また、その道。分岐点。辻。(分岐点から転じて)物事の分かれ目。A町の中の道路。また、賑やかな所。まちなか。転じて、世の中。世間。ある物事が行われているところ。その場所。

 この「ちまた」は、

  「チ・マタタ」、TI-MATATA(ti=throw,cast,overcome;matata=be split,gape,open,chink,crevice)、@「()()」またはA「()()」(「マタタ」の反覆語尾が脱落して「マタ」となった)

の転訛と解します。

1653ちゃかす(茶化す)

 ごまかす。ちょろまかす。いっぱいくわせる。冗談のようにしてしまう。はぐらかす。からかう。愚弄する。

 この「ちゃかす」は、

  「チ・アカ・ツ」、TI-AKA-TU(ti=throw,cast,overcome;aka=clean off,scrape away;tu=stand,settle,fight with,energetic)、「懸命に・何もなかったかのように・してしまう(茶化す)()」(「チ・アカ」が「チャカ」と、「ツ」が「ス」となった)

の転訛と解します。

1654ちゃきちゃき

 @血統に混じり気のないこと。生粋であること。A仲間の中ですぐれていて注目されること。また、そのさま。有望であるさま。B(「江戸っ子のちゃきちゃき」からの転用で)江戸っ子のように勇み肌で、はきはきしているさま。

 この「ちゃきちゃき」は、

  @「チヒ・アキ・チヒ・アキ」、TIHI-AKI-TIHI-AKI(tihi=summit,top,lie in a heap;aki=boy)、「最高の(血統の)・子孫(のなかでも)・最高の(血統の)・子孫であること(ちゃきちゃき)」(「チヒ」のh音が脱落して「チ」となり、「チ・アキ」から「チャキ」となった)

  A「チアキ・チアキ」、TIAKI-TIAKI(tiaki=guard,keep,watch for,wait for)、「注目に・注目の的とされるもの(ちゃきちゃき)」(「チアキ」が「チャキ」となった)

  B「チ・アキ・チ・アキ」、TI-AKI-TI-AKI(ti=throw,cast,overcome;aki=dash,beat,pound,abut on)、「敏捷に・飛びかかり・敏捷に・対応すること(ちゃきちゃき)」(「チ・アキ」が「チャキ」となった)

の転訛と解します。

1656ちゃばん(茶番)

 客のために茶の用意や給仕などをする者。茶を煎じて出す役。「茶番狂言」の略。底のみえすいた、ふざけた振る舞い。真実味のない、馬鹿馬鹿しいできごと。茶番劇。

 この「ちゃばん」は、

  「チ・アパノ」、TI-APANO(ti=throw,cast,overcome;apano=apa ano=if(apa=not as if;ano=as,as though,as it were))、「全く真実らしくない・振る舞いをしてみせる(茶番)」(「チ・アパノ」が「チャバン」となった)

の転訛と解します。

1657ちゃぶだい(卓袱台)

 短い四足のある食事用の台。足の低い食卓。飯台。

 この「ちゃぶだい」は、

  「チ・アプ・タヰ」、TI-APU-TAWHI(ti=throw,cast,overcome;apu=move or be in a flock or crowd,heap upon,spread over;tawhi=food)、「食物を・(その上に)たくさん盛り上げて・(多くの人に)供するもの(卓袱台)」(「チ・アプ」が「チャブ」と、「タヰ」のWH音が脱落して「タイ」から「ダイ」となった)

の転訛と解します。

1658ちゃり(茶利)

滑稽な文句または動作。滑稽。おどけ。浄瑠璃や歌舞伎で、滑稽な台詞や演技のある段や場面。その台詞や演技。「ちゃりやく(茶利役)」の略。「ちゃりがしら(茶利頭)」の略。

 この「ちゃり」は、

  「チハハ・アリ」、TIHAHA-ARI(tihaha=rave,act like a madman;ari=clear,visible,appearance,excuse)、「(気が)狂ったように・見える(言動や動作。茶利)」(「チハハ」の反覆語尾およびH音が脱落して「チア」となり、その語尾のA音と「アリ」の語頭のA音が連結して「チアリ」から「チャリ」となった)

の転訛と解します。

1658ちゃりんこ(子供の掏摸。自転車)

 @子供の掏摸(盗人仲間の隠語)。A自転車の俗称(「ママチャリ」など)。

 この「ちゃりんこ」は、

  @「チア・リ(ン)ガ・コ」、TIA-RINGA-KO(tia=stick in etc.,adorn by sticking in feathers,take a vigorous stroke in paddling;ringa=hand,arm;ko=addressing in girles and males)、「手を・活発に動かす・子供(子供の掏摸)」(「チア」が「チャ」と、「リ(ン)ガ」のNG音がN音に変化して「リナ」から「リン」となった)

  A「チア・リノ・カウ」、TIA-RINO-KAU(tia=stick in etc.,adorn by sticking in feathers,take a vigorous stroke in paddling;rino=twisted cord of two or more strands,swirl,twist,circle;kau=swim,wade)、「車輪を・勢い良く回して・動き回るもの(自転車)」(「チア」が「チャ」と、「リノ」が「リン」と、「カウ」のAU音がO音に変化して「コ」となった)

の転訛と解します。

1659ちゃるめら(南蛮笛)

 (ポルトガル語 charamela の転訛した語とする説がある)オーボエ属の古典的管楽器の一つ。真鍮製で、一六世紀ポルトガルやスペインから日本に伝来した。南蛮笛。唐人笛。その楽器に由来する管楽器。ダブルリードを持つ簡単な構造の縦笛で、尖端は朝顔状に開く。現在では、屋台の中華そば屋が使用する。

 この「ちゃるめら」は、

  「チ・アル・メラメラ」、TI-ARU-MELAMELA(ti=throw,cast;aru=follow,pursue;(Hawaii)melamela=lazy,indolent((Maori)meramera=prepared by steeping in water as certain foods were))、「気だるい響きが・連続して・流れる(南蛮笛)」(「チ・アル」が「チャル」と、「メラメラ」の反覆語尾が脱落して「メラ」となった)

の転訛と解します。

1660ちゃわん(茶碗)

 茶を入れ、また、飯を盛る器。飲食に用いる陶磁器。釉をかけて焼いた陶器の総称。

 この「ちゃわん」は、

  「チ・アワ(ン)ガ」、TI-AWANGA(ti=throw,cast;awanga=south-west wind,variegated,variety of taro)、「(種類・形状・大きさ等が)変化に富む・(ように送り出す)製作されたもの(茶碗)」(「チ・アワ(ン)ガ」のNG音がN音に変化して「チャワナ」から「チャワン」となった)

の転訛と解します。

1661ちゃん(父)

 父を呼ぶ語。江戸時代から明治初期にかけて庶民の間で用いられた。茶屋や船舶の亭主などを呼ぶ語。

 この「ちゃん」は、

  「チア・ナ」、TIA-NA(tia=stick in etc.,adorn by stiCking in feathers;na=used after words and clauses to indicate position near or connection with the person addressed)、「(頭に)注ェを飾っている・人(父)」(「チア・ナ」が「チャン」となった)

  または「チア(ン)ガ」、TIANGA(mat to lie on)、「座布団に(悠然と)すわっている人(亭主)」(「チア(ン)ガ」のNG音がN音に変化して「チアナ」から「チャン」となった)

の転訛と解します。

1662ちゃんこなべ(ちゃんこ鍋)

 魚介・鶏肉などのぶつ切りと季節の野菜を煮立てた鍋料理。特に決まった調理方法はない。相撲社会の独特の料理として、朝稽古の後の朝昼兼用の食事の副食物とされる。この「なべ(鍋)」については、雑楽篇(その二)の1040釜(かま)の項の「鍋(なべ)」を参照してください。

 この「ちゃんこなべ」は、

  「チ・アナ・カウ・ナ・ハパイ」、TI-ANA-KAU-NA-HAPAI(ti=throw,cast;ana=denoting continuance of action or state;kau=alone,bare,only;na=by,belonging to,indicating parentage or descent;hapai=lift up,carry)、「ただ単に・(鍋に)放り込んで・煮る・(釜のように竈に固定せず)持ち運ぶ・(種類の調理器具)鍋(の料理)(ちゃんこ鍋)」(「チ・アナ」が「チャン」と、「カウ」のAU音がO音に変化して「コ」と、「ハパイ」の語頭のH音が脱落したA音と「ナ」のA音が連結し、AI音がE音に変化して「ナペ」から「ナベ」となった)

の転訛と解します。

1663ちゃんちゃらおかしい

 笑止千万である。問題にもならない。

 この「ちゃんちゃらおかしい」は、

  「チ・アナ・チ・アラ・アウカチ」、TI-ANA-TI-ARA-AUKATI(ti=throw,cast,overcome;ana=denoting continuance of action or state;ara=way,path,rise,awake,raise;aukati=stop one's way,prevent one from passing,line which one may not pass)、「道(の真ん中)に・(大の字に)身を横たえ・その状況を・続けて・(人々の)通行を阻止する(という子供じみた行為。ちゃんちゃらおかしい)」(「チ・アナ」が「チャン」と、「チ・アラ」が「チャラ」と、「アウカチ」のAU音がO音に変化して「オカチ」から「オカシイ」となった)

の転訛と解します。

1664ちゃんぽん

 鉦と鼓、または三味線と鼓などを合奏すること。また、それをする者。その音のするさま。はっきり異なる二種以上のものを混ぜこぜにすること。また、そのさま。交互にすること。かわるがわることなるさま。双方が相等しいこと。相殺すること。また、そのさま。肉、野菜などいろいろの材料を一緒に入れて煮込んだ中華そば。長崎ちゃんぽんが名高い。

 この「ちゃんぽん」は、

  「チ・アナ・ポナ」、TI-ANA-PONA(ti=throw,cast,overcome;ana=denoting continuance of action or state;pona=knot,joint in the arm or leg,anything tied up into a compact parcel,tie in a knot)、「(二つ以上のものが紐などで)縛られて・まとめられて・いるもの(ちゃんぽん)」(「チ・アナ」が「チャン」と、「ポナ」が「ポン」となった)

の転訛と解します。

1665ちゅうちゅうたこかいな

 子供がおはじきなどの数を口で唱えながら二つずつ数えるときに二、四、六、八、一〇という代わりに用いる語。

 この「ちゅう・ちゅう・たこ・かい・な」は、

  「チウ・チウ・タカウ・カイ(ン)ガ」、TIU-TIU-TAKAU-KAINGA(tiu=soar,swing,sway to and fro,swift,restless;takau,takaukau=in the expression patu takaukau,a method of pounding fern root;kainga=field of operation,scope of work(kai=fulfil its proper function,have full play))、「あっちへ・こっちへ・調子をとって・数を・数えよう(ちゅうちゅうたこかいな)」(「チウ」が「チュウ」と、「タカウ」のAU音がO音に変化して「タコ」と、「カイ(ン)ガ」のNG音がN音に変化して「カイナ」となった)

の転訛と解します。

1666ちゆうもん(注文)

 注進の文書。注進状。ある事柄についての要件を列挙した文書。記録。(〜する)あつらえること。品種・数量・形式などを指定して製作・送付・購入などを依頼すること。また、その依頼。あつらえるものの製作や送付を依頼する場合、あらかじめ申し送る希望。また、その文書。こうしたい、ああしたいと望むこと。願望。期待。特に注意すべき事柄。特徴。

 この「ちゅうもん」は、

  「チウ・モナ」、TIU-MONA(tiu=soar,swing,sway to and fro,swift,restless;mona,momona=fat,rich,fertilwappetising,in good condition,having desire or appetite)、「あれこれと書き連ねる・たくさんの希望(注文)」(「チウ」が「チュウ」と、「モナ」が「モン」となった)

の転訛と解します。

1667ちょうけし(帳消し)

 帳面に記載された事項が、その記載の意味や価値を失い、棒線で消されること。特に、金銭の貸借関係が皆済やその他の事情によって消滅すること。債務がなくなること。棒引き。江戸時代の戸籍、人別帳・欠落帳・勘当帳などの記載を抹消すること。その行動、感情、状況などによって、それ以前の行動、感情、状況などの価値が消滅すること。差し引いて残りがなくなること。

 この「ちょうけし」は、

  「チホイ・ケア・チ」、TIHOI-KEA-TI(tihoi=divergent,vagrant,refractry,disobedient;kei=false,lie;ti=throw,cast,overcome)、「(強情なもの)既に確定した(法律事項・金銭貸借関係などの)事項を・嘘に・する(無かったことにする。帳消し)」(「チホイ」のH音および語尾のI音が脱落して「チオ」から「チョウ」と、「ケア」の語尾のA音が脱落して「ケ」と、「チ」が「シ」となった)

の転訛と解します。

1668ちょうし(調子)

 (音楽用語)音律の高低。音階の主音の高さによる種類。舞楽や管弦の最初に奏する一種の曲。琵琶・箏・三味線などの調弦法のこと。(音声表現や物事の状態のぐあい)言葉や声の言い回し。音声による表現のぐあい。語調。口調。語呂。物事の進む勢い。勢いに乗ること。はずみ。身体・考え・気分などのぐあい。状態。気持ち。きげん。ある場面、情況などを支配している雰囲気。人の言動のほか、絵画・写真などの場面についてもいう。相場の情勢。

 この「ちょうし」は、

  「チヒ・オチ」、TIHI-OTI(tihi=summit,top,lie in a heap;oti=finished,gone or come for good)、「(物事の状態や進行が)たいへん・良い具合に進行する(調子)」({「チヒ」のH音が脱落して「チイ」となり、「チイ・オチ」が「チヨチ」から「チョウシ」となった)

の転訛と解します。

1669ちょうじゃ(長者)

 (梵語 s'resthin の訳語。団体や組合の長である富豪、または地位や徳行の高い年長者の意)高徳者。また、おだやかな人。重厚な人。金持。富豪。金満家。福徳のすぐれた人。恵まれた幸福な人。氏族の長。一門一族の統率者。氏の長者。年上の人。身分の高い人。(共同体や芸道などの最高の地位の称号)首長。長老。主催者。座主。など。

 この「ちょうじゃ」は、

  「チヒ・オチ・イア」、TIHI-OTI-IA(tihi=summit,top,lie in a heap;oti=finished,gone or come for good;ia=indeed)、「最高の地位にある・実に・良い具合に統率する(者。長者)」({「チヒ」のH音が脱落して「チイ」となり、「チイ・オチ」が「チヨチ」から「チョウジ」と、「イア」が「ヤ」から「ャ」となった)

の転訛と解します。

1670ちょうず(手水)

 (「手水(てみず)」の変化した語とする説がある)手や顔を洗い清めるための水。また、洗い清めること。特に社寺の参詣の前に手ゃ口を清めること。(用便の後手を洗うところから)小便をすること。用便に行くこと。手水場の略。

 この「ちょうず」は、

  「チオイ・ツ」、TIOI-TU(tioi=shake,sway from side to side;tu=fight with,energetic)、「(手を水で洗った後)激しく・振って水を切る(手水)」(「チオイ」の語尾のI音が脱落して「チョ」から「チョウ」と、「ツ」が「ズ」となった)

の転訛と解します。

1671ちょうだい(頂戴)

 敬意を表して、いただき物などを目より高く捧げ、頭を低くさげること。恭しく捧げること。貰うことの謙譲語。賜ること。いただくこと。特に、飲食物をいただくこと。物を与えてくれること。また、売ってくれること。あることを親しみをこめて促す語。ください。

 この「ちょうだい」は、

  「チオフ・タイ」、TIOHU-TAI(tiohu=stoop;tai,taitai=dash,knock,perform certain ceremonies to remove tapu etc.,firstfruits of birds or fish etc.)、「(季節の初物などの)いただき物を・頭を下げて頂く(頂戴)」(「チオフ」のH音が脱落して「チオウ」から「チョウ」と、「タイ」が「ダイ」となった)

の転訛と解します。

1672ちょうちちょうちあわわ

 幼児をあやす言葉。「ちょうちちょうち」に続けて、丸く空けた自分の口を手のひらでたたくようにして「あわわ」ということ。そのあと、「おつむてんてん」などと続ける。

 この「ちょうちちょうちあわわ」は、

  「チオ・チ・チオ・チ・アワハウ」、TIO-TI-TIO-TI-AWAHAU(tio=cry,call;ti=throw,cast;awahau=I,me)、「叫び声を・出す・叫び声を・出す・私が(ちょうちちょうちあわわ)」(「チオ」が「チョウ」と、「アワハウ」の語尾のU音が脱落して「アワハ」から「アワワ」となった)

の転訛と解します。

1673ちょうちん(提灯)

 (「提(ちょう)灯(ちん)」、「吊(ちょう)灯(ちん)」はいずれも唐宋音)蝋燭をともすための器具の一種。はじめは木枠に紙を貼ってぶらさげる箱提灯のようなもので、次いで籠(かご)に紙を貼った携行できる籠提灯となり、のち天正・文禄の頃(一五七三〜九六)に折りたたみできるものとなったという。

 この「ちょうちん」は、

  「チホ・チナナ」、TIHO-TINANA(tiho=flaccid,soft;tinana=body,trunk,actual)、「胴体が・(だらんとして柔らかい)伸縮するもの(提灯)」(「チホ」のH音が脱落して「チオ」から「チョウ」と、「チナナ」の反覆語尾が脱落して「チナ」から「チン」となった)

の転訛と解します。

1674ちょうど(丁度)

 時刻や物の分量が、ある基準に過不足なく一致することを表す語。きっかり。ぴったり。時刻や物の分量、状態などが、予期、期待、目的に合致したことを表す語。折良く。うまく。具合よく。特に、酒の分量が杯などにいっぱいで豊富なさまを表す語。たっぷり。なみなみと。一つの事物のありさまが、他の事物のありさまと、ほとんど同一であると認められる時のなぞらえの気持ちを表す語。あたかも。まるで。

 この「ちょうど」は、

  「チ・ホウト」、TI-HOUTO(ti=throw,cast;houto=the ripe fruit of poporo(a fruit tree of Hawaiki),used as bait for snaring tui(parson bird))、「(黒色の)牧師鳥を捕らえるわなの餌に(黒色の)熟したポポロの果実・が使われる(という譬え。丁度)」(「ホウト」のH音が脱落して「オウト」となり、「チ・オウト」が「チョウド」となった)

の転訛と解します。

1675ちょうな(手斧)

 大工道具の一つ。斧でざっと削った材木を、さらに平らにするために用いる鍬形の刃物。

 この「ちょうな」は、

  「チ・アウ(ン)ガ」、TI-AUNGA(ti=throw,cast,overcome;aunga=not including)、「(丸木舟の胴体を)くりぬいて・仕上げるもの(工具。手斧)」(「アウ(ン)ガ」のAU音がOU音に、NG音がN音に変化して「オウナ」となり、「チ・オウナ」から「チョウナ」となった)

の転訛と解します。

1676ちょうはん(丁半)

 賽の目の丁と半。偶数と奇数。二個の賽の目の合計が丁か半かを勝負する賭博。数の五をいう語。硬貨ほ投げ上げ、落ちた際に表(丁)か裏(半)かを当てる賭博。

 この「ちょうはん」は、

  「チ・アウ・ハ(ン)ガハ(ン)ガ」、TI-AU-HANGAHANGA(ti=throw,cast;au=firm,intense;hangahanga=frivolous,of no account,short,low)、「(堅固な)まとまっていることを・示している(二で割れる数字の偶数と)・(軽薄な)半端な(二で割れない数字の奇数と)(丁半)」(「アウ」のAU音がOU音に変化して「オウ」となり、「チ・オウ」から「チョウ」と、「ハ(ン)ガハ(ン)ガ」の反覆語尾が脱落し、NG音がN音に変化して「ハナ」かな「ハン」となった)

の転訛と解します。

1677ちょうもく(鳥目)

 銭(ぜに)の異称。また、一般に金銭の異称。江戸時代までの銭貨は円形方孔のもので、鳥の目に似ることからの名とする説がある。

 この「ちょうもく」は、

  「チオフ・モク」、TIOHU-MOKU(tiohu=stoop;moku=few,little)、「身を屈して(手にする)・僅かな銭(鳥目)」(「チオフ」のH音が脱落して「チオウ」から「チョウ」となった)

の転訛と解します。

1678ちよがみ(千代紙)

 花や図柄などさまざまな模様を色刷りにした和紙。近世から現在まで小箱の表張りや紙人形の衣装などに用い、主に婦女子に賞用された。初めに京都で鶴亀・松竹梅などを摺ったので千代を祝う意でなづけられたとも、江戸千代田城の大奥で使われたのが始まりとも言われる。この「かみ(紙)」については、雑楽篇(その二)の1051ふで(筆)の項の「かみ(紙)」を参照してください。

 この「ちよがみ」は、

  「チ・アウ・カカ・アミ」、TI-AU-KAKA-AMI(ti=throw,cast;au=firm,intense;kaka=fibre,single hair,stalk,line;ami=gather,collect)、「(紙の全面に)びっしりと・(模様を)摺ってある・繊維(や植物の稈)を・集めた(漉いたもの。紙)」(「アウ」のAU音がO音に変化して「オ」となり、「チ・オ」から「チヨ」と、「カカ」の反復語尾が脱落して「カ」となったその語尾のA音と「アミ」の語頭のA音が連結して「カミ」が濁音化して「ガミ」となった)

の転訛と解します。

1679ちょきぶね(猪牙船)

 明暦三年の江戸大火以後、江戸市中の河川などで通船・猟船・遊船にひろく使われた軽快な一、二丁櫓の小船。瀬戸内方面の駒和紙の廻船で、小は十石積みから大は百石積み以上におよび、西国筋から薪・炭その他商売物を積んで大坂・灘界隈に運送した船。この「ちょきぶね」については、雑楽篇(その一)の1009ちょきぶね(猪牙船)の項を参照してください。

 この「ちょきぶね」は、

  「チ・ハウ・キ・フヌ」、TI-HAU-KI-HUNU(ti=throw,cast;hau=eager,brisk,seek,vitality of man;ki=full,very;hunu,huhunu=double canoe)、「男らしさを・十分に見せつけるように・活発に動き回る・(大きな)船(猪牙船)」(「チ」と、「ハウ」のH音が脱落しAU音がO音に変化した「オ」が連結して「チョ」と、「フヌ」が「フネ」となり、濁音化して「ブネ」となった)

の転訛と解します。

1680ちょこ(猪口)

 (「ちょく(猪口)」の変化した語とする説がある)酒を注ぎ入れて飲む陶製や金属製の小さな器。燗徳利と対で用いる。「ちょこざい(猪口才)」の略。

 この「ちょこ」は、

  「チオコ」、TIOKO(assemble)、「(燗徳利と)対(つい)で用いるもの(猪口)」(「チオコ」が「チョコ」となった)

の転訛と解します。

1681ちょこざい(猪口才)

 ちょっとした才能・才気があって生意気なこと。小賢しいこと。また、そのさまやその人。

 この「ちょこざい」は、

  「チオコ・タイタイ」、TIOKO-TAITAI(tioko=assemble;tai,taitai=dash,strike,knock,perform certain ceremonies to remove tapu etc.)、「(ちょっとしたまじないなどをやってのける)少々の才気を・身に備えている(こと。人。猪口才)」(「チオコ」が「チョコ」と、「タイタイ」の反覆語尾が脱落して「タイ」が「ザイ」となった)

の転訛と解します。

1682ちょちちょち

 1672ちょうちちょうちあわわの「ちょうちちょうち」が変化した語。

 この「ちょちちょち」は、

  「チオ・チ・チオ・チ」、TIO-TI-TIO-TI(tio=cry,call;ti=throw,cast)、「叫び声を・出す・叫び声を・出す(ちょちちょち)」(「チオ」が「チョ」となった)

の転訛と解します。

1683ちょぼ(点)

 しるしに打つ点。ぼち。ほし。(浄瑠璃太夫の語る部分にしるしの点を打つところから)歌舞伎で地の文を義太夫節で語ること。

 この「ちょぼ」は、

   「チ・アウ・ポ」、TI-AU-PO(ti=throw,cast;au=firm,intense;po,popo=pat with the hand,anoint)、「小さな(圧縮した)・(聖油を滴らす)点を・打つ(ちょぼ)」(「アウ」のAU音がO音に変化して「オ」と、「チ・オ」が「チョ」と、「ポ」が「ボ」となった)

の転訛と解します。

1684ちょんぼ(失敗)

 いいかげんなことをすること。間違いをすること。この「ちょんぼ」については、国語篇(その十五)の107すくない(少ない)の項の「チョンボ」を参照してください。

 この「ちょんぼ」は、

  「チ・オニ・パウ」、TI-ONI-PAU(ti=throw,cast,overcome;oni=move,wriggle;pau=consumed,exhausted)、「ただ・徒労して・消耗してしまった(失敗)」(「チ・オニ」が「チョン」と、「パウ」のAU音がO音に変化して「ポ」から「ボ」となった)

の転訛と解します。

1685ちり(塵)

 粉末状や粒子状になって飛び散るもの。砕けて飛び散るもの。ほこり。小さなごみ。あくた。値打ちのないもの。取るに足りないもの。汚れ。穢れ。くもり。汚点。浄土に対して人の住む世界を汚れたものとして言う語。俗界。塵界。塵俗。極めてわずかな物事のたとえ。沢木。乱れ。など。この「ちり(塵)」については、国語篇(その九)の117dustの項の「(1)ちり」を参照してください。

 この「ちり」は、

  「チ・イリ」、ti-iri(ti=throw,cast;iri=be elevated on something,hang)、「投げ捨てられて・(ものの)上につもるもの(塵)」(「チ」のI音と「イリ」の語頭のI音が連結して「チリ」となった)

の転訛と解します。

1686ちりめん(縮緬)

 絹織物の一種。布面に細かなしじら縮みがある。経(たていと)によりの強い生糸、緯(よこいと)によりのない生糸を使って平織りにし、ソーダをまぜた石けん液で長時間煮沸して縮ませ、水洗いして糊気を除き、乾燥させて仕上げたもの。「ちりめんじわ」の略。この「ちりめん(縮緬)」については、雑楽篇(その一)の362あや(綾)の項の「ちりめん(縮緬)」を参照してください。

 この「ちりめん」は、

  「チリ・メノ」、TIRI-MENE(tiri=throw or place one by one,scatter;mene=show wrinkles,contort the face)、「(表面に)皺が・一面にある(織物。縮緬)」(「メノ」が「メン」となった)

の転訛と解します。

1687ちん(狆)

 犬の一品種。体重二、三キログラムの小型種。額が広く、眼と鼻が横に一直線に並ぶ。絹糸状の長毛で覆われる。奈良時代に中国から輸入され、江戸時代に盛んに飼育され、日本の特産種として輸出された。

 この「ちん」は、

  「チナ」、TINA(fixed,fast,firm,satisfied,exhausted)、「(小さくて)可愛い(犬。狆)」(「チナ」が「チン」となった)

の転訛と解します。

1688ちんけ

 (さいころ賭博で一をいうところから)程度の低いさま。劣っているさま。

 この「ちんけ」は、

  「チナ・ケ」、TINA-KE(tina=fixed,fast,firm,satisfied,exhausted;ke=different,strange,extraordinary)、「異常に・(小さい)衰えている(ちんけ)」(「チナ」が「チン」となった)

の転訛と解します。

1689ちんじ(珍事。椿事)

 珍しい出来事。めったにないこと。また、困ったこと。思いがけない重大な出来事。変事。一大事。

 この「ちんじ」は、

  「チ(ン)ゴ(ン)ゴ・チヒ」、TINGONGO-TIHI(tingongo=cause to shrink,shrivel,wasted;tihi=summit,top,lie in a heap)、「最高に・震え上がること(珍事。椿事)」(「チ(ン)ゴ(ン)ゴ」の反覆語尾が脱落し、NG音がN音に変化して「チノ」から「チン」と、「チヒ」のH音が脱落して「チ」から「ジ」となった)

の転訛と解します。

1690ちんぴら

 1人前でもないのに大人ぶったり、大物を気取ったりする者やそのさまを嘲って言う語。転じて、不良少年少女ややくざの下っ端をいう。

 この「ちんぴら」は、

  「チナ・ピラウ」、TINA-PIRAU(tina=fixed,fast,firm,satisfied,exhausted;pirau=rotten,gone out,pus,decay)、「小さくて・(性根の)腐った奴(ちんぴら)」(「チナ」が「チン」と、「ピラウ」の語尾のU音が脱落して「ピラ」となった)

の転訛と解します。

1691ちんぷんかんぷん(珍文漢文)

 (儒者の用いた漢語を冷やかして言ったところからとも、外国人の言葉の口真似からともいう)何を言っているか分からない言葉やそれを話す人。わけのわからないこと。また、そのさま。ちんぷんかん。

 この「ちんぷんかんぷん」は、

  「チネイ・プナ・カ(ン)ガ・プナ」、TINEI-PUNA-KANGA-PUNA(tinei,tineinei=unsettled,confused,disordered;puna=spring of water,well up,flow;kanga=curse,abuse,execrate)、「乱雑な・(言葉が)流れる・呪(のろ)いをかけるような・(言葉が)流れる(ちんぷんかんぷん)」(「チネイ」の語尾のI音が脱落して「チネ」から「チン」と、「プナ」が「プン」と、「カ(ン)ガ」のNG音がN音に変化して「カナ」から「カン」となった)

の転訛と解します。

「ツ」

1692つい

 @時間、距離、数量などが、ほんの僅かであるさまを表す語。すぐ。じきに。簡単に。ちょっと。「ついさっき」、「つい鼻の先」など。A意図しないでそうなってしまうさま。不本意ながらその動作をしてしまうさまを表す語。うっかり。思わず知らず。何の気なしに。

 この「つい」は、

  @「ツ・イ」、TU-I(tu=stand,settle;i=beside)、「(すぐ)そばに・ある(時間、距離、数量などが極めて僅かだ)(つい)」

  A「ツヒ」、TUHI(conjure,invoke with proper ceremonies)、「魔法にかけられたように(思わず知らず)(つい)」(「ツヒ」のH音が脱落して「ツイ」となった)

の転訛と解します。

1693ついじ(築地)

 (「ついひじ(築泥)」の変化した語とする説がある)土で造った垣根。両側に板を立て、内に土を詰め、突き固めて造った塀。土塀。築地塀。築垣。築地垣。(大規模な築地塀を巡らしているところから)御所。または、堂上方・公卿の邸宅。また、公卿、堂上方。

 この「ついじ」は、

  「ツイツイ・ヒヒ・チヒ」、TUITUI-HIHI-TIHI(tuitui=lace,fasten up,render inaccessible,hurt;hihi=pull up,draw up;tihi=summit,top,lie in a heap)、「近付きがたいもの(建造物。塀)が・高く・造られているもの(築地)」(「ツイツイ」の反覆語尾が脱落して「ツイ」と、「ヒヒ」の反覆語尾およびH音が脱落して「イ」となり、「チイ・イ」が「チイ」と、「チヒ」のH音が脱落して「チ」から「ジ」となった)

の転訛と解します。

1694ついたち(朔日)

 (「つきたち(月立ち)」の変化した語とする説がある)月の初め頃。月の上旬。初旬。月の第一の日。ついたち。特に正月の第一日。元日。この「ついたち(朔日)」については、雑楽篇(その一)の188ついたち(朔日)の項を参照してください。

 この「ついたち」は、

   「ツヒ・タ・アチ」、TUHI-TA-ATI(tuhi=delineate,write,point at,indicate by pointing;ta=dash,beat,lay;ati=beginning)、「(月の満ち欠けの)始まりに・位置する・ことを示す(日の呼称。朔日)」(「ツヒ」のH音が脱落して「ツイ」と、「タ」のA音と「アチ」の語頭のA音が連結して「タチ」となった)

の転訛と解します。

1695ついで(次で。序で)

 @順序。順番。次第。跡継ぎ。後継者。

 Aあることを行うのに丁度良い機会。また、あることを行っているとき、それと一緒に他のことを行うこと。ついでに。

 この「ついで」は、

  @「ツイ・タエ」、TUI-TAE(tui=pierce,thread on a string,lace,sew;tae=arrive,reach,extend to,proceed to)、「(事柄の)流れが・(進む)順にあるもの(次いで)」(「タエ」のAE音がE音に変化して「デ」となった)

  A「ツイ・タイ」、TUI-TAI(tui=pierce,thread on a string,lace,sew;tai=the other side)、「(事柄の)流れと・全く異なった場面のもの(序で)」(「タイ」のAI音がE音に変化して「デ」となった)

の転訛と解します。

1696ついに(遂に)

 @一つの行為や状態が、ずっと最後まで持続するさまを示す。どこまでも。いつまでも。最後まで。A行為や状態が、最終的に実現するさまを示す。最後に。とうとう。結局。B(下に打ち消しを伴って)一つの行為や状態を、今まで経験したことがないと、否定的に顧みる気持ちを表す。いまだかつて。まだ一度も。ついぞ。この「ついに(遂に)」については、国語篇(その十五)の132ついに(遂に)の項を参照してください。

 この「ついに」は、

  @、B「ツ・イ・ニヒ」、TU-I-NIHI(tu=stand,settle;i=at,in,by,in the time of,at the time of,whilist,during;nihi=move stealthily)、「そっと・ずっと・(同じ状態を)続けた(遂に)(ついに)」(「ニヒ」のH音が脱落して「ニ」となった)

  A「ツヒ・ニヒ」、TUHI-NIHI(tuhi=conjure,invoke with proper ceremonies;nihi=move stealthily)、「(最後の手段として)秘密裡に・魔法を行った(ついに)」(「ツヒ」のH音が脱落して「ツイ」と、「ニヒ」のH音が脱落して「ニ」となった)

の転訛と解します。

1697ついばむ(啄む)

 (「つきはむ(突き食む)」の変化した語とする説がある)鳥がくちばしで物をつついて食う。つつき食べる。

 この「ついばむ」は、

  「ツイ・パハ・ム」、TUI-PAHA-MU(tui=pierce,thread on a string,lace,sew,hurt;paha=arrive suddenly,attack;mu=silent)、「黙って・急に・つつき傷つける(啄む)」(「パハ」のH音が脱落して「パ」から「バ」となった)

の転訛と解します。

1698ついり(梅雨入り)

 (「つゆいり」の変化した語とする説がある)つゆになること。入梅。梅雨。この「ついり(梅雨)」については、国語篇(その十五)の140つゆ(梅雨)の項の「ついり」を参照してください。

 この「ついり」は、

  「ツ・ウイリ」、TU-WIRI(tu=stand,settle,fight with,energetic;wiri=flock,shoal of eels etc.)、「精力的に(ひっきりなしに)・(群れている)降り続く(梅雨)」(「ウイリ」のW音が脱落して「イリ」となった)

の転訛と解します。

1699つえ(杖)

 竹や木などで作り、手に持ち地面について、歩行の助けとする棒。頼りとするもの。補佐するもの。長さや面積の単位。

 この「つえ」は、

  「ツ・ウエ」、TU-UE(tu=fight with,energetic;ue=push,shove,shake,move a canoe with a paddle worked against the side or steer with a paddle)、「懸命に・(人の動作を)助けるもの(杖)」(「ツ」のU音と「ウエ」の語頭のU音が連結して「ツエ」となった)

の転訛と解します。

1700つか(塚)

 土が盛り上がって小高くなった所。土を小高く盛り上げた所。目印などとして造られることもある。土 などを盛り上げてつくった巣。蟻や鼠などの巣。土などを高く盛り上げてつくった墓。

 この「つか」は、

  「ツ・ウカ」、TU-UKA(tu=stand,settle,fight with,energetic;uka=hard,firm,be fixed)、「(土を)堅く・積み上げたもの(塚)」(「ツ」のU音と「ウカ」の語頭のU音が連結して「ツカ」となった)

の転訛と解します。

1701つかう(使う)

 身辺の世話や用事などをさせる。働かせる。物を用いる。ある事に物を役立てる。湯水で物や手・身体を洗う。また、弁当などを食べる。言葉、知恵、術、法などをあやつる。(心を)あれこれと働かせる。ある手段をとる。時間、金銭、品物などを消費する。

 この「つかう」は、

  「ツカハ・アフ」、TUKAHA-AHU(tukaha=strenuous,vigorous,hasty,passionate;ahu=tend,foster,treat with)、「熱心に・(物事を)処理する(使う)」(「ツカハ」のH音が脱落し、語尾のA音と「アフ」の語頭のA音が連結し、H音が脱落して「ツカウ」となった)

の転訛と解します。

1702つがう(番う)

 二つのものが組み合う。いっしょになる。対になる。雌雄が交接する。交尾する。つるむ。二つのものを組み合わせる。対にする。いっしょにする。つがえる。かたく約束する。用意する。じゅんびする。

 この「つがう」は、

  「ツ・ウ(ン)ガ・アウ」、TU-UNGA-AU(tu=stand,settle,fight with,energetic;unga=act or circumstance etc. of becoming firm,place etc. of arrival;au=firm,intense)、「懸命に・(二つのものを)堅く・ひとつにする(番う)」(「ツ」のU音と「ウ(ン)ガ」の語頭のU音が連結し、NG音がG音に変化して「ツガ」となり、その語尾のA音と「アウ」の語頭のA音が連結して「ツガウ」となった)

の転訛と解します。

1703つかさ(司)

 おもだったもの。主要なもの。また、主要な人物。首長。おさ。役所。官庁。宮廷に仕えている人。官人。役人。朝廷から任じられる官職。また、単に、役目、つとめ。この「つかさ(司)」については、雑楽篇(その一)の356つかさ(つかさ)の項を参照してください。

 この「つかさ」は、

  「ツ・カハ・アタ」、TU-KAHA-ATA(tu=stand,settle,fight with,energetic;kaha=strong,able;ata=gently,clearly,deliberately)、「(仕事を)きちんと処理する・ことができる・(ところに)居る(その組織。またはその官職)」(「カハ」のH音が脱落して「カ」となり、その語尾のA音と「アタ」の語頭のA音が連結して「カタ」から「カサ」となった)

の転訛と解します。

1704つかぬこと(つかぬ事)

 それまでの話となんら関係のないこと。だしぬけのこと。とっぴなこと。思いがけないこと。

 この「つかぬこと」は、

  「ツ・カヌ・コト」、TU-KANU-KOTO(tu=stand,settle;kanu=ragged,torn,distracted;koto=loathing,averse)、「(それまでの話から)外れて・いる・(貴方にとって嫌な)聞きたくないこと(つかぬ事)」

の転訛と解します。

1705つかのま(束の間)

 (一束(ひとつか)、すなわち指四本の幅の意からとする説がある)時間がごく短いこと。少しの間。ごく短い時間のたとえ。

 この「つかのま」は、

  「ツカツカ・ナウ・マ」、TUKATUKA-NAU-MA(tukatuka=start up,proceed forward;nau=come,go;ma=stream)、「飛び上がって・進み始める・時間の流れ(時間の長さ。束の間)」(「ツカツカ」の反覆語尾が脱落して「ツカ」と、「ナウ」のAU音がO音に変化して「ノ」となった)

の転訛と解します。

1706つかまつる(仕る)

 (「つこうまつる」または「つかんまつる」の変化したものとする説がある)仕えるの謙譲語。目上の人に奉仕申し上げる。また、目上の人のために、ある事柄に奉仕する。何かを「する」「作る」「行うなどの謙譲語で、その動作を奉仕する対象を敬う。目上の人のために、またはその言いつけにより何かをしたリ作ったりする。転じて、「する」「行う」を聞き手に対しへりくだる気持ちで鄭重にいう。

 この「つかまつる」は、

  「ツカツカ・マツ・ル」、TUKATUKA-MATU-RU(tukatuka=start up,proceed forward;matu=ma atu=go,come;ru=shake,agitate,scatter)、「奮って・(何かを)することを・始める(仕る)」(「ツカツカ」の反覆語尾が脱落して「ツカ」となった)

の転訛と解します。

1707つかれる(疲れる)

 体力が弱る。くたびれる。気力が衰える。飢える。長く使ったためにその物の質や働きが低下する。この「つかれる(疲れる)」については、国語篇(その十五)の133つかれた(疲れた)の項を参照してください。

 この「つかれる」は、

  「ツカハ・アレ・ル」、TUKAHA-ARE-RU(tukaha=strenuous,vigorous,passionate;are=open,excavated,cavernous;ru=shake,agitate,scatter)、「元気が・(空洞化した)失われて・しまう(疲れる)」(「ツカハ」のH音が脱落して「ツカ」となり、その語尾のA音と「アレ」の語頭のA音が連結して「ツカレ」となった)

の転訛と解します。

1708つき(月)・つく(上代東国方言「月」)

 天体の月。また、それに関する物、事柄。月の神。月の光。月影。月経。香木の名。紋所の名。月を詠んだ句。など。この「つき(月)」については、国語篇(その九)の053moonつき(月)の項を、「つく(上代東国方言「月」)」については、国語篇(その三)の2の第三章の部参照してください。

 この「つき」、「つく」は、

  「ツキ」、tuki(beat,give the time to paddlers in a canoe)、「(舟を漕ぐ際の拍子取のように)時間の経過を教える(天体。月)」

  「ツク」、TUKU(let go,leave,send,present,descend(tutuku=depart,be off))、「(満月から新月までの)下弦の月」

の転訛と解します。

1709つき(杯)

 土器の形の一つ。古墳時代以降、奈良・平安時代にかけて使用された皿形の土師器・須恵器で、盤よりやや深いもの、蓋のある蓋杯、蓋のない片杯の二種があり、酒杯のほか、食物などを盛るのにも使用された。

 この「つき」は、

  「ツキ」、TUKI(beat,carved wooden mouthpiece for a calabash or for pukaer(a sort of trumpet) or putara(a wooden trumpet similar to pukaer))、「(瓢箪の呑み口や木製のラッパの吹き口の形に似た)皿に高台が付いた容器(杯)」

の転訛と解します。

1710つきなみ(月並み)

 毎月。月ごと。また、月ごとにあること。月に一度ずつあること。「つきなみのまつり(月並祭)」の略。月ごとに催される和歌や連歌・俳諧などの会合。月経。月並俳句の略。平凡で新鮮みのないこと。とりたてて変わった点のないこと。また、そのさまやそのような物事。

 この「つきなみ」は、

  「ツキ・ナ・アミ」、TUKI-NA-AMI(tuki=beat,give the time to paddlers in a canoe;na=by,made by,possessed by,belonging to,by reason of,by way of;ami=gather,collect)、「(舟を漕ぐ際の拍子取のように時間の経過を教える天体)月・ごとの・(人が)集まる行事(月並み)」(「ナ」のA音と「アミ」の語頭のA音が連結して「ナミ」となった)

の転訛と解します。

1711つきよみ(月夜見、月読み)

