Undead & Buried

承前 9月16日 9月17日 9月18日 9月19日・前 9月19日・後 9月20日 9月21日 9月22日・前 9月22日・後 結末


9月16日

【元エンヴォイ、カイル・ロス博士】

CM:さて、トム、スティーヴ、ニコラス、そしてくららの4人はミネソタ州のセントポールという街にやって来ました。

 先が袋小路になっているローズロウン・レーンの刈り込まれた芝生を、くっきりとした長い影が横切っている。通りの一番奥にある1324番地、カイル・ロス博士の住所は近所とはまったく対照的だ。手入れのされていない庭と新しくペンキを塗りなおす必要のある家が、焼き切れた街灯の暗闇の中に鎮座している。
 不自然な何かが大気に立ち込めているように思える。近くの低木で歌う鳥たちの遅い午後の歌は奇妙に脳裏を離れない。家自体にはまったく不自然な部分はないが、夜の空をバックにそびえる2階建は奇妙に空虚な印象を受ける。
 ロス博士は一人暮らしで、彼の仕事の性質上、孤独に暮らすのを選んだ事を君たちは知っているが、空虚な印象にはそれでは説明しきれないものを感じさせる。
 君たちがそう感じるのも無理はない。もし手がかりが真実の物となれば、孤軍奮闘を余儀なくされるのだから。ドゥルジ・ナス、レッサー・ゾンビ・マスターを相手に。
 ここに来るまでに、君たちにはゾンビ・マスターに関するSAVEの報告書を読んで、事前準備ができた。
 古い家の扉がゆっくりと開き、屋内からの暖かい光のなかに老人の影が浮かび上がる。彼は君たちに近寄るように、手招きで合図をした。

CM:ロス博士は60歳くらいの背の高い男性です。「入ってくれ。君たちに会えて光栄だと言いたいところだが、そう悠長に構えてもいられない」。
 ロス博士は皆さんを2階に案内します(ロス邸の見取り図を渡す)。「ここが君たちの部屋になる。遠慮なくくつろいでくれ。夕食の準備をしている間に、君たちはシャワーでも浴びていてくれ。それから話そう。夕食は15分後に始めよう」。
トム夕食って、召使いでもいるの?
CM:いえ、まさに彼が料理します。「PIYO PIYO」と書かれたピンク色のエプロンをつけて、中華鍋を振るっています。
一同:(笑)。
CM:「食事まで、しばらく家の中をぶらぶらしていてくれ。ここでこんなに多くの客を迎えた事はないのでね」と言って、ロス博士は中華鍋を振るいながら階段を下りて行きます。

 家のどこかにいると、柱時計が7時の鐘を打ち、同時にロス博士が呼ぶ声が聞こえる:「皆、ダイニング・ルームへ来てくれ。夕食にしよう」。
 君たちがダイニング・ルームのテーブルの椅子に座ると、テーブルに最後の皿を置く時に、ロス博士が緊張と悲しみの両方の表情を浮かべている事に気付く。
 全員が席に着くと、ロス博士は言う:「さあ、食べよう。ケージャン風のコショウを利かせた詰め物を、皆が好きだと良いのだが」。ロス博士はしばし言葉を切ると、食事をさらに盛り始める。
 全員が食べて飲み始めると、ロス博士はミルクのグラスを持ち上げて、こう言う:「調査が迅速かつ容易く終わりますように。協会にすべてを捧げた人たちの復讐を、SAVEができますように。ともあれ、幸運を。さて、私自身について少し話す間、どうか食事を楽しんでくれたまえ。
 私は担う責任に関する意見の相違からSAVEを辞めた。若く才能豊かなエンヴォイがアンノウンによって絶望的に虐殺されていく環境には、それ以上留まる事ができなかったのだ。理由は簡単だ:SAVEはほとんど訓練も施さずに、新しいメンバーの天賦の才に頼りすぎていたのだ。得たのと同じだけの人数が殺されていった(※CM註:実際、SAVEには殉職者数が採用者数を上回っていた時期がありました)。
 しかし、新しいエンヴォイは皆、リスク込みである事を理解し受け入れていた。私はこう考えた、組織的な訓練――長期に渡るもの――が新しいメンバーには必要なのだと。……今でもそう思っている。
 やがて、あまりにコストと時間がかかり過ぎるとして私の提案が却下された後、私はSAVEと袂を分かった。1987年の事だ。
 もちろん、私は調査を続けた。ルーガルー、ゴースト、中部および南西部のヴードゥーのカルトを目にしたし、できる限り多くの“アンノウンの影響”をエリアから取り除くための手助けをした。
 しかし、私はついに、それらのどれよりも遥かに邪悪なものを発見してしまった。
 最初の調査で、かつて自分にも分かっていたであろう事が証明された:アンノウンにたった一人で立ち向かう事はできないということだ。そして私は恥を忍んで、SAVEに連絡をした。そして今」、彼は両手を拡げて言う。「君たちがここにいる」。