 つくよみ(月夜見、月読み)とも。月の神。月。

 この「つきよみ」、「つくよみ」は、

  「ツキ・イ・アウミヒ」、TUKI-I-AUMIHI(tuki=beat,give the time to paddlers in a canoe;i=beside,past tense;aumihi=sigh for,greet,wellcome)、「(舟を漕ぐ際の拍子取のように時間の経過を教える天体)月(として)・崇敬・されてきたもの(神。月夜見、月読み)」(「アウミヒ」のAU音がO音に変化し、H音が脱落して「オミ」となり、「イ・オミ」が「ヨミ」となった)

の転訛と解します。

1712つくえ(机)

 長方形の脚つきの台。宮殿の調度の一種で、床に直接置けない器具を載せ、献饌進物の台として用いる。文房具の調度として読書や執筆に用いる台。

 この「つくえ」は、

  「ツク・ワイ」、TUKU-WHAI(tuku=side,edge,ridge of a hill;whai=follow,pursue,lay hold of)、「(物を)上に・載せて置くもの(机)」(「ワイ」のAI音がE音に変化して「ヱ」からWH音が脱落して「エ」となった)

の転訛と解します。

1713つくだ(佃)

 (「つくりだ」の変化した語とする説がある)耕作されている田地。作田。平安時代から戦国時代にいたる荘園領主直営の農地。

 この「つくだ」は、

  「ツク・タタ」、TUKU-TATA(tuku=let go,leave,allow,offer;tata=dash down,strike repeatedly)、「耕作を・許されている(耕地。佃)」(「タタ」の反覆語尾が脱落して「ダ」となった)

の転訛と解します。

1714つくづく

 精神を集中してその行為に没入するさまを表す語。物思いに深く沈む時や、注意深く見聞きする時のさま。ひたすら。よくよく。じっと。意欲や行動わ伴わないで沈んだ気持ちでいるさまを表す語。つくねんと。心に深くしみこんで、しんみりとするありさまを表す語。しんみりと。しみじみと。思考や感情についていい、主観的に動かしがたくなったという気持ちを表す語。心から。

 この「つくづく」は、

  「ツ・クフ・ツ・クフ」、TU-KUHU-TU-KUHU(tu=fight with,be ignited,energetic,persistent;kuhu=thrust in,insert,conceal,introduce oneself into)、「懸命に(精神を集中して)・(その思考に)没入し・没入を・重ねること(つくづく)」(「クフ」のH音が脱落して「ク」と、二番目の「ツ」が「ヅ」となった)

の転訛と解します。

1715つくね(捏)

 手で捏ねて丸く固めること。また、そのもの。「つくねいも」の略。魚肉や鶏肉をたたいて細かくし、卵や山芋などを繋ぎに加え、手で捏ねて丸くしたもの。「つくねあげ」「つくねやき」の略。

 この「つくね」は、

  「ツ・クネ」、TU-KUNE(tu=fight with,energetic;kune=plump,filled out to roundness,swell as pregnancy)、「懸命に(手を加えて)・丸くしたもの(捏)」

の転訛と解します。

1716つぐのう(償う)

 (「つぐのう」が「つぐなう(償う)」に変化した)財貨を出して損失、負債を補ったり埋め合わせたりする。賠償する。弁償する。財貨、労働などによって、冒した罪やむあやまちの産めわせをする。用いる。利用する。

 この「つぐのう」は、

  「ツク・ナウ」、TUKU-NAU(tuku=let go,leave,allow,send,present,offer;nau,whakanau=refuse(naunau=angry,take up))、「(損失、負債、罪の賠償など)いまいましいものに・(財貨を)拠出する(償う)」(「ツク」が「ツグ」と、「ナウ」のAU音がOU音に変化して「ノウ」となった)

の転訛と解します。

1717つくばう(蹲う)

 @四んばいになる。蹲る。しゃがむ。かがむ。つくまう。A平伏する。平身低頭する。蹲踞する。Bくじけおれる。だめになる。衰える。

 この「つくばう」は、

  @「ツ・クパパ・フ」、TU-KUPAPA-HU(tu=stand,settle;kupapa=lie flat,stoop;hu=still,silent,quiet,at rest)、「そこに・静かに・しやがみこむ(蹲う)」(「クパパ」の反覆語尾が脱落して「クバ」となった)

  A、B「ツ・クパ・フ」、TU-KUPA-HU(tu=stand,settle;kupa=prostrated,exhausted;u=be firm,be fixed,reach its limit)、「そこに・静かに・平伏する(蹲う)」または「そこに・(衰えて)崩れ・落ちる(蹲う)」(「クパ」が「クバ」となった)

の転訛と解します。

1718つくろう(繕う)

 破損したところを修理する。修復する。痛んだ身体を治療する。身体の回復をはかる。手を加えて見た目をよくする。手入れする。飾り立てる。化粧する。めかす。あれこれ気をくばり欠けるところがないようにする。体裁を整える。きよめる。補い整える。準備する。設定する。人聞きのよいよう、また、破綻のないように言葉を飾ったり、旨く振る舞ったり、とりなしたりする。

 この「つくろう」は、

  「ツ・クル・ホウ」、TU-KURU-HOU(tu=fight with,energetic;kuru=strike with the fist,pound,pelt,throw;hou=new recent,fresh)、「懸命に・手を加えて・(新しい)新品同前の状態にする(繕う)」(「ホウ」のH音が脱落して「オウ」となり、「クル・オウ」が「クロウ」となった)

の転訛と解します。

1719つけ(勘定書)

 帳簿や請求書に書き記すこと。勘定書。請求書。その場で支払わず、後でまとめて支払うことにし、帳簿にしるしておくこと。また、その支払い方法。手紙。その人について回る運。巡り合わせ。理由。歌舞伎で役者が見栄をきるとき、舞台の上手で拍子木をうつこと。また、その拍子。など。

 この「つけ」は、

  「ツ・カイ」、TU-KAI(tu=fight with,be ignited,energetic,persistent;kai=fulfil its proper function,have full play)、「懸命に・全力をふりしぼって(なすべき)仕事をこなすこと(勘定書)」(「カイ」のAI音がE音に変化して「ケ」となった)

の転訛と解します。

1720つけつけ

 遠慮や加減なしに言うさま。感情を丸出しにして思った通り言い切るさまを表す語。ずけずけ。一般に動作の無遠慮なさま。

 この「つけつけ」は、

  「ツケツケ」、TUKETUKE(elbow,nudge,so incite)、「感情を露わにして(つけつけ)」

の転訛と解します。

1721つけめ(付け目)

 江戸時代に、カルタ・さいころ賭博で、狙いをつけた札や賽の目。目当てにしていること。狙い所。自分の有利になるように利用できる相手の欠点や隙。つけ込み所。

 この「つけめ」は、

  「ツ・カイ・マイ」、TU-KAI-MAI(tu=stand,settle,fight with,energetic;kai=fulfil its proper function,have full play;mai=to indicate direction or motion towards)、「熱心に・働きかける(狙いをつけた)・場所(付け目)」(「カイ」のAI音がE音に変化して「ケ」と、「マイ」のAI音がE音に変化して「メ」となった)

の転訛と解します。

1722つけやきば(付け焼き刃)

 鈍刀に鋼の焼き刃を付けたもの。一時の間に合わせに覚えた知識。一時しのぎに習った技術。入れ知恵。

 この「つけやきば」は、

  「ツ・ケイア・キパ」、TU-KEIA-KIPA(tu=stand,settle,fight with,energetic;keia=kaia=steal,thief,stealthy;kipa,kipakipa=an ornamented flax cloak)、「盗んだ・(身分の高い人が着る)縁飾りのついた上衣を(着て)・(身分の高い人らしく)懸命に振る舞う(付け焼き刃)」(「ケイア」が「ケヤ」と、「キパ」が「キバ」となった)

の転訛と解します。

1723つごう(都合)

 (〜する)合うこと。合わせること。合計すること。また、その合計。物事が曲折を経て落ち着くところ。つまるところ。(〜する)工面すること。算段すること。また、その算段。やりくり。てはず。ぐあい。状況。状態。事情。ぐあいのよいさま。また、そういう場所。

 この「つごう」は、

  「ツ(ン)ゴウ」、TUNGOU(nod,beckon(tu=stand,settle;ngoungou=thoroughly ripe,well cooked,live coal))、「同意する(頷いて感謝する)(都合)」(NG音がG音に変化して「ツゴウ」となった)

の転訛と解します。

1724つごもり(晦日)

 月の光りが全く隠れて見えなくなること。月の光りが全く見えなくなる頃。陰暦で月の終わりごろ。月の末日。転じて、一般に月の下旬。月の最終日。この「つごもり(晦日)」については、雑楽篇(その一)の188ついたち(朔日)の項の「つごもり(晦日)」を参照してください。

 この「つごもり」は、

  「ツ・(ン)ガウ・マウ・ウリ」、TU-NGAU-MAU-URI(tu=stand,settle;ngau=bite,hurt,attack;mau=fixed,continuing;uri=dark)、「(月が)浸食されて・(全く)暗く・なる・(日に)位置する(日の呼称。晦日)」(「(ン)ガウ」のNG音がG音に、AU音がO音に変化して「ゴ」と、「マウ」のU音と「ウリ」の語頭のU音が連結して「マウリ」となり、そのAU音がO音に変化して「モリ」となった)

の転訛と解します。

1725つじ(辻)

 道路が十文字に交差している所。四つ辻。交差点。つむじ。

 この「つじ」は、

  「ツ・ウチ」、TU-UTI(tu=stand,settle;uti,utiuti=annoy,worry,fuss,ado)、「悩む人が・佇む(四方から人が集まっては四方へ散ってゆく)場所(辻)」(「ツ」のU音と「ウチ」の語頭のU音が連結して「ツチ」から「ツジ」となった)

の転訛と解します。

1726つじうら(辻占)

 黄楊の櫛を持って四つ辻に立ち、道祖神に祈ってウタを三辺唱え、最初に通りかかった人の言葉によつて吉凶を判断したこと。偶然に遭遇した物事によって将来の吉凶を判断すること。吉凶を占う短い文句を記した紙片。袋に入れたり、巻煎餅にはさんだり、あるいはあぶり出しのような細工をほどこしたりする。

 この「つじうら」は、

  「ツ・ウチ・ウラ(ン)ガ」、TU-UTI-URANGA(tu=stand,settle;uti,utiuti=annoy,worry,fuss,ado;uranga=act or circumstance etc. of becoming firm,place etc. of arrival)、「悩む人が・佇む(四方から人が集まっては四方へ散ってゆく)場所(辻)で・(最初に通りかかった人の言葉によって)将来の吉凶などを判断すること(辻占)」(「ツ」のU音と「ウチ」の語頭のU音が連結して「ツチ」から「ツジ」と、「ウラ(ン)ガ」の名詞形語尾のNGA音が脱落して「ウラ」となったなった)

の転訛と解します。

1727つじつま(辻褄)

 (「辻」は裁縫で縫い目が十文字に合うところ、「褄」は着物の裾の左右が合うところ)合うべき所がきちんと合う筈の物事の道理。一つのものの初めと終わり。筋道。つまめ。

 この「つじつま」は、

  「ツ・ウチ・ツマ」、TU-UTI-TUMA(tu=stand,settle,fight with,energetic;uti,utiuti=annoy,worry,fuss,ado;tuma=challenge,abscess(whakatuma=defiance))、「(何かに反抗して)挑戦すること(その帰趨。それが無事に終わらせられるか)が・たいへん・心配だ(辻褄)」(「ツ」のU音と「ウチ」の語頭のU音が連結して「ツチ」から「ツジ」となった)

の転訛と解します。

1728つたう(伝う)

 点在するものに従って次次と移動する。つたわる。連続するものに従って沿って移動する。物について動く。つたわる。

 この「つたう」は、

  「ツイ・タウ」、TUI-TAU(tui=pierce,thread on a string,lace,sew;tau,tatau=draw or push a sliding board,squeeze,express)、「(点在するものを)糸で結んだり・(あるものを)引くように動かす(伝う)」(「ツイ」の語尾のI音が脱落して「ツ」となった)

の転訛と解します。

1729つつうらうら(津津浦浦)

 いたるところの港や海岸。また、国中、全国いたるところ。

 この「ツツウラウラ」は、

  「ツ・ツ・ウラ(ン)ガ・ウラ(ン)ガ」、TU-TU-URANGA-URANGA(tu=stand,settle,be established,take place;uranga=act or circumstance etc. of becoming firm,place etc. of arrival)、「至る所の・居住地や・至る所の・港(津々浦々)」(「ウラ(ン)ガ」の名詞形語尾のNGA音が脱落して「ウラ」となった)

の転訛と解します。

1730つつがない(恙ない)

 健康である。無事である。故障や異常がない。

 この「つつがない」は、

  「ツツ・(ン)ガナ・アイ」、TUTU-NGANA-AI(tutu=move with vigour;ngana=be eagerly intent,persist,obstinate,persistent,strong,brave;ai=expressing the reason for which anything is done or the object in view in doing it)、「実に・全く・元気に活動している(恙ない)」(「(ン)ガナ」のNG音がG音に変化して「ガナ」となり、その語尾のA音と「アイ」の語頭のA音が連結して「ガナイ」となった)

の転訛と解します。

1731つっけんどん(突っ慳貪)

 とげとげしくものを言ったり、乱暴な振る舞いをしたりするさま。

 この「つっけんどん」は、

  「ツツ・ケノケノ・トナ」、TUTU-KENOKENO-TONA(tutu=move with vigour,violent;kenokeno=sinking,offensive;tona=used with an adjective in animated conversation to express a superlative)、「荒々しく・攻撃的で・かさにかかった(物言い。態度)(突っ慳貪)」(「ツツ」が「ツッ」と、「ケノケノ」の反覆語尾が脱落して「ケノ」から「ケン」と、「トナ」が「ドン」となった)

の転訛と解します。

1732つつしむ(慎む)

 過ちを犯さないように気をつける。心を引き締め、控えめな態度をとる。大事をとる。自重する。神や尊いものに対して、うやまいの心をもって尊ぶ。うやうやしくかしこまつた態度をとる。物忌みをする。斎戒する。

 この「つつしむ」は、

  「ツツツ・チム」、TUTUTU-TIMU(tututu=perform ceremonies over a kumara(sweet potato) field at planting time to promote fecundity;timu=ebb,ebbing)、「(甘藷の豊作を祈る)祭りで・控えめな態度をとる(慎む)」(「ツツツ」の反覆語尾が脱落して「ツツ」と、「チム」が「シム」となった)

の転訛と解します。

1733つつましい(慎ましい)

 他に対して心が置かれ、気恥ずかしい。気がひける感じである。きまりが悪い。自らの挙動が重々しく控えめであるさま。表だたないで控えめである。贅沢でない。地味で質素である。つましい。

 この「つつましい」は、

  「ツツ・ママ・チヒ」、TUTU-MAMA-TIHI(tutu=move with vigour;mama=light,not heavy;tihi=summit,top,lie in a heap)、「行動が・最高に・控えめである(慎ましい)」(「ママ」の反覆語尾が脱落して「マ」と、「チヒ」のH音が脱落して「チイ」から「シイ」となった)

の転訛と解します。

1734つつみ(包み。堤)

 @物全体を紙や布などで覆い囲むこと。また、その物。物を包むのに用いるもの。風呂敷などの類。鍍金をすること。また、そのもの。感情や表情をおさえること。遠慮すること。

 A(包むものの意とする説がある)湖沼・川・池などの岸に沿って、水が溢れないように土を高く築いたもの。土手。堤防。水を溜めた池。ため池。貯水池。相撲の土俵。

 この「つつみ」は、

  @「ツツ・フミ」、TUTU-HUMI(tutu=preserve birds etc. in fat,steep in water;humi=abundant,abundance)、「多くの物を・保存(または保管)するもの(包み)」(「ツツ」の語尾のU音と、「フミ」のH音が脱落して「ウミ」となったその語頭のU音が連結して「ツツミ」となった)

  A「ツツ・ミミ」、TUTU-MIMI(tutu=preserve birds etc. in fat,steep in water;mimi=urine,stream)、「(大地の尿である)川や湖沼の水を・(保存する)あふれ出さないようにするもの(堤)」(「ミミ」の反覆語尾が脱落して「ミ」となった)

の転訛と解します。

1734-2つづみ(鼓)

 古代日本で打楽器の総称。円筒状で中空の胴に革を張って鳴らす打楽器の総称。中世以降に用いられた楽器の一種で、中央がくびれた胴の両端に革を張ってつけたもの。

 この「つづみ」は、

  「ツツ・ミヒ」、TUTU-MIHI(tutu=move with vigour;mihi=sigh for,greet,show itself,be expressed of affection etc.)、「力を込めて・感情(や意思)を表現するもの(鼓)」(「ツツ」が「ツヅ」と、「ミヒ」のH音が脱落して「ミ」となった)

の転訛と解します。

1735つつむ(包む)

 物の全体を布、紙などの中に覆い囲む。覆ってその中に入れる。まわりを取り囲む。土を盛ったりして水の流れを囲んでせきとめる。堤を築いて水を防ぐ。中に含み持つ。含む。謝意または慶意や弔意を示すために、お金をのし紙などでくるんで渡す。表面に表さないで心の中に隠す。感情の高ぶりをこらえる。耐え忍ぶ。他人の思惑を気遣って用心する。慎む。

 この「つつむ」は、

  「ツツ・ウム」、TUTU-UMU(tutu=preserve birds etc. in fat,steep in water;umu=earth oven,scarf)、「物を保存(または保管)するために・(布などで)包む(包む)」(「ツツ」の語尾のU音と「ウム」の語頭のU音が連結して「ツツム」となった)

の転訛と解します。

1736つつもたせ(美人局)

 偽物をつかませて、詐欺をすること。女が自分の夫や情夫と共謀して、他の男を姦通に誘い、あわやというときに共謀の男が現れて、それを種にその男から金銭などをゆすり取ること。

 この「つつもたせ」は、

  「ツツ・モタハ・タエ」、TUTU-MOTAHA-TAE(tutu=set on fire,be raised as dust or disturbance etc.;motaha=be left on one side;tae=arrive,reach,be overcome,be taken)、「あわやというところで邪魔が入って・男が引き離され・金銭を強奪される(美人局)」(「モタハ」のH音が脱落して「モタ」と、「タエ」のAE音がE音に変化して「テ」から「セ」となった)

の転訛と解します。

1737つづら(葛籠)

 ツヅラフジなど丈夫な蔓性の植物。ツヅラフジで編んだ衣服などを入れるかぶせ蓋の箱。腐朽するとともに竹網代で代用し、ときに柿渋・漆などを塗って用いた。金紋・蒔絵のものもあり、婚礼道具とされた。「つづらおり」の略。

 この「つづら」は、

  「ツツ・ウラ(ン)ガ」、TUTU-URANGA(tutu=preserve birds etc. in fat,steep in water;uranga=act or circumstance etc. of becoming firm,place etc. of arrival)、「(鳥が痩せないように、または魚が弱らないように生け簀で飼うように)衣服などが変質しないように保存するための・堅固な容器(葛籠)」(「ツツ」が「ツヅ」となり、その語尾のU音と「ウラ(ン)ガ」の語頭のU音が連結し、名詞形語尾のNGA音が脱落して「ツヅラ」となった)

の転訛と解します。

1738つづらおり(葛折り)

 くねくねと幾重にも曲りくねって続く坂道。羊腸。

 この「つづらおり」は、

  「ツ・ツラツラ・オリ」、TU-TURATURA-ORI(tu=fight with,energetic;turatura=molest,spiteful;ori=cause to wave to and fro,sway,move about)、「しつこく・意地悪く・曲りくねっている(坂道。葛折り)」(「ツラツラ」の反覆語尾が脱落して「ヅラ」となった)

の転訛と解します。

1739つづる(綴る)

 糸などで二つ以上のものをつなぎ合わせて布地や衣服にする。また、欠けたりやぶれたりした所をつぎ合わせる。布、紙などをつぎ合わせる。紙を糸・紐などで綴じる。言葉を組み合わせて文を作る。また、文章に書き表す。アルファベット、また、仮名を組み合わせて単語を書き表す。比喩的に、ある行為や物事をとぎれなく続ける。ほころび破れる。また、繕ってある。

 この「つづる」は、

  「ツツ・ル」、TUTU-RU(tutu=preserve birds etc. in fat,steep in water;ru=shake,agitate,scatter)、「精を出して・(鳥が痩せないように、または魚が弱らないように生け簀で飼うように)ある物が本来の機能を十分に発揮できる状態に保持しつづけることなど(綴る)」(「ツツ」が「ツヅ」となった)

の転訛と解します。

1740つて(伝)

 @人の話。ひとづて。うわさ。A仲立ち。とりなし。媒介。てびき。Bついで。もののついで。折り。C縁故。手づる。D手段。

 この「つて」は、

  @、A、D「ツテ」、TUTE(shove,push,nudge,a charm to ward off malign influences,a quarrelsome cock pigeon,male of tui(parson-bird))、@「(うるさい雄鳩のような)人の噂など(伝)」、A「(援助する)仲立ちなど(伝)」またはD「(悪い影響を除く)呪文を唱える(手段。伝)」

  C「ツ・ウテ」、TU-UTE(tu=stand,settle,fight with,energetic;ute,whakaute=tend,care for)、「熱心に・面倒を見る(縁故。伝)」(「ツ」のU音と「ウテ」のU音が連結して「ツテ」となった)

  B「ツ・タエ」、TU-TAE(tu=stand,settle,fight with,energetic;tae=arrive,come,go,reach,extend to,amount to,equal,proceed tobe effected,be overcome)、「熱心に・(ある場面から)さらに進む(ついで。伝)」(「タエ」のAE音がE音に変化して「テ」となった)

の転訛と解します。

1741つと(苞)

 藁などを束ねて、その中に魚・果実などの食品を包んだもの。わらづと。あらまき。他の場所に携えて行き、また、旅先や出先などから携えて帰り、人に贈ったりなどする土産物。旅行に携えて行く、食料などを入れた包み。あらかじめ準備して持って行くもの。

 この「つと」は、

  「ツトフ」、TUTOHU(receive a proposal favourably,give consent to,point out,indicate,direct,sign,indication)、「(好意からの)贈り物(または土産物など。苞)」(「ツトフ」のH音が脱落して「ツト」となった)

の転訛と解します。

1742つどう(集う)

 ある目的をもって集まる。会合などのために集まる。寄り合う。集合する。

 この「つどう」は、

  「ツ・トフ」、TU-TOHU(tu=stand,settle,fight with,energetic;tohu=mark,company or division of any army,point out,show)、「張り切って・一団となって集まる(集う)」(「トフ」のH音が脱落して「トウ」から「ドウ」となった)

の転訛と解します。

1743つとめる(勤める)

 精を出して物事に当たる。努力して行う。励む。仏道に励む。精進する。自愛する。自重する。慎む。苦しいのを我慢して行う。気が進まないのに無理をして行う。職につく。芸能を演じる。遊女として奉公する。他人のために尽くす。刑務所で労役に服する。

 この「つとめる」は、

  「ツ・トフ(ン)ガ・マイ・ル」、TU-TOHUNGA-MAI-RU(tu=stand,settle,fight with,energetic;tohunga=skilled person,wizard,priest;mai=to indicate direction or motion towards,to indicate such relation to the principal character of the story;ru=shake,agitate,scatter)、「懸命に・奮って・(特別な技能を持った人または神職などが・その本来の業務を果たすように)仕事に励む(勤める)」(「トフ(ン)ガ」のH音および名詞形語尾のNGA音が脱落して「ト」と、「マイ」のAI音がE音に変化して「メ」となった)

の転訛と解します。

1744つな(綱)

 縄や紐などの太く強い物の総称。植物の繊維や針金などを太く長くより合わせて丈夫にしたもの。ロープ。(比喩的に)すがって頼りにするもの。助けとなるもの。また、その人。相撲の横綱のこと。この「つな(綱)」については、国語篇(その九)の160ropeつな(綱)の項を参照してください。

 この「つな」は、

  「ツツ(ン)ガ」、TUTUNGA(circumstance etc. of tutu(tutu=move with vigour,summon,assemble))、「(たくさんの縄が)集合したもの(綱)」(NG音がN音に変化して「ツツナ」から「ツナ」となった)

の転訛と解します。

1745つなぐ(繋ぐ)

切れたり離れたりしているものを結びとめて離れないようにする。また、離れないように一続きにする。絶えないようにする。持ちこたえるようにする。(比喩的に)ある関係を保つ。信用などをとり結ぶ。捉える。捉えて獄に入れる。自由を束縛する。また、自分の方に引き留める。跡を追う。血痕や足跡などを手がかりに狙った獲物や敵などの跡をつける。小学の金銭を差しに通す。

 この「つなぐ」は、

  「ツツ(ン)ガ・ハ(ン)グ」、TUTUNGA-HANGU(tutunga=circumstance etc. of tutu(tutu=move with vigour,summon,assemble);hangu=scrape strips of flax with a shell to make it softer or more pliable but not so as to disengage the fobre)、「(たくさんの縄が)集合したもの(綱)を・その繊維のしなやかさを保ったまま繋げる(繋ぐ)」(「ツツ(ン)ガ」のNG音がN音に変化して「ツツナ」から「ツナ」となり、その語尾のA音と「ハ(ン)グ」のH音が脱落し、NG音がG音に変化して「アグ」となったその語頭のA音が連結して「ツナグ」となった)

の転訛と解します。

1746つなみ(津波)

 地震・海底変動などによって生じる長波。海岸に近付くと急に波高を増し、土手の様になって海岸を襲う。この「つなみ(津波)」については、雑楽篇(その二)の1103津波(つなみ)の項を参照してください。

 この「つなみ」は、

  「ツ・(ン)ガミ」、TU-NGAMI(tu=stand,be high of the sea,fight with,energetic;ngami=swallow up)、「襲いかかってくる・膨れ上がる(海。津波)」(「(ン)ガミ」のNG音がN音に変化して「ナミ」となった)

の転訛と解します。

1747つば(唾)

 つばき(唾)。この「つば(唾)」については、国語篇(その九)の069saliva(2)つば(唾)の項を参照してください。

 この「つば」は、

  「ツ・パハ」、TU-PAHA(tu=fight with,energetic;paha=arrive suddenly,foam etc.,attack)、「強く吐く・泡のようなもの(唾)」(「パハ」のH音が脱落して「パ」から「バ」となった)

の転訛と解します。

1748つば(鍔)

刀剣装備の付属金具。柄を握る拳(こぶし)の防御具。金属や革・角の類でつくり、形や大きさは種々である。釜の胴のまわりに庇のように張り出した部分。帽子の下部の周囲に張り出した部分。限度。かぎり。

 この「つば」は、

  「ツ・ウパ」、TU-UPA(tu=fight with,energetic;upa=foxed,settled,at rest,satisfied)、「懸命に・(拳を防御することによって人を)安心させるもの(鍔)」(「ツ」のU音と「ウパ」の語頭のU音が連結して「ツパ」から「ツバ」となった)

の転訛と解します。

1749つばさ(翼)

 鳥類の身体の部分の名称。は虫類の前肢が変形して飛翔器官となったもの。転じて、鳥、鳥類。飛行機の翼。また、飛行機。飛翔すること。左右にあってささえるもの。補佐するもの。

 この「つばさ」は、

  「ツ・パタ」、TU-PATA(tu=fight with,energetic;pata=drop of water etc.,fall in drops(patahoro=a bird;horo=drop off or out,run,flee,quick))、「懸命に・(水を振り落とすように)羽ばたくもの(翼)」(「パタ」が「バサ」となった)

の転訛と解します。

1750つばぜりあい(鍔迫り合い)

 互いに打ち込んだ刀を、鍔で受け止め合い、押し合うこと。互いに負けまいと争うこと。また、どちらが勝かわからないきわどい争い。

 この「つばぜりあい」は、

  「ツ・ウパ・テリテリ・アイ」、TU-UPA-TERITERI-AI(tu=fight with,energetic;upa=foxed,settled,at rest,satisfied;teriteri=shake,jolt,shiver to pieces;ai=expressing the reason for which anything is done or the object in view in doing it,marking the time or place of an action or event,denoting an action or state consequent upon some previous action)、「懸命に・(相手の)刃を受け止めて・激しく・争うこと(鍔迫り合い)」(「ツ」のU音と「ウパ」の語頭のU音が連結して「ツパ」から「ツバ」と、「テリテリ」の反覆語尾が脱落して「テリ」から「ゼリ」となった)

の転訛と解します。

1751つぶさ(具)

 すべて備わっているさま。もれなく揃っているさま。完全なさま。細かく詳しいさま。つまびらかなさま。詳細。

 この「つぶさ」は、

  「ツ・プタ(ン)ガ」、TU-PUTANGA(tu=stand,settle;putanga=circumstance or place etc. of appearance,gate(puta=opening,hole,move from one place to another,pass through,esdape,appear))、「外観の内容(実質)が・(キチンと)備わっている(具)」(「プタ(ン)ガ」の名詞形語尾のNGA音が脱落して「プタ」から「ブサ」となった)

の転訛と解します。

1752つぶて(飛礫)

 投げつけるための小石。また、小石を投げること。

 この「つぶて」は、

  「ツプ・タイ」、TUPU-TAI(tupu=grow,be firmly fixed,shoot,bud;tai,taitai=dash,strike,knock,to remove tapu etc.)、「投げつける(ための)・(堅く締まったもの)小石(飛礫)」(「ツプ」が「ツブ」と、「タイ」のAI音がE音に変化して「テ」となった)

の転訛と解します。

1753つぶやく(呟く)

 ぶつぶつと言う。小さな声で独り言を言う。

 この「つぶやく」は、

  「ツ・プイア・ク」、TU-PUIA-KU(tu=stand,settle;puia=volcano,hot spring,bush;ku=silent,wearied)、「静かに・温泉が湧き出すようにぶつぶつと・(音を立てる)言う(呟く)」(「プイア」が「プヤ」から「ブヤ」となった)

の転訛と解します。

1754つぶれる(潰れる)

 角が取れて丸みを帯びる。丸くなる。角がすり減る。力が加わって原形を失う。ひしゃげる。こわれる。(こわれて)役に立たなくなる。使えなくなる。組織、経営団体、家督、家系、芸能の流派などの維持・経営が成り立たなくなる。滅びる。瓦解する。破産する。驚き、悲しみなどで心が非常に痛む。本来有効に使えるものが無駄になる。声や音がかすれてよく出なくなる。名誉や面目などを失う。酔って正気がなくなる。

 この「つぶれる」は、

  「ツ・プレ・ル」、TU-PURE-RU(tu=stand,settle,fight with,energetic;pure=a ceremony for removing tapu and for other perposes,affect by the pure rite,perform the pure rite;ru=shake,agitate,scatter)、「奮って・懸命に・(呪文を唱えて禁忌を除去する)いつの間にか他に悪影響が加わる(潰れる)」(「プレ」が「ブレ」となった)

の転訛と解します。

1755つぼ(坪)

 中庭。建物の間や垣根の内側などにある庭をさしていう。転じて、宮中の部屋をいう。宮中の部屋にはそれぞれ内庭があり、そこに植えられた草木の名称から、その庭や庭に面した部屋を呼んだところからいう。格子の枡目。面積などを表す単位。条里制における土地の地割りの単位。この「つぼ(坪)」については、雑楽篇(その二)の1041壺(つぼ)の項の「つぼ(坪)」を参照してください。

 この「つぼ」は、

  「ツポウ」、TUPOU(bow the head,fall or throw oneself headlong)、「人が手足を伸ばして横になる(のに必要な広さ。面積。一坪)」(OU音がO音に変化して「ツポ」から「ツボ」となつた)

の転訛と解します。

1756つぼ(壺)

 (古くは「つほ」であったとする説がある)えぐれていて物を入れたり、さしたりする器情のものをいう。口がつぼんで胴の膨れた容器。深く凹んだところ。穴。博奕で賽を伏せてかくす器。壺皿。壺笊。壺椀。サザエやタニシなどの石灰質の殻。掛けがねを受ける留め金。壺やなぐいの略。墨壺の略。など。矢を射るときに狙う所。矢壺。矢所。見込むところ。図星。思う壺。重要なところ。肝要なところ。急所。灸、鍼、指圧などの治療を施す身体の定点。など。この「つぼ(壺)」については、雑楽篇(その二)の1041壺(つぼ)の項を参照してください。

 この「つぼ」は、

  「ツ・ポ」、TU-PO(tu=stand,settle;po=food)、「食物を・入れてある(貯蔵・保管する容器。壺)」(「ポ」が「ボ」となった)

の転訛と解します。

1757つぼね(局)

 大きな建物の中で、臨時に簡単な仕切りをつけてしつらえた部屋。貴人などが社寺に参籠、通夜するおりの仏堂内の仕切りなどもいう。宮中や貴人の邸宅などで、主としてそこに仕える女性の住む私室として、仕切り隔てた部屋。曹司。これを与えられている女房。女官。上流階級の女性を尊んでいう語。御殿女中。局女郎の部屋。

 この「つぼね」は、

  「ツポホ・ネイ」、TUPOHO-NEI(tupoho=consolation;nei=to denote proximity to or connection with the speaker,to indicate continuance of action or events)、「ゆっくり・休息する(部屋。局)」(「ツポホ」のH音が脱落して「ツポ」から「ツボ」と、「ネイ」が「ネ」となった)

の転訛と解します。

1758つぼみ(蕾)

 花の、まだ花弁が咲き開かないもの。将来が期待されるが、まだ一人前でない年頃の人。特に、処女のこと。熨斗あわびをいう女房詞。

 この「つぼみ」は、

  「ツプ・アウミヒ」、TUPU-AUMIHI(tupu=grow,begin,be firmly fixed,shoot,bud;aumihi=sigh for,greet,welcome)、「(挨拶をしている)開花しかかっている・花芽(蕾)」(「ツプ」が「ツブ」と、「アウミヒ」のAU音がO音に変化し、H音が脱落して「オミ」となり、「ツブ・オミ」が「ツボミ」となった)

の転訛と解します。

1759つまずく(躓く)

 足先が物に突き当たる。歩いたり、走ったりしていて、つま先を路上の石などに突き当て体勢をくずしす。けつまずく。中途で差し支えが起きる。中途で障害に出会い失敗する。しくじる。

 この「つまずく」は、

  「ツ・マ・ツク」、TU-MA-TUKU(tu=stand,settle,remain;ma,mama=light,not heavy,so quick,by means of,in consequence of,by way of;tuku=let go,leave,send,present,receive)、「(足先が)ちょつと・(何かに)当たって・(よろめきが)残る(躓く)」(「ツク」が「ヅク」となった)

の転訛と解します。

1760つまど(妻戸)

 寝殿造りで、殿舎の側面の出入り口に設けられた、両開きの板製の扉。家の端の方にある両開きの板戸。この「つまど(妻戸)」については、雑楽篇(その二)の1027戸(と)の項の「妻入り(つまいり)」を参照してください。

 この「つまど」は、

  「ツ・マ・ト」、TU-MA(tu=stnd,settle;ma=white,faded,clean;to=drag,open or shut a door or a window)、「(そこで屋根が)消える(無くなる)・場所に位置する(横に延びる屋根の端の場所。妻)・開閉するもの(戸。妻戸)」(「ト」が「ド」となった)

の転訛と解します。

1761つまはじき(爪弾き)

 手の人差し指か中指の先端を親指の腹にあて強くはじいて音を立てる動作。思うとおりにならないとき、心にかなわぬようなときの気持ち、また、軽蔑、非難などの気持ちを表す。また、他を嫌って排斥することをいう。(仏語)法会・修法などで行う行為。歓喜・承服、あるいは渓谷や許可などの意を表す。弾指。指先を親指の腹にあててから弾いたその爪先で物を打つこと。

 この「つまはじき」は、

  「ツ・マハ・チキ」、TU-MAHA-TIKI(tu=fight with,energetic;maha=gratified,satisfied,depressed,resigned,many,abundance;tiki=fetch,proceed to do anything)、「力を込めて・(意気消沈させる)軽蔑・非難などの意を表す・行動をとる(爪弾き)」(「チキ」が「ジキ」となった)

の転訛と解します。

1762つまびらか(詳らか)

 物事の有様などを細部にわたって認めうるさま。事細かなさま。また、物事の状態などがはっきり分かっているさま。つぶさ。委細。

 この「つまびらか」は、

  「ツ・マピ・ラカ」、TU-MAPI-RAKA(tu=fight with,energetic;mapi=flow,ooze;raka=be entangled,ache from weariness,agile,adept,go,spread about)、「熱心に・(水が休み無く滴り落ちるように)丹念に・さらけ出す(詳らか)」(「マピ」が「マビ」となった)

の転訛と解します。

1763つまむ(抓む)

 @小さい者などを指先ではさみ取る。指先などではさみ持つ。取って食べる。A要点を取り出す。要旨をまとめる。また、簡潔にする。かいつまむ。B一時の慰みに女に手を出す。また、男女が他人に隠れて情交する。好きなように人をなぶる。愚弄する。(受け身の形で)キツネやタヌキなどに化かされる。また、人にだまされる。

 この「つまむ」は、

  @、A「ツ・ウマ・ム」、TU-UMA-MU(tu=fight with,energetic;(Hawaii)uma=to push,press,grip;mu=silent)、@「(懸命に)しっかりと・静かに・(掴む)つまむ(抓む)」またはA「(懸命に)しっかりと・静かに・(掴む)要点を圧縮する(抓む)」(「ツ」のU音と「ウマ」の語頭のU音が連結して「ツマ」となった)

  B「ツ・マハ(ン)ガ・ム」、TU-MAHANGA-MU(tu=fight with,energetic;mahanga=twins,snare,ensnare;mu=silent)、「懸命に・静かに・(人・女を)欺す(抓む)」(「マハ(ン)ガ」のH音および名詞形語尾のNGA音が脱落して「マ」となった)
  または「ツ・マハ・ム」、TU-MAHA-MU(tu=fight with,energetic;maha=gratified,satisfied,depressed,resigned;mu=silent)、「懸命に・静かに・(快楽を得る)情交する(抓む)」(「マハ」のH音が脱落して「マ」となった)

の転訛と解します。

1764つまらない(詰まらない)

 @おさまりがつかない。落着しない。また、やりくりがつかない。金に困る。苦労の報いがない。張り合いがない。ひきあわない。うまらない。不都合である。困る。窮する。

 A物事に心が引きつけられない。意に満たない。興味が湧かない。おもしろくない。対象として取り上げる値打ちがない。とるに足りない。価値がない。些細である。道理に合わない。納得できない。ばかげている。不必要である。無用だ。くだらない。

 この「つまらない」は、

  @「ツ・マラ(ン)ガイ」、TU-MARANGAI(tu=stand,settle,fight with,energetic;marangai=storm,bad weather)、「暴風が・激しく吹いていて動きがつかない(つまらない)」(「マラ(ン)ガイ」のNG音がN音に変化して「マラナイ」となった)

  A「ツ・マラ(ン)ガ・アイ」、TU-MARANGA-AI(tu=stand,settle,fight with,energetic;maranga=rise up from a recumbent position,be raised,taken up out of the ground,begin of work etc.;ai=expressing the reason for which anything is done or the object in view in doing it,marking the time or place of an action or event,denoting an action or state consequent upon some previous action,denoting present habitual condition or action)、「毎日毎朝・起きては・いつもの通り仕事をする(つまらない)」(「マラ(ン)ガ」のNG音がN音に変化して「マラナ」となり、その語尾のA音と「アイ」の語頭のA音が連結して「マラナイ」となった)

の転訛と解します。

1765つまり(詰まり)

 @物の終わりの部分。もののはて。ゆきどまり。行き詰まること。困窮すること。また、事件・行為などの結末・結果。ことの結着。結局。とどのつまり。論理のおちつくところでは。結局。A一言で説明すると。簡単に言い換えれば。要するに。すなわち。

 この「つまり」は、

  「ツム・アリ」、TUMU-ARI(tumu=halt suddenly,twitch,grunt;ari=clear,appearance,fence)、@「垣根に突き当たって・停止した場所(行き止まり。結末。詰まり)」またはA「(停止した)結末(の内容)を・明らかにする(要するに。詰まり)」(「ツム・アリ」が「ツマリ」となつた)

の転訛と解します。

1766つみ(罪)

 規範、法則を犯し、その結果とがめられるべき事実。また、そのような行為に対する責任の観念をいう。規範、法則を犯したために受ける制裁。罰。刑罰。他人に不利益や不快感などを与える行為によつて、怒り、怨み、非難、報復などをうけるようなこと。人に対して悪い事をした事実、または、その責任。人、あるいは物事のとがめるべき点。欠点。短所。よこしまな気持ち、考え、欲望など。悪についての自覚。他人を悲しませたり、くるしめたり、まどわせたりするような要素を持っているさま。無慈悲なさま。この「つみ(罪)」については、雑楽篇(その一)の363のり(規範。法。則)の項の「つみ(罪)」を参照してください。

 この「つみ」は、

  「ツ・ミヒ」、TU-MIHI(tu=stand,settle,be turned up indicating disdain or merely sniffing;mihi=sigh for,express discomfort)、「嘆かはしい・(人から)蔑まれる所行(罪)」(「ミヒ」のH音が脱落して「ミ」となった)

の転訛と解します。

1767つみれ(摘入れ)

 魚肉のすり身に卵や小麦粉などをつなぎとして入れ、少しづつ摘み取って汁に入れて煮たもの。また、はんぺんをさしていう。

 この「つみれ」は、

  「ツ・ミレ」、TU-MIRE(tu=stand,settle,fight with,energetic;mire,mimire=bind round,lash,seize)、「熱心に・(すり身を)分けて丸めたもの(摘入れ)」

の転訛と解します。

1768つむ(積む)

 重なって次第に高くなる。つもる。また、物事が度々起こったりおこなわれたりする。置いてある物の上に重ねて置く。次第に盛り上げる。次次に重ねる。物をうず高く置く。船や車などに荷を載せる。ふやす。増す。また、物事をたび重ねて行う。集め蓄える。貯蓄する。神などに捧げる。

 この「つむ」は、

  「ツ・ム」、TU-MU(tu=stand,settle,fight with,energetic;(Hawaii)mu=gather together of crowds of people)、「置き・重ねる(積む)」

の転訛と解します。

1769つむ(紡錘)

 糸巻きなどの心棒。糸を紡ぐ機械の部品で、糸を巻くと同時に縒りをかけるもの。

 この「つむ」は、

  「ツ・ムフ」、TU-MUHU(tu=stand,settle,fight with,energetic;muhu=grope,feel after,push one's way through bushes,etc.)、「熱心に・(手探りで進む)指先で糸を紡ぎながら縒りをかけるもの(紡錘)」(「ムフ」のH音が脱落して「ム」となった)

の転訛と解します。

1770つむじ(旋毛)

 頭頂にある毛が集中して放散性の渦状になっている部分の俗称。人体の頭頂。頭のてっぺん。この「つかれる(疲れる)」については、国語篇(その十五)の137つむじ(旋毛)の項を参照してください。

 この「つむじ」は、

  「ツム・チ」、TUMU-TI(tumu=promontory,headland;ti=throw,cast)、「(頭の)先端に・置かれているもの(旋毛)」(「チ」が「ジ」となった)

の転訛と解します。

1771つむり(頭)

 頭。かしら。こうべ。頭の毛。頭髪。この「つむり(頭)」については、国語篇(その二十)の514おつむ(頭)の項の「つむり(頭)」を参照してください。

 この「つむり」は、

  「ツム・ウリ」、TUMU-URI(tumu=promontry,headland,stump,contrary of wind;uri=descendant,relative)、「(身体から)突き出ている・類のもの(頭)」(「ツム」の語尾のU音と「ウリ」の語頭のU音が連結して「ツムリ」となった)

の転訛と解します。

1772つめ(爪)

 手の指または足指の先に生ずる角質物で。表皮が硬く変わったもの。琴ツメの略。物を吊ったり、ひっかけたりして留める仕掛け。(ツメが長いの意から)けちで欲深いこと。また、その人。など。

 この「つめ」は、

  「ツ・フメ」、TU-HUME(tu=stand,settle,fight with,energetic;hume=bring to a point,gather up,tuck up clothes,gird on)、「懸命に・物を抓むもの(爪)」(「ツ」のU音と「フメ」のH音が脱落して「ウメ」となったその語頭のU音が連結して「ツメ」となった)

の転訛と解します。

1773つめたい(冷たい)

 外気が肌に当たって冷える。寒い。ひんやりする。物の温度が低く、触れるとひややかな感じである。あたたかみが伝わらない。人情が薄い。温情がない。冷淡である。冷静である。この「つめたい(冷たい)」については、国語篇(その十五)の139つめたい(冷たい)の項を参照してください。

 この「つめたい」は、

  「ツイ・マイタイ」、TUI-MAITAI(tui=pierce,sew,hurt;maitai=good,beautiful,agreeable)、「刺すような刺激が・ちょうど良い(冷たい)」(「ツイ」のI音が脱落して「ツ」と、「マイタイ」の最初のAI音がE音に変化して「メタイ」となった。また「マイタイ」の二つのAI音がE音に変化して「メテ」から「メテー」となった)

の転訛と解します。

1774つもり(積り)

 @積もること。重なって量が増えること。回数を重ねること。Aあらかじめ見計らって計算すること。見積もり。予算。たぶんそうなるだろうという考え。また、こうしようとする意図。心ぐみ。推量。推測。また、想像。工面。調達。才覚。B限度。かぎり。際限。終わり。酒宴の終わりの杯。おつもり。

 この「つもり」は、

  @「ツモウ・リ」、TUMOU-RI(tumou=tumau=fixed,continuous,servant;ri=screen,protect,bind)、「(あることが)結合することが・連続する(回を重ねる。積り)」(「ツモウ」が「ツモ」となった)

  A「ツ・マウリ」、TU-MAURI(tu=stand,settle,fight with,energetic;mauri=life principle,source of the emotion,talisman)、「(恐らく)こうなるだろうとの推測を・する(積り)」(「マウリ」のAU音がO音に変化して「モリ」となった)
  または「ツ・モリ」、TU-MORI(tu=stand,settle,fight with,energetic;mori=fondle,caress(whakamomori=desire desperately))、「熱心に・こうしたいと強く望む(積り)」

  B「ツ・マウリ」、TU-MAURI(tu=stand,settle;mauri=the moon on the twenty-ninth day)、「(二十九日の月のように物事の進行の)変わり目に・ある(限度。終了。積り)」(「マウリ」のAU音がO音に変化して「モリ」となった)
  または「ツモウ・フリ」、TUMOU-HURI(tumou=tumau=fixed,continuous,servant;huri=turn round,overturn,revolve)、「(物事の)進行が・(逆転する)停止する(終了。積り)」(「ツモウ」の語尾のU音と「フリ」のH音が脱落した「ウリ」の語頭のU音が連結して「ツモウリ」から「ツモリ」となった)

の転訛と解します。

1775つや(艶)

 鮮やかに美しく光ること。光沢。滑らかな表面に現れる光り。若々しい張りや弾力を感じさせる美しさ。うるおいのある強さ。好ましく、また、いとおしい情感を起こさせるような態度や言葉。愛敬。しな。相手を嬉しがらせるような言葉。お世辞。追従。添えてとりつくろうもの。飾り。粉飾。おもけ。

 この「つや」は、

  「ツヒ・イア」、TUHI-IA(tuhi=draw,write,adorn with painting,glow;ia=indeed)、「実に・(塗料を塗ったような)美しく光る(艶)」(「ツヒ」の音が脱落して「ツイ」となり、その語尾のI音と「イア」の語頭のI音が連結して「ツヤ」となった)

の転訛と解します。

1775-2つや(通夜)

 神社・寺院に参籠して、終夜祈願すること。徹夜で勤行・祈願すること。葬儀の前夜、個人とかかわりの深い者が集まり、終夜遺体を守ること。夜とぎ。

 この「つや」は、

  「ツイ・イア」、TUI-IA(tui=pierce,thread on a string,lace,sew;ia=indeed)、「実に・(休まずに糸を繋ぎ続けるように)夜を徹して勤行する(通夜)」(「ツイ」の語尾のI音と「イア」の語頭のI音が連結して「ツヤ」となった)

の転訛と解します。

1776つゆ(梅雨)

 六月前後の雨や曇りの日が多く現れる季節をいう。この「つゆ(梅雨)」については、雑楽篇(その一)の234さみだれ(五月雨)の項の「つゆ(梅雨)」を参照してください。

 この「つゆ」は、

  「ツ・ウイウ」、TU-WHIU(tu=stand,settle,fight with,energetic;whiu=throw,place,be gathered together)、「精力的に(ひっきりなしに)・(集めた)降り続く(雨)」(「ウイウ」のWH音が脱落して「イウ」から「ユ」となった)

の転訛と解します。

1777つゆ(露)

 大気中の水蒸気が冷えた物体に触れて凝結付着した水滴。夜間の放射冷却によって気温が氷点以上露点以下になったときに生じる。また、雨の後に木草の葉などの上に残っている水滴をいう。「涙」の比喩として用いる。はかないもの、わずかなことの比喩に用いる。つゆほどの。狩衣、水干などの袖をくくる緒の垂れた端。江戸時代の通貨の豆板銀の異称。祝儀。心付け。など。

 この「つゆ」は、

  「ツイ・ウ」、TUI-U(tui=pierce,thread on a string,sew;u=be firm,be fixed,reach its limit)、「(定着しかかっているもの)水滴を・(葉の上に糸で繋ぎ止めるように)点々と保持するもの(露)」(「ツイ・ウ」が「ツユ」となった)

の転訛と解します。

1778つゆはらい(露払い)

 宮中で蹴鞠の会が行われるとき、まず鞠を蹴って懸(かかり)の木の露を払い落とすこと。また、その役の人。貴人の先導をして路を開くこと。また、転じて、行列などの先導をすること。また、その人。特に遊芸で、最初に演ずること。また、その人。相撲で、横綱の土俵入りの際、横綱の前駆を勤める力士。(比喩的に)物事の先触れ。その物や事柄。

 この「つゆはらい」は、

  「ツイ・ウ・ハラ・アイ」、TUI-U-HARA-AI(tui=pierce,thread on a string,sew;u=be firm,be fixed,reach its limit;hara=violate tapu intentionally or otherwise,sin,offence;ai=expressing the reason for which anything is done or the object in view in doing it,marking the time or place of an action or event,denoting an action or state consequent upon some previous action,denoting present habitual condition or action)、「(定着しかかっているもの)水滴を・(葉の上に糸で繋ぎ止めるように)点々と保持するもの(露)を・禁忌をあらかじめ・祓うように除くことまたはその人(露払い)」(「ツイ・ウ」が「ツユ」と、「ハラ」の語尾のA音と「アイ」の語頭のA音が連結して「ハライ」となった)

の転訛と解します。

1779つらなる(連なる)

 一列に並び続く。列をつくる。他に続いて並ぶ。列席する。つながる。連続する。連携する。仲間に加わっている。連れ立つ。共に行く。合わさる。接合する。一つになる。そのことに関係する。関係が及ぶ。

 この「つらなる」は、

  「ツ・ラ(ン)ガ・ル」、TU-RANGA-RU(tu=stand,settle,fight with,energetic;ranga=raise,cast up,company of persons;ru=shake,agitate,scatter)、「懸命に・(仲間となって)一列につづけて・並ぶ(連なる)」(「ラ(ン)ガ」のNG音がN音に変化して「ラナ」となった)

の転訛と解します。

1780つらぬく(貫く)

 端から端へ、または表から裏へ突き通す。抜く。はじめから終わりまでつづけて通す。初めの気持ちを変えることなく最後まで守る。

 この「つらぬく」は、

  「ツラハ・ヌク」、TURAHA-NUKU(turaha=keep away,keep clear,be separated,open,wide not confined,startled,frightened;nuku=wide extent,distance,move,extend)、「はじめから終わりまで変わらずに(真っ直ぐに)・伸ばしきる(貫く)」(「ツラハ」のH音が脱落して「ツラ」となった)

の転訛と解します。

1781つらら(氷柱)

 軒、岩かどなどに長く垂れ下がっている氷。この「つらら(氷柱)」については、雑楽篇(その一)の242こおり(氷)の項の「つらら(氷柱)」を参照してください。

 この「つらら」は、

  「ツララ」、TURARA(spread out)、「長く延びた(氷。氷柱)」

の転訛と解します。

1782つり(釣り)

 つるすこと。引っかけて垂らすこと。また、ぶらさげること。物をつり下げるのに用いるものの総称。蚊帳の釣り手やズボンつりなど。旗・幕・幟・帆などの縁に紐を通すためにつけられた環状のもの。乳。釣り糸の先に結び付けた釣り針で魚を引っかけて捕らえること。さかなつり。魚釣りの道具。街頭で女を誘惑すること。おかづり。相撲で相手のまわしをつかんでその身体を虫にもちあげること。釣り銭の略。

 この「つり」は、

  「ツ・リ」、TU-RI(tu=stand,be erect,be turned up,be high of the sea,be established;ri=screen,protect,bind,bond)、「(物を固定して)つかんで・引き上げる(吊り。釣り)」

の転訛と解します。

1783つりがき(釣書)

 系図。血縁関係などを示すため、名と名を順に線で結んださまが文字を吊した様に見えるところからいうか。縁談でお互いに取り交わす身上書。

 この「つりがき」は、

  「ツ・ウリ・(ン)ガキ(ン)ガ」、TU-URI-NGAKINGA(tu=stand,be erect,be turned up,be high of the sea,be established;uri=offspring,descendant,relative,race;ngaki=clearing,plot of cultivated ground)、「古くから続く・(一族の)親族関係を・(整理して書き上げた)一覧表(釣書)」(「ツ」のU音と「ウリ」の語頭のU音が連結して「ツリ」と、「(ン)ガキ(ン)ガ」の最初のNG音がG音に変化し、名詞形語尾のNGA音が脱落して「ガキ」となった)

の転訛と解します。

1784つるべ(釣瓶)

 縄や竿の先につけて井戸の水をくみ上げる桶。つるべおけ。舟を洗うために船端より下ろし、海水をくみ上げる桶。

 この「つるべ」は、

  「ツル・パイ」、TURU-PAI(turu=post,pole,upright;pai=good,excellent,suitable,pleasant)、「垂直の(竿または縄に付けた)・具合のいいもの(水汲み桶。釣瓶)」(「パイ」のAI音がE音に変化して「ペ」から「ベ」となった)

の転訛と解します。

1785つれづれ(徒然)

 次から次へと物思いにふけること。一人淋しくはてしない物思い。変化がなくて単調なさま。また、その結果、つまらなく思う精神状態をいう。一つの状態、事柄、動作などが変化も中断もなく、長く続くさま。一つの動作に集中したり、念を入れたりするさま。

 この「つれづれ」は、

  「ツレレ・ツレレ」、TURERE-TURERE(turere=steal away,flee(turererere=diffused))、「(考えが逃げ出す)ボーッと・ボーッとしている(徒然)」(「ツレレ・ツレレ」の反覆語尾が脱落して「ツレ・ヅレ」となった)

の転訛と解します。

1786つれない

 表面何事もなげである。表面に出さない。そしらぬ風である。つれもなし。人の心を汲もうともせず、冷ややかである。情け知らずだ。無情だ。つれもなし。何の変わりも見えない。何の影響もうけない。何のへんてつもない。退屈である。思うにまかせない。意のごとくにならない。周囲の事情にかまわず、鈍感である。厚顔である。

 この「つれない」は、

  「ツレレ・ナイ」、TURERE-NAI(turere=steal away,flee(turererere=diffused);nai=nei,neinei=stretched forward,reaching out,wagging)、「(考えが逃げ出す)ボーッとして・しまっていて何事もないかのようだ(つれない)」(「ツレレ」の反覆語尾が脱落して「ツレ」となった)「」、、「()()」()

の転訛と解します。

1787つわり(つはり。悪阻)

 芽がでること。芽ぐむこと。妊娠二〜四か月からみられる空腹時の吐き気、軽い嘔吐、食欲不振や飲食物に対する嗜好の変化などの症状。

 この「つわり」は、

  「ツワ・リ」、TUWA-RI(tuwa=growing out of place,self-sown(tuwha=spit);ri=screen,protect,bind)、「(芽が出る)妊娠・(に伴う)障碍(悪阻)」

の転訛と解します。

1788つんざく(劈く)

 (「抓み裂く」の音便形とする説がある)手や爪で裂く。強く破る。

 この「つんざく」は、

  「ツ(ン)ガ・タク」、TUNGA-TAKU(tunga=wound,circumstance etc. of being wounded;taku=threaten behind one's back)、「怪我をするほど・強く叩かれる(劈く)」(「ツ(ン)ガ」のNG音がN音に変化して「ツナ」から「ツン」と、「タク」が「サク」から「ザク」となった)

の転訛と解します。

「テ」

1789でい(出居)

 (家の中の外に近い方に)出てすわること。出ていること。寝殿造りに設けられた居間兼来客接待用の部屋。のち座敷の意。朝廷で賭け弓や相撲などの儀式のときに設ける座。

 この「でい」は、

  「テ・イ」、TE-I(te=crack;i=ferment,be stirred of the feelings,past tense,beside,by,with)、「(建物の)本体から突き出て・いるもの(出居)」(「テ」が「デ」となった)

の転訛と解します。

1790ていたらく(為体)

 有様。様子。状態。(近世以後は)あまりよくない有様や、その様子を軽蔑したり悪く言ったりする場合に用いる。

 この「ていたらく」は、

  「タイタハエ・ラク」、TAITAHAE-RAKU(taitahae=oppressive,wearying,worthless,of no account,young man;raku=scratch,scrape) 、「うんざりして・取り去りたいような(有様。為体)」(「タイタハエ」のAI音がE音に変化し、H音が脱落して「テイタ」となった)

の転訛と解します。

1791ていねい(丁寧)

 昔、中国の軍中で警戒の知らせや注意のために用いられた楽器。注意深く念入りであること。細かいところまで注意が行き届いていること。また、そのさま。手厚く親切なこと。ねんごろで礼儀正しいこと。また、そのさま。何度も繰り返すこと。また、そのさま。冗長なこと。無駄に多いこと。また、そのさま。

 この「ていねい」は、

  「タイ・ネイ」、TAI-NEI(tai,taitai=dash,strike,knock,perform certain ceremonies to remove tapu etc.;nei,neinei==stretched forward,reaching out,wagging)、「穢れ(の禁忌)を除くまじないを・何回も徹底して行う(丁寧)」(「タイ」のAI音がEI音に変化して「テイ」となった)

の転訛と解します。

1792でかい(大きい)

 大きい。いかめしい。また、すばらしい。はなはだしい。でっかい。この「でかい(大きい)」については、国語篇(その十四)の022おおきい(大きい)の項の「デッカイ(大きい)」を参照してください。

 この「でかい」は、

  「テイ・カイ」、TEI-KAI(tei,teitei=high,tall,summit;kai=quantity,number,thing)、「大きさが・(高い)大きい」(「テイ」の語尾のI音が脱落して「テ」から「デ」となった)

の転訛と解します。

1793てかけ(妾)

 (手にかけて愛する者の意から)めかけ。そばめ。側室。

 この「てかけ」は、

  「テ・カケ」、TE-KAKE(te=the(tete=young shoot);kake=ascend,beat to windward in sailing,be superior to)、「例の(多くの場合は、「年若の」)・周囲からの風当たりが強い女(妾)」

の転訛と解します。

1794でかした

 目下の者などが事をうまくやりおおせた時、感動をこめて思わず口にする言葉。

 この「でかした」は、

  「テカ・チタハ」、TEKA-TITAHA(teka=drive forward,urge on(whakatekateka=play at any game.impelled forward);titaha=lean to one side,pass on one side,crooked)、「倒れそうになりながら・よくやった(でかした)」(「テカ」が「デカ」と、「チタハ」のH音が脱落して「チタ」から「シタ」となった)

の転訛と解します。

1795てがみ(手紙)

 手元に置いて雑用に使う紙。用事などを書いて他人に送る文書。ふみ。書簡。書状。郵便はがきに対して封書の郵便。

 この「てがみ」は、

  「テ(ン)ガ・ミヒ」、TENGA-MIHI(tenga=Adam's apple,distended,strained;mihi=sigh for,greet,be expressed of affection etc.)、「(敬意を表する)挨拶が・誇大化するもの(手紙)」(「テ(ン)ガ」のNG音がG音に変化して「テガ」と、「ミヒ」のH音が脱落して「ミ」となった)

の転訛と解します。

1796でかんしょぶし(デカンショ節)

 明治末期から大正初期に流行した歌。江戸期に兵庫県篠山市付近の盆踊り歌の変化したもの。この「でかんしょぶし(デカンショ節)」については、国語篇(その十二)の272デカンショ節の項を参照してください。

 この「でかんしょ」は、

  「タイカ・ア(ン)ガ・チオ」、TAIKA-ANGA-TIO(taika=lie in a heap;anga=driving force,forcr driven etc.,turn to doing anything;tio=cry,call)、「(花のお江戸の)檜舞台で・力を込めて・声を張り上げた」(「タイカ」のAI音がE音に変化して「テカ」と、「ア(ン)ガ」のNG音がN音に変化して「アナ」から「アン」となり、2語が連結して「テカン」から「デカン」となった)

の転訛と解します。

1797てきや(的屋)

 縁日や盛り場など、人通りの覆い場所で露店を出して呼び売りをしたり、見世物を興行したりするのを業とする者。香具師。大道商人。

 この「てきや」は、

  「テキ・イア」、TEKI-IA(teki=drift with the anchor down but not touching the bottom;ia=indeed)、「実に・(碇が海底に届かずに漂流する船のようにふらふら歩いている)一定の職業を持たない奴(的屋)」(「イア」が「ヤ」となった)

の転訛と解します。

1798てぐすね(手ぐすね)

 手に薬練(くすね。松脂を油で煮て練り合わせたもの。弓の弦に塗り、強くするのに用いる)をとること。転じて用意して機会を待つこと。また、手につばを付けて両手を摺り合わせること。

 この「てぐすね」は、

  「テ・(ン)グツ・ネイ」、TE-NGUTU-NEI(te=crack;ngutu=lip,beak,mouth;nei,neinei=stretched forward,reaching out,wagging)、「(指が分かれているもの)手に・口(から唾)を付け・十分に伸ばす(腕を振るう準備をする。手ぐすね)」(「(ン)グツ」のNG音がG音に変化して「グツ」から「グス」と、「ネイ」が「ネ」となった)

の転訛と解します。

1799てくだ(手管)・てれん(手練)

 @(てくだ)人を操り動かす技術。巧みにだます手段。術策。とくに遊女が客をたらし込み操る技術。手練。(〜する)女が他の男と情交をもつこと。また、その男。情夫。間男。

 A(てれん)人をだます手段。人を操りだます技巧。てれんてくだ。

 この「てくだ」、「てれん」は、

  @「テ・クフ・タ」、TE-KUHU-TA(te=crack;kuhu=insert,conceal;ta=dash,beat,strike,overcome,lay)、「隠れた(秘密の)・(人を圧倒する)たらし込む・(指が分かれているもの)手(手段。術策)(手管)」(「クフ」のH音が脱落して「ク」と、「タ」が「ダ」となった)

  A「テ・レ(ン)ガ」、TE-RENGA(te=crack;renga=overflow,be full,fill up)、「(人をだます)(指が分かれているもの)手(手段)が・豊富なこと(手練)」(「レ(ン)ガ」のNG音がN音に変化して「レナ」から「レン」となった)

の転訛と解します。

1800でくのぼう(木偶の坊)・でくるぼう(木偶の坊)

 人形。操りの人形。でく。でくるぼ。でくるぼう。役に立たない者。役立たすの者を罵っていう語。でく。

 この「でくのぼう」、「でくるぼう」は、

  「テ・ク・(ン)ガウ・ポウ」、TE-KU-NGAU-POU(te,tete=young shoot,figurehead of a canoe without arms and legs;ku=silent,wearied;ngau=raise a cry,make a disturbance,indistinct or inarticulate of speech;pou=post,pole,support,expert)、「(疲れて)何かをする気力がなく・他人の邪魔になっている・突っ立って居る柱のような・(舟の舳先に付けた手足のない神像のような)人形のような(木偶の坊)」(「テ」が「デ」と、「(ン)ガウ」のNG音がN音に、AU音がO音に変化して「ノ」と、「ポウ」が「ボウ」となった)

  「テ・クルポ」、TE-KURUPO(te,tete=young shoot,figurehead of a canoe without arms and legs;kurupo=abscess,putrefying sore)、「腐った・(舟の舳先に付けた手足のない神像のような)人形のような(自分の意志では動けない、または何の役にも立たない。人間)」(「テ」が「デ」と「クルポ」が「クルボウ」となった)

の転訛と解します。

1801てこずる(手こずる)

 もてあます。扱いかねる。処置に困る。

 この「てこずる」は、

  「テコ・ツル」、TEKO-TURU(teko=rock,isolated,standing out;turu=fly a kite)、「糸の切れた・凧(が飛ぶような)(手こずる)」(「ツル」が「ズル」となった)

の転訛と解します。

1802てこな(手児名)

 @上代、下総国葛飾郡の真間に住んでいたという少女の名。真間の手児名。「手児」((A)父母の手に抱かれ養い育てられる児。赤ん坊。幼児。(B)年若い女。おとめ)を親しんで言う語。Aちょう(蝶)の異名(「てこなこ」とも)。この「てこなこ(蝶)」については、国語篇(その十九)の498テキナコの項の「テコナコ」を参照してください。

 この「てこな」は、

  「テコ・ナ」、TEKO-NA(teko=rock,isolated,standing out;na=to indicate position near or connection with the person addressed)、@「飛び抜けて・綺麗な(少女)または可愛い(幼児)(手児名)」またはA「(独立して)行方定めずに飛ぶ・綺麗な(虫。蝶)」

の転訛と解します。

1803でこぼこ(凸凹)

 表面に出っ張りや凹みがあって平らでないこと。また、そのさま。おうとつ。凸凹野郎の略。大小、優劣、不公平など、人や物事相互の間に差のあること。また、そのさま。>

 この「でこぼこ」は、

  「テコ・ポコ」、TEKO-POKO(teko=rock,isolated,standing out;poko=go out,be extinguished,put out,beaten,defeated)、「(突出)出っ張りがあったり・なかったりすること(凹凸)」(「テコ」が「デコ」と、「ポコ」が「ボコ」となった)

の転訛と解します。

1804てし(手師)

 文字を巧みに書く人。能書の人。能筆。

 この「てし」は、

  「テ・エチア」、TE-ETIA(te=the;etia=as it were,as if,perhaps,how great!)、「(例の)名の知られた・(偉大な)能書の人(手師)」(「テ」のE音と「エチア」の語頭のE音がの語尾の音がの語頭の音とと連結して、語尾のA音が脱落して「テチ」から「テシ」となった)

の転訛と解します。

1805でし(弟子)

(師を父兄とみたてていう語とする説がある)師について個人的なつながりを持って仕えながら、学問や技芸などの教えを受ける人。門人。門弟。また、職人の徒弟。

 この「でし」は、

  「タイ・チ」、TAI-TI(tai=a term of address to males or females;ti=throw,cast,overcome)、「(師に)心服している・者(弟子)」(「タイ」のAI音がE音に変化して「テ」から「デ」と、「チ」が「シ」となった)

の転訛と解します。

1806てしお(手塩)

 @古く、好みに応じて適当に用いるように、あるいは不浄を祓うために、めいめいの食膳に添えた少量の塩。手塩皿の略。A手ずから世話すること。

 この「てしお」は、

  @「テ・チ・ホ」、TE-TI-HO(te=the;ti=throw,cast,overcome;ho=put out the lips,shout)、「例の(食膳に添える)・(嘗めると)口を・しかめるもの(塩。手塩)」(「チ」が「シ」と、「ホ」のH音が脱落して「オ」となった)

  A「タイ・チハウ」、TAI-TIHAU(tai=a term of address to males or females;tihau=twitter,confused sound of voice,a somewhat deep-toned inarticulate call)、「人(弟子)を・常にこんこんと言って聞かせて教育する(手塩)」(「タイ」のAI音がE音に変化して「テ」と、「チハウ」のH音が脱落し、AU音がO音に変化して「チオ」から「シオ」となった)

の転訛と解します。

1807てずから(手ずから)

 他人にさせないで、直接自分の手を下してするさまをいう。自分の手で。一般に、動作、行為を間接的でなくするさまをいう。自ら。自分で。

 この「てずから」は、

  「テ・ツ・カラ」、TE-TU-KARA(te=crack;tu=stand,settle,fight with,energetic;kara=secret plan,conspiracy,a request for assistance in war either verbal or material)、「(先が指となって分かれているもの)手を用いて・懸命に・(秘密裡に)黙って行動する(手ずから)」(「ツ」が「ズ」となった)

の転訛と解します。

1808てすり(手摺)

 (すがって手で摺るものの意とする説がある)橋や回廊などの欄干の上や、階段に沿って壁に取り付けた横木や柵。人形芝居の舞台前面に、人形遣いの腰から下を隠すために設けられたしきり。転じて、人形芝居、または人形遣い。

 この「てすり」、「」は、

  「テ・ツリ」、TE-TURI(te=crack;turi=knee,post of a fence)、「(先が指となって分かれているもの)手で伝う・(垣根のような)柵または横木(手摺)」(「ツリ」が「スリ」となった)

の転訛と解します。

1809てだ(太陽)

 沖縄方言で「太陽」をいう。

 この「てだ」は、

  「テ・タ」、TE-TA(te=the;ta=dash,strike with a stick etc.,overcome,lay)、「例の・(強烈な光りを)照らすもの(太陽)」(「タ」が「ダ」となった)

の転訛と解します。

1810てだい(手代)

 人の代理をすること。また、そのひと。てがわり。江戸時代、郡代・代官に属し、その指揮をうけ、年貢徴収、普請、警察、裁判など民政一般を司った小吏。同じ郡代・代官の下僚の手付(てつき)と職務内容は異ならないが、手付が幕臣であったのに対し、農民からさいようされた。江戸幕府の小吏。御蔵奉行、作事奉行、小普請奉行、林武侠、漆武侠、などに属し、雑役にしたがっていたもの。江戸時代、諸藩におかれた小吏。商家で番頭と丁稚の間に位する使用人。商業使用人の一つ。番頭と並んで、営業に関する一定の事項について代理権を有するもの。

 この「てだい」は、

  「タエ・タイ」、TAE-TAI(tae=arrive,reach,extend to,amount to of numbers,equual,proceed to;tai=a term of address to males or females)、「(一定の条件下で雇用者の権限と)等しい権限を有する・者(手代)」(「タエ」のAE音がE音に変化して「テ」と、「タイ」が「ダイ」となった)

の転訛と解します。

1811でたらめ(出鱈目)

 でまかせなこと。思いつくままに勝手なことを言ったり行ったりすること。いい加減であること。また、そのさま。無軌道。

 この「でたらめ」は、

  「テ・タラ・マエ」、TE-TARA-MAE(te=the;tara=make a buzzing or rattling or other inarticulate sound,gossip,scandal;mae=languid,withered,struck with astonishment or paralysed with fear etc.)、「例の・全く当てにならない・無駄話のような(出鱈目)」(「テ」が「デ」と、「マエ」のAE音がE音に変化して「メ」となった)

の転訛と解します。

1812てだれ(手練れ)

 技倆にすぐれた人。てだり。

 この「てだれ」は、

  「テ・タレイ」、TE-TAREI(te=crack;tarei=tarai=dress,shape,fashion,paticularly of working timber with an adze)、「(先が指となって分かれているもの)手を振るって・(素晴らしい)仕事を仕上げる人(手練れ)」(「タレイ」の語尾のI音が脱落して「ダレ」となった)

の転訛と解します。

1813てっか(鉄火)

 @赤く熱した鉄。焼きがね。中世、訴訟で神意をうかがった方法の一つ。論理によって容疑の実否を明らかにできない場合に、神前て誓いを立てて、真っ赤に熱した鉄棒を握らせたもの。火傷の程度によって裁定した。A刀剣と銃砲。Bまた、弾丸を発射したときにでる火。銃火。鉄火打ちの略。C気質が荒々しいこと。勇み肌であること。また、そのさま。多く女のそうした気質にいう。鉄火肌。歌舞伎で鉄火肌の人物の手拭いのかぶり方。D煙管のこと。E鉄火巻、鉄火丼などの略。

 この「てっか」は、

  @「テイ・ツ・カ」、TEI-TU-KA(tei,teitei=high,summit,top;tu=fight with,energetic;ka=take fire,be lighted,burn)、「最高に・(懸命に)真っ赤に・(火で)熱したもの(鉄火)」(「テイ」の語尾のI音が脱落して「テ」と、「ツ」が「ッ」となった)

  A、C「テ・ツカハ」、TE-TUKAHA(te=the;tukaha=strenuous,vigorous,hasty,passionate)、「例の・たいへん荒々しいもの(刀剣と銃砲。また、人のそのような気質)」(「ツカハ」のH音が脱落して「ツカ」から「ッカ」となった)

  B、D、E「テ・ツ・カ」、TE-TU-KA(te=the;tu=fight with,energetic;ka=take fire,be lighted,burn)、「例の・懸命に・火をともすもの(煙管)または火をともしたように真っ赤なもの(マグロの赤身を使った鉄火巻、鉄火丼など)」(「ツ」が「ッ」となった)

の転訛と解します。

1814てつだう(手伝う)

 手助けをする。援助する。手をかす。ある原因の上に他の原因が加わる。そのものに、他の原因が加わって影響を与える。

 この「てつだう」は、

  「テ・ツ・タウ」、TE-TU-TAU(te=crack;tu=fight with,energetic;tau,whakatau=cause to alight etc.,attempt,have recourse to,search,put on as an ornament)、「(先が指となって分かれているもの)手を出して・懸命に・(依頼に応じて)努力する(手伝う)」(「タウ」が「ダウ」となった)

の転訛と解します。

1815でっち(丁稚)

 商人または職人の家に奉公し、雑役、走り使いなどに使われる少年。小僧。年少者。また、年少者をいやしめていう言葉。

 この「でっち」は、

  「タイ・ツ・チ」、TAI-TU-TI(tai=a term of address to males or females;tu=stand,settle,fight with,energetic;ti=throw,cast,overcome)、「(上位の者に)徹底的に・服従する・者(丁稚)」(「タイ」のAI音がE音に変化して「テ」から「デ」と、「ツ」が「ッ」となった)

の転訛と解します。

1815-2てっちり(河豚ちり)

 (「てつ」は河豚の俗称である「鉄炮(てっぽう)」の略とする説がある)河豚のちり料理。

 この「てっちり」は、

  「タイ・ツ・チリ」、TAI-TU-TIRI(tai=tide,anger,rage,violence;tu=stand,settle;tiri=throw or place one by one,throw a present before one,scatter)、「(人の命にかかわる)暴挙を・あえてする・(河豚の切り身を熱湯の中に投じて煮て食べる)ちり料理(河豚ちり)」(「タイ」のAI音がE音に変化して「テ」と、「ツ」が「ッ」となった)

の転訛と解します。

1816てっぺん(天辺)

 兜の頂。転じて、頭の頂。物の一番高い所。頂上。はじめ。最初。物の極点。最高。最上。ホトトギスの鳴き声。

 この「てっぺん」は、

  「テ・ツ・パエ(ン)ガ」、TE-TU-PAENGA(te=the;tu=stand,settle;paenga=place whwre anything is laid on one side or accross,boundary,place where things are heaped up)、「例の・物の一番高い所に・位置するもの(天辺)」(「ツ」が「ッ」と、「パエ(ン)ガ」のAE音がE音に、NG音がN音に変化して「ペナ」から「ペン」となった)

の転訛と解します。

1817てづま(手妻)

 手先。また、手先の仕事。てつき。小手先の技。腕前。手品。奇術。「手妻操り」の略。「手妻人形」の略。

 この「てづま」は、

  「テ・ツマ」、TE-TUMA(te=the,crack;tuma=challenge,abscess)、「(先が指となって分かれているもの)手先を使ってする・挑戦(奇術。手妻)」(「ツマ」が「ヅマ」となった)

の転訛と解します。

1818てておや(父親)

 父親・男親。てて。ちち。この「おや(親)」については、国語篇(その二十)の588おやの項を参照してください。

 この「てておや」は、

  「テテ・オイ・イア」、TETE-OI-IA(tete=young shoot,chief,figure head of a canoe without arms or legs;oi=heoi=denoting completeness or sufficiency of a statement or enumeration;ia=indeed)、「(家族の)長であって・実に・完璧に(子を育てる)役割を果たす人(父親)」(「オイ」の語尾のI音と「イア」の語頭のI音が連結して「オイア」から「オヤ」となった)

の転訛と解します。

1819てぬぐい(手拭い)

 手や顔、身体などを拭きぬぐうための木綿の布。一幅の布を鯨尺で三尺にきったものを通常とした。てのぐい。てのごい。たなごい。たのごい。(延喜式巻十四縫殿寮の部に衆僧法服として「手巾(タノコヒ。テノコヒ)四条」と、日葡辞書には「Tenogoi」と、和漢三才図会二十八には「てのごひ 手巾 和名太乃古比」とあり、古くは「タノゴヒ(タナゴヒ)」と呼ばれ、のちに「テノゴイ」「テノグイ」から「テヌグイ」に変わったと解される。)

 この「てのごい」は、

  「テ・(ン)ゴ(ン)ゴイ」、TE-NGONGOI(te=the,crack;ngongoi=ngoi=creep,crawl(ngongo=waste away,suck,suck out))、「(先が指となって分かれているもの)手で・(布を)這わすようにして拭うもの(テヌグイ)」(「(ン)ゴ(ン)ゴイ」の最初のNG音がN音に、次のNG音がG音に変化して「ノゴイ」となり、のちに「ヌグイ」となった)

の転訛と解します。

1820でば(出刃)

 「出刃包丁(でばぼうちょう)」の略。刃の幅が広く、みねが厚く先の尖った包丁。魚・鳥を骨ごと切ったり、あらぎりをするときに用いる。

 この「でば」は、

  「タイ・パ」、TAI-PA(tai=tide,anger,rage,violence;pa=block up,prevent,assault)、「荒々しく・(襲う)ぶった切るもの(出刃)」(「タイ」のAI音がE音に変化して「デ」と、「パ」が「バ」となった)

の転訛と解します。

1821てまえみそ(手前味噌)

 自分で自分のことを誇ること。自慢。手味噌。

 この「てまえみそ」は、

  「タイママ・ヘミヘミ・ト」、TAIMAMA-HEMIHEMI-TO(taimama=light,not heavy;hemihemi=back of the head,excess over a definite number;to=drag,haul)、「(軽い)軽快で・(他よりも)抜きんでている・(という結論へ)導く(手前味噌)」(「タイママ」のAI音がE音に変化し、反覆語尾が脱落して「テマ」と、「ヘミヘミ」のH音および反覆語尾が脱落して「エミ」と、「ト」が「ソ」となった)

の転訛と解します。

1822てら(寺)

 (朝鮮語 chyol(礼拝所)、char(刹)またはパーリー語 thera(長老)からとする説がある)仏像を安置し、僧や尼が住み、仏道の修行や仏事を行う建物。中国では、もと外国の使臣をグウする役所の意であったのが、後漢の明帝の時白馬寺を建立してから寺院をも呼ぶ様になつたという。寺院。精舎。伽藍。梵刹。寺の住職、住持。寺木やの略。賭博を開いてしている場所。博奕宿。また、その博奕を主宰している人。胴元。寺銭の略。この「てら(寺)」については、古典篇(その十二)の233H2寺(てら)の項を参照してください。

 この「てら」は、

  「テ・エラ(ン)ギ」、TE-ERANGI(te=the...of;erangi=engari=it is better,but,onthe contrary)、「(日本古来の神社に対し)より良い・もの(寺)」または「(日本古来の神社に)対抗する・もの(寺)」(「テ」のE音と「エラ(ン)ギ」の語頭のE音が連結し、語尾のNGI音が脱落して「テラ」となった)

の転訛と解します。

1823てらう(衒う)

 自分で自分を褒めて宣伝する。みずからを吹聴する。てらさう。てらわす。自分の才能や学問などを誇り示す。みせびらかす。ひけらかす。

 この「てらう」は、

  「テラ(ン)ギ・フ」、TERANGI-HU(terangi=engari=it is better,but,onthe contrary;hu=resound,make any inarticulate sound,hiss,bubble up,be rumourednoise,tenor or drift of a speech)、「(自分が)より良いと・声を上げる(衒う)」(「テラ(ン)ギ」の語尾のNGI音が脱落して「テラ」と、「フ」のH音が脱落して「ウ」となった)

の転訛と解します。

1824てりやき(照り焼き)

 魚の切り身や鶏肉などを、みりんと醤油を混ぜたたれにつけて置き、そのたれを塗りながら艶がでるように焼くこと。また、その焼いたもの。

 この「てりやき」は、

  「タイリ・イア・キ」、TAIRI-IA-KI(tairi=be suspended(whakatairi=suspend,raise,place in an elevated position);ia=indeed,current;ki=full,very)、「実に・十分に・(魚や鶏肉にたれを)上に付けて(焼く料理法。照り焼き)」(「タイリ」のAI音がE音に変化して「テリ」と、「イア」が「ヤ」となった)

の転訛と解します。

1825でんがく(田楽)

 (平安時代から行われた芸能で、もと、田植えの時に田の神を祭るため笛・太鼓を鳴らして田の畦で歌い舞った田舞に始まるという「田楽」は、漢字による名称であるので、ここではとりあげない。)田楽焼きまたは田楽豆腐の略。田楽焼きは、なす、里芋、魚などを串にさし、味噌を塗って焼いた料理。田楽豆腐は、長方形に切った豆腐を串にさし、練り味噌を塗って焼いた料理。(田楽を舞う奉仕のいでたちに形が似るところから名付けられたとする説がある)この「でんがく(田楽)」については、国語篇(その二十)の517おでん・でんがく(田楽)の項を参照してください。

 この「でんがく」は、

  「タイ(ン)ガ・ク」、TAINGA-KU(tainga=place for bailing in a canoe(ta=dash water out of a canoe,so bail);ku,kuku=firm,stiff,thickend,not fluid or watery)、「(豆腐の)水気を切って・堅くした(調理した料理。田楽)」(「タイ(ン)ガ」のAI音がE音に変化して「テンガ」から「デンガ」となった)

の転訛と解します。

1826てんから・はなから

 @「天から」すなわち、最初からの意で、迷うまでもないという気持ちをこめて用いる語。はじめっから。あたまから。はなから。(打ち消し表現を伴って)まったく。そのようであることを強めていうのに用いる語。てんで。まるっきり。てんきり。

 Aはな(端。鼻)から。最初から。

 この「てんから」、「はなから」は、

  @「タイ(ン)ガ・カ・アラ」、TAINGA-KA-ARA(tainga=place for bailing in a canoe(ta=dash water out of a canoe,so bail);ka=to denote the commencement of a new action or condition;ara=rise,awake,raise)、「(カヌー置き場で)カヌーのあか水を抜いて出航の準備を整える・ことから・始める(最初から。てんから)」(「タイ(ン)ガ」のAI音がE音に、NG音がN音に変化して「テナ」から「テン」と、「カ」のA音と「アラ」の語頭のA音が連結して「カラ」となった)

  A「ハ(ン)ガ・カ・アラ」、HANGA-KA-ARA(hanga=make,build,work,business,head of a tree;ka=to denote the commencement of a new action or condition;ara=rise,awake,raise)、「(樹木のてっぺんのような)一番先・から・始める(最初から。はなから)」(「ハ(ン)ガ」のNG音がN音に変化して「ハナ」と、「カ」のA音と「アラ」の語頭のA音が連結して「カラ」となった)

の転訛と解します。

1827てんぐ(天狗)

 天上や深山に住むという妖怪。山の神の霊威を母胎とし、怨霊、御霊、など浮遊霊の信仰を合わせ、また、修験者に仮託して幻影を具体化したもの。山伏姿で、顔が赤く、鼻が高く、翼があって手足の爪が長く、金剛杖・太刀・うちわを持ち、神通力があり、飛行自在という。修験道の行者。山伏。高慢なこと。うぬぼれること。また、その人。この「てんぐ(天狗)」については、地名篇(その三)のe 鞍馬(くらま)山の項の「てんぐ(天狗)」を参照してください。

 この「てんぐ」は、

  「テ・(ン)グ」、TE-NGU(te=the;ngu=ghost,silent)、「例の・幽霊(天狗)」(「(ン)グ」が「ング」となった)

の転訛と解します。

1828てんご

 (「てんごう」の変化した語)わるさ。ふざけること。手淫。てんごう。

 この「てんご」は、

  「テナ・(ン)ゴウ(ン)ゴウア」、TENA-NGOUNGOUA(tena=that,this,there,here;ngoungoua=fool)、「あの・馬鹿げたこと(てんご)」(「テナ」が「テン」と、「(ン)ゴウ(ン)ゴウア」の名詞形語尾のA音が脱落し、さらに反覆語尾が脱落し、NG音がG音に変化して「ゴウ」から「ゴ」となった)