カイル・ロス博士スティーヴ「そのような経緯がおありでしたか。お会いできて光栄です。我々としてもできる限りのことはさせていただくつもりです」。
CM:(ロス博士)「SAVEは手練のエンヴォイを派遣してくれたと聞いている」。
ニコラス「お任せください」。
CM:(ロス博士)「む!? 君があのヤンデレ妹がいるという……!!」。
ニコラス博士まで!(笑)
トム(笑)。
CM:スパイスが良く効いた詰め物は辛くてエキゾチックな味わいです。皆さんは肉料理などをたらふく食べます。(ロス博士)「どうかレシピを尋ねないでくれよ」とロス博士は言う。「数年前にヴードゥー教のカルトから救い出したケージャン(※ルイジアナ州に住むフランス語系民族)の友人が、お返しに作り方を教えてくれたんだ」。
ニコラス博士はどんな様子ですか?
CM:そうですね、顔色はあまり良くありません。
スティーヴ憔悴しきっているって感じでしょうかね。
ニコラスこの家に入る前から、何となく嫌な雰囲気を感じているくらいだから、博士も普通の状態じゃないよな。
トムうん。
CM:(ロス博士)「リビング・ルームに場所を変えよう、そこで君たちの新しい任務について、私が知っている事を話そう」。

 「数週間前、ゾンビの目撃と襲撃に関する新聞とテレビでの報道を目に留めた。最初、警察は変装した子供たちのグループが、深夜に人々を襲っているのだとみなした。しかし、襲撃が続き、死者が出るに至って、私は調査を開始した。
 目撃情報を集め、連絡が取れた目撃者の何人かに電話でインタビューをした。さらに突っ込んだ調査をした後にようやく、襲撃の原因と信ずるに足るものを発見した。
 ゾンビが目撃され始めた数週間前、デニス・リード氏の首と両手のない死体が町から数マイルの所にある排水溝で見つかった。札入れだけが、彼の身元を示す証拠だった。私はその時町にいなくて、その後に起きたメディアの大騒ぎは見逃してしまった。問題が悪化したのはその2日後で、リード氏の死体が死体仮置き場から盗まれてしまったのだ。これを読んだ時、私の最悪の想像が現実化し始めた。私が取り組んでいる事件は、ゾンビ・マスターに関するものなのだ、と」。
 時計が8時を報せ、ロス博士は続ける。
 「状況が私の手には負えないと判断したので、SAVEに電話をかける事にした。その時から、短い時間でできるだけの情報を集めた:新聞記事、警察の報告書、検死報告書……。
 しかし数時間前、君たちの到着準備をしていた時、私は気付いた、道に人影が立って、家の中に入る私を見ている事に。アンノウンがそばで監視しているかのように感じたのだ。私は気付かない振りをして、家の中に入った。しかし、私が再びそちらへ目を向けた時、それは既にいなくなっていた」。
 ロス博士は言葉を切って、グラスの水を一口飲む。「見張られている事は恐ろしい。そして私の調査が、既に我々の存在をアンノウンに気付かせてしまったのかもしれない。
 話は以上だ。仕事場へ行って、証拠をお見せしよう」。




【ロス博士の調査資料】

 ロス博士は君たちを玄関ホールへ連れて行って、階段下の小さなドアに近づく。ポケットから鍵を出して狭いドアの錠を開けると、地下室の影へと下るホコリだらけの木製の階段が現れる。
 「ここに私の調査のすべてが保管されている。使い慣れているし、泥棒にノートや記念品を盗まれたくないのでね」。ロス博士は階段の上に付いた電球のコードを引いて、下へ降り始める。
 軋む階段を下りて行くと、空気に湿った木と古い家具の臭いが漂い始める。一番下には古いネズミ捕り器があり、餌はとっくに無くなっていて、罠は撥ね返っている。その先は影の中に見えなくなっている。ロス博士が暗い部屋に入って明かりをつけると、地下室は折り重なる影で満たされる。
 部屋は広く、剥き出しのセメント板で造られている。似たような外観でまとめられた品々が載ったいくつかの大テーブルが壁際に並んでいる。過去の調査の記念品がテーブルの上の無数の棚に並んでおり、壁に掛かった額縁に入れられたニュースの切抜きと古いSAVEのインダロが目を引く。ロス博士はSAVEから退いたかもしれないが、協会の仕事に誇りを持っていた事は確かだ。
 彼は君たちに向かってテーブルの中央にある1つの箱を指し示す。「これが私が持つゾンビに関する情報のすべてだ」と彼は言う。「それが魅惑的で恐ろしいものである事が分かるだろう」。彼は箱の中に手を入れて、何枚かの新聞の切抜きと「警察報告書」と書かれたファイルを取り出す。