  または「テナ・(ン)ガウ」、TENA-NGAU(tena=that,this,there,here;ngau=bite,hurt,act upon,attack)、「あの・(良くない)仕業(悪さ、手淫など。てんご)」(「テナ」が「テン」と、「(ン)ガウ」のNG音がG音に、AU音がO音に変化して「ゴ」となった)

の転訛と解します。

1829てんじく(天竺)

 中国・日本で、インドの古称。(ペルシァ語 Henduのもと、Tenduから、またはサンスクリット Sinduからとする説がある)そら。天。高い所。上の方。「天竺木綿」の略。ヨーロッパ人の日本渡来語、語に添えて、外国、遠方の地、舶来などの意を表す。など。

 この「てんじく」は、

  「テナ・チ・イクイク」、TENA-TI-IKUIKU(tena=that,this,there,here;ti=throw,cast;ikuiku=eaves of a house)、「(あの空の彼方の)はるか遠方の・(屋根の庇のような)高い所に・ある(国。天竺)」(「テナ」が「テン」と、「チ」のI音と「イクイク」の反覆語尾が脱落した語頭のI音が連結して「チク」から「ジク」となった)

の転訛と解します。

1830てんでに

 (「てんでん」の変化した語。多く「に」を伴って用いる)それぞれ。めいめい。各自。おのおのが同じ動作をするさまにいう。

 この「てんでに」は、

  「テネイ・テネイ」、TENEI-TENEI(tenei=this,repeated to give distributive force,each,any,here)、「それぞれが・それぞれ(一つの目的に適った)同じ行動をする(てんでに)」(最初の「テネイ」が「テニ」から「テン」と、次の「テネイ」が「テニ」から「デニ」となった)

の転訛と解します。

1831てんてこまい(天手古舞い)

 「てんてこ」は太鼓の音。太鼓の音に合わせて舞うこと。転じて、あることの準備や対処のため、極めて慌ただしく立ち回ること。喜んで小躍りすること。うろたえて立ち騒ぐこと。あわてること。

 この「てんてこまい」は、

  「テナ・テコ・マイ」、TENA-TEKO-MAI(tena=encourage,urge forwatd,inviting co-operation or giving encouragement;teko=isolated,standing out;mai,maimai=a dance or haka to welcome guest at a tangi(lamentation,mourning,dirge))、「とんでもなく・興奮して・(踊るように)動き回る(天手古舞い)」(「テナ」が「テン」となった)

の転訛と解します。

1832てんでんばらばら

 それぞれにまとまりが無く入り乱れるさま。各人が勝手気ままに振る舞うさま。

 この「てんでんばらばら」は、

  「テネイ・テネイ・パラパラ」、TENEI-TENEI-PARAPARA(tenei=this,repeated to give distributive force,each,any,here;parapara=talents,gifts,faculties(para=bravery,spirit))、「それぞれが・(それぞれの)能力に従って・それぞれ行動をする(てんでんばらばら)」(最初の「テネイ」が「テニ」から「テン」と、次の「テネイ」が「テニ」から「デン」と、「パラパラ」が「バラバラ」となった)

の転訛と解します。

1833でんち(殿中)

 (「殿中(でんちゅう)羽織」の略で、「殿中」の変化した語かとされるが、殿中とは関係がない。)殿中羽織は、江戸時代に流行した、木綿の袖無し羽織。江戸初期旗本奴がこれを着て、六法を踏んで歩いたところからという。

 この「でんち」は、

  「テネ・エチ」、TENE-ETI(tene=invented,impromptu;eti=shrink,recoil)、「(袖を縮める)無くす・(発明)工夫をした(羽織。殿中羽織)」(「テネ」の語尾のE音と「エチ」の語頭のE音が連結して「テネチ」から「デンチ」となった)

の転訛と解します。

1834てんとうさま(天道様)

 天地を支配する神。転じて、太陽。おひさま。おてんとうさま。

 この「てんとうさま」は、

  「テナ・トウ・タマ」、TENA-TOU-TAMA(tena=encourage,urge forwatd,inviting co-operation or giving encouragement;tou=kindle,set on fire;tama=son,man,in a mystic sense)、「(地球の)生命に力を与え・火を授ける・至高の神(天道様)」(「テナ」が「テン」と、「タマ」が「サマ」となった)

の転訛と解します。

1835てんぷら(天麩羅)

 (ポルトガル語 temporo「調理」の意からとする説がある)魚貝類に、水溶きした小麦粉の衣をつけて、胡麻油、菜種油などで揚げた料理。江戸時代に始まる。ふつう野菜類を揚げたものは精進揚げという。てんぷらそば、てんぷらうどんの略。小麦粉を練った種を油で揚げて砂糖の衣をかけた菓子。(表面と中味が異なることから)鍍金したもの。また、にせ学生。

 この「てんぷら」は、

  「テ(ン)ガ・プララ」、TENGA-PURARA(tenga=Adam's apple,goitre,distended,strained,gorged;purara=having interstices,open)、「(衣が)膨れて・(身との間に)空隙があるもの(天麩羅)」(「テ(ン)ガ」のNG音がN音に変化して「テナ」から「テン」と、「プララ」の反覆語尾が脱落して「プラ」となった)

の転訛と解します。

1836てんもく(天目)

 (中国浙江省天目山の寺院で使用していたのを五山の僧などが持ち帰って賞したところからという)茶の湯に用いる、浅く開いたすり鉢形をした茶碗の総称。天目茶碗。

 この「てんもく」は、

  「テネ・モク」、TENE-MOKU(tene=invented,impromptu;moku=few,little)、「(発明)創作された・希少なもの(天目(茶碗))」(「テネ」が「テン」となった)

の転訛と解します。

1837てんやわんや

 (各自が勝手にの意の「てんでん」と、むちゃくちゃの意の「わや」または「わやく」が結合してできたもの)各自が勝手に振る舞って騒ぎたてること。大勢が先を争って混乱すること。また、そのさま。

 この「てんやわんや」は、

  「テネイ・イア・ワナワナ・イア」、TENEI-IA-WANAWANA-IA(tenei=this,repeated to give distributive force,each,any,here;ia=indeed;wanawana=spines,bristles,fear,thrill,fearsome,quiver)、「実に・それぞれ行動をし・実に・恐怖に駆られて動き回る(てんやわんや)」(「テネイ」が「テニ」から「テン」と、「イア」が「ヤ」と、「ワナワナ」の反覆語尾が脱落して「ワナ」から「ワン」となった)

の転訛と解します。

「ト」

1838とい(樋)

 屋根の雨水を受けて地上へ流す装置。湯、水などを送るために掛け渡した管や溝。樋。

 この「とい」は、

  「トヒヒ」、TOHIHI(trickle,slender,thread-like(tohi=divide,separate))、「水を少しづつ流す(細長い溝または管)(樋)」(「トヒヒ」の反覆語尾およびH音が脱落して「トイ」となった)

の転訛と解します。

1839といや(問屋)

 品物を買い集めて、卸売りする商家。とんや。自分の名で他人のために物品の販売または買い入れをすることを業とするもの。取次商の一種。とんや。江戸時代大坂堂島の米市場の浜方の一つ。正米および帳合米を売買するもの。帳合方や積方に対していう。遊里の揚げ屋のこと。問屋役の略。

 この「といや」は、

  「トヒ・イア」、TOHI-IA(tohi=divide,separate;ia=indeed,current)、「実に・(大量に買い集めた物を小口に)分割して販売するもの(問屋)」(「トヒ」のH音が脱落して「トイ」と、「イア」が「ヤ」となった)

の転訛と解します。

1840とう(薹)

 植物、特にアブラナやホウレンソウなどの葉菜、フキ・ケシなどの花茎をいう。くくたち。

 この「とう」は、

  「トウ」、TOU(anus,lower end of anything as the point of a whipping top,tail of a bird)、「(植物の旬が過ぎた後に花を咲かせ種を結んで枯れるための)最後に伸びる茎(薹)」

の転訛と解します。

1841どうぐ(道具)

 仏道修行のための三衣一鉢などの必要品。また、密教で、修法に必要な法具。物を作ったり仕事をはかどらせたりするために用いる種々の用具。また、日常使う身の回りの品々。調度。武家で槍。また、その他の武具。身体に備わっている種々の部分の称。能狂言や芝居の大道具・小道具。他の目的のために利用されるもの。また、他人に利用される人。

 この「どうぐ」は、

  「トウトウ・(ン)グ(ン)グ」、TOUTOU-NGUNGU(toutou=put articles into a receptacle,offer and withdraw,put frequently into aliquid;ngungu=eat greedy,gnaw)、「目的に応じて工夫された・(加工することに)集中するためのもの(道具)」(「トウトウ」の反覆語尾が脱落して「ドウ」と、「(ン)グ(ン)グ」の反覆語尾が脱落し、NG音がG音に変化して「グ」となった)

の転訛と解します。

1842とうげ(峠)

 (通行者がここで道祖神に手向をして祀り、旅路の平安を祈ったところから、「たむけ(手向)」の変化したものとする説がある)山の坂道を登り詰めた最も高い所。山の上り下りの境目。転じて、山。物事の勢いの最も盛んな時機や状態。最高点。この「とうげ(峠)」については、地名篇(その十六)のb塩尻(しおじり)峠の項を参照してください。

 この「とうげ」は、

  「トウ・(ン)ガエ」、TOU-NGAE(tou=annus,posteriors;ngae=wheeze)、「(越えるのに)息を切らす・(山の中の)尻(の割れ目)のような場所(峠)」(「(ン)ガエ」のNG音がG音に、AE音がE音に変化して「ゲ」となった)

の転訛と解します。

1843どうけ(道化)

 人を笑わせるようなおどけた言語・動作。また、それをする人。滑稽。おどけ。道化方の略。

 この「どうけ」は、

  「トフ・ケ」、TOHU-KE(tohu=mark,sign,point out,show;ke=different,strange,extraordinary)、「変わった・動作をする人(道化)」(「トフ」のH音が脱落して「トウ」から「ドウ」となった)

の転訛と解します。

1844とうざいとうざい(東西東西)

 主として大勢の騒がしい中に立ち入ってそれを静めるときにいう。静かにしろ。静粛に。特に、芝居や相撲などで、見物人を静めたり、口上をのべたりするときに言う決まり文句。

 この「とうざいとうざい」は、

  「トウ・タイ・トウ・タイ」、TOU-TAI-TOU-TAI(tou=thy(plural,ou);tai=used only as a term of address to males or females)、「貴方・(男女)皆さん・貴方・皆さん(東西東西)」(「タイ」が「サイ」から「ザイ」となった)

の転訛と解します。

1845とうさん(嬢さん)・とうさん(父様)

 @(「いとさん」の変化した語とする説がある)お嬢さん。近代公家言葉で、令息または令嬢。

 A(「ととさん」の変化した語とする説がある)お父(とう)さん。「とうさま」よりくだけたいい方。

 この「とうさん」は、

  @、A「トフ・タナ」、TOHU-TANA(tohu=mark,,sign,point out,show,preserve,lay by;tana=his,her,its)、@「(家庭内で大切に)養育されている・彼女(お嬢さん)」またはA「(家族に)指示をする・彼(お父さん)」(「トフ」のH音が脱落して「トウ」と、「タナ」が「サン」となった)

の転訛と解します。

1846とうじ(杜氏)

 @酒造家で酒を醸造する職人の長。また、A酒つくりの職人。さかとうじ。とじ。この「とうじ(杜氏)」については、雑楽篇(その二)の1011酒(さけ)の項の「杜氏(とうじ」を参照してください。

 この「とうじ」は、

  @「トフ・チヒ」、TOHU-TIHI(tohu=mark,sign,company or division of any army,point out,show;tihi=summit,top,lie in a heap)、「(酒醸造の)職業集団の・最高の地位にいる人(杜氏)」(「トフ」のH音が脱落して「トウ」と、「チヒ」のH音が脱落して「チ」から「ジ」となった)

  A「トフ・チ」、TOHU-TI(tohu=mark,sign,company or division of any army,point out,show;ti=throw,cast,overcome)、「(酒醸造の)職業集団の・(放り込まれた)構成員(職人。杜氏)」(「トフ」のH音が脱落して「トウ」と、「チ」が「ジ」となった)
  または「タウ・チ」、TAU-TI(tau=season,year,period of time;ti=throw,cast,overcome)、「(毎年)季節が巡ってくると・(仕事に)投入される(出稼ぎしてくる人。職人)」(「タウ」のAU音がOU音に変化して「トウ」と、「チ」が「ジ」となった)  

の転訛と解します。

1847どうし(同志。同士)

 志(こころざし)や主義・主張を同じくすること。また、その人。同じ目的をもつ仲間。動作・性質・状態などにおいて、互いに共通点を持っている人。同じ仲間。(同志)特に、革命的集団や社会主義国などで、その仲間の者の名につけて呼ぶのに用いる。

 この「どうし」は、

  「トフ・チ」、TOHU-TI(tohu=mark,sign,company or division of any army,point out,show;ti=throw,cast,overcome)、「(同じ主義・主張または共通点を有する)集団の・(放り込まれた)構成員(同志。同士)」(「トフ」のH音が脱落して「トウ」から「ドウ」と、「チ」が「シ」となった)

の転訛と解します。

1848とうしろう(藤四郎)

 (「しろうと(素人)」の「うと」を逆さにして前につけたとする説がある)素人のこと。

 この「とうしろう」は、

  「トフ・チロ」、TOHU-TIRO(tohu=mark,sign,company or division of any army,point out,show;tiro=look)、「職業集団(の行動・実態)を・(外部から)見ているだけ(の人。素人)」(「トフ」のH音が脱落して「トウ」と、「チロ」が「シロウ」となった)

の転訛と解します。

1849とうてい(到底)

 つまるところ。つまり。しまいには。(下に打ち消しの語を伴って)どうやってみても。とても。しょせん。物事の奥底に届くこと。

 この「とうてい」は、

  「タウテ・イ」、TAUTE-I(taute=mature,bring to perfection,tend,look after;i=past tense,by reason of,for want of,in comparison with)、「(物事の)終了・に至る(到底)」(「タウテ」のAU音がOU音に変化して「トウテ」となった)

の転訛と解します。

1850とうとう(到頭)

 物事の最終的な結果が現れるさまを表す語。ついに。結局。

 この「とうとう」は、

  「トウトウ」、TOUTOU(put articles into a receptacle,dip frequently into liquid,offer and withdraw,sprinkle with water)、「(或る物を最後にその容器に納めるように)物事が終了する(到頭)」

の転訛と解します。

1851どうどうめぐり(堂々巡り)

 祈願のため、または儀式として、仏や仏道のまわりを回ること。遊戯の一つ。手を繋ぎ輪をつくって歌いながらぐるぐる回る遊び。同じところをぐるぐる回ること。同じことをいつまでも繰り返して進展しないこと。

 この「どうどうめぐり」は、

  「トウトウ・マイ・ヱ(ン)グ・ウリ」、TOUTOU-MAI-WHENGU-URI(toutou=put articles into a receptacle,dip frequently into liquid,offer and withdraw,sprinkle with water;mai=to indicate direction or motion towards;whengu=whenu=twist or spin a strand or cord,strand of a cord,warp of a flax garment;uri=descendant,relative,race)、「(ある物を)回転・させるのに・似た動作を・何回となく続ける(堂々巡り)」(「トウトウ」が「ドウドウ」と、「マイ」のAI音がE音に変化して「メ」と、「ヱ(ン)グ」のWH音が脱落し、NG音がG音に変化して「エグ」となり、「メ」のE音と「エグ」の語頭のE音が連結して「メグ」となり、「メグ」の語尾のU音と「ウリ」の語頭のU音が連結して「メグリ」となった)

の転訛と解します。

1852とうどり(頭取)

 音頭を取る人。転じて、一般に頭(かしら)だつ人。集団の長。首領。頭目。かしら

 この「とうどり」は、

  「トフ・タウリ」、TOHU-TAURI(tohu=mark,sign,company or division of any army,point out,show;tauri=fillet,band,bind,secure with a fillet)、「(目的を同じくする)集団を・(束ねる)統率する人(頭取)」(「トフ」のH音が脱落して「トウ」と、「タウリ」のAU音がO音に変化して「トリ」から「ドリ」となった)

の転訛と解します。

1853とうに(疾うに)

 すでに。とっくに。

 この「とうに」は、

  「トウ・ニヒ」、TOU-NIHI(tou=tonu=denoting continuance,still,continually,quite,just,only,immediately;nihi,ninihi=move stealthly,come stealthly upon)、「ずっと・(すでに)そうなっている(疾うに)」(「ニヒ」のH音が脱落して「ニ」となった)

の転訛と解します。

1854とうふ(豆腐)・ごじる(呉汁)・にがり(苦汁)

 大豆を加工した食品。水に浸した大豆を擂り潰した呉汁(ごじる)を煮て漉した豆乳に苦汁(にがり)を加え、型箱に入れて圧縮・水切りして製造したもの。

 この「とうふ」、「ごじる」、「にがり」は、

  「トウトウ・ウフ」、TOUTOU-UHU(toutou=put articles into a receptacle,dip frequently into liquid;uhu=cramp,,stiffness,benumbed)、「(水に浸した大豆を擂り潰した呉汁(ごじる)を煮て漉した豆乳に苦汁(にがり)を加え)型箱に入れて・圧縮したもの(豆腐)」(「トウトウ」の反覆語尾が脱落して「トウ」となり、そのU音と「ウフ」の語頭のU音が連結して「トウフ」となった)

  「(ン)ガウ・チ・ル」、NGAU-TI-RU(ngau=bite,hurt,act upon,attack;ti=throw,cast,overcome;(Hawaii)lu=to scatter,to drip as water)、「(大豆を)擂り潰した・(水のように)滴り・落ちるもの(呉汁)」(「(ン)ガウ」のNG音がG音に、AU音がO音に変化して「ゴ」と、「チ」が「シ」から「ジ」となつた)

  「ニヒ・(ン)ガリ」、NIHI-NGARI(ninihi=move stealthly,come stealthly upon;ngari=annoyance,disturbance,greatness,power)、「(豆乳を固まらせる)能力が・徐々に発揮されるもの(苦汁)」(「ニヒ」のH音が脱落して「ニ」と、「(ン)ガリ」のNG音がG音に変化して「ガリ」となった)

の転訛と解します。

1855どうぶるい(胴震い)

 寒さや恐怖・興奮などのために、全身が一時的に震えること。

 この「どうぶるい」は、

  「トウ・ププ・ルイ」、TOU-PUPU-RUI(tou=tonu=denoting continuance,still,continually,quite,just,only,immediately;pupu=bubble up,boil,break forth,spring up;rui=shake,brandish,scatter)、「震えが・直ちに・(全身から)湧き上がる(胴震い)」(「トウ」が「ドウ」と、「ププ」の反覆語尾が脱落して「プ」から「ブ」となった)

の転訛と解します。

1856とうへんぼく(唐変木)

 気のきかない人物やわからずやなどを罵っていう語。

 この「とうへんぼく」は、

  「トウ・ヘ(ン)ガ・パウク」、TOU-HENGA-PAUKU(tou=tonu=denoting continuance,still,continually,quite,just,only,immediately;henga=circumstance etc. of erring(he=wrong,mistaken,in trouble or difficulty);pauku=a thick closely woven cloak of flax which dipped in water served as a protection from spear thrusts)、「(緻密に織られた外套に水を含ませたものの)槍を防ぐ性能(に関する常識)を・否認する誤りを・改めようとしない人(唐変木)」(「ヘ(ン)ガ」のNG音がN音に変化して「ヘナ」から「ヘン」と、「パウク」のAU音がO音に変化して「ポク」から「ボク」となった)

の転訛と解します。

1857どうまごえ(胴間声)

 濁って調子の外れた下品な声。太くて下卑た調子の声。どうばりごえ。

 この「どうまごえ」は、

  「トフ・マハ・コエ」、TOHU-MAHA-KOE(tohu=mark,company or division of any army,point out,show;maha=gratified,depressed,resigned;koe=scream,cry as a bird,squeak)、「軍隊の・(人を押さえつける)命令口調の・叫び声(胴間声)」(「トフ」のH音が脱落して「トウ」から「ドウ」と、「マハ」のH音が脱落して「マ」となった)

の転訛と解します。

1858どうも

 (打消し表現を伴って)いろいろと行為をしてみても、またあり得る状態を考えた上でも否定される気持ちを表す語。なんとしても。どんなふうにも。どう考えても。いろいろしたり考えたりして結局認める気持ちを表す語。感動を伴うことが多い。何とも。いやはや。判断の根拠や物事の原因が不確かであったりむして、現実のあり方に疑念をもつ気持ちを表す語。どうやら。なんだか。どういうものか。(どう申し上げようもないほど、の意から)感謝したり、詫びたりする気持ちを含む挨拶に用いる。あいまいな、または安易な挨拶の言葉。

 この「どうも」は、

  「トフ・モ」、TOHU-MO(tohu=mark,company or division of any army,point out,show,point at;mo=for,on account of,for the benefit of,for the use of,in preparation for,in consideration of the fact that)、「(いろいろの行為の)原因や理由などを・明らかにしようとしても(何と言ったらよいか分からないが。どうも)」(「トフ」のH音が脱落して「トウ」から「ドウ」となった)

の転訛と解します。

1859どうらく(道楽)

 仏語。仏道修行によって得た悟りの楽しみ。法悦の境界。本職以外の道にふけり楽しむこと。また、物好きであること。その人。好事家。品行が悪いこと。身持ちがよくないこと。だらしか゜゛ないこと。特に、酒色や博奕などの遊興にふけり、溺れてしまうこと。また、その人。道楽者。放蕩者。とんでもないこと。並外れていること。

 この「どうらく」は、

  「トフ・ラハ・アク(ン)ガ」、TOHU-RAHA-AKUNGA(tohu=mark,company or division of any army,point out,show,point at;raha=open,extended;akunga=rank and file)、「(人の熱中して行う行為が)並外れて・本職以外の分野に大きく広がっていることが・明らかであること(道楽)」(「トフ」のH音が脱落して「トウ」から「ドウ」と、「ラハ」のH音が脱落して「ラ」となり、そのA音と「アク(ン)ガ」の語頭のA音が連結し、名詞形語尾のNGA音が脱落して「ラク」となった)

の転訛と解します。

1860とうりょう(頭領。棟梁)

 ある集団をまとめて、おさめること。また、その人。屋根の棟と梁。(屋根の棟と梁は建物の重要な部分であるところから)国家の重要な任務に当たる人。ある集団の中心となる人。主立ったもの。かしら。首領。頭領。大工の頭。棟梁。

 この「とうりょう」は、

  「トフ・リ・アウ」、TOHU-RI-AU(tohu=mark,company or division of any army,point out,show,point at;ri=screen,protect,bind,bond;au=firm,intense)、「(ある)集団を・しっかりと・(束ねる)統率する人()」(「トフ」のH音が脱落して「トウ」と、「アウ」のAU音がO音に変化して「リ・オ」が「リョウ」となった)

の転訛と解します。

1861どうれ

 訪問者が案内を請うた時、家人がそれに答える言葉。どうれい。

 この「どうれ」は、

  「トフ・レイ」、TOHU-REI(tohu=mark,company or division of any army,point out,show,point at;rei=leap,rush,run)、「(貴方に)向かって・走って出ましょう(どうれ)」(「トフ」のH音が脱落して「トウ」から「ドウ」と、「レイ」が「レ」となった)

の転訛と解します。

1862とかく(兎角)

 雑多な事態を包含的に指示する。あれこれ。あれやこれや。何やかや。さまざま。いろいろ。とかくに。ある事態の詮索や拘泥を打ち切って、判断や意思を決めようとする気持ちを表す。いずれにもせよ。何はともあれ。ともかくも。とにかくに。ある一つの状態が、特定の条件を要するまでもなく、成り立ちやすいという気持ちを表す。何かにつけて。得てして。どうかすると。ともすれば。あれこれとよくないさま。とかくの評判。

 この「とかく」は、

  「ト・カク」、TO-KAKU(to=drag,haul;kaku=scrape up,scoop up,bruise,shred,pieces stripped off in the process of dressing flax,dried leaves or other vegetable refuse such as that offen deposited by a flood)、「衣服をつくるのに糸のつむぎ方から・指示するような(あれこれと。兎角)」

の転訛と解します。

1863とがめる(咎める)

 悪事や欠点などをそれと指示して非難する。取り立てて責める。問いただす。なじる。不審に思って心をとめる。また、珍しいもの、興をそそるものに対して注意を向ける。腫れ物などが刺激を受けて、熱が出たり痛んだりする。悪いことをしたと思って心に痛みを感じる。

 この「とがめる」は、

  「ト(ン)ガ・マイ・ル」、TONGA-MAI-RU(tonga=restrained,suppressed,sedret;mai=to indicate direction or motion towards;ru=shake,agitate,scatter)、「興奮して・相手に向かって・(その悪事や欠点などを指摘して)責める(咎める)」(「ト(ン)ガ」のNG音がG音に変化して「トガ」となった)

の転訛と解します。

1864とき(時)

 時間の流れ。時間。光陰。時法によって定められる一昼夜のうちの一時点。時刻。時代。年代。世。時節。季節。時候。現在。適当な時候。ふさわしい時期。など。

 この「とき」は、

  「トキ」、TOKI(altogether,without exception(tokitoki=very calm))、「凡て一斉に(経過してゆくもの)(時)」

の転訛と解します。

1865とき(斎)

 (食すべき時の食の意)僧家で、食事の称。正午以前に食すること。肉食をとらないこと。精進料理。檀家や信者が寺僧に供養する食事。また、法要のときなどに檀家で僧、参会者に出す食事。法要。仏事。節の日。また、その日の飲食。

 この「とき」は、

  「ト・ホキ」、TO-HOKI(to=the...of,drag,haul;hoki=return,restorative charm)、「例の・元気を回復するためのもの(食事。斎)」(「ト」のO音と、「ホキ」のH音が脱落して「オキ」となったその語頭のO音が連結して「トキ」となった)

の転訛と解します。

1866とき(鬨)

 合戦で、開戦に際し、士気を鼓舞し、敵に対し先頭の開始を告げるために発する叫び声。また、戦勝の喜びの表現としても発した。ときの声。

 この「とき」は、

  「トキ」、TOKI(adze or axe,generally made of stone,possibly sometimes of shell)、「(戦闘用の)斧を上げて叫ぶ声(鬨)」()

の転訛と解します。

1867とぎ(伽)

 話相手をしてつれづれを慰めること。退屈を慰めること。また、その人。寝所に侍ること。添臥しすること。寝室での相手をすること。また、その人。看病すること。介抱すること。漢語すること。また、その人。戦国・江戸時代、主君に近侍して、武辺噺や諸国噺などをしたり、雑談の相手を務めたりする職。また、その人。通夜。

 この「とぎ」は、

  「ト・ホ(ン)ギ」、TO-HONGI(to=the...of(to=be pregnant,be conceived in the womb);hongi=smell,sniff,salute by pressing the noses together)、「例の(妊娠をひきおこす)・(通常の鼻をつける)挨拶(伽)」(「ト」のO音と、「ホ(ン)ギ」のH音が脱落し、NG音がG音に変化して「オギ」となったその語頭のO音が連結して「トギ」となった)

の転訛と解します。

1868ときじく(非時)

 いつでもあるさま。 0

 この「ときじく」は、

  「トキ・チ・ク」、TOKI-TI-KU(toki=altogether,without exception;ti=throw,cast;ku=silent)、「(全く)常時・(世の中に)静かに・存在する(非時)」(「チ」が「シ」から「ジ」となった)

の転訛と解します。

1869ときめく(時めく)

 よい時に遭って全盛を誇る。よい時期にめぐりあって世間にもてはやされる。主人・夫などから、特別に目をかけられる。寵愛をうけて、はぶりがよくなる。賑やかに噂する。

 この「ときめく」は、

  「トキ・メ・ク」、TOKI-ME-KU(toki=altogether,without exception;me=with,denoting concomitance or concurrence in time;ku=showery unsettled weather or a personification of the same)、「(ある)時に巡りあって・尋常でなく定まらない豪雨に遭ったかのように・一斉にもてはやされる(または噂される)(時めく)」

の転訛と解します。

1870ときわぎ(常磐木)

 松、杉などのように、年中その葉が緑色をしている樹木。常緑樹。冬木。

 この「ときわぎ」は、

  「トキ・ワ・キヒ」、TOKI-WHA-KIHI(toki=altogether,without exception;wha=leaf,flake,feather;kihi=strip of branches,etc.)、「いつも・葉が・枝に着いている木(常磐木)」(「キヒ」のH音が脱落して「キ」から「ギ」となった)

の転訛と解します。

1871とぐら(鳥座)

 鳥が止まったり、乗ったりするところ。鳥のねぐら。鳥を飼っておく小屋。とや。

 この「とぐら」は、

  「タウ・クフ・ウラ(ン)ガ」、TAU-KUHU-URANGA(tau=come to rest,come to anchor,settle down,be suitable;kuhu=thrust in,insert,conceal;uranga=act or circumstance etc. of becoming firm,place etc. of arrival)、「(鳥が)休息するために・中に入る・止まり木のある小屋(鳥座)」(「タウ」のAU音がO音に変化して「ト」と、「クフ」のH音が脱落して「ク」から「グ」となったそのU音と、「ウラ(ン)ガ」の名詞形語尾のNGA音が脱落して「ウラ」となったその語頭のU音が連結して「グラ」となった)

の転訛と解します。

1872とくり(徳利)

 細長くて口の狭い、酒などを入れる容器。この「とくり(徳利)」については、雑楽篇(その二)の1041壺(つぼ)の項の「徳利(とくり)」を参照してください。

 この「とくり」は、

  「ト・クフ・ウリ」、TO-KUHU-URI(to=moisten,wet;kuhu=thrust in,insert;uri=descendant,race)、「液体を・中に入れる・(種類の)容器(徳利)」(「クフ」のH音が脱落して「ク」となり、その語尾のU音と「ウリ」の語頭のU音が連結して「クリ」となった)

の転訛と解します。

1873とぐろ(蜷局)

 蛇などが身体を渦巻状に巻くこと。その巻いた状態。

 この「とぐろ」は、

  「タウ・クフ・ロ」、TAU-KUHU-RO(tau=come to rest,come to anchor,settle down,be suitable;kuhu=thrust in,insert,conceal;ro=inside)、「(蛇などが)休息するために・(身体を渦巻き状に巻いて頭を)中に・入れて(隠して)いる状態(蜷局)」(「タウ」のAU音がO音に変化して「ト」と、「クフ」のH音が脱落して「ク」から「グ」となった)

の転訛と解します。

1874とげ(刺)

 植物や動物の体表にある堅くて先の尖った突起物。竹・木などの尖った細片が人の肌にささったもの。飲食の際、魚の小骨などが、のどに刺さったもの。人の心を刺すようなもの。など。この「とげ(刺)」については、雑楽篇(その二)の552たらのき(針桐)の項の「とげ」を参照してください。

 この「とげ」は、

  「ト・(ン)ゲ」、TO-NGE(to=tingle;nge=noise,screech)、「(刺さると)痛んで・悲鳴を上げるもの(とげ)」(「(ン)ゲ」のNG音がG音に変化して「ゲ」となった)

の転訛と解します。

1875とこ(床)

 人の座る台。高さ一尺くらいで土間に用いる。寝所として設ける所。ねどこ。ふしど。蒲団を敷いた寝床。また、男女の共寝。床(ゆか)。畳のこと。現代では、芯を畳表と区別していう。牛車の人の乗る所。床の間。桟敷。葭簀張りに簡単な床を張るなどして、常時は人の住めない簡単な店。など。

 この「とこ」は、

  「タウ・コ」、TAU-KO(tau=come to rest,come to anchor,settle down,be suitable;ko=of place,to,at)、「(人が)休息する・場所(床)」(「タウ」のAU音がO音に変化して「ト」となった)

の転訛と解します。

1876とこしえ(永久)

 永く変わらないさま。永久不変であるさま。いつまでも同じ状態で続くさま。とこしなえ。

 この「とこしえ」は、

  「トコ・チエ」、TOKO-TIE(toko=pole,propel with a pole,push or force to a distance;tie=abundance,plenty)、「極めて遠い・彼方へ(今の状態を)押しやって行く(永久)」(「チエ」が「シエ」となった)

の転訛と解します。

1877とこや(床屋)

 (江戸時代男の髪を結う髪結い職が床店で仕事をしていたところから)髪結床。理髪店。また、理髪師。

 この「とこや」は、

  「タタウ・コイ・イア」、TATAU-KOI-IA(tatau=tie with a cord,count,repeat one by one;koi=good,suitable;ia=indeed)、「実に・綺麗に・(髪を結って)紐で縛る職業(床屋)」(「タタウ」の反覆語頭が脱落した「タウ」のAU音がO音に変化して「ト」と、「コイ」の語尾のI音と「イア」の語頭のI音が連結して「コヤ」となった)

の転訛と解します。

1878ところてん(心太)

 海藻のテングサを煮とかして、その煮汁を漉し、型に流して冷やし固めた食品。テングサの異名。

 この「ところてん」は、

  「トコ・ロ・テ(ン)ガ」、TOKO-RO-TENGA(toko=begin to move,swell,increase in bulk;ro=roto=inside;tenga=Adam's apple,distended,strained)、「中に・(水を)吸収して・膨れ上がるもの(心太)」(「テ(ン)ガ」のNG音がN音に変化して「テナ」から「テン」となった)

の転訛と解します。

1879とさか(鶏冠)

 鶏の頭上にある肉質の扁平な突起で、正中線上に直立して上端は掌状に分かれる。この「とさか(鶏冠)」については、雑楽篇(その二)の636にわとり(鶏)の項の「とさな(鶏冠)」を参照してください。

 この「とさか」は、

   「タウ・タカ」、TAU-TAKA(tau=ridge of a hill,reef,come to rest,settle down,be suitable,beautifull;taka=heap,heap up,lie in a heap)、「(ごつごつした岩のような)美しい・高まり(鶏冠)」(「タウ」のAU音がO音に変化して「ト」となった)

の転訛と解します。

1880どさくさ

 混雑していて騒々しいさま。取り込んでいる状態。ごたごた。混乱。あれこれとせわしく働いたり、混乱して騒いだりするさまを表す語。

 この「どさくさ」は、

  「ト・タハ・クク・ウタ」、TO-TAHA-KUKU-UTA(to=drag,haul;taha=side,edge,pass on one side,go by;kuku=grating sound,make a grating sound;uta=put persons or goods on board a canoe etc.)、「(荷物を曳く)運搬する・そばを通り抜け・喧しい音を立てながら・(船に)荷物を積み込む状況(混雑して騒々しいさま。どさくさ)」(「ト」が「ド」と、「タハ」のH音が脱落して「タ」から「サ」と、「クク」の反覆語尾が脱落して「ク」となり、そのU音と「ウタ」の語頭のU音が連結して「クタ」から「クサ」となった)

の転訛と解します。

1881とざす(閉ざす)

 門や戸を閉じて錠をおろす。戸締まりをする。閉じる。人が通れなくなるほど草木が茂る。戸を閉めて営業をやめる。閉じる。通れなくなるように、通路などを塞ぐ.中に閉じ込める。ふさぐ。覆い隠す。

 この「とざす」は、

  「トタハ・アツ」、TOTAHA-ATU(totaha=bind,encircle with a band;atu=to indicate a direction or motion onwards,to indicate reciprocated action)、「(出入口を縄で)縛って・しまう(閉ざす)」(「トタハ」のH音が脱落して「トサ」から「トザ」となり、その語尾のA音と「アツ」の語頭のA音が連結して「トザス」となった)

の転訛と解します。

1882どさまわり(ドサ回り)

 (「どさ」は田舎、地方の意。江戸時代の賭場用語で、現行犯が佐渡へ送られたことから「さど」の倒語「どさ」を地方送りの意に用いたところからとする説があるが、芸能関係の隠語で「さと(里)」の倒語「とさ」から「どさ」となったと考えられる)劇団などが地方を興行してまわること。地方巡業。また、専ら地方巡業をしている劇団など。転じて、中央から地方への転勤などもいう。

 この「どさまわり」は、

  「タタウ・マ・ハリ」、TATAU-MA-HARI(tatau=settle down upon;ma=go,come;hari=dance,sing a song to dance to,carry)、「(人々が定住する地域。里)地方を・動き回って・(舞踊を見せる)興行する(ドサ回り)」(「タタウ」のAU音がO音に変化して「タト」から「サト」、転倒して「ドサ」と、「ハリ」が「ワリ」となった)

の転訛と解します。

1883とし(年。歳)

 時の単位で、一年間を単位とする歳月。年次。その年。当年。今までに経過した年数。年代。時世。季節の区分。節季。年齢。この「とし(年)」については、国語篇(その九)の200yearの項の「と(年)」を参照してください。

 この「とし」は、

  「タウ・チ」、TAU-TI(tau=season,year,the recurring cycle being the predominating idea rather than the definite time measurement,period of time,interval;ti=throw,cast,overcome)、「経過した・年(年。歳)」(「タウ」のAU音がO音に変化して「ト」と、「チ」が「シ」となった)

の転訛と解します。

1884とじ(刀自)

 家事を司る婦人。主婦。いえとうじ。女性を尊敬または親愛の気持ちをこめて呼ぶ称。年老いた女。老婦人。など。

 この「とじ」は、

  「タウ(ン)ガ・チヒ」、TAUNGA-TIHI(taunga=resting place;tihi=summit,top,lie in a heap)、「(休息の場所)家の・最高の地位にある人(刀自)」(「タウ(ン)ガ」のAU音がO音に変化し、名詞形語尾のNGA音が脱落して「ト」と、「チヒ」のHが脱落して「チ」から「ジ」となった)

  または「タウ・チ」、TAU-TI(tau=come to rest,settle down,be suitable,be possible;ti=throw,cast,overcome)、「(家事を)適切に・支配する人(刀自)」(「タウ」のAU音がO音に変化して「ト」と、「チ」が「ジ」となった)

の転訛と解します。

1885どじ

 しなくてすむようなへまをするさま。のろま。へま。失敗。また、そのような人。人を罵っていう語。

 この「どじ」は、

  「トフ・チ」、TOHU-TI(tohu=sink;ti=throw,cast,overcome)、「(失敗して気持ちが)落ち込み・打ちひしがれること(どじ)」(「トフ」のH音が脱落して「ト」から「ド」と、「チ」が「ジ」となった)

の転訛と解します。

1886としだま(年玉)

 新年を祝ってする贈り物。

 この「としだま」は、

  「ト・オチ・タマ」、TO-OTI-TAMA(to=the...of;oti=finished,gone or come for good;tama=son,child,man)、「例の・子(や人)の・幸福を祈る贈り物(年玉)」(「ト」のO音と「オチ」の語頭のO音が連結して「トチ」から「トシ」と、「タマ」が「ダマ」となった)

の転訛と解します。

1887としま(年増)

 娘盛りを過ぎて、やや年をとった女性。江戸時代では二十歳前後を年増、二十三、四歳から三十歳までを中年増、それより上を大年増といった。

 この「としま」は、

  「ト・オチ・マハ」、TO-OTI-MAHA(to=the...of;oti=finished;maha=many,abundant)、「例の・(娘盛りの時期を)だいぶ・過ぎた(女性。年増)」(「ト」のO音と「オチ」の語頭のO音が連結して「トチ」から「トシ」と、「マハ」のH音が脱落して「マ」となった)

の転訛と解します。

1888としみ(落忌)

 (「おとしいみ」の略とする説がある)仏事・法要・参詣などの精進の期間を終えて、肉食の宴を張ること。精進落とし。

 この「としみ」は、

  「ト・オチ・ミヒ」、TO-OTI-MIHI(to=the...of;oti=finished;mihi=sigh for,lament,greet)、「例の・(悲嘆に暮れる)精進(の期間)が・終了した(ことに伴う行事。落忌)」(「ト」のO音と「オチ」の語頭のO音が連結して「トチ」から「トシ」と、「ミヒ」のH音が脱落して「ミ」となった)

の転訛と解します。

1888-2としより(年寄)

 @年を取った人。老人。

 A武家で、政務に参与した重臣。室町幕府では評定衆・引付衆の総称。江戸幕府では老中、大名の諸家では家老、また朝廷では議奏をさした。また、江戸時代、年寄百姓の略。庄屋を補佐する組頭約の別称。宿駅の問屋を補佐する役人。町政を預かる役人(町年寄)など。江戸幕府の大奥の女中の重職。

 この「としより」は、

  @「ト・チヒ・オリ」、TO-TIHI-ORI(to=the...of;tihi=summit,top,peak,lie in a heap;ori=cause to wave to and fro,sway,move about)、「例の・たいへん年を重ねて・人生を歩んできた人(年寄)」(「チヒ」のT音がS音に変化し、H音が脱落して「シイ」となり、「シイオリ」から「シヨリ」となった)

  A「ト・オチ・イホ・リ」、TO-OTI-IHO-RI(to=the...of;oti=finished,gone or come for good;iho=heart or essence of a tree etc.,that wherein consist the strength of a thing as of an army etc.,object of reliance,principle person or skilled person in the crew of a canoe;ri=screen,protect,bind)、「例の・(功績)実績を重ねて・(人々の先頭に立つ)信頼を・獲得した人(年寄)」(「ト」のO音と「オチ」の語頭のO音が連結して「トチ」から「トシ」と、「イホ」のH音が脱落して「イオ」となり、「イオ・リ」から「ヨリ」となった)

の転訛と解します。

1889どす(短刀)

 (「おどす」の略かとする説がある)短刀や懐剣、あいくちのこと。すごみ。(「どすのきいた太い声」など)

 この「どす」は、

  「トフ・ツツ」、TOHU-TUTU(tohu=mark,company or division of any army,point out,show,point at;tutu=move with vigour,violent,vigorous)、「強い迫力を・見せつけるもの(短刀)」(「トフ」のH音が脱落して「ト」から「ド」と、「ツツ」の反覆語尾が脱落して「ツ」から「ス」となった)

の転訛と解します。

1890どす

 多く色を表す形容詞の上に付いて、濁ったような状態であることを表す。「どす黒い」など。

 この「どす」は、

  「トフ・ウツ」、TOHU-UTU(tohu=mark,company or division of any army,point out,show,point at;utu=be stanched,cease running as tears etc.)、「(止まった)乾いた血・のように見える(色の濁り)」(「トフ」のH音が脱落して「トウ」となり、その語尾のU音と「ウツ」の語頭のU音が連結して「トウツ」から「ドス」となった)

の転訛と解します。

1891どす

 「〜です」の断定の意の京言葉。(「でおす」の略とする説がある)

 この「どす」は、

  「トフ・ツ」、TOHU-TU(tohu=mark,company or division of any army,point out,show,point at;tu=stand,be placid,settle)、「(指摘する)〜で・す(どす)」(「トフ」のH音が脱落して「ト」から「ド」と、「ツ」が「ス」となった)

の転訛と解します。

1892とそ(屠蘇)

 屠蘇散の略。屠蘇散を浸した酒・みりん。元旦に飲んで一年の邪気を祓う酒。正月に飲む酒。

 この「とそ」は、

  「ト・タウ」、TO-TAU(to=the...of,drag,haul;tau=come to rest,come to anchor,settle down,be suitable)、「(一年の)平安を・もたらすもの(屠蘇)」(「タウ」のAU音がO音に変化して「ト」から「ソ」となった)

の転訛と解します。

1893どだい(土台)

 土で築いた台。建築物の最下部をなす部分。いしずえ。物事の根本。基礎。基本。元来。根本から。もともと。ねっから。

 この「どだい」は、

  「トフ・タヒ」、TOHU-TAI(tohu=mark,company or division of any army,point out,show,point at;tahi=one,single,unique,repeated,throughout,altogether)、「初めからずっと・着目する(どだい)」(「トフ」のH音が脱落して「ト」から「ド」と、「タヒ」のH音が脱落して「タイ」から「ダイ」となった)

の転訛と解します。

1894とたん(途端)

 ほんの短い時間の経過を表す。ちょうどその瞬間。はずみ。ひょうし。おり。また、ある事柄があって、直ちに続いて別の事柄が起こるさま。歌舞伎のト書用語。舞台の上で二つ以上のことが同時に行われることを示す。

 この「とたん」は、

  「トフ・タ(ン)ガ」、TOHU-TANGA(tohu=mark,company or division of any army,point out,show,point at;tanga=be assembled,row,tier)、「(ある)物事と同時に(他の)物事が起こる・ことを示すこと(途端)」(「トフ」のH音が脱落して「ト」と、「タ(ン)ガ」のNG音がN音に変化して「タナ」から「タン」となった)

の転訛と解します。

1895とたん(トタン)

 (ポルトガル語 tutanaga(銅・亜鉛の合金)からかとする説がある)亜鉛でメッキした薄い鉄板。

 この「とたん」は、

  「タウ・タ(ン)ガ」、TAU-TANGA(tau=come to rest,float,lie steeping in water,be suitable;tanga=be assembled,row,tier)、「(溶けた亜鉛の中に)漬けて・表面を覆った(メッキした)鉄板(トタン)」(「タウ」のAU音がO音に変化して「ト」と、「タ(ン)ガ」のNG音がN音に変化して「タナ」から「タン」となった)

の転訛と解します。

1896どたんば(土壇場)

 首切りの刑を行う場所。くびきりば。どだん。最後の決断を迫られる場面。せっぱつまった場合。進退極まった場合。

 この「どたんば」は、

  「ト・タ(ン)ガ・パ」、TO-TANGA-PA(to=the...of;tanga=be assembled,row,tier;pa=block up,prevent,stockade)、「例の・(ある)物事と同時に(他の決断を迫られるなど)物事が起こる・柵を巡らした場所(土壇場)」(「ト」が「ド」と、「タ(ン)ガ」のNG音がN音に変化して「タナ」から「タン」と、「パ」が「バ」となった)

の転訛と解します。

1897とちめんぼう(栃麺棒)

 栃麺(橡の木の実の粉を小麦粉、そば粉に混ぜて製した麺)を薄く打ち延ばすのに用いる棒。(「とちめく坊」の変化かとも、また、栃麺をつくるには手早くしないと冷えて固まり麺が延びないため、急いで棒を使うからとする説がある)あわてる人。うろたえる人。あわてもの。

 この「とちめんぼう」は、

  「トチ・マイ(ン)ゴ・ポウ」、TOTI-MAINGO-POU(toti=limp,halt;maingo=yearning;pou=a form of address to an aged person;pou=pole,support,expart,stick in,fix by occult means)、「気は焦るが・(手は)もたもたしている・(年寄りの)人(栃麺棒)」または「(棒は)不思議にも固まって動かず・気は焦るが・(手は)もたもたしている人(栃麺棒)」(「マイ(ン)ゴ」のAI音がE音に、NG音がN音に変化して「メノ」から「メン」と、「ポウ」が「ボウ」となった)

の転訛と解します。

1898とつおいつ

 (「取りつ置きつ」の変化した語とする説がある)(「手に取ったり下に置いたり」の意)ああしたり、こうしたりしてあれこれと手だてを尽くして。ああすればよいか、こうすればよいかと思い悩むさま。思い迷って定まらないさま。あれやこれやと。あれこれと。

 この「とつおいつ」は、

  「タウ・ツ・オイ・ツ」、TAU-TU-OI-TU(tau=come to rest,come to anchor,settle down,be suitable;tu=stand,settle,fight with,energetic;oi=shout,shudder,move continuously,agitate)、「休んで・いたり・動き回っていたりする(とつおいつ)」(「タウ」のAU音がO音に変化して「ト」となった)

の転訛と解します。

1899とつぐ(嫁ぐ)

 男女が情を通じる。交合する。結婚し、他家の者となる。結婚する。縁づく。嫁にいく。かたづく。その者と結婚する。

 この「とつぐ」は、

  「タウ・ツ(ン)グ」、TAU-TUNGU(tau=come to rest,come to anchor,settle down,be suitable;tungu=kindle)、「(家に居着く)入って・火(特に炊事の火)をともす(嫁ぐ)」(「タウ」のAU音がO音に変化して「ト」と、「ツ(ン)グ」のNG音がG音に変化して「ツグ」となった)

の転訛と解します。

1900どっこい(どっこいしょ)

 @力を入れたり、はずみをつけて何かをしたりするときの掛け声を表す言葉。どっこいしょ。A相手の行動や言葉などが不満で、それを遮ったり、自分の気持ちを抑えたりするときに発する言葉。どっこいそっこい。思い通りにはいかないという気持ちを表す言葉。

 この「どっこい(しょ)」は、

  @「タウ・ツ・コイ(・チオ)」、TAU-TU-KOI-TIO(tau=come to rest,come to anchor,settle down,be suitable;tu=stand,settle;koi=whilst,lest;tio=cry)、「暫時・座って・休もう(・と声を出す)(どっこい(しょ))」(「タウ」のAU音がO音に変化して「ト」から「ド」と、「ツ」が「ッ」と(、「チオ」が「ショ」と)なった)

  A「ト・ツ・コイ」、TO-TU-KOI(to=drag,haul;tu=fight with,energetic;koi=almost,not)、「(何かを)してはならないと・懸命に・引き留める(どっこい)」(「ト」が「ド」と、「ツ」が「ッ」となった)

の転訛と解します。

1901どっこいどっこい

 ありったけの力を出してやっとのことで事を行うときに発する言葉。勢いが互いに同じくらいで、優劣のないさま。とんとん。玩具として、また博奕、福引などで用いられる円盤の中心に指針をつけ、周囲の区画に点数または品物の名を付け、それを回して指針が止まった場所の点数または品物を得る仕組みのもの。倒れないように一生懸命に平均をとること。また、そのさま。

 この「どっこいどっこい」は、

  「ト・ツ・コイ・ト・ツ・コイ」、TO-TU-KOI-TO-TU-KOI(to=drag,haul;tu=fight with,energetic;koi=almost,not)、「すんでのところで・懸命に・引き留める・すんでのところで・懸命に・引き留める(どっこいどっこい)」(「ト」が「ド」と、「ツ」が「ッ」となった)

の転訛と解します。

1902とっさ(咄嗟)

 @舌打ちしてうなること。舌打ちして嘆息すること。息を吐くこと。Aごく僅かな時間。瞬間。たちどころであるさま。

 この「とっさ」は、

  @「ト・ツ・タ」、TO-TU-TA(to=drag,haul;tu=fight with,energetic;ta=breathe,be uttered,wind)、「力をこめて・息を・吐く(咄嗟)」(「ツ」が「ッ」と、「タ」が「サ」となった)

  A「ト・ツ・タハ」、TO-TU-TAHA(to=drag,haul;tu=fight with,energetic;taha=side,edge,pass on one side,go by)、「(懸命に)速やかに・時間が過ぎ・去る(咄嗟)」(「ツ」が「ッ」と、「タ」が「サ」と、「タハ」のH音が脱落して「タ」から「サ」となった)

の転訛と解します。

1903どっち(何方)

 場所、方角などいくつかの中の一つを指す。二つの事物や人物からの選択を示す。

 この「どっち」は、

  「ト・ツヒ・チ」、TO-TUHI-TI(to=drag,haul;tuhi=draw,write,point at,glow;ti=throw,cast,overcome)、「(方角・選択を)引き・指し・示す(何方)」(「ト」が「ド」と、「ツヒ」のH音が脱落して「ツ」から「ッ」となった)

の転訛と解します。

1904とって(取って。取っ手)

 @年齢を数えるときにいう語。数え年の年齢をいうときに用いる。〜を中心として考えると。〜の立場からすると。

 A手でとったり、つまんで持ったりするのに便利なように、器物・家具などに取り付けた、突き出た部分。つまみ。柄。ハンドル。

 この「とって」は、

  @「ト・ツタイ」、TO-TUTAI(to=drag,haul;tutai=watch,spy,scout)、「(現状をよく)調査して・得られる結論(取って)」(「ツタイ」のAI音がE音に変化して「ツテ」から「ッテ」となった)

  A「ト・ツ・テ」、TO-TU-TE(to=drag,haul;tu=fight with,energetic;te=crack)、「(指が分かれているもの)手で・力を入れて・(引く)持つもの(取っ手)」(「ツ」が「ッ」となった)

の転訛と解します。

0905とっとのめ(鳥の目)・かいぐり

 幼児のしぐさ遊びの一種。「かいぐり、かいぐり、とっとのめ」と唱えながら、「かいぐり」で両手を糸を繰るように輪にまわし、「とっとのめ」で右手の人差し指で左のてのひらの中央を突く。

 この「とっとのめ」、「かいぐり」は、

  「トウトウ・ナウマイ」、TOUTOU-NAUMAI(toutou=put articles into a receptacle,dip frequently into liquid,offer and withdraw,sprinkle with water;naumai=come,go)、「(紡いだ糸を)箱におさめる・(時が)やっと来た(とっとの目)」(「トウトウ」が促音化して「トット」と、「ナウマイ」のAU音がO音に、AI音がE音に変化して「ノメ」となった)

  「カイ・ク・フリ」、KAI-NGURI(kai=fulfil its proper function,have full play;ku=silent;huri=turn round,overturn,grind,revolve)、「懸命に・(黙って)ひたすら・(糸を回す)つむぐ(かいぐり)」(「ク」のU音と「フリ」のH音が脱落した語頭のU音が連結して「クリ」から「グリ」となった)

の転訛と解します。

1906とっぴょうし(突拍子)

 調子外れであること。度はずれなこと。意外なこと。また、そのさま。とっぴ。とっびょうず。とろっぴょうし。どひょうし。

 この「とっぴぅし」は、

  「トフ・ツ・ピオイ・チ」、TOHU-TU-PIOI-TI(tohu=mark,company or division of any army,point out,show,point at;tu=fight with,energetic;pio=many(pioi=shake,brandish,wave,sway,swirl of water);ti=throw,cast,overcome)、「懸命に・大きく動揺して・飛び離れたことを・見せつける(突拍子)」(「トフ」のH音が脱落して「ト」と、「ツ」が「ッ」と、「ピオイ」の語尾のI音が脱落して「ピオ」から「ピョウ」と、「チ」が「シ」となった)

の転訛と解します。

1907とてつもない(途轍もない)

 筋道に合わない。全く道理に合わない。1953とんでもない。また、極めて図抜けている。途方もない。

 この「とてつもない」は、

  「ト・タイツ・マウ・ナイ」、TO-TAITU-MAU-NAI(to=drag,haul;taitu=be hindered,be intermitted,slow;mau=fixed,continuing,caught,entangled,constrained,expressing feelings of horror or admiration;nai=nei=stretched forward,reaching out)、「妨害を・強行することが・決まって・進められて行く(とてつもない)」(「タイツ」のAI音がE音に変化して「テツ」と、「マウ」のAU音がO音に変化して「モ」となった)

の転訛と解します。

1908とても

 (「とてもかくても」の略とする説がある)いかようにしても。といてい。何にしても。どっちみち。どうせ。結局。しょせん。事柄が成立する前に遡って考える気持ちを表す。後の句に重みをかけていう。どうせ〜だからいっそ。状態、程度を強調する語。たいへん。たいそう。はなはだ。

 この「とても」は、

  「タウテ・マウ」、TAUTE-MAU(taute=mature,bring to perfection,tend,look after,consider,mourn,hampered,burdened,embarrassed,disturbance;mau=fixed,continuing,caught,entangled,constrained,expressing feelings of horror or admiration)、「(事柄が成熟する)事柄が事情の如何によらずに進行することが・既に決まっている(とても)」(「タウテ」のAU音がO音に変化して「トテ」と、「マウ」のAU音がO音に変化して「モ」となった)

の転訛と解します。

1909どてら(褞袍)

 普通の着物よりもやや長く大きめに仕立て、綿を入れた広袖のもの。防寒具または寝具として用いる。丹前。

 この「どてら」は、

  「タウテ・エラ(ン)ギ」、TAUTE-ERANGI(taute=mature,bring to perfection,tend,look after;erangi=engari=it is better,but,on the contrary)、「(成長した)大きく仕立てた・たいへん具合のよいもの(褞袍)」(「タウテ」のAU音がO音に変化して「トテ」から「ドテ」となり、その語尾のE音と「エラ(ン)ギ」の名詞形語尾のNGI音が脱落した「エラ」の語頭のE音が連結して「ドテラ」となった)

の転訛と解します。

1910どどいつ(都々逸)

 都々逸節の略。俗曲の一つ。雅言を用いないで、主に男女相愛の情を口語をもって作り、普通五・七・七・五の四句、二十六音から成る。

 この「どどいつ」は、

  「トトイ・ツ」、TOTOI-TU(totoi=tip,summit,origin of mankind,home;tu=stand,settle,fight with,energetic)、「熱烈な・(男女の)本来の愛情を歌うもの(都々逸)」(「トトイ」が「ドドイ」となった)

の転訛と解します。

1911とどこおる(滞る)

 途中でつかえて、先へ行かなくなる。停滞する。つかえる。よどむ。凝り固まる。むすぼる。集まる。凝る。からみついて、動く邪魔になる。差し支えがあり、物事の成り行きが順調でなくなる。自制して、心のままに振る舞うことを避ける。躊躇う。ぐずぐずする。流れているものが止まる。定期的に納めるべき金品が未納のままになる。

 この「とどこおる」は、

  「トト・コハウ・ル」、TOTO-KOHAU-RU(toto=drag a number of objects,chip or knock off,chop;kohau=speak frequently of what one intends or expects,sing without an object as when travelling alone etc.,regarded as a bad omen,yearn,regret,be wishful;ru=shake,agitate,scatter)、「物事の成り行きが順調(でないので、これが順調)に進むことを・切に願って・やきもきする(滞る)」(「トト」が「トド」と、「コハウ」のH音が脱落し、AU音がO音に変化して「コオ」となった)

の転訛と解します。

1912とどのつまり(トドの詰まり)

 いろいろやって、またはせんじつめていった最後のところ。結局。畢竟。

 この「とどのつまり」は、

  「トフトフ・ノ・ツマ・リ」、TOHUTOHU-NO-TUMA-RI(tohutohu=mark,show,point out,direct,guide,instruct,advise,recommend;no=of;tuma=challenge;ri=screen,protect,bind,bond)、「(いろいろと)挑戦を・重ねた・(末)の・推奨すること(トドの詰まり)」(「トフトフ」のH音が脱落して「トト」から「トド」となった)

の転訛と解します。

1913とどめ(止め)

 差し止めること。抑止すること。人を殺すとき、その喉または胸の急所を刺して息の根を止め、死を確実にすること。また、その刺すべき箇所。

 この「とどめ」は、

  「トウトウ・メ」、TOUTOU-ME(toutou=put articles into a receptacle,dip frequently into liquid,offer and withdraw,sprinkle with water;me=if,as if,as it were)、「死者を棺桶に入れる・かのように行動する(止め)」(「トウトウ」が「トド」となった)

の転訛と解します。

1914とどろく(轟く)

 音が荒々しく鳴り響く。力強く響き渡る。転じて、驚く。驚き騒ぐ。広く世に知れ渡る。有名になる。鼓動が激しくなる。動悸がする。

 この「とどろく」は、

  「トド・ロク」、TOTO-ROKU(toto=causing a tingling sensation;roku=bend,grow weak,decline)、「(音による感覚が)ぞくぞくする興奮をもたらし・次第に弱くなる(轟く)」

の転訛と解します。

1915となり(隣)

 並び続いているもののうち、そのもののすぐ近くにあるもの。特に並び続いているすぐ両隣の家。隣家。境が接している所。また、接近している場所・地域。時間的または抽象的に連続しているもののうち、ある時点・事柄の前後にせっしているものをいう。

 この「となり」は、

  「ト・(ン)ガリ」、TO-NGARI(to=drag,haul;ngari=annoyance,disturbance)、「迷惑を・(しばしば)もたらすもの(隣)」(「(ン)ガリ」のNG音がN音に変化して「ナリ」となった)

の転訛と解します。

1916どなる(怒鳴る)

 怒って大声でわめく。大声で呼ぶ。声高に叫ぶ。また、声高に叱る。

 この「どなる」は、

  「トフ・(ン)ガルル」、TOHU-NGARURU(tohu=mark,company or division of any army,point out,show,point at;ngaruru=abundant,strong in growth,flourishing)、「(力強い)大声であることを・誇示する(怒鳴る)」(「トフ」のH音が脱落して「ド」と、「(ン)ガルル」」のNG音がN音に変化し、反覆語尾が脱落して「ナル」となった)

の転訛と解します。

1917とにかくに(兎に角に)

 あれこれ。さまざま。とかく。とにかく。とにもかくにも。いずれにせよ。何はともあれ。要するに。とにもかくにも。

 この「とにかくに」は、

  「トヌイ・カク・ヌイ」、TONUI-KAKU-NUI(tonui=prosperous,prolific,thumb or great toe;kaku=scrape up,scoop up,bruise,shred,pieces stripped off in the process of dressing flax;nui=large,great,manyabundant)、「裕福(であろうと)・(生活を削りに削っている)貧乏・の極(であろうと)(兎に角に)」(「トヌイ」が「トニ」と、「ヌイ」が「ニ」となった)

の転訛と解します。

1918とねり(舎人)

 天皇・皇族などに近侍し、雑事に携わった者。内舎人は貴族の子弟から、大舎人は下級官僚の子弟から選任されたという。帳内または資人のこと。貴人に随従する牛車の牛飼い、馬の口取りなどの称。など。この「とねり(舎人)」については、雑楽篇(その一)の340舎人(帳内。とねり)の項を参照してください。

 この「とねり」は、

  「ト・(ン)ゲリ」、TO-NGERI(to=drag,carry the weapon at the trail;ngeri=look fierce or savage)、「武器(大刀)を小脇にかいこんで闊歩する・みるからに恐ろしげな(戦士。武人)」(「(ン)ゲリ」のNG音がN音に変化して「ネリ」となった)

の転訛と解します。

1919どの(殿)

 地名などに付けて、そこにある邸宅に対する尊称として用いる。人名、、官職名などに付けて敬意を表す。

 この「どの」は、

  「トノ」、TONO(bid,command,send,demand)、「命令を下す人(地位の高い人)(殿)」(「トノ」が「ドノ」となった)

の転訛と解します。

 

1920とのい(宿直)

 内裏や宮司に事務をとったり、警護するために宿泊すること。夜間、貴人の身近にあって守護すること。天皇の寝所で女性が近侍すること。

 この「とのい」は、

  「トノ・イ」、TONO-I(tono=bid,command,send,demand;i=beside,past tense,with,from,by reason of)、「命令を下す人(地位の高い人)の・近く(で警護のため宿泊する)(宿直)」

の転訛と解します。

1921とばっちり(迸り)

 ある人が災(わざわい)を受けたときに、たまたま近くにいたり、少しだけ関係のあった人に、本来うけなくてもよい災の余波が及ぶこと。また、その災。まきぞえ。そばづえ。とばちり。

 この「とばっちり」は、

  「トパ・ツ・チリ」、TOPA-TU-TIRI(topa=fly,soar;tu=fight with,energetic;tiri=throw or place one by one,throw a present before one,scatter,share,portion)、「勢いよく・飛んで(近くの人に降りかかった)・災のかけら(とばっちり)」(「トパ」が「トバ」と、「ツ」が「ッ」となった)

の転訛と解します。

1922とばり(帳)

 室内や寝所・帳台・厨子・高御座、また、外部との境などに垂らして、区切りとしたり、光りを遮ったりなどするための布。壁代。几帳。のれんなど。物を隔て区切るもの。覆い隠してみえなくするもののたとえにいう。

 この「とばり」は、

  「ト・パリ」、TO-PARI(to=drag,haul;pari=cliff,pricipice,upstanding)、「(殿内に)引き回す・垂直に垂らす布(帳)」(「パリ」が「バリ」となった)

の転訛と解します。

1923とびきり(飛び切り)

 他のものに比べてはるかに優れていること。程度のはなはだしいこと。また、そのさま。最上。極上。無類。

 この「とびきり」は、

  「ト・ピキ・リ」、TO-PIKI-RI(to=the...of;piki=climb,ascend,climb over,step over a prostrate person;ri=screen,protect,bind)、「例の・障壁を・はるかに越えている(極めて優れている)(飛び切り)」(「ピキ」が「ビキ」となった)

の転訛と解します。

1924とびしょく(鳶職)

 (「鳶口を持つ」ところからとする説がある)建築や土木工事の人夫に出る仕事師。鳶人足。江戸時代、町火消に属した人足。火消人足の別称。

 この「とびしょく」は、

  「ト・ピチ・アウ・ク」、TO-PITI-AU-KU(to=the...of,the one of;piti=put side by side,add;au=rapid;ku=silent)、「黙って・(敏速に)軽々と・(木材や土、石などを)動かす・あの人達(鳶職)」(「ピチ」が「ビシ」と、「アウ」のAU音がO音に変化して「オ」となり、「ビシ・オ」が「ビショ」となった)

の転訛と解します。

1925とびら(扉)

開き戸の戸。書物の見返しの次にあって、表題などを記したページ。雑誌の本文の前にある第一ページ。この「とびら(扉)」については、雑楽篇(その二)の1027戸(と)の項の「扉(とびら)」を参照してください。

 この「とびら」は、

  「トピ・ラ」、TOPI-RA(topi=shut as the mouth or hand;ra=wed,intensuve particle)、「(二枚の板が)結合して・(開口部を)閉ざすもの(扉)」(「トピ」が「トビ」となった)

の転訛と解します。

1926どぶ(溝)

 汚水、雨水などを流す細い溝。

 この「どぶ」は、

  「ト・プ」、TO-PU(to=the...of,the one of,drag,haul;pu=loathing,hating)、「汚くて嫌がられる・(水を流す)溝(どぶ)」(「ト」が「ド」と、「フ」が「ブ」となった)

の転訛と解します。

1927どぶろく(濁酒)

 蒸した米に麹と水を加えて醸造しただけの、滓を漉し取らないままの白色のどろりとした濁り酒。この「どぶろく(濁酒)」については、雑楽篇(その二)の1011酒(さけ)の項の「濁酒(どぶろく)」を参照してください。

 この「どぶろく」は、

  「トプ・ロク」、TOPU-ROKU(topu=pair,assembled in a body;roku,rokuroku=dim)、「(ぼんやりした)濁ったものが・(本体と)一緒になっている(酒。濁酒)」(「トプ」が「ドブ」となった)

の転訛と解します。

1928とぼける(惚ける)

 わざと知らないふりをする。そのことに気付いていないように振る舞う。しらばくれる。滑稽な言動をする。また、間抜けのように感じられる。ぼんやりする。うっかりする。年をとって頭の働きが鈍る。ぼける。老いぼれる。

 この「とぼける」は、

  「タウポ・ケ・ル」、TAUPO-KE-RU(taupo=a ferruginous earth or stone;ke=different,strange,extraordinary;ru=shake,agitate,scatter)、「おかしな・錆が・(頭に)生じたような(惚ける)」(「タウポ」のAU音がO音に変化して「トボ」となった)

の転訛と解します。

1929とぼしい(乏しい)

 足りない。十分でない。ともしい。まずしい。ともしい。

 この「とぼしい」は、

  「ト・パウ・チヒ」、TO-PAU-TIHI(to=the...of,the one of,drag,haul;pau=consumed,exhausted,denoting the complete or exhaustive character of any action;tihi=top,summit,lie in a heap)、「あの・たいへん・足りない(乏しい)」(「パウ」のAU音がO音に変化して「ボ」と、「チヒ」のH音が脱落して「シイ」となった)

の転訛と解します。

1930とぼそ(枢)

 戸の梁(はり)と敷居とにあけた小さな穴。これに枢(とまち)を差し入れて戸を回転する軸とする。また、転じて、戸、扉。この「とぼそ(枢)」については、国語篇(その十三)の0277矢卓鴨(やたてかも)の項の「とぼそ(戸臍)」を参照してください。

 この「とぼそ」は、

   「ト・ホト」、TO-HOTO(to=drag,open or shut a door or window;hoto=join)、「扉を・(かまちと)連結するもの(回転軸)」または「扉が・(二枚またはそれ以上)連結したもの(大きな扉・戸)」(「ホト」が「ホソ」から「ボソ」となつた)

の転訛と解します。

1931とまどい(戸惑い)

 夜中に目を覚まし、寝ぼけて方角が分からなくなってまごつくこと。ねまどい。入るべき家、部屋などが分からなくなってまごつくこと。手段や方法が分からずまごつくこと。勝手が分からないで躊躇すること。

 この「とまどい」は、

  「トマ・トイ」、TOMA-TOI(toma=resting place for bones;toi=tingle as the ears,be galed,be irritated)、「(ゆっくり休息する)安心して休む場所が・(分からなくなって)いらいらして興奮する(戸惑い)」(「トイ」が「ドイ」となった)

の転訛と解します。

1932とみに(頓に)

 時間的に間がおけないさま。また、間をおかないさま。急に。にわかに。さっそく。

 この「とみに」は、

  「ト・ミミ・ニヒ」、TO-MIMI-NIHI(to=the...of,the one of,drag;mimi=urine,stream;nihi=move stealthly,come stealthly upon,suprise)、「(水の)流れを・(引っ張る)早めるように・(時がそっと)早く進む(頓に)」(「ミミ」の反覆語尾が脱落して「ミ」と、「ニヒ」のH音が脱落して「ニ」となった)

の転訛と解します。

1933とも(友)

 同じ仲間の人々。ともがら。その者・物と同質で同じ集団を構成する要員をさしていう。仲間。つれ。親しく交わる相手。友人。友達。

 この「とも」は、

  「トモ」、TOMO(pass in,enter,begin,assault,take by assault,storming party)、「(仲間に)入ったもの(友)」もしくは「(行動を共にする)友(戦友、遊び仲間など。友」 

  または「ト・マウ」、TO-MAU(to=drag,open or shut a door or window;mau=fixed,continuing,caught,understood)、「堅く(友情で)・引き合う者(友)」(「マウ」のAU音がO音に変化して「モ」となった)

の転訛と解します。

1934とも(艫)・とも(鞆)

 @船の後端部。船首を舳先(へさき)というのに対する呼称。

 A弓を射るとき、左の腕に結び付けて手首の内側を高く盛り上げる弦受けの付け物。革の袋で、中に稻藁を満たし外を黒漆塗りとし、革緒で結ぶもの。手首の釧などに触れて弦が切れるのを防ぐためとする。

 この「とも」は、

  @「トマウ」、TOMAU(steadfast)、「(船体の姿勢)方向を保つ場所(艫)」(「トマウ」のAU音がO音に変化して「トモ」となった)

  A「タウマウ」、TAUMAU(hold,keep in place,bespeak,reserve for oneself)、「(弦のはねかえりを正常に)保持するもの(鞆)」(「タウマウ」のAU音がO音に変化して「トモ」となった)

の転訛と解します。

1935ともえ(巴)

 尾を長く引いた曲線の円頭を大きく表現した文様の名称。俗に波頭(なみがしら)を図案化したといい、弓具の鞆(とも)の形象に酷似することによる名称。左巴、右巴の別、一つ巴、二つ巴、三つ巴の別などがある。巴の文様を描いた軒や床の板の木口の部分。巴の文様を描いた網代の車。丸く一方に回る様子をたとえていう語。紋所の名。巴瓦の略。三者が入り組んだ状態になること。

 この「ともえ」は、

  「ト・モエ」、TO-MOE(to=the...of;moe=sleep,repose,close the eyes,die,marry,beget,dream)、「例の・(英雄たる部族の長の安らかな)永眠(を祈念する表象。巴)」または「(ある部族とある部族との)結婚による堅い結合(の表象。巴)」

の転訛と解します。

1936どよめき(響動)

 声や音が鳴り響くこと。また、その響き。ざわめき。どやめき。

 この「どよめき」は、

  「トイ・アウ・メ・キ」、TOI-AU-ME-KI(toi=tingle as the ears,be galed,be irritated;au=bark,howl;me=with,denoting concommitance in time;ki=full,very)、「うるさく・鳴り響く(音が)・同時に・たくさん起こる(どよめき)」(「アウ」のAU音がO音に変化して「オ」となり、「トイ・オ」が「トヨ」から「ドヨ」となった)

の転訛と解します。

1937とりい(鳥居)

 (古く神に供えた鶏の止まり木の意とする説がある)神社の参道入口や社殿の周囲の玉垣に開かれた門。左右日本の柱の上に笠木を渡し、その下に柱を連結する貫(ぬき)を入れたもの。転じて、人家の門の屋根のないもの。この「とりい(鳥居)」については、雑楽篇(その一)の183鳥居の項を参照してください。

 この「とりい」は、

  「タウリ・ウイ」、TAURI-UI(tauri=band,bind,secure with a fillet;ui=disentangle,disengage)、「縄を引き回して保護した(結界を)・(そこだけ)解いてある(場所。聖域の入口)」(「タウリ」のAU音がO音に変化して「トリ」と、「ウイ」が「ヰ」から「イ」となった)

の転訛と解します。

1938とりこ(虜)

 囚われた人。生け捕りにされた人。捕虜。転じて、あることに熱中したり、心を奪われたりしている人。また、そうなること。

 この「とりこ」は、

  「タウリ・コ」、TAURI-KO(tauri=fillet,band,bind,secure with a fillet;ko=in addressing males and females,gescend)、「(縄で縛られた)囚われた・人(虜)」(「タウリ」のAU音がO音に変化して「トリ」となった)

の転訛と解します。

1939とりで(砦)

 本城の外の要所に設けた小規模な城。木柵などで囲ったもので、内に営兵を置く。出城。外敵を防ぐために国境、海岸などに築造した建造物。要塞。(比喩的に)自分だけの世界として他人を入れない場所や領域。

 この「とりで」は、

  「ト・ホリテ」、TO-HORITE(to=the...of.the one of;horite=measure,compare,equalise,like,)、「例の・(城と)同等の機能をもつ施設(砦)」(「ト」のO音と「ホリテ」のH音が脱落した「オリテ」の語頭のO音が連結して「トリテ」から「トリデ」となった)

の転訛と解します。

1940とりのこ(鳥の子)

 @鳥の卵。とくに、鶏卵。鳥の雛。とくに、鶏の雛。ひよこ。A鳥の子紙。雁皮で製される上等な和紙の一種。鳥の卵のような淡黄色をしているので、この名がある。この「とりのこ(鳥の子(紙))」については、雑楽篇(その二)の538こうぞ(楮)の項の「とりのこ(鳥の子(紙))」を参照してください。

 この「とりのこ」は、

  @「ト・オリ・ノ・コ」、TO-ORI-NO-KO(to=drag,open or shut a door or a window;ori=cause to wave to and fro,sway,move about;no=of;ko=descend)、「あちこち・行き来するもの(鳥)・の・子(卵または雛。鳥の子)」(「ト」のO音と「オリ」の語頭のO音が連結して「トリ」となった)

  A「トリノ・コ」、TORINO-KO(torino=twisted,flowing or gliding smoothly,be wafted;ko=to give emphasis)、「すばらしく・滑らかな(紙。鳥の子)」

の転訛と解します。

1941とりもち(鳥もち)

 小鳥、昆虫などを捕らえるために竿などの先に塗った粘着力のある物質。モチノキ、クロガネモチ、ヤマグルマなどの樹皮から採る。鳥取もち。

 この「とりもち」は、

  「ト・オリ・マウ・ウチ」、TO-ORI-MAU-UTI(to=drag,open or shut a door or a window;ori=cause to wave to and fro,sway,move,quiver;mau=fixed,continuing,caught,taken;uti,utiuti=bite)、「あちこちと・行き来するもの(鳥)を・(噛みつく)しっかりくっついて・捕らえるもの(鳥もち)」(「ト」のO音と「オリ」の語頭のO音が連結して「トリ」と、「マウ」の語尾のU音と「ウチ」の語頭のU音が連結して「マウチ」となり、そのAU音がO音に変化して「モチ」となった)

の転訛と解します。

1942とりもの(採物)

 儀式などの時、特定の物品を手に取り持つこと。また、そのもの。その役の人。祭時に神官が手に持つ道具。とくに、神楽歌の舞人である人長が持って舞う物。榊、幣、杖、篠、弓、剣、鉾、杓、葛、木綿など。神楽の部類名。など。

 この「とりもの」は、

  「ト・オリ・マウ・ノウ」、TO-ORI-MAU-NOU(to=drag,open or shut a door or a window;ori=cause to wave to and fro,sway,move,quiver;mau=carry,bring;nou,whakanou=jerk)、「あちこちの(場面に)・出入りする(神官・舞人が)・携えて・(宗教的興奮にかられて激しく)動き回るもの(採物)」(「ト」のO音と「オリ」の語頭のO音が連結して「トリ」と、「マウ」のAU音がO音に変化して「モ」と、「ノウ」が「ノ」となった)

の転訛と解します。

1943どれ(何)

 場所を指す。どこ。人を指す。誰。限られた範囲の中からあるものを選択していう語。いずれ。状況に応じて、改めて行動を起こすときなどに発する語。1861どうれに同じ。

 この「どれ」は、

  「トフ・レイ」、TOHU-REI(tohu=mark,company or division of any army,point out,show,point at;rei=there)、「そこらあたりの・(場所、人、ものなどを)指す(どれ)」(「トフ」のH音が脱落して「ト」から「ド」と、「レイ」が「レ」となった)

の転訛と解します。

1944とろ(トロ)

 鮪(まぐろ)などの肉の脂肪の多い部分。脂肪が非常に多い部分を大トロ、それより少ない部分を中トロと呼ぶ。

 この「とろ」は、

  「トロ」、TORO(stretch forth,extend,thrust or impel endways)、「(肉の中に脂肪がたくさん)入り込んでいる(部分。トロ)」

の転訛と解します。

1945とろび(トロ火)

 とろとろと弱く燃える火。とろとろ火。

 この「とろび」は、

  「トロトロ・アヒ」、TOROTORO-AHI(torotoro=scorch,parch(toro=burn,blaze);ahi=fire)、「(物を)焦がす(弱い)。火(トロ火)」(「トロトロ」の反覆語尾が脱落して「トロ」と、「アヒ」の語頭のA音が脱落して「ヒ」から「ビ」となった)

の転訛と解します。

1946どろぼう(泥棒)

 他人の物を盗み取る者。ぬすびと。盗賊。また、盗みをすること。なまけ者。放蕩者。また、ならず者。

 この「どろぼう」は、

  「トロ・ポウ」、TORO-POU(toro=stretch forth,survey,explore,forage;pou=pole,support,teacher,expart)、「(略奪)盗みの・専門家(泥棒)」(「トロ」が「ドロ」と、「ポウ」が「ボウ」となった)

の転訛と解します。

1947とろろ(薯蕷)

 薯蕷汁の略。とろろ芋の略。

 この「とろろ」は、

  「トロ・ロ」、TORO-RO(toro=stretch forth,extend,thrust or impel endways;ro,roro=go)、「(ヤマノイモの根をすりおろして)長く伸ばし・(すまし汁を加えて)流れるようにしたもの(薯蕷)」

の転訛と解します。

1948どろん

 @(〜する)姿を隠すこと。逃げて姿をくらますこと。

 A濃い液体や空気などが重く沈んでいるさまを表す語。眠気を催したり、酒に酔ったりして目つきのぼんやりしているさまを表す語。

 この「どろん」は、

  @「トロ(ン)ギ」、TORONGI(drown,set as the sun)、「(日が沈むように)姿を隠す(どろん)」(「トロ(ン)ギ」のNG音がN音に変化して「トロニ」から「ドロン」となった)

  A「トロ(ン)グ」、TORONGU(caterpillar,grub)、「(芋虫のような)鈍重で動きの鈍いさま(どろん)」(「トロ(ン)グ」のNG音がN音に変化して「トロヌ」から「ドロン」となった)

の転訛と解します。

1949どんたく

 (オランダ語 zondag 日曜日からとする説がある)日曜日。休日。休業。祭日。祭礼。特に、博多どんたくをいう。この「どんたく」については、雑楽篇(その一)の148博多どんたくの項を参照してください。

 この「どんたく」は、

  「トヌ・タク」、TONU-TAKU(tonu=denoting continuance,just;taku=slow)、「ゆっくりと・(仮装などの練りを)続ける(祭り)」(「トヌ」が「トン」から「ドン」となった)

の転訛と解します。

1950とんちき

 (「とんちき」は「とんま」の「とん」と「いんちき」の「ちき」が合併した語とする説がある)ぼんやりしていて、気の利かないこと。また、その人。のろま。とんま。まぬけ。軽はずみな人。あわて者。

 この「とんちき」は、

  「ト(ン)ガ・チキ」、TONGA-TIKI(tonga=restrained,suppressed,secret;tiki=fetch,proceed to do something,go for a purpose,a personification of primeval man,unsuccessful person)、「(精神の働きが抑えられている)ぼんやりしていてのろまな・行動をする(人。とんちき)」(「ト(ン)ガ」のNG音がN音に変化して「トナ」から「トン」となった)

の転訛と解します。

1951どんちゃんさわぎ(ドンチャン騒ぎ)

 酒を飲み、鳴り物入りでにぎやかに遊興すること。また、その騒ぎ。

 この「どんちゃんさわぎ」は、

  「トヌ・チア・ナ・タワ・(ン)ギハ」、TONU-TIA-NA-TAWHA-NGIHA(tonu=denoting continuance,quite,just;tia=stick in,take a vigorous stroke in paddling;na=by,belonging to,by reason of,by way of;tawha=burst open,crack;ngiha=burn,fire)、「勇壮な掛け声をかけながら船を漕ぎ・続ける・のに似た・爆発して・火が燃え盛るような(騒ぎ。ドンチャン騒ぎ)」(「トヌ」が「トン」から「ドン」と、「チア・ナ」が「チャン」と、「タワ」が「サワ」と、「(ン)ギハ」のNG音がG音に変化し、H音が脱落して「ギ」となった)

の転訛と解します。

1952とんちんかん(頓珍漢)

 物事が行き違ったり、前後したりしてわけが分からなくなること。つじつまが合わないで、ちぐはぐになること。また、そのさま。とんまな言動をすること。また、そのさま。そのような人。

 この「とんちんかん」は、

  「ト(ン)ガ・チネイ・カネ」、TONGA-TINEI-KANE(tonga=restrained,suppressed,secret;tinei=unsettled,confused,disordered;kane=head)、「(精神の働きが抑えられている)ぼんやりしていてのろまで・混乱した・頭が起こす行動またはその人(とんちんかん)」(「ト(ン)ガ」のNG音がN音に変化して「トナ」から「トン」と、「チネイ」の語尾のI音が脱落して「チネ」から「チン」と、「カネ」が「カン」となった)

の転訛と解します。

1953とんでもない

 とほうもない。思いもかけない。以外である。もってのほかである。(相手の言葉に対する強い否定を表す)全くそんなことはない。冗談ではない。この「とんでもない」については、国語篇(その十五)の150とんでもないの項を参照してください。

 この「とんでもない」は、

  「トノ・テ・マウ・ナイ」、TONO-TE-MAU-NAI(tono=bid,command,demand;te=not;mau=fixed,continuing,caught,entangled,constrained,expressing feelings of horror or admiration;nai=nei=stretched forward,reaching out)、「命令(したこと)と・違うことが・決まって・進められて行く(とんでもない)」(「トノ」が「トン」と、「テ」が「デ」と、「マウ」のAU音がO音に変化して「モ」となった)

の転訛と解します。

1954どんでんがえし(ドンデン返し)

 芝居の舞台などで、床や大道具を一度に後ろにひっくり返して次の大道具に取り替えること。また、その装置。がんどう返し。全く正反対にひっくり返すこと。話や状態、小説や劇における筋や人物関係が全く逆転すること。

 この「どんでんがえし」は、

  「トヌ・タイ(ン)ガ・カヱ・チ」、TONU-TAINGA-KAWRE-TI(tonu=denoting continuance,quite,just,immediately;tainga=place for bailing in a canoe;kawe=carry,go to fetch,show determination,persevere;ti=throw,cast,overcome)、「(直ちに)アッと言う間に・(カヌーを陸揚げした場所であか水を流し出すためにカヌーを引っ繰り返すように)舞台装置などを一挙に別のものに転換するという・大仕事を・やってのける(ドンデン返し)」(「トヌ」が「トン」から「ドン」と、「タイ(ン)ガ」のAI音がE音に、NG音がN音に変化して「テナ」から「デン」と、「カヱ」が「カエ」と、「チ」が「シ」となった)

の転訛と解します。

1955とんど

 「どんど」とも。小正月の火祭。正月十四〜十五日に門松、竹、注連縄などを持ち寄って火をもやすこと。左義長(さぎちょう)。とんどう。とんど(どんど)焼き。

 この「とんど」は、

  「トノ・ト」、TONO-TO(tono=bid,command,send,drive away by means of a charm;to=drag,open or shut a door or a window)、「(悪霊を祓う)呪文を唱えて・外へ追い出す(行事)」(「トン」が「トン」となった)

の転訛と解します。

1956どんぶり(丼)

 厚手で深い陶製の食物を盛る器。どんぶりばち。金、鼻紙など何でもいれて懐に持ち歩く大きな袋。職人などの腹掛けの前部につけた共布の大きな物入れ。どんぶり物の略。江戸時代、瀬戸内海を中心に買積み経営に住持した小廻しの廻船。この「どんぶり(丼)」については、雑楽篇(その二)の1041壺(つぼ)の項の「丼(どんぶり)」を参照してください。