トムふ〜む。
CM:ロス博士は軽く抱えられそうなほどの大きさの箱をテーブルに置きます。箱の中にはガサッと無造作に書類が入れられています。
ニコラス「どれどれ……」。
CM:これが、また、凄いですよ(笑)。ハイ、これが書類です(プレイヤー・エイドを渡す)。
スティーヴ……A4用紙2枚にびっしりですか(笑)。

新聞記事
(※ハンドアウトの文章は長いので、内容をまとめて記します)

「地元のカップル、“ゾンビ”に襲われる」
 ハリー・バーロウとその婚約者ジェニー・カーファクスが5人のゾンビに仮装した暴漢に襲われたという記事。カップルは辛くも逃げ延びて警察に通報したが、現場に到着した警察は加害者たちを見つけることはできなかった。

「“ゾンビ”強盗、若者を襲う」
 3日前にカップルを襲った5人の強盗の内の1人と思しき人物に、キャンター・パークの沼のほとりで4人の若者が襲われる。その“ずぶ濡れで、沼で何日も横たわっていたかのような悪臭を放つ”犯人は4人の若者を相手に暴れまわった。若者たちに重傷を負わせると、強盗はキャンター・パーク内へ逃走し、周辺を捜索する警察から逃れている。

「“死者の恐怖”三度」
 8人のゾンビの仮装をした暴漢がセントポールのシェード通りを歩いていた2組の夫婦を襲い、そのうちの3人を殺害した。スローン大通り2982番地に住むレナ・ペーラがそれを目撃して警察に通報した。彼女は語る。「死体に変装した8〜9人の男が4人の周りの影から出てきて、彼らを襲い始めたんです。背筋が凍るかと思いましたが、その中の1人はただ見ているだけでした。彼は離れた場所にいて、ただ見ているだけでした。彼も変装していましたが、彼には頭部がないように見えました!」。

「警察、ゾンビの実在を揉み消す」
 警察はゾンビの存在を隠して、事件を仮装したギャングのしわざにしようとしているという内容のタブロイド記事。事件はヴードゥー教の狂信者が関わっているのは間違いないにもかかわらず、警察は真実を恐れて専門家に意見を求めることさえしていないとして糾弾している。

一同:(しばしプレイヤー・エイドに目を落として熟読。CMは自分とプレイヤー全員のコップにコカコーラを注いで回る)
CM:(コーラ、ごくごく)ぷはー。染み入りますなぁ。
一同:……(熟読中)。
スティーヴ……最後の記事にはイエロー・ペーパー臭が漂いますな。どれもこの街周辺での事件ですか?
CM:そうですな。「地元」の事件と言えるでしょう。3番目の事件辺りから、レッサー・ゾンビ・マスターの影が見え隠れしますかね。
トムそうですなぁ。
ニコラス今のところ、最も多くのゾンビが出現したのは3番目の事件だね。8体か。襲撃の時間帯は、すべて夜間?
CM:夜ですね。さて、くららを含めた皆さん4人は新聞記事を読み終えました。

 ロス博士は地元紙から、ゾンビの襲撃を扱ったいくつかの記事を切り抜いて取っている。各記事には、周りに他の人がほとんどいない寂しい場所で、深夜に遭遇が起こっていると書かれている。ほぼすべての遭遇で、ゾンビは路地の影や暗い場所から出てきたと言われている。ある報告では、ゾンビが小さなグループを襲撃している間、暗がりに立ってそれを見守ってる頭のない死体を見たと、犠牲者が語っている。
 記者の見方は予想通り懐疑的なもので、目撃者の証言を唯一支持しているのはタブロイド紙の『ウィークエンド・リポーター』だけだ。それなりの新聞はすべて、襲撃をハロウィンのお面を被ったギャングのメンバーの仕業としている。アンノウンの仕業とする新聞は一紙もない。

スティーヴまぁ、そりゃそうでしょうな。されても困る。
CM:そんなわけで、ロス博士の集めた証拠を読んだ皆さんは、<捜査>の段階判定をしてください。(コロコロ……トムとニコラスがH成功)記事はセンセーショナルな扱いですが、怪我をしたのはたった7人で、殺されたのはたった3人です。幸いにも、思ったよりも重大事件ではありません。記事の情報と壁に掛かった都市の地図を見比べると、各襲撃事件はおよそ10ブロック四方の中で起こっている事に気付きます。
トムほほう。
CM:狭いエリアで起こっているので、おそらくはそこを拠点にしたアンノウンによって事件が起こされている可能性は高いですな。
ニコラス10ブロックが絞り込めているなら、そのブロック内をしらみつぶしに当たればゾンビを見つけられるんじゃないの? そのエリアのどこかにいるってことでしょ?
CM:どこかに身を潜めているんでしょうね。さて、次はこのプレイヤー・エイドをどうぞ。
スティーヴおっと、まだあるのか(笑)。