 この「どんぶり」は、

   「トヌ・プリ」、TONU-PURI(tonu=still,quite,just,only;puri,pupuri=hold in the hand,keep)、「ちょうど・手に持てる(容器。丼)」(「トヌ」が「トン」から「ドン」と、「プリ」が「ブリ」となった)

の転訛と解します。

1957どんより

 空が曇ってうす暗いさまを表す語。目が、濁って生気の感じられないさま、色合いなどが濁って重くうるんだように見えるさまを表す語。空気や水などが、濁って淀んでいるさまを表す語。

 この「どんより」は、

  「トヌ・イ・オリ」、TONU-I-ORI(tonu=denoting continuance,quite,just,immediately;i=past tense;ori=bad weather,wind from a bad quarter,prey of disease)、「悪い天気が・続いて・いるさま(どんより)」(「トヌ」が「トン」から「ドン」と、「イ・オリ」が「ヨリ」となった)

の転訛と解します。

「ナ」

1958ない(地震)・ないふる(地震)

 @(「ない(なゐ)「が「ふる」「よる」を伴って「地震が起こる」の意に用いる)地盤。大地。大地が震動すること。地震。

 A(「ない(なゐ)ふる」)大地が震動すること。地震。この「なゐふる(地震)」については、雑楽篇(その二)の219H3玉田(タマタ)宿禰の項の「地震(なゐふる)」を参照してください。

 この「ない」、「ないふる」は、

  @「ナヱ」、NAWE(scar)、「(地面に)断層ができた(地震)」(「ナヱ」のWE音がE音からI音に変化して「ナイ」となった)

  A「ナヱ・フ・ル」、NAWE-HU-RU(nawe=scar;hu=resound,make any inarticulate sound;ru=shake,agitate,earthquake)、「(大地の傷)断層が・(大きな)音を立てて・振動した(地震が起きた)」(「ナヱ」のE音がI音に変化して「ナヰ」から「ナイ」となった)

の転訛と解します。

1959ないがしろ(蔑ろ)

 (「無きが代」の変化した語とする説がある。人や物があっても無いかのようにするさま。)無視するさま。軽んじあなどるさま。人目を気にしないでうちとけたさま。しどけないさま。無造作なさま。

 この「ないがしろ」は、

  「ナイ・(ン)ガ・チロ」、NAI-NGA-TIRO(nai=nei,neinei=stretched forward,reaching out,wagging,vacillating,bobbing up and down;nga=satisfied,breathe,take breath;tiro=look,survey,view,look in,examine)、「満足し・きった(気持ちで)・(あたりを)見回す(蔑ろ)」(「(ン)ガ」のNG音がG音に変化して「ガ」と、「チロ」が「シロ」となった)

の転訛と解します。

1960ないしょう(内証)

 (仏語)みずから心のうちに仏教の真理を悟ること。外部には知られないようにしてある考えや意向。内々に持っている考え。内意。本当の気持ち。本心。内心。人に知らせないこと。あらわにしないこと。また、そのさま。内輪の事情。内情。家庭内部。私事。内々の経済状態。一家の財政状態。暮らし向き。懐具合。表向きではない場所。奥の間。奥の庭。主婦のいる奥の間。台所。江戸時代、遊女やの主人の部屋。帳場。またねその主人。芝居の裏方。楽屋。他人の妻を敬っていう。内室。身内の者。親族。

 この「ないしょう」は、

  「ナイ・チオホ」、NAI-TIOHO(nai=nei=to denote proximity to or connection with the speaker,to indicate continuance of action or sometimes merely sequence of events;tioho=apprehensive)、「(本人に極々近い関係にある)内々の・(外部に知られたくない)心配事(内証)」(「チオホ」のH音が脱落して「シオオ」から「ショウ」となった)

の転訛と解します。

1961ないまぜ(綯い交ぜ)

 種々の色糸を交ぜて紐を綯うこと。また、その紐やその紐で作られたもの。歌舞伎で用いる鉢巻きの一種。丸ぐけの緒を縄のように綯ったもので、結んだ両端を角のように立てる。種々のものを混ぜ合わせて一つのものにまとめること。

 この「ないまぜ」は、

  「ナイ・マタハエ」、NAI-MATAHAE(nai=nei,neinei=stretched forward,reaching out,wagging,vacillating,bobbing up and down;matahae=divergent stream from the main channel of a river)、「(川の)本流と(それから分かれた)支流が・延びて混じり合っているような(綯い交ぜ)」(「マタハエ」のH音が脱落して「マタエ」となり、そのAE音がE音に変化して「マテ」から「マゼ」となった)

の転訛と解します。

1962なおざり(等閑)

 深く心にとめないさま。本気でないさま。いいかげん。通り一辺。かりそめ。

 この「なおざり」は、

  「ナオ・タリ」、NAO-TARI(nao=midge,small moth(whakanao=appear like a speck in the distance,make like a midge);tari=carry,bring,urge,incite)、「(遠くを飛んでいる)小さな虫・(ほどにも)感じない(等閑)」(「タリ」が「ザリ」となった)

の転訛と解します。

1963なおす(直す)

 汚れ、よこしまなことを取り除いてただす。人の性格などを改める。間違った状態をただす。訂正する。修正する。また、添削する。以前の状態に戻す。物や人を適当な場所・位置におさめる。具合の悪いところを繕って本来あるべき状態にする。転換する。など。

 この「なおす」は、

  「ナオ・ツ」、NAO-TU(nao=handle,feel with the hand,lay hold of(whakanao=manipulate,operate upon,make);tu=stand,settle,fight with,energetic)、「懸命に・(手を加える)物事を処理する(直す)」(「ツ」が「ス」となった)

の転訛と解します。

1964なおらい(直会)

 祭りにおいて、神事の後神前に供えた神酒・神饌をおろして行う共同飲食の宴会行事。また、そのおろした供え物。のうらい。この「なおらい(直会)」については、雑楽篇(その一)の333猶良比(なほらひ)の項を参照してください。

 この「なおらい」は、

  「ナホ・ラヒ(ン)ガ」、NAHO-RAHINGA(naho=hasty,quick,in speech or action;rahinga-largeness,abundance,company,party)、「(神事の後)直ちに行う・宴会(直会)」(「ナホ」のH音が脱落して「ナオ」と、「ラヒ(ン)ガ」のH音および名詞形語尾のNGA音が脱落して「ライ」となった)

の転訛と解します。

1965なか(中)

 限られた物の内側。抽象的な事態の内部。ある時とある時との中間の時。順序を示す。上下・高低・前後などの中間または三段階の中間をいう。人と人との関係。など。

 この「なか」は、

  「ナ・カ(ン)ガ」、NA-KANGA(na=by,made by,belonging to,by reason of,by way of;kanga=place where fire has burnt(kainga=place of abode,country,home))、「人の生活・活動する範囲の・(属する範囲内)中の(中)」(「カ(ン)ガ」の名詞形語尾のNGA音が脱落して「カ」となった)

  または「ナ・カハ」、NA-KAHA(na=by,made by,belonging to,by reason of,by way of;kaha=strong,strength,persistency)、「人の(精神的・物的)活動力の(大きさ)範囲、自然の力の範囲、自然の時の流れの範囲の・(属する範囲内)中の(中)」(「カハ」のH音が脱落して「カ」となった)

の転訛と解します。

1966ながめ(眺め)

 つくづくと見つめて物思いにふけること。感情を込め、または観賞的態度で見つめること。若では「長雨」に掛けて用いることが多い。見渡すこと。遠く見やること。また、その風景。眺望。なりかたち、特に、それがよいこと、美しいことをいう。また、見やるべき価値のあること。

 この「ながめ」は、

  「(ン)ガ(ン)ガ・マイ」、NGANGA-MAI(nganga=breathe heavily or with difficulty,make a hoarse,harsh noise,screech as a bird;mai=become quiet,indicate direction or motion towards, or character in relation to,the speaker)、「深くため息をつきながら・(沈黙する)物思いにふける(眺め)」(「(ン)ガ(ン)ガ」の最初のNG音がN音に、次のNG音がG音に変化して「ナガ」と、「マイ」のAI音がE音に変化して「メ」となった)

の転訛と解します。

1967なかんずく(就中)

 その中でとりわけ。特に。

 この「なかんずく」は、

  「ナ・カ(ン)ガ・ツク」、NA-KANGA-TUKU(na=by,made by,belonging to,by reason of,by way of;kanga=place where fire has burnt(kainga=place of abode,country,home);tuku=catch in a net)、「人の生活・活動する範囲の・(属する範囲内)中の・(網にかかった)特定のもの(就中)」(「カ(ン)ガ」のNG音がN音に変化して「カナ」から「カン」と、「ツク」が「ズク」となった)

の転訛と解します。

1968なぎ(凪)

 風がやんで、波が無くなり、海面が静かになること。

 この「なぎ」は、

  「ナキ」、NAKI(glide,move with an even motion)、「(海面が)滑るようで平らである(凪)」(「ナキ」が「ナギ」となった)

の転訛と解します。

1969なぎさ(渚)

 海・川・湖などの陸地と水とが接するあたりのところ。波が打ち寄せるところ。波打ち際。

 この「なぎさ」は、

  「ナ・(ン)ギタ」、NA-NGITA(na=by,made by,belonging to,by reason of,by way of;ngita=fast,firm,secure)、「(海が)堅い陸地に変わる・ところ(渚)」(「(ン)ギタ」のNG音がG音に変化して「ギタ」から「ギサ」となった)

の転訛と解します。

1970なぎなた(長刀。薙刀)

 手矛のように長い柄があり、刃を長く広くそらせた武器。敵をなぎ払うのに用いる。

 この「なぎなた」は、

  「ナキ・ナ・タ」、NAKI-NA-TA(naki=glide,move with an even motion;na=by,made by,belonging to,by reason of,by way of;ta=dash,beat,lay)、「滑るように・(敵を)打ち・倒すもの(薙刀)」(「ナキ」が「ナギ」となった)

の転訛と解します。

1971なきべそ(泣きべそ)

 いまにも泣きそうな顔つきになること。半ば泣いているような顔つきになること。よく泣く癖のある者。泣き虫。

 この「なきべそ」は、

  「ナ・キヒ・ペト」、NA-KIHI-PETO(na=by,made by,belonging to,by reason of,by way of;kihi=indistinct (of sound),barely audible,murmur of the sea;peto=be consumed)、「やっと聞き取れる低い(嗚咽)泣き声・のような声を出し・悲しみに打ちひしがれたような(顔つきをすること。泣きべそ)」(「キヒ」のH音が脱落して「キ」と、「ペト」が「ベソ」となった)

の転訛と解します。

1972なく(泣く)

 鳥、獣、虫などが声を出す。人が、精神や肉体への刺激に耐えかねて声を出し、また涙を流す。愚痴をこぼす。悔やみ事をいう。相手の無理を仕方なく承知する。また、損を承知で値引きする。泣くような酷い目にあう。辛酸をなめる。不当に評価されて不満足に思う(看板が泣く)。など。

 この「なく」は、

  「ナ・クイ」、NA-KUI(na=by,made by,belonging to,by reason of,by way of;kui=part of the pipi-wharauroa(shining cockoo),call the cry kui)、「(ピピ・ワラウロアが出す)音のような声で・泣く(泣く)」(「クイ」の語尾のI音が脱落して「ク」となった)

の転訛と解します。

1973なげく(嘆く)

 気持ちが満たされないで、ため息をつく。嘆息する。かなしみにひたる。かなしんで泣く。(ある物事を)かなしく思う。現状を腹立たしく思って恨み悲しむ。実現しにくいことを、そうして欲しい、また、そうしたいと切に願う。嘆願する。

 この「なげく」は、

  「ナ・(ン)ガイ・ク」、NA-NGAI-KU(na=by,made by,belonging to,by reason of,by way of;ngai=pant,sob;ku=silent,wearied,exhausted)、「ため息をつく(またはすすり泣きをする)・(悲しみに)打ちひしがれた・ような(嘆く)」(「(ン)ガイ」のNG音がG音に、AI音がE音に変化して「ゲ」となった)

の転訛と解します。

1974なけなし

 あるかないかであること。殆どないけれども、それだけに貴重に感じられること。もた、そのさま。

 この「なけなし」は、

  「ナケ・ナチ」、NAKE-NATI(nake=only;nati=pinch or contract,as by means of a ligature etc.)、「(ただ)ほんの・(圧縮されて)僅かにあるもの(なけなし)」(「ナチ」が「ナシ」となった)

の転訛と解します。

1975なこうど(仲人)

 中に立って橋渡しをする人。特に、結婚の仲立ちをすること。また、その人。ちゅうにん。なこど。この「なこうど(仲人)」については、国語篇(その十六)の155なこうど(仲人)の項を参照してください。

 この「なこうど」は、

  「ナカ・ウ・タウ」、NAKA-U-TAU(naka=denoting position near or connection with the person spoken to;u=be firm,be fixed;tau=come to rest,settle down,be suitable,befit)、「(男女の)仲を・適切に・結びつける(人。仲人)」(「ナカ」の語尾のA音と「ウ」のU音が連結してOU音に変化して「ナコウ」と、「タウ」のAU音がO音に変化して「ト」から「ド」となった)

の転訛と解します。

1976なごし(夏越)

 (邪神を払い和む意とする説、また、夏の名を越して相克の災いを払う意とする説がある)夏越しの祓の略。毎年六月晦日に宮中および各神社で行われる祓えの行事。茅の輪をくぐり、人形(ひとがた)の紙片を撫でて穢れを移して祓え捨てるもの。

 この「なごし」は、

  「ナ・(ン)ゴ(ン)ゴ・チ」、NA-NGONGO-TI(na=by,made by,belonging to,by reason of,by way of;ngongo=waste away,become thin,pine,suck,suck out;ti=throw,cast,overcome)、「(穢れを吸い取る)紙片に移して・祓え捨てる・部類の行事(夏越)」(「(ン)ゴ(ン)ゴ」の反覆語尾が脱落し、NG音がG音に変化して「ゴ」と、「チ」が「シ」となった)

の転訛と解します。

1977なごやか(和やか)

 ものやわらかなさま。やわらいでいるさま。温和なさま。おだやか。のどやか。

 この「なごやか」は、

  「ナ・(ン)ガオ・イア・カハ」、NA-NGAO-IA-KAHA(na=by,made by,belonging to,by reason of,by way of;ngao=dress timber with an adze;ia=indeed;kaha=strong,strength,persistency)、「実に・(強力に)徹底して・(斧で材木を平らにする)争いを無くする・といった部類の状態(和やか)」(「(ン)ガオ」のNG音がG音に、AO音がO音に変化して「ゴ」と、「イア」が「ヤ」と、「カハ」のH音が脱落して「カ」となった)

の転訛と解します。

1978なごり(名残。余波)

 (「波残(なみのこり)」の変化した語とする説がある)浜、磯などに打ち寄せた波が引いたあと、まだ、あちこちに残っている海水。また、後に残された小魚や海藻類もいう。風が吹き海が荒れた後、風がおさまっても、その後しばらく波が立っていること。また、その波。なごりなみ。なごろ。ある事柄が起こり、その事がすでに過ぎ去ってしまったあと、なおその気配・影響が残っていること。余韻。余情。特に、病気・出産などのあと、身体に残る影響。物事の残り。洩れ残ること。残余。死んだ人の代わりとして、あとに残るもの。子孫。形見。遺産。人と別れるのを惜しむこと。また、その気持ち。これで最後という別れの時。最後。など。

 この「なごり」は、

  「ナ・(ン)ガウ・オリ」、NA-NGAU-ORI(na=by,made by,belonging to,by reason of,by way of;ngau=bite,hurt,act upon,affect,attck;ori=cause to wave to and fro,sway,move about(oriori=dandle,chant a lullaby,song))、「(自然または人間に対する)打撃または働きかけが加えられたあと・それが周囲に及ぼす影響または遺産・の部類に属することがら(名残。余波)」(「(ン)ガウ」のNG音がG音に、AU音がO音に変化して「ゴ」となり、そのO音と「オリ」の語頭のO音が連結して「ゴリ」となった)

の転訛と解します。

1979なさけ(情け)

 人間としての感情。人間味のある暖かい心。人情。情愛。他に働きかける感情。哀れみ、思いやりなど。好意。親切。情趣・風流を理解する洗練された心。みやび心。風流心。風情。趣。情趣。趣味。男女が引かれ合う心。恋心。愛情。恋愛。情事。

 この「なさけ」は、

  「ナ・タハ・カイ」、NA-TAHA-KAI(na=by,made by,belonging to,by reason of,by way of;taha=side,portion,pass on one side,go by;kai=fulfil its proper function,have full play)、「(過ぎ去る)移り変わりながら・(常に最高の)情愛を求める人間の感情の本性の働き・といった部類のもの(情け)」(「タハ」のH音が脱落して「タ」から「サ」と、「カイ」のAI音がE音に変化して「ケ」となった)

の転訛と解します。

1980なじむ(馴染む)

 なれ親しむ。なれて親しくなる。また、場所や物事などに慣れる。なつく。遊里・遊郭でなじみ客となる。々遊女のもとへ何回も通う。味わい、物の調子などが一つに溶け合う。ほどよく調和する。また、なれてしっくりする。

 この「なじむ」は、

  「ナチ・ムフ」、NATI-MUHU(nati=pinch or contract,as by means of a ligature etc.,restrain;muhu=grope,feel after,push one's way through the bushes etc.)、「(あるものに)密着して・(それぞれのやり方で道を切り開く)人・場所・物事に慣れる(馴染む)」(「ナチ」が「ナジ」と、「ムフ」のH音が脱落して「ム」となった)

の転訛と解します。

1981なじょう(何じょう)・なんじょう(何じょう)

 (「何という」の変化したものとする説がある)@実体の不明なもの、または問題とするに及ばないものを指す。どうという。なんという名の。A事の状況、特に相手の意見・態度に対する強い疑問、または反発の気持ちを表す。どうして。Bいろいろな手段を尽くして事を行う気持ちを表す。また、断定や決意の表現に用いる。なんとかして(必ず)。なんとしても。どうしても。C相手の発言を否定し、遮る言葉。とんでもない。それは違う。何を言うか。

 この「なじょう」、「なんじょう」は、

  @「ナ(ナナ)・チオ」、NA(NANA)-TIO(na,nana=by or belonging to;tio=call,cry)、「(名を呼ぶ)言う・部類の(何じょう)」(「ナ(ナナ)・チオ」が「ナチョ(ナンチョ)」から「ナジョウ(ナンジョウ)」となった)

  A「ナ(ナナ)・チオホ」、NA(NANA)-TIOHO(na,nana=by or belonging to;tioho=apprehensive)、「(いろいろと)疑問がある・部類の(何じょう)」(「チオホ」のH音が脱落して「チオオ」から「チオウ」となり、「ナ(ナナ)・チオウ」が「ナジョウ(ナンジョウ)」となった))

  B「ナ(ナナ)・チオフ」、NA(NANA)-TIOHU(na,nana=by or belonging to;tiohu=stoop)、「(身を落としても行う)どんなことをしても断行する・部類の(何じょう)」(「チオフ」のH音が脱落して「チオウ」となり、「ナ(ナナ)・チオウ」が「ナジョウ(ナンジョウ)」となった))

  C「ナチ(ナナチ)・アウアウ」、NATI(NANATI)-AUAU(nati,nanati=pinch or contract,as by means of a ligature etc.,restrain,stifle;auau=disagreeable,disgustingfrequently repeated)、「(発言を)止めよ・不承知だ(何じょう)」(「アウアウ」の反覆語尾が脱落して「アウ」のAU音がO音に変化して「オ」となり、「ナチ(ナナチ)・オ」が「ナチョ(ナナチョ)」から「ナジョウ(ナンジョウ)」となった)

の転訛と解します。

1982なじる(詰る)

 相手の過失を問いただして責める。詰問する。非難する。

 この「なじる」は、

  「ナチナチ・ル」、NATINATI-RU(natinati=pinched,constricted,strifle,destroy;ru=shake,agitate,scatter)、「奮って・締め上げる(詰る)」(「ナチナチ」の反覆語尾が脱落して「ナチ」から「ナジ」となった)

の転訛と解します。

1983なぞ(謎)

 意義不明でたやすく解釈のできにくいこと。わかりにくい不思議なこと。また、その言葉や事柄。

 この「なぞ」は、

  「ナ・タウ」、NA-TAU(na=by or belonging to;tau=come to rest,settle down,be suitable(whakatau=cause to alight etc.,attempt,search,examine))、「(探索する)調べて解決する・(部類の)もの(謎)」(「タウ」のAU音がO音に変化して「ト」から「ゾ」となった)

の転訛と解します。

1984なた(鉈)

 短くて刃が厚く幅の広い刃物。薪などを割るのに用いる。この「なた(鉈)」については、雑楽篇(その二)の1046斧(おの)の項の「鉈(なた)」を参照してください。

 この「なた」は、

  「ナハ・タ」、NAHA-TA(naha,nahanaha=well arranged, in good order;ta=dash,beat)、「適当な・打撃を加える(道具。鉈)」(「ナハ」のH音が脱落して「ナ」となった)

の転訛と解します。

1985なだ(灘)

 @水流の早く流れるところ。川の流れの速いところ。潮流の強い海洋。風波の荒い航行の難所。転じて難関。この「なだ(灘)」については、地名篇(その十九)の(a)灘(なだ)の項の「なだ(灘)」を参照してください。

 A兵庫県南東部、武庫川河口から旧生田川河口にかけての地名。灘酒の略。

 この「なだ」は、

  @「ナ・タ」、NA-TA(na=by,belonging to;ta=dash,beat,lay)、「いつも・(波浪が)激しく打ち付ける(場所。海)」(「タ」が「ダ」となった)

  A「ナ・タハ」、NA-TAHA(na=by,belonging to;taha=margin,edge)、「(六甲山の)縁(に位置する。土地。地域)」(「タハ」のH音が脱落して「タ」から「ダ」となった)

の転訛と解します。

1986なだい(名代)

 標示する名。名目としてかかげる名。名義。名に伴う評判。また、名高いことやそのさま。著名。公明。なうて。そうした品物や店をもいう。江戸時代の興行で、奉行所から許可を得た興行権の所有者。江戸時代、大坂で各藩の蔵屋敷の名義上の持ち主。

 この「なだい」は、

  「ナ・タヒ」、NA-TAHI(na=by,made by,possessed by,belonging to,by reason of,by way of;tahi=one,single,unique,together,then,throughout,altogether)、「(一括して)すべてを・(所有する)部類の(名義人。名代)」(「タヒ」のH音が脱落して「タイ」から「ダイ」となった)

の転訛と解します。

1987なだめる(宥める)

 罪あるいは罪人を穏やかに取り扱う。寛大な取り扱いをする。許す。ある人の行為について、それを憤慨している他の人の心を穏やかにするように計らう。とりなす。調停する。人の心・精神状態などを穏やかな状態にする。和らげる。静める。物事を和らげて整える。

 この「なだめる」は、

  「ナ・アタ・マイ・ル」、NA-ATA-MAI-RU(na=satisfied,content;ata=gently,slowly,clearly,openly,deliverately,cautiously,quit;mai=become quiet;ru=shake,agitate,scatter)、「(人の心を)穏やかに・満足させ・静かにさせるよう・懸命に努める(宥める)」(「ナ」のA音と「アタ」の語頭のA音が連結して「ナタ」から「ナダ」と、「マイ」のAI音がE音に変化して「メ」となった)

の転訛と解します。

1988なだれ(雪崩)

 斜めに傾いていること。特に、山、川岸などの傾斜面。傾斜地などに積もった雪が、傾斜面を一時に大量に崩れ落ちる現象。一般に崩れ落ちること。この「なだれ(雪崩)」については、雑楽篇(その一)の239ゆき(雪)の項の「なだれ(雪崩)」を参照してください。

 この「なだれ」は、

  「ナ・タレ」、NA-TARE(na=by,belonging to;tare=hang,gasp for breath,be drawn towards,be intent upon)、「(雪が宙に浮いて)下に落ちてくる・ようなもの(雪崩)」(「タレ」が「ダレ」となった)

の転訛と解します。

1989なつ(夏)

 四季の一つ。春と秋の間。この「なつ(夏)」については、国語篇(その三)の第6章 思想と詩の器・・・・・・春・夏・秋・冬の項の「夏(なつ)」を参照してください。

 この「なつ」は、

  「ナハ・ツ」、NAHA-TU(naha,nahanaha=well arranged,in good order;tu=fight with,energetic)、「(動植物が)生き生きと・活動する(季節。夏)」(「ナハ」のH音が脱落して「ナ」となった)

の転訛と解します。

1990なつかしい(懐かしい)

 心が惹かれ、離れたくないさま。愛着を覚えるさま。魅力的だ。慕わしい。(中世以後に生じた意味)過去の思い出に心惹かれて慕わしいさま。離れている人や物に覚える慕情についていう。

 この「なつかしい」は、

  「ナハ・ツカハ・チヒ」、NAHA-TUKAHA-TIHI(naha,nahanaha=well arranged,in good order;tukaha=strenuous,vigorous,headstrong,hasty,passionate;tihi=summit,top,lie in a heap)、「素晴らしく・情熱的な(慕情は)・最高である(懐かしい)」(「ナハ」のH音が脱落して「ナ」と、「ツカハ」のH音が脱落して「ツカ」と、「チヒ」のH音が脱落して「チイ」から「シイ」となった)

の転訛と解します。

1991なっとう(納豆)

 細菌の酵素を利用した大豆の加工食品で、乾燥した塩辛納豆と糸引き納豆との二種がある。

 この「なっとう」は、

  「ナハ・ツトフ」、NAHA-TUTOHU(naha,nahanaha=well arranged,in good order;tutohu=receive a proposal favourably,give consent to,point out,indicate direct,sign,indication)、「適切な(温度)管理によって・好ましい(糸を引くなどの)特徴を示す食品となるもの(納豆)」(「ナハ」のH音が脱落して「ナ」と、「ツトフ」のH音が脱落して「ツトウ」から「ットウ」となった)

の転訛と解します。

1992など(何。等)

@(「なにと」の変化したものとする説がある)どうして。何故。

A(「なにと」が「なんど」を経て変化したものとする説がある)体言を承けて、類例を例示または暗示しつつ、大費用として指し示す。引用文を承けて、おおよそのところを示す。体言・形容詞連用形・副詞などを承けて、漠然と指すことによって表現を和らげる。ある事物を取り立てて例示する。

 この「など」は、

  @「ナ・トフ」、NA-TOHU(na=by,made by,possessed by,belonging to,by reason of,by way of;tohu=think)、「(それが)何故かを考える・べきもの(など)」(「トフ」のH音が脱落して「ト」から「ド」となった)

  A「ナ・ト」、NA-TO(na=by,made by,possessed by,belonging to,by reason of,by way of;to=the...of,the one of,to have)、「(あるものの)うちの一つ・といった部類のもの(など)」(「ト」が「ド」となった)

の転訛と解します。

1993ななこ(七子)

 近畿・中国地方でお手玉のこと。もと七個の小石であそんだところからという。>

 この「ななこ」は、

  「ナナ・コ」、NANA-KO(nana=tend carefully,nurse;ko=in addressing to girls and males)、「女の子の・(大事にしているもの)宝物(七子)」

の転訛と解します。

1994ななさん(母様)

 もとは上流の母のこと。

 この「ななさん」は、

  「ナナ・タナ」、NANA-TANA(nana=tend carefully,nurse;tana=his,her,its)、「(子供を)大事に養育する・彼女(母様)」(「タナ」が「サン」となった)

の転訛と解します。

1995なにがし(某)

 人や所の名、また、事物の名称などを知らないときに、その名の代わりとして用いる。また、知りながらもその固有の名称自体を問題としないときや、故意にあいまいにしたりしている場合にも用いる。相手が知っているような事柄をわざとぼかしていう時に用いる。自称。やや格式ばった表現であるが、男性が謙譲の意を含めて用いることもある。中世頃の用法で、その栃の名家・豪族の人であることを表す。数量、特に金銭の額について、あまり多くないことを漠然と表現するのに用いる。

 この「なにがし」は、

  「(ン)ガ(ン)ギ・(ン)ガチ」、NGANGI-NGATI(ngangi=cry of distress,noise;ngati=nga ati=tribal prefix)、「(その属する氏族の)氏(うじ)の名を・苦しそうに言う(某)」(「(ン)ガ(ン)ギ」の二つのNG音がN音に変化して「ナニ」と、「(ン)ガチ」のNG音がG音に変化して「ガチ」から「ガシ」となった)

の転訛と解します。

1996なびく(靡く)

 風、水などの力により、それにながされるような形になる。人の威力や魅力、周囲の状況などに引かれてそれに従う。人の意向に従う。特に、女が男に言い寄られて承知する。

 この「なびく」は、

  「ナ・アピアピ・ク」、NA-APIAPI-KU(na=by,made by,possessed by,belonging to,by reason of,by way of;apiapi=crowded,dense,confined,constricted;ku=silent,wearied,exhausted)、「静かに・(あるものに)締め付けられる・ようなことになる(靡く)」(「ナ」のA音と「アピアピ」の反覆語尾が脱落した「アピ」の語頭のA音が連結して「ナピ」から「ナビ」となった)

の転訛と解します。

1997なぶる(嬲る)

 面白がってからかい、ひやかす。人をいじめ、玩具にする。相手の困惑を楽しんで思うままにする。嘲弄する。手でもてあそぶ。いじくりまわす。

 この「なぶる」は、

  「ナ・アプル」、NA-APURU(na=by,made by,possessed by,belonging to,by reason of,by way of;apuru=crowd one upon another,shut up,suppress,overwhelm)、「(人を精神的・感情的に)完全に圧倒して思うままにする・ようなことをする(嬲る)」(「ナ」のA音と「アプル」の語頭のA音が連結して「ナプル」から「ナブル」となった)

の転訛と解します。

1998なべ(鍋)

 食物を煮たり煎ったり炒めたりする器。この「なべ(鍋)」については、雑楽篇(その二)の1040釜(かま)の項の「鍋(なべ)」を参照してください。

 この「なべ」は、

  「ナ・ハパイ」、NA-HAPAI(na=by,belonging to,indicating parentage or descent;hapai=lift up,carry)、「(釜のように竈に固定せず)持ち運ぶ・種類のもの(調理器具。鍋)」(「ハパイ」の語頭のH音が脱落したA音と「ナ」のA音が連結し、AI音がE音に変化して「ナペ」から「ナベ」となった)

の転訛と解します。

 

1999なべて(並べて)

 同じ状態が広くいきわたるさまを表す。おしなべて。一面に。一帯に。事柄が同じ程度・状態であるさまを表す。かべて。総じて。一般に。概して。事柄の程度や状態が、格別なことなく並一通りであるさまを表す。なみ。尋常。後に否定表現・反語表現を伴うことが多い。

 この「なべて」は、

  「ナ・パエ・タエ」、NA-PAE-TAE(na=by,made by,possessed by,belonging to,by reason of,by way of;pae=horizon,region,any transverse beam,lie across;tae=arrive,come,reach,extend to,proceed to)、「(ある状態や事柄が水平に)均一に・広がっている・ような状態である(並べて)」(「パエ」のAE音がE音に変化して「ペ」から「ベ」と、「タエ」のAE音がE音に変化して「テ」となった)

の転訛と解します。

2000なまいき(生意気)

 その柄ではないのに意気がった言動をすること。また、それにふさわしい身分や年齢ではないのに出過ぎた言動をすること。知ったかぶりをしたり、きざな態度をとること。また、そのさまや人。

 この「なまいき」は、

  「ナ・マハ・イキイキ」、NA-MAHA-IKIIKI(na=by,made by,possessed by,belonging to,by reason of,by way of;maha=many,abundance,majority;ikiiki=transport,carry away)、「たいへん・(夢中になる)身の程を忘れた言動や態度をとる・ようなさままたは人(生意気)」(「マハ」のH音が脱落して「マ」と、「イキイキ」の反覆語尾が脱落して「イキ」となった)

の転訛と解します。

2001なまぐさい(生臭い)

 生の魚や肉類のにおいがある。また、血のにおいがある。いやな臭いがある。気持ちの悪い臭いがある。僧としての戒律を守らず堕落している。また、世俗的になっている。なまいきである。しゃらくさい。うさんくさい。あやしげである。現実的な欲望や利害などがからんでいる。

 この「なまぐさい」は、

  「ナ・マ・クタイタイ」、NA-MA-KUTAITAI(na=by,made by,possessed by,belonging to,by reason of,by way of;ma=white,pale,clean;kutaitai=of a disagreeable taste)、「(白い、清らかな)加熱調理されていない・部類(生)のもので・不快な臭いを発するもの(生臭い)」(「クタイタイ」の反覆語尾が脱落して「クタイ」から「グサイ」となった)

の転訛と解します。

2002なまけもの(怠け者)

 怠ける人。働くことを嫌う人。この「なまけもの(怠け者)」については、国語篇(その十六)の157なまけもの(怠け者)の項を参照してください。

 この「なまけもの」は、

  「ナ・マカイ・モノ」、NA-MAKAI-MONO(na=by,made by,possessed by,belonging to,by reason of,by way of;makai,tunutunu makai=keep eating portions of food while it is cooking,and so make frequent raids on an enemy's country to obtain supplies;mono=plug,caulk,disable by means of incantations)、「まるで力を奪う呪術を掛けられたように・働くことを嫌う・部類の人間(怠け者)」(「マカイ」のAI音がE音に変化して「マケ」となった)

の転訛と解します。

2003なまじい(なま強い)

 気が進まなかったり、不可能だと思ったりしながらも、つとめて無理にするさま。そうでなくてもよいのに、よせばよいのに、と言う気持ちを表す。中途半端なさま。いい加減であるさま。不用意なさま。うっかり。

 この「なまじい」は、

  「ナ・マ・チヒ」、NA-MA-TIHI(na=by,made by,possessed by,belonging to,by reason of,by way of;ma=white,pale,clean;tihi=sough,moan)、「蒼白な(顔で)・ため息をつく・ような状態のさま(なま強い)」(「チヒ」のH音が脱落して「チイ」から「ジイ」となった)

の転訛と解します。

2004なまじっか

 2003なまじいに同じ。

 この「なまじっか」は、

  「ナ・マ・チヒ・ツカハ」、NA-MA-TIHI-TUKAHA(na=by,made by,possessed by,belonging to,by reason of,by way of;ma=white,pale,clean;tihi=sough,moan;tukaha=strenuous,vigorous,headstrong,hasty,passionate)、「蒼白な(顔で)・強情さをこめて・ため息をつく・ような状態のさま(なま強い)」(「チヒ」のH音が脱落して「チ」から「ジ」と、「ツカハ」のH音が脱落して「ツカ」から「ッカ」となった)

の転訛と解します。

2005なます(膾)

 魚介や獣などの生肉を細かく切ったもの。魚・貝・肉・野菜などを刻んで、二杯酢・酢味噌・いり酒などで調味した料理。

 この「なます」は、

  「ナ・マ・ツ」、NA-MA-TU((na=by,made by,possessed by,belonging to,by reason of,by way of;ma=white,pale,clean;tu=fight with,energetic)、「(白い、清らかな)加熱調理されていない・部類(生)のもので・(懸命に)細かく切ったもの(膾)」(「ツ」が「ス」となった)

  または「ナ・マ・ツイ」、NA-MA-TUI((na=by,made by,possessed by,belonging to,by reason of,by way of;ma=white,pale,clean;tui=pierce,thread on a string)、「(白い、清らかな)加熱調理されていない・部類(生)のもので・(人の舌を刺す酸いもの)酢に漬けたもの(膾)」(「ツイ」の語尾のI音が脱落して「ツ」から「ス」となった)

の転訛と解します。

2006なまはげ(生剥)

 秋田県男鹿半島などで旧暦正月十五日、近年では大晦日の晩に行う行事。また、その行事に登場するもの。青年数人が、恐ろしい面をかぶり、簑ょ着、木製の刃物・鍬・幣束・桶・箱などを持ち、家々を訪れて子供を脅したうえで主食のふるまい、祝儀をもらうもの。この「なまはげ」については、雑楽篇(その一)の103なまはげの項を参照してください。

 この「なまはげ」は、

  「ナ・マハケ」、NA-MAHAKE(na=by,by reason of,acted on in any way of;mahake=small)、「子供の(躾の)為にする(行事)」(「マハケ」が「マハゲ」となった)

の転訛と解します。

2007なまぶし(生節)

 2010なまり(ぶし)に同じ。節取りした鰹を蒸して半乾燥させた食品。>

 この「なまぶし」は、

  「ナハ・マ・プチ」、NAHA-MA-PUTI(naha,nahanaha=well arranged,in good order;ma=white,pale,clean;puti=dried up,desiccated,cross-grained of timber)、「(具合良く)良い加減に・(白い、清らかな)生のものを・乾燥させたもの(生節)」(「ナハ」のH音が脱落して「ナ」と、「プチ」が「ブシ」となった)

の転訛と解します。

2008なまめかしい(艶めかしい)

 人の容姿・態度などについていう。優美である。上品である。もの柔らかである。特に、若い女性などの容姿をいうことが多いところから、次第に女性の若い魅力をいうようになり、後には女性の性的魅力一般をいうようになった。色っぽい。艶っぽい。広く一般の物品等に対していう。優雅である。優美である。人の性質・心柄や、情景・風物などについて、情趣のあるさま、趣をカイするさまなどをいう。風流である。

 この「なまめかしい」は、

  「ナハ・マ・メカ・チヒ」、NAHA-MA-MEKA-TIHI(naha,nahanaha=well arranged,in good order;ma=white,pale,clean;meka=true;tihi=summit,top,lie in a heap)、「(具合良く)優雅で・清らかで・真に・最高であること(艶めかしい)」(「ナハ」のH音が脱落して「ナ」と、「チヒ」のH音が脱落して「チイ」から「シイ」となった)

の転訛と解します。

2009なまめく(艶めく)

 人の容姿や挙動、あるいは心ばえが、奥床しく、上品で、優美である。また、そのようにふるまう。物や情景などが優美で情趣がある。異性の心を誘うような様子を見せる。色っぽい様子をしている。あだっぽい振る舞いをする。また、男女間の交際にかかわることをいう。

 この「なまめく」は、

  「ナハ・マ・メ・ク」、NAHA-MA-ME-KU(naha,nahanaha=well arranged,in good order;ma=white,pale,clean;me=if,as if,as it were;ku=silent)、「(具合良く)優雅で・清らかで・あるかのように・静かに振る舞う(艶めく)」(「ナハ」のH音が脱落して「ナ」となった)

の転訛と解します。

2010なまり(生節)・なまり(鉛)

 @「なまりぶし(生節)」の略。節取りした鰹を蒸して半乾燥させた食品。

 A白色の柔らかく重い金属。鉛。

 この「なまり」は、

  @「ナハ・マ・アリ」、NAHA-MA-ARI(naha,nahanaha=well arranged,in good order;ma=white,pale,clean;ari=clear,white,appearance)、「(具合良く)良い加減に・(白い、清らかな)生のものの・外観が残っているもの(なまり)」(「ナハ」のH音が脱落して「ナ」と、「マ」のA音と「アリ」の語頭のA音が連結して「マリ」となった)

  A「ナ・マハ・アリ」、NA-MAHA-ARI(na=by,by reason of,acted on in any way of;maha=many,abundance,majority;ari=clear,white,appearance)、「非常に(多い)重い・白色の・(部類)特徴をもつ金属(鉛)」(「マハ」のH音が脱落して「マ」となったそのA音と「アリ」の語頭のA音が連結して「マリ」となった)

の転訛と解します。

2011なまり(訛り)

 ある地方に見られる、標準語・共通語とは異なった発音。

 この「なまり」は、

  「ナムナム・アリ」、NAMUNAMU-ARI(namunamu=small,dimunitive,anything causing a blister or skin irritation(whakanamunamu=appear like a speck in the distance);ari=clear,white,appearance)、「(離れた地方に見られる)小さな(気になる)・(外観)発音(訛り)」(「ナムナム」の反覆語尾が脱落して「ナム」となり、「ナム・アリ」が「ナマリ」となった)

の転訛と解します。

2012なみする(無みする)

 1959ないがしろにする。あなどる。蔑視する。

 この「なみする」は、

  「ナ・ミ・ツルツル」、NA-MI-TURUTURU(na=by,made by,possessed by,belonging to,by reason of,by way of;(Hawaii)mi=to void urine;turuturu=make firm or permanent,permanent settlement)、「(空虚にする)何もなかった・かのように・(固定する)取り扱う(無みする)」(「ツルツル」の反覆語尾が脱落して「ツル」から「スル」となった)

の転訛と解します。

2013なみだ(涙)

 眼球の上部にある涙腺から出る透明な液体。涙を流すこと。泣くこと。人情。人の情け。思い遣り。感情。

 この「なみだ」は、

  「ナ・ミミ・タ」、NA-MIMI-TA(na=by,made by,possessed by,belonging to,by reason of,by way of;mimi=make water,urine,stream;ta=dash,beat,lay)、「(眼から生じた)水・のようなものが・垂れ落ちるもの(涙)」(「ミミ」の反覆語尾が脱落して「ミ」と、「タ」が「ダ」となった)

の転訛と解します。

2014なめる(嘗める)

 舌先で物に触れる。しゃぶる。味をみる。男が女をもてあそぶ。辛いことや苦しい事を経験する。火が一面を焼き尽くす。人や物事を軽くみる。馬鹿にする。みくびる。

 この「なめる」は、

  「ナ・メル」、NA-MELU(na=by,made by,possessed by,belonging to,by reason of,by way of;(Hawaii)melu=soft,weakening,to pull out as the beard)、「(優しく)舌先で触れる・ようにする(嘗める)」

の転訛と解します。

2015なや(納屋)

 室町時代、海産物を保管するために港町の海浜に設けられた倉庫。江戸時代、河岸に建てられた商業用の倉庫。屋外に建てられた物置小屋。農家の付属建物で、農具や肥料を収容したが、おおきなものは農作物の保管、雨天の際の作業場ともなった。漁村で、漁具などを格納する小屋。また、網元がその下で働く若者を起居させるために提供した部屋。魚を商う店。魚問屋。

 この「なや」は、

  「ナ・イア」、NA-IA(na=satisfied,content(whakana=satisfy,refresh,lull to security,rest,remain still);ia=indeed)、「(物を)保管する(納屋)」または「(人が)元気を回復する(納屋)」(「イア」が「ヤ」となった)

の転訛と解します。

2016なやむ(悩む)

 肉体的に苦しむ。難儀する。病気になる。精神的に苦しむ。思いわずらう。当惑する。思いわずらっていることを口にだして言う。あれこれと非難する。(動詞の連用形について)その動作が順調に行われない意を示す。あれこれ思案を巡らして行う。工面する。取り扱う。