警察の報告書:
デニス・K・リードに関して


整理番号#7231-081091

対象:デニス・カイル・リード

容疑者:なし
自動車:なし
痕跡:xxxxx
目撃者:匿名による通報
その他:発見された場所;国有地。I-92のマイル標識71から南に1/4マイル。

死亡推定日/時刻:E.U.K.――

1991年8月10日、午前2:30頃
場所:上記の場所のI-92の排水溝。
 遺体とその場所の報告が匿名でセントポール管区#7に通報される。現場に行った捜査官が橋の下で頭部と両手が切り取られた死体を発見。両手の切除は身元の確認を妨げるためと思われる。死体の身元は検死によって確認される(札入れ、所持品)。
 武器が使われた形跡はなし。

 遺体が来ていたコートの前ポケットから住所が発見された。住所を調査したところ、本件とは無関係と判明。
 容疑者:今のところなし。

追記:セントポールのボイル通り1032番地、ダリン・オルメスト死体安置所で、侵入と死体盗難が発生。日付:2011年8月13日。無理やり侵入した形跡はなし。すべてのドアが鍵で開けられたか、内側から開けられた模様。犯行時刻:午前2〜3時。

記録者:アンドレ・サットン警部 1)2011年8月11日、2)2011年8月14日

スティーヴこのダリン・オルメスト死体安置所っていうのは、ゾンビの襲撃が起こっている10ブロック内に入っていますか?
CM:いや、入らないね。まぁ、セントポールの街内にはあるので、近いと言えば近いが。
トムもちろんデニス・リードの遺体が発見されたのも10ブロックには入ってないよね?
CM:入っていませんな。遺体の発見現場はセントポールの郊外です。「セントポール」という大きな括りにすると、まぁ、地元ということになるという程度です。

 ロス博士はデニス・リードの死に関する警察の報告書の原本を手に入れることに成功した。それによると、匿名の電話が警察に死体の場所を報せた後、町から6マイル離れた場所でそれが発見された状況が書かれている。
 リードの頭部と両手は乱暴に引き千切られ、もし札入れがなければ、遺体の身元確認はほとんど不可能だっただろう。報告書には、3日後に遺体は死体公示所からなくなったが調査員の調べによると押し入られた形跡はなかった、とも書かれている。ドアはまるで内側から開けられたかのようであった、と。

一同:「……」。
CM:(d10を振ってランダムに)では、トムは+10%で知覚力の一般判定をしてください。
ニコラススティーヴよりによってトムか(笑)(※トムはパーティ内で一番知覚力が低い)
トム(コロコロ)12!
CM:トムが報告書を調べていると、ファイルから外れた小さな紙片がテーブルの上に落ちた事に気付きます。
トム「おや?」。
CM:それにはただ一行「グランド通り7533番地」という住所が書かれています。
ニコラス「これは……遺体のポケットから発見された住所か?」。
スティーヴとりあえず、壁に貼られた地図でグランド通り7533番地を確認してみます。
CM:ロス博士の家からはかなり近いです。街中の商業地区です。
スティーヴ例の10ブロック内ですか?
CM:そうだね。
トム「行ってみなければならないだろうな」。意味有り気な住所が手の中に転がり込んできましたな。
スティーヴ「例の10ブロック内でもあることだし、明日になったら優先的に見に行ってみよう」。
ニコラスこの住所(7533番地)はきっとリード氏のポケットから見つかったものだろうね。調べる範囲は結構絞られてきているな。あとは頭と両手の隠し場所だけれども……。
スティーヴロス博士に頭と両手の隠し場所について、何かゾンビ・マスターの伝承的なものがないか聞いてみます。
CM:(ロス博士)「隠し場所についての決まり事や制約らしきものは報告されていない。“何か特別な箱の中”といった条件はないということだ。しかし、おそらくは容易には見つからず且つ目の届く範囲に置いているのではないか?」。
ニコラス確かに、発見される事を怖れているのなら、手の届く範囲には置いていると思うんだよね。
スティーヴあるいは「まったく手の届かない場所」の可能性もありますね。

 「もう遅いし疲れただろう」とロス博士はうんざりしたように言う。「ベッドへ行って休もう。早いかもしれないが、今から眠れば、明日は早朝から取り掛かれるだろう。あと私が思うに、アンノウンは近くに潜んで、常に我々の隙をうかがっている。ゆめゆめ油断召されるな!」。




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