 この「なやむ」は、

  「ナイ・アム」、NAI-AMU(nai=nei,neinei=stretched forward,reaching out,wagging;amu=grumble,begrudge,complain)、「(思いわずらった末に)うるさく文句を言う(悩む)」(「ナイ・アム」が「ナヤム」となった)

の転訛と解します。

2017ならい

 冬に山脈にそって吹く強い風。地方により風向は異なる。

 この「ならい」は、

  「ナ・ラヒ」、NA-RAHI(na=by,made by,possessed by,belonging to,by reason of,by way of;rahi=great,abundant,numerous,loud)、「極めて・激烈な(風。ならい)」(「ラヒ」のH音が脱落して「ライ」となった)

の転訛と解します。

2018ならう(習う)

 これまでにしばしば体験して常のこととなっている意を表す。また、動詞の連用形に付いて、〜するのを常とする、〜しなれている、の意を添える。なれ親しむ。親しくなる。体験する。体得する。学習する。習得する。稽古する。訓練する。

 この「ならう」は、

  「ナハ・ラウ」、NAHA-RAU(naha,nahanaha=well arranged,in good order;rau=catch as in a net,entangle,gather into a basket etc.,receptacle)、「(具合良く)良い加減に・(知識または体験を)集積する(習う)」(「ナハ」のH音が脱落して「ナ」となった)

の転訛と解します。

2019ならずもの(破落戸)

 暮らしが思うようにならない者。生活が不如意な者(不成者)。手のつけようもないほどたちの悪い者。手におえない人(破落戸)。定職がなく、放浪して悪事を働く者。ごろつき。やくざ。

 この「ならずもの」は、

  「ナ・ララ・ツ・モノ」、NA-RARA-TU-MONO(na=by,made by,possessed by,belonging to,by reason of,by way of;rara=be scattered,rush in disorder,stampede,effect,repercussion;tu=fight with,energetic;mono=plug,caulk,disable by means of incantations)、「まるで力を奪う呪術を掛けられたように・懸命に・破滅への道を突き進む・部類の人間(ならず者)」(「ララ」の反覆語尾が脱落して「ラ」と、「ツ」が「ズ」となった)

の転訛と解します。

2020ならびに(並びに)

 前に挙げた事柄を総括して述べるときに用いる。ともに。すべて。前の事柄と後の事柄とが並列の関係にあることを示す。また。および。

 この「ならびに」は、

  「ナ・ラピ・ニヒ」、NA-RAPI-NIHI(na=by,made by,possessed by,belonging to,by reason of,by way of;rapi=clutch,scratch;nihi=move stealthly,steal away,come stealthly upon,surprise,dizziness,timidity)、「そっと・(前の事柄を、または前の事柄と後の事柄を)しっかり掴む・かのように(並びに)」(「ラピ」が「ラビ」と、「ニヒ」」のH音が脱落して「ニ」となった)

の転訛と解します。

2021なりわい(生業)

 五穀が実るように努めること。田畑を耕作すること。農耕。農業。また、その作物。生活していくための仕事。世渡りの仕事。職業。家業。小正月の予祝行事として、若木で小さな百姓道具を作って祝うこと。

 この「なりわい」は、

  「(ン)ガリ・ワイ」、NGARI-WHAI(ngari=annoyance,disturbance,greatness,power,rhythmic chant with action;whai=follow,pursue,look for,go in serch of,aim at,practise)、「厄介で骨が折れるが・懸命に励む(仕事。生業)」(「(ン)ガリ」のNG音がN音に変化して「ナリ」となった)

の転訛と解します。

2022なる(鳴る)

 音がする。ひびく。声が出る。名などがあまねく知られる。知れ渡る。響き渡る。

 この「なる」は、

  「ナ・ルル」、NA-RURU(na=by,made by,possessed by,belonging to,by reason of,by way of;ruru=brandish,wave about(whakaruru=rumble))、「(重々しい)音または声・のような音または声がする(鳴る)」(「ルル」の反覆語尾が脱落して「ル」となった)

の転訛と解します。

2023なる(生る)・なる(成る)

 @(生る)動植物が新たに生ずる。草木の実ができる。実る。

 A(成る)あるものやある状態から他の状態に移り変わる。また、ある状態に達する。その時刻や時期に達する。また、時が経過する。ある場所や高さに達する。官職に任じられる。惨めな状態になる。おちぶれる。将棋で王将、金将以外の駒が敵陣の三段に入ってその性能が変わること。行為の結果が現れる。酒が飲める。差し支えないとして我慢できる。暮らしが立つ。物事がそれによって構成される。など。

 この「なる」は、

  @「(ン)ガルル」、NGARURU(abundant,strong in growth,flourishing,dense brushwood)、「豊かに産する(生る)」(「(ン)ガルル」のNG音がN音に変化し、反覆語尾が脱落して「ナル」となった)

  A「ナ・ル」、NA-RU(na=satisfied,content(whakana=satisfy,refresh,lull to security,rest,remain still);ru=shake,agitate,scatter(ruanga=shaking,displacement))、「喜ばしいことに・ある状態から他の状態に移る(成る)」

の転訛と解します。

2024なるほど(成る程)

 可能な範囲でその限度までつとめてすることを示す。できるだけ。可能な限り。その状態や理屈を改めて確認し、または納得することを示す。確かに。確実に。誠に、仰るとおり。いかにも、その事がある状況や理屈に合っていると、改めて確認し、納得するさま。相手の言葉に対し、その通りであると同意する気持ちを表す。

 この「なるほど」は、

  「ナ・アル・ホト」、NA-ARU-HOTO(na=by,made by,possessed by,belonging to,by reason of,by way of;aru=follow,pursue;hoto=join)、「(相手の)言うことに追随して・協力する・ような行動をとる(成る程)」(「ナ」のA音と「アル」の語頭のA音が連結して「ナル」と、「ホト」が「ホド」となった)

の転訛と解します。

2025なれずし(熟れ鮨)

 (「なれ」は熟成する意)魚介類を発酵させ、酢を使わずに、自然の酸味で食べる鮨。この「すし(鮨)」については、国語篇(その二十一)の1375すし(寿司)の項を参照してください。

 この「なれずし」は、

  「ナ・レイ・ツイ・チ」、NA-REI-TUI-TI(na=by,made by,possessed by,belonging to,by reason of,by way of;rei=leap,rush,run(whakarei=throw,cast away);tui=pierce,thread on a string;ti=throw,cast,overcome)、「(塩漬けした魚と飯を混ぜ合わせて)放置して発酵させた・ような・(人の舌を突き刺すような)酸っぱい・味がする料理(熟れ鮨)」(「レイ」の語尾のI音が脱落して「レ」と、「ツイ」の語尾のI音が脱落して「ツ」から「ス」と、「チ」が「シ」となった)

の転訛と解します。

2026なれる(馴れる)

 あるものや事態にたびたび出会ったり経験したりしたために常のこととなる。珍しくなくなる。たびたび行ってそのことに熟達する。よく気がきく。巧みである。親しむ。あまりにもなれなれしく振る舞う。衣類などがからだに馴染む。長く使って古くなる。みすぼらしくなる。食べ物などが新鮮でなくなる。腐る。すしなど、ほどよく時間がたって味加減がよくなる。熟成する。

 この「なれる」は、

  「ナ・レヘ・ル」、NA-REHE-RU(na=by,made by,possessed by,belonging to,by reason of,by way of;rehe=wrinkle,expert,neat-handed deft person;ru=shake,agitate,scatter)、「奮って・熟達者・のように行動する(馴れる)」(「レヘ」のH音が脱落して「レ」となった)

の転訛と解します。

2027なわしろ(苗代)

 水に浸しておいた籾種を蒔いて、稲の苗を育てる水田。

 この「なわしろ」は、

  「ナナ・ワ・チラウ」、NANA-WA-TIRAU(nana=tend carefully,nurse;wa=definite place,area;tirau=peg,stick,pick root crops etc.,out of the ground with a stick)、「(稲の苗を)育てて・(育った苗を)引き抜く(本田に移植する)・場所(苗代)」(「ナナ」の反覆語尾が脱落して「ナ」と、「チラウ」のAU音がO音に変化して「チロ」となった)

の転訛と解します。

2028なわて(縄手)

 田の間の道。あぜ道。長く続く真っ直ぐな道。

 この「なわて」は、

  「ナ・ワテア」、NA-WATEA(na=by,made by,possessed by,belonging to,by reason of,by way of;watea=unoccupied,clear,free,open,cautious)、「広く開けている(場所を通る)・部類のもの(道。縄手)」(「ワテア」の語尾のA音が脱落して「ワテ」となった)

の転訛と解します。

2029なわばり(縄張り)

 栃などに縄を張って境界を定め、自分のところと他人のところの区別や特別の区域であることを明らかにすること。区画すること。また、その場所。家屋などを建てる際に建築物の位置を定めるため、図面どおりに敷地に縄を張ること。博徒、やくざ、暴力団などの親分の勢力の及ぶ範囲。また、ある者が勢力範囲とする領域。能・歌舞伎・見世物などで、縄を張って観客を入れる座席を区画すること。また、その区画。犯罪人逮捕の手配をすること。また、その手配。

 この「なわばり」は、

  「ナハ・パリ」、NAHA-PARI(naha,nahanaha=well arranged,in good order;pari=be overpowered,be baffled)、「(具合良く)調整された・(ある人の)勢力が及ぶ(地域。縄張り)」(「ナハ」が「ナワ」と、「パリ」が「バリ」となった)

の転訛と解します。

2030なん(何)

 (「なに(何)」の変化した語。助詞、助動詞などと複合して用いられ、口頭語として「なに」の形より「なん」の形のほうが多い。「なんじゃ」「なんだ」「なんと」「なんの」「なんて」「なんで」「なんらか」など。)

 この「なん」は、

  「ナノ」、NANO(whakanano=discredit,disparage,disbelieve)、「(不審)なにか不明である(なに)」(「ナノ」が「ナン」となった)

の転訛と解します。

2031なんじ(汝)

 @古くは「なむち」「な(汝)むち(貴)」で相手を尊敬して呼んだ語と推定されるとする説がある。この説には疑問があるが、ここでは一応この説に従って解釈することとする。

 A奈良時代以降、対等またはそれ以下の相手に対して用いられ、中世以降は、目下の者に対するもっとも一般的な代名詞として用いられる。

 この「なんじ」は、

  @「ナナム・チ」、NANAMU-TI(nanamu=smart,tingle,flash,glitter,irritate;ti=throw,cast)、「(ピカッと)光りを・放っている人(汝)」(「ナナム」の反覆語頭が脱落して「ナム」から「ナン」と、「チ」が「ジ」となった)

  A「ナ・ナチ」、NA-NATI(na=by,made by,possessed by,belonging to,by reason of,by way of;nati=pinch or contract,as by means of a ligature etc.,restrain,stifle)、「(恐縮して)小さくなっている・部類の人(汝)」(「ナチ」が「ンジ」となった)

の転訛と解します。

2032なんど(納戸)

 衣服、調度類、器財などを納めておく部屋。一般には屋内の物置部屋わいうが、主人夫婦、家族の居間や寝室などにもなる。おなんど。

 この「なんど」は、

  「ナナ・ト」、NANA-TO(nana=tend carefully,nurse(whakanana=rest,remain);to=drag,open or shut a door or window)、「(物を)納めておく・(開閉する)戸のある部屋(納戸)」または「(人が)休息する・(開閉する)戸のある部屋(納戸)」(「ナナ」が「ナン」と、「ト」が「ド」となった)

の転訛と解します。

2033なんの(何の)・なんのかんの(何の彼の)

 事物・事態の実質的内容の不定・不明なものを指示する。どういう。どんな。反語的表現を用いて、事物・事態が容認、あるいは肯定できない気持ちを表す。いったいどういう。否定表現を用いて、全面的な否定を表す。どんな。どのような。事物・事態が納得しがたい気持ちを表す。どうして(〜しようか)。なぜまた(〜なのか)。事物・事態が、たいしたことではないと、それを見くびったり相手の言葉を否定したりする気持ちを表す。(「なんのかんの」の形で)同類の物を不定のまま列挙するのに用いる。(「なんのなんの」の形で)同類の事態を列挙する形で、上の事態を強調するのに用いる。

 この「なんの」、「なんのかんの」は、

  「ナノ・ノ」、NANO-NO(nano,whakanano=discredit,disparage,disbelieve;no=of,from,belonging to,owing to)、「不審な・部類に属するもの(なんの)」(「ナノ」が「ナン」となった)

  「ナノ・ノ・カノ・ノ」、NANO-NO-KANO-NO(nano,whakanano=discredit,disparage,disbelieve;no=of,from,belonging to,owing to;kano=colour,sort,kind,seed)、「不審な・部類に属するものや・同じ種類の・部類に属するもの(なんのかんの)」(「ナノ」が「ナン」と、「カノ」が「カン」となった)

の転訛と解します。

2034なんぼ(何程)

 程度の限定しがたいさま。また、不明、不定なさま。どれほどか。どの程度か。程度が甚だしくて、限定しがたいさま。ずいぶん。いくらでも。普通には認められないものが特に認められると許容・譲歩する気持ちを表し、それでもこの場合には認めるわけにはいかないという判断を導く。いくら(〜でも)。

 この「なんぼ」は、

  「ナノ・ポウ」、NANO-POU(nano,whakanano=discredit,disparage,disbelieve;pou=pole,stick in,errect a stake etc.,elevate upon poles,establish,place)、「(不審)どのくらいの・高さになるのか(なんぼ)」(「ナノ」が「ナン」と、「ポウ」が「ボ」となった)

の転訛と解します。

「ニ」

2035にいなめ(新嘗)

 内裏で大嘗祭を行う年を除いて、毎年陰暦十一月の卯の日に行なわれる儀式。その年の新穀を諸神に供え、天皇自身も食する。にいなえ。にいあえ。にわなえ。にわない。にわのあい。この「にいなめ(新嘗)」については、雑楽篇(その一)の332大嘗(おほなめ)の項の「新嘗(にいなめ)を参照してください。

 この「にいなめ」は、

  「ニヒ・ナ・アマイ」、NIHI-NA-AMAI(nihi=steep,move stealthily,come stealthily upon;na=satisfied,by,indicate parentage or descent,belonging to;amai=swell on the sea,giddy,dizzy)、「徐々に・(天皇の)子孫が・(一年の間に次第に小さくなったその霊力を)膨らませる(または輝きを取り戻すための。儀式)」(「ナ」のA音と、「アマイ」のAI音がE音に変化して「アメ」となったその語頭のA音と連結して「ナメ」となった)

の転訛と解します。

2036にえ(贄)

 神に供えたり、天皇に献上したりする魚・鳥などの食べ物。また、神や天皇に捧げる、新穀などその年の新物をもいう。挨拶としての贈り物。懐剣の時の礼物。みやげ。進物。ある目的を達するためなどに払われる物や刀。いけにえ。犠牲。この「にえ(贄)」については、雑楽篇(その一)の360にえ(贄)の項を参照してください。

 この「にえ」は、

  「ニヒ・アヱ」、NIHI-AWHE(nihi=steep,move stealthily,come stealthily upon;awhe=scoop up,gather into a heap,surround)、「徐々に・(霊力を)積み上げる(増すための食物)」(「ニヒ」のH音が脱落して「ニ」と、「アヱ」のWH音が脱落し、AE音がE音に変化して「エ」となった)

の転訛と解します。

2037におう(匂う)

 赤などの鮮やかな色が、光りを放つようにはなやかに印象づけられることをいう。他のものの色がうつる。染まる。明るく照り映える。うつくしく、つややかである。臭覚を刺激する気が漂い出る。香り、臭みなどが感じられる。花がつややかに美しく咲く。咲き誇る。生き生きとした美しさや魅力が内部からあふれ出るように、その人の回りに漂う。世に栄える。また、影響を受けて周囲のものまで華やかに栄える。染色または襲(かさね)の白目を、濃いいろから次第に薄くぼかした色にしてある。何となくそれらしい気配が感じられる。香りを発散させる。匂いをかぐ。美しく染める。この「におう(匂う)」については、国語篇(その十四)の042かぐ(嗅ぐ)の項の「におう(臭う)」を参照してください。

 この「におう」は、

  「ニホ・ウ」、NIHO-U(niho=tooth,thorn,effective force;u=be firm,be fixed)、「(色や香りなどの)人を刺激するものを・感じ取る(匂う)」(「ニホ」のH音が脱落して「ニオ」となつた)

の転訛と解します。

2038にがて(苦手)

 常人と異なり、不思議な力をもつ手。その手で押さえると人は腹痛が治まり、蛇は動けずに捕らえられるという。自分と気が合わず、好ましくない相手。転じて自分にとって得意でないもの。不得手。

 この「にがて」は、

  「ニヒ・カタエ」、NIHI-KATAE(nihi=move stealthly,come stealthly upon;katae=how great)、「そっと動かす(または人を驚かす)・超能力をもつもの(苦手)」(「ニヒ」のH音が脱落して「ニ」と、「カタエ」のAE音がE音に変化して「カテ」から「ガテ」となった)

の転訛と解します。

2039にがる(苦る)

 苦々しく思う。また、そのような顔をする。興ざめする。

 この「にがる」は、

  「ニヒ・カル」、NIHI-KARU(nihi=move stealthly,come stealthly upon;karu=eye,head,look at(whakakarukaru=stare at angrily))、「そばに寄って・苦々しげにじっと見つめる(苦る)」(「ニヒ」のH音が脱落して「ニ」と、「カル」が「ガル」となった)

の転訛と解します。

2040にかわ(膠)

 動物の皮、腱、骨、結合組織などを水で煮沸し、溶液を濃縮・冷却・凝固してつくったゼラチン。接着剤のほか他用途に用いられる。

 この「にかわ」は、

  「ヌイ・カワ」、NUI-KAWA(nui=large,great,many,superior;kawa=clutch,grasp)、「大きな(力で)・(掴む)接着するもの(膠)」(「ヌイ」のUI音がI音に変化して「ニ」となった)

の転訛と解します。

2041にきび(面胞)

 思春期の男女の顔などにできる小さい粒。毛のうに生ずる丘疹で、毛根部から分泌される脂肪が溜まったもの。また、この部分に感染を伴って膿疱を形成したもの。

 この「にきび」は、

  「ニキ・ピヒ」、NIKI-PIHI(niki=small;pihi=spring up,begin to grow,shoot,sprout)、「小さな・(大きくなる)腫れ物(面皰)」(「ピヒ」のH音が脱落して「ビ」となった)

の転訛と解します。

2042にく(肉)

 動物の皮膚に覆われ、内部で骨格を包む柔軟質のもの。食用とする動物の筋肉や脂肪の部分。果実の皮と種子の間にある軟らかな部分。果肉。実。この「にく(肉)」については、国語篇(その九)の052 meatの項を参照してください。

 この「にく」は、

  「ニヒ・ク」、nihi-ku(nihi=move stealthly;ku=silent)、「静かに・音を立てずに動くもの(肉)」(「ニヒ」のH音が脱落して「ニ」となった)

の転訛と解します。

2043にこごり(煮凝り)

 魚などを煮た汁が寒さで凍ったもの。また、魚肉類を汁を多くして煮て、ゼラチンや寒天を補って身ごと固めた流し物をいう。

 この「にこごり」は、

  「ニヒ・カウ・カウリ」、NIHI-KAU-KAURI(nihi=steep;kau=alone,bare,only;kauri=a forest tree,resin from the tree(ngori=weak,listless))、「(魚肉を煮て)滲出した・ただの・(樹脂のような)柔らかい固まり(煮凝り)」(「ニヒ」のH音が脱落して「ニ」と、「カウ」のAU音がO音に変化して「コ」と、「カウリ」のAU音がO音に変化して「コリ」から「ゴリ」となった)

の転訛と解します。

2044にし(西)

 (「に」は「去(い)に」の「い」の脱落で、「日の入る方角」の意、「し」は風の意で、風位からその方角をもいういする説がある)方角の名。日の沈む方向。西風わいう。仏語。西方の極楽浄土をさす。西洋のこと。この「にし(西)」については、古典篇(その十六)の250B勅旨(ちょくし)宮の項の「西(にし)を参照してください。

 この「にし」は、

  「ニチ」、NITI(toy dart)、「(太陽が)投げ矢のように(一直線に進む方向。西方)」(「ニチ」が「ニシ」となった)

の転訛と解します。

2045にじ(虹)

 大気中の水滴に太陽の光が屈折・反射して太陽の反対方向の空中にできる七色の弧状をした帯。この「にじ(虹)」については、雑楽篇(その一)の238にじ(虹)の項を参照してください。

 この「にじ」は、

  「ヌイ・ヒ・チ」、NUI-HI-TI(nui=large,many;hi=raise,rise;ti=throw,cast,overcome)、「(天の)高いところに・懸かった・巨大なもの(虹)」(「ヌイ」のUI音がI音に変化して「ニ」となり、「ヒ」のH音が脱落し、「チ」が「ジ」となった)

の転訛と解します。

2046にしき(錦)

 数種の色糸で地織りと文様を織り出した織り物。経(たていと)で文様を織り出した経錦(たてにしき)と、緯(よこいと)で文様を織り出した緯錦(よこにしき)がある。この「にしき(錦)」については、雑楽篇(その一)の362あや(綾)の項の「にしき(錦)」を参照してください。

 この「にしき」は、

  「ヌイ・チキ」、NUI-TIKI(nui=many,large;tiki=fetch,proceed to do anything)、「たくさんの(色を)・取り入れた(織物。錦)」(「ヌイ」のUI音がI音に変化して「ニ」と、「チキ」が「シキ」となった)

の転訛と解します。

2047にしめ(煮染め)

 魚、肉、野菜などを味付けした汁で煮込み、多少汁気を残し、照りを付けないで煮上げたもの。煮染物。

 この「にしめ」は、

  「ニヒ・チ・メ」、NIHI-TI-ME(nihi=steep,move stealthly,come stealthly upon;ti=throw,cast,overcome;me=if,as if,like,as it were)、「(材料を)浸した(煮汁が)・ほとんど・(圧倒された)無くなった(煮物。煮染め)」(「ニヒ」のH音が脱落して「ニ」と、「チ」が「シ」となった)

の転訛と解します。

2048にせ(偽)

 本物に似せてつくること。また、そのもの。にせもの。

 この「にせ」は、

  「ニア・テイ」、NIA-TEI((Hawaii)nia=malicious gossip or accusation,slanderous,to accuse falsely;tei,teitei=high,tall,summit,top)、「最高の(良くできた)・偽物(と非難されるもの。偽)」(「ニア」の語尾のA音が脱落して「ニ」と、「テイ」の語尾のI音が脱落して「テ」から「セ」となった)

の転訛と解します。

2049にっこり

 にこやかに笑うさま。思わず微笑むさま。思わず笑みがこぼれるような。なごやかなさま、ここちよいさまなどを表す語。

 この「にっこり」は、

  「ニア・ツコウ・ウリ」、NIA-TUKOU-URI((Hawaii)nia=smooth,round,calm((Maori)niania=slip);tukou=dress timber with an adze;uri=offspring,descendant,relative)、「黙って・(斧で材木を削るように顔を丸くする)相好を崩す・のに似た表情をする(にっこり)」(「ニア」の語尾のA音が脱落して「ニ」と、「ツコウ」の語尾のU音と「ウリ」の語頭のU音が連結して「ツコウリ」となり、「ッコリ」となった)

の転訛と解します。

2050にっちもさっちも(二進も三進も)

 (算盤の割り算の九九の「二進一十(にしんいんじゅう)」「三進一十(さんしんいんじゅう)」から来た言葉で、二を二で割っても、三を三で割っても、商の一が立って割り切れることを指し、「〜行かない」の形で「計算のやりくりがつかない」意を示すとする説がある)どうにもやりくりができないさま。窮地に追い込まれたりして身動きがつかないさまなどをいう。

 この「にっちもさっちも」は、

  「ニチ・マウ・タハチチ・マウ」、NITI-MAU-TAHATITI-MAU(niti=toy dart;mau=fixed,continuing,caught,entangled;tahatiti=peg,wedge used to tighten anything(titi=peg,stick in as a peg,be fastened with pegs))、「投げ矢も・(何かに)絡まり(投げられず)・棒も・(何かに)絡まっている(振り回すことができない)(二進も三進も)」(「ニチ」が「ニッチ」と、「マウ」のAU音がO音に変化して「モ」と、「タハチチ」のH音および反覆語尾が脱落して「タチ」から「サッチ」となった)

の転訛と解します。

2051になう(担う)

 物を肩にかけて運ぶ。天秤棒などを用いる場合にもいう。かつぐ。かたげる。自分の責任として引き受ける。負担する。身に負う。ある評価や意味を与えられる。負わされる。この「になう(担う)」については、国語篇(その十四)の049かつぐ(担ぐ)の項の「になう(担う)」を参照してください。

 この「になう」は、

  「ニヒ・ナフ」、NIHI-NAHU(nihi=move stealthly,steal away;nahu=well executed)、「ひっそりと移動して・(仕事を)きちんと果たす(担ぐ)」(「ニヒ」のH音が脱落して「ニ」と、「ナフ」のH音が脱落して「ナウ」となつた)

の転訛と解します。

2052にのあし(二の足)

 歩きはじめる際の二歩目。躊躇うこと。しりごみ。

 この「にのあし」は、

  「ニヒ・ノホ・アチ」、NIHI-NOHO-ATI(nihi=move stealthly,steal away;noho=sit,stay,remain,settle;ati=offspring,descendant(atiati=drive away))、「そっと動くのを・(止める)止まる・(歩いて)去るもの(足)」(「ニヒ」のH音が脱落して「ニ」と、「ノホ」のH音が脱落して「ノ」と、「アチ」が「アシ」となった)

の転訛と解します。

2053にのくがつげぬ(二の句が継げぬ)

 言うべき次の言葉が出てこない。

 この「にのくがつげぬ」は、

  「ニヒ・ノホ・クカ・ツ(ン)ゲヘ・ヌイ・ク・(ン)ガツ・(ン)ゲ(ン)ゲ」、NIHI-NOHO-KUKA-TUNGE-NUI(nihi=move stealthly,steal away;noho=sit,stay,remain,settle;kuka=encumbrance,clog;tungehe=quail,be alarmed;nui=large,great,many,plentiful;;ku=silent,wearied,exhausted;ngatu=crushed,mashed;ngenge=weary,tired,weariness,exhaustion)、「そっと動くのを・(止める)止まる・(歩いて)去るもの(足)」(「ニヒ」のH音が脱落して「ニ」と、「ノホ」のH音が脱落して「ノ」と、「アチ」が「アシ」となった)「」、、「()()」()

の転訛と解します。

2054にのまい(二の舞)

 人の後に出てその真似をすること。前の人と同じようなことをすること。また、その人。特に、前人の失敗を繰り返すことにいう。

 この「にのまい」は、

  「(ン)ギ(ン)ゴ(ン)ギ(ン)ゴ・マイ」、NGINGONGINGO-MAI(ngingongingo=malignant devouring spirits;mai,maimai=a dance to welcome guests at a lamentation)、「(人を破滅させる)悪い精霊に操られた(ように思わず失敗をする)・舞(二の舞)」(「(ン)ギ(ン)ゴ(ン)ギ(ン)ゴ」のNG音がN音に変化し、反覆語尾が脱落して「ニノ」となった)

の転訛と解します。

2055にべない

 お世辞がない。愛敬がない。思い遣りがない。にべもない。にべもしゃしゃりもない。

 この「にべない」は、

  「ニヒ・パイ・ナヒ」、NIHI-PAI-NAHI(nihi=move stealthly,come stealthly upon;pai=good,excellent,satisfactory,pleasant,good looks;(Hawaii)nahi=few,some)、「静かに滲み出てくる(ような)・好感を与えるもの(愛敬)が・極めて少ない(にべない)」(「ニヒ」のH音が脱落して「ニ」と、「パイ」のAI音がE音に変化して「ベ」と、「ナヒ」のH音が脱落して「ナイ」となった)

  または「ヌイ・パエ・ナイ」、NUI-PAE-NAI(nui=large,great,many,abundant;pae=horizen,region,perch(paenga=place where anything is laid on one side or accross,margin);nai=nei,neinei=stretched forward,reaching out,wagging)、「だだっ広い・土地が・ずっと延びているだけのような(何の面白味もない)(にべない)」(「ヌイ」のUI音がI音に変化して「ニ」と、「パエ」のAE音がE音に変化して「ベ」となった)

の転訛と解します。

2056にやける(若気る)

 男が女の様に色っぽい様子や姿をする。転じて、浮ついている。

 この「にやける」は、

  「ニアニア・ケイ・ル」、NIANIA-KEI-RU(niania=slip(mania=slippery,soft or smooth of hair,feeling a jarring sensation);kei=at,on,with,in possession of,in the act of,like;ru=shake,agitate,scatter)、「奮つて・(他人に)不快な感じを与える・行為をする(にやける)」(「ニアニア」の反覆語尾が脱落して「ニヤ」と、「ケイ」が「ケ」となった)

の転訛と解します。

2057にょうご(女御)

 天皇の寝所に侍する女性の地位の一つ。皇后・中宮の下で更衣の上。おおむね内親王・女王・および親王・摂関・大臣の子女で、平安中期以後は、次いで皇后にたてられるものも出た。上皇、あるいは皇太子の妃の称。

 この「にょうご」は、

  「ニアオ・(ン)ガウ」、NIAO-NGAU(niao=gunwale of a canoe,rim of any open vessel,edge of a tool;ngau=wander,go about,raise a cry,make a disturbance)、「絶壁の縁の上を・歩いているような(不安定な身分の女性)(女御)」(「ニアオ」のAO音がOU音に変化して「ニョウ」と、「(ン)ガウ」のNG音がG音に、AU音がO音に変化して「ゴ」となった)

の転訛と解します。

2058にょうぼう(女房)

 女官の部屋。女官の曹司。また、朝廷に仕える女官で、一人住みの房を与えられている者をいう。中世から近世、一般に婦人、または愛情の対象としての女性をいう。中世以後、妻をいう。宮廷または摂関家の歌合わせなどで天皇や上皇、摂政関白などが身分を隠すために歌に作者名として記す語。

 この「にょうぼう」は、

  「ニアオ・ポウ」、NIAO-POU(niao=gunwale of a canoe,rim of any open vessel,edge of a tool;pou=pole,support,teacher,expert,fasten to a stake etc.)、「絶壁の縁の上(にいるような人を)・補佐し教育する専門家(女房)」(「ニアオ」のAO音がOU音に変化して「ニョウ」と、「ポウ」が「ボウ」となった)

の転訛と解します。

2059にわ(庭)

 何かを行うための場所。何かの行事の行われるその場所。水面。海面。家屋の周りの空き地。のち、草木を植え、築山、泉水をしつらえた所をさしていう。土間。家の入り口。台所、店先などの土間。

 この「にわ」は、

  「ニヒ・ワ」、NIHI-WA(nihi=move stealthly,come stealthly upon;wa=definite space,area,region)、「静かに歩き回る・場所(庭)」(「ニヒ」ののH音が脱落して「ニ」となった)

の転訛と解します。

2060にわたずみ(潦)

 雨が降ったりして地上に溜まった水。または、溢れ流れる水。この「にわたずみ(潦)」については、古典篇(その十六)の250B勅旨(ちょくし)宮の項の「西(にし)」を参照してください。

 この「にわたずみ」は、

  「ニハ・タツ・ミ」、NIHA-TATU-MI((Hawaii)niha=cross,uncivil;tatu=reach the bottom,be content,strike one foot against the other,stumble;mi=urine,stream,river)、「(降雨の後にできる)重なり合って・次から次にできる・水(溜まり。潦)」(「ニハ」が「ニワ」と、「タツ」が「タズ」となった)

の転訛と解します。

「ヌ」

2061ぬう(縫う)

 針に通した糸などを布や皮革などの裏と表から交互に刺し貫く。また、そのようにして布や皮革などを綴じ合わせたり、ものをつくったりする。色糸を布に刺して模様を出す。縫い取りをする。刺繍する。刺し貫いてとめる。事物や人々の間を衝突を避けて左右に曲折しながら進む。この「ぬう(縫う)」については、国語篇(その九)の165 to sew ぬう(縫う)の項を参照してください。

 この「ぬう」は、

  「ヌイ・ウフ」、nui-uhu(nui=large,many;uhu=cramp,stiffness)、「何回も何回も・(布を糸で)堅く結合する(縫ふ。縫う)」(「ヌイ」の語尾のI音が脱落し、そのU音と「ウフ」の語頭のU音が連結して「ヌフ」となつた。後にH音が脱落して「ヌウ」となつた)

の転訛と解します。

2062ぬか(糠)

 玄米などの穀類を精白する際に果皮、種皮、外胚乳などが砕けて粉になったもの。籾殻をいう。糠味噌の略。糠を食べるような貧しい生活。細かいこと、また、はかないこと、たよりないこと、むなしいことを表す語。この「ぬか(糠)」については、雑楽篇(その二)の542いね(稲)の項の「ぬか(糠)」を参照してください。

 この「ぬか」は、

  「ヌク・ウカ」、NUKU-UKA(nuku=wide extent,move(nukunuku=remove);uka=hard,firm,be fixed)、「剥ぎ取った・硬い(玄米の表皮。糠)」(「ヌク」のK音が脱落し、その語尾のU音と「ウカ」の語頭のU音が連結して「ヌカ」となった)

の転訛と解します。

2063ぬかずく(額ずく)

 額を地につけて礼拝する。丁寧に礼をする。

 この「ぬかづく」は、

  「ヌク・アツア・クフ」、NUKU-ATUA-KUHU(nuku=wide extent,distance,the earth,move;atua=god,demon,supernatural being,strange;kuhu=insert,conceal,introduce noeself into,join a company)、「大地の・神に・(自分を紹介する)挨拶をする(額づく)」(「アツア」の語尾のA音が脱落し、「ヌク・アツ」が「ヌカズ」と、「クフ」のH音が脱落して「ク」となった)

の転訛と解します。

2064ぬかよろこび(糠喜び)

 あてが外れて、後でがっかりするような時の、一時的な喜び。こぬかいわい。

 この「ぬかよろこび」は、

  「ヌカ・イホ・ロコ・ピピ」、NUKA-IHO-ROKO-PIPI(nuka=deceive,dupe,device,stratagem;iho=heart,inside,kernel,object of reliance;roko=be overtaken or come upon,be reached,bw possible;pipi=half-grown,not matured,yielding,flabby)、「騙された・当てにならない言葉が・もたらした・(一時の)信頼(糠喜び)」(「イホ」のH音が脱落して「イオ」から「ヨ」と、「ピピ」の反覆語尾が脱落して「ビ」となった)

の転訛と解します。

2065ぬけがけ(抜け駆け)

 戦いで武功を立てようと陣営をこっそり抜け出して先駆けすること。他を出し抜いて敵中に攻め入ること。他を出し抜いて事を行うこと。

 この「ぬけがけ」は、

  「ヌケ・カケ」、NUKE-KAKE(nuke=crooked,humped;kake=ascend,climb upon or over,be superior to,overcome)、「不正な(方法で)・他に優越する(抜け駆け)」(「カケ」が「ガケ」となった)

の転訛と解します。

2066ぬさ(幣)

 神に祈る時に捧げる供え物。麻・木綿・紙などで作った。後には、織った布や帛も用いた。旅に出る時は、種々の絹布、麻、あるいは紙を四角に細かく切って袋にいれて持参し、道祖神の前に撒き散らした。後世、紙を切ってボウにつけたものを用いるようになる。みてぐら。にきて。旅ダチの時の贈り物。餞別。はなむけ。この「ぬさ(幣)」については、雑楽篇(その一)の122御幣(ごへい)の項の「おんぬさ」および雑楽篇(その二)の538こうぞ(楮)の項の「ぬさ(幣)」を参照してください。

 この「ぬさ」は、

  「ヌイ・タ」、NUI-TA(nui=large,many;ta=dash,beat,lay)、「たくさんの(紙片を)・束ねたもの(幣)」(「ヌイ」のUI音がU音に変化して「ヌ」と、「タ」が「サ」となった)

の転訛と解します。

2067ぬし(主)

 国や家など、ある社会、地域、集団などを治める首長。また、一般にある事柄を中心になつて司る人。君主。主人。また、「県主(あがたぬし)」「宮主(みやぬし)」「神主(かんぬし)」などと複合して用いる。主従関係における主人。主君。あるじ。男女関係における夫や情夫。また、女から自分の男を尊び親しんでいう。所有者。持ち主。「家主」「地主」などと複合して用いる。動作、または動作の結果生じた物事の主体。事の本人。山川池沼、家屋などに住み着き、劫を経た、なみはずれて大きい動物。転じて、々ところに長年居住、勤務、または出入りしている人を例えていう。この「ぬし(主)」については、古典篇(その四)の07爾支(にし。ぬし)の項を参照してください。

 この「ぬし」は、

  「ヌイ・チヒ」、NUI-TIHI(nui=large,great,many,superior,important;tihi=top,summit,lie in a heap)、「偉大な・最高の地位に立つ者(主)」(「ヌイ」の語尾のI音が脱落して「ヌ」と、「チヒ」のH音が脱落して「チ」から「シ」となった)

の転訛と解します。

2068ぬし(塗師)

 (「ぬりし」の変化した「ぬっし」からとする説がある)漆塗りの細工、漆器の製造に従事する職人。漆工。塗師屋。

 この「ぬし」は、

  「ヌイ・チ」、NUI-TI(nui=large,great,many,superior,greatness,abundance;ti=throw,cast,overcome)、「大きな(範囲に)・(漆を)塗る人(塗師)」(「ヌイ」の語尾のI音が脱落して「ヌ」と、「チ」が「シ」となった)

  または「ヌク・チ」、NUKU-TI(nuku=wide extent,distance,the earth,move,extend(nukunuku=remove,put on one side);ti=throw,cast,overcome)、「(一面に)広く・(漆を)塗る者(塗師)」(「ヌク」のK音が脱落して「ヌウ」から「ヌ」と、「チ」が「シ」となった)

の転訛と解します。

2069ぬすびと(盗人)

 他人の物を盗み取る者。物取り。盗賊。どろぼう。ぬすっと。人を罵っていう語。

 この「ぬすびと」は、

  「(ン)グツ(ン)グツ・ピト」、NGUTUNGUTU-PITO(ngutungutu=flame,taste,angry dispute;pito=end,extremity,navel)、「(激高して獲得する)物を取り上げる・(最後の)究極の人(盗人)」(「(ン)グツ(ン)グツ」のNG音がN音に変化し、反覆語尾が脱落して「ヌツ」から「ヌス」と、「ピト」が「ビト」となった)

の転訛と解します。

2070ぬの(布)

 麻・苧(からむし)・葛などの繊維で織った織物。絹に対していう。後世は木綿をも加え、絹および毛織以外の一切の織り物をいう。これらの織物と絹の総称。

 この「ぬの」は、

  「(ン)グヌ・(ン)ガウ」、NGUNU-NGAU(ngunu=bend,croach,worn;ngau=bite,hurt,act upon,attack)、「(人が)身に付けるもの(衣類を)・(懸命に作業して)織り上げたもの(布)」(「(ン)グヌ」のNG音がN音に変化した「ヌヌ」の反覆語尾が脱落して「ヌ」と、「(ン)ガウ」のNG音がN音に、AU音がO音に変化して「ノ」となった)

の転訛と解します。

2071ぬれぎぬ(濡れ衣)

 濡れた衣服。ぬれごろも。転じて、無実の浮き名。根も葉もない噂。ぬれごろも。無実の罪。ぬれごろも。

 この「ぬれぎぬ」は、

  「ヌイ・レイ・キ・(ン)グヌ」、NUI-REI-KI-NGUNU(nui=large,great,many,superior,greatness,abundance;rei=wet,sodden,swampy ground;ki=full,very;ngunu=bend,croach,hump-backed,worn)、「すっかり・濡れてしまった・一揃いの・衣服(濡れ衣)」(「ヌイ」が「ヌ」と、「レイ」が「レ」と、「キ」が「ギ」と、「(ン)グヌ」のNG音がN音に変化した「ヌヌ」の反覆語尾が脱落して「ヌ」となった)

の転訛と解します。

2072ぬれてであわ(濡れ手で粟)

 (濡れた手で粟をつかめば、粟粒がそのままついてくるところから)骨を折らないで利益を得ること。労少なくて得るところが多いこと。

 この「ぬれてであわ」は、

  「ヌイ・レイ・テテ・アハ」、NUI-REI-TETE-AHA(nui=large,great,many,superior,greatness,abundance;rei=wet,sodden,swampy ground;tete=exert oneself,gnash the teeth(whakatete=a frequentative form applied to the process of milking);aha=what?,of what sort?,do what do?)、「すっかり・濡れた(手で)・何という(たくさんのものが)・得られることか(濡れ手で粟)」(「ヌイ」が「ヌ」と、「レイ」が「レ」と、「テテ」が「テデ」と、「アハ」が「アワ」となった)

の転訛と解します。

「ネ」

2073ね(根)

 高等植物の基本的な器官の一つ。普通は地中にあって、植物体の支持および水と栄養分の吸収を主な機能とする。生えているものの下部。毛、歯などの生えているもとの部分。立っているものが地に接する部分。髪を束ねて結ぶところ。まとどり。やじり、できもの、はれものなどの内部の固い部分。釣りや漁業で、水底にある岩礁などの障害物。地下。根国。ことの怒り。起源。根本。原因。本性。生まれつき。性根。心中にわだかまってあとまで残るもの。未練。遺恨。この「ね(根)」については、国語篇(その九)の067 root ね(根)の項を参照してください。

 この「ね」は、

  「ネイ」、nei(=neinei=stretch foreward)、「(下へ)伸びてゆくもの(根)」(語尾のI音が脱落して「ネ」となつた)

の転訛と解します。

2074ねがう(願う)

 神仏に望むところを請い求める。祈願する。特に、極楽往生を求めて信心する。心の中で望ましい物事の実現や獲得を請い求める。望む。上位の者や役所などに処置をしてくれるよう希望を申し立てる。請願する。願い出る。他の人に助力や配慮などを求める。商店で品物を客に買ってもらう。

 この「ねがう」は、

  「ネイ・(ン)ガフ」、NEI-NGAHU(nei=to denote proximity to or connection with the speaker,to indicate continuance of action;ngahu,whakangangahu=hunt with dogs)、「()()」(「ネイ」が「ネ」と、「(ン)ガフ」のNG音がG音に変化し、H音が脱落して「ガウ」となった)

の転訛と解します。

2075ねぎ(禰宜)

 昔、神社に奉仕した神職で、神主の下、祝(はふり)の上に位した。また、一般に神職の総称としても用いる。この「ねぎ(禰宜)」については、雑楽篇(その一)の316ねぎ(禰宜)の項を参照してください。

 この「ねぎ」は、

  「ネイ・(ン)ギア」、NEI-NGIA(nei=to denote proximity to or connection with the speaker,to indicate continuance of action;ngia=seem,appear to be)、「あたかも神主であるか・のように見える(神職)」(「ネイ」の語尾のI音が脱落して「ネ」と、「(ン)ギア)」のNG音がG音に変化し、語尾のA音が脱落して「ギ」となつた)

の転訛と解します。

2076ねぎらう(労う)

 骨折りを慰める。苦労したことに対して感謝する。いたわる。

 この「ねぎらう」は、

  「ネキ・ラフラフ」、NEKI-RAHURAHU(neki=nei=to denote proximity to or connection with the speaker,to indicate continuance of action;rahurahu=handle,pull about,meddle with)、「親身になって・(苦労を)いたわる(労う)」(「ネキ」が「ネギ」と、「ラフラフ」のH音および反覆語尾が脱落して「ラウ」となった)

の転訛と解します。

2077ねぐら(塒)

 鳥の寝る場所。巣。とや。俗に、人の寝る所。また、自分の家をいう。

 この「ねぐら」は、

  「ネイ・(ン)グ・ウラ(ン)ガ」、NEI-NGU-URANGA(nei=to denote proximity to or connection with the speaker,to indicate continuance of action;ngu=silent,dumb,speechless,greedy;uranga=act or circumstance etc. of becoming firm,place etc. of arrival)、「安心して・静かに眠る・休息の場所(塒)」(「ネイ」の語尾のI音が脱落して「ネ」と、「(ン)グ」のNG音がG音に変化して「グ」となり、その語尾のU音と「ウラ(ン)ガ」の語頭のU音が連結し、名詞形語尾のNGA音が脱落して「グラ」となった)

の転訛と解します。

2078ねこそぎ(根刮ぎ)

 根まですっかり抜き取ること。転じて、残すところなくねすべてすること。余すところなく。ことごとく。ねこそげ。

 この「ねこそぎ」は、

  「ネイ・コトコト・(ン)ギア」、NEI-KOTOKOTO-NGIA(nei,neinei=stretch foreward,reaching out;kotokoto=trikle,small of no account,pull up;ngia=seem,appear to be)、「(地下に延びた)根の先端まで・(引き上げる)抜き去る・かのようにする(根刮ぎ)」(「ネイ」が「ネ」と、「コトコト」の反覆語尾が脱落して「コト」から「コソ」と、「(ン)ギア」のNG音がG音に変化し、語尾のA音が脱落して「ギ」となった)

の転訛と解します。

2079ねこばば(猫糞)

 悪事を隠して素知らぬ顔をすること。広い物などをして、それを届けたり返したりしないで、自分のものとして素知らぬ顔をすること。

 この「ねこばば」は、

  「ネイ・コパ・アパ」、NEI-KOPA-APA(nei,neinei=stretch foreward,reaching out;kopa=pass by,disappear,fly away;apa=not as if)、「(そこで)何も無かったかのように・遠くへ・立ち去ってしまう(猫糞)」(「ネイ」が「ネ」と、「コパ」の語尾のA音と「アパ」の語頭のA音が連結して「コパパ」から「コババ」となった)

の転訛と解します。

2080ねこもしゃくしも(猫も杓子も)

 なにもかも。だれもかれも。この「ねこ(猫)」については、雑楽篇(その二)の629ねこ(猫)の項を、「しゃくし(杓子)」については、雑楽篇(その二)の1042漏斗(じょうご)の項の「杓子(しゃくし。しゃもじ)」を参照してください。

 この句には、(a)「禰子(ねこ)も釈氏(しゃくし)も」(神主も僧侶も)とする説、(b)「女子(めこ)も弱子(じゃくし)も」(女も子供も)とする説、(c)「杓子」は主婦を指し、一家総出の意とする説がありますが、私は下記のまたは書きの(d)「外を出歩く人も家に籠もっている人も」(一家、地域をあげて参加の意)とする説をとりたいと思います。

 この「ねこもしゃくしも」は、

   「ネイ・カウ・モウ・チ・アク・ウチ・モウ」、NEI-KAU-MOU-TI-AKU-UTI-MOU(nei=to denote proximity,to indicate continuancr of action;kau=alone,swim,wade;mou=fixed(momou=struggle,wrestle);ti=stick,rod;aku=scrape out,cleanse;uti=bite)、「いつもふらふらと・出歩いている(動物。猫)・も・突き立て(食い込ませて)・掻き取る・棒(杓子)・も(こぞつて全員で行事または行動に参加する)(猫も杓子も)」(「ネイ」の語尾のI音が脱落して「ネ」と、「カウ」のAU音がO音に変化して「コ」と、「チ」と「アク」が連結して「チャク」となり、その語尾のU音と「ウチ」の語頭のU音が連結して「チャクチ」から「シャクシ」となった)

  または「ネイ・カウ・モウ・チア・クチ・モウ」、NEI-KAU-MOU-TIA-KUTI-MOU(nei=to denote proximity,to indicate continuancr of action;kau=alone,swim,wade;mou=fixed(momou=struggle,wrestle);tia=slave,servant;kuti=draw tightly together,contract,pinch)、「いつも外を・出歩いている人・も・いつも家の中に(縛られて)いる・(奴隷や)使用人・も(こぞつて全員で行事または行動に参加する)(猫も杓子も)」(「ネイ」の語尾のI音が脱落して「ネ」と、「カウ」のAU音がO音に変化して「コ」と、「チア」が「チャ」から「シャ」と、「クチ」が「クシ」となった)

の転訛と解します。

2081ねじ(螺子)

 物を締め付けるのに用いる、螺旋の溝のあるもの。また、その溝。螺旋状またはねじるような仕組みになっている場所。また、その仕組み。

 この「ねじ」は、

  「ナ・エチ」、NA-ETI(na=by,made by,belonging to,by way of;eti=shrink,recoil)、「回転しながら後退する・部類のもの(螺子)」(「ナ」のA音と「エチ」の語頭のE音が連結してE音に変化して「ネチ」から「ネジ」となった)

の転訛と解します。

2082ねたむ(妬む)

 うらやましく憎らしいと思う。そねむ。男女間のことで嫉妬する。やきもちを焼く。憎む。腹を立てる。憤り恨む。

 この「ねたむ」は、

  「ネイ・タ・アム」、NEI-TA-AMU(nei=to denote proximity to or connection with the speaker,to indicate continuance of action;ta=dash,beat,lay;amu=grumble,begrudge,complain)、「(人との)関係に・打撃を当てて・ねたむ(妬む)」(「ネイ」が「ネ」と、「タ」のA音と「アム」の語頭のA音が連結して「タム」となった)

の転訛と解します。

2083ねっから(根っから)

 「ね(根)から」を強めた言い方。その根本からそういう状態であったことを表す。もとから。初めから。(否定表現と呼応して)ほとんど問題にもしないで否定する気持ちを表す。まったく。さらさら。

 この「ねっから」は、

  「ネイ・ツカハ・アラ」、NEI-TUKAHA-ARA(nei,neinei=stretch foreward,reaching out;tukaha=strenuous,vigorous,headstrong,passionate;ara=way,path,means of conveyance)、「(ある状態が)ずっと引き続いて・強い力で・維持されている(根っから)」(「ネイ」が「ネ」と、「ツカハ」のH音が脱落した語尾のA音と「アラ」の語頭のA音が連結して「ツカラ」から「ッカラ」となった)

の転訛と解します。

2084ねぶた

 東北地方で行われる旧暦七月七日の行事の一つ。竹や針金でつくった枠に紙を貼り、さまざまな人物や歌舞伎狂言の場を極彩色で描いて、中に火を点じ、屋台や車に乗せて引き回すもの。この「ねぶた(ねぷた)」については、雑楽篇(その一)の101ねぶた(ねぷた)の項を参照してください。

 この「ねぶた」は、

  「ネイ・プタ」、NEI-PUTA(nei=to indicate continuance of action or sometimes merely sequence of events;nei,neinei=stretch forward,wagging,vacillating,bobbing up and down;puta=move from one place to another,pass through in or out)、「(飾り灯篭が)巡行する(祭り)」または「(跳子(はねこ)が飾り灯篭の周りで)飛び跳ねながら巡行する(祭り)」 (「ネイ」が「ネ」と、「プタ」が「ブタ」となつた)

の転訛と解します。

2085ねほりはほり(根掘り葉掘り)

 根本から枝葉にまでわたって。何から何まで全部。残らず。すっかり。しつこくこまごまと。すみからすみまで。徹底的に。しつこく尋ねるさま。煩く詮索するさま。

 この「ねほりはほり」は、

  「ネイ・ホリ・ワ・ホリ」、NEI-HORI-WHA-HORI(nei,neinei=stretch foreward,reaching out;hori=cut,slit,be gone by,ki hori!=stand aside!;wha=leaf,flake,feather)、「根の先まで・掘ったり・葉を・(一枚一枚)かきわけ(て調べ)たり(根堀り葉掘り)」(「ネイ」が「ネ」と、「ワ」のWH音がH音に変化して「ハ」となった)

の転訛と解します。

2086ねま(寝間)

 寝る場所。寝室。寝床。

 この「ねま」は、

  「ネイ・マハ」、NEI-MAHA(nei,neinei=stretch foreward,reaching out;maha=gratified,satisfied,contented by the attainment of a desired object)、「安心して・(手足を)伸ばして横臥する場所(寝間)」(「ネイ」が「ネ」と、「マハ」のH音が脱落して「マ」となった)

の転訛と解します。

2087ねまる(座る)

 閉じこもる。蟄居する。黙座する。座る。しゃがむ。くつろいで休む。そこに止まる。逗留する。ある地位に居座る。寝る。この「ねまる(座る)」については、国語篇(その十五)の114すわる(座る)の項を参照してください。

 この「ねまる」は、

  「ネイ・マル」、NEI-MARU(nei=to indicate continuance of action;maru=gentle,easy,calm,shaded,sheltered)、「楽な姿勢を・続けている(座る)」(「ネイ」が「ネ」となつた)

の転訛と解します。

2088ねまわし(根回し)

 樹木の移植に先立ち、根元の主な根以外の根を切断し、細根の発生を促す処置。交渉、会議などをうまく運ぶために、前もって手を打っておくこと。下工作。

 この「ねまわし」は、

  「ネイ・マワ・チ」、NEI-MAWA-TI(nei,neinei=stretch foreward,reaching out;mawa.mawawa=cracked,split,slack;ti=throw,cast,overcome)、「先へ伸びた(細根を)・(分離する)切断する・(処置を)行っておくこと(根回し)」(「ネイ」が「ネ」と、「チ」が「シ」となった)

の転訛と解します。

2089ねや(閨)

 夜寝るために設けられた部屋。寝室。寝間。寝所。奥深い所にある部屋。深窓。婦人の部屋。

 この「ねや」は、

  「ネイ・イア」、NEI-IA(nei,neinei=stretch foreward,reaching out;ia=indeed,that,the said)、「所謂・(手足を)伸ばして横臥する場所(閨)」(「ネイ」のI音と「イア」の語頭のI音が連結して「ネイア」から「ネヤ」となった)

の転訛と解します。

2090ねる(寝る)

 身体を横たえるるまた、宿泊する。眠る。物が倒れる。返さないでいる。十分活用されない状態になる。みそ、醤油、酒などが仕込まれた状態である。この「ねる(寝る)」については、国語篇(その九)の076 to sleep (3)ねる(寝る)の項を参照してください。

 この「ねる」は、

  「ネイ・ヘル」、NEI-HERU(nei,neinei=stretch foreward;heru=begin to flow,glide as anything floating in the water)、「(手足を)伸ばして・水に浮いたようになっている(寝る)」(「ネイ」の語尾のI音が脱落した「ネ」のE音と、「ヘル」のH音が脱落した「エル」の語頭のE音が連結して「ネル」となつた)

の転訛と解します。

2091ねる(練る)

 @静かに歩く。おもむろに歩く。行列を整えてゆっくり進む。

 A固いものや粗いものなどを、伸ばしたり固めたり煮たりして、やわらかなもの、使えるもの、質の良いものなどにする。

 B詩文などの字句を推敲する。学問・技芸などを錬磨する。

 この「ねる」は、

  @「ネイ・ルル」、NEI-RURU(nei,neinei=stretch foreward;ruru=brandish,wave about)、「(自らの集団を)誇示するように・歩みを進める(練る)」(「ネイ」が「ネ」と、「ルル」の反覆語尾が脱落して「ル」となった)

  A「ネイ・ヱル」、NEI-WHERU(nei,neinei=stretch foreward;wheru=inactive,slow,weary,oppressed)、「(柔らかくなるように)打撃を加え・続ける(練る)」(「ネイ」が「ネ」となったその語尾のE音と、「ヱル」のWH音が脱落した語頭のE音が連結して「ネル」となった)

  B「ネイ・ル(ン)ガ」、NEI-RUNGA(nei,neinei=stretch foreward;runga=the top,the upper part,up,upwards,up above)、「(学問・技芸の水準が)より高いものへ・引き上げる(練る)」(「ネイ」が「ネ」と、「ル(ン)ガ」の名詞形語尾のNGA音が脱落して「ル」となった)

の転訛と解します。

2092ねんぐ(年貢)

 田畑の耕作者がその領主に対して生産物の一部を貢納すること。また、その物。正税であり、雑税である公事とは区別される。小作料。

 この「ねんぐ」は、

  「ネネ・(ン)グ」、NENE-NGU(nene=fat,jest,be saucy(whakanene=cause a pleasant sensation,soothe,quarrel);ngu=silent,greedy(ngungu=eat greedily,gnaw))、「(いつも)口論を引き起こす(が、時として人々を宥めることもある)・(百姓を搾取する)貪欲なもの(年貢)」(「ネネ」が「ネン」と、「(ン)グ」のNG音がG音に変化して「グ」となった)

の転訛と解します。

2093ねんごろ(懇ろ)

 (「ねもころ」から「ねむころ」、「ねんごろ」と変化した語とする説がある)心を込めて、あるいは心底からするさま。熱心であるさま。親身であるさま。また、手厚いさま。心が通じ合って、間柄が親密なさま。交情の睦まじいさま。明らかなさま。本当。程度の甚だしいさま。思いをかけること。厚情。親切。親密になること。

 この「ねんごろ」は、

  「ネネ・コロ」、NENE-KORO(nene=fat,jest,be saucy(whakanene=cause a pleasant sensation,soothe,quarrel);koro=desire,intend,you two)、「(二人の)感情が・喜ばしく高まっていること(懇ろ)」(「ネネ」が「ネン」と、「コロ」が「ゴロ」となった)

の転訛と解します。

2094ねんねこ

 ねんねこ半纏をいう。この「ねんねこ」については、国語篇(その十六)の161ねんねこの項を参照してください。

 この「ねんねこ」は、

  「(ン)ゲヘ・ネネ・コ」、NGEHE-NENE-KO(ngehe=soft,lazy,peaceful,calm;nene=fat;ko=addressing to goirls and males)、「子供を・優しく(覆ってあやす)・(外観が太って)大きく見せるもの(ねんねこ)」(「(ン)ゲヘ」のNG音がN音に変化し、H音が脱落して「ネ」と、「ネネ」が「ンネ」となった)

の転訛と解します。

「ノ」

2095の(野)

 平らな地。山に対するもの。荒野。里に対するもの。放置されて草や低木などの茂ったままになっている地。墓場。野辺。野良。田畑をさしていう。この「の(野)」については、国語篇(その三)の(11)法則その十一(n音とm音は変音しない)の項を参照してください。

 この「の」は、

  「ノア」、NOA(free from tapu or any other restriction.ordinary,indifinite)、「(墓場のような禁忌がない)野(原)」または「なにも束縛がない(野人など)」(語尾のA音が脱落して「ノ」となった)

の転訛と解します。

2096のき(軒)

 屋根の葺き下ろしの端で、壁や柱から外へ張り出した部分。ひさし。

 この「のき」は、

  「ノキ」、NOKI((Hawaii)noki=deep)、「(屋根の)先から(壁まで深く)大きく張り出した部分(軒)」

の転訛と解します。

2097のく(退く)

 その位置、立場から離れ去る。また、位置を隔てる。今までいた場所から離れ去る。どく。たちのく。距離を置く。場所が離れる。逃げる。地位を離れる。関係がなくなる。縁が切れる。

 この「のく」は、

  「ナウ・ウク」、NAU-UKU(nau=come,go;uku=white clay,wash(ukuuku=sweep away,destroyed))、「(拭うように)きれいに・離れ去る(退く)」(「ナウ」の語尾のU音と「ウク」の語頭のU音が連結して「ナウク」となり、AU音がO音に変化して「ノク」となった)

の転訛と解します。

2098のこぎり(鋸)

 木材・金属材・プラスチック材・竹材などをひき切るのに用いる工具。この「のこぎり(鋸)」については、雑楽篇(その二)の1047鋸(のこぎの項を参照してください。

 この「のこぎり」は、

  「(ン)ガウ・コキリ」、NGAU-KOKIRI(ngau=bite,hurt,attack;kokiri=dart,throw,thrust,rush forward)、「真っ直ぐ前に向かって・切り進むもの(道具。鋸)」(「(ン)ガウ」のNG音がN音に、AU音がO音に変化して「ノ」となった)

の転訛と解します。

2099のこる(残る)

 全体のうちの一部がなくならずに後にとどまる。死んだ後もなくならずにある。後世に伝わる。周囲の人が死んだあと、まだ死なずにいる。漏れ落ちる。ある範囲や期限までになお余地や余裕がある。

 この「のこる」は、

  「ノホ・コル」、NOHO-KORU(noho=sit,stay,settle,lie;koru=shake,folded,looped)、「奮って・(そこに)止まったままでいる(残る)」(「ノホ」のH音が脱落して「ノ」となった)

の転訛と解します。

2100のさばる

 勝手に場所を占める。ほしいままに伸び広がる。横柄な態度をする。欲しいままに振る舞う。また、勢力を振るう。

 この「のさばる」は、

  「ノホ・タパル」、NOHO-TAPARU(noho=sit,stay,settle,lie;taparu=join,add,eat voraciously)、「(そこに)居座つて・(がつがつ食べる)ほしいままに振る舞う(のさばる)」(「ノホ」のH音が脱落して「ノ」と、「タパル」が「サバル」となった)

の転訛と解します。

2101のし(熨斗)

 火熨斗(ひのし)の略。熨斗鮑(のしあわび)の略。鮑の肉を薄く剥ぎ、引き延ばして乾燥したもの。古くは食料に用い、後には儀式の肴とし、また、進物などに添えて贈ったもの。この「のし(熨斗)」については、国語篇(その十六)の210ゆいのう(結納)の項の「のしいれ(熨斗入れ)」を参照してください。

 この「のし」は、

  「ノチ」、NOTI(pinch or contract as with a band or ligature)、「(鰒を紐状に圧縮したもの)熨斗」(「ノチ」が「ノシ」となった)

の転訛と解します。

2102のずち(野槌)

 (「野つ霊(ち)」の意で野の神とする説がある)野の神。さそりまたはまむしの類。ツチノコ。一種の妖怪。

 この「のずち」は、

  「ノア・ツ(ン)ガ・チ」、NOA-TUNGA-TI(noa=free from tapu or any other restriction.ordinary,indifinite;tunga=ciecumstance or time etc. of standing,foundation;ti=throw,cast,overcome)、「(禁忌がない一般の)野に・住み・(人を)圧倒する力を持つもの(野槌)」(「ノア」のA音が脱落して「ノ」と、「ツ(ン)ガ」の名詞形語尾のNGA音が脱落して「ツ」から「ズ」となった)

の転訛と解します。

2103のぞく(覗く)

 それに向かって見えやすい位置を占める。間近にさしかかる。臨む。一部分が現れ出る。すきまや穴を通して向こうを見る。ひそかに様子を見る。うかがい見る。他人のかくしごとや秘密などをそっと見る。ちょっと見る。身を乗り出して低い所を見る。見下ろす。

 この「のぞく」は、

  「(ン)ゴト・オク」、NGOTO-OKU(ngoto=be deep,be intense,penetrate,firmly;(Hawaii)oku=to stand errect,protrude,emerge,hold upright)、「(物、谷など)奥の深いところを・(見えやすいように)立ち上がる(覗く)」(「(ン)ゴト」のNG音がN音に変化して「ノト」から「ノゾ」となり、その語尾のO音と「オク」の語頭のO音が連結して「ノゾク」となった)

の転訛と解します。

2104のぞく(除く)

 取って、そこから出す。取って捨てる。排除する.資格や官位などを取り上げる。取り消す。その中に加えないようにする。除外する。罪を犯したり謀反を起こしたりした者を殺す。誅す。

 この「のぞく」は、

  「(ン)ゴト・オク」、NGOTO-OKU(ngoto=be deep,be intense,penetrate,firmly;(Hawaii)oku=thunderstruck,taken aback,horrified,agitated)、「強烈な(打撃を加えて)・(物や人を)取って捨てる(除く)」(「(ン)ゴト」のNG音がN音に変化して「ノト」から「ノゾ」となり、その語尾のO音と「オク」の語頭のO音が連結して「ノゾク」となった)

の転訛と解します。

2105のぞむ(望む)

 遠くを見やる。眺める。そうありたいと願う。こうして欲しいと思う。こい願う。期待する。比較して見る。

 この「のぞむ」は、

  「(ン)ゴト・ム」、NGOTO-MU(ngoto=be deep,be intense,penetrate,firmly(whakangoto=impress,direct,desire desperately);mu=murmur at,shoe discontent with,silent,dumb)、「黙って・(熱烈に)希望する(望む)」(「(ン)ゴト」のNG音がN音に変化して「ノト」から「ノゾ」となった)

の転訛と解します。

2106のたまう(宣う)

 「言う」「告げる」の尊敬語で、その動作主を敬う。おっしゃる。また、お言いつけになる。上位者の言を仲介して他に言う。申し聞かせる。尊者に対するかしこまり改まった表現において、第三者に対し「申し聞かせます」の意を表す。

 この「のたまう」は、

  「(ン)ガウ・タマウ」、NGAU-TAMAU(ngau=raise a cry,make a disturbance,indistinct or inarticulate of speech;tamau=fasten,love ardently(whakatamau=hold fast))、「不明瞭な発音を・維持なさった(発言。宣う)」(「(ン)ガウ」のNG音がN音に、AU音がO音に変化して「ノ」となった)

の転訛と解します。

2107のっけ

 初め。最初。冒頭。(多く「のっけに」「のっけから」の形で用いられる。)

 この「のっけ」は、

  「ナウ・ホツ・ケ」、NAU-HOTU-KE(nau=come,go;hotu=sob,desire eagerly,chafe with animosity;ke=different,strange,extraordinary)、「変わったことに・(人のところに)やってきて・(すぐに)躍起になってねだる(のっけ)」(「ナウ」のAU音がO音に変化して「ノ」となったその語尾のO音と「ホツ」のH音が脱落して「オツ」となったその語頭のO音が連結して「ノツ」から「ノッ」となった)

の転訛と解します。

2108のっぴき(退引)

 (「のき(退き)ひき(引き)」の転とする説がある)避けて退くこと。まぬがれさけること。よけること。逃れること。

 この「のっぴき」は、

  「ナウ・ホツ・ピキ」、NAU-HOTU-PIKI(nau=come,go;hotu=sob,desire eagerly,chafe with animosity;piki=support,asistant)、「(人のところに)やってきて・(すぐに)手助けをしたいと・躍起になってねだる(のっぴき)」(「ナウ」のAU音がO音に変化して「ノ」となったその語尾のO音と「ホツ」のH音が脱落して「オツ」となったその語頭のO音が連結して「ノツ」から「ノッ」となった)

の転訛と解します。

2109のど(喉)

 (「飲(の)み門(と)」の意の「のんど」の変化した語とする説がある)一般に動物頸部の腹面にあり、消化管の口腔に続く部分。哺乳類では軟口蓋および舌根による狭い部分で、気管の外、発音器官にもなっている。歌う声。大事なところ。急所。

 この「のど」は、

  「(ン)ゴト」、NGOTO(be deep)、「口の奥深い場所(喉)」(「(ン)ゴト」のNG音がN音に変化して「ノト」から「ノド」となった)

の転訛と解します。

2110のどか(長閑)

 状態、雰囲気などが静かで穏やかなさま。天気が良く、静かで穏やかなさま。性質、態度、動作などがゆったり落ち着いていて、静かで穏やかなさま。のんびりとくつろいでいるさま。差し迫った幼児もなく、暇なさま。気にかけないさま。のんきなさま。

 この「のどか」は、

  「ノア・トカ」、NOA-TOKA(noa=free from tapu or any other restriction,ordinary,indefinite,denoting absence of limitations or condotions,to be translated to "without restraint","spontaneously","without consideration or argument",etc.;toka=stone,firm,satisfied,contented)、「何も屈託がなく・安心しきっていること(長閑)」(「ノア」の語尾のA音が脱落して「ノ」と、「トカ」が「ドカ」となった)

の転訛と解します。

2111ののさま(神仏)

 (幼児語)神仏、日、月など、すべて尊ぶべきものをいう語。のんのん。痴愚で子供のような人を嘲って言う語。この「ののさま(神仏)」については、国語篇(その十五)の119そうりょ(僧侶)の項の「ののさま」を参照してください。

 この「ののさま」は、

  「ノノ・タ・マ」、NONO-TA-MA((Hawaii)nono=red,redness,red-faced,sunburned;ta=dash,beat,lay;ma=white,clean)、「(日、月のように)光り輝くもの・清らかで・あるもの(日、月、神仏など)」(「タ」が「サ」となった)

の転訛と解します。

2112ののしる(罵る)

 人が声高に物を言う。大勢が声高に言い騒ぐ。声やかましく騒ぎ立てる。大きな物音がする。人間以外のものが騒がしい物音を立てる。世間の評判になる。また、善悪ともにやかましく噂する。権勢が盛んである。大きな声で非難する。

 この「ののしる」は、

  「(ン)ガウ・(ン)ガウ・チヒ・ル」、NGAU-NGAU-TIHI-RU(ngau=raise a cry,make a disturbance,indistinct or inarticulate of speech;tihi=summit,top,lie in a heap;ru=shake,agitate,scatter)、「騒ぎに・騒ぐことが・最高に・やかましい(罵る)」(「(ン)ガウ」のNG音がN音に、AU音がO音に変化して「ノ」と、「チヒ」のH音が脱落して「チ」から「シ」となった)

の転訛と解します。

2113のぶとい(野太い)

 非常に横着である。失礼千万である。ずうずうしい。また、大胆不敵である。声が太い。この「のぶとい(ぞんざい)」については、国語篇(その十五)の121ぞんざいの項の「のぶとい」を参照してください。

 この「のぶとい」は、

   「ナウ・プトイ」、NAU-PUTOI(nau,naunau=refuse,angry,take up;putoi=tie in a bunch,adorn with a bunch of anything)、「嫌々・飾りものを作るような(野太い)」(「ナウ」のAU音がO音に変化して「ノ」と、「プトイ」が「ブトイ」となった)

の転訛と解します。

2114のべつまくなし(延べつ幕なし)

 芝居で、幕を引くことなしに場面を進行させること。絶え間なく続くこと。また、そのさま。ひっきりなし。ぶっつづけ。

 この「のべつまくなし」は、

  「ノペ・ツ・マ・アク・ナチ」、NOPE-TU-MA-AKU-NATI(nope=constricted;tu=stand,settle,fight with,energetic;ma=for,by means of,in consequence of,by way of;aku=delay,take time over anything;nati=pinch or contract as by means of a ligature etc.,restrain)、「懸命に・(場面と場面の間が)圧縮されて・(次の場面が始まるのを)遅らせる・ための幕(の時間)を・(圧縮して)無いものとする(のべつ幕なし)」(「ノペ」が「ノベ」と、「マ」のA音と「アク」の語頭のA音が連結して「マク」と、「ナチ」が「ナシ」となった)

の転訛と解します。

2115のべる(述べる)

 順を追って説く。説き明かす。説明する。陳述する。また、口に出していう。言い訳をする。文章にして時節を言う。記述する。

 この「のべる」は、

  「ノペノペ・ヘル」、NOPENOPE-HERU(nopenope=appropriate selfishly for oneself;heru=begin to flow,glide)、「適切に・順を追って言う(述べる)」(「ノペノペ」の反覆語尾が脱落して「ノベ」となり、その語尾のE音と、「ヘル」のH音が脱落して「エル」となったその語頭のE音が連結して「ノベル」となった)

の転訛と解します。

2116のほほん

 これといったこともなく、のんびりとしているさま。また、とくべつの動きもなく、そのままの状態でいるさま。物事に頓着しないで、気ままにのんびりとしているさま。また、その性格の人。

 この「のほほん」は、

  「ノホ・ホネア」、NOHO-HONEA(noho=sit,stay,settle,lie;honea=be absent,escape)、「(ただ)ぼんやりと・している(のほほん)」(「ホネア」の語尾のA音が脱落して「ホネ」から「ホン」となった)

の転訛と解します。

2117のぼり(幟)

 旗の一種。細長い布帛の上部と横の一方に乳(ち)を付け、それに横上の棒と竿を通し、軍陣や寺社、また船首などに標識として用いるもの。端午の節供にたてる五月幟。こいのぼり。転じて、男の子。

 この「のぼり」は、

  「ノイ・ポポ・オリ」、NOI-POPO-ORI(noi=elevated,on high,errected;popo=crowd round,throng;ori=cause to wave to and fro,sway,move about)、「高く(据えられた)・(ある場所を)取り囲むようにして・(風に)はためくもの(幟)」(「ノイ」の語尾のI音が脱落して「ノ」と、「ポポ」の反覆語尾が脱落して「ボ」となり、その語尾のO音と「オリ」の語頭のO音が連結して「ボリ」となった)

の転訛と解します。

2118のみ(〜のみ)

 ある事物を取り立てて限定する。〜だけ。〜ばかり。ある事物や修飾語の意味を強調する。

 この「のみ」は、

  「ナウ・アウミヒ」、NAU-AUMIHI(nau=come,go;aumihi=sigh for,greet,applied to first two wives in a polygamous marriage)、「(二人の妻があっても最初の妻)だけを(正妻として)・取り扱うように(〜のみ)」(「ナウ」のAU音と「アウミヒ」の語頭のAU音が連結して「ナウミヒ」となり、そのAU音がO音に変化し、H音が脱落して「ノミ」となった)

の転訛と解します。

2119のみ(蚤)・のみ(呑)・のみ(鑿)

 @ノミ(隠翅)目に属する昆虫の総称。体長1〜3ミリメートル。跳躍に適した三対の歩脚を持つ。哺乳類や鳥類の体表に規制して吸血する。

 A呑(のみ)または呑口(のみくち)と呼ばれる船底のあか水を抜くための栓や酒樽など液体の容器に付けた栓。

 B木工・石工の道具で、穴をあけたり、溝を刻んだりする鉄製の工具。この「のこぎり(鋸)」については、雑楽篇(その二)の1047鋸(のこぎり)の項の「鑿(のみ)」を参照してください。

 この「のみ」は、

  @「(ン)ガウ・ミヒ」、NGAU-MIHI(ngau=bite,hurt;mihi=sigh for,express discomfort,be expressed of affection etv.)、「(人に)噛みついて・不快感をあたえるもの(蚤)」(「(ン)ガウ」のNG音がN音に、AU音がO音に変化して「ノ」と、「ミヒ」のH音が脱落して「ミ」となった)

  A「ナオ・ミミ」、NAO-MIMI(nao=handle,feel with the hand,lay hold of;mimi=make water,urine,stream,creek)、「水(液体)を・(流したり止めたり)自在に操るもの(栓。呑)」(「ナオ」のAO音がO音に変化して「ノ」と、「ミミ」の反覆語尾が脱落して「ミ」となった)

  B「(ン)ガウ・オミ」、NGAU-OMI(ngau=bite,hurt,attack;(Hawaii)omi=to wither,droop)、「少しづつ(弱らせて)・(食い切る)掘るもの(道具。鑿)()」(「(ン)ガウ」のNG音がN音に、AU音がO音に変化して「ノ」となり、その語尾のO音と「オミ」の語頭のO音が連結して「ノミ」となった)

の転訛と解します。

2120のらいぬ(野良犬)

 野原などに捨てられた犬。飼い主のない犬。野犬。この「のらいぬ(野良犬)」については、雑楽篇(その二)の628いぬ(犬)の項の「野良(のら)犬」を参照してください。

 この「のらいぬ」は、

  「ノ・オラ・イ・ヌイ」、NO-ORA-I-NUI(no=of,belonging to;ora=alive,well in health,safe,satisfied,survive;i=ferment,be stirred;nui=large,many)、「(飼い主から離れて)ちゃんと・生き延びている・たくさんの(子犬が)・湧いて出る(ように産まれる動物)(野良犬)」(「ノ」のO音と「オラ」の語頭のO音が連結して「ノラ」と、「ヌイ」の語尾のI音が脱落して「ヌ」となった)

の転訛と解します。

2121のり(法)

 従い守るべきよりどころ。のっとるべき物事。上位の者からの教え。導き。特に、神や仏の教え。戒律。上位の者からの命令。おきて。法令。規則。下位の者がつき従うべき模範。手本。人一般に共通する道理。すじ。道。やり方。方法。この「のり(法)」については、雑楽篇(その一)の363のり(規範。法。則)の項を参照してください。

 この「のり」は、

  「(ン)ガウ・リ」、NGAU-RI(ngau=raise a cry,indistinct of speech;ri=bind)、「不明瞭な言語を・連ねる(「託宣を下す」が転じて「法」、「則」となった)」(「(ン)ガウ」のNG音がN音に、AU音がO音に変化して「ノ」となった)

の転訛と解します。

2122のり(糊)

 米・麦などの澱粉質のものに水を加え、熱してできる粘りけのあるもの。物を接着させたり、繊維物を整え強張らせたりすることに用いる。一般に接着剤わいう。この「のり(糊)」については、雑楽篇(その二)の750こぶ(こんぶ。昆布)の項の「のり(海苔)」の注の「のり(糊)」を参照してください。

 この「のり」は、

  「ノホ・リ」、NOHO-RI(noho=sit,stay,settle;ri=bind)、「(何かを)接着させるために・(その表面に)塗布するもの(糊)」(「ノホ」のH音が脱落して「ノ」となった)

の転訛と解します。

2123のり(海苔)

 紅藻類・緑藻類・藍藻類などの藻類で、水中の岩石上に付着しているものの総称。狭義ではアサクサノリ、スサビノリなどに代表されるアマノリ類の海藻をいう。生のまま、または乾燥して食用とする。この「のり(海苔)」については、雑楽篇(その二)の750こぶ(こんぶ。昆布)の項の「のり(海苔)」を参照してください。

 この「のり」は、

   「ノホ・オリ」、NOHO-ORI(noho=sit,stay,settle;ori=cause to wave to and fro,sway,move about)、「(海中で)ゆらゆら揺れている・(岩石に)付着しているもの(海藻)」または「(紙を漉くように)揺らして・(簀の上に)定着させたもの(板海苔)」(「ノホ」のH音が脱落して「ノ」となり、その語尾のO音と「オリ」の語頭のO音が連結して「ノリ」となった)

の転訛と解します。

2124のりと(祝詞)

 神をまつり神を祈る時、神に向かって唱える古体の独特の文体をもつた言葉。広く「祓え」に読む言葉や寿詞(よごと)などをふくめていう。のっと。のと。この「のりと(祝詞)」については、雑楽篇(その一)の312のりと(祝詞)の項を参照してください。

 この「のりと」は、

  「(ン)ガウ・リ・タウ」、NGAU-RI-TAU(ngau=raise a cry,indistinct of speech;ri=bind,shut out with a screen,protect;tau=sing,season,the recurring cycle)、「年中行事(としての祭事)の際の・不明瞭な言葉を・連ねて言う(言葉。祝詞)」(「(ン)ガウ」のNG音がN音に、AU音がO音に変化して「ノ」と、「タウ」のAU音がO音に変化して「ト」となった)

の転訛と解します。

2125のれん(暖簾)

 (もと、禪家で寒さをふせぐため簾(す)の隙間を覆う布の帳をいった)日除けなどのため掛けつるす布。主に商家で紺色の木綿地に屋号などを染め抜いて軒先に掛けた。また、屋内の出入口や部屋の仕切りに垂らす短い布。のうれん。のんれん。この「のれん(暖簾)」については、雑楽篇(その二)の1031のれん(暖簾)の項を参照してください。

 この「のれん」は、

  「(ン)ガウ・ラエ(ン)ガ」、NGAU-RAENGA(ngau=bite,hurt,attack;rae=forehead,temple(raenga=point of land))、「額(ひたい)で・払いのける(もの。暖簾)」(「(ン)ガウ」のNG音がN音に、AU音がO音に変化して「ノ」と、「ラエ(ン)ガ」のAE音がE音に、NG音がN音に変化して「レナ」から「レン」となつた)

の転訛と解します。

2126のろ(祝女)

 琉球王朝依頼の神職の女性。最高の神官、聞得大君の統率のもとに、村落の神人を指揮して神事を司る。この「のろ(祝女)」については、雑楽篇(その一)の118のろ(祝女)の項を参照してください。

 この「のろ」は、

  「(ン)ガウ・ロ」、NGAU-RO(ngau=raise a cry,indistinct of speech;ro=roto=inside)、「口の中ではっきりしない言葉を言う(巫女)」(「(ン)ガウ」のNG音がN音に、AU音がO音に変化して「ノ」となった)

の転訛と解します。

2127のろう(呪う)

 恨んだり、憎んだりする人に、災いがあるようにと神仏に祈る。他人をひどく悪くいう。こひどい悪口をいう。強く恨む。

 この「のろう」は、

  「(ン)ガウ・ロウ」、NGAU-ROU(ngau=bite,hurt,act upon,attack;rou=a long stick to reach anything,reach or procure by means of a pole,stretch out,reach out)、「(長い棒を伸ばしたように)遠くから・災いを及ぼす(呪う)」(「(ン)ガウ」のNG音がN音に、AU音がO音に変化して「ノ」となった)

の転訛と解します。

2128のろし(狼煙)

 戦時、非常時の緊急連絡のためにあげる煙。中世以降の称で、古くは烽(とぶひ)と称した。この「のろし(狼煙)」については、雑楽篇(その一)の351のろし(烽火)の項を参照してください。

 この「のろし」は、

  「(ン)ゴロ・チヒ」、NGORO-TIHI(ngoro,ngongoro=utter exclamation of surprise or administration;tihi=summit,top,lie in a heap)、「(山の頂上など)高い場所で・上げる緊急の知らせ(のろし)」(「(ン)ゴロ」のNG音がN音に変化して「ノロ」と、「チヒ」のH音が脱落して「チ」から「シ」となった)

の転訛と解します。

2129のろま(鈍間)

 動作や頭の働きがにぶいこと。愚鈍なこと。のろくて気がきかないこと。また、その人。まぬけ。のろまつ。この「のろま(鈍間)」については、国語篇(その十六)の163のろまの項を参照してください。

 この「のろま」は、

   「ナウ・ロマ」、NAU-ROMA(nau=come,go;roma=current,stream,channel)、「急流を・越えて来るような(動作がにぶいこと。のろま)」(「ナウ」のAU音がO音に変化して「ノ」となった)

の転訛と解します。

2130のわき(野分)

 (野の草を分けて吹き通る風の意)二百十日、二百二十日前後に吹く暴風。また、広く秋から冬にかけて吹く強い風をいうこともある。のわき。のかぜ。のわけのかぜ。台風。この「のわき(野分)」については、雑楽篇(その一)の221野分(のわき)の項を参照してください。

 この「のわき」は、

  「(ン)ガウ・ワキ」、NGAU-WHAKI(ngau=bite,hurt,attack;whaki=disclose,confess(whawhaka=pluck off,tear off etc.))、「(突然)襲ってきて・(草木を薙ぎ倒して)地面をむきだしにする(風)」(「(ン)ガウ」のNG音がN音に、AU音がO音に変化して「ノ」となった)

の転訛と解します。

2131のんき(呑気)

 (〜する)気晴らしをすること。気散じをすること。気がながいこと。気分や性格がのんびりしていること。物事にあまり気を使わないこと。無頓着なこと。また、そのさま。

 この「のんき」は、

  「ノノ・キ」、NONO-KI((Hawaii)nono=to snore;ki=full,very)、「(屈託なしに)鼾をかいて・眠りほうけているようなこと(呑気)」(「ノノ」が「ノン」となった)

の転訛と解します。

2132のんだくれ(飲んだくれ)

 ひどく酒に酔って思慮分別のないこと。大酒を飲んでばかりいてだらしのないこと。また、そのような人を罵っていう語。よいどれ。

 この「のんだくれ」は、

  「ナオ・ミ・タク・レイ」、NAO-MI-TAKU-REI(nao=handle,feel with the hand,lay hold of;mi=to void urine;taku=slow;rei=leap,rush,run)、「(酒樽の栓を)操って・(内容物を空に)飲み干し・ゆっくりと・猛然と動き回る(飲んだくれ)」(「ナオ」のAO音がO音に変化して「ノ」と、「ミ」が「ン」と、「タク」が「ダク」と、「レイ」が「レ」となった)

の転訛と解します。

2133のんべんだらり

 なす事もなく無駄に時間を浪費するさま。また、事の進展がはかばかしくなく、はっきりしないさま。のんべんぐらり。のんべん。

 この「のんべんだらり」は、

  「ノノ・ペナ・タラリ」、NONO-PENA-TARARI((Hawaii)nono=to snore;pena=like that,treat or do or act in that way;tarari=whirligig,a toy)、「(ただ)鼾をかいて眠りほうけ・(玩具の)風車が回っているだけ・のような状況(のんべんだらり)」(「ノノ」が「ノン」と、「ペナ」が「ベン」と、「タラリ」が「ダラリ」となった)

の転訛と解します。

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<修正経緯>

1 平成26年4月1日

 1505だいく(大工)の項に「おほきたくみ(大匠)」を追加しました。

2 平成27年4月1日

 1888-2としより(年寄)の項を追加しました。

国語篇(その二十二)終り


U R L:  http://www.iris.dti.ne.jp/~muken/
タイトル:  夢間草廬(むけんのこや)
       ポリネシア語で解く日本の地名・日本の古典・日本語の語源
作  者:  井上政行(夢間)
Eメール:  muken@iris.dti.ne.jp
ご 注 意:  本ホームページの内容を論文等に引用される場合は、出典を明記して ください。
(記載例  出典:ポリネシア語で解く日本の地名・日本の古典・日本語の語源
http://www.iris.dti.ne.jp/~muken/timei05.htm,date of access:05/08/01 など)
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